(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123608
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】コンクリート打設配管
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20240905BHJP
E02D 27/32 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
E04G21/02 103Z
E02D27/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031175
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】松本 修治
(72)【発明者】
【氏名】生川 寛之
(72)【発明者】
【氏名】小沢 栄治
(72)【発明者】
【氏名】柳井 修司
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 良一
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 賢三
(72)【発明者】
【氏名】坂田 昇
【テーマコード(参考)】
2D046
2E172
【Fターム(参考)】
2D046DA05
2E172AA05
2E172CA00
2E172DB01
2E172DE01
(57)【要約】
【課題】巨大な構造物を構築する場合であってもコンクリートの材料分離を抑制できるコンクリート打設配管を提供する。
【解決手段】一実施形態に係るコンクリート打設配管10において、管本体12は、第1リフト部12Aと、第1高さH1から第2高さH2の領域である第2リフト部12Bとを有する。第1リフト部12Aに形成された孔15からコンクリートCを吐出して第1高さH1までコンクリートCを打設する第1打設、及び、第1打設から日を跨いだ後に第2リフト部12Bに形成された孔15からコンクリートを吐出して第2高さH2までコンクリートを打設する第2打設が行われる。複数の孔15のうち第2リフト部12Bの最も下に位置する孔15から第1境界部Z1までの距離X1は、第1リフト部12Aの最も上に位置する孔15から第1境界部Z1までの距離より長い。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に沿って延びるように配置されると共に、上端に形成された開口から内部にコンクリートが注入される管本体を備え、
前記管本体には、前記管本体の長手方向に沿って並ぶ複数の孔が形成されており、
前記管本体は、前記管本体の下端から第1高さまでの領域である第1リフト部と、前記第1高さから前記第1高さよりも高い第2高さまでの領域である第2リフト部とを有し、
前記管本体の前記第1リフト部に形成された前記孔から前記コンクリートを吐出して前記第1高さまで前記コンクリートを打設する第1打設、及び、前記第1打設から日を跨いだ後に前記管本体の前記第2リフト部に形成された前記孔から前記コンクリートを吐出して前記第2高さまで前記コンクリートを打設する第2打設が行われ、
複数の前記孔のうち前記第2リフト部の最も下に位置する孔から前記第1リフト部と前記第2リフト部との第1境界部までの距離は、複数の前記孔のうち前記第1リフト部の最も上に位置する孔から前記第1境界部までの距離より長い、
コンクリート打設配管。
【請求項2】
前記管本体は、前記第2高さから前記第2高さよりも高い第3高さまでの領域である第3リフト部を更に有し、
前記第2打設から日を跨いだ後に前記管本体の前記第3リフト部に形成された前記孔から前記コンクリートを吐出して前記第3高さまで前記コンクリートを打設する第3打設が行われ、
複数の前記孔のうち前記第3リフトの最も下に位置する孔から前記第2リフト部と前記第3リフト部との第2境界部までの距離は、複数の前記孔のうち前記第2リフト部の最も上に位置する孔から前記第2境界部までの距離より長い、
請求項1に記載のコンクリート打設配管。
【請求項3】
前記管本体は、前記孔の周囲から平面視における前記管本体の外側に突出しており前記孔を通った前記コンクリートを貯留する貯留部を有し、
前記貯留部は、貯留した前記コンクリートが漏れ出る漏出口を有する、
請求項1又は2に記載のコンクリート打設配管。
【請求項4】
前記漏出口は、前記孔の上端よりも高い位置に形成されている、
請求項3に記載のコンクリート打設配管。
【請求項5】
前記管本体の内部における前記コンクリートが載せられると共に、前記管本体の内部における前記コンクリートの流下に伴って前記管本体の内面を摺動する摺動部材を備える、
請求項1又は2に記載のコンクリート打設配管。
【請求項6】
複数の前記管本体と、
前記コンクリートを受け入れる受入部、及び前記受入部から複数の前記管本体のそれぞれの前記開口まで延在する複数の分岐部を有するコンクリート分配部材と、
を備える、
請求項1又は2に記載のコンクリート打設配管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、打設されるコンクリートが通るコンクリート打設配管に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、打設空間に配設される間配り管を通じてコンクリートを打設して側壁を構築するコンクリート打設方法が記載されている。側壁の構築においては、複数の型枠が設置され、複数の型枠によって画成された打設空間に間配り管を介してコンクリートが打設される。打設空間には、鉄筋が設置されており、高流動コンクリートが打設される。
【0003】
間配り管は、管壁部に形成された複数の貫通穴を有する。型枠の上方から鉄筋の間を縫って打設空間内に複数の間配り管が挿入されて設置される。各間配り管には上端に設けられたホッパから高流動コンクリートが注入され、各間配り管に注入された高流動コンクリートは貫通穴を通じて打設空間内に供給される。間配り管の下端から最も低い位置にある貫通穴の下端までの高さは、100mm以上とされている。
【0004】
型枠内には3本の間配り管が設置され、3本の間配り管のそれぞれを介して打設空間内に高流動コンクリートが注入される。打設空間内の高流動コンクリートの高さが所定の打ち上がり高さに達することにより、高流動コンクリート層の1層目が形成される。そして、再度各間配り管を介して高流動コンクリートが注入され、当該1層目より高い所定の打ち上がり高さに高流動コンクリートの高さが達することにより、高流動コンクリートの2層目が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、巨大な構造物を構築する場合等には、打設空間へのコンクリートの打設が1日では終わらないことがある。また、巨大な構造物を構築する場合等には、コンクリート打設配管が長くなることがある。このようなコンクリート打設配管を鉛直方向に延びるように配置して、当該コンクリート打設配管の中にコンクリートを注入すると、コンクリートの鉛直落下に伴って材料分離が生じる可能性がある。すなわち、コンクリート打設配管の内部でコンクリートが自由落下によって鉛直下方に移動するときに材料分離が生じる懸念がある。
【0007】
本開示は、巨大な構造物を構築する場合であってもコンクリートの材料分離を抑制できるコンクリート打設配管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るコンクリート打設配管は、(1)鉛直方向に沿って延びるように配置されると共に、上端に形成された開口から内部にコンクリートが注入される管本体を備える。管本体には、管本体の長手方向に沿って並ぶ複数の孔が形成されている。管本体は、管本体の下端から第1高さまでの領域である第1リフト部と、第1高さから第1高さよりも高い第2高さまでの領域である第2リフト部とを有する。管本体の第1リフト部に形成された孔からコンクリートを吐出して第1高さまでコンクリートを打設する第1打設、及び、第1打設から日を跨いだ後に管本体の第2リフト部に形成された孔からコンクリートを吐出して第2高さまでコンクリートを打設する第2打設が行われる。複数の孔のうち第2リフト部の最も下に位置する孔から第1リフト部と第2リフト部との第1境界部までの距離は、複数の孔のうち第1リフト部の最も上に位置する孔から第1境界部までの距離より長い。
【0009】
このコンクリート打設配管はコンクリートが注入される管本体を備え、管本体にはコンクリートが吐出する複数の孔が形成されている。管本体は、少なくとも第1リフト部及び第2リフト部を有する。第1リフト部は管本体の下端から第1高さまでの管本体の領域であり、第2リフト部は第1高さから第2高さまでの管本体の領域である。このコンクリート打設配管を用いて、第1リフト部に形成された孔から第1高さまでコンクリートを打設する第1打設が行われ、第1打設から日を跨いだ後に第2リフト部に形成された孔から第2高さまでコンクリートを打設する第2打設が行われる。第2リフト部の最も下に位置する孔から第1リフト部と第2リフト部との第1境界部までの距離は、第1リフト部の最も上に位置する孔から第1境界部までの距離よりも長い。よって、第1打設を行った日とは別の日に第2打設を行うときに、第2リフト部の最も下に位置する孔から第1境界部までの距離が第1リフト部の最も上に位置する孔から第1境界部までの距離より長いことにより、第2リフト部の最も下の孔から第1境界部までの長さを長くできる。その結果、第1打設とは別の日に第2打設を行うときに、管本体における第1境界部から第2リフト部の最も下の孔までの部分に落下したコンクリートを溜めることができる。この部分にコンクリートを溜めた後に第2リフト部の孔から当該コンクリートを管本体の外部に吐出することにより、コンクリート打設空間に吐出されるコンクリートの材料分離を抑制することができる。
【0010】
(2)上記(1)において、管本体は、第2高さから第2高さよりも高い第3高さまでの領域である第3リフト部を更に有してもよい。第2打設から日を跨いだ後に管本体の第3リフト部に形成された孔からコンクリートを吐出して第3高さまでコンクリートを打設する第3打設が行われてもよい。複数の孔のうち第3リフトの最も下に位置する孔から第2リフト部と第3リフト部との第2境界部までの距離は、複数の孔のうち第2リフト部の最も上に位置する孔から第2境界部までの距離より長くてもよい。この場合、第3リフト部の最も下の孔から第2境界部までの距離が第2リフト部の最も上に位置する孔から第2境界部までの距離よりも長いことにより、第3リフト部の最も下の孔から第2境界部までの長さを長くできる。従って、第3打設を行うときに、管本体における第2境界部から第3リフト部の最も下の孔までの部分に落下したコンクリートを溜めることができる。よって、溜められたコンクリートが管本体の外部に吐出することにより、コンクリート打設空間に吐出されるコンクリートの材料分離を複数の日を跨いだ場合であっても抑制できる。
【0011】
(3)上記(1)又は(2)において、管本体は、孔の周囲から平面視における管本体の外側に突出しており孔を通ったコンクリートを貯留する貯留部を有してもよい。貯留部は、貯留したコンクリートが漏れ出る漏出口を有してもよい。この場合、孔から出たコンクリートは、一旦貯留部に溜められた後に、貯留部の漏出口からコンクリート打設空間に漏出する。このようにコンクリート打設空間に出る前に一旦貯留部にコンクリートが溜められることにより、コンクリート打設空間に吐出されるコンクリートの材料分離をより確実に抑制できる。
【0012】
(4)上記(3)において、漏出口は、孔の上端よりも高い位置に形成されていてもよい。この場合、漏出口の位置が孔の上端よりも高いことにより、貯留部にコンクリートが貯留される時間を長くすることができる。従って、漏出口からコンクリート打設空間に漏出するコンクリートの材料分離を更に確実に抑制できる。
【0013】
(5)上記(1)~(4)のいずれかにおいて、コンクリート打設配管は、管本体の内部におけるコンクリートが載せられると共に、管本体の内部におけるコンクリートの流下に伴って管本体の内面を摺動する摺動部材を備えてもよい。この場合、コンクリートは落下する途中で摺動部材に蓄積され、それに伴って摺動部材が徐々に下方に摺動する。このとき、摺動部材に蓄積されたコンクリートは、摺動部材と共にゆっくりと下方に移動する。このように摺動部材にコンクリートが蓄積されることによってコンクリートの材料分離をより確実に抑制できる。
【0014】
(6)上記(1)~(5)のいずれかにおいて、コンクリート打設配管は、複数の管本体と、コンクリートを受け入れる受入部、及び受入部から複数の管本体のそれぞれの開口まで延在する複数の分岐部を有するコンクリート分配部材と、を備えてもよい。この場合、受入部にコンクリートを入れることによって、コンクリート分配部材を介して複数の管本体のそれぞれにコンクリートを注入できる。従って、巨大な構造物を構築する場合であってもコンクリートの打設作業を効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、巨大な構造物を構築する場合であってもコンクリートの材料分離を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係るコンクリート打設配管によって構築される一例としての構造物を含むハイブリッド浮体を示す斜視図である。
【
図2】
図1のハイブリッド浮体を示す平面図である。
【
図3】
図1の構築物の一例であるコラムの断面図である。
【
図4】(a)は、
図3のA-A線断面図である。(b)は、
図3のB-B線断面図である。
【
図5】
図3のコラムの構築を説明するための現場の平面図である。
【
図6】
図3のコラムの構築を説明するための現場の断面図である。
【
図7】実施形態に係るコンクリート打設配管のコンクリート分配部材を示す斜視図である。
【
図8】
図7のコンクリート分配部材の平面図である。
【
図9】実施形態に係るコンクリート打設配管の管本体を示す側面図である。
【
図12】第2実施形態に係る管本体を示す図である。
【
図13】第3実施形態に係る管本体を示す図である。
【
図14】第4実施形態に係る管本体を示す図である。
【
図15】第5実施形態に係るコンクリート打設配管のコンクリート分配部材を示す図である。
【
図16】第6実施形態に係るコンクリート打設配管の摺動部材を示す断面図である。
【
図17】第7実施形態に係るコンクリート打設配管の管本体を示す図である。
【
図18】第8実施形態に係るコンクリート打設配管の管本体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照しながら本開示に係るコンクリート打設配管の実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0018】
図1は、本実施形態に係るコンクリート打設配管によって構築される構造物を備えるハイブリッド浮体1を示す斜視図である。
図2は、ハイブリッド浮体1の平面図である。例えば、ハイブリッド浮体1は、風力発電機の基礎構造である。当該風力発電機は、例えば、洋上風力発電を行う。ハイブリッド浮体1は、セミサブマーシブル型(セミサブ型)の浮体構造物である。
【0019】
ハイブリッド浮体1は、平面視におけるハイブリッド浮体1の中央に位置するコラム3と、平面視においてコラム3から放射状に延びるロワーハル4とを備える。ロワーハル4は、コラム3が設けられる中央部4bと、中央部4bから放射状に延びる3つの延在部4cとを有する。延在部4cは、コラム3側の端部に位置する根元部4dと、コラム3とは反対側の端部に位置する先端部4fとを有する。
【0020】
先端部4fは、延在部4cの幅方向の一端に位置する第1角部4gと、延在部4cの幅方向の他端に位置する第2角部4hとを含む。延在部4cの長さL2は、例えば、35m以上且つ55m以下(一例として45m)である。長さL2は、コラム3の外周面から延在部4cの先端までの距離に相当する。また、一の延在部4cの先端から他の延在部4cの先端までの距離L3は、例えば、80m以上且つ100m以下(一例として85m)である。
【0021】
コラム3は、本実施形態に係るコンクリート打設配管によって構築される構造物である。コラム3は、例えば、円筒状を呈する。コラム3の直径L4は、例えば、10m以上且つ15m以下(一例として11m)である。コラム3は、ハイブリッド浮体1の洋上風力基礎を構成する。コラム3は、その上端に洋上風力発電機のタワーが接合されるタワー接合部3bを有する。例えば、タワー接合部3bは鋼構造とされている。
図3は、コラム3を示す断面図である。
【0022】
図3に示されるように、タワー接合部3bは、例えば、平面視において環状を呈するダイヤフラム3cと、ダイヤフラム3cにおいて上方に延在するフランジ3dとを有する。フランジ3dは、平面視におけるコラム3の周方向D2(
図4(a)等参照)に沿って延在している。
【0023】
コラム3の高さL5は、例えば、30m以上且つ40m以下である。コラム3は、例えば、鋼殻コンクリート構造(鋼材とコンクリートとの複合構造部)を有する。この場合、コラム3は、筒状を呈する外側鋼板5と、平面視において外側鋼板5の内側に位置する筒状の内側鋼板6と、外側鋼板5及び内側鋼板6の間に打設されるコンクリートCとを備える。平面視において外側鋼板5及び内側鋼板6は円環状を呈する。平面視における外側鋼板5の直径は、例えば、10m以上且つ15m以下(一例として11m)である。平面視における内側鋼板6の直径は、例えば、8m以上且つ13m以下(一例として10m)である。
【0024】
コラム3では、外側鋼板5と内側鋼板6の間にコンクリートCが打設されるコンクリート打設空間Sが形成されている。外側鋼板5は、外側鋼板5の内面5bから内側鋼板6に向かって突出する複数の頭付きスタッド5cを有する。内側鋼板6は、内側鋼板6の外面6bから外側鋼板5に向かって突出する複数の頭付きスタッド6cを有する。
【0025】
図4(a)は、
図3のA-A線断面図である。
図4(b)は、
図3のB-B線断面図である。
図3、
図4(a)及び
図4(b)に示されるように、複数の頭付きスタッド5c、及び複数の頭付きスタッド6cのそれぞれは、コラム3の長手方向D1(鉛直方向)に沿って並ぶと共に、コラム3の周方向D2に沿って並ぶように配置されている。
【0026】
コラム3は、外側鋼板5及び内側鋼板6を補強する補強部材7を備える。補強部材7は、例えば、補強プレートである。補強部材7は、外側鋼板5の内面5bから内側鋼板6の外面6bまで延在している。コラム3は複数の補強部材7を備え、複数の補強部材7はコラム3の周方向D2に沿って並んでいる。
【0027】
本実施形態において、コラム3は、複数の補強部材7を含む第1補強部材群7A及び第2補強部材群7Bを有する。第1補強部材群7Aは、コラム3の上側の部分に位置する。すなわち、第1補強部材群7Aは、コラム3の長手方向D1における中央よりも上側に位置する。第2補強部材群7Bは、例えば、コラム3の長手方向D1の中央部分に位置する。例えば、第2補強部材群7Bの下端の高さは前述したロワーハル4の高さよりも高い。
【0028】
図5は、コラム3を構築する現場Aを示す平面図である。
図6は、現場Aを示す断面図である。現場Aは、例えば、ドックに設けられる。現場Aでは、地上に設置された架台Gの上に外側鋼板5、内側鋼板6及びタワー接合部3bが設置されており、現場Aに配置されたポンプ車Bが上方からコンクリートCをコンクリート打設空間Sに打設する。ポンプ車Bは、伸縮可能とされたブームB1と、ブームB1に沿うように配置された輸送配管B2とを有する。
【0029】
本実施形態に係るコンクリート打設配管10は、コンクリートCを受け入れるコンクリート分配部材11と、コンクリート分配部材11によって分配されたコンクリートCをコンクリート打設空間Sに打設する複数の管本体12とを有する。一例として、管本体12の数は8である。しかしながら、管本体12の数は特に限定されない。
【0030】
コラム3は、外側鋼板5及び内側鋼板6の上方において水平方向に延在するステージ3fを有する。輸送配管B2はブームB1の上端からステージ3fに設けられたコンクリート分配部材11まで延在している。ポンプ車Bは輸送配管B2を介してコンクリート分配部材11にコンクリートCを供給し、コンクリート分配部材11は供給されたコンクリートCを複数の管本体12のそれぞれに分配する。
【0031】
複数の管本体12は、コラム3の周方向D2に沿って並ぶように配置される。管本体12は、鉛直方向に沿って延びるように配置される。本実施形態では、管本体12は、周方向D2に沿って並ぶ2つの補強部材7の間に通されている。管本体12にはコンクリート分配部材11からコンクリートCが注入される。より具体的には、管本体12は、その上端に形成された開口13を有し、開口13から管本体12の内部にコンクリートCが注入される。
【0032】
例えば、管本体12は、コンクリート打設空間SへのコンクリートCの打設が完了した後に埋め殺しされる。管本体12の長さは、例えば、コラム3の長さと同程度であり、管本体12はコンクリート打設空間Sの下端付近まで挿入された状態で後述する孔15(
図9参照)からコンクリートCを吐出する。管本体12の詳細については後述する。
【0033】
図7は、コンクリート分配部材11を示す斜視図である。
図8は、コンクリート分配部材11を示す平面図である。
図7及び
図8に示されるように、コンクリート分配部材11は、コンクリートCを受け入れる受入部11bと、受入部11bの下部から延在する複数の分岐部11cとを有する。受入部11bは、例えば、輸送配管B2からのコンクリートCを受け入れる。受入部11bは、例えば、有底筒状を呈する。
【0034】
コンクリート分配部材11は、受入部11bに固定されるバイブレータ11dを備えてもよい。
図7では、コンクリート分配部材11が複数のバイブレータ11dを備える例を示しているが、バイブレータ11dの数は特に限定されない。バイブレータ11dは、受入部11bの外面に取り付けられている。例えば、バイブレータ11dは受入部11bを介してコンクリートCに振動を与える。この場合、コンクリートCから気泡を除去してコンクリートCの品質を高めることができる。
【0035】
分岐部11cは、管状を呈する。分岐部11cは、その上端に開口11fを有する。複数の分岐部11cのそれぞれは、受入部11bから複数の管本体12のそれぞれの開口13まで延在している。受入部11bが受け入れたコンクリートCは、受入部11bに蓄積されると共に開口11fから分岐部11cを通って複数の管本体12のそれぞれに分配される。
【0036】
複数の開口11fが受入部11bの底面11gに形成されている。受入部11bの底面11gに複数の開口11fが形成されていることにより、受入部11bにコンクリートCを入れて分岐部11cを介した管本体12へのコンクリートCの分配を均等に行うことが可能となる。更に、各管本体12へのコンクリートCの量を調整することも可能となる。例えば、開口11fの高さは底面11gの高さよりも低い。この場合、底面11gにコンクリートCが溜まることを抑制できる。
【0037】
図9は、管本体12を示す側面図である。
図9に示されるように、管本体12は、その長手方向D1がコラム3の長手方向と一致するように配置される。管本体12は、管本体12の上端に形成された開口13と、管本体12の長手方向D1に沿って並ぶ複数の孔15とを有する。
【0038】
孔15は、管本体12の内部を通るコンクリートCをコンクリート打設空間Sに流し込むための孔である。すなわち、管本体12の内部を通るコンクリートCは孔15を通ってコンクリート打設空間Sに流れ込む。例えば、管本体12では、管本体12の同じ高さに位置する2つの孔15が互いに反対方向(
図9では左右方向)を向くように形成されている。この場合、管本体12の同じ高さの部分から互いに反対方向にコンクリートCを流し込むことができる。
【0039】
コンクリート打設配管10を用いたコンクリートCの打設は、第1リフトF1、第2リフトF2、第3リフトF3、第4リフトF4の順で行われる。本実施形態において、「リフト」とは、コンクリート打設空間Sのうち一日あたりにコンクリートCが打設される領域を示している。
【0040】
第1リフトF1がコラム3の下端に位置し、第2リフトF2は第1リフトF1の上方に位置する。第3リフトF3は第2リフトF2の上方に位置し、第4リフトF4は第3リフトF3の上端からコラム3の上端までの領域である。すなわち、第1リフトF1の第1高さH1より第2リフトF2の第2高さH2の方が高く、第2高さH2より第3リフトF3の第3高さH3の方が高く、第3高さH3より第4リフトF4の第4高さH4の方が高い。第4高さH4は、例えば、コラム3の上端の高さと一致している。例えば、第1補強部材群7Aの上端の高さは、第4高さH4よりも低く且つ第3高さH3より高い。第2補強部材群7Bの上端の高さは、第1高さH1よりも高く且つ第2高さH2よりも低い。
【0041】
本実施形態では、コンクリート打設配管10によって構築される構造物が高さ30m以上の巨大なコラム3であるため、コンクリートCの打設は日を跨いで行う必要がある。「日を跨ぐ」とは、コンクリートCの打設が一日では完了せず、複数の日に分けてコンクリートCの打設が行われることを示している。
【0042】
本実施形態では、第1高さH1までコンクリートCを打設する第1打設、第1打設から日を跨いだ後に第2高さH2までコンクリートCを打設する第2打設、第2打設から日を跨いだ後に第3高さH3までコンクリートCを打設する第3打設、第3打設から日を跨いだ後に第4高さH4までコンクリートCを打設する第4打設、が行われる。
【0043】
すなわち、最初に第1リフトF1への第1打設が行われ、第1打設とは別の日に第2リフトF2への第2打設が行われる。そして、第2打設とは別の日に第3リフトF3への第3打設が行われ、第3打設とは別の日に第4リフトF4への第4打設が行われる。この場合、第2補強部材群7Bは第2打設のときにコンクリートCに埋設され、第1補強部材群7Aは第4打設のときにコンクリートCに埋設される。
【0044】
なお、第1打設の最後のタイミングで打設されるコンクリートCは、第1打設の最後以外のタイミングで打設されるコンクリートCより固まりにくいコンクリートであってもよい。この場合、第1打設の後日に第2打設を行うときに、第1高さH1に位置する当該固まりにくいコンクリートCをクッションとすることができるので、第2打設におけるコンクリートCの材料分離を抑制できる。第2打設の最後のタイミングで打設されるコンクリートC、及び第3打設の最後で打設されるコンクリートCについても同様である。
【0045】
管本体12の孔15の配置は、前述したリフトに応じた配置とされている。管本体12は、第1リフトF1に開口する複数の孔15である第1孔群15A、第2リフトF2に開口する複数の孔15である第2孔群15B、第3リフトF3に開口する複数の孔15である第3孔群15C、及び第4リフトF4に開口する複数の孔15である第4孔群15Dを有する。
【0046】
管本体12は、管本体12の下端から第1高さH1までの領域である第1リフト部12Aと、第1高さH1から第2高さH2までの領域である第2リフト部12Bと、第2高さH2から第3高さH3までの領域である第3リフト部12Cと、第3高さH3から第4高さH4までの領域である第4リフト部12Dとを有する。第1リフト部12Aに形成された孔15(第1孔群15A)からコンクリート打設空間SにコンクリートCを吐出して第1打設が行われ、第2リフト部12Bに形成された孔15(第2孔群15B)からコンクリート打設空間SにコンクリートCを吐出して第2打設が行われる。同様に、第3リフト部12Cに形成された孔15(第3孔群15C)からコンクリートCを吐出して第3打設が行われ、第4リフト部12Dに形成された孔15(第4孔群15D)からコンクリートCを吐出して第4打設が行われる。
【0047】
管本体12は、例えば、第1リフト部12Aの最下部に位置する第1コンクリート溜まり部C1、第2リフト部12Bの最下部に位置する第2コンクリート溜まり部C2、第3リフト部12Cの最下部に位置する第3コンクリート溜まり部C3、及び、第4リフト部12Dの最下部に位置する第4コンクリート溜まり部C4を有する。第1コンクリート溜まり部C1は、第1リフト部12Aの下端から第1リフト部12Aの最も下に位置する孔15までのコンクリートCが溜まる領域を示している。第2コンクリート溜まり部C2は、第2リフト部12Bの下端から第2リフト部12Bの最も下に位置する孔15までのコンクリートCが溜まる領域を示している。同様に、第3コンクリート溜まり部C3は第3リフト部12Cの下端から第3リフト部12Cの最も下に位置する孔15までの領域であり、第4コンクリート溜まり部C4は第4リフト部12Dの下端から第4リフト部12Dの最も下に位置する孔15までの領域である。
【0048】
例えば、長手方向D1に沿って並ぶ複数の孔15の間隔P(ピッチ)は、第1コンクリート溜まり部C1、第2コンクリート溜まり部C2、第3コンクリート溜まり部C3及び第4コンクリート溜まり部C4以外の箇所では、一定とされている。第1コンクリート溜まり部C1の高さ、すなわち、複数の孔15のうち第1リフト部12Aの最も下に位置する孔15から第1リフト部12Aの下端までの距離X1は、孔15から吐出されるコンクリートCにおける材料分離が抑制される高さとされている。すなわち、第1打設のときに、孔15からコンクリートCが吐出される前に第1コンクリート溜まり部C1にコンクリートCが溜められることにより、孔15から吐出するコンクリートCの材料分離が抑制される。
【0049】
例えば、第2コンクリート溜まり部C2の高さ、第3コンクリート溜まり部C3の高さ、第4コンクリート溜まり部C4の高さは、上記の距離X1と同一である。距離X1の値は、例えば、1.0m以上且つ2.0m以下である。但し、距離X1の値は、構造物の高さによって変動する。例えば、構造物の高さが20m程度である場合、距離X1は0.5m以上且つ1.0m以下であり、構造物の高さが10m程度である場合、距離X1は0.25m以上且つ0.5m以下である。構造物の高さが5m程度である場合、距離X1は0.1m以上且つ0.25m以下である。このように距離X1の値は適宜変更可能である。
【0050】
図10は、第1リフト部12Aと第2リフト部12Bとの第1境界部Z1を拡大した図である。
図9及び
図10に示されるように、第2リフト部12Bの最も下に位置する孔15から第1境界部Z1までの距離X1は、第1リフト部12Aの最も上に位置する孔15から第1境界部Z1までの距離X2より長い。距離X2は、例えば、0であってもよい。この場合、第1リフト部12Aの最も上に位置する孔15の上端の高さが第1高さH1に一致する。
【0051】
上記と同様、第3リフト部12Cの最も下に位置する孔15から第2リフト部12Bと第3リフト部12Cとの第2境界部Z2までの距離X1は、第2リフト部12Bの最も上に位置する孔15から第2境界部Z2までの距離より長い。そして、第4リフト部12Dの最も下に位置する孔15から第3リフト部12Cと第4リフト部12Dとの第3境界部Z3までの距離X1は、第3リフト部12Cの最も上に位置する孔15から第3境界部Z3までの距離より長い。本実施形態において、孔15は第1境界部Z1に跨がることはない。同様に、孔15は、第2境界部Z2又は第3境界部Z3に跨がることもない。
【0052】
図11は、管本体12の下端を拡大した図である。
図11に示されるように、管本体12は、第1コンクリート溜まり部C1に落下するコンクリートCの衝撃を吸収する衝撃吸収材17を備える。衝撃吸収材17は、管本体12の内面に設けられている。衝撃吸収材17は、例えば、一端及び他端が管本体12の内面に溶接された棒状の第1鉄筋17bと、一端及び他端が管本体12の内面に溶接されると共に第1鉄筋17bに交差する棒状の第2鉄筋17cとを含む。
【0053】
すなわち、衝撃吸収材17は格子鉄筋によって構成されている。この衝撃吸収材17が第1コンクリート溜まり部C1に設けられる場合、第1コンクリート溜まり部C1においてコンクリートCの衝撃が吸収されるので、コンクリートCの材料分離を抑制できる。なお、第2コンクリート溜まり部C2、第3コンクリート溜まり部C3及び第4コンクリート溜まり部C4の少なくともいずれかに衝撃吸収材17が設けられていてもよい。
【0054】
次に、本実施形態に係るコンクリート打設配管10から得られる作用効果について説明する。
図9及び
図10に示されるように、コンクリート打設配管10はコンクリートCが注入される管本体12を備え、管本体12にはコンクリートCが吐出する複数の孔15が形成されている。管本体12は、少なくとも第1リフト部12A及び第2リフト部12Bを有する。第1リフト部12Aは管本体12の下端から第1高さH1までの管本体12の領域であり、第2リフト部12Bは第1高さH1から第2高さH2までの管本体12の領域である。
【0055】
コンクリート打設配管10を用いて、第1リフト部12Aに形成された孔15から第1高さH1までコンクリートCを打設する第1打設が行われ、第1打設から日を跨いだ後に第2リフト部12Bに形成された孔15から第2高さH2までコンクリートCを打設する第2打設が行われる。第2リフト部12Bの最も下に位置する孔15から第1リフト部12Aと第2リフト部12Bとの第1境界部Z1までの距離X1は、第1リフト部12Aの最も上に位置する孔15から第1境界部Z1までの距離X2よりも長い。
【0056】
よって、第1打設を行った日とは別の日に第2打設を行うときに、第2リフト部12Bの最も下に位置する孔15から第1境界部Z1までの距離X1が第1リフト部12Aの最も上に位置する孔15から第1境界部Z1までの距離X2より長いことにより、第2リフト部12Bの最も下の孔15から第1境界部Z1までの長さを長くできる。その結果、第1打設とは別の日に第2打設を行うときに、管本体12における第1境界部Z1から第2リフト部12Bの最も下の孔15までの部分(第2コンクリート溜まり部C2)に落下したコンクリートCを溜めることができる。この部分にコンクリートCを溜めた後に第2リフト部12Bの孔15からコンクリートCを管本体12の外部に吐出することにより、コンクリート打設空間Sに吐出されるコンクリートCの材料分離を抑制することができる。
【0057】
本実施形態において、管本体12は、第2高さH2から第2高さH2よりも高い第3高さH3までの領域である第3リフト部12Cを更に有する。第2打設から日を跨いだ後に管本体12の第3リフト部12Cに形成された孔15からコンクリートCを吐出して第3高さH3までコンクリートCを打設する第3打設が行われる。複数の孔15のうち第3リフト部12Cの最も下に位置する孔15から第2リフト部12Bと第3リフト部12Cとの第2境界部Z2までの距離X1は、複数の孔15のうち第2リフト部12Bの最も上に位置する孔15から第2境界部Z2までの距離より長い。
【0058】
この場合、第3リフト部12Cの最も下の孔15から第2境界部Z2までの距離X1が第2リフト部12Bの最も上に位置する孔15から第2境界部Z2までの距離よりも長いことにより、第3リフト部12Cの最も下の孔15から第2境界部Z2までの長さを長くできる。従って、第3打設を行うときに、管本体12における第2境界部Z2から第3リフト部12Cの最も下の孔15までの部分(第3コンクリート溜まり部C3)に落下したコンクリートCを溜めることができる。よって、溜められたコンクリートCが管本体12の外部に吐出することにより、コンクリート打設空間Sに吐出されるコンクリートCの材料分離を複数の日を跨いだ場合であっても抑制できる。
【0059】
本実施形態において、
図5に示されるように、コンクリート打設配管10は、複数の管本体12と、コンクリートCを受け入れる受入部11b、及び受入部11bから複数の管本体12のそれぞれの開口13まで延在する複数の分岐部11cを有するコンクリート分配部材11と、を備える。この場合、受入部11bにコンクリートCを入れることによって、コンクリート分配部材11を介して複数の管本体12のそれぞれにコンクリートCを注入できる。従って、コラム3等の巨大な構造物を構築する場合であってもコンクリートCの打設作業を効率よく行うことができる。
【0060】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るコンクリート打設配管の管本体22について
図12を参照しながら説明する。以下で説明するコンクリート打設配管の一部の構成は、前述したコンクリート打設配管10の一部の構成と同一である。よって、以降の説明では、既出の説明と同一の説明を同一の符号を付して適宜省略する。
【0061】
図12に示されるように、管本体22は、孔15の周囲から平面視における管本体22の外側に突出しており孔15を通ったコンクリートCを貯留する貯留部25を有する。例えば、管本体22における貯留部25の配置は、管本体12における孔15の配置と同一であってもよい。
【0062】
管本体22は、長手方向D1に沿って並ぶ複数の貯留部25を有する。例えば、長手方向D1に沿って互いに隣接する2つの貯留部25は、管本体22において互いに反対方向(
図12では左右方向)に突出している。これにより、当該2つの貯留部25から互いに反対方向にコンクリートCを吐出することが可能となる。
【0063】
貯留部25は、貯留したコンクリートCが漏れ出る漏出口25dを有する。漏出口25dは、例えば、鉛直上方又は斜め上方を向いている。この場合、より長時間コンクリートCを貯留部25に貯留できるので、コンクリートCの材料分離を更に確実に抑制できる。例えば、貯留部25は、貯留部25の下端から管本体22の外側に突出する膨張部25bと、膨張部25bの上端から内側にくびれると共に上端において外側に突出するくびれ部25cを有する。
【0064】
以上、第2実施形態に係るコンクリート打設配管の管本体22は、孔15の周囲から平面視における管本体22の外側に突出しており孔15を通ったコンクリートCを貯留する貯留部25を有する。貯留部25は、貯留したコンクリートCが漏れ出る漏出口25dを有する。この場合、孔15から出たコンクリートCは、一旦貯留部25に溜められた後に、貯留部25の漏出口25dからコンクリート打設空間Sに漏出する。このようにコンクリート打設空間Sに出る前に一旦貯留部25にコンクリートCが溜められることにより、コンクリート打設空間Sに吐出されるコンクリートCの材料分離をより確実に抑制できる。
【0065】
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に係るコンクリート打設配管の管本体32について
図13を参照しながら説明する。管本体32は、貯留部25とは形状が異なる貯留部35を有する。貯留部35は、孔15から平面視における管本体32の外側に延在する棒状部35bと、棒状部35bの先端に位置する漏出口35dとを有する。
【0066】
棒状部35bは、管状を呈する。棒状部35bには、孔15を通ったコンクリートCが貯留される。棒状部35bは、孔15に対して斜め上方に延在している。漏出口35dは、孔15の上端より高い位置に形成されている。漏出口35dは、一例として、楕円形状を呈する。例えば、漏出口35dは、孔15から斜め上方に延びる棒状部35bが水平方向に延びる面で切断された形状とされている。この場合、漏出口35dは、鉛直上方を向くと共に楕円形状を呈する。しかしながら、漏出口35dは斜め上方を向いていてもよく、漏出口35dの向き及び形状は特に限定されない。
【0067】
以上、第3実施形態において、漏出口35dは、孔15の上端よりも高い位置に形成されている。よって、漏出口35dの位置が孔15の上端よりも高いことにより、貯留部35にコンクリートCが貯留される時間を長くすることができる。従って、漏出口35dからコンクリート打設空間Sに漏出するコンクリートCの材料分離を更に確実に抑制できる。
【0068】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係るコンクリート打設配管について
図14を参照しながら説明する。
図14に示されるように、第4実施形態に係るコンクリート打設配管は、互いに長さが異なる複数種類の管本体42を備える。複数種類の管本体42は、例えば、第1管本体42Aと、第1管本体42Aよりも短い第2管本体42Bである。
【0069】
第1管本体42Aは、その下端から一定距離だけ上方に位置する領域に複数の孔15を有し、当該領域以外には孔15を有しない。第2管本体42Bも、第1管本体42Aと同様、第2管本体42Bの下端から一定距離だけ上方に位置する領域に複数の孔15を有し、当該領域以外には孔15を有しない。
【0070】
第1管本体42Aの上端に第2管本体42Bの上端を揃えたときに、第1管本体42Aの孔15が形成されている領域と、第2管本体42Bの孔15が形成されている領域とは互いにずれている。第4実施形態に係るコンクリート打設配管によれば、第1管本体42Aによって孔15の周囲にコンクリートCを圧入できると共に、第2管本体42Bによって孔15の周囲であって且つ第1管本体42Aの孔15とは異なる高さの部分にコンクリートCを圧入することができる。
【0071】
(第5実施形態)
続いて、第5実施形態に係るコンクリート打設配管について
図15を参照しながら説明する。
図15に示されるように、第5実施形態に係るコンクリート打設配管は、コンクリート分配部材11とは異なる態様のコンクリート分配部材51を備える。コンクリート分配部材51は、受入部11bと、バイブレータ11dと、受入部11bの下部から延在する複数の分岐部51cとを有する。
【0072】
分岐部51cは、管状を呈する。分岐部51cは、分岐部51cの先端よりも根元側の部分にコンクリートCが漏れ出る漏出口51dを有する。分岐部51cの先端よりも根元側の部分に漏出口51dが形成されていることにより、漏出口51dから漏出する前に分岐部51cの先端の部分にコンクリートCを溜めることができる。従って、コンクリート分配部材51から出るコンクリートCの材料分離をより確実に抑制できる。
【0073】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態に係るコンクリート打設配管について
図16を参照しながら説明する。
図16に示されるように、第6実施形態に係るコンクリート打設配管は、管本体62と、管本体62の内部におけるコンクリートCが載せられる摺動部材63とを備える。摺動部材63は、管本体62の内部におけるコンクリートCの流下に伴って管本体62の内面を摺動する。摺動部材63は、コンクリートCの落下速度に応じて管本体62の内面に対する摩擦力が調整されている。
【0074】
摺動部材63は、その内部に気体が充填された袋状を呈する。摺動部材63は、伸縮可能な材料によって構成されていてもよい。摺動部材63は、例えば、樹脂(一例としてゴム)によって構成されている。膨らんだ状態の摺動部材63が球状とされている。膨らんだ状態における摺動部材63の直径は、管本体62の内径以上である。摺動部材63は、管本体62の内部においてコンクリートCが流下したときに管本体62の内面を摺動して下方に押し動かされる。
【0075】
管本体62は、管本体62の下端において摺動部材63を破壊する破壊部64と、コンクリートCが漏出する漏出口65とを有する。一例として、破壊部64及び漏出口65は前述した第1コンクリート溜まり部C1に設けられる。例えば、破壊部64は、針状を呈する。破壊部64は、管本体62の下端まで押し動かされた摺動部材63を突き刺して摺動部材63を破壊する。
【0076】
管本体62の内部を流下するコンクリートCは、摺動部材63と共にゆっくりと下方に移動し、摺動部材63が破壊部64に達して破壊された後に漏出口65から管本体62の外部に漏出する。従って、管本体62から外部に漏出するコンクリートCの材料分離が抑制される。なお、破壊部64及び漏出口65は、第2コンクリート溜まり部C2、第3コンクリート溜まり部C3及び第4コンクリート溜まり部C4の少なくともいずれかに設けられていてもよい。
【0077】
以上、第6実施形態に係るコンクリート打設配管は、管本体62の内部におけるコンクリートCが載せられると共に、管本体62の内部におけるコンクリートCの流下に伴って管本体62の内面を摺動する摺動部材63を備える。この場合、コンクリートCは落下する途中で摺動部材63に蓄積され、それに伴って摺動部材63が徐々に下方に摺動する。このとき、摺動部材63に蓄積されたコンクリートCは、摺動部材63と共にゆっくりと下方に移動する。このように摺動部材63にコンクリートCが蓄積されることによってコンクリートCの材料分離をより確実に抑制できる。
【0078】
(第7実施形態)
続いて、第7実施形態に係るコンクリート打設配管について
図17を参照しながら説明する。
図17に示されるように、第7実施形態に係るコンクリート打設配管は、孔15とは異なる態様の孔75が形成された管本体72を備える。孔75は格子73を有する。格子73は、孔75を跨ぐと共に第1方向(例えば
図17では上下方向)に沿って延在する複数の第1線状部材と、孔75を跨ぐと共に第1方向とは異なる第2方向(例えば
図17では左右方向)に沿って延在する複数の第2線状部材とを有する。
【0079】
また、格子73は、管本体72の内面に固定されたメタルラスでもよいし、格子鉄筋であってもよい。管本体72が孔75に形成された格子73を備えることによって、孔75から管本体72の外部に漏出するコンクリートCの速度を低下できるので、コンクリートCの材料分離をより確実に抑制できる。
【0080】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態に係るコンクリート打設配管について
図18を参照しながら説明する。
図18に示されるように、第8実施形態に係るコンクリート打設配管は、管本体82の孔85に揺動部材83が設けられた点が前述したコンクリート打設配管10とは異なっている。
【0081】
管本体82は孔85の上部に固定されたヒンジ部84を有し、揺動部材83はヒンジ部84を中心として揺動可能とされている。例えば、コンクリートCが管本体82の内部に流し込まれる前には、揺動部材83は横方向に延在している。そして、管本体82の内部を流下するコンクリートCが揺動部材83に接触すると、揺動部材83は孔85を塞ぐように下方に移動する。コンクリートCは孔85よりも下方に移動し、管本体82の内部において孔85まで溢れたコンクリートCが孔85から漏出する。従って、孔85から漏出するコンクリートCの速度を低下できるので、コンクリートCの材料分離を抑制できる。
【0082】
以上、本開示に係るコンクリート打設配管の種々の実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、前述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨を変更しない範囲において更に変更されたものであってもよい。すなわち、本開示に係るコンクリート打設配管の各部の形状、大きさ、材料、数及び配置態様は、上記の要旨の範囲内において適宜変更可能である。また、上記では、第1~第8実施形態について説明した。本開示に係るコンクリート打設配管は、第1~第8実施形態のうちの一部の形態と、第1~第8実施形態のうちの当該一部の形態とは異なる他の形態とが組み合わされたものであってもよい。
【0083】
例えば、前述の実施形態では、コンクリート打設空間Sが第1リフトF1、第2リフトF2、第3リフトF3及び第4リフトF4を有する例について説明した。しかしながら、コンクリート打設空間が有するリフトの数は、4でなくてもよく、2、3又は5以上であってもよい。
【0084】
例えば、前述の実施形態では、コンクリート打設配管10によって構築される構造物がハイブリッド浮体1のコラム3である例について説明した。しかしながら、本開示に係るコンクリート打設配管によって構築される構造物は、ハイブリッド浮体1のコラム3に限られず、例えば、ハイブリッド浮体1の外側コラム2であってもよいし、ハイブリッド浮体1以外の構造物であってもよい。このように、本開示に係るコンクリート打設配管は、種々の構造物に適用可能である。
【符号の説明】
【0085】
1…ハイブリッド浮体、2…外側コラム、3…コラム、3b…タワー接合部、3c…ダイヤフラム、3d…フランジ、3f…ステージ、4…ロワーハル、4b…中央部、4c…延在部、4d…根元部、4f…先端部、4g…第1角部、4h…第2角部、5…外側鋼板、5b…内面、5c…頭付きスタッド、6…内側鋼板、6b…外面、6c…頭付きスタッド、7…補強部材、7A…第1補強部材群、7B…第2補強部材群、10…コンクリート打設配管、11…コンクリート分配部材、11b…受入部、11c…分岐部、11d…バイブレータ、11f…開口、11g…底面、12A…第1リフト部、12B…第2リフト部、12C…第3リフト部、12D…第4リフト部、13…開口、15…孔、15A…第1孔群、15B…第2孔群、15C…第3孔群、15D…第4孔群、17…衝撃吸収材、17b…第1鉄筋、17c…第2鉄筋、25…貯留部、25b…膨張部、25c…くびれ部、25d…漏出口、35…貯留部、35b…棒状部、35d…漏出口、51…コンクリート分配部材、51c…分岐部、51d…漏出口、63…摺動部材、64…破壊部、65…漏出口、73…格子、75…孔、83…揺動部材、84…ヒンジ部、85…孔、A…現場、B…ポンプ車、B1…ブーム、B2…輸送配管、C…コンクリート、C1…第1コンクリート溜まり部、C2…第2コンクリート溜まり部、C3…第3コンクリート溜まり部、C4…第4コンクリート溜まり部、D1…長手方向、D2…周方向、F1…第1リフト、F2…第2リフト、F3…第3リフト、F4…第4リフト、G…架台、L1…直径、L3…距離、L4…直径、P…間隔、S…コンクリート打設空間、X1,X2…距離、Z1…第1境界部、Z2…第2境界部、Z3…第3境界部。