(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123593
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】舗装構造
(51)【国際特許分類】
E01C 11/02 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
E01C11/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031151
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】江崎 太一
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健治
(72)【発明者】
【氏名】上原 昌也
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 禎泰
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AC04
2D051AG11
2D051AH02
2D051FA08
(57)【要約】
【課題】路盤を構築するための作業時間の短縮を図ることができる舗装構造を提供する。
【解決手段】舗装構造1は、目地部9を互いの間に挟んで路面1aに沿って並ぶ複数のコンクリート部7を有する路盤3と、路盤3の上に設けられる表層5と、ポリウレアからなり、路盤3と表層5との間に設けられ、目地部9を跨ぎ、当該目地部9を挟む両方のコンクリート部7,7に接合された止水層13と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目地部を互いの間に挟んで路面に沿って並ぶ複数のコンクリート部を有する路盤と、
前記路盤の上に設けられる表層と、
止水性樹脂からなり、前記路盤と前記表層との間に設けられ、前記目地部を跨ぎ、当該目地部を挟む両方の前記コンクリート部に接合された止水層と、を備える、舗装構造。
【請求項2】
前記路盤と前記止水層との間に介在し前記止水層よりも狭い幅で前記目地部を跨ぎ前記コンクリート部に接合されない非接合層を更に備える、請求項1に記載の舗装構造。
【請求項3】
前記非接合層は、前記路盤と前記止水層との間に挟まれた板材により構成される、請求項2に記載の舗装構造。
【請求項4】
前記止水層は、
前記目地部を挟む一方の前記コンクリート部に接合される一端側部分と、
前記目地部を挟む他方の前記コンクリート部に接合される他端側部分と、
前記一端側部分と前記他端側部分との間の部分であって、前記目地部を跨ぎ、前記一端側部分及び前記他端側部分よりも前記コンクリート部との接合力が弱い中間部分と、
を有する、請求項1に記載の舗装構造。
【請求項5】
前記一端側部分及び前記他端側部分ではプライマー層を介して前記止水層が前記コンクリート部に接合されており、
前記中間部分では、前記プライマー層を介さずに前記止水層が前記コンクリート部に接合されている、請求項4に記載の舗装構造。
【請求項6】
前記目地部の幅方向における前記止水層の中間部分は、前記目地部を跨ぎ、前記目地部よりも幅広であり、前記止水層の両端部よりも厚く形成されている、請求項1に記載の舗装構造。
【請求項7】
前記路盤の上面には、前記目地部よりも広い幅で且つ前記止水層よりも狭い幅の溝が前記目地部を跨いで設けられており、
前記止水層の前記中間部分は、前記溝内に充填されて前記両端部よりも下方に突出している、請求項6に記載の舗装構造。
【請求項8】
前記止水性樹脂はポリウレア樹脂である、請求項1~7の何れか1項に記載の舗装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、舗装構造にコンクリート製の路盤が採用される場合がある。コンクリート製の路盤は、路面に沿って並ぶ複数のコンクリート部で構成され、コンクリート部同士の間には目地部が形成される。コンクリート部の目地部を通じて雨水が透過することを防ぐために、従来の技術として、目地部内を横切るように設置される止水板を備えた防水構造が知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。この特許文献1の防水構造では、止水板の両端が目地部の両側のコンクリート部にそれぞれ埋め込まれ、止水板のうち目地部内に位置する中央部によって目地部が塞がれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような防水構造を構築するためには、コンクリート部を打継ぐときの型枠に止水板を貫通させて仕込む必要がある。従って、型枠構造が複雑になり、型枠の設置作業や脱型の作業も煩雑になり、作業時間が長くなる。そこで、本発明は、路盤を構築するための作業時間の短縮を図ることができる舗装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の要旨は以下の通りである。
【0006】
〔1〕目地部を互いの間に挟んで路面に沿って並ぶ複数のコンクリート部を有する路盤と、前記路盤の上に設けられる表層と、止水性樹脂からなり、前記路盤と前記表層との間に設けられ、前記目地部を跨ぎ、当該目地部を挟む両方の前記コンクリート部に接合された止水層と、を備える、舗装構造。
【0007】
〔2〕前記路盤と前記止水層との間に介在し前記止水層よりも狭い幅で前記目地部を跨ぎ前記コンクリート部に接合されない非接合層を更に備える、〔1〕に記載の舗装構造。
【0008】
〔3〕前記非接合層は、前記路盤と前記止水層との間に挟まれた板材により構成される、〔2〕に記載の舗装構造。
【0009】
〔4〕前記止水層は、前記目地部を挟む一方の前記コンクリート部に接合される一端側部分と、前記目地部を挟む他方の前記コンクリート部に接合される他端側部分と、前記一端側部分と前記他端側部分との間の部分であって、前記目地部を跨ぎ、前記一端側部分及び前記他端側部分よりも前記コンクリート部との接合力が弱い中間部分と、を有する、〔1〕~〔3〕の何れか1項に記載の舗装構造。
【0010】
〔5〕前記一端側部分及び前記他端側部分ではプライマー層を介して前記止水層が前記コンクリート部に接合されており、前記中間部分では、前記プライマー層を介さずに前記止水層が前記コンクリート部に接合されている、〔4〕に記載の舗装構造。
【0011】
〔6〕前記目地部の幅方向における前記止水層の中間部分は、前記目地部を跨ぎ、前記目地部よりも幅広であり、前記止水層の両端部よりも厚く形成されている、〔1〕~〔5〕の何れか1項に記載の舗装構造。
【0012】
〔7〕前記路盤の上面には、前記目地部よりも広い幅で且つ前記止水層よりも狭い幅の溝が前記目地部を跨いで設けられており、前記止水層の前記中間部分は、前記溝内に充填されて前記両端部よりも下方に突出している、〔6〕に記載の舗装構造。
【0013】
〔8〕前記止水性樹脂はポリウレア樹脂である、〔1〕~〔7〕の何れか1項に記載の舗装構造。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、路盤を構築するための作業時間の短縮を図ることができる舗装構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態の舗装構造の目地部を含む上端近傍を拡大して示す断面図である。
【
図2】(a)~(d)は、路盤の施工方法を順次示す断面図である。
【
図3】第2実施形態の舗装構造の目地部を含む上端近傍を拡大して示す断面図である。
【
図4】第3実施形態の舗装構造の目地部を含む上端近傍を拡大して示す断面図である。
【
図5】第4実施形態の舗装構造の目地部を含む上端近傍を拡大して示す断面図である。
【
図6】第5実施形態の舗装構造の目地部を含む上端近傍を拡大して示す断面図である。
【
図7】変形例に係る舗装構造の目地部を含む上端近傍を拡大して示す断面図である。
【
図8】他の変形例に係る舗装構造の目地部を含む上端近傍を拡大して示す断面図である。
【
図9】更に他の変形例に係る舗装構造の目地部を含む上端近傍を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明に係る舗装構造の各実施形態について詳細に説明する。各実施形態において、互いに同一又は同等の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、各図面では、説明に係る部分を誇張して図示する場合があるので、図面上の各部位の寸法比は、実物とは必ずしも一致せず、各図面同士で必ずしも一致しない。
【0017】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る舗装構造1の目地部を含む上端近傍を拡大して示す断面図である。舗装構造1は、鉄筋コンクリート製のコンクリート路盤3と、路盤3の上に設けられる表層5と、を備えている。路盤3は、所定の路床91(
図2)上に構築され、路面1aに沿って例えば水平方向に並ぶ複数のコンクリート部7と、コンクリート部7同士の間に形成される目地部9と、を有している。例えば、目地部9を構成する目地板10を間に挟みながら複数のコンクリート部7が路面方向に順に打継ぎされることで、路盤3が構築される。または、コンクリート部7はプレキャストコンクリート部材であってもよく、この場合、例えば、目地板10を間に挟みながら複数のプレキャストコンクリート部材が路面方向に順に設置されることで、路盤3が構築される。
【0018】
目地板10としては、例えば、鉄板を心材として内包するブチルゴム製の板材等が用いられる。目地板10の厚さは例えば約10mmであり、すなわち、目地部9の幅は例えば約10mmである。表層5は、舗装構造1の最上層として路盤3の上に敷設されるものであり、例えばアスファルト混合物からなる。表層5の上面が舗装構造1の路面1aである。以下では、目地部9の幅方向(
図1の左右方向)を単に「目地幅方向」と言い、目地部9の長手方向(
図1の紙面に直交する方向)を単に「目地長手方向」と言う場合がある。
【0019】
更に舗装構造1は、路盤3と表層5との間に設けられるプライマー層11及び止水層13を備えている。プライマー層11は、路盤3の上面において目地部9よりもやや広い幅に設けられ、目地部9を跨いて目地部9の上方を覆っている。プライマー層11は、コンクリート部7の上面に塗布されたプライマーで形成されコンクリート部7と止水層13との接合力を向上させる。止水層13は、止水性樹脂からなり、プライマー層11の上に設けられている。すなわち、止水層13は、プライマー層11を介して路盤3の上面に設けられている。本実施形態では、止水層13の材料である上記止水性樹脂は、ポリウレア樹脂である。
【0020】
止水層13は、目地部9よりも広い幅でプライマー層11よりもやや狭い幅に設けられ、目地部9を跨いて目地部9の上方を覆っている。路盤3と止水層13との間にプライマー層11が介在することで、止水層13は路盤3の上面に強固に接合されている。止水層13は、目地部9を跨ぎ当該目地部9を挟む2つのコンクリート部7の両方の上面に対し強固に接合されている。
【0021】
路盤3の上面で止水層13が設けられる領域は、目地部9の領域を中央に含み目地部9よりも広い幅で目地長手方向に延びる帯状の領域である。また、この領域の幅(目地幅方向の寸法)は例えば約300mmである。舗装構造1は、目地幅方向において、止水層13が存在する目地部9近傍の領域A1と、領域A1同士の間で止水層13が存在しない領域A2と、に分けられる。
【0022】
続いて、
図2を参照しながら、舗装構造1の施工方法の一例について説明する。
図2(a)に示されるように、地盤上に構築された所定の路床91上にH鋼21が載置される。H鋼21は目地長手方向に延在するように載置され、
図2においては紙面に直交する方向に延在している。H鋼21は、コンクリート部7を構築するためのコンクリート型枠の代わりに使用されるものであり、コンクリート打設領域23の一端を仕切るように載置される。次に、
図2(b)に示されるように、コンクリート打設領域23には鉄筋25が設置される。コンクリート打設領域23に面するH鋼21のフランジ面21aには目地板10が設置される。
【0023】
その後、
図2(c)に示されるように、コンクリート打設領域23にコンクリートCが打設される。そして、コンクリートCが硬化してコンクリート部7が形成される。その後、
図2(d)に示されるように、目地板10を残してH鋼21が路床91上で平行移動される。これにより、移動後のH鋼21と残置された目地板10とで挟まれた領域が新たなコンクリート打設領域23となり、
図2(a)~
図2(d)の処理が再び実行される。すなわち、移動後のH鋼21のフランジ面21aに目地板10が設置され、上記新たなコンクリート打設領域23に鉄筋25が設置されコンクリートCが打設される。以上のような処理が繰返し実行されて複数のコンクリート部7が打継がれることにより、路盤3が路床91上に構築される。路盤3は、複数のコンクリート部7とそのコンクリート部7同士の各間に挟まれる目地部9とを有する。
【0024】
上記のように路盤3が構築された後、
図1に示されるように、路盤3の上面において目地部9を跨ぐ領域にプライマーが塗布され、プライマー層11が形成される。その後、プライマー層11の上に当該プライマー層11よりもやや狭い幅でポリウレアが吹付けされることで、ポリウレアからなる止水層13が形成される。路盤3と止水層13との間にプライマー層11が介在することで、止水層13は路盤3の上面に強固に接合される。すなわち、止水層13は、目地部9を挟む2つのコンクリート部7の両方の上面に対し強固に接合される。止水層13が形成された後、この止水層13を埋め込むように、路盤3の上面全体にアスファルト混合物が敷設され表層5が構築される。以上で舗装構造1が完成する。
【0025】
以上のような舗装構造1による作用効果について説明する。この舗装構造1では、路盤3としてコンクリート路盤が採用されている。コンクリートの透水性は非常に低いので、コンクリート部7内を透過して路床91に到達する雨水はほとんどないと考えてよい。一方、雨水が路床91に向かうルートとしては目地部9が考えられる。しかしながら本実施形態の舗装構造1では、
図1に示されるように、目地部9を跨いて目地部9の上方を覆うように止水層13が設けられている。従って、表層5を透過した雨水が目地部9に侵入する水みちは止水層13により塞がれている。そして、止水層13は目地部9を挟む2つのコンクリート部7の両方の上面に対し接合されているので、止水層13とコンクリート部7の上面との隙間を通じた雨水の浸入も抑制される。従って、表層5を透過した雨水が目地部9に侵入することが抑制される。本実施形態では、止水層13はポリウレア層であるので、特に止水性が高く、また機械的強度も高い。
【0026】
上記のように舗装構造1では、目地部9上方の止水層13によって目地部9への雨水の侵入が抑制されている。従って、目地部9内を横切るようにコンクリート部7に埋め込まれる止水板は省略することができる。そうすると、コンクリート部7を打設するためのコンクリート型枠に止水板を貫通させて仕込む、といったような複雑な型枠構造が不要であり、型枠の設置作業や脱型の作業も簡易化される。従って、舗装構造1によれば、路盤3を構築するための作業時間の短縮を図ることができる。このような舗装構造1は、例えば、放射線量が高い場所で道路を施工する、といったような施工時間の制約が厳しい条件下において好適に適用することができる。
【0027】
また、コンクリート部7を打設するためのコンクリート型枠には止水板を貫通させて仕込むような仕組みは必要なく、平坦な型枠面をもつコンクリート型枠を用いれば済む。よって例えば、前述のように、平坦なフランジ面21aをもつH鋼21(
図2)を上記コンクリート型枠として使用することも可能になる。H鋼21は、打設されるコンクリートCの圧力に抵抗可能な十分な重量をもつので、H鋼21を路床91上に載置するだけで上記コンクリート型枠として使用することができ、型枠設置作業が軽減される。また、コンクリート部7の打継ぎの際にも、H鋼21を平行移動させれば済む。また、H鋼21はコンクリート型枠として多数回繰返し使用可能であり、コンクリート型枠としての使用が終わった後にも通常のH鋼として使用可能であるので、例えば数回のみ使用可能な木製型枠等を用いる場合に比較して、発生する廃棄物が減少する。
【0028】
また、舗装構造1では、目地部9内を横切るようにコンクリート部7に埋め込まれる止水板を省略することができるので、前述したように、コンクリート部7にはプレキャストコンクリート部材を使用することもできる。そうすると、場所打ちでコンクリート部7を形成する場合に比較して、更に作業時間の短縮を図ることができる。
【0029】
また、舗装構造1では、領域A1のみに目地部9を覆う止水層13が設けられ、領域A2には止水層13は設けられていない。この構成によれば止水性樹脂の使用量を削減することができる。舗装構造1ではコンクリート路盤3が採用されているので、目地部9以外の領域A2ではコンクリート部7自体の非透水性によって十分な止水性が確保される。また、仮に路盤3の上面全体に亘って止水層13を施すとすれば、路盤3の上面の何れかの箇所で止水層13の剥離等が発生した場合に、この剥離が伝播して目地部9の上方の位置にまで及ぶ、といった不具合が考えられる。これに対し舗装構造1では、領域A1のみに目地部9を覆う止水層13が設けられるので、上記のような不具合を抑制することができる。
【0030】
〔第2実施形態〕
図3は、第2実施形態に係る舗装構造201の目地部を含む上端近傍を拡大して示す断面図である。舗装構造201は、路盤3と止水層13との間に介在する非接合層17を備えている。非接合層17は、所定の樹脂製板材18で構成されており、止水層13よりも狭い幅で目地部9を跨ぎ、路盤3の上面に接触するように配置されている。非接合層17の幅は例えば100mm程度である。舗装構造201の構築の際には、樹脂製板材18は目地部9を上から塞ぐように載置され、樹脂製板材18を路盤3の上面に対して強固に接合するための加工は施されない。従って、非接合層17の下面は路盤3の上面に対して摺接している。すなわち、非接合層17は路盤3のコンクリート部7,7の上面に対して非接合状態であり、コンクリート部7,7の上面に対して摺動可能である。非接合層17が存在する領域にはプライマー層11は設けられておらず、プライマー層11に代えて非接合層17が設けられている。すなわち、舗装構造201は、舗装構造1(
図1)におけるプライマー層11の中央の所定幅の一部分を非接合層17に差し替えた構造であると言える。非接合層17を構成する樹脂製板材18は、例えばブチルゴム製の板材である。
【0031】
上記の構造により、止水層13は、一方のコンクリート部7の上面にプライマー層11を介して強固に接合される一端側部分13aと、他方のコンクリート部7の上面にプライマー層11を介して強固に接合される他端側部分13bと、一端側部分13aと他端側部分13bとの間の部分であり目地部9を跨ぐ中間部分13cと、を有する。そして、中間部分13cと路盤3との間には非接合層17が介在しているので、中間部分13cは路盤3の上面には接合されていない。
【0032】
以上のような本実施形態の舗装構造201によっても、第1実施形態の舗装構造1(
図1)と同様の作用効果が得られる。
【0033】
ここで、舗装構造1,201において目地部9を開くような路盤3の変形が発生した場合を考える。舗装構造1では、
図1に示されるように、止水層13は、目地幅方向において、目地部9に対応する中央部分13hを除いてほぼ半分ずつが、一方及び他方のコンクリート部7,7の上面に接合されている。よって、目地部9を開くような路盤3の変形が発生した場合、止水層13のほぼ半分ずつの部位がそれぞれ接合されたコンクリート部7,7に追従し、中央部分13hに目地幅方向への引張力による変形が発生する。すなわち、止水層13のうち、目地部9の幅(例えば約10mm)に対応する短い中央部分13hに変形が集中するので、この中央部分13hが破断し易い。
【0034】
これに対し、舗装構造201(
図3)の止水層13では、目地部9を開くような路盤3の変形が発生した場合に、一端側部分13aが一方のコンクリート部7に追従し、他端側部分13bが他方のコンクリート部7に追従する。一方、中間部分13cは前述の通りコンクリート部7,7には接合されていないので、中間部分13cはコンクリート部7,7の上面を摺動し、当該中間部分13cに目地幅方向への引張力による変形が発生する。この中間部分13cは目地部9の幅よりも長い部分であるので、変形に伴う応力は比較的低く、従って比較的破断し難い。このように、舗装構造201は、目地部9を開くような路盤3の変形が発生した場合に、止水層13が破断し難いといった点において舗装構造1よりも好ましい。止水層13の破断が抑制されることで、舗装構造201の止水性が損なわれる可能性が低減される。
【0035】
〔第3実施形態〕
図4は、第3実施形態に係る舗装構造301の目地部を含む上端近傍を拡大して示す断面図である。本実施形態の舗装構造301は、第2実施形態の舗装構造201(
図3)における非接合層17を省略したものである。非接合層17に対応する領域にはプライマー層11も存在せず、止水層13の中間部分13cは、路盤3の上面にプライマー層11を介さずに接合されている。このような舗装構造301のプライマー層11及び止水層13は、次のように形成される。まず、構築された路盤3の上面において目地部9を挟む両側の2箇所にプライマーが塗布され、2箇所のプライマー層11,11が形成される。ここでは、2箇所のプライマー層11,11同士の間に、プライマー層11が不在であるプライマー不在領域12が目地部9を跨ぐ所定の幅で形成される。その後、プライマー不在領域12を含む領域において、目地部9を中央として2箇所のプライマー層11,11に両端をオーバーラップさせる吹付け幅でポリウレアが吹付けされることで、ポリウレアからなる止水層13が形成される。
【0036】
路盤3の上面でプライマー不在領域12に吹付けられたポリウレアは、当該路盤3の上面に対してある程度の強度で接合される。従って、止水層13の中間部分13cは路盤3の上面に対してある程度の強度で接合される。但し、中間部分13cはプライマー層11を介さずに路盤3の上面に接合されているので、止水層13の一端側部分13a及び他端側部分13bに比較すれば、その接合力は弱い。すなわち、止水層13の中間部分13cは、目地部9を跨ぎ、一端側部分13a及び他端側部分13bよりもコンクリート部7,7に対する接合力が弱い部分である。
【0037】
ここで、舗装構造301において目地部9を開くような路盤3の変形が発生した場合を考える。この場合、止水層13の一端側部分13aが一方のコンクリート部7に追従し、他端側部分13bが他方のコンクリート部7に追従する。その一方、中間部分13cは、前述の通りコンクリート部7,7への接合力が弱いので、中間部分13cはコンクリート部7,7から剥離し易い。剥離した中間部分13cはコンクリート部7,7の上面を摺動し、当該中間部分13cに目地幅方向への引張力による変形が発生する。従って、第2実施形態の舗装構造201(
図3)と同様の理由により、止水層13は破断し難い。よって、本実施形態の舗装構造301によっても、第2実施形態の舗装構造201(
図3)と同様の作用効果が得られる。
【0038】
〔第4実施形態〕
図5は、第4実施形態に係る舗装構造401の目地部を含む上端近傍を拡大して示す断面図である。本実施形態の舗装構造401は、矩形溝19を備える点において第1実施形態の舗装構造1(
図1)とは異なっている。矩形溝19は、路盤3の上面における目地部9の上方に目地部9を跨いで設けられている。矩形溝19は目地部9の幅よりも広い幅で且つ止水層13よりも狭い幅で、路盤3の上面から所定の深さで凹んでいる。このような矩形溝19は、コンクリート部7,7の打設時又は硬化前に適宜形成されればよい。舗装構造401のプライマー層11は、コンクリート部7,7の上面及び矩形溝19の内壁面に沿って連続して設けられている。そして、このプライマー層11上にポリウレアが吹付けられて止水層13が形成される。目地幅方向における止水層13の中間部分13jは、矩形溝19内に充填されて下方に突出している。この構成により、止水層13の中間部分13jは、止水層13の両端部13k,13kよりも上下厚さが厚い。
【0039】
ここで、舗装構造401において目地部9を開くような路盤3の変形が発生した場合を考える。この場合、止水層13においては、第1実施形態の舗装構造1(
図1)と同様に、止水層13のほぼ半分ずつの部位がコンクリート部7,7に追従し、目地部9の上方の部分に変形が発生する。しかしながら、止水層13のうち目地部9の上方に位置する部分は、中間部分13jに含まれている。中間部分13jは、前述の通り上下厚さが厚いので破断し難い。その結果、止水層13の破断が抑制され、舗装構造201の止水性が損なわれる可能性が低減される。
【0040】
〔第5実施形態〕
図6は、第5実施形態に係る舗装構造501の目地部を含む上端近傍を拡大して示す断面図である。本実施形態の舗装構造501は、第4実施形態の舗装構造401(
図5)の矩形溝19に代えて、台形溝20を備えている。このような台形溝20は、コンクリート部7,7の打設時又は硬化前において上端角部のC面取りを行なうことで適宜形成されればよい。このような台形溝20を形成することによっても、止水層13には、目地部9の上方において上下厚が厚い中間部分13jが形成されるので、本実施形態の舗装構造501によっても、第4実施形態の舗装構造401(
図5)と同様の作用効果が得られる。また、本実施形態における中間部分13jは台形をなすので、舗装構造401(
図5)における矩形の中間部分13jに比較して応力が集中し難い点で好ましい。
【0041】
本発明は、上述した各実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した各実施形態に記載されている技術的事項を利用して変形例を構成することも可能である。各実施形態等の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0042】
例えば、
図7に示されるように、舗装構造401(
図5)に対して舗装構造201(
図3)の非接合層17が加えて適用されてもよい。この構成によれば、舗装構造401の止水層13の中間部分13jによる効果と、舗装構造201の非接合層17による効果と、が相俟って、止水層13の破断が更に抑制される。同様に、
図8に示されるように、舗装構造401(
図5)に対して舗装構造301(
図4)のプライマー不在領域12が加えて適用されてもよい。この構成によれば、舗装構造401の止水層13の中間部分13jによる効果と、舗装構造301のプライマー不在領域12による効果と、が相俟って、止水層13の破断が更に抑制される。更に同様にして、舗装構造501(
図6)に対して舗装構造201(
図3)の非接合層17が加えて適用されてもよく、舗装構造501(
図6)に対して舗装構造301(
図4)のプライマー不在領域12が加えて適用されてもよい。
【0043】
また、
図9に示されるように、舗装構造201(
図3)においては、非接合層17の上面と止水層13との間にもプライマー層11が存在していてもよい。また、舗装構造401(
図5)及び舗装構造501(
図6)では、止水層13の中間部分13jを厚くするための構成として、路盤3の上面に矩形溝19又は台形溝20を設けているが、この構成には限定されない。例えば、止水層13の中間部分13jを両端部13k,13kよりも大きい突出量で路盤3の上面から突出させるようにしてもよい。但し、舗装構造401(
図5)及び舗装構造501(
図6)のように、路盤3の上面から凹む矩形溝19又は台形溝20を設ける場合には、表層5の厚さを確保しやすい点において好ましい。
【符号の説明】
【0044】
1、201,301,401,501…舗装構造、1a…路面、3…路盤、5…表層、7…コンクリート部、9…目地部、11…プライマー層、13…止水層、13a…一端側部分、13b…他端側部分、13c…中間部分、13j…中間部分、13k…両端部、17…非接合層、18…樹脂製板材、19,20…溝。