(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012363
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】心電計
(51)【国際特許分類】
H04W 48/16 20090101AFI20240123BHJP
H04W 88/06 20090101ALI20240123BHJP
H04W 24/02 20090101ALI20240123BHJP
H04W 24/04 20090101ALI20240123BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20240123BHJP
【FI】
H04W48/16 132
H04W88/06
H04W24/02
H04W24/04
A61B5/33 300
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023182723
(22)【出願日】2023-10-24
(62)【分割の表示】P 2018211270の分割
【原出願日】2018-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮野 博行
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 将人
(72)【発明者】
【氏名】本郷 泰輝
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄介
(72)【発明者】
【氏名】阿見 祥寿
(72)【発明者】
【氏名】取出 優
(72)【発明者】
【氏名】桑崎 雄揮
(72)【発明者】
【氏名】金山 寧
(57)【要約】
【課題】安定した無線通信を実現する心電計を提供すること。
【解決手段】被検者に装着された電極から得られる信号に基づいて心電図を記録する心電計であって、外部機器との無線通信を行う第1の通信手段および第2の通信手段と、第1の通信手段および第2の通信手段の動作を制御する制御手段と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者に装着された電極から得られる信号に基づいて心電図を記録する心電計であって、
外部機器との無線通信を行う第1の通信手段および第2の通信手段と、
前記第1の通信手段および前記第2の通信手段の動作を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする心電計。
【請求項2】
前記制御手段は、同一の外部機器と通信するように前記第1の通信手段および前記第2の通信手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の心電計。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1の通信手段および前記第2の通信手段のうち、外部機器との通信状態がよい一つによって前記外部機器と通信するように前記第1の通信手段および前記第2の通信手段を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の心電計。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1の通信手段および前記第2の通信手段のうち、一方が故障した場合には、他方を用いて前記外部機器と通信するように前記第1の通信手段および前記第2の通信手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の心電計。
【請求項5】
前記制御手段は、それぞれ異なる外部機器と通信するように前記第1の通信手段および前記第2の通信手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の心電計。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第2の通信手段については、特定の外部機器が存在する場合のみ前記特定の外部機器と通信と通信するように制御することを特徴とする請求項1または5に記載の心電計。
【請求項7】
前記特定の外部機器が、前記心電計の保守管理装置であることを特徴とする請求項6に記載の心電計。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第1の通信手段および前記第2の通信手段の一方を、他の無線機器から前記外部機器への通信を中継する中継手段として機能させることを特徴とする請求項1または5に記載の心電計。
【請求項9】
前記第1の通信手段および前記第2の通信手段の一方が、前記心電計から着脱可能に構成されることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の心電計。
【請求項10】
前記第1の通信手段および前記第2の通信手段とが異なる規格に準拠した通信を行うように構成されることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の心電計。
【請求項11】
外部機器との無線通信を行う第1の通信手段および第2の通信手段とを有する心電計が有するプロセッサに、請求項1から10のいずれか1項に記載の心電計が有する制御手段の機能を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は心電計に関し、特には無線通信機能を有する心電計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホルタ心電計やテレメータ装置のような患者装着型の心電計において、無線通信を利用したものが知られている(特許文献1)。特許文献1では、体表面に装着する電極と、記録を行う本体やPCとの間の接続を無線化することで、本体やPCの配置場所の自由度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、患者装着型でない一般的な心電計においても、計測結果を院内の情報システムなどの外部システムに無線送信する機能を搭載可能な製品が存在する。一方で、無線通信機器を有する医療機器や情報処理機器の増加により、アクセスポイント(AP)に対するアクセスの競合や、アクセスポイント間の電波干渉による通信速度の低下や、通信の切断が問題となりうる。
【0005】
本発明はこのような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、安定した無線通信を実現する心電計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的は、被検者に装着された電極から得られる信号に基づいて心電図を記録する心電計であって、外部機器との無線通信を行う第1の通信手段および第2の通信手段と、第1の通信手段および第2の通信手段の動作を制御する制御手段と、を有することを特徴とする心電計によって達成される。
【発明の効果】
【0007】
このような構成により、本発明によれば、安定した無線通信を実現する心電計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る心電計の機能構成例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る心電計における無線I/Fの設定例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る心電計における通信制御動作に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の例示的な実施形態について詳細に説明する。以下では、専用の心電計に本発明を適用した実施形態について説明するが、本発明は専用の心電計と同様の機能を実現可能な他の任意の電子機器に適用可能である。このような電子機器にはモニタ装置といった医療機器はもちろん、適切なアプリケーションソフトウェアが稼働するコンピュータ機器(パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォンなど)も含まれる。
【0010】
(心電計の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る心電計100の構成例を示すブロック図である。
電極群110は、例えば四肢電極(4つ)および胸部電極(6つ)からなる。電極群110が有する電極の種類や数は、心電計100で計測する心電図信号(誘導)の種類および数によって決まる。
【0011】
電極群110(心電図電極)は心電計100の入力部111が備えるコネクタに接続される。入力部111は例えば保護回路、誘導選択器、増幅回路などを有し、予め設定された種類と数の心電図信号を出力する。
A/D変換部112は、入力部111から出力される心電図信号のそれぞれをデジタル化し、心電図波形データとして出力する。入力部111とA/D変換部112はアナログフロントエンド(AFE)とも呼ばれる。
【0012】
フィルタ処理部113は、A/D変換部112を通じて入力される心電図波形データに対し、制御部120からの設定に従ってノイズ除去フィルタを適用する。本実施形態において、フィルタ処理部113は、一例として、筋電ノイズ除去フィルタ、ACノイズ除去フィルタ、およびドリフトノイズ除去フィルタを選択的に適用可能であるものとするが、フィルタ処理の種類や数はこれらに限定されない。
スピーカ114は、制御部120が例えば警告音や音声メッセージを出力するために用いる。
【0013】
制御部120は例えばROM(不揮発性メモリ)、RAMおよびプログラマブルプロセッサを含み、ROMに記憶された制御プログラムをRAMに展開してプログラマブルプロセッサが実行することにより、心電計100全体の動作を制御する。ROMには制御プログラムのほか、各種の設定値やGUIデータなどが記憶されており、制御プログラムの実行時に適宜用いられる。また、ROMの少なくとも一部は書き換え可能であってよい。
【0014】
なお、例えばフィルタ処理部113は、制御部120が有するプログラマブルプロセッサがプログラムを実行することによって実現してもよいし、ASICやASSPなどのハードウェアで実現してもよい。フィルタ処理部113はハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより実現してもよい。
【0015】
解析部1201は制御部120が実現する心電図波形データの自動解析機能に相当し、計測した心電図波形データに対して自動解析処理を適用する。自動解析処理は、大きく分けて計測処理と所見分類処理の2つに大別できる。計測処理は、心電図の区分点(P、QRS、T)を検出し、計測値(RーR間隔、STレベル、PQ、QRS幅、QT等)を求める処理である。また、所見分類処理は、計測値と予め判定された判定条件とから所見を決定する処理である。なお、ここで挙げた計測値は単なる例示であり、他の計測値を求めてもよい。
【0016】
カードスロット116にはメモリカードを着脱可能であり、制御部120は装着されたメモリカードに心電図検査データを記録したり、装着されたメモリカードから記録済みの心電図検査データを読み出したりすることができる。なお、心電図検査データは、心電図波形データおよび被検者情報のデータを含む。心電図波形データの自動解析を行った場合、検査データは自動解析結果のデータも含む。心電図検査データは所定のデータ形式で検査ごとに生成される。なお、心電図検査データは複数のデータファイルで構成されてもよいし、1つのデータファイルで構成されてもよい。
【0017】
操作部117はユーザ(医療関係者)が心電計100に各種設定や指示を入力する入力デバイスであり、ボタン、キー、タッチパネル(ソフトウェアキー)などが一般的に用いられるが、これらに限定されない。音声入力のような物理的な入力操作を必要としない入力方法がサポートされてもよい。操作部117は通常記録の開始指示・終了指示を与えるための通常記録ボタンと、レビュー記録指示を与えるためのレビュー記録ボタンとを有する。
【0018】
表示部118は、LCDなどの表示装置であり、制御部120の制御に従い、計測中の心電図、あるいはカードスロット116に装着されたメモリカードに記憶された心電図検査データに基づく心電図および/または解析レポートや、メニュー画面などを表示する。本実施形態において表示部118はタッチディスプレイであるものとする。
【0019】
プリンタ119は、例えばサーマルプリンタであり、搬送モータ、搬送ローラ、記録ヘッドとその駆動回路などを有する。プリンタ119は制御部120の制御に従い、心電図波形や解析レポートを所定のフォーマットで印刷出力する。なお、プリンタ119を内蔵することは本発明おいて必須ではなく、プリンタ119は外付けプリンタであってもよい。心電計100は内蔵若しくは外付けのプリンタに心電図を出力可能であればよい。
【0020】
電源部121は例えば二次電池や商用電源(ACアダプタ)であり、心電計100の各部へ電力を供給する。
【0021】
第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bは、無線通信インタフェースである。第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bの設定および動作は、制御部120が制御する。本実施形態において第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bは無線LAN規格(IEEE802.11シリーズ)に準拠したインタフェースであるものとする。しかし、一方が無線LAN規格、他方がブルートゥース(登録商標)といったように、互いに異なる規格に準拠した無線インタフェースであってもよい。また、第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bはそれぞれ、複数の無線LAN規格に対応可能であってよい。例えば、第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bは、2.4GHz帯を用いる無線LAN規格(例えばIEEE802.11b/g/n)と、5G帯を用いる無線LAN規格(例えばIEEE802.11a/n/ac)の両方に対応していてもよい。
【0022】
また、本実施形態では、第1無線I/F123aは筐体に内蔵されて、ユーザが着脱不能であるのに対し、第2無線I/F123bは心電計100が有する外部I/F(例えばUSBI/F)にユーザが着脱可能に装着されているものとする。また、第1無線I/F123aのアンテナと、第2無線I/F123bのアンテナとは、略直方体形状の心電計100の筐体の対向する2面もしくは隣接する2面に設けている。筐体の同一面に2つのアンテナを配置しないのは、2つのアンテナの指向性を異ならせることにより、様々な電波状態に対して少なくとも一方の無線I/Fにおいて良好な受信状態を得やすくするためである。
【0023】
第1アクセスポイント(AP)150aおよび第2AP150bは心電計100が用いられる医療機関(例えば病院)内に設置された複数のアクセスポイントの一部である。AP150a,150bは院内のLAN160を通じて院内情報システム200に接続されている。したがって、心電計100は、第1AP150aもしくは第2AP150bを通じて院内情報システム200と通信可能である。本実施形態において第1AP150aおよび第2AP150bは例えば院内の異なるフロアに設けられ、異なるSSIDを有する無線LANアクセスポイントであってもよいし、院内の同一フロアに設けられ、同一SSIDを有する無線LANアクセスポイントであってもよい。
【0024】
図2に、第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bの種別および設定の例を示す。ここでは、7つの例を示すが、これらに限定されない。
第1~第3の例は、通信周波数帯の組み合わせの例を示している。ここでは、第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bがいずれも無線LAN規格に準拠している場合を想定している。現在一般的に用いられている無線LAN規格(IEEE802.11b,g,a,n,ac)は、2.4GHz帯と5GHz帯を用いる。第1~第3の例は、第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bが用いる通信周波数帯の組み合わせの例を示している。
【0025】
なお、各周波数帯において用いる規格は、第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bが対応している規格から別個に設定しうる。例えば、2.4GHz帯を用いる場合、802.11b,g,nのいずれかを用いることができる。また、5GHz帯を用いる場合、802.11a,n,acのいずれかを用いることができる。第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bが同じ周波数帯を用いる場合、同じ規格で通信するように構成してもよいし、異なる規格で通信するように構成してもよい。
【0026】
第4の例は、第1無線I/F123aが無線LAN規格に準拠し、第2無線I/F123bがブルートゥース(登録商標)の規格に準拠した構成の例を示している。この場合、第1無線I/F123aは対応している無線LAN規格のいずれかに準拠した通信を行うように構成される。
【0027】
例えば、第2無線I/F123bを通じて心電計100を保守管理装置とペアリングし、ペアリング時に取得したパラメータをROMに記憶しておく。例えば、心電計100の保守に訪れた作業者が、ペアリング済みの保守管理装置を第2無線I/F123bの通信範囲に近づけると、制御部120は心電計100の保守に必要な、予め定められた情報を第2無線I/F123bから保守管理装置に送信する。このように、一方の無線I/Fを、特定の外部機器が通信可能範囲に存在する場合のみ外部機器と通信するように構成することで、消費電力を節減しながら、例えば保守作業を支援することができる。
【0028】
第5および第6の例は、第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bのアクセス先に関する設定例である。ここでは、第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bが同じアクセスポイントに接続する設定がなされる例と、異なるアクセスポイントに接続する設定がなされる例を示している。
【0029】
第7の例は、第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bの動作モードに関する設定例である。ここでは、第1無線I/F123aを通信モード(心電計100とアクセスポイントとの通信を行うモード)に、第2無線I/F123bを中継モード(他の機器からの無線通信を中継するモード)に設定した例を示している。
【0030】
なお、第1~第6の例は、第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bが無線通信するために用いる複数のパラメータ(通信パラメータ)のうち1種類のパラメータの設定について記載したものである。例示していないパラメータについての設定については限定されない。例えば、第1~第3の例と、第5~第6の例とは異なるパラメータを対象としているため、組み合わせが可能である。
【0031】
第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bを、同じ規格で通信するように構成した場合、同一のアクセスポイントに接続すれば通信速度を高速化することができ、別個のアクセスポイントに接続すれば、異なる外部機器と別個に通信することができる。また、異なる規格で通信するように構成すれば、対応する規格が異なる外部機器との通信が可能である。
【0032】
また、一方の無線I/Fの動作モードを中継モードに設定することにより、アクセスポイントの通信範囲外に存在する無線機器がアクセスポイントと通信することを可能にすることができる。これにより、例えば、テレメータの通信を中継すれば、テレメータを装着した患者の移動可能範囲(テレメータの通信を切断せずに移動可能な範囲)を拡張することができる。
【0033】
また、通常は第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bの一方(例えば第1無線I/F123a)のみを用い、他方は、一方が故障した場合や、受信強度が閾値未満になった場合にだけ用いるように構成してもよい。このように、第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bを排他的に用いる場合、第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bの通信パラメータは同一としておくことができる。
【0034】
第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bに設定するための通信パラメータ(SSID、パスワード、通信に使用する規格、ペアリング情報、動作モード、中継先のアクセスポイントの情報など)は、例えば制御部120が有する不揮発性メモリに記憶しておくことができる。
【0035】
なお、第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bにどのような通信パラメータを設定するかは、ユーザがメニュー画面などを通じて指定および変更することができる。
【0036】
このような構成を有する心電計100を用いて例えば心電図信号の計測及び記録を行う場合、電極群110の他端に設けられたコネクタを入力部111に接続し、心電計100の電源がONの状態で、電極群110の一端に設けられた電極パッドを被検者の胸部体表面の所定位置に、また電極クリップを被検者の四肢に取り付ける。
【0037】
入力部111に電極群110が接続されると、検出された心電図信号が入力部111に入力され、A/D変換部112、フィルタ処理部113などの処理を経て心電図波形データとして制御部120に入力される。制御部120は内部のRAMの一部をバッファとして用い、直近の所定秒数分の心電図波形データを一時的に蓄積する。また、制御部120は、バッファ内の心電図波形データを用いて、表示部118への心電図の表示を開始する。
【0038】
操作部117から記録開始指示が入力されると、制御部120は設定されている計測モード(例えば12誘導自動計測モード)に応じた記録動作を実行し、設定された記録時間の経過、あるいは操作部117からの記録終了指示の入力を検出すると記録動作を終了する。
【0039】
自動解析処理を実行する場合、制御部120(解析部1201)は、バッファに蓄積された記録期間分の心電図波形データについて自動解析処理を実行する。制御部120は、心電図波形データとその自動解析結果のデータ、被検者情報のデータを含んだ検査データを生成し、カードスロット116に装着されたメモリカードに記録したり、第1無線I/F123aおよび/または第2無線I/F123bを通じて院内システムなどの外部機器に出力したりする。
【0040】
なお、検査データのフォーマットに制限はなく、複数のデータファイルから構成されても、1つのデータファイルで構成されてもよい。例えば被検者情報と心電図波形データとを含んだデータファイルと、自動解析結果のデータとが別のデータファイルとして生成される場合、同じ検査に係る複数のデータファイルを判別できるように記録する。例えば、それぞれのデータファイルを同じフォルダに記録したり、同じファイル名で拡張子を異ならせて記録したりすることができる。また、検査データが1つのデータファイルで構成される場合、心電図波形データとその自動解析結果のデータ、被検者情報のデータを含んだデータファイルを生成する。これらは単なる例示であり、他の方法で検査データを生成してもよい。
【0041】
12誘導自動計測モードの場合、制御部120は、自動解析処理が終了すると、バッファに蓄積されている心電図波形とその自動解析結果とを所定のフォーマットで表示部118および/またはプリンタ119に出力する。
【0042】
次に、本実施形態の心電計100における無線I/Fの制御動作の一例を、
図3に示すフローチャートを用いて説明する。
図3に示す動作は、制御部120がプログラムを実行することによって実施することができる。また、
図3に示す動作は、計測動作とは別個にバックグラウンド処理として実行されてもよい。ここでは、第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bがいずれも無線LAN規格に準拠した通信を行うものとする。
【0043】
S103で制御部120は、第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bから、検出されたアクセスポイントについての情報を取得する。ここで取得する情報は各アクセスポイントについて、少なくとも識別情報(SSID)、周波数帯域、動作モード(b/g/n/a/ac)、受信強度を含む。なお、この時点で第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bは予め設定されたアクセスポイントに接続していてもよい。
【0044】
S105で制御部120は、取得した情報に基づいて、第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bの受信強度に有意な差があるか否かを判定する。ここでは、同一のアクセスポイントに対する受信強度を比較してもよいし、それぞれの無線I/Fにおける最大の受信強度を比較してもよい。なお、最大の受信強度を比較する場合には、ROMに通信パラメータが記憶されている(すなわち、接続可能な)アクセスポイントを対象とする。制御部120は、比較した受信強度の差が予め定められた閾値以上であれば、両者に有意な差があると判定することができる。制御部120は、第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bの受信強度に有意な差があると判定されればS107へ、判定されなければS111へ処理を進める。
【0045】
S107で制御部120は、受信強度が高い無線I/Fを有効とし、受信強度が低い無線I/Fを無効とすることを決定する。
S109で制御部120は、S105において、有効とする無線I/Fが現在接続中のアクセスポイントについての受信強度を比較していれば、有効とする無線I/Fについての設定を変更しない。制御部120は、所定時間経過後、処理をS103に戻す。
【0046】
一方、S105において最大の受信強度を比較しており、かつ、比較した最大受信強度が、有効とする無線I/Fが現在接続中のアクセスポイントと異なるアクセスポイントで得られている場合、制御部120は処理をS110に進め、有効とする無線I/FにROMから読み出した通信パラメータを設定し、接続するアクセスポイントを、最大受信強度が得られるアクセスポイントに変更する。
【0047】
なお、無効とする無線I/Fに関して、制御部120は動作を停止させてもよいし、心電計100の通信に用いないようにするだけでもよい。
【0048】
一方、S105において第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bの受信強度に有意な差があると判定されなかった場合、S111で制御部120は、それぞれの受信強度が予め定められた閾値以上か否かを判定する。ここでの閾値は、良好な通信状態であると判定するための値として予め定めておくことができる。
【0049】
第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bにおける受信強度がいずれも閾値以上であり、良好な通信状態が得られると判定されれば、制御部120は処理をS113に進め、第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bの両方を有効とする。そして、制御部120は処理をS109に進め、接続先の変更要否を判定する。
【0050】
一方、第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bにおける受信強度の少なくとも一方が閾値未満と判定された場合、制御部120は処理をS115に進める。
S115で制御部120は、第1無線I/F123aおよび第2無線I/F123bのそれぞれについて、検出しているアクセスポイントのうち、ROMに通信パラメータが記憶されている登録済みアクセスポイントであって、かつ受信強度が閾値以上であるアクセスポイントが存在するか否か判定する。
【0051】
条件に該当するアクセスポイントが存在すると判定された場合、制御部120はS117に処理を進める。S117で制御部120は、S115で条件に該当すると判定されたアクセスポイントのうち、受信強度が最も大きなアクセスポイントに接続するように第1無線I/F123aおよび/または第2無線I/F123bを設定する。そして、制御部120は、所定時間経過後に処理をS103に戻す。
【0052】
一方、S115で条件に該当するアクセスポイントが存在すると判定されなかった場合、制御部120は処理をS119に進め、通信エラー処理を実行する。通信エラー処理において制御部120は、例えば表示部に「接続可能なアクセスポイントが見つかりません」等のメッセージダイアログを表示したり、ユーザに新たなアクセスポイントの通信パラメータの登録を促すGUI画面を表示したりすることができる。
【0053】
なお、本実施形態では心電計に無線I/Fを2つ設けた構成について説明したが、3つ以上の無線I/Fを設けてもよい。また、無線I/Fはアクセスポイントを介さずに外部機器(例えばプリンタや保守管理装置)と直接無線通信してもよい。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば、心電計に複数の無線I/Fを設けることにより、切断しにくく、より安定した無線通信を実現したり、より高速な無線通信を実現することができる。また、目的に応じて異なる装置と同時に無線通信することができ、例えば計測データを院内システムに送信しながら、保守管理装置に保守用のデータを送信するといったことが可能になる。また、他の無線通信装置とアクセスポイントとの中継を行うように設定した無線I/Fを含めることにより、例えば院内システムとの通信を行いながら、他の無線通信装置の通信可能範囲を拡張することができる。
【0055】
なお、本発明に係る心電計は、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォンのような汎用情報処理装置に複数の無線I/Fを実装し、上述した動作を実行させるプログラム(アプリケーションソフトウェア)として実現することもできる。また、心電計が有するROMに記憶され、心電計が有するプロセッサに上述した制御部120の動作を実現させるプログラムとして本発明を実施することもできる。したがって、このようなプログラムおよび、プログラムを格納した記録媒体(CD-ROM、DVD-ROM等の光学記録媒体や、磁気ディスクのような磁気記録媒体、半導体メモリカードなど)もまた本発明を構成する。
【符号の説明】
【0056】
100…心電計、118…表示部、120…制御部、123a,123b…無線I/F、150a,150b…アクセスポイント
【手続補正書】
【提出日】2023-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者に装着された電極から得られる信号に基づいて心電図を記録する心電計であって、
外部機器との無線通信を行う第1の通信手段および第2の通信手段と、
前記第1の通信手段および前記第2の通信手段の動作を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする心電計。