(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123642
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】高電気伝導性を持つ粒子、材料及びその関連の接続構造体
(51)【国際特許分類】
B22F 9/04 20060101AFI20240905BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20240905BHJP
B22F 1/10 20220101ALI20240905BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240905BHJP
B22F 1/148 20220101ALI20240905BHJP
B22F 1/14 20220101ALI20240905BHJP
B22F 3/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B22F9/04 E
H01R11/01 501A
B22F1/10
B22F1/00 Y
B22F1/00 M
B22F1/00 S
B22F1/00 R
B22F1/148
B22F1/14 100
B22F3/02 L
B22F3/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031233
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】322014392
【氏名又は名称】株式会社M3
(72)【発明者】
【氏名】神谷 江美町田 哲男
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4K017AA03
4K017BA03
4K017BA04
4K017BA06
4K017CA07
4K017DA02
4K018AA07
4K018AA24
4K018AA40
4K018BB04
4K018BB05
4K018BC08
4K018BC11
4K018CA04
4K018CA09
4K018KA42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、電気伝導における低損失特性、高周波特性、大電流特性に優れた省電力スピントロニクスの性質を有するトポロジカル反強磁性金属である導電性微粒子を得ることを目的としている。
【解決手段】トポロジカル反強磁性金属材料の素材として、NiOの単結晶素材等を利用し、トポロジカル反強磁性金属の性質を有する粒子を形成する。また、粒形は、数nm~数10μmとしていることを特徴とする。更に、本発明に関わる導電性粒子は、上記の構成によりトポロジカル反強磁性金属の性能が備えられているので、電気接続における抵抗値を効果的に低くすることができる。また、本発明では該微粒子を含む他のトポロジカル反強磁性金属材料も包含し、接続構造体も提供する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反強磁性体であるナノ粒子を、粉末冶金等により、300℃~1200℃で焼成、あるいは、焼結させトポロジカル反強磁性金属を生成し、このトポロジカル反強磁性金属から、造粒、分級等を行い、生成した、直径が約10μmのマイクロ粒子
【請求項2】
請求項1の素材として、直径が、10μmよりも微細なマイクロ粒子
【請求項3】
請求項1の素材として、直径が、10μmよりも大きいマイクロ粒子
【請求項4】
請求項1の素材として、NiOの単結晶素材を利用するもの。
【請求項5】
請求項1の素材として、CrO2の単結晶素材を利用するもの。
【請求項6】
請求項1の素材として、Fe3O4の単結晶素材を利用するもの。
【請求項7】
請求項1のマイクロ粒子をバインダーの中に組み込み、磁場強度として、102ガウス程度の磁場を加えた際に得られる、トポロジカル反強磁性金属の性質を持つ、マイクロ粒子のクラスター配列。
【請求項8】
請求項7において、バインダーでなく、未硬化弾性ポリマーを利用したもの。
【請求項9】
請求項7において、バインダー性能を有さない絶縁素材を利用したもの。
【請求項10】
請求項7のクラスター配列生成において、加熱成形した「トポロジカル反強磁性金属の性質」を付与した垂直方向に電流が流れる導電性シート。
【請求項11】
請求項7のクラスター配列を、焼成して成型した「トポロジカル反強磁性金属の性質」を示すコインタブレット。
【請求項12】
請求項7のクラスター配列を、直列に複数接続し、伝送路形状にしたトポロジカル反強磁性の性能を有する伝送路構造。
【請求項13】
請求項1のマイクロ粒子をバインダーの中に組み込み、磁場強度として、102ガウス程度の磁場を加えた際に得られる、トポロジカル反強磁性金属の性質を持つ、マイクロ粒子の伝送路構造。
【請求項14】
請求項13の伝送路構造が並列に複数となっているもの。
【請求項15】
請求項7のクラスター配列と、請求項11のコインタブレットを、直列に複数接続し、伝送路構造形状にしたトポロジカル反強磁性の性能を有する伝送路構造。
【請求項16】
請求項15の伝送路構造において、絶縁被膜で外周を覆った伝送路構造。
【請求項17】
請求項7のクラスター配列を有する、半導体ウェハ検査のための端子構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トポロジカル反強磁性金属として、6族を含むトポロジカル反強磁性金属の性質を有する粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップレットや電気機器の電気的接続において、対向する電極や配線間の電気的接続を行うために、異方性導電材料による接続が採用されているが、異方性導電材料は、導電性微粒子をバインダー樹脂などに混合した材料であり、例えば、異方性導電ペースト(ACP)、異方性導電フィルム(ACF)異方性導電インク、異方性導電シートなどがある。また、異方性導電材料に利用される導電性微粒子として、金属粒子や、基材となる樹脂粒子の表面を導電性金属層で被覆したものなどが使われている。
【0003】
これらは、通常利用では便利なものであるが、昨今は、コンピュータ機器やネットワークの高速化、大容量化に伴い、半導体や、関連の電子機器においては、低損失特性、高速信号、大電流を取り扱う必要が出てきており、従来の異方性導電材料では、電流を流す際の抵抗が多いなど課題があり、世の中で要求される高速性能、大電流性能に追随できない状況が出てきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6079425
【特許文献2】特許5755527
【特許文献3】特許5777477
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1では、粒子の飽和磁化は、45emu/cm3以下であるが、飽和磁化のみに言及し、残留磁化については、触れられていない。
【0006】
従来の導電性粒子は、めっき等の方法を使いNi等の導電性金属を表面に有し、電極間の電気的な接続に用いる。また、従来の導電性粒子では、磁性を有するNi等の導電性金属が製造工程等で磁化され、導電性粒子が磁性凝集することがある。
【0007】
上記課題を解決する方法としては、特許文献1等に提案されているように、めっき層にリンを含有させることで、飽和磁化の低減などが提案されている。
【0008】
しかしながら、めっき層におけるリンの含有率が高くなる場合には、導電性粒子の抵抗値が上昇し、該導電性粒子を用いて電極間を電気的に接続すると、電極間の接続抵抗も高くなることも有りうる。
【0009】
本発明は、電極間の接続抵抗を効果的に低くすることができる省電力スピントロニクスの性質を有するトポロジカル反強磁性金属である導電性粒子を提供する。更に、本発明の目的は、上記導電性粒子を用いた導電材料及び接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基材粒子として、粒径が10nm程度のNiOの反強磁性体を利用し、カルボニル法によりカルボニルニッケルを生成する。本発明の広い局面によれば、 上述した導電性粒子を300℃~1200℃において焼成、焼結させ、造粒、分級することにより、粒径10μm程度のマイクロ粒子の材料が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、電気伝導における低損失特性、高周波特性、大電流特性に優れた省電力スピントロニクスの性質を有するトポロジカル反強磁性金属である導電性微粒子を得ることを目的としている。
【0012】
上記課題の解決のために、トポロジカル反強磁性金属材料の素材として、NiOの単結晶素材等を利用し、トポロジカル反強磁性金属の性質を有する粒子を形成する。
【0013】
また、粒径は、数nm~数10μmとしていることを特徴とする。
【0014】
更に、本発明に関わる導電性粒子は、上記の構成によりトポロジカル反強磁性金属の性能が備えられているので、電気接続における抵抗値を効果的に低くすることができる。
【0015】
また、本発明では該微粒子を含む他のトポロジカル反強磁性金属材料も包含し、接続構造体も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るトポロジカル反強磁性金属であるナノ粒子1である。
【
図2】
図2は、ナノ粒子1を、粉末冶金により、300℃~1200℃で焼成、あるいは、焼結させたトポロジカル反強磁性金属2である。
【
図3】
図3は、トポロジカル反強磁性金属2から、造粒、分級を行い生成した、直径が約10μmのマイクロ粒子3である。
【
図4】
図4は、マイクロ粒子3をバインダーの中に組み込み、磁場強度として、10
2ガウス程度の磁場を加えた際に得られる、トポロジカル反強磁性金属の性質を持つ、マイクロ粒子3のクラスター配列4である。ここでは、各クラスター配列がお互いの斥力により、離れて並んでいることが観測される。
【
図5】
図5は、クラスター配列4生成の際に印加する磁場強度による変化のイメージ図である。マイクロ粒子3をバインダーの中に組み込み、磁場強度として、10
2ガウス程度の磁場を加えた際に、マイクロ粒子3のトポロジカル反強磁性金属の性質を持つクラスター配列4が得られる。このクラスター配列4は、スピン流抵抗(Rs)≒0、電気抵抗(Re)≒0の状態となり、TMRの性質を示す。 次に、マイクロ粒子3をバインダーの中に組み込み、磁場強度として、10
3ガウス程度の磁場を加えた際には、トポロジカル反強磁性金属の性質の乱れを持つ、マイクロ粒子3のクラスター配列5が得られる。このクラスター配列5は、トポロジカル反強磁性金属の性質の乱れを含むため、電気抵抗(Re)>0となる。更に、マイクロ粒子3をバインダーの中に組み込み、磁場強度として、10
4ガウス程度以上の磁場を加えた際には、飽和着磁の状態となっている、マイクロ粒子3のクラスター配列6が得られる。このクラスター配列6は、電気抵抗(Re)>>0となる。
【
図6】
図6には、クラスター配列4を、約直径20μmに成型したコインタブレット7を示す。
【
図7】
図7は、クラスター配列4を、シートの中に埋め込んだ状態のシートの水平方向から観測した際の概念
図8である。ここでは、クラスター配列9、クラスター配列10、クラスター配列11、クラスター配列12、クラスター配列13が並んでいる例を示しているが、クラスター配列9、クラスター配列10、クラスター配列11、クラスター配列12、クラスター配列13がお互いの斥力により、離れて配列していることが観測される。
【
図8】
図8は、クラスター配列4を、シートの中に埋め込んだ状態のシートの垂直方向から観測した際の概念図である。ここでは、クラスター配列15、クラスター配列16、クラスター配列17、クラスター配列18、クラスター配列19が並んでいる例を示しているが、クラスター配列15、クラスター配列16、クラスター配列17、クラスター配列18、クラスター配列19がお互いの斥力により、離れて配列していることが観測される。
【
図9】
図9は、クラスター配列4を、シートの中に埋め込んだ状態のシートの水平方向から観測した際の概念
図8の複数個を、導電面同士が接続する方向にて直列に接続し生成した伝送路構造形状20である。
【
図10】
図10は、伝送路構造形状20を、絶縁体21にて被覆した伝送路構造22である。
【
図12】
図12は、クラスター配列4を、シートの中に埋め込んだ状態のシートの水平方向から観測した際の概念
図8の導電面とコインタブレット7の導電面を交互に接続し、構成した伝送路構造形状24である。
【
図13】
図13は、絶縁素材25の溝部分に、バインダー26を入れ、そのバインダー26の中にマイクロ粒子3を入れた、伝送路素材27である。
【表1】
表1には、コインタブレット7と、同等形状を有するACFとの比較を示す。ACFでは、AC150Vで、電流を1A以下しか流せていない。
一方、コインタブレット7は、AC150Vで、電流を3A以上流せることが観測でき、低損失、高電流に対応できていることが確認できた。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、実施形態を説明する。
【0018】
尚、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複の説明を省略する。
また、図面は理解することを目的としており、実際の寸法比率は実際のものと必ずしも一致しない。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るナノ粒子を示す断面図である。
ナノ粒子1は、直径が約1nmのサイズとなっており、材質は、反強磁性体の酸化ニッケル(NiO)である。このNiOは、カルボニルニッケルであり、また、格子欠陥を内包しており、導電性粒子となっている。
【0020】
図2は、ナノ粒子1を、粉末冶金により、300℃~1200℃で焼成、あるいは、焼結させたトポロジカル反強磁性金属2である。
【0021】
図3は、トポロジカル反強磁性金属2から、造粒、分級を行い生成した、直径が約10μmのマイクロ粒子3である。
【0022】
図4は、マイクロ粒子3をバインダーの中に組み込み、磁場強度として、10
2ガウス程度の磁場を加えた際に得られる、トポロジカル反強磁性金属の性質を持つ、マイクロ粒子3のクラスター配列4である。このクラスター配列はTMRの性質を有する。
【0023】
図5に、クラスター配列4生成の際に印加する磁場強度による変化のイメージ図を記載する。
マイクロ粒子3をバインダーの中に組み込み、磁場強度として、10
2ガウス程度の磁場を加えた際に、マイクロ粒子3のトポロジカル反強磁性金属の性質を持つクラスター配列4が得られる。
このクラスター配列4は、スピン流抵抗(Rs)≒0、電気抵抗(Re)≒0の状態となり、TMRの性質を示す。
【0024】
次に、マイクロ粒子3をバインダーの中に組み込み、磁場強度として、103ガウス程度の磁場を加えた際には、トポロジカル反強磁性金属の性質の乱れを持つ、マイクロ粒子3のクラスター配列5が得られる。このクラスター配列5は、トポロジカル反強磁性金属の性質の乱れを含むため、電気抵抗(Re)>0となる。
【0025】
更に、マイクロ粒子3をバインダーの中に組み込み、磁場強度として、104ガウス程度以上の磁場を加えた際には、飽和着磁の状態となっている、マイクロ粒子3のクラスター配列6が得られる。このクラスター配列6は、電気抵抗(Re)>>0となる。
【0026】
図6には、クラスター配列4を、直径20μmに成型したコインタブレット7を示す。
【0027】
図7は、クラスター配列4を、シートの中に埋め込んだ状態のシートの水平方向から観測した際の概念
図8である。
ここでは、クラスター配列9、クラスター配列10、クラスター配列11、クラスター配列12、クラスター配列13が並んでいる例を示しているが、クラスター配列9、クラスター配列10、クラスター配列11、クラスター配列12、クラスター配列13がお互いの斥力により、離れて配列していることが観測される。
【0028】
図8は、クラスター配列4を、シートの中に埋め込んだ状態のシートの垂直方向から観測した際の概念図である。
ここでは、クラスター配列15、クラスター配列16、クラスター配列17、クラスター配列18、クラスター配列19が並んでいる例を示しているが、クラスター配列15、クラスター配列16、クラスター配列17、クラスター配列18、クラスター配列19がお互いの斥力により、離れて配列していることが観測される。
【0029】
図9は、クラスター配列4を、シートの中に埋め込んだ状態のシートの水平方向から観測した際の概念
図8の複数個を、導電面同士が接続する方向にて直列に接続し生成した伝送路構造形状20である。
【0030】
図10は、伝送路構造形状20を、絶縁体21にて被覆した伝送路構造22である。
【0031】
【0032】
図12は、クラスター配列4を、シートの中に埋め込んだ状態のシートの水平方向から観測した際の概念
図8の導電面とコインタブレット7の導電面を接続し、構成した伝送路構造形状24である。
これらの伝送路構造を利用することにより、低損失かつ高電流に対応できる伝送方式を可能にできる。
【0033】
図13は、絶縁素材25の溝部分に、バインダー26を入れ、そのバインダー26の中にマイクロ粒子3を入れた、伝送路素材27である。
【0034】
表1には、コインタブレット7と、同等形状を有するACFとの比較を示す。ACFでは、AC150Vで、電流を1A以下しか流せていない。
【0035】
一方、コインタブレット7は、AC150Vで、電流を3A以上流せることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、電極間の接続抵抗を効果的に低くすることができる省電力スピントロニクスの性質を有するトポロジカル反強磁性金属である導電性粒子を提供する。更に、本発明の目的は、上記導電性粒子を用いた導電材料及び接続構造体を提供することである。そのため、本発明を半導体およびチップレットなどの応用することで、低消費電力、高速伝送、大電流の対応が可能となり、また、発電所から送電する伝送路に応用することで、電力損失を防ぎ、低消費電力社会に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
1・・・ナノ粒子
2・・・焼結させたトポロジカル反強磁性金属
3・・・マイクロ粒子
4・・・クラスター配列
5・・・クラスター配列
6・・・クラスター配列
7・・・コインタブレット
8・・・クラスター配列4を、シートの中に埋め込んだ状態のシートの水平方向から観測した際の概念図
9・・・クラスター配列
10・・・クラスター配列
11・・・クラスター配列
12・・・クラスター配列
13・・・クラスター配列
14・・・クラスター配列4を、シートの中に埋め込んだ状態のシートの垂直方向から観測した際の概念図
15・・・クラスター配列
16・・・クラスター配列
17・・・クラスター配列
18・・・クラスター配列
19・・・クラスター配列
20・・・伝送路構造形状
21・・・絶縁体
22・・・被覆した伝送路構造
23・・・伝送路構造22の断面形状
24・・・伝送路構造形状
25・・・絶縁素材
26・・・バインダー
27・・・伝送路素材