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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123584
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】計測装置及び計測方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
A61B5/02 310B
A61B5/02 310V
A61B5/02 310F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031127
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】小磯 久
(72)【発明者】
【氏名】中川 直之
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA09
4C017AA10
4C017AB02
4C017AC28
4C017BC11
4C017BD04
4C017CC02
(57)【要約】
【課題】カメラを利用して有用なバイタル情報を取得する。
【解決手段】計測装置10は、ユーザの第1部位からの可視光波長を有する第1光線12Aと、ユーザの第1部位とは異なる第2部位からの赤外波長を有する第2光線14Aとのうちの一方の光線を透過し、他方の光線を反射するよう構成される光学素子20と、光学素子20を透過した一方の光線および光学素子20で反射した他方の光線が入射する位置に配置され、可視光フィルタが設けられる複数の画素と、赤外光フィルタが設けられる複数の画素とを備える撮像センサ24と、撮像センサ24の出力信号を用いて、ユーザの第1部位の可視光画像及び第2部位の赤外光画像を生成する画像生成部と、可視光画像に基づくユーザの第1部位のバイタル情報と、赤外光画像に基づくユーザの第2部位のバイタル情報と、を生成するバイタル情報生成部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの第1部位からの可視光波長を有する第1光線と、前記ユーザの前記第1部位とは異なる第2部位からの赤外波長を有する第2光線とのうちの一方の光線を透過し、他方の光線を反射するよう構成される光学素子と、
前記光学素子を透過した前記一方の光線および前記光学素子で反射した前記他方の光線が入射する位置に配置され、可視光フィルタが設けられる複数の画素と、赤外光フィルタが設けられる複数の画素とを備える撮像センサと、
前記撮像センサの出力信号を用いて、前記ユーザの前記第1部位の可視光画像及び前記第2部位の赤外光画像を生成する画像生成部と、
前記可視光画像に基づく前記ユーザの前記第1部位のバイタル情報と、前記赤外光画像に基づく前記ユーザの前記第2部位のバイタル情報と、を生成するバイタル情報生成部と、
を備える、計測装置。
【請求項2】
前記第1部位のバイタル情報及び前記第2部位のバイタル情報に基づいて前記ユーザの状態の診断を補助する数値を算出する算出部をさらに備える、請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記バイタル情報は、脈波信号であり、前記補助する数値は、脈波伝播速度である、請求項2に記載の計測装置。
【請求項4】
ユーザの第1部位からの可視光波長を有する第1光線と、前記ユーザの前記第1部位とは異なる第2部位からの赤外波長を有する第2光線とのうちの一方の光線を透過し、他方の光線を反射するよう構成される光学素子を透過した前記一方の光線および前記光学素子で反射した前記他方の光線が入射する位置に配置され、可視光フィルタが設けられる複数の画素と、赤外光フィルタが設けられる複数の画素とを備える撮像センサが、前記透過した一方の光線及び前記反射した他方の光線を撮像するステップと、
前記撮像センサの出力信号を用いて、前記ユーザの前記第1部位の可視光画像及び前記第2部位の赤外光画像を生成するステップと、
前記可視光画像に基づいて前記ユーザの前記第1部位のバイタル情報を生成するステップと、
前記赤外光画像に基づいて前記ユーザの前記第2部位のバイタル情報を生成するステップと、
を備える、計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザの身体情報を取得可能なウェアラブル機器が一般的に用いられている。例えば、ユーザを撮影して動画像を取得するカメラと、ユーザのバイタル情報を計測するバイタル情報計測機器とを備え、カメラにより取得された動画像とバイタル情報計測機器で計測されたバイタル情報とに基づいて、ユーザの体調に異常があるかどうかを判断するウェアラブル機器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-146847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、動画像とバイタル情報とを取得するためにカメラとは別に計測機器を設ける必要があるため、コストがかかるという課題がある。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、カメラを利用して有用なバイタル情報を取得する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の計測装置は、ユーザの第1部位からの可視光波長を有する第1光線と、前記ユーザの前記第1部位とは異なる第2部位からの赤外波長を有する第2光線とのうちの一方の光線を透過し、他方の光線を反射するよう構成される光学素子と、前記光学素子を透過した前記一方の光線および前記光学素子で反射した前記他方の光線が入射する位置に配置され、可視光フィルタが設けられる複数の画素と、赤外光フィルタが設けられる複数の画素とを備える撮像センサと、前記撮像センサの出力信号を用いて、前記ユーザの前記第1部位の可視光画像及び前記第2部位の赤外光画像を生成する画像生成部と、前記可視光画像に基づく前記ユーザの前記第1部位のバイタル情報と、前記赤外光画像に基づく前記ユーザの前記第2部位のバイタル情報と、を生成するバイタル情報生成部と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様は、計測方法である。この方法は、ユーザの第1部位からの可視光波長を有する第1光線と、前記ユーザの前記第1部位とは異なる第2部位からの赤外波長を有する第2光線とのうちの一方の光線を透過し、他方の光線を反射するよう構成される光学素子を透過した前記一方の光線および前記光学素子で反射した前記他方の光線が入射する位置に配置され、可視光フィルタが設けられる複数の画素と、赤外光フィルタが設けられる複数の画素とを備える撮像センサが、前記透過した一方の光線及び前記反射した他方の光線を撮像するステップと、前記撮像センサの出力信号を用いて、前記ユーザの前記第1部位の可視光画像及び前記第2部位の赤外光画像を生成するステップと、前記可視光画像に基づいて前記ユーザの前記第1部位のバイタル情報を生成するステップと、前記赤外光画像に基づいて前記ユーザの前記第2部位のバイタル情報を生成するステップと、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カメラを利用して有用なバイタル情報を取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る計測装置を備えるウェアラブル端末の模式図である。
図2】実施の形態に係る計測装置の構成を模式的に示す図である。
図3】波長フィルタの構成の一例を模式的に示す図である。
図4】実施の形態に係る処理部の機能ブロック図である。
図5】実施の形態に係る計測装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図6】変形例に係る計測装置の構成を模式的に示す図である。
図7】波長フィルタの構成の別の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。かかる実施の形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、図面において、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
本実施の形態の概要を説明する。本実施の形態は、ユーザの第1部位からの可視光線と、ユーザの第1部位とは異なる第2部位からの赤外光線とのうちの一方の光線を透過し、他方の光線を反射するよう構成される光学素子と、光学素子を透過した一方の光線および光学素子で反射した他方の光線が入射する位置に配置され、可視光フィルタが設けられる複数の画素と、赤外光フィルタが設けられる複数の画素とを備える撮像センサと、撮像センサの出力信号を用いて、ユーザの第1部位の可視光画像及び第2部位の赤外光画像を生成する画像生成部と、赤外光画像に基づいてユーザの第2部位のバイタル情報を生成するバイタル情報生成部と、を備える。本実施形態によれば、光学素子を透過した可視光線と赤外光線とのうちの一方の光線と、光学素子で反射した他方の光線とを波長で分離することにより、1台の撮像部を用いてユーザの第1部位の可視光画像と赤外光画像による第2部位のバイタル情報を同時に取得することができる。
【0013】
図1は、実施の形態に係る計測装置10を備えるウェアラブル端末16を模式的に示す図である。図2は、実施の形態に係る計測装置10の構成を模式的に示す図である。本実施形態のウェアラブル端末16は、例えば、ユーザ18に装着される携帯型の情報処理装置である。本実施形態のウェアラブル端末16は、スマートウォッチである。ここで、ウェアラブル端末16は、スマートフォンやタブレット端末であってもよい。ウェアラブル端末16は、第1面37と、第1面37とは異なる第2面38を備える。第1面37は、ウェアラブル端末16の表示面である。第2面38は、ウェアラブル端末16の表示面とは反対側の裏面であり、ユーザ18と接触する人体接触面である。ここで、第1面37は、ウェアラブル端末16の表示面でなくとも、人体接触面以外の面であればよい。ウェアラブル端末16がスマートフォンである場合、図示しないベルトなどの固定具を用いることでスマートフォンをユーザ18に接触させるように固定してもよい。
【0014】
計測装置10は、ウェアラブル端末16に内蔵される。計測装置10は、ユーザ18の第1部位(例えば、顔)から入射する第1光線12Aに基づく可視光画像を生成し、ユーザの第1部位とは異なる第2部位(例えば、手首)から入射する第2光線14Aに基づくバイタル情報を生成するように構成される。より具体的には、第2部位は、例えば、手首のうち手の甲側、または手首のうち手の平側のいずれかである。第1光線12Aは、ウェアラブル端末16の第1面37から計測装置10に入射する。第1光線12Aは、例えば、ユーザの第1部位内で反射された光線(例えば、太陽光)である。第2光線14Aは、ウェアラブル端末16の第2面38から計測装置10に入射する。第2光線14Aは、例えば、照明装置40から照射されてウェアラブル端末16の第2面38と接触しているユーザの第2部位内で反射された光線である。
【0015】
図面において、ウェアラブル端末16としてのスマートウォッチの表示面側(第1面37側)を+z方向(前方向)とし、裏面側(第2面38側)を-z方向(後方向)としている。z方向に垂直な方向をx方向とし、x方向及びz方向に垂直な方向をy方向とする。これらの方向は、実施の形態の理解を助けるために便宜上設定されるものであり、計測装置10の使用時における方向を何ら制限するものではない。
【0016】
計測装置10は、光学素子20と、撮像部22と、処理部48と、を備える。光学素子20は、可視光を選択的に透過し、赤外光を選択的に反射するよう構成される。光学素子20は、例えば、ダイクロイックミラーである。光学素子20は、例えば、誘電体多層膜ミラーである。光学素子20には、可視光波長を有する第1光線12A及び赤外波長を有する第2光線14Aが入射する。第1光線12Aに含まれる可視光波長成分は、光学素子20を透過して撮像部22に入射する。第1光線12Aに含まれる赤外波長成分は、光学素子20で反射するため撮像部22に入射しない。第2光線14Aに含まれる赤外波長成分は、光学素子20で反射して撮像部22に入射する。第2光線14Aに含まれる可視光波長成分は、光学素子20を透過するため撮像部22に入射しない。光学素子20は、光学素子20を透過した可視光線12Bの光軸と、光学素子20で反射した赤外光線14Bの光軸とが一致する向きで配置される。
【0017】
撮像部22は、光学素子20を透過する可視光線12Bが入射し、かつ、光学素子20で反射する赤外光線14Bが入射する位置に配置される。したがって、撮像部22は、光学素子20を透過する可視光線12Bの可視光画像を生成するとともに、光学素子20で反射する赤外光線14Bの赤外光画像を生成する。撮像部22は、撮像センサ24と、波長フィルタ26と、レンズ28とを含む。撮像部22は、生成した可視光画像及び赤外光画像を処理部48に供給する。
【0018】
撮像センサ24は、可視光線12Bおよび赤外光線14Bを撮像するための複数の画素を備える。撮像センサ24の複数の画素は、二次元アレイ状に配置される。撮像センサ24は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの二次元画像センサである。
【0019】
波長フィルタ26は、撮像センサ24の前面に設けられる。波長フィルタ26は、撮像センサ24の複数の画素のそれぞれに対応して配置される複数のフィルタを有する。複数のフィルタは、撮像センサ24の複数の画素と同様に二次元アレイ状に配置される。
【0020】
レンズ28は、波長フィルタ26の前面に設けられる。レンズ28は、撮像部22に入射する可視光線12Bおよび赤外光線14Bを撮像センサ24の受光面に結像させるよう構成される。レンズ28は、一以上の任意の数の光学レンズを含むことができる。
【0021】
図3は、波長フィルタ26の構成の一例を模式的に示す図である。波長フィルタ26は、赤色光を透過する複数の赤色フィルタ44R(または赤色フィルタR)と、緑色光を透過する複数の緑色フィルタ44G(または緑色フィルタG)と、青色光を透過する複数の青色フィルタ44B(または青色フィルタB)と、赤外波長を透過する複数の赤外光フィルタ46(または赤外光フィルタN)とを備える。赤外光フィルタ46(または赤外光フィルタN)は例えば、近赤外波長を透過する。赤色フィルタ44R、緑色フィルタ44G、青色フィルタ44Bおよび赤外光フィルタ46は、例えば、撮像センサ24の複数の画素に対応するようにベイヤ配列で配置される。この場合、撮像センサ24は、赤色フィルタ44Rが設けられる複数の第1画素と、緑色フィルタ44Gが設けられる複数の第2画素と、青色フィルタ44Bが設けられる複数の第3画素と、赤外光フィルタ46が設けられる複数の第4画素とを備える。
【0022】
計測装置10は、筐体30を備えてもよい。筐体30は、光学素子20および撮像部22を内部に収容する。筐体30は、第1光線12Aが入射する第1入射口32と、第2光線14Aが入射する第2入射口34とを有する。第1入射口32は、筐体30の前面36に設けられ、第2入射口34は、筐体30の前面36とは反対側の面に設けられる。第1入射口32は、例えば、撮像部22の前方に配置される。第2入射口34は、例えば、撮像部22の後方に配置される。
【0023】
計測装置10は、筐体30の内部に収容される追加の光学素子をさらに備えてもよい。計測装置10は、第1入射口32と光学素子20の間に配置され、第1光線12Aの光路を折り返すための追加のミラーを備えてもよい。計測装置10は、第2入射口34と光学素子20の間に配置され、第2光線14Aの光路を折り返すための追加のミラーを備えてもよい。計測装置10は、光学素子20と撮像部22の間に配置され、光学素子20から撮像部22に向かう可視光線12Bおよび赤外光線14Bの光路を折り返すための追加のミラーを備えてもよい。
【0024】
計測装置10は、照明装置40をさらに備えてもよい。照明装置40は、計測装置10の測定対象に赤外照明光42を照射するよう構成される。照明装置40は、例えば、赤外照明光42を生成するためのLED(Light Emitting Diode)などの光源と、照明光の照度分布や配向などを調整するための図示しない光学素子とを備える。照明装置40は、例えば、測定対象に向けて赤外照明光42を照射するよう構成され、第2光線14Aの入射方向とは反対側に向けて赤外照明光42を照射する。照明装置40は、例えば、ウェアラブル端末16に触れているユーザの第2部位である手首に向けて赤外照明光42を照射するよう構成される。照明装置40が照射する赤外照明光42は、ユーザの第2部位内で反射されて第2光線14Aとして計測装置10に入射する。本構成によると、第2部位のバイタル情報をより精度良く検出することが可能となる。赤外照明光42は、近赤外波長を有することが好ましい。
【0025】
図4は、実施の形態に係る処理部48の機能ブロック図である。処理部48は、画像生成部101と、画像認識部102と、バイタル情報生成部103と、算出部104と、出力部105と、を備える。バイタル情報生成部103は、第1バイタル情報生成部103Aと、第2バイタル情報生成部103Bと、を備える。本実施形態において示される各機能ブロックは、例えば、ハードウェアおよびソフトウェアの連携によって実現されうる。処理部48のハードウェアは、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサおよびROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリをはじめとする素子や機械装置で実現される。処理部48のソフトウェアは、コンピュータプログラム等によって実現される。
【0026】
画像生成部101は、撮像センサ24の出力信号を用いて、可視光画像及び赤外光画像を生成する。つまり、画像生成部101は、撮像時刻が同期した可視光画像と赤外光画像とを生成する。画像生成部101は、撮像センサ24の出力信号における画素のうち、赤色フィルタ44Rと、緑色フィルタ44Gと、青色フィルタ44Bと、に対応した画素のみを抽出して可視光画像を生成する。画像生成部101は、撮像センサ24の出力信号における画素のうち、赤外光フィルタ46に対応した画素のみを抽出して可視光画像を生成する。
【0027】
画像認識部102は、画像生成部101によって生成された可視光画像に基づいて、公知の画像認識手法により第1部位の画像認識を行う。例えば第1部位が顔である場合、画像認識部102は、可視光画像に人間の顔が存在するか否かの認識を行う。画像認識部102は、可視光画像においてユーザの顔などの対象部位が認識できた場合、対象部位検出信号を第1バイタル情報生成部103A及び第2バイタル情報生成部103Bに供給する。ここで、画像認識部102は、可視光画像に、予め登録してあるユーザの顔画像が写っているかどうかを認識し、認識できた場合にのみ対象部位検出信号を供給してもよい。
【0028】
第1バイタル情報生成部103Aは、可視光画像の第1部位に相当する画素の輝度値の時間変化に基づいて第1部位において心臓の脈動に伴って変化する血管の容量変化を時系列に検出することにより、第1部位の第1脈波信号を生成する。ここで、動脈の血液内には酸化ヘモグロビンが存在し、酸化ヘモグロビンは入射光を吸収する特性がある。酸化ヘモグロビンによる光の吸収量の変化量は心臓の脈動に伴って変化する血流量(血管の容量変化)に対応する。第1バイタル情報生成部103Aは、例えば、緑色光の帯域において血中の酸化ヘモグロビンが高い吸光特性を持つことを利用し、生成した可視光画像のRGB(赤、緑、青)の輝度値のうちG(緑)の輝度値の時間変化に基づいて第1部位の第1脈波信号を生成する。第1バイタル情報生成部103Aは、R(赤)やB(青)の輝度値に基づいて第1脈波信号を生成してもよい。第1バイタル情報生成部103Aは、画像認識部102から対象部位検出信号が供給されたことに応答して、第1脈波信号を生成する。本実施形態の第1脈波信号は、第1部位のバイタル情報の一例である。
【0029】
第2バイタル情報生成部103Bは、赤外光画像の第2部位に相当する画素の輝度値の時間変化に基づいて第2部位において心臓の脈動に伴って変化する血管の容量変化を時系列に検出することにより、第2部位の第2脈波信号を生成する。第2バイタル情報生成部103Bは、赤外光画像のうちの予め定められた一部領域(例えば中央付近)の画素の輝度値に基づいて第2脈波信号を生成してもよい。第2バイタル情報生成部103Bは、赤外光画像の全画素の輝度値に基づいて第2脈波信号を生成してもよい。第2バイタル情報生成部103Bは、画像認識部102から対象部位検出信号が供給されたことに応答して、第2脈波信号を生成する。本実施形態の第2脈波信号は、第2部位のバイタル情報の一例である。
【0030】
算出部104は、生成した第1脈波信号及び第2脈波信号に基づいて、動脈硬化指標として用いられる脈波伝播速度(PWV:Pulse Wave Velocity)を算出する。具体的には、算出部104は、第1脈波信号及び第2脈波信号の各振幅のピークとなるタイミングから顔及び手首の2カ所の脈拍を求め、2点間の距離と時間差とから脈波伝播速度を算出する。脈波伝播速度の算出手法は、公知であるため、その詳細な説明は省略する。ここで、脈波伝播速度の算出に用いる2点間の距離とは、顔から手首までの距離であり、例えば予め登録しておく。本実施形態の脈波伝播速度は、ユーザの状態の診断を補助する数値の一例である。
【0031】
出力部105は、生成した脈波伝播速度を出力する。例えば、出力部105は、脈波伝播速度をウェアラブル端末16のディスプレイ(不図示)に表示させることができる。出力部105は、ウェアラブル端末16のスピーカ(不図示)を用いて脈波伝播速度を音声出力してもよい。出力部105は、第1脈波信号及び第2脈波信号を、図示しないスマートフォンなどの他の装置に出力してもよい。
【0032】
計測装置10は、第1部位(例えば、顔)から入射する第1光線12Aに基づく赤外光画像を生成し、第2部位(例えば、手首)から入射する第2光線14Aに基づく可視光画像を生成するように構成されてもよい。この場合、光学素子20は、赤外光を選択的に透過し、可視光を選択的に反射するよう構成される。この場合、画像認識部102は、画像生成部101によって生成された赤外光画像に基づいて、画像認識を行う。この場合、照明装置40は、ユーザの第2部位に緑色の照明光を照射する。この場合、第1バイタル情報生成部103Aは、赤外光画像に基づいて第1部位の第1脈波信号を生成し、第2バイタル情報生成部103Bは、可視光画像に基づいて第2部位の第2脈波信号を生成する。
【0033】
図5は、実施の形態に係る計測装置10の処理S100の一例を示すフローチャートである。
【0034】
撮像センサ24は、可視光線12Bと赤外光線14Bとを撮像し、その出力信号を画像生成部101に供給する(ステップS101)。画像生成部101は、撮像センサ24の出力信号を用いて、可視光画像及び赤外光画像を生成する(ステップS103)。次に、画像認識部102は、可視光画像に基づいて、対象部位を認識できたか否かを判定する(ステップS105)。対象部位を認識できた場合(ステップS105のYes)、ステップS107に進む。対象部位を認識できない場合(ステップS105のNo)、ステップS101の処理に戻る。
【0035】
対象部位を認識できた場合(ステップS105のYes)、第1バイタル情報生成部103Aは可視光画像に基づき第1部位の第1脈波信号を生成する(ステップS107)。第2バイタル情報生成部103Bは赤外光画像に基づき第2部位の第2脈波信号を生成する(ステップS109)。ステップS107とステップS109の処理の順番は入れ替わってもよい。また、ステップS105及びステップS107の処理は省略されてもよい。
【0036】
算出部104は、第1脈波信号及び第2脈波信号に基づいて、診断を補助する数値として脈波伝播速度を算出する(ステップS111)。出力部105は、生成した脈波伝播速度を出力し(ステップS113)、処理部48は処理S100を終了する。ステップS111及びステップS113の処理は省略されてもよい。
【0037】
本実施形態の計測装置10では、撮像センサ24は、光学素子20を透過した可視光線12Bおよび光学素子20で反射した赤外光線14Bが入射する位置に配置され、可視光フィルタが設けられる複数の画素と、赤外光フィルタが設けられる複数の画素とを備える。計測装置10は、撮像センサ24の出力信号を用いて、ユーザの第1部位の可視光画像及び第2部位の赤外光画像を生成する画像生成部101と、可視光画像に基づく第1部位のバイタル情報と、赤外光画像に基づくユーザの第2部位のバイタル情報と、を生成するバイタル情報生成部103と、を備える。本構成によると、単一の撮像部22を用いて、可視光線12Bによる第1部位のバイタル情報と赤外光線14Bによる第1部位とは別の第2部位のバイタル情報とを取得することができる。そのため、第1部位のバイタル情報と第2部位のバイタル情報とを別々の計測機器を用いて取得する場合に比べて、コストを低減することができる。
【0038】
本実施形態では、算出部104は、第1部位のバイタル情報及び第2部位のバイタル情報に基づいてユーザの状態の診断を補助する数値を算出する。本構成によると、単一の撮像部22を用いて第1部位のバイタル情報及び第2部位のバイタル情報を同期したタイミングで生成することができるため、より精度良くユーザの状態の診断を行うことが可能となる。
【0039】
本実施形態では、バイタル情報は、脈波信号であり、ユーザの状態の診断を補助する数値は、脈波伝播速度である。本構成によると、ユーザの2箇所の部分における脈波を精度良く把握することが可能となるため、脈波伝播速度を精度良く把握することができる。その結果、動脈硬化等を精度良く判断することが可能となる。
【0040】
図6は、変形例に係る計測装置10の構成を模式的に示す図である。変形例では、計測装置10の配置の前後関係が上述の実施形態とは逆になっている。本変形例について、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付し、上述の実施形態との相違点を中心に説明し、共通点については適宜説明を省略する。
【0041】
計測装置10は、光学素子20と、撮像部22と、処理部48と、を備える。光学素子20、撮像部22及び処理部48は、上述の実施形態と同様に構成される。光学素子20は、可視光を選択的に反射し、赤外光を選択的に透過するよう構成される。撮像部22は、光学素子20で反射した可視光線12Bが入射し、光学素子20を透過した赤外光線14Bが入射する位置に配置される。撮像部22は、光学素子20で反射した可視光線12Bの可視光画像を撮像するとともに、光学素子20を透過した赤外光線14Bの赤外光画像を撮像する。
【0042】
本変形例では、第1光線12Aに含まれる可視光成分は、光学素子20を反射して撮像部22に入射する。第1光線12Aに含まれる赤外光成分は、光学素子20を透過するため撮像部22に入射しない。第2光線14Aに含まれる赤外光成分は、光学素子20を透過して撮像部22に入射する。第2光線14Aに含まれる可視光成分は、光学素子20で反射するため撮像部22に入射しない。したがって、上記の実施形態及び本変形例をまとめると、光学素子20は、可視光線と赤外光線とのうちの一方の光線を透過し、他方の光線を反射するよう構成される。
【0043】
図7は、波長フィルタ26の構成の別の一例を模式的に示す図である。ここで、第1バイタル情報生成部102Aは、可視光画像のG(緑)の輝度値のみがあれば第1脈波情報を生成することができる。そのため、波長フィルタ26は、緑色光及び赤外光のみを透過できるように、複数の緑色フィルタ44Gと複数の赤外光フィルタ46とが画素ごとに交互に配置されるように構成されてもよい。この場合、画像生成部101は、撮像センサ24の出力信号における画素のうち、緑色フィルタ44Gに対応した画素のみを抽出して可視光画像を生成する。
【0044】
ウェアラブル端末16を複数用意し、これらのウェアラブル端末16同士で通信して同期しながら各測定箇所において光強度を測定することにより、例えば、3カ所以上で脈波信号を同時に取得してもよい。
【0045】
計測装置10は、ユーザの第1部位(顔など)に可視光を照射する追加の照明装置を備えてもよい。追加の照明装置は、ユーザの第1部位に緑色の照明光を照射してもよい。
【0046】
実施形態では、例えば、ユーザ18によって装着される携帯型の情報処理装置であるウェアラブル端末16を用いた例を挙げたが、これに限定されず、スマートフォン、タブレット端末、ヘッドマウントディスプレイなど、人体と接触しながら使用される携帯型の情報処理装置であってもよいし、携帯型のものでなくてもよい。
【0047】
実施形態では、バイタル情報は脈波信号としたが、これに限定されない。バイタル情報は、酸素飽和度、血管弾性、血管年齢、血圧、体温などであってもよい。
【0048】
図2及び図6では、照明装置40及び処理部48は、筐体30外に設けられているが、筐体30内に設けられてもよい。また、照明装置40及び処理部48は、ウェアラブル端末16とは別の装置に設けられていてもよい。
【0049】
実施形態では、処理部48は、画像認識部102を備えたが、これに限定されず、画像認識部102を備えなくてもよい。この場合、第1バイタル情報生成部103A及び第2バイタル情報生成部103Bは、それぞれ、ユーザの顔などの対象部位を認識できたか否かにかかわらず、第1脈波信号及び第2脈波信号を生成することができる。
【0050】
実施形態では、処理部48は、第1バイタル情報生成部103Aを備えたが、これに限定されず、第1バイタル情報生成部103Aを備えなくてもよい。この場合、第1部位の可視光画像は、第2部位のバイタル情報(第2脈波信号)と撮像時刻が同期した動画像として扱われてもよい。この場合、処理部48は、第2部位のバイタル情報(第2脈波信号)と、可視光画像におけるユーザの表情とを比較する比較部をさらに備えてもよい。例えば、第2脈波信号の示す脈拍数が所定の基準範囲外の異常値であり且つユーザの表情が苦しそうである場合、比較部はユーザの体調に異常がある旨の比較結果を生成する。比較部は、ユーザの表情が苦しそうであるか否かについて、例えば、予め記録した平常時のユーザの表情と可視光画像におけるユーザの表情との差に基づいて判断するなど、公知の技術を用いて判断すればよい。例えば、第2脈波信号の示す脈拍数が所定の基準範囲外の異常値であり且つユーザの表情が苦しそうではない場合、又は第2脈波信号の示す脈拍数が所定の基準範囲内の正常値であり且つユーザの表情が苦しそうである場合、比較部は、計測が正しく行われていない旨の比較結果を生成する。例えば、第2脈波信号の示す脈拍数が所定の基準範囲内の正常値であり且つユーザの表情が苦しそうではない場合、比較部は、ユーザの体調に異常がない旨の比較結果を生成する。出力部105は、上記の比較部の比較結果をウェアラブル端末16のディスプレイ(不図示)に表示させる等によって出力してもよい。
【0051】
また、出力部105は、可視光画像と第2脈波信号とをウェアラブル端末16のディスプレイ(不図示)に表示させる等によって出力してもよい。これにより、例えば、ユーザが第2脈波信号と可視光画像におけるユーザの表情とを比較することで、計測が適切に行われているかを確認することが可能となる。出力部105は、可視光画像と第2脈波信号とをウェアラブル端末16の外部の装置に送信することにより出力してもよい。
【0052】
さらに、処理部48は、第1バイタル情報生成部103Aを備えない場合には、算出部104を備えなくてもよい。
【0053】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、各表示例に示す構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。
【0054】
本開示は、SDGs(Sustainable Development Goals)の「すべての人に健康と福祉を」の実現に貢献し、ヘルスケア製品・サービスによる価値創出に寄与する事項を含む。
【符号の説明】
【0055】
10…計測装置、12A…第1光線、14A…第2光線、12B…可視光線、14B…赤外光線、16…ウェアラブル端末、20…光学素子、22…撮像部、24…撮像センサ、26…波長フィルタ、28…レンズ、30…筐体、32…第1入射口、34…第2入射口、40…照明装置、42…赤外照明光、101…画像生成部、102…画像認識部、103…バイタル情報生成部、104…算出部、105…出力部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7