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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123582
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】止水装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20240905BHJP
   E06B 7/22 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B7/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031122
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢作 亘
(72)【発明者】
【氏名】直島 康人
【テーマコード(参考)】
2E036
2E239
【Fターム(参考)】
2E036AA01
2E036BA01
2E036DA02
2E036EB02
2E036GA02
2E036HA01
2E036HB38
2E036HC03
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】取り付けが容易で止水性に優れた止水装置を提供する。
【解決手段】枠体が有する左右の縦枠と見込み方向に対向する左右の縦枠対向部、及び、枠体が有する下枠または屋内の下面と対向する下部対向部と、を有して開口を覆う止水板と、縦枠対向部と下部対向部とにそれぞれ設けられるシール材と、枠体の屋内側にて互いに対向する左右の屋内壁面に取り付けられて、止水板を支持する支持部材と、を有し、支持部材は、屋内壁面に固定される屋内固定部材と、止水板に固定される止水板固定部材と、屋内固定部材及び止水板固定部材と係合する係合部材と、を有し、屋内固定部材は、係合部材の移動を案内する案内部を有し、止水板固定部材は、係合部材が案内部に沿って移動して所定方向に押圧される被押圧部と、押圧された状態を維持する被押圧状態維持部と、を有し、係合部材が止水板固定部材を押圧することにより、止水板を移動させてシール材を圧縮して止水する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内外の境界に設けられる開口を形成する枠体の屋内側に設けられる止水装置であって、
前記枠体が有する左右の縦枠と見込み方向に対向する左右の縦枠対向部、及び、前記枠体が有する下枠または屋内の下面と対向する下部対向部と、を有して前記開口を覆う止水板と、
前記縦枠対向部と前記下部対向部とにそれぞれ設けられるシール材と、
前記枠体の屋内側にて互いに対向する左右の屋内壁面に取り付けられて、前記止水板を支持する支持部材と、
を有し、
前記支持部材は、前記屋内壁面に固定される屋内固定部材と、
前記止水板に固定される止水板固定部材と、
前記屋内固定部材及び前記止水板固定部材と係合する係合部材と、
を有し、
前記屋内固定部材は、前記係合部材の移動を案内する案内部を有し、
前記止水板固定部材は、前記係合部材が前記案内部に沿って移動して所定方向に押圧される被押圧部と、押圧された状態を維持する被押圧状態維持部と、を有し、
前記係合部材が前記止水板固定部材を押圧することにより、前記止水板を移動させて前記シール材を圧縮して止水することを特徴とする止水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の止水装置であって、
前記案内部は、前記所定方向に沿う第1スリット部と、前記第1スリット部の端と繋がって当該第1スリット部と交差する方向に延びる第2スリット部でなり、
前記止水板固定部材は、前記所定方向に沿う第3スリット部と、前記第3スリット部と繋がって当該第3スリット部と交差する方向に延びる第4スリット部とを有し、
前記被押圧部は、前記止水板固定部材が有する前記第3スリット部の端をなす壁部であり、前記被押圧状態維持部は、前記第4スリット部であることを特徴とする止水装置。
【請求項3】
請求項2に記載の止水装置であって、
前記係合部材は、前記第1スリット部及び前記第3スリット部または前記第2スリット部及び前記第4スリット部を挿通可能な棒状部材であり、
前記棒状部材は、前記第1スリット部及び前記第2スリット部の幅より大きな先端部を有し、
前記先端部は、前記案内部の、前記止水板固定部材と反対側に位置することを特徴とする止水装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の止水装置であって、
前記支持部材は、前記所定方向が前記枠体に向かう方向である横移動支持部材と、
前記所定方向が下方である縦移動支持部材と、
を有することを特徴とする止水装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の止水装置であって、
前記支持部材は、前記所定方向が前記枠体に向かう方向であることを特徴とする止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口を止水する止水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の開口部を塞いで水の進入を防止するための止水装置は知られている(例えば、特許文献1参照)。この止水装置は、建物に設けられた扉枠の内周開口部を塞いで水の通過を防止するものであり、壁板部、左板部、右板部、下板部及び上板部が箱状をなす止水壁を有し、止水壁の左板部、右板部、下板部にそれぞれ、板状をなすゴム製のシール材などでなる水密維持手段が設けられている。そして、左側の水密維持手段が、扉枠の内側開口の左面と接触し、右側の水密維持手段が、扉枠の内側開口の右面と接触し、下側の水密維持手段が、扉枠の内側開口の下面と接触して、それぞれ扉枠との間の水密を維持するように構成されている。また、水密性を高めるために別部材でなる押圧手段を備えたものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-55309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような止水装置は、水密維持手段を扉枠などの止水壁と対向する部位に接触させるだけでは、十分な止水性が得られない場合があり、また、止水性を高めるべく押圧手段を備えると、止水装置の取り付けが煩雑になるという課題があった。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、取り付けが容易で止水性に優れた止水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するための主たる発明は、屋内外の境界に設けられる開口を形成する枠体の屋内側に設けられる止水装置であって、前記枠体が有する左右の縦枠と見込み方向に対向する左右の縦枠対向部、及び、前記枠体が有する下枠または屋内の下面と対向する下部対向部と、を有して前記開口を覆う止水板と、前記縦枠対向部と前記下部対向部とにそれぞれ設けられるシール材と、前記枠体の屋内側にて互いに対向する左右の屋内壁面に取り付けられて、前記止水板を支持する支持部材と、を有し、前記支持部材は、前記屋内壁面に固定される屋内固定部材と、前記止水板に固定される止水板固定部材と、前記屋内固定部材及び前記止水板固定部材と係合する係合部材と、を有し、前記屋内固定部材は、前記係合部材の移動を案内する案内部を有し、前記止水板固定部材は、前記係合部材が前記案内部に沿って移動して所定方向に押圧される被押圧部と、押圧された状態を維持する被押圧状態維持部と、を有し、前記係合部材が前記止水板固定部材を押圧することにより、前記止水板を移動させて前記シール材を圧縮して止水することを特徴とする止水装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、取り付けが容易で止水性に優れた止水装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る止水装置を屋内側から見た図である。
図2】本実施形態に係る止水装置の平面図である。
図3】左側の支持部材を示す斜視図である。
図4】横移動支持部材の構成を示す分解斜視図であり、図4(a)は、屋内壁部に向く側から見た分解斜視図であり、図4(b)は、屋内壁部側から見た分解斜視図である。
図5】縦移動支持部材の構成を示す分解斜視図であり、図5(a)は、屋内壁部に向く側から見た分解斜視図であり、図5(b)は、屋内壁部側から見た分解斜視図である。
図6図6(a)は、シール材を圧縮する前の状態を説明する図であり、図6(b)は、縦移動支持部材により止水板を移動させてシール材を圧縮した状態を説明する図であり、図6(c)は、横移動支持部材により止水板を移動させてシール材を圧縮した状態を説明する図である。
図7】止水装置の変形例を示す図であり、図7(a)は、シール材を圧縮する前の状態を説明する図であり、図7(b)は、横移動支持部材により止水板を移動させてシール材を圧縮した状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態に係る止水装置について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る止水装置の一例として、屋内外を連通し扉(障子)8により閉止可能な開口2aを形成する枠体3を備える玄関建具2の屋内側に設けられる止水装置1を例に挙げて説明する。
【0009】
以下の説明においては、建物に取り付けられた状態の止水装置1を、屋内側から見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向、奥行き方向を見込み方向として示す。また、止水装置1の各部位であっても、また、止水装置1を構成する各部材については単体の状態であっても、止水装置1が設置されている状態にて上下方向、左右方向、見込み方向となる方向にて方向を特定して説明する。
【0010】
止水装置1は、図1図2に示すように、玄関建具2が設けられている建物にて、枠体3が有する下枠6の上及び枠体3の屋内側に位置する土間4上であって、互いに対向する左右の屋内壁面5の間に取り付けられる。なお、開口を形成する枠体3には、例えば、移動不能に設けられた障子により開口が閉止されているFIX窓を構成する枠体も含み、枠体が縦骨などを有していても構わない。
【0011】
枠体3は、上枠(不図示)、下枠6及び左右の縦枠7が矩形状に枠組みされて形成されている。玄関建具2が有する扉8は、左側の縦枠7にヒンジ9を介して回動可能に支持されている。
【0012】
左右の縦枠7はそれぞれ屋内壁面5の屋外側に、当該屋内壁面5と繋がって設けられており、各縦枠7には、閉じた扉8の周端部と見込み方向に対向する戸当たり部7aが、屋内壁面5よりも、互いに対向する側に突出させて設けられている。
【0013】
戸当たり部7aは、屋外側が開放されて屋内側に窪む凹部でなり、扉8に当接されるシール材10が嵌合されるシール材嵌合部7bを有しており、戸当たり部7aの屋内側は、平坦な見付け面7cが形成されている。下枠6は、上面が土間4の上面とほぼ同じになるように設けられている。また、開口2aの内周部分において、例えば、縦枠7と下枠6との接合部や沓摺部等に凹凸が有り隙間が生じる場合には、当該隙間はパッキン等により塞がれている。
【0014】
止水装置1は、枠体3の屋内側に設けられる止水板11と、枠体3の屋内側にて互いに対向する左右の屋内壁面5に取り付けられて、止水板11を支持する支持部材12と、を有している。
【0015】
止水板11は、長手方向に貫通し断面がほぼ矩形状をなす3本の中空筒材を有する止水枠部13と、止水枠部13に取り付けられるシート材14と、を有している。止水枠部13は、左右に間隔を空けて配置され上下の端部が塞がれた2本の止水縦枠部13aと、2本の止水縦枠部13aの下端部間に配置される止水下枠部13bとが、コ字状をなすように接合されている。止水下枠部13bの両端部は、2本の止水縦枠部13aにより塞がれている。
【0016】
コ字状に接合された止水枠部13の幅は、互いに対向する屋内壁面5の間隔よりも僅かに狭く形成されている。ここで、2本の止水縦枠部13aが、縦枠と見込み方向に対向する左右の縦枠対向部に相当し、止水下枠部13bが、左右の縦枠対向部の下端を連結し、枠体が有する下枠または屋内の下面と対向する下部対向部に相当する。
【0017】
左右の止水縦枠部13aの屋外側に向く平面でなる縦屋外面13cには、上下方向に沿って屋内側に窪む溝部13dが設けられており、溝部13dにはシール材15が嵌め込まれて取り付けられている。シール材15は、例えば、溝部13dの深さよりも厚く、合成樹脂製の弾性部材で形成されており、縦屋外面13cから屋外側に突出させて設けられている。図1図2においては、シール材15が圧縮された状態を示している。
【0018】
また、止水板11の下面をなす2本の止水縦枠部13aの下面と止水下枠部13bの下面には、全長にわたってシール材15が設けられている。縦屋外面13cに設けられたシール材15は、止水下枠部13bよりも下方に延出されており、止水板11の下面に設けられたシール材15と見込み方向に繋がっている。
【0019】
シート材14は、止水下枠部13bの上方であって、左右の止水縦枠部13aの間の空間を屋内側から覆うように配置され、シート材14は、止水枠部13に水密に取り付けられている。
【0020】
支持部材12は、左右の屋内壁面5にそれぞれ取り付けられて止水板11を支持するように構成されている。左右の屋内壁面5に取り付けられる支持部材12は、左右の向きが互いに相違するが構成は同じである。このため、ここでは左側の屋内壁面5に取り付けられる支持部材12を例に挙げて説明する。
【0021】
支持部材12は、止水板11を見込み方向において屋外側に移動させる横移動支持部材16と、止水板11を下方向に移動させる縦移動支持部材17と、を有している。図3に示すように、横移動支持部材16は、止水板11の上端部側と下端部側とにそれぞれ設けられており、縦移動支持部材17は、止水板11の上下方向におけるほぼ中央に設けられている。
【0022】
横移動支持部材16は、屋内壁面5に固定される屋内固定部材18と、止水板11に固定される横止水板固定部材19と、屋内固定部材18及び横止水板固定部材19と係合する係合部材20と、を有している。
【0023】
屋内固定部材18は、図4に示すように、ほぼ正方形をなす平板状をなす部材であって、正方形の一辺をなす部位のほぼ中央から対向する辺側に向かって直線状に形成された第1スリット部18aと、第1スリット部18aの端と繋がって当該第1スリット部18aと交差する方向、ここでは直交する方向に延びる第2スリット部18bとが、L字状に形成されている。第1スリット部18a及び第2スリット部18bは、屋内壁面5に当接される左側面18c側が、屋内壁面5とは反対側の右側面18d側よりも幅が広く形成されている。以下では、左側面18c側の幅が広い部分を拡幅部18eという。
【0024】
屋内固定部材18は、第1スリット部18aが見込み方向に沿うように配置されて屋内壁面5にねじ止めされる。屋内壁面5にねじ止めされた状態では、第1スリット部18aの開放された部位が屋内側に位置している。
【0025】
横止水板固定部材19は、止水板11にねじ止めされる横固定部19aと、横固定部19aの左側の端から屋内側に向かって延出され、屋内壁面5に固定された屋内固定部材18と対面する位置に配置される横対向部19bと、を有し、平面視においてL字状をなしている。
【0026】
横対向部19bには、屋内側の部位の上部側から固定部側に向かって直線状に形成された第3スリット部19cと、第3スリット部19cの端と繋がって当該第3スリット部19cと交差する方向、ここでは直交する下方向に延びる第4スリット部19dとが、L字状に形成されている。第3スリット部19c及び第4スリット部19dの幅は、第1スリット部18a及び第2スリット部18bの右側面18d側の幅とほぼ同じに形成されている。
【0027】
係合部材20は、円柱状をなす本体部20aと、本体部20aの一方の端部(先端部)に設けられ、本体部20aの外径よりも大きな外径をなす拡径部20bと、本体部20aの他方の端部(後端部)に設けられ本体部20aの外径よりも大きな直径をなす球体状の把持部20cとを有している。本体部20aの直径は、第1~第4スリット部18a、18b、19c、19dの幅より僅かに小さく形成されている。拡径部20bの外径は、第1~第4スリット部18a、18b、19c、19dの幅より大きく、拡幅部18eの幅よりも小さく形成されている。また、拡径部20bの長さは、拡幅部18eの左側面からの深さよりも僅かに短く形成されている。
【0028】
このため、拡径部20bを拡幅部18eに挿入して、本体部20aが第1スリット部18a及び第3スリット部19c、又は、第2スリット部18b及び第4スリット部19dに挿通した状態で、把持部20cが横止水板固定部材19よりも右側に位置し、係合部材20が第1~第4スリット部18a、18b、19c、19dに沿って移動可能である。
【0029】
縦移動支持部材17は、屋内壁面5に固定される屋内固定部材18と、止水板11に固定される縦止水板固定部材21と、屋内固定部材18と及び縦止水板固定部材21と係合する係合部材20と、を有している。屋内固定部材18及び係合部材20は、横移動支持部材16の屋内固定部材18及び係合部材20と同一の部材である。
【0030】
縦移動支持部材17の屋内固定部材18は、図5に示すように、第1スリット部18aが上下方向に沿うように配置されて屋内壁面5にねじ止めされる。屋内壁面5にねじ止めされた状態では、第1スリット部18aの開放された部位が上側に位置している。
【0031】
縦止水板固定部材21は、止水板11にねじ止めされる縦固定部21aと、縦固定部21aの左側の端から屋内側に向かって延出され、屋内壁面5に固定された屋内固定部材18と対面する位置に配置される縦対向部21bと、を有し、平面視においてL字状をなしている。
【0032】
縦対向部21bには、上面から下側に向かって直線状に形成された第3スリット部21cと、第3スリット部21cの下端と繋がって当該第3スリット部21cと交差する方向、ここでは直交する見込み方向における屋内側に延びる第4スリット部21dとが、L字状に形成されている。第3スリット部21c及び第4スリット部21dの幅は、第1スリット部18a及び第2スリット部18bの右側面18d側の幅とほぼ同じに形成されている。
【0033】
そして、拡径部20bを拡幅部18eに挿入して、本体部20aが第1スリット部18a及び第3スリット部21c、又は、第2スリット部18b及び第4スリット部21dに挿通した状態で、把持部20cが縦止水板固定部材21よりも右側に位置し、係合部材20が第1~第4スリット部18a、18b、21c、21dに沿って移動可能である。
【0034】
横止水板固定部材19及び縦止水板固定部材21が固定された止水板11は、図6(a)に示すように、下面に設けられているシール材15を介して下枠6上に配置され、屋外側に設けられているシール材15が縦枠7のシール材嵌合部7bの屋内側となる見付け面7cに当接される状態で配置される。このとき係合部材20は、取り付けられていない。図6においては、共通する部位を示す符号を一部省略している。
【0035】
屋内固定部材18は、各横止水板固定部材19及び各縦止水板固定部材21と対向する位置に配置されて、左右の屋内壁面5に予め取り付けられている。そして、横移動支持部材16の屋内固定部材18は、屋内側に第1スリット部の開放された部位が位置しており、縦移動支持部材17の屋内固定部材18は、上側に第1スリット部の開放された部位が位置している。
【0036】
このとき、横移動支持部材16においては、横止水板固定部材19の第4スリット部は、屋内固定部材18の第2スリット部18bよりも屋内側に位置しており、縦移動支持部材17においては、縦止水板固定部材21の第4スリット部21dは、屋内固定部材18の第2スリット部18bよりも上側に位置している。換言すると、横移動支持部材16は、横止水板固定部材19の第4スリット部19dが、屋内固定部材18の第2スリット部18bよりも屋内側に位置する位置に、縦移動支持部材17は、縦止水板固定部材21の第4スリット部21dが、屋内固定部材18の第2スリット部18bよりも上側に位置する位置に、それぞれ固定されている。
【0037】
止水板11を取り付ける際には、まず左右の縦移動支持部材17の縦止水板固定部材21の第3スリット部21cに上方から係合部材20の本体部20aを挿入し、係合部材20を下方に移動させつつ、拡径部20bを屋内固定部材18の拡幅部18eに、本体部20aを第1スリット部18aに挿入する。その後、係合部材20をそのまま下方に移動させて第3スリット部21cの下端となる縦止水板固定部材21の壁部21eに本体部20aを当接させ、さらに下方に移動することにより止水板11を下方に移動し、止水板11の下面に設けられているシール材15が下枠6との間で圧縮されて水密な状態となる。
【0038】
そして、さらに係合部材20を第2スリット部18b及び第4スリット部21dに移動することにより、第2スリット部18bにより係合部材20及び係合部材20と係合している縦止水板固定部材21が固定されている止水板11の上方への移動が規制され、図6(b)に示すように、止水板11の下面に設けられているシール材15が下枠6との間で圧縮された水密な状態が維持される。ここで、第1スリット部18a及び第2スリット部18bが、屋内固定部材が有し、係合部材20の移動を案内する案内部に相当する。また、第3スリット部21cの下端となる縦止水板固定部材21の壁部21eが、係合部材20が案内部に沿って移動して所定方向に押圧される被押圧部に相当し、第4スリット部21dが、押圧された状態を維持する被押圧状態維持部に相当する。
【0039】
次に、止水板11に設けられている4つの横移動支持部材16の横止水板固定部材19の第3スリット部19aに屋内側から係合部材20の本体部20aを挿入し、係合部材20を見込み方向における屋外側に移動させつつ、拡径部20bを屋内固定部材18の拡幅部18eに、本体部20aを第1スリット部18aに挿入する。その後、係合部材20をそのまま屋外側に移動させて第3スリット部19aの屋外側の端となる横止水板固定部材19の壁部19eに本体部20aを当接させ、さらに屋外側に移動することにより止水板11を屋外側に移動し、止水板11の屋外側の面に設けられているシール材15が縦枠7のシール材嵌合部7bの屋内側となる見付け面7cとの間で圧縮されて水密な状態となる。
【0040】
そして、さらに係合部材20を第2スリット部18b及び第4スリット部19dに移動することにより、第2スリット部18bにより係合部材20及び係合部材20と係合している横止水板固定部材19が固定されている止水板11の屋内側への移動が規制され、図6(c)に示すように、止水板11の屋外側の面に設けられているシール材15が縦枠7のシール材嵌合部7bの屋内側となる見付け面7cとの間で圧縮された水密な状態が維持される。これにより、止水装置1により屋内への水の浸入を防止することが可能となる。ここで、第1スリット部18a及び第2スリット部18bが、屋内固定部材が有し、係合部材20の移動を案内する案内部に相当する。また、第3スリット部19cの下端となる横止水板固定部材19の壁部19eが、係合部材20が案内部に沿って移動して所定方向に押圧される被押圧部に相当し、第4スリット部19dが、押圧された状態を維持する被押圧状態維持部に相当する。
【0041】
また、4つの横移動支持部材16の係合部材20及び、2つの縦移動支持部材17の係合部材20をそれぞれ第3スリット部19a、21cに移動することにより、止水板11が屋内側且つ上側に移動してシール材15の圧縮が解除された解除状態となる。なお、止水板15の取り付け位置のズレなどにより、止水板11の移動により圧縮されるシール材15が、下枠6及び土間4との間にて圧縮されても構わない。
【0042】
本実施形態の止水装置1によれば、止水板11を支持する支持部材12のうちの縦移動支持部材17の、屋内固定部材18及び縦止水板固定部材21と係合している係合部材20を屋内固定部材18の第1スリット部18aに沿って移動させ、縦止水板固定部材21の壁部21eを押圧することにより、止水板11を下方に移動させてシール材15を圧縮して止水することが可能であり、さらに、係合部材20を第2スリット部18bに沿って移動し縦止水板固定部材21の第4スリット部21dに移動することにより、止水板11と下枠6との間を水密に維持することが可能となる。
【0043】
また、止水板11を支持する支持部材12のうちの横移動支持部材16の、屋内固定部材18及び横止水板固定部材19と係合している係合部材20を屋内固定部材18の第1スリット部18aに沿って移動させ、横止水板固定部材19の壁部19eを押圧することにより、止水板11を移動させてシール材15を圧縮して止水することが可能であり、さらに、係合部材20を第2スリット部18bに沿って移動し横止水板固定部材19の第4スリット部19dに移動することにより、止水板11と縦枠7との間を水密に維持することが可能となる。
【0044】
このため、止水板11の取り付けとともに、シール材15を圧縮して止水することができるので、取り付けが容易であり、止水性に優れた止水装置1を提供することが可能である。
【0045】
また、第3スリット部19c、21cに係合した係合部材20を、第1スリット部18aに沿って移動させ、当該第3スリット部19c、21cの端をなす壁部19e、21eを押圧するだけで、止水板11を移動させてシール材15を容易に圧縮することが可能であり、その係合部材20を第3スリット部19c、21cと繋がった第4スリット部19d、21dに移動するだけで、シール材15を圧縮した状態を容易に維持させることが可能となる。このため、取り付けの作業性に優れた止水装置1を提供することが可能となる。
【0046】
また、係合部材20において円柱状をなす本体部20aの先端には拡径部20bが設けられており、その外径は挿通されている第1スリット部18a及び第2スリット部18bの幅より大きく、第1スリット部18a及び第2スリット部18bの、横止水板固定部材19及び縦止水板固定部材21の反対側に位置しているので、第1スリット部18a及び第2スリット部18bに挿通されている係合部材20が横止水板固定部材19または縦止水板固定部材21側に抜けて外れることはない。このため、より容易に取り付けることが可能な止水装置1を提供することが可能となる。
【0047】
上記実施形態においては、係合部材20の本体部20a及び拡径部20bを円柱状とし、把持部20cを球状としたが、これに限らず、第1~第4スリット部18a、18b、19c、19d、21c、21dに押通可能な棒状の部材であれば構わない。
【0048】
また、止水板11を枠体3に向かう方向に押圧する横移動支持部材16と、下方に押圧する縦移動支持部材17とを有しているので、横移動支持部材16及び縦移動支持部材17の係合部材20を移動させることにより、止水板11に設けられたシール材15を左右の縦枠7及び下枠6との間で圧縮させることが可能となる。
【0049】
また、上記実施形態においては、止水板11を枠体3側及び下側に移動させて、縦枠7との間、及び、下枠6との間にてシール材15を圧縮する例について説明したが、これに限るものではない。例えば、図7(a)、図7(b)に示すように、下枠6が屋内側の床面4aよりも上方に突出している見付け面を有している場合には、縦移動支持部材17を用いることなく、4つの横移動支持部材16だけで、止水板11を枠体3側に移動させてシール材15を圧縮する構成であっても構わない。すなわち、縦枠7と止水縦枠部13aとの間、及び、下枠6と止水下枠部13bとの間にてシール材15を圧縮して、止水装置1により屋内への水の浸入を防止しても構わない。
【0050】
また、上記実施形態においては、止水板11を止水枠部13とシート材14とで構成した例について説明したが、これに限らず、例えば、止水板11は、1枚の板状の部材で形成されていても構わない。
【0051】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0052】
本実施形態には、少なくとも以下の発明が含まれる。
態様1:屋内外の境界に設けられる開口を形成する枠体の屋内側に設けられる止水装置であって、前記枠体が有する左右の縦枠と見込み方向に対向する左右の縦枠対向部、及び、前記枠体が有する下枠または屋内の下面と対向する下部対向部と、を有して前記開口を覆う止水板と、前記縦枠対向部と前記下部対向部とにそれぞれ設けられるシール材と、前記枠体の屋内側にて互いに対向する左右の屋内壁面に取り付けられて、前記止水板を支持する支持部材と、を有し、前記支持部材は、前記屋内壁面に固定される屋内固定部材と、前記止水板に固定される止水板固定部材と、前記屋内固定部材及び前記止水板固定部材と係合する係合部材と、を有し、前記屋内固定部材は、前記係合部材の移動を案内する案内部を有し、前記止水板固定部材は、前記係合部材が前記案内部に沿って移動して所定方向に押圧される被押圧部と、押圧された状態を維持する被押圧状態維持部と、を有し、前記係合部材が前記止水板固定部材を押圧することにより、前記止水板を移動させて前記シール材を圧縮して止水することを特徴とする止水装置である。
【0053】
態様1の止水装置によれば、止水板を支持する支持部材の、屋内固定部材及び止水板固定部材と係合している係合部材を屋内固定部材の案内部に沿って移動させ、止水板固定部材の被押圧部を押圧することにより、止水板を移動させてシール材を圧縮して止水することが可能であり、また、係合部材を止水板固定部材の被押圧状態維持部に移動することにより、止水板により止水する状態を維持させることが可能となる。このため、止水板の取り付けとともに、シール材を圧縮して止水することができるので、止水装置の取り付けが容易であり、止水性に優れた止水装置を提供することが可能である。
【0054】
態様2:態様1に記載の止水装置であって、前記案内部は、前記所定方向に沿う第1スリット部と、前記第1スリット部の端と繋がって当該第1スリット部と交差する方向に延びる第2スリット部でなり、前記止水板固定部材は、前記所定方向に沿う第3スリット部と、前記第3スリット部と繋がって当該第3スリット部と交差する方向に延びる第4スリット部とを有し、前記被押圧部は、前記止水板固定部材が有する前記第3スリット部の端をなす壁部であり、前記被押圧状態維持部は、前記第4スリット部であることを特徴とする。
【0055】
態様2の止水装置によれば、第3スリット部に係合した係合部材を、案内部をなす第1スリット部に沿って移動させ、当該第3スリット部の端をなす壁部を押圧することにより、止水板を移動させてシール材を容易に圧縮することが可能であり、その係合部材を第3スリット部と繋がった第4スリット部でなる被押圧状態維持部に移動することにより、シーツ材を圧縮した状態を容易に維持させることが可能となる。このため、取り付けの作業性に優れた止水装置を提供することが可能となる。
【0056】
態様3:態様2に記載の止水装置であって、前記係合部材は、前記第1スリット部及び前記第3スリット部または前記第2スリット部及び前記第4スリット部を挿通可能な棒状部材であり、前記棒状部材は、前記第1スリット部及び前記第2スリット部の幅より大きな先端部を有し、前記先端部は、前記案内部の、前記止水板固定部材と反対側に位置することを特徴とする。
【0057】
態様3の止水装置によれば、棒状部材でなる係合部材の先端部は、挿通されている第1スリット部及び第2スリット部の幅より大きく、案内部の、止水板固定部材と反対側に位置しているので、案内部に挿通されている係合部材が止水板固定部材側に抜けて外れることはない。このため、より容易に取り付けることが可能な止水装置を提供することが可能となる。
【0058】
態様4:態様1乃至態様3のいずれかに記載の止水装置であって、前記支持部材は、前記所定方向が前記枠体に向かう方向である横移動支持部材と、前記所定方向が下方である縦移動支持部材と、を有することを特徴とする。
【0059】
態様4の止水装置によれば、枠体に向かう方向に押圧する横移動支持部材と、下方に押圧する縦移動支持部材とを有しているので、横移動支持部材及び縦移動支持部材の係合部材を移動させることにより、止水板に設けられたシール材を左右の縦枠との間及び下面との間で圧縮させることが可能となる。
【0060】
態様5:態様1乃至態様3のいずれかに記載の止水装置であって、前記支持部材は、前記所定方向が前記枠体に向かう方向であることを特徴とする。
【0061】
態様5の止水装置によれば、枠体に向かう方向に押圧する横移動支持部材を有しているので、横移動支持部材の係合部材を移動させることにより、止水板に設けられたシール材を左右の縦枠及び下枠との間で圧縮させることが可能となる。
【符号の説明】
【0062】
1 止水装置、2a 開口、3 枠体、4 土間(下面)、7 縦枠、
8 扉(障子)、11 止水板、12 支持部材
13b 止水下枠部(下部対向部)、15 シール材、
16 横移動支持部材、17 縦移動支持部材、18 屋内固定部材、
18a 第1スリット部(案内部)、18b 第2スリット部(案内部)、
19 横止水板固定部材、19d 第4スリット部(被押圧状態維持部)、
19e 壁部(被押圧部)、20 係合部材、21 縦止水板固定部材、
21d 第4スリット部(被押圧状態維持部)、21e 壁部(被押圧部)、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7