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特開2024-123587着雪低減機器および着雪低減管状構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123587
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】着雪低減機器および着雪低減管状構造体
(51)【国際特許分類】
   E01F 9/40 20160101AFI20240905BHJP
【FI】
E01F9/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031135
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100194342
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】井口 優香
(72)【発明者】
【氏名】小森 敦
(72)【発明者】
【氏名】四方田 房男
【テーマコード(参考)】
2D064
【Fターム(参考)】
2D064AA22
2D064BA01
2D064CA02
2D064HA01
(57)【要約】
【課題】
鋼管柱上の着雪を低減して大きな塊のまま落雪することを防ぐと共に、耐候性の高い着雪低減機器、およびそれを管状構造体に備える着雪低減管状構造体を提供する。
【解決手段】
本発明は、管状構造体10の頂部曲面に固定して管状構造体10への着雪を低減可能な着雪低減機器1であって、管状構造体10の頂部曲面に固定するための複数の台座5と、複数の台座5のそれぞれに固定される板であって、降雪を当該板の端面にて分けるための少なくとも一つ雪切板7と、複数の台座5に固定される支持板3A,3Bと、支持板3A,3Bおよび雪切板7を覆うように支持板3A,3Bおよび雪切板7の一部または全部に接着されたシート形状の着雪低減材9とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状構造体の頂部曲面に固定して前記管状構造体への着雪を低減可能な着雪低減機器であって、
前記管状構造体の頂部曲面に固定するための複数の台座と、
前記複数の台座のそれぞれに固定される板であって、降雪を当該板の端面にて分けるための少なくとも一つの雪切板と、
前記複数の台座に固定される支持板と、
前記支持板および前記雪切板を覆うように前記支持板および前記雪切板の一部または全部に接着された、シート形状の着雪低減材と、
を備えることを特徴とする着雪低減機器。
【請求項2】
前記複数の台座のそれぞれは、前記頂部曲面に固定される底部と反対側に頂部を備えると共に、前記頂部に前記雪切板を立設しており、
前記複数の台座のそれぞれは、前記雪切板との固定部分から前記底部に至る第1の斜面および第2の斜面を備え、
前記支持板は、前記管状構造体の軸方向に延在し、前記複数の台座の前記第1の斜面および前記第2の斜面の少なくとも一方の斜面に固定されることを特徴とする請求項1に記載の着雪低減機器。
【請求項3】
前記着雪低減材の長さは前記雪切板の上部から前記管状構造体の外周の一部または全部を被覆可能な長さであることを特徴とする請求項1に記載の着雪低減機器。
【請求項4】
前記支持板は、主にシリコーンゴムから構成されることを特徴とする請求項1に記載の着雪低減機器。
【請求項5】
前記着雪低減材は、主にシリコーンゴムから構成されることを特徴とする請求項1に記載の着雪低減機器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の着雪低減機器の底面を、前記管状構造体の前記頂部曲面に固定した形態を有することを特徴とする着雪低減管状構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状構造物への着雪を低減可能な着雪低減機器、およびそれを管状構造体に備える着雪低減管状構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、線路上や道路上にある鋼管柱(ビームや梁)では、冬の間、降雪により積雪が発生し、その後の大規模な落雪および落氷により交通障害が起きている。特に、豪雪地域においては、道路上方に設置されている道路標識や鋼管ビーム上に積雪して固化すると、日中の気温上昇によりそれが大きな塊りのまま路面や走行中の車輌上に落下して事故につながるおそれがある。
【0003】
このような落雪および落氷による事故を防ぐ方法として、例えば、標識板を設置する標識設置柱において、標識板を車道の上に支持する横支柱部上に雪庇防止具を配設する方法が知られている(特許文献1を参照。)。かかる雪庇防止具は、発泡スチロールよりなり、一対の傾斜部と底部とを有する傾斜部材と、傾斜部材の底部に配設され磁石を含むシート状部材と、磁力を利用して傾斜部材を横支柱部に固定する固定部材と、傾斜部材の傾斜部に対応して設けられたポリウレタン樹脂よりなる被覆層とを備え、従来よりも簡単かつ短期間で取り付けることができるという長所を有する。
【0004】
また、屋根部材が道路標識を覆うように、該道路標識の上方に支柱を介して設置された着雪防止構造も知られている(特許文献2を参照。)。この着雪防止構造において、屋根部材は、屋根面が枠体フレームに張設された膜材で構成され、支柱との間に設けられた振れ角規制部材により振れ角が規制された状態で、支柱に取付支点を介して揺動可能に支持されている。このような着雪防止構造により、簡易な構造でかつ耐久性があり、着雪した氷雪を効率よく除雪できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-139302号公報
【特許文献2】特開2001-323421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の従来の方法では、鋼管柱上の着雪を低減する効果が必ずしも十分ではない。また、長期の使用に伴い日光の作用による劣化を防ぐことが難しい。
【0007】
本発明は、鋼管柱上の着雪を低減して大きな塊のまま落雪することを防ぐと共に、耐候性の高い着雪低減機器、およびそれを管状構造体に備える着雪低減管状構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る着雪低減機器は、
管状構造体の頂部曲面に固定して前記管状構造体への着雪を低減可能な着雪低減機器であって、
前記管状構造体の頂部曲面に固定するための複数の台座と、
前記複数の台座のそれぞれに固定される板であって、降雪を当該板の端面にて分けるための少なくとも一つの雪切板と、
前記複数の台座に固定される支持板と、
前記支持板および前記雪切板を覆うように前記支持板および前記雪切板の一部または全部に接着された、シート形状の着雪低減材と、を備える。
(2)別の実施形態に係る着雪低減機器において、好ましくは、
前記複数の台座のそれぞれは、前記頂部曲面に固定される底部と反対側に頂部を備えると共に、前記頂部に前記雪切板を立設しており、
前記複数の台座のそれぞれは、前記雪切板との固定部分から前記底部に至る第1の斜面および第2の斜面を備え、
前記支持板は、前記管状構造体の軸方向に延在し、前記複数の台座の前記第1の斜面および前記第2の斜面の少なくとも一方の斜面に固定されるようにしてもよい。
(3)別の実施形態に係る着雪低減機器において、好ましくは、前記着雪低減材の長さは前記雪切板の上部から管状構造体の外周の一部または全部を被覆可能な長さとしてもよい。
(4)別の実施形態に係る着雪低減機器において、好ましくは、前記支持板は、主にシリコーンゴムから構成されていてもよい。
(5)別の実施形態に係る着雪低減機器において、好ましくは、前記着雪低減材は、主にシリコーンゴムから構成されていてもよい。
(6)上記目的を達成するための一実施形態に係る着雪低減管状構造体は、上述のいずれかの着雪低減機器の底部を管状構造体の頂部曲面に固定した形態を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、鋼管柱上の着雪を低減して大きな塊のまま落雪することを防ぐと共に、耐候性の高い着雪低減機器、およびそれを管状構造体に備える着雪低減管状構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る着雪低減機器の組み立て状況を表した斜視図である。
図2図1の要領で組み立てた着雪低減機器の斜視図である。
図3図2の着雪低減機器のA-A線断面図である。
図4】着雪低減機器を構成する雪切板、支持板および落雪促進シートの位置、大きさを説明するための図である。
図5】雪切板の上部から管状構造体の上部近傍までを被覆可能な長さを有する落雪促進シートを有する着雪低減機器を示す。
図6】3種類のサンプルを視野に入れた写真を示す。
図7】着雪低減機器を管状構造体に固定した状態の着雪低減管状構造体を表した写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲の各請求項に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、一実施形態に係る着雪低減機器の組み立て状況を表した斜視図を示す図である。図2は、図1の要領で組み立てた着雪低減機器の斜視図を示す図である。図3は、図2の着雪低減機器のA-A線断面図を示す図である。図4は着雪低減機器を構成する雪切板、支持板および落雪促進シートの位置、大きさを説明するための図である。
【0013】
この実施形態に係る着雪低減機器1は、管状構造体10の頂部曲面に固定して管状構造体10への着雪を低減可能な機器である。着雪低減機器1は、着雪低減の機能に加えて、落雪促進の機能を併せ持つ。少量の落雪を頻繁に行わせると、落雪事故の被害を小さくできる。かかる観点から、「着雪低減機器」は、別名で「落雪促進機器」と称しても良い。着雪低減機器1は、管状構造体10の頂部曲面に固定するための複数の台座5,5,・・,5(台座5等という。)と、台座5等にそれぞれ固定される板であって降雪を当該板の端面にて分けるための複数の雪切板7,7,・・,7(雪切板7等という。)と、台座5等に固定される板であって上面への落雪促進シート9の接着を容易にするための支持板3A,3Bと、支持板3A,3Bおよび雪切板7等を被うための落雪促進シート9と、を備える。
【0014】
[台座]
台座5等は、底部5cを介して、落雪促進シート9を含む着雪低減機器1を、管状構造体10の頂部曲面に固定する役割を有する。台座5等はそれぞれ隣接された台座から所定の間隔を置いて管状構造体10の頂部曲面に固定されており、合成樹脂、ゴム、金属、セラミックス、ガラス、炭素材料、木材などの如何なる材料から構成されている。台座5等は好ましくはゴム、さらに好ましくは耐候性を高くする目的で、主にシリコーンゴムから構成されている。ここで、「主に」は、全体に対して50体積%を超えることを意味する。台座5等は、好ましくは50体積%超を、より好ましくは70体積%超を、さらにより好ましくは90体積%超を、シリコーンゴムで構成されている。台座5等は、シリコーンゴム以外に、合成樹脂、金属、セラミックス等を含んでいても良い。また、シリコーンゴムには、シリカ、グラファイト等のフィラーが含まれていても良い。台座5等は、透明な構造体、半透明な構造体、または不透明な有色構造体でも良い。台座5等は、有色構造体の場合には、好ましくは黒色構造体である。台座5等を黒色にすると、赤外線の吸収能が高くなり、積雪を抑止できる。台座5等のそれぞれは、管状構造体10の頂部曲面に固定される底部5cと、雪切板7等との固定部分から底部5cに至る斜面5a,5bと、底部5cと反対側に頂部6を備える。台座5等の頂部6には雪切板7等が立設される。
【0015】
台座5等のそれぞれの外形は、好ましくは、三角柱の形状である。底部5cは、三角柱を構成する3つの長方形の側面の内の1つの側面である。雪切板7は、上記三角柱の台座5の峰部(台座5の頂部6の一例)に固定されている。この実施形態では、台座5は、中実の部材であるが、後述するように中空の部材であっても良い。台座5等は、好ましくは峰部の形態を有する頂部6に、雪切板7等を嵌め込み可能な溝4を備える。ただし、溝4は、台座5等に必須の構成ではない。例えば、台座5等に溝4を形成せずに、雪切板7等の端面に断面V字状若しくは断面U字状の溝を形成して、台座5の頂部6に雪切板7等の溝を合わせて接着等の手法で固定しても良い。
【0016】
台座5と雪切板7との固定方法には、特に制約はなく、好ましくは、接着剤または粘着剤を用いた固定、または嵌め込み式の固定を例示できる。接着剤としては、シリコーン系接着剤を好適に用いることができる。シリコーン系接着剤の中でも、特に、室温硬化型接着剤(RTV接着剤)を用いるのが好ましい。
【0017】
[雪切板]
雪切板7は、好ましくは、主にシリコーンゴムから構成される。「主に」の意味は、前述した台座5と同様である。雪切板7は、好ましくは50体積%超を、より好ましくは70体積%超を、さらにより好ましくは90体積%超を、シリコーンゴムで構成されている。このため、雪切板7の耐候性をより高めることができる。雪切板7は、シリコーンゴム以外に、合成樹脂、金属、セラミックス等を含んでいても良い。また、シリコーンゴムには、シリカ、グラファイト等のフィラーが含まれていても良い。雪切板7は、空から降ってくる雪を分ける役割を有する平板である。雪切板7は、透明な構造体、半透明な構造体、または不透明な有色構造体でも良い。雪切板7は、有色構造体の場合には、好ましくは黒色構造体である。雪切板7を黒色にすると、赤外線の吸収能が高くなり、雪切の温度を上げることができる。この結果、積雪が融けて水が生じやすく、落雪しやすくできる。雪切板7の厚さは、特に制約はないが、好ましくは0.5mm以上4mm以下である。
【0018】
この実施形態に係る着雪低減管状構造体15(図3を参照。)は、着雪低減機器1の底部5cを管状構造体10の頂部曲面に固定した形態を有する。管状構造体10は、線路上や道路上にある鋼管柱(ビームや梁)を含むように解釈されるが、当該鋼管柱に限定されない。また、管状構造体10は、その内部を中空とするものに限定されず、中実で円柱状の構造体でも良い。管状構造体10の形状は、真円柱形状または真円筒形状に限定されず、楕円柱形状または楕円筒形状でも良い。
【0019】
着雪低減機器1の底部5cを管状構造体10の頂部曲面に固定する方法としては、接着剤または粘着剤を用いた方法を例示できる。接着の好適な方法としては、シリコーン系接着剤の使用、パテの使用、あるいはその併用を挙げることができる。シリコーン系接着剤としては、硬化性シリコーン組成物、特に、空気中の水分を利用して硬化可能な縮合反応型の硬化性シリコーン組成物が好ましい。管状構造体10の頂部曲面と着雪低減機器1の底部5cとの強固な固定を実現するために、当該頂部曲面にプライマーを塗布してから、底部5cまたは頂部曲面に硬化性シリコーン組成物を供するのが好ましい。このように、底部5cと頂部曲面との間に接着剤または粘着剤を挟んで固定することにより、着雪低減機器1の管状構造体10への手軽でかつ確実な固定が可能となる。
【0020】
着雪低減機器1の底部5cは、好ましくは、管状構造体10の頂部曲面に沿って湾曲して固定される。台座5が比較的柔らかい材料、例えばシリコーンゴムで構成されている場合には、台座5の底部5cを前記頂部曲面に沿って湾曲変形させることが容易である。
【0021】
[支持板]
支持板3A,3Bは、台座5等同士の間隔を維持するとともにその上からの落雪促進シート9の固定を容易にするための役割を有する。支持板3A,3Bはそれぞれ台座5の斜面5a,5bへ固定される。支持板3A,3Bの斜面5a,5bへの固定は、台座5に雪切板7を固定した後が好ましいが、台座5に雪切板7を固定する前でもよい。支持板3A,3Bの上記した固定の方法においては、特に制約はなく、好ましくは、接着剤または粘着剤を用いた固定を例示できる。接着剤としては、シリコーン系接着剤を好適に用いることができる。シリコーン系接着剤の中でも、特に、室温硬化型接着剤(RTV接着剤)を用いるのが好ましい。
【0022】
支持板3Aおよび支持板3Bは、管状構造体10の軸方向に延在する板状の部材でありその長さは管状構造体10の軸方向の長さLAと概ね同じであり、その幅は台座5等の左斜面5a(右斜面5b)の幅D1と概ね同じである。支持板3Aは、所定の間隔(台座と隣接する台座を結ぶピッチL3)を置いて配置された台座5等の左斜面5aに接着される。支持板3Bは、所定の間隔(台座と隣接する台座を結ぶピッチL3)を置いて配置された台座5等の右斜面5bに接着される。支持板3A,3Bの厚さは、特に制約はないが、好ましくは0.5mm以上4mm以下である。
【0023】
この支持板3A,3Bは、平板であり、好ましくは、主にシリコーンゴムから構成される。「主に」の意味は、前述した台座5と同様である。雪切板7は、好ましくは50体積%超を、より好ましくは70体積%超を、さらにより好ましくは90体積%超を、シリコーンゴムで構成されている。このため、支持板3A,3Bの耐候性をより高めることができる。支持板3A,3Bは、シリコーンゴム以外に、合成樹脂、金属、セラミックス等を含んでいても良い。また、シリコーンゴムには、シリカ、グラファイト等のフィラーが含まれていても良い。支持板3A,3Bは、透明な構造体、半透明な構造体、または不透明な有色構造体でも良い。支持板3A,3Bは、有色構造体の場合には、好ましくは黒色構造体である。支持板3A,3Bを黒色にすると、赤外線の吸収能が高くなり、支持板3A,3B上に接着された落雪促進シート9の表面温度を上げることができる。この結果、積雪が融けて水が生じやすく、落雪しやすくできる。
【0024】
[落雪促進シート(着雪低減材)]
落雪促進シート9は、管状構造体10、支持板3A,3Bおよび雪切板7を被覆可能なシート形状の部材であり、空から降ってくる雪の落雪を促進させて管状構造体10に着雪することを防止する役割を有する。落雪促進シート9のシート幅は、雪切板7の幅(L3)と概ね同じであり、落雪促進シート9の長さは雪切板7の上部(頂部)から管状構造体10の外周の一部または全部を被覆可能な大きさであればよいが、図5に示すように雪切板7の上部から管状構造体10の上部近傍までを被覆可能な長さであればよい。なお、本実施の形態では、支持板3A側については、管状構造体10、支持板3Aおよび雪切板7(支持板3A側の板面)を被覆可能な長さとしており、支持板3B側については、管状構造体10、支持板3Bおよび雪切板7(支持板3B側の板面)を被覆可能な長さとしている。
【0025】
また、落雪促進シート9は、好ましくは、主にシリコーンゴムから構成される。「主に」の意味は、前述した台座5と同様である。雪切板7は、好ましくは50体積%超を、より好ましくは70体積%超を、さらにより好ましくは90体積%超を、シリコーンゴムで構成されている。このため、落雪促進シート9の耐候性をより高めることができる。落雪促進シート9は、透明な構造体、半透明な構造体、または不透明な有色構造体でも良い。落雪促進シート9は、有色構造体の場合には、好ましくは黒色構造体である。落雪促進シート9を黒色にすると、赤外線の吸収能が高くなり、落雪促進シート9の表面温度を上げることができる。この結果、積雪が融けて水が生じやすく、落雪しやすくできる。
【0026】
落雪促進シート9の管状構造体10、支持板3A,3Bおよび雪切板7への巻き付け固定は、台座5の斜面5a,5bにそれぞれ支持板3A,3Bを設置した後に(図1(a),(b)参照)、台座5に雪切板7を固定し(図1(c)参照)、落雪促進シート9を台座5、支持板3A,3B、雪切板7および管状構造体10を被うように巻き付けて固定する(図1(d)参照)。このシート巻き付け工程を複数の台座5等のそれぞれについて行う。落雪促進シート9の上記した巻き付け固定の方法においては、特に制約はなく、好ましくは、支持板3A,3B、雪切板7および管状構造体10に接着剤または粘着剤を用いた固定を例示できる。接着剤としては、シリコーン系接着剤を好適に用いることができる。シリコーン系接着剤の中でも、特に、室温硬化型接着剤(RTV接着剤)を用いるのが好ましい。
【0027】
(変形例1)
なお、支持板3A,3Bの台座5への固定は、上記した方法に限定されない。例えば、台座5等の斜面5a,5bにそれぞれ支持板3A,3Bを設置した後に、落雪促進シート9を台座5、支持板3A,3Bおよび管状構造体10を被うように巻き付ける工程を複数の台座5等のそれぞれについて行い、この後に、雪切板7を、落雪促進シート9を介して各台座5等の溝4に圧着挿入して固定するようにしてもよい。この場合には、落雪促進シート9は例えばシリコーンゴム製のような柔軟な素材であることが好ましい。
【0028】
(変形例2)
上記した例では、シート巻き付け工程を複数の台座5等のそれぞれについて行うようにしたが、シート幅を管状構造体10の軸方向長さ(LA)と同じ長さのものを用意し、台座5に雪切板7を固定し、台座5の斜面5a,5bにそれぞれ支持板3A,3Bを設置した後に、落雪促進シート9を全ての台座5等、支持板3A,3B、雪切板7等および管状構造体10を被うように巻き付けて固定する。本変形例2によれば、一枚のシートで巻き付けるので巻き付け工程が一回で終了するためシート巻き付け作業時間の短縮が図れる。
【0029】
(変形例3)
上記した例では、台座5の斜面5a,5bにそれぞれ支持板3A,3Bを設置する工程を設けていたが、支持板は一枚である必要はなく、例えば各台座5等の斜面の幅と同じ長さの支持板を台座個数分用意し、各台座にそれぞれ当該支持板を設置するようにしてもよい。本変形例3によれば台座ごとに支持板が設置されるので、台座5等のいずれかに不具合が出た場合にはそれに対応した支持板のみ外して修繕等でき、着雪低減機器の保守・点検作業を容易に行うことができる。
【0030】
[他の実施の形態]
以下、本発明の他の実施形態について説明する。
【0031】
上記した実施の形態では、台座5等の斜面5a,5bにそれぞれ支持板3A,3Bを設置する工程を設けていたが、支持板を設けずに落雪促進シート9を台座5等、雪切板7等および管状構造体10を被うように巻き付けて固定するようにしてもよい。なお、落雪促進シート9の上記した巻き付け固定の方法においては、特に制約はなく、接着剤または粘着剤を用いて台座5等、雪切板7等および管状構造体10との接触面に固定することが好ましい。接着剤としては、シリコーン系接着剤を好適に用いることができる。シリコーン系接着剤の中でも、特に、室温硬化型接着剤(RTV接着剤)を用いるのが好ましい。
【0032】
以上、本発明の実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は、これらの形態に限定されず、種々変形可能である。例えば、管状構造体10に対して複数の台座5等が設けられているが、管状構造体10の軸方向の長さと同じ長さの台座を管状構造体10の軸方向に沿って設置するようにしても良い。
【0033】
台座5等の好適な形状としては、台座5等の長さ方向の端面を三角形とする三角柱、またはその三角柱の長さ方向に貫通する貫通路を有する三角筒である。しかし、台座5等の形状は、上記好適な形状に限定されない。例えば、台座5等は、断面L字形状の長尺部材でも良い。その場合には、断面L字状の角部は台座5等の頂部となり、その角部から延びた先に位置する端部は台座5等の底部となる。
【0034】
本発明に係る着雪低減機器および着雪低減管状構造体は、特許請求の範囲における各請求項記載の内容を、組み合わせ不可能な場合を除き、どのように組み合わせても良い。
【実施例0035】
次に、本発明の実施例について、比較例と比較して説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
1.評価対象の鋼管
積雪および落雪の評価対象となる管状構造体として、外径255mm、長さ1000mmの円筒形状の鉄製鋼管を3本用意した。当該鋼管には、その外表面に溶融亜鉛メッキを施したものを用いた。
【0037】
2.サンプルの準備
2.1 実施例
鋼管の曲面頂部に、三角柱形状の台座と当該台座の峰上部に固定された雪切板とを備える着雪低減機器をセットした。台座はアクリル製で、雪切板、支持板およびシートは、それぞれ、シリコーンゴム製とした。台座は、150mm、150mmおよび170mmの三辺を有する二等辺三角形を長さ方向の両端面とした厚さ50mmの三角筒状の台座とした。台座の底面を、鋼管の曲面頂部への接着面とした。雪切板には、鋼管の長さ方向にあたる長さを900mm、台座の高さ方向に当たる高さを150mm、厚さを0.8mmとする平板を用いた。雪切板は、台座の峰部に形成された凹部に接着固定した。着雪低減機器は、以下の要領で、鋼管の曲面頂部に固定した。
【0038】
台座の底面に、両面テープ(3M VHBアクリルフォーム構造用接合テープ BR-12)を台座の底面に貼付けたのち、当該両面テープのセパレータを剥がして、鋼管上に台座を固定した。
【0039】
2.3 比較例1
実施例で用いた鋼管と同種の鋼管に、実施例で用いた雪切板と同じ高さの金属板(SUS製)を固定した。固定は、溶接により行った。比較例1の金属板の表面には、溶融亜鉛メッキが施された。当該工程にて、鋼管の曲面頂部に、金属板のみを立てた着雪低減管状構造体を、「金属長い着雪低減管状構造体」または単に「金属長い」と称する。
【0040】
2.4 比較例2
実施例で用いた鋼管と同種の鋼管に、比較例1で用いた雪切板より背の低い金属板(SUS製)を固定した。固定は、溶接により行った。比較例2の金属板の表面には、溶融亜鉛メッキが施された。当該工程にて、鋼管の曲面頂部に、金属板のみを立てた着雪低減管状構造体を、「金属短い着雪低減機器」または単に「金属短い」と称する。
【0041】
3.実験方法および評価方法
図6は、実験状況の写真を示す。
【0042】
実験は、2021年11月~2022年3月までの約4カ月間にわたって山形県内にて行った。評価は、着雪低減管状構造体の支持板3A設置側(以降、単に「左側」と称す)と支持板3B設置側(以降、単に「右側」と称す)における総落雪回数であって、日差しのある晴れた日の昼間(8時~16時の間)および日差しのない曇りの時(8時~16時の間)や夜間(17時~7時の間))のそれぞれにおいて左側および右側の気温摂氏0度未満時、気温摂氏0度、気温摂氏0度超えにおける落雪回数(小計)、日差しのある場合と日差しのない場合の両方を含む総落雪回数(合計)とした。実施例、比較例1および比較例2の合計3本の鋼管を水平な台に載せて実験を行った。各評価項目は、株式会社ハイク製の電池式LT4Gクラウド対応IoT自動撮影カメラを用いて評価した。降雪開始から、各サンプルの落雪までの状況を上記カメラ、付属の時計および温度計を用いて3分間隔で記録・観察した。
【0043】
4.評価結果
表1は、着雪低減管状構造体の左側において実施例を比較例1および比較例2と比較した評価結果を示す。表2は、着雪低減管状構造体の右側において実施例を比較例1および比較例2と比較した評価結果を示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
表1の実施例と比較例1および比較例2との比較から明らかなように、裸鋼管上に着雪低減機器をセットすると、日差しのない環境下(曇りや夜間)において、落雪回数(小計)が比較例1に比べて2.7倍も増加し、比較例2に比べて10.6倍も増加することがわかった。また、日差しのある環境下(晴れの日の昼間)において、実施例の落雪回数(小計)が比較例1に比べて2.0倍も増加し、比較例2に比べて3.5倍も増加することがわかった。また、実施例における日差しのある場合と日差しのない場合の両方を含む総落雪回数(合計)が比較例1に比べて2.3倍も増加し、比較例2に比べて5.2倍も増加することがわかった。
【0047】
また、表2の実施例と比較例1および比較例2との比較から明らかなように、裸鋼管上に着雪低減機器をセットすると、日差しのない環境下(曇りや夜間)において、実施例の落雪回数(小計)が比較例1に比べて6.5倍も増加し、比較例2に比べて6.5倍も増加することがわかった。また、日差しのある環境下(晴れの日の昼間)において、実施例の落雪回数(小計)が比較例1に比べて5.0倍も増加し、比較例2に比べて2.5倍も増加することがわかった。また、実施例における日差しのある場合と日差しのない場合の両方を含む総落雪回数(合計)が比較例1に比べて6.0倍も増加し、比較例2に比べて5.2倍も増加することがわかった。
【0048】
着雪低減機器をセットすると、実施例の着雪低減管状構造体の左側および右側における総落雪回数は、表1および表2から明らかなように、フッ素系塗料を塗布した金属板を立てた場合(金属長いものと金属短いものを含む)と比べ、総落雪回数が多く、かつ日差しのない場合における気温摂氏0度未満の落雪回数の回数も多くなることがわかった。
【0049】
以上より、台座にシリコーンゴム製の雪切板を立設させるとともに、落雪促進シートを管状構造体、支持板および雪切板に巻き付けて被覆させた構造の着雪低減機器を備えた着雪低減管状構造体(実施例)は、比較例1(金属長い)および比較例2(金属短い)のいずれよりも落雪回数を促進できる構造体であることがわかった。このように頻繁に落雪することは、鋼管への着雪量の低減につながるので、落雪事故の低減に資すると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、管状構造体への着雪低減を行う分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 着雪低減機器、3A,3B・・・支持板、4・・・溝、5・・・台座、5a,5b・・・斜面(第1の斜面、第2の斜面)、5c・・・底部、6・・・頂部、7・・・雪切板、9・・・落雪促進シート(着雪低減材)、10・・・管状構造体、15・・・着雪低減管状構造体、20・・・着雪低減機器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7