IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産株式会社の特許一覧

特開2024-123596インペラ、送風装置、金型及びインペラの製造方法
<>
  • 特開-インペラ、送風装置、金型及びインペラの製造方法 図1
  • 特開-インペラ、送風装置、金型及びインペラの製造方法 図2
  • 特開-インペラ、送風装置、金型及びインペラの製造方法 図3
  • 特開-インペラ、送風装置、金型及びインペラの製造方法 図4
  • 特開-インペラ、送風装置、金型及びインペラの製造方法 図5
  • 特開-インペラ、送風装置、金型及びインペラの製造方法 図6
  • 特開-インペラ、送風装置、金型及びインペラの製造方法 図7
  • 特開-インペラ、送風装置、金型及びインペラの製造方法 図8
  • 特開-インペラ、送風装置、金型及びインペラの製造方法 図9
  • 特開-インペラ、送風装置、金型及びインペラの製造方法 図10
  • 特開-インペラ、送風装置、金型及びインペラの製造方法 図11
  • 特開-インペラ、送風装置、金型及びインペラの製造方法 図12
  • 特開-インペラ、送風装置、金型及びインペラの製造方法 図13
  • 特開-インペラ、送風装置、金型及びインペラの製造方法 図14
  • 特開-インペラ、送風装置、金型及びインペラの製造方法 図15
  • 特開-インペラ、送風装置、金型及びインペラの製造方法 図16
  • 特開-インペラ、送風装置、金型及びインペラの製造方法 図17
  • 特開-インペラ、送風装置、金型及びインペラの製造方法 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123596
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】インペラ、送風装置、金型及びインペラの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/28 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
F04D29/28 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031154
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 彰
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB44
3H130AC19
3H130BA66C
3H130BA97C
3H130CB06
3H130DD01Z
3H130EA07C
3H130EB01C
3H130ED01C
(57)【要約】      (修正有)
【課題】軽量化しつつ送風量を増加できるインペラを提供する。
【解決手段】インペラは、上下に延びる中心軸を中心に回転して気流を発生する。インペラは、中心軸を中心とする径方向外方に延びる複数枚の羽根と、羽根と同じ材料で形成されて羽根を保持するインペラハブと、を有する。羽根は、上下に延びる中心軸を中心に周方向に並んで配置され、周方向に並ぶ2つを1組として複数の羽根組を構成する。インペラハブは、中心軸に沿って延びるハブ筒部と、ハブ筒部の外周面から径方向外方に拡がる環状であり、羽根の径方向内方の端部を保持するハブフランジと、を有する。ハブフランジは、下面から突出した第1段部を有し、第1段部は各前記羽根組の各羽根の周方向外方の端面の径方向内端同士をつなぐ線状である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に延びる中心軸を中心に回転して気流を発生するインペラであって、
前記中心軸を中心とする径方向外方に延びる複数枚の羽根と、
前記羽根と同じ材料で形成されて前記羽根を保持するインペラハブと、を有し、 前記羽根は、上下に延びる前記中心軸を中心に周方向に並んで配置され、周方向に並ぶ2つを1組として複数の羽根組を構成し、
前記インペラハブは、
中心軸に沿って延びるハブ筒部と、
前記ハブ筒部の外周面から径方向外方に拡がる環状であり、前記羽根の径方向内方の端部を保持するハブフランジと、を有し、
前記ハブフランジは、下面から突出した第1段部を有し、前記第1段部は各前記羽根組の各前記羽根の周方向外方の端面の径方向内端同士をつなぐ線状である、インペラ。
【請求項2】
前記ハブフランジは方面から突出した第2段部を有し、
前記第2段部は、各羽根組の各前記羽根の対向する端面の径方向内端同士を繋ぐ線状である請求項1に記載のインペラ。
【請求項3】
前記ハブフランジは、下面から突出して前記第1段部よりも径方向内方に配置される線状のフランジ段部を有する請求項1に記載のインペラ。
【請求項4】
前記フランジ段部は、隣り合う前記第1段部の周方向の間に配置される請求項3に記載のインペラ。
【請求項5】
前記羽根の径方向外端部の上端と接触する環状の保持リングを有し、
前記保持リングは下面から突出して前記羽根の間に形成される線状のリング段部を有する請求項1に記載のインペラ。
【請求項6】
前記リング段部は隣り合う前記第1段部の周方向の間に配置される請求項5に記載のインペラ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のインペラと、
前記インペラを回転するモータと、を有する送風装置。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のインペラの製造に用いられる金型であって、
軸方向に向い合せに配置される第1金型及び第2金型と、
前記第1金型に配置されて軸方向に前記第2金型と離れる方向に移動可能な抜きピンと、
前記第2金型に配置されて少なくとも一部が前記抜きピンと軸方向に対向し、軸方向に前記第1金型に接近する方向に移動可能な複数のエジェクタピンと、を有し、
前記エジェクタピンは、前記羽根組を構成する2つの前記羽根を同時に押すことができる位置に配置される金型。
【請求項9】
前記第1金型と前記抜きピンとが単一の部材で形成される請求項8に記載の金型。
【請求項10】
請求項8に記載の金型を組み立てる組み立て工程と、
前記金型の内部に樹脂を射出する射出工程と、
前記樹脂を硬化させる樹脂硬化工程と、
前記金型を離型する離型工程と、を有し、
前記離型工程において、
前記第1金型及び前記抜きピンを離型した後、各前記エジェクタピンが、前記羽根組を構成する2つの羽根を同時に押す、インペラの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インペラ、インペラを備えた送風装置、インペラを製造する送風装置及びインペラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インペラは、軽量化、製造の簡易化のため、樹脂が用いられる。樹脂のインペラは、金型に樹脂を射出し、樹脂が硬化した後に離型することで、製造される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-184779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、送風装置において送風量の増量、軽量化及び省エネルギ化が望まれている。
【0005】
そこで本発明は、軽量化しつつ送風量を増加できるインペラを提供することを目的とする。
【0006】
また、送風量を増加しつつ省エネルギ化できる送風装置を提供することを目的とする。
【0007】
さらに、軽量化しつつ送風量を増加できるインペラの製造に適した金型を提供することを目的とする。
【0008】
また、軽量化しつつ送風量を増加できるインペラの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の例示的なインペラは、上下に延びる中心軸を中心に回転して気流を発生する。インペラは、前記中心軸を中心とする径方向外方に延びる複数枚の羽根と、前記羽根と同じ材料で形成されて前記羽根を保持するインペラハブと、を有する。前記羽根は、上下に延びる前記中心軸を中心に周方向に並んで配置され、周方向に並ぶ2つを1組として複数の羽根組を構成する。前記インペラハブは、中心軸に沿って延びるハブ筒部と、前記ハブ筒部の外周面から径方向外方に拡がる環状であり、前記羽根の径方向内方の端部を保持するハブフランジと、を有する。前記ハブフランジは、下面から突出した第1段部を有し、前記第1段部は各前記羽根組の各前記羽根の周方向外方の端面の径方向内端同士をつなぐ線状である。
【0010】
本発明の例示的な送風装置は、上述のモータと、前記ロータに取り付けられて回転によって気流を発生するインペラと、を有する。
【0011】
本発明の例示的な金型は、インペラの製造に用いられる金型であって、軸方向に向い合せに配置される第1金型及び第2金型と、前記第1金型に配置されて軸方向に前記第2金型と離れる方向に移動可能な抜きピンと、前記第2金型に配置されて少なくとも一部が前記抜きピンと軸方向に対向し、軸方向に前記第1金型に接近する方向に移動可能な複数のエジェクタピンと、を有する。前記エジェクタピンは、前記羽根組を構成する2つの前記羽根を同時に押すことができる位置に配置される。
【0012】
本発明の例示的なインペラの製造方法は、金型を組み立てる組み立て工程と、前記金型の内部に樹脂を射出する射出工程と、前記樹脂を硬化させる樹脂硬化工程と、前記金型を離型する離型工程と、を有する。前記離型工程において、前記第1金型及び前記抜きピンを離型した後、各前記エジェクタピンが、前記羽根組を構成する2つの羽根を同時に押す。
【発明の効果】
【0013】
例示的な本発明のインペラによれば、軽量化しつつ送風量を増加できる。
【0014】
例示的な本発明の送風装置によれば、送風量を増加しつつ省エネルギ化できる。
【0015】
例示的な本発明の金型によれば、軽量化しつつ送風量を増加できるインペラを製造できる。
【0016】
例示的な本発明のインペラの製造方法によれば、軽量化しつつ送風量を増加できるインペラを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、送風装置の中心軸を含む面で切断した断面図である。
図2図2は、インペラを中心軸に沿う下方から見た斜視図である。
図3図3は、インペラを中心軸に沿う上方から見た斜視図である。
図4図4は、インペラの一部を軸方向下方から見た拡大斜視図である。
図5図5は、インペラの一部を軸方向上方から見た拡大斜視図である。
図6図6は、金型の中心軸を含む断面で切断した断面図である。
図7図7は、第1金型、抜きピン、カッター及びインジェクタの上方から見た分解斜視図である。
図8図8は、第2金型、エジェクタピンの下方から見た分解斜視図である。
図9図9は、第1金型の抜きピン収納孔に抜きピンが挿入された状態の上から見た斜視図である。
図10図10は、エジェクタピン、フランジプッシュピン及びリングプッシュピンが配置された状態の第2金型を下から見た斜視図である。
図11図11は、エジェクタピン及び抜きピンをエジェクタピン収納孔から引き出した状態を示す分解斜視図である。
図12図12は、エジェクタピン収納孔の内部のインペラの羽根組を示す断面図である。
図13図13は、インペラの製造工程のフローチャートである。
図14図14は、カッターでゲート部を切断したハブ筒部の断面図である。
図15図15は、抜きピンが引き抜かれた状態を示す断面図である。
図16図16は、エジェクタピンにて羽根組を押し出した状態を示す断面図である。
図17図17は、硬化した直後の金型のハブ筒部の周囲の拡大断面図である。
図18図18は、変形例のインペラのハブ筒部の周囲の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態において、中心軸Cxが延びる方向を上下方向とし、図1の送風装置300の状態において上方を「上(図中D1と示す)」、その反対を「下(図中D2と示す)」と定義する。また、軸方向において、「下方又は下方側」を「一方又は一方側」、「上方又は上方側」を「他方又は他方側」と称する場合がある。さらに、中心軸Cxに平行な方向を「軸方向」、中心軸Cxと直交する方向を「径方向」、中心軸Cxを中心とする円弧に沿う方向を「周方向」とそれぞれ称する。
【0019】
また、本明細書では、インペラ100においても上述の方向を示す名称と同じ名称を用いて方向を定義する。金型400についての上下方向は、金型400の説明時に別途定義する。なお、上述の方向を示す名称は単に説明のために用いられる名称であり、インペラ100、送風装置300及び金型400の実際の使用状態における位置関係及び方向を限定しない。さらに、本明細書において、「平行」とは、正確に平行だけでなく、実用上の範囲内で交差せずに並んで配置される場合も含む。
【0020】
<送風装置300>
図1は、送風装置300の中心軸Cxを含む面で切断した断面図である。送風装置300は、例えば、PC、モニタ等の電子機器の空冷のために用いられる。図1に示すように、送風装置300は、インペラ100と、モータ200とを有する。送風装置300では、インペラ100がモータ200に取り付けられている。モータ200の回転とともにインペラ100が回転する。すなわち、送風装置300は、インペラ100と、インペラ100を回転するモータ200とを有する。インペラ100は、不図示のハウジング内で回転することで、ハウジング内で気流が発生する。すなわち、上下に延びる中心軸Cxを中心に回転することで気流を発生する。そして、気流は、ハウジングによって整流されて所定の方向にハウジングの外部に吐出される。
【0021】
<モータ200>
まず、モータ200について説明する。図1に示すように、モータ200は、シャフト201と、ロータ202と、ステータ205と、を有する。モータ200は、いわゆる、アウターロータ型のブラシレスDCモータであり、ステータ205の径方向外面と径方向に対向するロータ202及びロータ202が固定されるシャフト201が中心軸Cxを中心に回転する。
【0022】
<シャフト201>
シャフト201は、中心が中心軸Cxと一致する円柱状である。シャフト201は、中心軸Cxを中心に回転する。
【0023】
<ロータ202>
ロータ202は、シャフト201に固定され、シャフト201とともに回転する。ロータ202は、ロータケース203と、ロータマグネット204と、を有する。ロータケース203は、磁性材料で形成された有蓋筒状である。ロータケース203はシャフト201に固定される。ロータケース203は、シャフト201とともに中心軸Cxを中心に回転可能である。ロータケース203とシャフト201とは、直接的に固定されるが、固定用の部材を用いて間接的に固定されてもよい。
【0024】
ロータケース203の内周面には、ロータマグネット204が固定される。ロータマグネット204の少なくとも内周面は、N極とS極とが周方向に交互に並んで配置される。本実施形態において、ロータマグネット204は、円筒状とすることができるが、これに限定されない。例えば、複数の平板状のマグネットが周方向に並べて固定されてもよい。
【0025】
シャフト201は、軸方向に離れた2か所で軸受209を介してステータ205に回転可能に支持されている。軸受209は、例えば、ボールベアリングである。なお、軸受209の構造は、ボールベアリングに限定されず、流体動圧軸受、すべり軸受等、シャフト201の振れを抑制できる支持方法を広く採用することができる。
【0026】
ロータケース203の外周面には、インペラ100の後述する接触部13が接触する。すなわち、インペラ100は、上下に延びる中心軸Cxを中心に回転するロータ202に固定され、ロータ202とともに回転して気流を発生する。これにより、インペラ100がロータケース203に固定される。インペラ100のロータケース203への固定は、例えば、圧入にて行われるが、これに限定されず、接着、溶接、溶着、ねじ止め等、インペラ100をロータケース203に強固に固定できる固定方法を広く採用することができる。
【0027】
<ステータ205>
ステータ205は、ロータ202の径方向内方に配置されてロータ202と径方向に対向する。ステータ205は、ステータコア206と、インシュレータ(不図示)と、コイル207と、を有する。ステータコア206は、電磁鋼板を軸方向に積層した積層体である。なお、ステータコア206は、電磁鋼板を積層した積層体に限定されず、例えば、紛体の焼成、鋳造等、単一の部材であってもよい。
【0028】
ステータコア206は、径方向外方に突出するとともに周方向に配列されたティースを有する。ティースには、不図示のインシュレータに覆われる。インシュレータが配置されたティースに導線を巻きつけることで、コイル207が形成される。インシュレータは、ステータコア206と、コイル207とを電気的に絶縁する。なお、導線とステータコア206とが絶縁される場合、インシュレータを省略してもよい。
【0029】
コイル207に電流が供給されることで、コイル207とロータマグネット204との間に引力又は斥力が発生する。コイル207に供給される電流の供給タイミングを調整することで、引力又は斥力によって、ロータ202がシャフト201とともに回転する。
【0030】
<インペラ100>
図2は、インペラ100を中心軸Cxに沿う下方から見た斜視図である。図3は、インペラ100を中心軸Cxに沿う上方から見た斜視図である。インペラ100は、インペラハブ1と、複数の羽根2と、保持リング3と、を有する。インペラ100において、インペラハブ1、複数の羽根2及び保持リング3は、単一の樹脂で一体的に成形される。
【0031】
<インペラハブ1>
図2図3に示すように、インペラハブ1は、ハブ筒部11と、ハブフランジ12と、を有する。ハブ筒部11は、中心が中心軸Cxと重なる筒状である。すなわち、ハブ筒部11は、中心軸Cxに沿って延びる。ハブ筒部11は、貫通孔110を有する。ハブ筒部11は、第1内周面111と、第2内周面112とを有する。第1内周面111と第2内周面112とは、軸方向に並んで配置される。ハブ筒部11において、第2内周面112は軸方向において第1内周面111の上方に配置される。すなわち、ハブ筒部11は、第1内周面111と、第1内周面111の軸方向上方に配置される第2内周面112とを有する。
【0032】
第1内周面111には、複数(ここでは、7つ)の接触部13が周方向に並んで配置される。接触部13は、第1内周面111から径方向内方に突出する。そして、接触部13な、径方向内方に接触面131を有する。接触面131はロータケース203の外周面と接触して、ロータケース203を保持する。すなわち、ハブ筒部11には、前記ロータ202が固定される。そのため、ハブ筒部11において、接触面131は、他の部分に比べて、表面の面精度が高い。すなわち、ハブ筒部11は、第1内周面111から径方向内方に突出してロータ202の外周面と接触する接触部13を有する。
【0033】
なお、「面精度が高い」とは、表面粗さが小さい面であるとともに、面の形状の精度が高いことを指す。例えば、接触面131は、円筒形状であり、接触面131の全面において、曲率が同じであるとともにその中心が、中心軸Cxと略重なる構成であることを示す。なお、接触面131は、ロータケース203を強固に保持できる構成であれば、曲面に限定されず、平面であってもよい。この場合も、平面度が高く、中心軸Cxに対する角度が決められた角度であることを示す。
【0034】
詳細は後述するが、インペラ100は、金型400に樹脂を射出し、硬化させることで成形される。インペラ100において、接触部13の接触面131には、高い面精度が要求されるが、それ以外の部分には、接触面131の面精度が要求されない。そして、接触部13は、周方向に配列されている。そのため、金型400の製造のコストを低減することができる。
【0035】
第2内周面112は、中心軸Cxを中心とする円筒面である。そして、第2内周面112の下端部、つまり、第1内周面111と近接する部分には、径方向内方に突出する突出部113が形成される。すなわち、突出部113は、第2内周面112の軸方向下端に配置される。突出部113は、第2内周面112と一体的に形成されており、環状である。すなわち、ハブ筒部11は、第2内周面112から径方向内方に拡がり周方向に連続した環状の突出部113を有する。そして、突出部113の内径は、接触部13のロータ202と接触する包絡面の内径よりも小さい。
【0036】
ハブフランジ12は、ハブ筒部11の外周面から径方向外方に拡がる環状であり、羽根2の径方向内方の端部を保持する。さらに説明すると、ハブフランジ12は、軸方向の上側の第1面121と、下側の第2面122と、を有し、第1面121及び第2面122は、中心軸Cxと直交する。
【0037】
<羽根2>
羽根2は径方向外方及び軸方向に拡がる平板状である。羽根2は、径方向が長手方向の長方形状の面を周方向の両端に有する。複数の羽根2は、周方向に等間隔で配列されている。すなわち、インペラ100は、上下に延びる中心軸Cxを中心に周方向に並んで配置された複数の羽根2を有する。なお、複数の羽根2の配列は、等間隔でなくてもよい。羽根2は、径方向の内方の端部がハブフランジ12と接続している。ハブフランジ12は、羽根2の軸方向の中間部(中央部)と交差する。
【0038】
インペラ100が回転するとき、羽根2が空気を押すことで、径方向外方に向く気流が発生する。インペラ100が軽量化されることで、インペラ100の回転時のエネルギを減らすことができる。また、羽根2の幅を狭くすることで、羽根2の間の空間を広くすることができる。そのため、羽根2の幅が狭くなることで、気流の流量が多くなる。つまり、送風効率を高めることができる。このことからも、羽根2を薄くすることが省エネルギ化につながる。
【0039】
一方で、羽根2の幅が狭くなると、回転時の風圧、モータ200の振動等によって変形しやすく(撓みやすく)なる。羽根2が撓むと送風効率が低下する虞がある。そこで、本実施形態におけるインペラ100は、羽根2の径方向外端の軸方向上端に環状の保持リング3を有する。すなわち、インペラ100は、羽根2の径方向外端部の上端と接触する環状の保持リング3を有する。複数の羽根2は、保持リング3に保持される。これにより、複数の羽根2の剛性が高められ、羽根2の変形による送風効率の低下を抑制される。
【0040】
インペラ100の詳細について、新たな図面を参照して説明する。図4は、インペラ100の一部を軸方向下方から見た拡大斜視図である。図5は、インペラ100の一部を軸方向上方から見た拡大斜視図である。
【0041】
図2図5に示すように、インペラ100において、羽根2は、上下に延びる中心軸Cxを中心に周方向に並んで配置され、周方向に並ぶ2つを1組として複数の羽根組20を構成する。周方向に隣り合う2枚の羽根2が1組の羽根組20を構成する。つまり、インペラ100では、複数組の羽根組20が周方向に並んで配列されている。
【0042】
そして、インペラ100のハブフランジ12には、第1段部14と、第2段部15と、フランジ段部16と、が形成される。図2図4に示すとおり、第1段部14及びフランジ段部16は、ハブフランジ12の下面12Lに形成される。また、図3図5に示すとおり、第2段部15は、ハブフランジ12の上面12Uに形成される。
【0043】
図2図4に示すとおり、第1段部14は、各羽根組20を構成する2つの羽根2の周方向外方の端面21のハブフランジ12と接触する部分の径方向内端同士を繋ぐ線状である。すなわち、ハブフランジ12は下面12Lから突出した第1段部14を有し、第1段部14は各羽根組20の各羽根2の周方向外方の端面21の径方向内端同士を繋ぐ(径方向内方に凸の)線状である。
【0044】
軸方向から見て、第1段部14は径方向内方に延びるとともに、径方向内方の端部が曲線である。そして、第1段部14は、軸方向下方に盛り上がる形状を有する。なお、第1段部14、金型400の形状によって形成される。
【0045】
また、フランジ段部16は第1段部14よりも径方向内方に配置される。本実施形態のインペラ100において、フランジ段部16は、ハブフランジ12の下面12Lに配置され、第1段部14よりも径方向内方に配置される線状である。すなわち、ハブフランジ12は下面12Lから突出して第1段部14よりも径方向内方に配置される線状のフランジ段部16を有する。フランジ段部16は、軸方向から見て円形である。
【0046】
また、この構成以外にも、例えば、フランジ段部16は、楕円等の円以外の曲線で構成される形状であってもよいし、多角形であってもよい。フランジ段部16は、軸方向下方に盛り上がる形状であってもよい。そして、フランジ段部16は隣り合う第1段部14の周方向の間に配置される。
【0047】
図3図5に示すとおり、第2段部15は、各羽根組20を構成する2つの羽根2の周方向内方の端面22のハブフランジ12と接触する部分の径方向内端同士を繋ぐ線状である。軸方向から見て、第2段部15は径方向内方に延びるとともに、径方向内方の端部が曲線である。すなわち、ハブフランジ12は上面から突出した第2段部15を有し、第2段部15は各羽根組20の羽根2の対向する端面22の径方向内端同士を繋ぐ(径方向内方に凸の)線状である。そして、第2段部15は、金型400の後述する形状によって形成される。
【0048】
さらに、本実施形態において、保持リング3の下面3Lには、リング段部31が形成される。さらに説明すると、軸方向から見たとき、リング段部31は、羽根2の間に配置される。実施形態のインペラ100において、リング段部31は、軸方向から見て円形の線状である。すなわち、保持リング3は下面3Lから突出して、羽根2の間に配置される線状のリング段部31を有する。そして、リング段部31は隣り合う第1段部14の周方向の間に配置される。
【0049】
またこの構成以外にも、例えば、リング段部31は、楕円等の円以外の曲線で構成される形状であってもよいし、多角形であってもよい。
【0050】
<金型400>
次に、インペラ100の樹脂成形を行うときに用いる金型について、図面を参照して説明する。図6は、金型400の中心軸Cxを含む断面で切断した断面図である。図7は、第1金型4、抜きピン43、カッター44及びインジェクタ45の上方から見た分解斜視図である。図8は、第2金型5、エジェクタピン61の下方から見た分解斜視図である。図6において、射出された樹脂は、ドットハッチで示す。
【0051】
金型400は、第1金型4の上に第2金型5を有する。なお、金型400の説明において、第1金型4及び第2金型5の配置方向を上下方向と定義し、第1金型4が配置される側を「下(図中D3と示す)」、その反対側を「上(図中D4と示す)」と定義する。つまり、金型400を用いた説明を行う場合において、上下の定義を上述のインペラ100の上下と逆に定義する。つまり、樹脂成形を行う場合において、インペラ100は、金型において上下逆向きに成形される。
【0052】
図6図7に示すように、金型400は、第1金型4と、第2金型5と、抜きピン43と、エジェクタピン61と、フランジプッシュピン62と、リングプッシュピン63と、カッター44と、インジェクタ45と、を有する。第1金型4、第2金型5、抜きピン43、エジェクタピン61、フランジプッシュピン62、リングプッシュピン63、カッター44及びインジェクタ45は、溶融した樹脂が接触したときに、熱により変形しにくい材料で形成されている。また、各部材には、樹脂の貼りつきを抑制するため、離型剤が塗布されていてもよい。
【0053】
第1金型4及び第2金型5の中心は、中心軸Cxと重なる。すなわち、第1金型4及び第2金型5は、軸方向に向い合せに配置される。第1金型4と第2金型5とは、例えば、ねじ等の締結具によって締結されることで密着される。ここで、「密着」とは、部材同士の接触部分から樹脂が漏れない程度に接触している状態を示す。
【0054】
<第1金型4>
第1金型4は、本体部41と、板状部42とを有する。本体部41は、円筒状であり、中央に中心軸Cxに沿って貫通するカッター収納孔411を有する。板状部42は、本体部41の外周面の軸方向下端部から径方向外方に拡がる円環状である。
【0055】
また、カッター収納孔411の内部には、カッター44及びインジェクタ45が、配置される。すなわち、第1金型4は、軸方向から見て中央部分に軸方向に貫通しカッター44が収納されるカッター収納孔411を有する。抜きピン43及びカッター44は、第1金型4に対して軸方向に第2金型5から離れる方向の移動可能である。すなわち、複数の抜きピン43は、第1金型4に配置されて軸方向に第2金型5と離れる方向に移動可能である。また、インジェクタ45は、第1金型4に対して軸方向に移動可能であるとともに着脱可能である。
【0056】
<カッター44>
カッター44は、円筒状であり、円柱状の外周面441を有する。また、カッター44の上面442は、軸方向上方に向かうにつれて径方向外方に向かう傾斜面であり、上端部が外周面と交差する。外周面441と上面442とが重なる部分がカッター44の切り刃444である。カッター44の外周面441の外径は、本体部41のカッター収納孔411の内径と同じ又は略同じである。そのため、カッター44は、外周面441が本体部41のカッター収納孔411の内周面と接触した状態で、軸方向に移動できる。
【0057】
組み立てられた金型400において、カッター44の切り刃444と第2金型5と隙間が、ゲート部401である。すなわち、第1金型4と第2金型5を組み合わせ、インジェクタ45を内方に配置したカッター44をカッター収納孔411に取り付けたとき、カッター44の先端の切り刃444と第2金型5とは軸方向に隙間を開けて配置され、隙間が樹脂を径方向外方に射出するゲート部401を形成する。
【0058】
<インジェクタ45>
カッター44の内部には、インジェクタ45が配置される。インジェクタ45は、円板状であり、インジェクタ45は、軸方向から見て中央部分に注入部451を有する。すなわち、インジェクタ45は、カッター44の径方向内方に配置されて樹脂が注入される注入部451を有する。インジェクタ45の注入部451を介して、樹脂が注入される。注入部451は、貫通孔であり、注入部451の外部の開口には、不図示の樹脂供給部が接続される。
【0059】
インジェクタ45の外周面452の外径は、カッター44の内周面443の内周面と同じ又は略同じであり、インジェクタ45は、カッター44に対して軸方向に移動可能である。カッター44及びインジェクタ45は、金型400の一部として利用される構成である。第1金型4とカッター44との間、カッター44とインジェクタ45との間は樹脂の漏れを抑制するため、隙間が無いことが好ましいが、樹脂が漏れない程度の隙間が形成されていてもよい。以下の説明において、樹脂が漏れない程度に閉じられた状態を「密閉」と称する。なお、密閉される隙間の幅は、射出される樹脂の特性によって変化する。
【0060】
<抜きピン43>
また、図7に示すように、第1金型4には、複数個の抜きピン収納孔412が形成される。抜きピン収納孔412は軸方向から見て径方向に延びる形状であり、軸方向に貫通する。抜きピン収納孔412は、本体部41及び板状部42の両方に渡って形成される。抜きピン収納孔412には、抜きピン43が配置される。第1金型4の後述する抜きピン収納孔412に抜きピン43が配置される。
【0061】
抜きピン43について図面を参照して説明する。図9は、第1金型4の抜きピン収納孔412に抜きピン43が挿入された状態の上から見た斜視図である。図9に示す状態において、抜きピン43の軸方向下面は第1金型4の下面と面一となっている。そして、この状態を抜きピン43が抜きピン収納孔412に収容された状態と称する。
【0062】
図7図9に示すように、軸方向から見て抜きピン43は、径方向外方が太くなる板状である。抜きピン43は、第1ピン部431と、第1ピン部431よりも径方向外方に配置される第2ピン部432とを有する。第1ピン部431は、抜きピン収納孔412の本体部41に形成される部分に配置される。第2ピン部432は、抜きピン収納孔412の板状部42に形成される部分と軸方向に重なって配置される。
【0063】
図7に示すとおり、第1ピン部431の軸方向の長さは、第2ピン部432の軸方向の長さよりも短い。換言すると、抜きピン43は、径方向内方の上部に、切欠きを有する構成となっている。図9に示すように、抜きピン43が収容されているとき、第1ピン部431の上面は第1金型4の本体部41の上面と面一になる。また、第2ピン部432の上部は、本体部41の上面よりも上方に位置する。詳細は後述するが、金型400の内部に樹脂を射出し、インペラ100を形成するときに、抜きピン43の第2ピン部432は、羽根組20を構成する羽根2の間に配置される。すなわち、抜きピン43は、前記羽根組を構成する2つの前記羽根の間に配置される。
【0064】
<第2金型5>
第2金型5について図面を参照して説明する。図10は、エジェクタピン61、フランジプッシュピン62及びリングプッシュピン63が配置された状態の第2金型5を下から見た斜視図である。
【0065】
図8図10に示すとおり、第2金型5は、本体部51と、羽根支持部52と、エジェクタピン収納孔511と、フランジプッシュピン収納孔512と、リングプッシュピン収納孔513と、を有する。
【0066】
図8に示すように、第2金型5の本体部51は、中心軸Cxを中心とする円柱状である。本体部51は、径方向中央側の部分が、径方向外縁部に比べて軸方向の幅が狭い。つまり、本体部51の径方向中央部分には、軸方向に凹んだ中央段部510が形成される。この中央段部510が形成されている部分は、第1金型4の本体部41と隙間を開けて対向する。この隙間部分に樹脂が射出され、硬化されることで、インペラ100のインペラハブ1が形成される。
【0067】
第2金型5には、中央部に軸方向に凹んだ凹部514が形成され、凹部514の内部には凹部514の底面から下方に突出した内凸部53が配置される。すなわち、第2金型5は、軸方向から見て中央部分に軸方向に凹む凹部514と、凹部514の内部に凹部514の内周面と隙間を介して配置され、凹部514の底面から軸方向に突出する内凸部53と、を有する。なお、内凸部53は、第2金型5と単一の部材で一体的に形成されてもよいし、第2金型5と別体であってもよい。内凸部53の詳細については、後述する。
【0068】
エジェクタピン収納孔511は、本体部51に形成され、軸方向に貫通する孔である。そして、エジェクタピン収納孔511は、周方向に並んで配置される。さらに説明すると、本体部51において、エジェクタピン収納孔511と、羽根支持部52とは、周方向に交互に配置される。
【0069】
羽根支持部52は、本体部51と単一の部材で一体的に形成される。羽根支持部52は、径方向内方の第1支持部521と、第1支持部521よりも径方向外方に配置された第2支持部522とを有する。第1支持部521の軸方向の長さは、第2支持部522の軸方向の長さよりも短い。つまり、図8に示すように羽根支持部52の径方向内方は、軸方向に凹む段が形成されている。
【0070】
第2支持部522の軸方向下面の径方向外端部には、軸方向上方に凹んだリング凹部523が形成される。組み立てられた金型400において、リング凹部523には、樹脂が流れ込む構成となっている。リング凹部523に射出された樹脂が硬化することで、インペラ100の保持リング3が構成される。
【0071】
リング凹部523の底部には、リングプッシュピン収納孔513が配置される。リングプッシュピン63は円柱状であり、リングプッシュピン収納孔513に収納される。リングプッシュピン63の外径は、リングプッシュピン収納孔513の内径と同じ又は略同じである。リングプッシュピン63は、外周面がリングプッシュピン収納孔513の内周面と接触した状態で軸方向に移動可能である。また、リングプッシュピン収納孔513とリングプッシュピン63との間は、樹脂の漏れを抑制するため、隙間が無いことが好ましいが、リングプッシュピン63が移動することを考慮して、密閉される程度の隙間があってもよい。
【0072】
また、フランジプッシュピン収納孔512は、本体部51の凹部514と羽根支持部52との間に配置される。フランジプッシュピン62は円柱状であり、フランジプッシュピン収納孔512に収納される。フランジプッシュピン62の外径は、フランジプッシュピン収納孔512の内径と同じ又は略同じである。フランジプッシュピン62は、外周面がフランジプッシュピン収納孔512の内周面と接触した状態で軸方向に移動可能である。また、フランジプッシュピン収納孔512とフランジプッシュピン62との間は、樹脂の漏れを抑制するため、隙間が無いことが好ましいが、フランジプッシュピン62が移動することを考慮して、密閉される程度の隙間があってもよい。
【0073】
内凸部53は、外周面に径方向内方に凹む外周凹部531を有する。凹部514の内周面と内凸部53の外周面との間には、隙間が形成される。この隙間に射出された樹脂が硬化することで、インペラ100のハブ筒部11の一部が形成される。そして、外周凹部531に射出された樹脂が硬化することで、接触部13が形成される。上述したとおり、接触部13の接触面131は、他の部分よりも面精度が高い。そのため、外周凹部531の内面は、他の部分に比べて表面粗度が小さい。
【0074】
<エジェクタピン61>
エジェクタピン61について、図面を参照して説明する。図11は、エジェクタピン61及び抜きピン43をエジェクタピン収納孔511から引き出した状態を示す分解斜視図である。図12は、エジェクタピン収納孔511の内部のインペラ100の羽根組20を示す断面図である。
【0075】
エジェクタピン61は、第2金型5のエジェクタピン収納孔511に収納される。エジェクタピン収納孔511に収納されるエジェクタピン61は、エジェクタピン収納孔511の内面と接触体状態で、中心軸Cxに沿う方向に第1金型4に接近する方向に移動可能である。すなわち、複数のエジェクタピン61は、第2金型5に配置されて少なくとも一部が抜きピン43と軸方向に対向し、軸方向に第1金型4に接近する方向に移動可能である。また、エジェクタピン61がエジェクタピン収納孔511に収納されることで、第2金型5の上面が密閉される。エジェクタピン61は、本体部611と、第1柱部612と、第2柱部613と、第1支持板614と、第2支持板615とを有する。
【0076】
本体部611は、径方向に延びる長尺の板状である。軸方向から見て、本体部611は、径方向外方に向かうにつれて周方向に拡がる。軸方向から見て本体部611は、エジェクタピン収納孔511と重なる形状である。本体部611の下面は、周方向に離れて、羽根組20を構成する2つの羽根2のそれぞれの下端と接触する羽根接触部616を有する。エジェクタピン61が軸方向に移動するとき、羽根接触部616は、羽根組20の2つの羽根2の両方をそれぞれ押す。エジェクタピン61の移動を含む、インペラ100の金型400からの離型動作については後述する。
【0077】
第1柱部612は、本体部611の下面の径方向外端から、下面と直交する方向の下方に延びる。第1柱部612の下端部は本体部611の上面を第2金型5の上面と面一としたとき、第2金型5の下面と面一となる。第1柱部612の径方向内面は、周方向に離れて羽根組20を構成する2つの羽根2のそれぞれの径方向外端と接触する。
【0078】
第2柱部613は、本体部611の下面の径方向内端から、下面と直交する方向の下方に延びる。第2柱部613の下端部は本体部611の上面を第2金型5の上面と面一としたとき、第2金型5の本体部51の中央段部510と面一となる。
【0079】
第1支持板614は、本体部611の下面から下方に延びるとともに、第1柱部612の径方向内方から径方向内方に延びる。つまり、第1支持板614は、本体部611の下面及び第1柱部612の径方向内面と一体的に形成された部材である。第1支持板614の軸方向の長さは、第1柱部612の軸方向の長さよりも短い。そして、第1支持板614の軸方向下面は、リング凹部523と面一となる。第1支持板614の軸方向下面は、インペラ100の保持リング3の下面3Lと接触する。つまり、第1支持板614の軸方向の下面によって、保持リング3が形成される。
【0080】
第2支持板615は、本体部611の下面から下方に延びるとともに、第2柱部613の径方向外方から径方向内方に延びる。つまり、第2支持板615は、本体部611の下面及び第2柱部613の径方向外面と一体的に形成された部材である。
【0081】
図11図12に示すように、金型400を組み立てたとき、抜きピン43とエジェクタピン61とは、軸方向に並んで配置される。さらに説明すると、抜きピン43は、エジェクタピン61の下面に配置され、抜きピン43の第2ピン部432は、本体部611の下面と接触するとともに、第1支持板614及び第2支持板615とそれぞれ接触して配置される。このとき、抜きピン43の第1ピン部431とエジェクタピン61の第2支持板615とは、軸方向に隙間を介して配置される。この隙間の軸方向の幅は、第1金型4の本体部41と第2金型5の中央段部510との軸方向の幅と同じである。つまり、抜きピン43の第1ピン部431とエジェクタピン61の第2支持板615との隙間によって、ハブフランジ12が形成される。
【0082】
金型400の組立について説明する。まず、抜きピン43、カッター44、インジェクタ45が、第1金型4の抜きピン収納孔412及びカッター収納孔411に収納される。これにより、下側の金型が形成される。そして、エジェクタピン61、フランジプッシュピン62及びリングプッシュピン63が、エジェクタピン収納孔511、フランジプッシュピン収納孔512及びリングプッシュピン収納孔513に収納される。これにより、上側の金型が形成される。そして、下側の金型の上部に、上側の金型を軸方向に重ねる。このとき、抜きピン43の第2ピン部432がエジェクタピン61の第1支持板614及び第2支持板615の間に配置される。
【0083】
図11図12に示すように、金型400では、第1金型4の上部に第2金型5を配置したとき、下面に抜きピン43が接触したエジェクタピン61が第2金型5のエジェクタピン収納孔511の内部に配置される。金型400において、エジェクタピン収納孔511の上部は、エジェクタピン61の本体部611に塞がれ、周方向の両側は、羽根支持部52によって塞がれる。そして、エジェクタピン収納孔511の下部は、第1金型4によって塞がれる。さらに、エジェクタピン収納孔511の周方向の中央には、抜きピン43が配置される。抜きピン43は、エジェクタピン収納孔511を周方向に隔離する。
【0084】
エジェクタピン収納孔511では、エジェクタピン61の本体部611の羽根接触部616、羽根支持部52、抜きピン43及び第1金型4にて囲まれ、周方向に離れた2つの空間に樹脂が充填されて硬化されることで、羽根組20を構成する2つの羽根2が形成される。このとき、羽根2の下端部は、エジェクタピン61の本体部611の羽根接触部616と接触する。
【0085】
平面視において、エジェクタピン収納孔511の径方向内端は、羽根組20を構成する2つの羽根2の周方向外方の端面21と接触する部分の径方向内端同士を繋ぐ曲線状に形成される。また、抜きピン43の第1ピン部431の径方向内端は、羽根組20の羽根2の周方向内方の端面22と接触する部分の径方向内端同士を繋ぐ曲線状である。
【0086】
なお、上側の金型と下側の金型とを組み合わせるときに、正確に位置決めするために、第1金型4及び第2金型5に位置決め用の凹部及び凸部を有していてもよい。例えば、第1金型4及び第2金型5の外径を円以外の形状とし、軸方向に形状が重なるときにだけ組み合わせることができる位置決め構造を有していてもよい。位置決め構造については、上述に限定されず、上側の金型と下側の金型とを正確に位置決めして組み合わせることができる構造を広く採用することができる。
【0087】
<インペラ100の製造工程>
上述した金型400を用いて、インペラ100を製造する工程について、図面を参照して説明する。図13は、インペラ100の製造工程のフローチャートである。図14は、カッター44でゲート部401を切断したハブ筒部11の断面図である。図15は、抜きピン43が引き抜かれた状態を示す断面図である。図16は、エジェクタピン61にて羽根組20を押し出した状態を示す断面図である。
【0088】
図13に示すように、まず、金型400を組み立てる(金型組立工程:ステップS101)。金型400の組立は上述のとおり、第1金型4に抜きピン43、カッター44及びインジェクタ45を取り付けて下の金型を形成する。そして、第2金型5にエジェクタピン61、フランジプッシュピン62及びリングプッシュピン63を取り付けて上の金型を形成する。そして、上の金型を下の金型の上に取り付けて金型400を形成する。金型400において、第1金型4の本体部41と第2金型5の中央段部510との間に隙間が形成される(図12参照)。
【0089】
インジェクタ45の注入部451の外部に、樹脂を射出する樹脂供給部(不図示)を接続する。そして、樹脂供給部から供給される樹脂が注入部451を介して、金型400の内部空間に射出される(射出工程:ステップS102)。すなわち、射出工程では、金型400の内部に樹脂を射出する。
【0090】
インジェクタ45の注入部451から金型400の内部に樹脂を流すことで、まず、カッター44、インジェクタ45及び第2金型5の中央段部510で囲まれた空間に樹脂が流入する。そして、この空間に樹脂が満たされると、樹脂は、カッター44と第2金型5の中央段部510との隙間から、径方向外方に流れる。
【0091】
そして、樹脂は、第1金型4と第2金型5との間の隙間を流れ、エジェクタピン収納孔511内のエジェクタピン61の本体部611の羽根接触部616、羽根支持部52、抜きピン43及び第1金型4にて囲まれ、周方向に離れた2つの空間に流入する。
【0092】
金型400では、樹脂が射出されるゲート部401がディスク状に形成される。つまり、金型400では、ディスクゲート形式で樹脂が射出される。ディスク状のゲート部401により樹脂を射出する構成とすることで、射出圧力の損失を低減することができる。そして、金型400の端部に樹脂をいきわたらせるため、樹脂を昇温した状態で供給する、いわゆる、ホットランナ仕様である。
【0093】
エジェクタピン61の第2柱部613と第2金型5のエジェクタピン収納孔511の内端との隙間には、樹脂が一部進入する。隙間に樹脂が進入することで、ハブフランジ12の下面12Lに第1段部14が形成される。
【0094】
同様に、フランジプッシュピン62と第2金型5のフランジプッシュピン収納孔512との隙間にも、樹脂が一部進入する。隙間に樹脂が進入することで、ハブフランジ12の下面12Lにフランジ段部16が形成される。
【0095】
さらに、リングプッシュピン63と第2金型5のリングプッシュピン収納孔513との隙間にも、樹脂が一部進入する。隙間に樹脂が進入することで、保持リング3の下面3Lにリング段部31が形成される。
【0096】
また、抜きピン43と第1金型4の抜きピン収納孔412との隙間にも樹脂が一部進入する。隙間に樹脂が進入することで、ハブフランジ12の上面12Uに第2段部15が形成される。
【0097】
樹脂の射出が終了した後、樹脂が一定の温度になるまで冷却して硬化させる(樹脂硬化工程:ステップS103)。樹脂硬化工程では、樹脂を硬化させる。樹脂は、冷却されることで、流動性が低下する、つまり、硬化する。樹脂硬化工程(ステップS103)では、金型400の内部の樹脂が予め決められた温度に冷却する。この予め決められた温度としては、例えば、樹脂の形状はある程度固定されているが、変形は可能な程度の温度を挙げることができる。なお、冷却工程において、樹脂の急速な冷却を抑制するため、金型400の温度を保ちながら冷却するようにしてもよい。また、金型400に樹脂の温度を測定する測定部を設けてもよいし、経過時間に基づいて冷却状態を判定してもよい。
【0098】
金型400の内部の樹脂が一定の温度に冷却された後(樹脂硬化工程:ステップS103の後)、ディスク状に形成されたゲート部401を円筒状に切断する(切断工程:ステップS104)。切断工程(S104)において、カッター44が上方に移動する。これにより、カッター44の上端の切り刃444によって、ゲート部401が切断される。ゲート部401が切断されることで、インペラ100のハブ筒部11の第2内周面112が形成される。すなわち、カッター44は、第1金型4と第2金型5との間に充填された樹脂を切断する筒状である。
【0099】
接触部13は、内凸部53の外周凹部531に射出された樹脂が硬化して形成される。カッター44の切り刃444は、接触部13と軸方向に略重なる位置に配置されており、カッター44の切り刃444が内凸部53の軸方向下端面と接触することで、切断工程(S104)が終了する(図14参照)。そのため、カッター44の切り刃444の接触部13への到達が抑制される。これにより、カッター44の切り刃444が、接触部13、特に、接触面131に接触することが抑制され、接触面131の面精度が保たれる。
【0100】
なお、切断工程(S104)では、インペラ100を構成する樹脂にある程度の柔軟性が残っている状態(温度)のときに、カッター44を移動させてゲート部401を切断する。このようにすることで、カッター44の切り刃444の負担を減らすことができるとともに、カッター44の移動により発生する応力を低く抑えることができ、残留応力によるインペラ100の歪み、特に、接触部13の接触面131の面精度の低下を抑制できる。
【0101】
上述したとおり、切断工程(S104)において、ゲート部401を切断するとき、インペラ100は、流動を抑制しつつ変形可能な状態である。そのため、鋭利な切り刃444でゲート部401を切断する場合であっても、切断の最終端部は、カッター44の切り刃444では切り取れない部分が形成される。より具体的には、第1内周面111の軸方向上端部分には、径方向内方に突出した環状の突出部113が形成される。なお、本実施形態のインペラ100では、第1内周面111側の接触部13の接触面131にモータ200のロータケース203が取り付けられる。そのため、第2内周面112の表面には、接触面131ほどの面精度は要求されない。つまり、第2内周面112の上端部に径方向に突出する突出部113が形成されていても、インペラ100を用いた送風装置300の動作には直接影響が出ない又は略でない。
【0102】
また、切断工程(S104)では、金型400の一部であるカッター44を軸方向に移動させるだけでよいため、切断工程(S104)は、簡単かつ速やかに実行される。
【0103】
そして、切断工程(S104)でゲート部401を切断した後、金型400とインペラ100とを分離する(離型工程:S105)。離型工程は、金型400を離型する。ここで、離型工程(S105)の詳細について図面を参照して説明する。
【0104】
まず、抜きピン43を第1金型4から引き抜く。抜きピン43は、第1金型4の下方に軸方向に移動することで、金型400から引き抜かれる(図15照)。抜きピン43が引き抜かれるとき、第1金型4は、第2金型5に組み合わせられた状態であり、インペラ100、特に、羽根2の上端部は、第1金型4に押えられている。そのため、インペラ100への影響を抑制しつつ、抜きピン43を引き抜くことができる。
【0105】
全ての抜きピン43が引き抜かれた後、第1金型4を第2金型5から軸方向に引き離す(図16参照)。これにより、第2金型5の下面からインペラ100の上部が露出する。その後、エジェクタピン61、フランジプッシュピン62及びリングプッシュピン63を下方に移動させ、インペラ100を第2金型5から押し出す(図16参照)。エジェクタピン61は羽根組20を構成する羽根2を、フランジプッシュピン62はハブフランジ12を、リングプッシュピン63は保持リング3をそれぞれ独立して押す。
【0106】
全てのエジェクタピン61、フランジプッシュピン62及びリングプッシュピン63は、同時に且つ同じ移動速度でインペラ100を押し出すことが好ましい。このようにすることで、インペラ100に部分的に力が作用することを抑制し、インペラ100のひずみを抑制できる。
【0107】
エジェクタピン61による羽根2の押出しについて説明する。エジェクタピン61の本体部611は、2つの羽根接触部616を有する。各羽根接触部616は、羽根組20を構成する2つの羽根2のそれぞれと接触する。そして、インペラ100を押し出すとき、1つのエジェクタピン61が羽根組20の2つの羽根2を同時に押す。すなわち、エジェクタピン61は、羽根組20を構成する2つの羽根2を同時に押すことができる位置に配置される。すなわち、第1金型4及び抜きピン43を離型した後、各エジェクタピン61が、羽根組20を構成する2つの羽根2を同時に押す。これにより、エジェクタピン61の個数を減らすことができる。
【0108】
エジェクタピン61の周方向の幅は、羽根2の厚み(周方向の幅)にかかわらず、羽根組20の周方向の幅であればよい。インペラ100を金型400から取り出すときに、羽根組20の2つの羽根2をまとめて押すことができるエジェクタピン61を用いるため、エジェクタピン61の周方向の幅を羽根2の薄さに合わせなくてもよいので、羽根2が薄くなってもエジェクタピン61を容易に製造することができる。また、エジェクタピン61で2つの羽根2を同時に押すため、離型時の羽根2の負担が低減される。
【0109】
また、インペラ100を樹脂の射出成形で製造する場合において、金型400の中央部から樹脂を充填する構成とするため、金型400の内部に樹脂を迅速に射出することができる。これにより、成形の精度を高めることができる。また、接触部13以外の部分では、接触部13の接触面131に比べて要求される寸法精度が低い。そのため、カッター44による切断を採用することができるため、インペラの製造の手間と時間を省くことができる。
【0110】
エジェクタピン61、フランジプッシュピン62及びリングプッシュピン63でインペラ100を同時に押すことで、インペラ100が、第2金型5から押し出される、つまり、離型される。なお、第2金型5において、インペラ100の離型を容易にするため、羽根支持部52には、抜き勾配が形成されていてもよい。
【0111】
以上示した金型400及び成形方法を採用することで、インペラ100のハブフランジ12の下面12Lに第1段部14、フランジ段部16が形成される。また、ハブフランジ12の上面12Uに第1段部15が形成される。さらに、保持リング3の下面3Lにリング段部31が形成される。
【0112】
上述した実施形態では、抜きピン43が第1金型4に対して分離可能としているが、これに限定されない。例えば、抜きピン43は、第1金型4に対して軸方向に移動可能であるとともに、第1金型4から分離しないように配置されてもよい。また、抜きピン43は、第1金型4に固定されていてもよい。さらに、第1金型4と抜きピン43とが単一の部材で形成されてもよい。このように構成することで、金型400の構成部材を減らし、金型400の組み立てを簡略化できる。
【0113】
また、上述した実施形態では、エジェクタピン61、フランジプッシュピン62及びリングプッシュピン63は第2金型5に対して分離可能としているが、これに限定されない。例えば、エジェクタピン61、フランジプッシュピン62及びリングプッシュピン63の少なくとも一つが、第2金型5に対して軸方向に移動可能であるとともに、第2金型5から分離しないように配置されてもよい。
【0114】
<変形例>
変形例のインペラ100A及び金型400Aについて、図面を参照して説明する。図17は、硬化した直後の金型400Aのハブ筒部11Aの周囲の拡大断面図である。図18は、変形例のインペラ100Aのハブ筒部11Aの周囲の拡大断面図である。
【0115】
インペラ100Aは、ハブ筒部11Aの形状が、インペラ100のハブ筒部11と異なるが、それ以外の部分は、インペラ100と同じ構成を有する。そのため、インペラ100Aのインペラ100と実質上同じ部分には、同じ符号を付すとともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。また、ハブ筒部11Aは、第2内周面112Aが、ハブ筒部11の第2内周面112とは異なるが、それ以外の部分は、ハブ筒部11と同じ構成を有する。そのため、ハブ筒部11Aのハブ筒部11と実質上同じ部分には同じ符号を付すとともに同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0116】
さらに、金型400Aにおいて、第1金型4A及び第2金型5Aが、第1金型4及び第2金型5と異なる。さらに説明すると、第1金型4Aは、本体部のカッター収納孔411が省略されている点で、第1金型4と異なるが、それ以外の部分は第1金型4と同じである。また、第2金型5Aは、内凸部53Aにカッター収納孔532を有するとともに、カッター収納孔532にカッター54及びインジェクタ55が配置される点で、第2金型5と異なるが、それ以外の部分は第2金型5と同じである。そのため、第1金型4A及び第2金型5Aの第1金型4及び第2金型5と実質上同じ部分については、同じ符号を付すとともに同じ部分の詳細な説明は省略する。また、金型400Aでは、第1金型4Aが第2金型5Aの上部に配置されている点も、金型400と異なる。
【0117】
図17に示すように、本変形例では、第2金型5Aにカッター54を配置し、カッター54を第1金型4に向かって移動させることで、第2内周面112Aを形成している。なお、カッター54及びインジェクタ55は、カッター44及びインジェクタ45と対応する構成を有する。
【0118】
カッター54は、外周面541、下面542、内周面543及び切り刃544を有する。外周面541は外周面441と対応し、下面542は上面442と対応し、内周面543は内周面443と対応し、切り刃544は切り刃444と対応する。また、インジェクタ55は、インジェクタ45の注入部451と対応する注入部551を有する。
【0119】
図17に示すように、第2金型5Aは、内凸部53Aの径方向内方にカッター収納孔532を有する。カッター収納孔532は、軸方向に貫通する円筒状の貫通孔であり、中心が中心軸Cxと一致する。カッター収納孔532には、カッター54が収納される。カッター54は、切り刃544が第1金型4Aに対向して配置される。
【0120】
金型400Aにおいて、カッター54の切り刃544は、第2金型5Aの内凸部53Aの下面と径方向に隣り合って配置される。そのため、カッター54の切り刃544と第1金型4Aの本体部41との隙間が、樹脂が射出されるゲート部401Aである。ゲート部401Aは、ディスク状である。
【0121】
樹脂が変形可能であるが流動しない程度に硬化したときに、カッター54を上方、つまり、第1金型4Aに向かって移動させる。これにより、金型400Aのゲート部401Aがカットされる。これにより、ハブ筒部11Aの第2内周面112Aが形成される。
【0122】
ここでは、第2内周面112Aについて説明する。図17に示すように、第2金型5Aのカッター収納孔532の内周面は、内凸部53Aの外周面よりも径方向内方に配置される。内凸部53の外周面とカッター収納孔532の内周面との径方向の幅は一定の幅以上である。このように構成することで、内凸部53Aの剛性低下を抑制することができる。また、内凸部53Aの幅が狭くなりすぎると、正確な形状で形成することが困難である。つまり、内凸部53Aの外周面とカッター収納孔532の内周面との幅を一定の幅以上とすることで、内凸部53Aの外周凹部531の面精度を高めることができる。これにより、樹脂の射出成形で、インペラ100Aのモータ200のロータケース203が取り付けられる接触部13の接触面131の面精度を高めることができる。
【0123】
そして、カッター54が軸方向に移動することで、ゲート部401Aが切断される。上述のとおり、カッター収納孔532が内凸部53Aの外周面よりも一定距離離れているため、カッター54でゲート部401Aを切断したときに、ハブ筒部11Aの軸方向上方の端部には、径方向内方に拡がる内フランジ114が形成される。すなわち、ハブ筒部11Aは、貫通孔110の軸方向上端から径方向内方に拡がる円環状の内フランジ114を有する。図18に示すように、内フランジ114の径方向内面が第2内周面112Aである。第2内周面112Aは、内フランジ114の内周面であって、第2内周面112Aの内径は、接触部13のロータ202と接触する面131の内接円の直径よりも小さい。
【0124】
カッター54の切り刃544が第1金型4Aの本体部41Aと接触することで、ゲート部401Aの切断が終了し、ハブ筒部11Aの第2内周面112Aが形成される。カッター54でゲート部401Aを切断するとき、樹脂が完全に硬化しておらず、粘性があるためハブ筒部11Aの第2内周面112Aの上端部分、換言すると、軸方向で第1内周面111と軸方向反対側の部分には、径方向内方に突出する突出部113が形成される。すなわち、突出部113は、第2内周面112Aの軸方向上端に配置される。そして、突出部113の内径は、接触部13のロータ202と接触する面131の内接円の直径よりも小さい。
【0125】
以上のように、第2金型5A側にカッター54及びインジェクタ55を配置して、樹脂の成形を行うことも可能である。この場合、カッター54の移動方向と、エジェクタピン61、フランジプッシュピン62及びリングプッシュピン63の移動方向とが同じである。そのため、これらの部材を移動させるための駆動機構を共通化することが可能であり、製造装置を簡略化することができる。
【0126】
また、ハブ筒部11Aの上部に内フランジ114を有する構成であるため、モータ200のロータケース203を内フランジ114に接触させて配置することができる。これにより、インペラ100Aをロータケース203に取り付けたとき、インペラ100Aの剛性を高めることができる。
【0127】
上述したとおり、軸方向に移動するカッターでゲート部を切断してインペラの樹脂成形を行うため、インペラの製造が容易である。また、隣り合う2つの羽根2を1つのエジェクタピン61で押し、インペラ100(100A)を金型400(400A)から押し出す構成であるため、羽根2の周方向の厚みを薄くしても、エジェクタピン61の厚み方向の幅がほぼ変化しないため、エジェクタピン61の形状の精度を落とすことなく、容易に成形することができる。さらに、羽根2の軸方向一方の端部を全体的に押してインペラ100(100A)を押し出すため、インペラ100(100A)の押出し時のひずみ、変形等を抑制することができる。
【0128】
<まとめ>
本発明は、以下の構成を有する。
【0129】
(1)上下に延びる中心軸を中心に回転して気流を発生するインペラであって、
前記中心軸を中心とする径方向外方に延びる複数枚の羽根と、
前記羽根と同じ材料で形成されて前記羽根を保持するインペラハブと、を有し、 前記羽根は、上下に延びる前記中心軸を中心に周方向に並んで配置され、周方向に並ぶ2つを1組として複数の羽根組を構成し、
前記インペラハブは、
中心軸に沿って延びるハブ筒部と、
前記ハブ筒部の外周面から径方向外方に拡がる環状であり、前記羽根の径方向内方の端部を保持するハブフランジと、を有し、
前記ハブフランジは、下面から突出した第1段部を有し、前記第1段部は各前記羽根組の各前記羽根の周方向外方の端面の径方向内端同士をつなぐ線状である、インペラ。
【0130】
(2) 前記ハブフランジは方面から突出した第2段部を有し、
前記第2段部は、各羽根組の各前記羽根の対向する端面の径方向内端同士を繋ぐ線状である(1)に記載のインペラ。
【0131】
(3) 前記ハブフランジは、下面から突出して前記第1段部よりも径方向内方に配置される線状のフランジ段部を有する(1)又は(2)に記載のインペラ。
【0132】
(4) 前記フランジ段部は、隣り合う前記第1段部の周方向の間に配置される(3)に記載のインペラ。
【0133】
(5) 前記羽根の径方向外端部の上端と接触する環状の保持リングを有し、
前記保持リングは下面から突出して前記羽根の間に形成される線状のリング段部を有する(1)から(4)のいずれかに記載のインペラ。
【0134】
(6) 前記リング段部は隣り合う前記第1段部の周方向の間に配置される(5)に記載のインペラ。
【0135】
(7) (1)から(6)のいずれかに記載のインペラと、
前記インペラを回転するモータと、を有する送風装置。
【0136】
(8) (1)から(6)のいずれかに記載のインペラの製造に用いられる金型であって、
軸方向に向い合せに配置される第1金型及び第2金型と、
前記第1金型に配置されて軸方向に前記第2金型と離れる方向に移動可能な複数の抜きピンと、
前記第2金型に配置されて少なくとも一部が前記抜きピンと軸方向に対向し、軸方向に前記第1金型に接近する方向に移動可能な複数のエジェクタピンと、を有し、
前記エジェクタピンは、前記羽根組を構成する2つの前記羽根を同時に押すことができる位置に配置される金型。
【0137】
(9) 前記第1金型と前記抜きピンとが単一の部材で形成される(8)に記載の金型。
【0138】
(10)(8)又は(9)に記載の金型を組み立てる組み立て工程と、
前記金型の内部に樹脂を射出する射出工程と、
前記樹脂を硬化させる樹脂硬化工程と、
前記金型を離型する離型工程と、を有し、
前記離型工程において、
前記第1金型及び前記抜きピンを離型した後、各前記エジェクタピンが、前記羽根組を構成する2つの前記羽根を同時に押す、インペラの製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明によると、例えば、電子機器を空冷する送風装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0140】
100、100A インペラ
1 インペラハブ
11、11A ハブ筒部
110 貫通孔
111 第1内周面
112、112A 第2内周面
113 突出部
12 ハブフランジ
121 第1面
122 第2面
13 接触部
131 接触面
14 第1段部
15 第2段部
16 フランジ段部
2 羽根
20 羽根組
21 端面
22 端面
3 保持リング
31 リング段部
200 モータ
201 シャフト
202 ロータ
203 ロータケース
204 ロータマグネット
205 ステータ
206 ステータコア
207 コイル
209 軸受
300 送風装置
400、400A 金型
401、401A ゲート部
4、4A 第1金型
41、41A 本体部
411 カッター収納孔
412 抜きピン収納孔
42 板状部
43 抜きピン
431 第1ピン部
432 第2ピン部
44 カッター
441 外周面
442 上面
443 内周面
444 切り刃
45 インジェクタ
451 注入部
452 外周面
5、5A 第2金型
51 本体部
510 中央段部
511 エジェクタピン収納孔
512 フランジプッシュピン収納孔
513 リングプッシュピン収納孔
514 凹部
52 羽根支持部
521 第1支持部
522 第2支持部
523 リング凹部
53 内凸部
531 外周凹部
54 カッター
541 外周面
542 下面
543 内周面
544 切り刃
55 インジェクタ
551 注入部
61 エジェクタピン
611 本体部
612 第1柱部
613 第2柱部
614 第1支持板
615 第2支持板
616 羽根接触部
62 フランジプッシュピン
63 リングプッシュピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18