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特開2024-123643バックアップコントローラー、および体外循環装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123643
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】バックアップコントローラー、および体外循環装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/232 20210101AFI20240905BHJP
   A61M 60/113 20210101ALI20240905BHJP
   A61M 60/279 20210101ALI20240905BHJP
   A61M 60/38 20210101ALI20240905BHJP
   A61M 60/416 20210101ALI20240905BHJP
   A61M 60/585 20210101ALI20240905BHJP
   A61M 60/845 20210101ALI20240905BHJP
   A61M 60/441 20210101ALI20240905BHJP
   A61M 1/14 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61M60/232
A61M60/113
A61M60/279
A61M60/38
A61M60/416
A61M60/585
A61M60/845
A61M60/441
A61M1/14 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031237
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】藤綱 伊織
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA03
4C077BB06
4C077DD07
4C077DD08
4C077EE01
4C077EE05
4C077KK23
(57)【要約】
【課題】小型化されたバックアップコントローラーを提供すること。
【解決手段】バックアップコントローラーは、体外循環装置に含まれる遠心ポンプ駆動装置をバックアップするためのバックアップコントローラーであって、内部にバッテリが配置された本体部を備え、本体部の端面には、遠心ポンプの回転数を設定するための回転数設定部と、他端面が遠心ポンプを駆動するためのモーターであるドライブモーターに接続された接続コードの、他端を接続するためのコントローラー側ソケットと、が配置されており、本体部は、平板状の形状を有する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外循環装置に含まれる遠心ポンプ駆動装置をバックアップするためのバックアップコントローラーであって、
内部にバッテリが配置された本体部を備え、
前記本体部の端面には、
遠心ポンプの回転数を設定するための回転数設定部と、
他端面が前記遠心ポンプを駆動するためのモーターであるドライブモーターに接続された接続コードの、他端を接続するためのコントローラー側ソケットと、が配置されており、
前記本体部は、平板状の形状を有する、
バックアップコントローラー。
【請求項2】
前記コントローラー側ソケットが配置されている端面の短手方向の長さは、前記コントローラー側ソケットの直径の3倍以下である、
請求項1に記載のバックアップコントローラー。
【請求項3】
前記回転数設定部と、前記コントローラー側ソケットとは、前記本体部の異なる端面に配置されている、
請求項1または2に記載のバックアップコントローラー。
【請求項4】
請求項1または2に記載のバックアップコントローラーと、
搬送カートと、を含み、
前記搬送カートには、前記バックアップコントローラーがバックアップする遠心ポンプ駆動装置が配置されるとともに、前記バックアップコントローラーが配置されている、
体外循環装置。
【請求項5】
前記バックアップコントローラーは、前記遠心ポンプ駆動装置に接続されている前記接続コードを、前記バックアップコントローラーを移動させることなく、前記バックアップコントローラーの前記コントローラー側ソケットに接続することができる位置に配置されている、
請求項4に記載の体外循環装置。
【請求項6】
前記バックアップコントローラーによる前記遠心ポンプ駆動装置のバックアップを開始する際に、前記バックアップコントローラーは、前記バックアップコントローラーを移動させることなく、前記回転数設定部の操作が可能な位置に配置されている、
請求項4に記載の体外循環装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心ポンプ駆動装置用のバックアップコントローラー、およびバックアップコントローラーが供えられた体外循環装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の人工心肺装置は、血液循環回路、血液ポンプ、血液循環回路以外のライン、および血液循環回路以外のラインに配置されるポンプを含む。血液循環回路は、血液を体外循環させるための回路である。血液ポンプは、血液循環回路に血液を循環させるためのポンプである。
【0003】
血液循環回路以外のラインの例として血液回収ラインが挙げられる。血液回収ラインは、出血した血液を術野から回収するため回路である。
【0004】
人工心肺装置において主に用いられるポンプは、遠心ポンプおよびローラーポンプである。遠心ポンプは、血液ポンプとして用いられる。ローラーポンプは、血液循環回路以外のラインに配置されるポンプとして用いられる。ローラーポンプは、血液ポンプとして用いられる場合もある。
【0005】
従来の人工心肺装置は、特許文献1に示すように、電源部、血液ポンプ、血液ポンプ駆動装置、血液ポンプ操作部、および血液ポンプ表示部などを含む。電源部は、非常時に用いられる電源である。血液ポンプ駆動装置は、血液ポンプを制御して駆動させる装置である。操作部は、血液ポンプを操作するための装置である。血液ポンプ表示部は、人工心肺装置の運転状態および患者の状態に関するデータが表示される部分である。従来の人工心肺装置は、このように複数の部品を含む。そのため、従来の人工心肺装置は非常に大型である。
【0006】
人工心肺装置には、制御部が故障した場合、または停電した場合などに備えて、バックアップ用の装置が付属されている場合がある。特許文献2には、回転操作ダイアルなどが備えられたバックアップコントローラーが記載されている。このバックアップコントローラーは、メインコントローラーと同様の形状を有しており、大型である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-10321号公報
【特許文献2】特開2016-64033号公報
【特許文献3】特開2019-51024号公報
【特許文献4】国際公開第2022/202974号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、従来の人工心肺装置は非常に大型である。そのため、従来の人工心肺装置を移動させることは、容易ではない。また、従来の人工心肺装置は、広い設置面積を必要とする。そのため、従来の人工心肺装置は、手術室内に他の装置を配置する際の妨げになる。また、従来の人工心肺装置は、術者の動線を確保する際の妨げとなる。
【0009】
人工心肺装置を小型化する技術が提案されている。特許文献3に記載された人工心肺装置では、血液ポンプ駆動装置は、バッテリの上方に配置されている。また、特許文献3に記載された循環ポンプは、縦方向に並べて配置されている。このように、特許文献3の人工心肺装置では、縦方向の空間が有効利用されている。その結果、特許文献3の人工心肺装置は、人工心肺装置の設置面積を狭めることを可能にしている。
【0010】
また、特許文献4には、陰圧による吸引を用いることによって、ローラーポンプを用いずにローラーポンプの機能を実現する技術が記載されている。特許文献4に記載された技術は、循環ポンプとしてのローラーポンプを含まない人工心肺装置の実現を可能にする。特許文献4に記載された技術は、人工心肺装置の小型化を可能にしている。
【0011】
すなわち、人工心肺装置をより小型化することが求められている。特には、人工心肺装置に含まれる体外循環装置を小型化することが求められている。体外循環装置は、血液ポンプおよび血液ポンプを駆動する装置を含む。
【0012】
特許文献4に記載された技術は、人工心肺装置のなかで、特には、体外循環装置以外の部分の小型化を可能にする。一方、人工心肺装置のなかで、体外循環装置に係る部分については、それを小型化する技術は提案されていない。
【0013】
体外循環装置に含まれる血液ポンプは、一般的に遠心ポンプである。そのため、体外循環装置には、遠心ポンプ駆動装置が含まれている。遠心ポンプ駆動装置は、体外循環装置の中で、大型の装置の一つである。
【0014】
また、体外循環装置には、遠心ポンプ駆動装置が故障した場合などに備えて、バックアップコントローラーが付属されている場合がある。従来のバックアップコントローラーは、遠心ポンプ駆動装置と同様の大きさを有しており、大型である。
【0015】
バックアップコントローラーが大型であるため、遠心ポンプ駆動装置の近傍にバックアップコントローラーを配置することは困難である。通常、バックアップコントローラーは、遠心ポンプ駆動装置が使用される処置室などとは別室の保管室などに置かれている。バックアップコントローラーが別室に置かれている場合、遠心ポンプ駆動装置が故障したときに、迅速なバックアップを行うことが困難である、との問題がある。
【0016】
一方、バックアップコントローラーを遠心ポンプ駆動装置の近傍に配置する場合、システム全体が大きくなり、システムの移動が困難になることや、設置場所が存在しないなどの問題がある。
【0017】
そこで、本発明は、小型化されたバックアップコントローラーを提供することを目的とする。延いては、本発明は、小型化された体外循環装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(1)体外循環装置に含まれる遠心ポンプ駆動装置をバックアップするためのバックアップコントローラーであって、内部にバッテリが配置された本体部を備え、前記本体部の端面には、遠心ポンプの回転数を設定するための回転数設定部と、他端面が前記遠心ポンプを駆動するためのモーターであるドライブモーターに接続された接続コードの、他端を接続するためのコントローラー側ソケットと、が配置されており、前記本体部は、平板状の形状を有する、バックアップコントローラー。
【0019】
(2)前記コントローラー側ソケットが配置されている端面の短手方向の長さは、前記コントローラー側ソケットの直径の3倍以下である、(1)に記載のバックアップコントローラー。
【0020】
(3)前記回転数設定部と、前記コントローラー側ソケットとは、前記本体部の異なる端面に配置されている、(1)または(2)に記載のバックアップコントローラー。
【0021】
(4)(1)または(2)に記載のバックアップコントローラーと、搬送カートと、を含み、前記搬送カートには、前記バックアップコントローラーがバックアップする遠心ポンプ駆動装置が配置されるとともに、前記バックアップコントローラーが配置されている、体外循環装置。
【0022】
(5)前記バックアップコントローラーは、前記遠心ポンプ駆動装置に接続されている前記接続コードを、前記バックアップコントローラーを移動させることなく、前記バックアップコントローラーの前記コントローラー側ソケットに接続することができる位置に配置されている、(4)に記載の体外循環装置。
【0023】
(6)前記バックアップコントローラーによる前記遠心ポンプ駆動装置のバックアップを開始する際に、前記バックアップコントローラーは、前記バックアップコントローラーを移動させることなく、前記回転数設定部の操作が可能な位置に配置されている、(4)または(5)に記載の体外循環装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、小型化されたバックアップコントローラーを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態1の人工心肺システムの機能ブロック図である。
図2】実施形態1の人工心肺システムの概要を示す図である。
図3】実施形態2の人工心肺システムの機能ブロック図である。
図4】実施形態2の人工心肺システムの概要を示す図である。
図5】体外循環装置を示す図である。
図6】遠心ポンプ駆動装置の機能ブロック図である。
図7】遠心ポンプ駆動装置の外観を示す図である。
図8】遠心ポンプ駆動装置を表面から見た図である。
図9】遠心ポンプ駆動装置の内部を裏面から見た図である。
図10】遠心ポンプ駆動装置の内部を裏面から見た他の図である。
図11】遠心ポンプ駆動装置の内部を示す図である。
図12】遠心ポンプ駆動装置の筐体を側面から見た図である。
図13】バックアップコントローラーを正面から見た図である。
図14】バックアップコントローラーを背面から見た図である。
図15】バックアップコントローラーの内部構造を示す図である。
図16】バックアップコントローラーの機能を示す概念図である。
図17】遠心ポンプ駆動装置及びバックアップコントローラーに接続される接続コードを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施形態1)
発明を実施するための形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態1の人工心肺システム1の機能ブロック図である。実施形態1の人工心肺システム1は、ローラーポンプを含まない人工心肺システムである。実施形態2の人工心肺システム1は、ローラーポンプを含む人工心肺システムである。ローラーポンプは血液を送るために用いられるポンプである。実施形態1の人工心肺システム1では、ローラーポンプを用いずに血液が送られる。以下、実施形態1の人工心肺システム1を説明する。
【0027】
(人工心肺システム)
図1に示すように、人工心肺システム1は、患者P、リザーバー8、体外循環装置3、人工肺7、血液循環回路30、および陰圧調整装置22を含む。患者P、リザーバー8、遠心ポンプ12、および人工肺7は、血液循環回路30を介して接続されている。図1の矢印は、血液の流れの方向を示す。
【0028】
リザーバー8は、患者Pから流出した静脈血および患者Pから回収した血液を貯留するための貯血槽である。人工肺7は、リザーバー8から流出した血液に酸素を添加する装置である。陰圧調整装置22は、リザーバー8内の陰圧を調整する装置である。陰圧調整装置22は、いわゆるローラーポンプと同様の機能を果たす。陰圧調整装置22については、後に説明する。
【0029】
(血液循環回路)
血液循環回路30は、患者Pの血液を体外に循環させるための回路である。血液循環回路30は、脱血ライン32、血液回収ライン34、および送血ライン33を含む。脱血ライン32および血液回収ライン34は、患者Pからリザーバー8に血液を送るためのラインである。送血ライン33は、リザーバー8から遠心ポンプ12を介して患者Pに血液を送るためのラインである。
【0030】
脱血ライン32は、患者Pの血液に酸素を添加するために、患者Pから意図的に脱血するためのラインである。血液回収ライン34は、出血した血液などを術野から回収するためのラインである。術野から回収された血液は、リザーバー8において、脱血ライン32からの流入した血液と合流する。本実施例では血液回収ライン34は1本のラインで示したが、血液回収ラインは2本など複数のラインが存在していてもよい。
【0031】
送血ライン33は、患者Pに、人工肺7によって酸素が添加された血液を送るためのラインである。送血ライン33には、人工肺7が配置されている。
【0032】
(体外循環装置)
体外循環装置3は、遠心ポンプ駆動装置14、駆動モーター16、第1流量調整装置24、および第2流量調整装置25を含む。
【0033】
遠心ポンプ12は、血液ポンプとして機能する機器である。遠心ポンプ12は、リザーバー8と人工肺7との間に配置されている。遠心ポンプ12は、血液循環回路30における血液の流れを作り出す。血液循環回路30における血液の流れの順序は、患者P、リザーバー8、遠心ポンプ12、人工肺7、および患者Pの順である。血液は、この順での流れを繰り返し、血液循環回路30を循環する。
【0034】
駆動モーター16は、遠心ポンプ12を回転させて、遠心ポンプ12を作動させる装置である。駆動モーター16は、遠心ポンプ12に取り付けられた状態で用いられる。
【0035】
遠心ポンプ駆動装置14は、遠心ポンプ12を制御する装置である。遠心ポンプ駆動装置14は、駆動モーター16を介して、遠心ポンプ12を制御する。
【0036】
遠心ポンプ駆動装置14には、駆動モーター16が接続されている。駆動モーター16は、遠心ポンプ12に取り付けられている。遠心ポンプ駆動装置14は、駆動モーター16の駆動を制御する。駆動モーター16の駆動は、遠心ポンプ12に伝達される。このようにして、遠心ポンプ駆動装置14は、駆動モーター16を介して遠心ポンプ12を制御する。
【0037】
遠心ポンプ駆動装置14は、駆動モーター16に加えて、人工心肺システム1に含まれる他の装置を制御する。他の装置としては、センサー部42およびオートクランプ40などがある。センサー部42およびオートクランプ40については、後に説明する。
【0038】
人工心肺システム1の複数の装置を制御することで、遠心ポンプ駆動装置14は、人工心肺システム1においてメインコントローラーとして機能する。遠心ポンプ駆動装置14の構造などについては、後に説明する。
【0039】
第1流量調整装置24は、脱血ライン32の流量を調整する装置である。第1流量調整装置24は、脱血ライン32における、患者Pとリザーバー8との間に配置されている。
【0040】
第2流量調整装置25は、血液回収ライン34の流量を調整する装置である。第2流量調整装置25は、血液回収ライン34における、患者Pとリザーバー8との間に配置されている。
【0041】
第1流量調整装置24および第2流量調整装置25については、陰圧調整装置22とともに、後に説明する。
【0042】
図2は、実施形態1の人工心肺システム1の概要を示す図である。患者Pは、送血ライン33を介して、人工肺7と接続されている。血液は、図2の実線の矢印の方向に血液循環回路30を流れる。送血ライン33には、人工肺7に加えて、フィルタ44、センサー部42、およびオートクランプ40が配置されている。
【0043】
(フィルタ、センサー、オートクランプ)
フィルタ44は、チューブ46を流れる血液をフィルタリングする部材である。
【0044】
センサー部42は、脱血ライン32及び送血ライン33を流れる血液に関する情報を検知する装置である。センサー部42は、複数の種類のセンサーを含むことができる。センサー部42は、血液の流量センサー、血液の温度センサー、血流の圧力センサー、血流中の気泡センサーなどを含むことができる。また、センサー部42は、リザーバー8中の血液のレベルセンサーを含むことができる。
【0045】
オートクランプ40は、異常発生時に回路を閉塞させて、血液の循環を停止させる装置である。オートクランプ40は、例えばチューブ46の内部に気泡が混入した場合などに、チューブ46をクランプすることによって血液の流れを停止させる。
【0046】
遠心ポンプ12には、駆動モーター16が取り付けられる。駆動モーター16は、遠心ポンプ12を回転させて、血液を循環させる。
【0047】
駆動モーター16、センサー部42、およびオートクランプ40は、接続コード47を介して、遠心ポンプ駆動装置14に接続されている。遠心ポンプ駆動装置14は、メインコントローラーとして機能する。遠心ポンプ駆動装置14は、駆動モーター16、センサー部42、およびオートクランプ40の動作を制御し、また、それらの動作を監視する。
【0048】
遠心ポンプ駆動装置14には、コントローラー取り付けアーム50が取り付けられている。遠心ポンプ駆動装置14は、コントローラー取り付けアーム50を介して搬送カート60などに取り付けられる。遠心ポンプ駆動装置14が搬送カート60に取り付けられた状態は、図5に示されている。コントローラー取り付けアーム50については、後に説明する。
【0049】
陰圧調整装置22、第1流量調整装置24、および第2流量調整装置25について説明する。通常、血液回収ライン34などの流量の制御は、ローラーポンプを用いて行うことが多い。実施形態1の人工心肺システム1は、ローラーポンプを含まない。陰圧調整装置22が、ローラーポンプと同様の機能を果たすからである。陰圧調整装置22は、遠心ポンプ12と協働して、リザーバー8の内部の陰圧を調整する。
【0050】
遠心ポンプ12が作動すると、リザーバー8から血液が流れだすため、リザーバー8の内部は陰圧になる。
【0051】
リザーバー8の内部が陰圧になると、脱血ライン32および血液回収ライン34に血液の吸引力が生じる。この吸引力の大小は、リザーバー8の内部の陰圧の大小に依存する。
【0052】
陰圧調整装置22が開閉弁などを備えている場合、開閉弁の開閉度を調整することによって、リザーバー8の内部の陰圧を調整することができる。リザーバー8の陰圧を調整することで、脱血ライン32および血液回収ライン34の吸引力の大きさを調整することができる。
【0053】
脱血ライン32には、第1流量調整装置24が配置されている。血液回収ライン34には、第2流量調整装置25が配置されている。第1流量調整装置24および第2流量調整装置25は、圧閉器などで構成することができる。圧閉器は、オクルーダーともいわれる。
【0054】
第1流量調整装置24および第2流量調整装置25の流量制御は手動で行うが、これに限らず、電動であってもよい。第1流量調整装置24および第2流量調整装置25のうちの少なくとも一方を操作することによって、脱血ライン32または血液回収ライン34の流量を調整することができる。第1流量調整装置24及び第2流量調整装置25は、手動・電動にかかわらず、チューブを外部から狭窄し、その制御を多段階若しくは無段階で簡便にコントロール可能である。
【0055】
以上のようにして、陰圧調整装置22は、ローラーポンプと同様の機能を果たすことができる。
【0056】
(実施形態2)
実施形態2の人工心肺システム1を説明する。図3は、実施形態2の人工心肺システム1の機能ブロック図である。実施形態2の人工心肺システム1と、実施形態1の人工心肺システム1との違いは、ローラーポンプを含むか含まないかである。実施形態1の人工心肺システム1は、ローラーポンプを含んでいなかった。これに対して、実施形態2の人工心肺システム1は、ローラーポンプを含む。実施形態2の人工心肺システム1のローラーポンプは、流量調整装置として機能する。以下、実施形態2の人工心肺システム1について、実施形態1の人工心肺システム1と異なる点を中心に説明する。
【0057】
実施形態2の人工心肺システム1では、第1流量調整装置24および第2流量調整装置25は、ローラーポンプによって構成されている。そのため、第1流量調整装置24および第2流量調整装置25を制御する装置が必要となる。また、第1流量調整装置24は電動オクルーダーで構成されることも可能である。
【0058】
実施形態1の人工心肺システム1のように、第1流量調整装置24および第2流量調整装置25が、手動の圧閉器などで構成されている場合には、第1流量調整装置24および第2流量調整装置25を制御する装置は必須ではない。
【0059】
これに対して、第1流量調整装置24および第2流量調整装置25が、ローラーポンプによって構成されている場合には、ローラーポンプが生じさせる流量を制御する装置が必要となる。この流量を制御する装置がローラーポンプコントローラーである。
【0060】
実施形態2の人工心肺システム1では、体外循環装置3は、流量制御装置20を含む。この流量制御装置20は、ローラーポンプコントローラーとして機能する。
【0061】
流量制御装置20は、第1流量調整装置24および第2流量調整装置25に接続されている。流量制御装置20は、第1流量調整装置24を制御することによって、脱血ライン32の流量を調整する。流量制御装置20は、第2流量調整装置25を制御することによって、血液回収ライン34の流量を調整する。
【0062】
図4は、陰圧調整装置22がリザーバー8に接続されていない構成を示している。ただし、実施形態2の人工心肺システム1においても、陰圧調整装置22をリザーバー8に接続することは可能である。陰圧調整装置22をリザーバー8に接続する場合、陰圧調整装置22の構成は、実施形態1における陰圧調整装置22と同様の構成にすることができる。
【0063】
陰圧調整装置22を用いることによって、血液循環回路30における血液の流量をより精緻に調整することができる。
【0064】
図5は、搬送カート60に搭載された状態の人工心肺システム1の概要を示す図である。本発明の人工心肺システム1では、人工心肺システム1の構成要素のうち、患者Pを除く全ての構成要素を搬送カート60に搭載することができる。
【0065】
(搬送カート)
搬送カート60は、複数のポール62、少なくとも1つの設置台64、および複数のキャスタ66を含む。搬送カート60がキャスタ66を含むことによって、搬送カート60を容易に移動させることができる。
【0066】
また、搬送カート60がポール62を含むことによって、種々の装置などを、クランプなどを介して、ポール62に取り付けることができる。図5の例では、遠心ポンプ駆動装置14が、第1の取り付け部55を介してポール62に取り付けらえている。また、オートクランプ40およびフィルタ44が、それぞれ、支持アーム58を介して、ポール62に取り付けられている。
【0067】
また、搬送カート60が設置台64を含むことによって、種々の装置などを、搬送カート60に配置することができる。図5の例では、バックアップコントローラー100が、設置台64に配置されている。バックアップコントローラー100については、後に説明する。
【0068】
前述のように、本発明の人工心肺システム1では、人工心肺システム1の構成要素のうち、患者Pを除く全ての構成要素を搬送カート60に搭載することができる。以下、患者Pを除く人工心肺システム1の全ての構成要素を、人工心肺システム構成部材という。
【0069】
図5では、人工心肺システム構成部材の一部が搬送カート60に搭載されていない。搬送カート60の構造をより明確に示すとの観点から、人工心肺システム構成部材の一部の記載を省略している。記載が省略された構成部材としては、人工肺7およびリザーバー8などがある。記載が省略された構成部材も、支持アームまたはクランプなどを用いて、搬送カート60に搭載することができる。
【0070】
人工心肺システム1の実施形態として、実施形態1および実施形態2を説明した。いずれの実施形態の人工心肺システム1であっても、人工心肺システム構成部材を搬送カート60に搭載することができる。実施形態2の人工心肺システム1は、実施形態1の人工心肺システム1が含まない構成要素である、ローラーポンプおよび流量制御装置20を含む。ローラーポンプは、例えばクランプを介してポール62に取り付けることができる。また、流量制御装置20は、設置台64に配置することができる。
【0071】
本発明の人工心肺システム1において、人工心肺システム構成部材を搬送カート60に搭載することができることの主な要因は、遠心ポンプ駆動装置14などが小型化および軽量化されていることである。遠心ポンプ駆動装置14については、後に説明する。
ている。
【0072】
搬送カート60には、患者Pを除く人工心肺システム1の全て、すなわち人工心肺システム構成部材を搭載することができる。その結果、人工心肺システム構成部材の移動が容易になる。その結果、人工心肺システム構成部材が、手術室内などにおいて、患者Pの処置などの障害になりにくい。また、人工心肺システム構成部材をカートに乗せたままでの治療を可能にしたことで、患者Pの移動や運搬の際にも一緒に移動させることができる。
【0073】
さらには、患者Pを除く人工心肺システム1の全てを搬送カート60に搭載できるため、血液循環回路30の経路も短縮でき、患者Pからの脱血量が低減できるため、低侵襲となる。また、人工心肺システム構成部材の設置面積が少ないため処置の妨げになりにくく、かつ、可搬性が高く運搬も容易であり、安定した治療を継続可能である。
【0074】
図6は、遠心ポンプ駆動装置14の機能ブロック図である。図6に示すように、遠心ポンプ駆動装置14は、制御部70、電源部71、表示操作部72、操作部73、報知部74、バッテリ75、およびセンサーコネクタ76を含む。制御部70は、駆動モーター16などを制御する部分である。制御部70は、電子基板によって構成されてもよい。電源部71は、制御部70に電源を供給する部分である。電源部71は、バッテリ75から電力の供給を受ける。表示操作部72は、人工心肺システム1の使用者などに対して、情報を表示する部分である。表示操作部72は、また、人工心肺システム1の使用者などから、操作を受け付けることが可能なように構成されていてもよい。表示操作部72は、液晶タッチパネルによって構成されてもよい。操作部73は、人工心肺システム1の使用者などから、操作を受け付ける部分である。操作部73は、操作ノブによって構成されてもよい。報知部74は、人工心肺システム1の使用者などに対して、異常などを知らせる部分である。報知部74は、ブザーによって構成されてもよい。センサーコネクタ76は、センサー部42が接続される接続ポートである。
【0075】
図7は、遠心ポンプ駆動装置14の外観を示す図である。遠心ポンプ駆動装置14の各部は、筐体80の中に納められている。筐体80は、前側筐体81および後ろ側筐体82を含む。また、遠心ポンプ駆動装置14は、コントローラー取り付けアーム50を介して、ポール62に取り付けられている。
【0076】
本実施形態の遠心ポンプ駆動装置14では、図6に基づいて説明した各機能が、1つの、小型の筐体80の中に集約されている。すなわち、各機能が、モニタ一体型の小型装置としてまとめられている。そのため、遠心ポンプ駆動装置14を、コントローラー取り付けアーム50を介して、ポール62に容易に取り付けることができる。すなわち、本実施形態においては、ポールマウント式の遠心ポンプ駆動装置14が実現されている。
【0077】
本実施形態の遠心ポンプ駆動装置14では、小型の、モニタ一体型の、ポールマウント式の遠心ポンプ駆動装置14を実現するために、電気回路の小型化、部品の再選定、ノイズ対策の最適化、軽量化と堅牢さを兼ね備えた筐体設計などを行っている。その上で、各部を機能的に重ねて配置することによって、各種の機能を小型の筐体80の中に集約している。
【0078】
図8図9、および図10に基づいて、重ね合わせの配置を説明する。遠心ポンプ駆動装置14の各部は、筐体80の内部において、大まかには3層に分かれて配置されている。図8図9、および図10は、それぞれ、各層の概要を示している。
【0079】
先述した図7に記載した矢印A2の方向を、表面83から裏面84への方向とする。また、図7に記載した矢印A3の方向を、裏面84から表面83への方向とする。図8は、遠心ポンプ駆動装置を表面83から裏面84の方向に見た図である。図9はおよび図10は、いずれも、遠心ポンプ駆動装置の内部を裏面84から表面83の方向に見た図である。図9はおよび図10は、後ろ側筐体82が取り外された状態を示している。図9図10とでは、示している層が異なる。図9は、図10よりも、より裏面84に近い層を示している。
【0080】
図8は、前述の3層のうち、最も表面83側の層を示している。図8に示すように、遠心ポンプ駆動装置14の表面83には、表示操作部72が露出している。また、表面83には、操作部73および報知部74が配置されている。
【0081】
図9は、前述の3層のうち、最も裏面84側の層を示している。図9に示すように、遠心ポンプ駆動装置14の裏面84に近い層には、電源部71、バッテリ75、およびセンサーコネクタ76が配置されている。電源部71およびバッテリ75は、遠心ポンプ駆動装置14を矢印A2方向に平面視した場合に、表示操作部72と重なっている。
【0082】
図10は、前述の3層のうち、中間の層を示している。図10に示すように、3層のうちの中間の層には、電源部71、制御部70、および報知部74が配置されている。電源部71および制御部70は、遠心ポンプ駆動装置14を矢印A2方向に平面視した場合に、表示操作部72と重なっている。また、制御部70は、遠心ポンプ駆動装置14を矢印A2方向に平面視した場合に、バッテリ75と重なっている。
【0083】
図8図9、および図10に示すように、遠心ポンプ駆動装置14の各部は、各部を小型化し薄型化したうえで、重ねて配置することによって、小型の筐体80の中に集約されることが可能になっている。
【0084】
(筐体設計およびノイズ対策)
つぎに、筐体設計およびノイズ対策を説明する。図11は、筐体80の内部における部品の配置の様子を示すモデル図である。遠心ポンプ駆動装置14の各部を1つの筐体80に納めて、遠心ポンプ駆動装置14を小型化するにあたり、ノイズ対策が重要である。遠心ポンプ駆動装置14に含まれる部品には、ノイズの発生源となる部品、およびノイズの影響を受けやすい部品がある。ノイズの発生源となる部品の例は、制御部70である。ノイズの影響を受けやすい部品の例は、センサーに関連する部品である。センサーに関連する部品としては、センサーコネクタ76の周辺に配置される部品がある。
【0085】
図11に記載された領域R1および電源部71は、ノイズの発生源となる領域である。図11に示された領域R2は、ノイズの影響を受けやすい領域である。本実施形態の遠心ポンプ駆動装置14では、領域R1と領域R2との間に板金86が配置されている。板金86とは、金属製の板状部材をいう。板金86が電磁波を遮蔽することによって、領域R2は、領域R1からノイズの影響を受けにくくなる。その結果、遠心ポンプ駆動装置14の小型化が可能となっている。
【0086】
また、センサーコネクタ76は、遠心ポンプ駆動装置14を表面83から平面視した場合に、ほぼ四角形状の遠心ポンプ駆動装置14における隣り合う2辺において、各辺に沿うように配置されている。そのため、領域R2は、遠心ポンプ駆動装置14を表面83から平面視した場合に、L字型の形状を有している。本実施例では、遠心ポンプ駆動装置14の裏面84から平面視した場合、底辺と一方の側辺にセンサーコネクタ76を配置したが、これに限らない。例えば裏面84から平面視した場合、上辺と一方の側辺であってもよい。更にはノイズの影響を受けにくくすることができれば、対面する辺、例えば両側辺または上底辺に設置してもよい。
【0087】
センサーコネクタ76は、遠心ポンプ駆動装置14を小型化することにともない、遠心ポンプ駆動装置14における2つの側面に配置されている。
【0088】
従来の遠心ポンプ駆動装置では、センサーコネクタは、2段に重ねて配置されていたり、または、2列に並べて配置されたりしていた。本実施形態の遠心ポンプ駆動装置14では、センサーコネクタ76を遠心ポンプ駆動装置14における2つの側面に配置することで、センサー関連する部品へのノイズの影響を抑制しつつ、小型化を実現している。
【0089】
(筐体の厚さ)
図12は、筐体80の厚さを示す図である。筐体80の厚さとは、表面83から裏面84までの距離である。図12に筐体80の厚さを厚さd1で示す。本実施形態の遠心ポンプ駆動装置14の厚さd1は、9.5cmである。このように、遠心ポンプ駆動装置14は、その筐体80の内部に、多層に部品が配置されているにも関わらず、厚さd1は、手で把持できる程度の小さい値に抑えられている。
【0090】
(コントローラー取り付けアーム)
図7に基づいて、コントローラー取り付けアーム50を説明する。本実施形態の遠心ポンプ駆動装置14(メインコントローラー)は、前述のように非常に小型化されている。そのため、アームなどを介して他の部分に固定することが容易である。図7は、遠心ポンプ駆動装置14が、コントローラー取り付けアーム50を介して、搬送カート60のポール62に取り付けられている例を示している。遠心ポンプ駆動装置14にコントローラー取り付けアーム50が取り付けられたものを、遠心ポンプ駆動装置ユニット15とする。
【0091】
コントローラー取り付けアーム50は、第1のアーム部51、第2のアーム部52、接続部53、第1の取り付け部55、および第2の取り付け部56を含む。第1のアーム部51と第2のアーム部52とは、接続部53を介して接続されている。接続部53は、第2のアーム部52が第1のアーム部51に対して屈折すること、および第2のアーム部52が第1のアーム部51に対して回転することができるように構成されている。接続部53が存在することによって、第2のアーム部52は、水平方向、および垂直方向に位置を変えることができる。
【0092】
第1のアーム部51における、接続部53とは反対側の端部には、第1の取り付け部55が配置されている。第1の取り付け部55は、クランプ機構含む。第1の取り付け部55は、クランプ機構を介して、ポール62に取り付けられている。第1の取り付け部55がポール62に取り付けられることによって、コントローラー取り付けアーム50の全体が、ポール62に固定される。
【0093】
第2のアーム部52における、接続部53とは反対側の端部には、第2の取り付け部56が配置されている。遠心ポンプ駆動装置14は、第2の取り付け部56を介してコントローラー取り付けアーム50に取り付けられている。
【0094】
第2の取り付け部56は、遠心ポンプ駆動装置14が、水平方向、および垂直方向に位置を変えることができるように構成されている。
【0095】
なお、コントローラー取り付けアーム50は、第1のアーム部51および第2のアーム部52の2つのアーム部を必ずしも含まなくてもよい。コントローラー取り付けアーム50が1つのアーム部を含むように、コントローラー取り付けアーム50を構成することもできる。
【0096】
本実施形態の遠心ポンプ駆動装置14(メインコントローラー)は、前述のように非常に小型化されている。そのため、遠心ポンプ駆動装置14の配置の自由度が高い。また、本実施形態の遠心ポンプ駆動装置14は、処置室などで、処置や、処置員の動線の妨げになりにくい。さらには、別の支柱への移設も容易にすることができるため、各病院に合わせた配置が可能になる。加えて、遠心ポンプ駆動装置14と併用する機器(ローラーポンプやカート等)の種類やメーカーに問わず、使用形態に合わせて遠心ポンプ駆動装置14(メインコントローラー)を設置することが可能になる。
【0097】
また、本実施形態の遠心ポンプ駆動装置14は、コントローラー取り付けアーム50などを介して、搬送カート60のポール62などの他の部品に取り付けることが容易である。そのため、本実施形態の遠心ポンプ駆動装置14は、搬送カート60と共に、移動させることが容易である。
【0098】
また、本実施形態の遠心ポンプ駆動装置14は、コントローラー取り付けアーム50などを介して他の部品に取り付けられている。そのため、使用者が使用しやすい位置に、使用者が使用しやすい方向を向けて、遠心ポンプ駆動装置14を固定することが容易になる。
【0099】
また、筐体80の表面83に、表示操作部72、および操作部73が配置されている。そのため、遠心ポンプ駆動装置14の使用者は、表示操作部72に表示された情報を見ながら、容易に操作を行うことができる。
【0100】
さらに、従来の遠心ポンプ駆動装置は移動することを考慮していなかったため、重量が15kg以上に設定されていることが多かったが、本発明の遠心ポンプ駆動装置14はアームへの取り付けと可搬性能向上のため8kgと軽量化されている。アームへの取り付けと可搬性能向上のためには、遠心ポンプ駆動装置は、12kg以下であることが好ましい。
【0101】
(バックアップコントローラー)
図13から図17などに基づいて、バックアップコントローラー100を説明する。図13は、バックアップコントローラー100を正面104から見た図である。図14は、バックアップコントローラー100を背面106から見た図である。図15は、バックアップコントローラー100の内部構造を示す図である。図15は、図13に示す矢印Tの方向にバックアップコントローラー100を見た際の、バックアップコントローラー100の内部の概要を示している。図16は、バックアップコントローラー100の機能を示す概念図である。図17は、接続コード47を示す図である。
【0102】
バックアップコントローラー100は、遠心ポンプ駆動装置14(メインコントローラー)が故障などした場合に、遠心ポンプ12の回転数を設定し、遠心ポンプ12の回転を維持するための装置である。
【0103】
バックアップコントローラー100の本体部102の内部には、図15に示すように、バッテリ114および基板116などが配置されている。バックアップコントローラー100の本体部102の一つの端面である正面104には、図13に示すように、回転数設定ノブ110、電源スイッチ111、および表示部112が配置されている。
【0104】
回転数設定ノブ110は、遠心ポンプ12の回転を設定するための部品である。回転数設定ノブ110は、例えば、回転スイッチによって構成することができる。
【0105】
電源スイッチ111は、バックアップコントローラー100をオンまたはオフするための部品である。電源スイッチ111は、例えば、押しボタンスイッチによって構成することができる。
【0106】
表示部112は、各種の情報を表示する部分である。表示部112は、例えば、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)ランプによって構成することができる。
【0107】
本体部102の他の一つの端面であり、正面104と対向する位置にある端面を、背面106とする。バックアップコントローラー100の本体部102の背面106には、図14に示すように、複数のコントローラー側コネクタ120が配置されている。
【0108】
コントローラー側コネクタ120の一つには、図17に示す接続コード47のコード側コネクタ122を接続することができる。バックアップコントローラー100が、接続コード47を介して駆動モーター16に接続されることによって、バックアップコントローラー100による遠心ポンプ12の回転数の設定が可能になる。
【0109】
コントローラー側コネクタ120の他の一つは、AC(Alternating Current:交流)コネクタとして機能する。ACコネクタをAC電源に接続することによって、バックアップコントローラー100に内蔵されているバッテリ114を充電することができる。
【0110】
バックアップコントローラー100は、遠心ポンプ駆動装置14(メインコントローラー)が故障などした場合に、遠心ポンプ駆動装置14から接続コード47のコード側コネクタ122を抜き取り、抜き取ったコード側コネクタ122をバックアップコントローラー100のコントローラー側コネクタ120に差し替えることによって使用される。
【0111】
ここで、図16に基づいて、バックアップコントローラー100の機能を説明する。バックアップコントローラー100には、図15に示したように基板116が備えられている。基板116には電力が供給される。電力は、図15に示したバッテリ114から供給される。電力は、コントローラー側コネクタ120を介して、外部の電源から供給されてもよい。
【0112】
基板116には、回転数設定ノブ110を介して設定された回転数が伝達される。バックアップコントローラー100は、設定された回転数および供給された電力に基づいて、モーターを駆動する。駆動するモーターは、遠心ポンプ12の駆動モーター16とすることができる。バックアップコントローラー100と駆動モーター16との接続は、接続コード47を介して行われる。接続コード47のコード側コネクタ122を、バックアップコントローラー100のコントローラー側コネクタ120に接続することによって、バックアップコントローラー100と駆動モーター16とが接続される。
【0113】
また、バッテリ114の残存容量、バックアップコントローラー100のAC電源への接続の有無など、バックアップコントローラー100の状態は、表示部112に表示される。
【0114】
本実施形態のバックアップコントローラー100は、これらの機能を果たしながらも、非常にコンパクトな形状を有している。
【0115】
なお、コントローラー側コネクタ120は、バックアップコントローラー100の背面106ではなく、正面104に配置されていてもよい。すなわち、回転数設定ノブ110と、コントローラー側コネクタ120とが、本体部102の同じ端面に配置されていてもよい。このような配置にすることによって、遠心ポンプ駆動装置14における接続コード47を接続するコネクタが、バックアップコントローラー100の正面104に対応する側に配置されている場合などに、接続コード47を遠心ポンプ駆動装置14からバックアップコントローラー100に容易に差し替えることができる。
【0116】
本実施形態のバックアップコントローラー100は、非常に小型化されている。これは、バックアップコントローラー100の機能を絞ったこと、および各部を小型化したことなどによる。具体的には、本実施形態のバックアップコントローラー100では、それが担う機能が遠心ポンプ12の回転数の設定に限定されている。本実施形態のバックアップコントローラー100は、センサーなどに接続される機能を備えていない。
【0117】
本実施形態のバックアップコントローラー100は、小型であり、かつ平板状の形状を有している。そのため、例えば、図5に示すように、搬送カート60の設置台64の上に、他の部品との干渉を避けながら、容易に配置することができる。
【0118】
平板状の形状であるとは、薄型であることを意味する。その薄さは、例えば、バックアップコントローラー100において、正面104の短手方向の長さは、コントローラー側コネクタ120の直径の2倍以下であることが好ましい。
【0119】
コントローラー側コネクタ120が、バックアップコントローラー100の背面106に配置されている場合を例にして説明する。図14の長さd3は、背面106の短手方向の長さを示す。また、図14の長さd2は、コントローラー側コネクタ120の直径を示す。端面の短手方向の長さd3は、コントローラー側コネクタ120の直径d2の2倍以下であることが好ましい。
【0120】
長さd3を長さd2の2倍以下にすることによって、バックアップコントローラー100を十分に薄型にすることができる。バックアップコントローラー100をこのような薄型にすることによって、バックアップコントローラー100の配置の自由度を高めることができる。
【0121】
本実施形態のバックアップコントローラー100は、薄型の平板状の形状を有しているため、設置台64などの上に配置するのではなく、他の装置に立てかける、他の装置と装置との隙間に配置する、アームやクランプなどの治具を介して搬送カート60の側面に配置するなど、配置の種々の態様を可能にする。
【0122】
本実施形態のバックアップコントローラー100は、非常に小型であるため、バックアップコントローラー100を他の部屋に保管しておくのではなく、遠心ポンプ駆動装置14の近くに常時配置しておくことが可能である。そのため、非常時などに、即座にバックアップコントローラー100による治療の再開をすることができる。
【0123】
従来のバックアップコントローラーは容積が大きく手術室等に設置しておくことができなかった。そのため、非常時などに、バックアップコントローラーが保管されている別室まで、バックアップコントローラーを取りに行く必要があった。その結果、治療再開までに5分以上の時間を要しており、緊急時対応の際の迅速性に課題があった。
【0124】
これに対して本実施形態のバックアップコントローラー100は、非常に小型化されており、手術室等の室内に保管することが可能である。さらには、非常に小型化されているため、遠心ポンプ駆動装置14に極めて近い位置に配置することができる。その結果、緊急時対応の際の迅速性という、重大な課題を解決することができる。
【0125】
本実施形態のバックアップコントローラー100は、非常に小型であるため、バックアップコントローラー100を遠心ポンプ駆動装置14の極めて近くに配置することができる。そのため、接続コード47の、遠心ポンプ駆動装置14からバックアップコントローラー100への差し替えをより素早く行うことができる。
【0126】
また、遠心ポンプ駆動装置14に接続されている接続コード47を、バックアップコントローラー100を移動させることなくバックアップコントローラー100のコントローラー側コネクタ120に接続しなおすことが可能になる。
【0127】
また、バックアップコントローラー100による遠心ポンプ駆動装置14のバックアップを開始する際に、バックアップコントローラー100を移動させることなく回転数設定ノブ110の操作が可能な位置に、バックアップコントローラー100を配置することが可能になる。
【0128】
さらに、遠心ポンプ駆動装置14の接続コード47の差し込み用のコネクタと、バックアップコントローラー100はコントローラー側コネクタ120の向きが揃うようにバックアップコントローラー100を配置することが容易である。そのため、そのため、接続コード47の、遠心ポンプ駆動装置14からバックアップコントローラー100への差し替えを非常に素早く行うことができる。
【0129】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されることなく、種々の変更、変形及び組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0130】
1 人工心肺システム
3 体外循環装置
7 人工肺
8 リザーバー
12 遠心ポンプ
14 遠心ポンプ駆動装置(メインコントローラー)
15 遠心ポンプ駆動装置ユニット
16 駆動モーター
20 流量制御装置
22 陰圧調整装置
24 第1流量調整装置
25 第2流量調整装置
30 血液循環回路
32 脱血ライン
33 送血ライン
34 血液回収ライン
40 オートクランプ
42 センサー部
44 フィルタ
46 チューブ
47 接続コード
48 配線
50 コントローラー取り付けアーム
58 支持アーム
60 搬送カート
62 ポール
64 設置台
66 キャスタ
70 制御部(電子基板)
71 電源部
72 操作表示部
73 操作部(操作ノブ)
74 報知部(ブザー)
75 バッテリ
76 センサーコネクタ
80 筐体
100 バックアップコントローラー
102 本体部
104 正面
106 背面
110 回転数設定ノブ
111 電源スイッチ
112 表示部
114 バッテリ
120 コントローラー側コネクタ
122 コード側コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17