(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123647
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】貨幣処理装置及び貨幣処理方法
(51)【国際特許分類】
G07D 11/20 20190101AFI20240905BHJP
G07D 11/34 20190101ALI20240905BHJP
G07G 1/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G07D11/20
G07D11/34
G07G1/00 331A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031244
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】中元 佐
(72)【発明者】
【氏名】中川 敬重
(72)【発明者】
【氏名】鍋山 晃一
(72)【発明者】
【氏名】檀上 博史
(72)【発明者】
【氏名】小林 慧
(72)【発明者】
【氏名】イスラム モハマドヌルル
【テーマコード(参考)】
3E141
3E142
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141AA08
3E141BA06
3E141CA12
3E141CA16
3E141CA20
3E142GA24
(57)【要約】
【課題】複数金種の貨幣を混合状態で収納する貨幣処理装置で出金処理の効率化を図る。
【解決手段】複数金種の貨幣を混合で収納する第1収納部を含む複数の収納部から貨幣を繰り出して出金する貨幣処理装置に実行させる貨幣処理方法を、出金金額を構成する金種及び金種別枚数の貨幣を出金する出金処理を実行する工程と、出金金額を構成する貨幣の金種及び金種別枚数の情報を含む出金履歴を記録する工程と、出金履歴に基づいて、第1収納部に割り当てられている複数金種に含まれる第1金種を、複数の収納部のうち、記第1収納部とは異なる他の収納部に割り当てるように金種割当を変更する工程と、金種割当を変更した第1収納部から他の収納部へ、第1金種の貨幣を入れ換える入換処理を実行する工程とを含むよう構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数金種の貨幣を混合で収納する第1収納部を含む複数の収納部から貨幣を繰り出して出金する貨幣処理装置に実行させる貨幣処理方法であって、
出金金額を構成する金種及び金種別枚数の貨幣を出金する出金処理を実行する工程と、
前記出金金額を構成する貨幣の前記金種及び前記金種別枚数の情報を含む出金履歴を記録する工程と、
前記出金履歴に基づいて、前記第1収納部に割り当てられている複数金種に含まれる第1金種を、前記複数の収納部のうち、前記第1収納部とは異なる他の収納部に割り当てるように金種割当を変更する工程と、
金種割当を変更した前記第1収納部から前記他の収納部へ、前記第1金種の貨幣を入れ換える入換処理を実行する工程と
を含むことを特徴とする貨幣処理方法。
【請求項2】
前記複数の収納部は、1金種の貨幣を収納する第2収納部を含むことを特徴とする請求項1に記載の貨幣処理方法。
【請求項3】
所定期間内に記録された前記出金履歴に基づいて、金種別枚数を集計して比較する工程
をさらに含み、
前記第1収納部に割り当てられている前記第1金種について集計した枚数が、前記第2収納部に割り当てられている第2金種について集計した枚数よりも多い場合に、前記第1収納部と前記第2収納部との間で金種割当を変更して、前記第1金種の貨幣と前記第2金種の貨幣とを入れ換える前記入換処理を実行する
ことを特徴とする請求項2に記載の貨幣処理方法。
【請求項4】
装置外から入金された貨幣の金種を識別して、前記金種が割り当てられた前記複数の収納部のうちいずれかへ収納する入金処理を実行する工程と、
前記入金処理で入金された貨幣の金種及び金種別枚数を示す情報を含む入金履歴を記録する工程と、
所定期間内に記録された前記入金履歴及び前記出金履歴を対象に各収納部の金種割当を変更しながら、現在の金種割当に比べて前記第1収納部に収納中の各金種の貨幣枚数の割合が均等に近付く金種割当を探索するシミュレーションを実行する工程と、
前記シミュレーションの結果に基づいて各収納部への金種割当を変更する工程と、
金種割当の変更を決定した金種の貨幣を入れ換える入換処理を実行する工程と
をさらに含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の貨幣処理方法。
【請求項5】
前記出金履歴及び前記入金履歴は、前記貨幣処理装置が備える記憶部に保存されることを特徴とする請求項4に記載の貨幣処理方法。
【請求項6】
前記出金履歴及び前記入金履歴は、前記貨幣処理装置と通信可能に接続された外部装置に保存されることを特徴とする請求項4に記載の貨幣処理方法。
【請求項7】
前記所定期間が経過する度に前記金種割当の変更要否を判定することを特徴とする請求項3又は4に記載の貨幣処理方法。
【請求項8】
前記第2収納部には、1又は複数の他金種の貨幣を組み合わせて、予め設定された所定枚数以下の貨幣で金種相当額を出金できない金種を割り当てることを特徴とする請求項2~7のいずれか1項に記載の貨幣処理方法。
【請求項9】
前記第1収納部には、1又は複数の前記第2収納部に割り当てられている金種の貨幣を組み合わせて金種相当額を出金できる金種を割り当てることを特徴とする請求項2~8のいずれか1項に記載の貨幣処理方法。
【請求項10】
前記出金工程において、前記出金金額を構成する貨幣の金種及び金種別枚数を決定した後、出金完了前に所定条件を満たした場合は、前記第1収納部に収納されている出金対象の貨幣の金種を別の金種に変更して、変更後の金種に基づいて再構成した金種及び金種別枚数の貨幣で前記出金金額分の貨幣を出金する
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の貨幣処理方法。
【請求項11】
出金対象に決定された貨幣が収納されている前記第1収納部において、前記第1収納部に収納されている全ての貨幣の枚数に対する前記出金対象の貨幣の枚数の割合が、所定の閾値より小さい場合に、前記出金対象の貨幣の金種を別の金種に変更することを特徴とする請求項10に記載の貨幣処理方法。
【請求項12】
前記出金履歴は、
前記出金処理時に出金した貨幣の金種及び金種別枚数を示す第1内訳を含み、
出金完了前に出金対象の金種が変更された出金処理についてはさらに変更前に前記出金金額を構成していた金種及び金種別枚数を示す第2内訳を含む
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の貨幣処理方法。
【請求項13】
前記金種別枚数を集計して比較する工程において、前記第2内訳が記録されている出金処理については前記第2内訳を対象に、前記第2内訳が記録されていない出金処理については前記第1内訳を対象に、前記金種別枚数を比較する
ことを特徴とする請求項10~12のいずれか1項に記載の貨幣処理方法。
【請求項14】
所定期間内に記録された前記出金履歴を対象に前記第1収納部と前記第2収納部との間で金種割当を変更しながら、出金対象に決定した金種を出金完了前に変更する回数が、現在の金種割当に比べて減少する金種割当を探索するシミュレーションを実行する工程
をさらに含み、
前記シミュレーションの結果に基づいて、前記第1収納部と前記第2収納部との間で金種割当を変更して前記入換処理を実行する
ことを特徴とする請求項2~13のいずれか1項に記載の貨幣処理方法。
【請求項15】
複数金種の貨幣を混合で収納する第1収納部を含む複数の収納部と、
各収納部から繰り出された貨幣の金種を識別する識別部と、
前記識別部で識別された貨幣を装置外へ排出するための出金部と、
前記収納部、前記識別部及び前記出金部の間で貨幣を搬送する搬送部と
を備え、
出金金額を構成する金種及び金種別枚数の貨幣を出金する出金処理時に、前記金種及び前記金種別枚数の情報を含む出金履歴を記録して、
前記出金履歴に基づいて、前記第1収納部に割り当てられている複数金種に含まれる第1金種を、前記複数の収納部のうち、前記第1収納部とは異なる他の収納部に割り当てるように金種割当を変更して、金種割当を変更した前記第1収納部から前記他の収納部へ、前記第1金種の貨幣を入れ換える入換処理を実行する
ことを特徴とする貨幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の貨幣収納部を有する貨幣処理装置及び貨幣処理装置が実行する貨幣処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な貨幣処理装置が利用されている。店舗では、客との取引時に、客が支払う貨幣の入金処理を実行して貨幣を装置内に収納したり、客へ返す釣銭の出金処理を実行して装置外へ釣銭を払い出したりする貨幣処理装置が利用されている。
【0003】
店舗の規模に応じて小型の貨幣処理装置が求められる場合がある。特許文献1には、硬貨を収納する収納庫の数を減らして小型化した貨幣処理装置が開示されている。この装置は、3つの収納庫それぞれに2金種を割り当てることにより、日本通貨に含まれる6金種の硬貨全てを装置内に収納することができる。客に返す釣銭の出金処理を実行する際、各収納庫に1金種ずつ硬貨が収納されていれば、各収納庫から出金対象の硬貨を繰り出して出金することができる。一方、複数金種の硬貨が、次にどの金種の硬貨が繰り出されるかが分からない混合状態で収納されていると、収納庫から出金対象外の硬貨が繰り出される可能性がある。このため、事前に、収納庫から繰り出された各硬貨の金種を識別して、出金用の所定の条件を満たす金種及び枚数の硬貨を一時保留部に収納しておき、出金時には、一時保留部から繰り出された各硬貨の金種を識別して、出金対象の硬貨を出金しながら、出金対象外の硬貨を元の収納庫へ戻す処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、出金用の硬貨が収納庫からなかなか繰り出されず、全ての出金用の硬貨を一時保留部に収納し終えるまでに時間がかかり、客を待たせてしまう可能性がある。貨幣処理装置が備える複数の収納部それぞれに1又は複数の金種を割り当てることができれば、収納部の数よりも多い数の金種を処理可能になるが、複数金種の硬貨を混合状態で収納する収納部があるために、出金処理を効率よく実行できない場合が生じ得る。
【0006】
本開示は、上記従来の課題に鑑みてなされたもので、その目的の1つは、装置内に設けられた収納部に貨幣が混合収納される場合でも、出金処理を効率よく実行することができる貨幣処理装置及び貨幣処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る貨幣処理方法は、複数金種の貨幣を混合で収納する第1収納部を含む複数の収納部から貨幣を繰り出して出金する貨幣処理装置に実行させる貨幣処理方法であって、出金金額を構成する金種及び金種別枚数の貨幣を出金する出金処理を実行する工程と、前記出金金額を構成する貨幣の前記金種及び前記金種別枚数の情報を含む出金履歴を記録する工程と、前記出金履歴に基づいて、前記第1収納部に割り当てられている複数金種に含まれる第1金種を、前記複数の収納部のうち、前記第1収納部とは異なる他の収納部に割り当てるように金種割当を変更する工程と、金種割当を変更した前記第1収納部から前記他の収納部へ、前記第1金種の貨幣を入れ換える入換処理を実行する工程とを含む。
【0008】
上記構成において、前記複数の収納部は、1金種の貨幣を収納する第2収納部を含んでいてもよい。
【0009】
上記構成において、所定期間内に記録された前記出金履歴に基づいて、金種別枚数を集計して比較する工程をさらに含み、前記第1収納部に割り当てられている前記第1金種について集計した枚数が、前記第2収納部に割り当てられている第2金種について集計した枚数よりも多い場合に、前記第1収納部と前記第2収納部との間で金種割当を変更して、前記第1金種の貨幣と前記第2金種の貨幣とを入れ換える前記入換処理を実行してもよい。
【0010】
上記構成において、装置外から入金された貨幣の金種を識別して、前記金種が割り当てられた前記複数の収納部のうちいずれかへ収納する入金処理を実行する工程と、前記入金処理で入金された貨幣の金種及び金種別枚数を示す情報を含む入金履歴を記録する工程と、所定期間内に記録された前記入金履歴及び前記出金履歴を対象に各収納部の金種割当を変更しながら、現在の金種割当に比べて前記第1収納部に収納中の各金種の貨幣枚数の割合が均等に近付く金種割当を探索するシミュレーションを実行する工程と、前記シミュレーションの結果に基づいて各収納部への金種割当を変更する工程と、金種割当の変更を決定した金種の貨幣を入れ換える入換処理を実行する工程とをさらに含んでいてもよい。
【0011】
上記構成において、前記出金履歴及び前記入金履歴は、前記貨幣処理装置が備える記憶部に保存されてもよい。
【0012】
上記構成において、前記出金履歴及び前記入金履歴は、前記貨幣処理装置と通信可能に接続された外部装置に保存されてもよい。
【0013】
上記構成において、前記所定期間が経過する度に前記金種割当の変更要否を判定してもよい。
【0014】
上記構成において、前記第2収納部には、1又は複数の他金種の貨幣を組み合わせて、予め設定された所定枚数以下の貨幣で金種相当額を出金できない金種を割り当ててもよい。
【0015】
上記構成において、前記第1収納部には、1又は複数の前記第2収納部に割り当てられている金種の貨幣を組み合わせて金種相当額を出金できる金種を割り当ててもよい。
【0016】
上記構成において、前記出金工程において、前記出金金額を構成する貨幣の金種及び金種別枚数を決定した後、出金完了前に所定条件を満たした場合は、前記第1収納部に収納されている出金対象の貨幣の金種を別の金種に変更して、変更後の金種に基づいて再構成した金種及び金種別枚数の貨幣で前記出金金額分の貨幣を出金してもよい。
【0017】
上記構成において、出金対象に決定された貨幣が収納されている前記第1収納部において、前記第1収納部に収納されている全ての貨幣の枚数に対する前記出金対象の貨幣の枚数の割合が、所定の閾値より小さい場合に、前記出金対象の貨幣の金種を別の金種に変更してもよい。
【0018】
上記構成において、前記出金履歴は、前記出金処理時に出金した貨幣の金種及び金種別枚数を示す第1内訳を含み、出金完了前に出金対象の金種が変更された出金処理についてはさらに変更前に前記出金金額を構成していた金種及び金種別枚数を示す第2内訳を含んでいてもよい。
【0019】
上記構成において、前記金種別枚数を集計して比較する工程において、前記第2内訳が記録されている出金処理については前記第2内訳を対象に、前記第2内訳が記録されていない出金処理については前記第1内訳を対象に、前記金種別枚数を比較してもよい。
【0020】
上記構成において、所定期間内に記録された前記出金履歴を対象に前記第1収納部と前記第2収納部との間で金種割当を変更しながら、出金対象に決定した金種を出金完了前に変更する回数が、現在の金種割当に比べて減少する金種割当を探索するシミュレーションを実行する工程をさらに含み、前記シミュレーションの結果に基づいて、前記第1収納部と前記第2収納部との間で金種割当を変更して前記入換処理を実行してもよい。
【0021】
上記構成において、出金対象に決定された貨幣が収納されている混合収納部で貨幣の繰り出しを開始してから、前記出金対象の貨幣が繰り出されないまま所定の閾値時間が経過した場合に、前記所定条件を満たすと判定して、前記出金対象の貨幣の金種を別の金種に変更してもよい。
【0022】
上記構成において、出金対象に決定された貨幣が収納されている混合収納部で貨幣の繰り出しを開始してから所定の閾値枚数の貨幣を繰り出しても前記出金対象の貨幣が繰り出されなかった場合に、前記所定条件を満たすと判定して、前記出金対象の貨幣の金種を別の金種に変更してもよい。
【0023】
上記構成において、前記複数の収納部には、貨幣の収納は行うが出金時に貨幣の繰り出しを行わない混合収納部が含まれていてもよい。このとき、貨幣を補充又は回収するための取り外し可能な収納部であるインターフェースカセットを混合収納部に割り当ててもよい。
【0024】
本開示に係る貨幣処理装置は、複数金種の貨幣を混合で収納する第1収納部を含む複数の収納部と、各収納部から繰り出された貨幣の金種を識別する識別部と、前記識別部で識別された貨幣を装置外へ排出するための出金部と、前記収納部、前記識別部及び前記出金部の間で貨幣を搬送する搬送部とを備え、出金金額を構成する金種及び金種別枚数の貨幣を出金する出金処理時に、前記金種及び前記金種別枚数の情報を含む出金履歴を記録して、前記出金履歴に基づいて、前記第1収納部に割り当てられている複数金種に含まれる第1金種を、前記複数の収納部のうち、前記第1収納部とは異なる他の収納部に割り当てるように金種割当を変更して、金種割当を変更した前記第1収納部から前記他の収納部へ、前記第1金種の貨幣を入れ換える入換処理を実行する。貨幣処理装置は、収納部、識別部及び搬送部を制御する制御部をさらに備えていてもよい。入換処理の実行時に、制御部が、収納部からの貨幣の繰り出し、識別部による貨幣の識別、搬送部による貨幣の搬送、収納部における貨幣の収納等を制御してもよい。
【発明の効果】
【0025】
本開示に係る貨幣処理装置及び貨幣処理方法によれば、貨幣処理装置が備える1又は複数の収納部に複数の金種が割り当てられて貨幣が混合収納される場合でも、出金処理を効率よく行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る貨幣処理装置及び該貨幣処理装置が実行する貨幣処理の概要を説明するための図である。
【
図2】
図2は、硬貨処理装置の概要を説明するための図である。
【
図3】
図3は、硬貨処理装置の具体的な構成例を示す断面模式図である。
【
図4】
図4は、出金処理時に硬貨処理装置が実行する処理の流れの例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、代替出金条件を説明するための図である。
【
図6】
図6は、識別順序に基づく金種変更条件を説明するための図である。
【
図7】
図7は、硬貨を一時保留して出金する例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、収納部設定を変更する処理の例を説明するための図である。
【
図10】
図10は、硬貨処理装置が実行する入換処理の例を説明するための図である。
【
図11】
図11は、収納部設定を変更する別の例を説明するための図である。
【
図12】
図12は、収納部設定を変更するさらに別の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係る貨幣処理装置及び貨幣処理方法の実施の形態について説明する。本開示に係る貨幣処理装置は、装置内の複数の収納部それぞれに割り当てられた1又は複数の金種に基づいて、装置外から受け付けた貨幣を該貨幣の金種が割り当てられた収納部に収納することができる。貨幣処理装置は、出金対象の貨幣を収納部から繰り出して装置外へ排出する出金処理を実行することができる。複数金種の貨幣が混合状態で収納された収納部から出金対象の貨幣を繰り出す必要がある場合、貨幣処理装置は、混合収納部における貨幣の混合率、貨幣繰出を開始してからの繰出枚数、経過時間等に基づいて、出金方法を変更することができる。また、貨幣処理装置は、過去に実行した出金処理の履歴情報に基づいて、処理効率向上のために各収納部への金種割当を変更し、変更後の金種割当に基づいて、複数の収納部の間で貨幣を入れ換えることができる。
【0028】
図1は、本実施形態に係る貨幣処理装置1及び貨幣処理装置1が実行する貨幣処理の概要を説明するための図である。貨幣処理装置1は、硬貨の入金処理及び出金処理を実行する硬貨処理装置10と、紙幣の入金処理及び出金処理を実行する紙幣処理装置11と、硬貨処理装置10及び紙幣処理装置11を利用する際に操作表示部170として機能する端末とを含む。
図1に示す装置構成は例示であって、貨幣処理装置1の構成を限定するものではない。例えば、硬貨処理装置10と紙幣処理装置11とが一体化されて1つの装置で実現されていてもよい。操作表示部170が貨幣処理装置1に含まれていてもよい。操作表示部170が、操作部と表示部とに分かれていてもよい。貨幣処理装置1の設置場所及び利用目的も特に限定されないが、
図1に示す貨幣処理装置1が、客との取引が行われる店舗に設置された場合を例に説明を続ける。
【0029】
貨幣処理装置1は、硬貨処理装置10及び紙幣処理装置11の装置内にある複数収納部それぞれに1又は複数の金種を割り当てる、収納部設定に関する操作を受け付ける(S1)。店舗の店員は、操作表示部170を操作して、各収納部に割り当てる1又は複数の金種を指定することができる。
【0030】
客が店舗で商品を購入する際、操作表示部170を利用して精算処理が開始される。例えばタッチパネル式の液晶表示装置から成る操作表示部170に、商品の価格が入力されて取引金額が決定されると、この取引金額が操作表示部170に表示される。操作表示部170に表示された取引金額を確認した客が、取引金額を貨幣すなわち現金で支払うために、貨幣処理装置1で入金処理が行われる(S2)。客が支払う貨幣のうち紙幣は紙幣処理装置11の入金部210に受け付けられて、硬貨は硬貨処理装置10の入金部110に受け付けられる。紙幣処理装置11は、入金部210に受け付けた紙幣を識別計数し、収納部設定に基づいて各紙幣を金種に対応する収納部に収納する。同様に、硬貨処理装置10は、入金部110に受け付けた硬貨を識別計数して、収納部設定に基づいて各硬貨を金種に対応する収納部に収納する。なお、客が操作する操作部が、店員が操作する操作表示部170とは別に設けられていてもよい。
【0031】
貨幣処理装置1に入金された紙幣及び硬貨の合計金額である入金額が取引金額を超えているために客に釣銭を返す必要がある場合、貨幣処理装置1で出金処理が行われる(S3)。釣銭のうち、紙幣は紙幣処理装置11の収納部から繰り出されて出金部240から排出され、硬貨は硬貨処理装置10の収納部から繰り出されて出金部140から排出される。客は、出金部140、240に排出された釣銭を受け取ることができる。
【0032】
貨幣処理装置1は、過去に実行した出金処理の処理内容に基づいて、出金処理を効率よく実行できるように収納部設定を見直し、収納部設定すなわち各収納部への金種割当を変更することができる(S4)。収納部の金種割当を変更した貨幣処理装置1は、収納部に収納されている貨幣を入れ換える入換処理を実行することができる(S5)。例えば、第1収納部の第1金種を第2収納部の第2金種と入れ換える金種割当の変更が行われると、第1収納部から第1金種の全貨幣を繰り出して第2収納部へ収納し、第2収納部から第2金種の全貨幣を繰り出して第1収納部に収納する入換処理が実行される。
【0033】
貨幣処理装置1は、出金処理時に出金する貨幣の内訳の決定、出金処理の履歴情報に基づく収納部設定の見直し等、出金処理に関する特徴を有している。紙幣処理装置11と硬貨処理装置10では、処理対象が紙幣であるか硬貨であるかに応じた違いはあるものの同様の処理が実行されることが多い。以下、重複した説明を避けるため、硬貨処理装置10を例に出金処理について具体的に説明する。
【0034】
図2は、硬貨処理装置10の概要を説明するための図である。
図2(a)は、硬貨処理装置10の構成例を示す模式図である。硬貨処理装置10は、硬貨処理部100、操作表示部170、制御部160、記憶部180及び通信部190を有する。硬貨を処理する硬貨処理部100には、
図1に示した入金部110及び出金部140に加えて、硬貨を識別する識別部120と、硬貨を搬送する搬送部130と、硬貨を収納する複数の収納部150とが含まれる。
【0035】
操作表示部170は、硬貨処理に関する各種情報を入力する操作部として機能する。操作表示部170は、硬貨処理に関する各種情報を表示する表示部としても機能する。記憶部180は、硬貨処理装置10の動作に必要な各種情報の保存に利用される不揮発性の記憶装置である。
【0036】
通信部190は、有線又は無線で外部装置と通信を行うために利用される。例えば、貨幣処理装置1がPOS(Point of Sales)システムで利用される場合、通信部190を介してPOSサーバとの間で通信が行われる。例えば、貨幣処理装置1が無人店舗で利用される場合、無人店舗の商品を管理するサーバ装置との間で通信が行われる。
【0037】
制御部160に対応するプログラムが記憶部180又は専用の記憶装置に予め記憶されている。このプログラムがCPU等のハードウェアによって実行されることにより、制御部160の機能及び動作が実現される。制御部160は、操作表示部170及び通信部190を介して入力された情報と、記憶部180に保存された情報とに基づいて、各部を制御することができる。これにより、本実施形態に記載する硬貨処理装置10の機能及び動作が実現されている。
【0038】
硬貨処理部100は、入金処理及び出金処理を含む複数種類の硬貨処理を実行することができる。入金部110は、装置外から硬貨を受けて装置内の搬送路へ送り出す。搬送部130は、入金部110と、出金部140と、識別部120と、各収納部150との間を接続する搬送路に沿って硬貨を搬送する。例えば、搬送部130は、ローラ及びベルトを含んで構成される。本実施形態で言う硬貨の搬送には硬貨の落下が含まれる場合がある。
【0039】
識別部120は、搬送部130が搬送する硬貨を識別する。識別部120は各硬貨の金種及び真偽を識別することができる。識別部120が、各硬貨の正損、すなわち所定基準に基づく傷み具合を識別してもよい。例えば、識別部120は、イメージセンサを含む複数のセンサを含んで構成される。
【0040】
収納部150は、搬送部130が搬送路に沿って搬送してきた硬貨を収納する。収納部150は、収納した硬貨を搬送路に向けて繰り出すこともできる。硬貨の収納と、収納した硬貨の繰り出しとを実行可能な収納部150が2つ以上あれば、収納部150の数及び構成は特に限定されない。1又は複数の収納部150が、硬貨処理装置10に対して着脱可能に設けられていてもよい。1又は複数の収納部150が、硬貨の収納のみを行って硬貨を繰り出さない構成であってもよい。以下、硬貨の収納及び繰り出しを実行する収納部150が6個ある場合を例に説明を続ける。
【0041】
出金部140は、搬送部130が搬送路に沿って搬送してきた硬貨を装置外へ排出する。収納部150から繰り出された硬貨が出金部140から排出される。入金部110に受けて装置内へ送り出された硬貨のうち、収納部150に収納できない種類の硬貨が出金部140から排出される場合もある。
【0042】
入金処理時には、入金部110に受けた硬貨が装置内の搬送路へ送り出される。搬送部130によって搬送路に沿って搬送される硬貨は、識別部120で識別された後、金種に対応する収納部150へ収納される。
【0043】
出金処理時には、出金対象の硬貨が収納部150から繰り出されて搬送部130によって搬送される。収納部150に、出金対象の金種と出金対象外の金種とが割り当てられている場合、出金対象外の金種の硬貨が繰り出される可能性がある。このため、識別部120が、収納部150から繰り出された各硬貨の金種を識別する。搬送部130は、識別結果に基づいて、出金対象外の金種の硬貨を元の収納部150へ搬送し、出金対象の金種の硬貨を出金部140へ搬送する。出金対象外の金種の硬貨が元の収納部150へ収納される一方で、出金対象の金種の硬貨は出金部140から装置外へ排出される。
【0044】
硬貨処理装置10の使用者が、操作表示部170を操作して、複数の収納部150それぞれに収納する1又は複数の硬貨金種を指定すると、指定された金種と各収納部150との対応を示す収納部設定が記憶部180に保存される。
【0045】
図2(b)は、記憶部180に保存される収納部設定の例を示す図である。収納部設定は、収納部及び金種の項目を含んでいる。収納部設定が利用種別の項目を含んでいてもよい。利用種別の項目にある「単一」は、収納部150を、1金種の硬貨のみを収納する単一収納部として利用することを示し、「混合」は、複数金種の硬貨を収納する混合収納部として利用することを示している。単一収納部として利用される収納部150には1金種が割り当てられ、混合収納部として利用される収納部150には複数金種が割り当てられる。
【0046】
図2(b)は、欧州連合加盟国で使用されているユーロ通貨の硬貨を対象に、第1~第6収納部150の6つの収納部150に、利用者が金種を割り当てた例を示している。収納部150を混合収納部として利用することで、6つの収納部150を有する硬貨処理装置10で、収納部150の数よりも多い8金種の硬貨を処理することができる。
【0047】
図2(b)を含め、金種を図示した各図面では、1ユーロに満たない金種の硬貨をユーロ単位で示している。例えば、1ユーロセント硬貨は、ユーロに換算した「0.01」にユーロ記号を付して示している。以下、図示に合わせて、ユーロセント硬貨を、ユーロに換算した数値を用いてユーロ硬貨と記載する。具体的には、1ユーロセント硬貨、2ユーロセント硬貨、5ユーロセント硬貨、10ユーロセント硬貨、20ユーロセント硬貨、50ユーロセント硬貨を、それぞれ0.01ユーロ硬貨、0.02ユーロ硬貨、0.05ユーロ硬貨、0.1ユーロ硬貨、0.2ユーロ硬貨、0.5ユーロ硬貨と記載する。
【0048】
図2(b)に示す収納部設定では、単一収納部である第1~第4収納部150に、それぞれ0.01ユーロ、0.02ユーロ、0.05ユーロ、0.1ユーロが割り当てられている。混合収納部である第5収納部150には、0.2ユーロ及び1ユーロが割り当てられている。混合収納部である第6収納部150には、0.5ユーロ及び2ユーロが割り当てられている。
図2(b)は、1つの収納部150に2金種が割り当てられた混合収納部の例を示しているが、1つの収納部150に3金種以上を割り当てることも可能となっている。以下、6つの収納部150を、符号を省略して第1~第6収納部と記載して区別したり、単一収納部又は混合収納部と記載して区別したりする場合がある。
【0049】
図3は、硬貨処理装置10の具体的な構成例を示す断面模式図である。
図3に示すように、硬貨処理装置10が、
図2(a)に示した構成に加えて、出金に利用しない硬貨を収納するオーバーフロー収納部200を備えていてもよい。オーバーフロー収納部200は、例えば、収納部150が満杯になって硬貨を収納できなくなった場合に、この硬貨を収納するために利用される。
【0050】
図3に示す入金部110(110a~110c)は、硬貨が投入される投入口110aと、投入口110aの硬貨を受けて搬送路に繰り出す繰出部110bと、繰出部110bの硬貨を出金部140に排出するゲート110cとを含む。
【0051】
搬送部130(130a~130e)は、繰出部110bから繰り出された硬貨を搬送する上部搬送部130aと、収納部150及びオーバーフロー収納部200から繰り出された硬貨を受けて上部搬送部130aに向けて搬送する下部搬送部130bとを含む。また、搬送部130は、上部搬送部130aの搬送路に接続された複数のシュート130c~130eを含む。シュート130cは、上部搬送部130aとオーバーフロー収納部200の間を接続している。シュート130dは、上部搬送部130aと各収納部150の間を1対1の関係で接続している。
図3には収納部150と接続された1つのシュート130dを示しているが、シュート130dは各収納部150に対応して設けられている。シュート130eは、上部搬送部130aと出金部140の間を接続している。シュート130c~130eから落下することなく搬送された硬貨は繰出部110bへ戻されることになる。
【0052】
図3(a)は、入金処理を説明するための図である。
図3(a)に矢印で示すように、入金処理時には、投入口110aに投入された硬貨が繰出部110bに落下する。繰出部110bは、複数枚の硬貨を同時に収納して1枚ずつ上部搬送部130aへ繰り出すことができる。上部搬送部130aは、繰出部110bから繰り出された硬貨を搬送路に沿って1枚ずつ搬送する。搬送路を搬送される硬貨は、識別部120によって識別される。識別結果に基づいて、硬貨の金種が割り当てられた収納部150とつながるシュート130dが開く。硬貨は、搬送路からシュート130d内に落下して収納部150に収納される。
図3(a)の矢印は1つの収納部150に硬貨を収納する例を示しているが、硬貨の収納先は、収納部設定に基づいて決定される。
図3(a)には示していないが、収納部150が満杯で硬貨を収納できない場合、この硬貨はシュート130cを落下してオーバーフロー収納部200に収納される。繰出部110bのゲート110cは、繰出部110bから繰り出せない異物、識別部120で識別できずに繰出部110bに戻された硬貨等を返却するために利用される。ゲート110cが開くと、繰出部110b内の異物や硬貨が出金部140へ落下して、装置外へ取り出せるようになる。
【0053】
図3(b)は、出金処理を説明するための図である。
図3(b)に矢印で示すように、出金処理時には、出金対象の硬貨が、収納部150から繰り出されて、下部搬送部130bの搬送路上に落下する。各収納部150は、硬貨を1枚ずつ連続して繰り出すことができる。下部搬送部130bは、1又は複数の収納部150から繰り出された複数枚の硬貨を同時に受けて、1枚ずつ上部搬送部130aに向けて搬送することができる。下部搬送部130bが搬送した硬貨は、繰出部110b内へ落下する。繰出部110bに落下した硬貨は、入金処理時と同様に、上部搬送部130aへ1枚ずつ繰り出されて識別部120で識別される。出金対象の硬貨は、シュート130eを経て出金部140へ搬送される。収納部150が出金対象の硬貨を他金種の硬貨と混合状態で収納しているために、出金対象外の硬貨が繰り出された場合、この硬貨は、
図3に破線で示すように、シュート130dを介して、元の収納部150へ戻される。なお、オーバーフロー収納部200の硬貨は出金処理に利用されないが、オーバーフロー収納部200も、収納している硬貨を下部搬送部130bへ向けて繰り出せるようになっている。
【0054】
図3は例示であって、硬貨処理装置10の構成及び動作を限定するものではない。例えば、出金処理時に、繰出部110bを介さずに、下部搬送部130bと上部搬送部130aとの間で硬貨が直接受け渡される構成であってもよい。オーバーフロー収納部200に、出金処理に利用しない金種が割り当てられて、入金処理時に硬貨がオーバーフロー収納部200に収納される態様であってもよい。
【0055】
図4は、出金処理時に硬貨処理装置10が実行する処理の流れの例を示すフローチャートである。硬貨処理装置10の記憶部180に、
図2(b)に示す収納部設定が保存されているものとして説明を続ける。
【0056】
釣銭の出金処理が必要になると、硬貨処理装置10は、出金金額に基づいて、出金対象の硬貨を決定する(ステップS11)。硬貨処理装置10は、出金金額を構成する硬貨の内訳として、出金する硬貨の金種及び金種別枚数を決定する。すなわち、釣銭金額を構成する硬貨の金種及び金種別枚数が決定される。
【0057】
硬貨処理装置10は、収納部150に収納されている硬貨の金種に基づいて、出金する硬貨の枚数が最小になるように、出金する硬貨の金種及び金種別枚数を決定する。例えば、釣銭金額が1.5ユーロであれば、硬貨処理装置10は、第5収納部から1ユーロ硬貨1枚、第6収納部から0.5ユーロ硬貨1枚、合計2枚の硬貨を出金することを決定する。金種の決定は、単一収納部に割り当てられている金種であるか、混合収納部に割り当てられている金種であるかを問わず、全ての金種を対象に行われる。
【0058】
硬貨処理装置10は、出金対象の硬貨の中に、混合収納部に収納されている硬貨が含まれているか否かを判定する(ステップS12)。混合収納部に収納されている硬貨が出金対象に含まれていない場合は(ステップS12;No)、ステップS15へ移行して、出金対象の硬貨を収納部150から繰り出す処理が開始される。
【0059】
出金対象の硬貨の中に、混合収納部に収納されている硬貨が含まれている場合(ステップS12;Yes)、硬貨処理装置10は、この硬貨が、予め準備されている代替出金条件を満たすか否かを判定する(ステップS13)。代替出金条件を満たさない場合(ステップS13;No)、ステップS11で決定された金種及び金種別枚数の内訳は変更されない。代替出金条件を満たす場合(ステップS13;No)、硬貨処理装置10は、出金対象の硬貨の金種を変更する(ステップS14)。
【0060】
図5は、代替出金条件を説明するための図である。
図5(a)は、硬貨1枚当たりの代替時の出金枚数に基づく代替出金条件を説明するための図である。混合収納部から出金する硬貨の金種を単一収納部の金種に変更しても、変更後の金種の硬貨枚数が、変更前の硬貨1枚当たり、予め設定された閾値以下になる場合は、混合収納部の硬貨に代えて単一収納部から硬貨を繰り出すように、代替出金条件が設定される。一例として閾値が2枚に設定されているものとして説明を続ける。
【0061】
例えば、
図5(a)に示すように、釣銭金額が0.2ユーロであれば、硬貨処理装置10は、釣銭を構成する硬貨枚数が最小となる理想パターンとして、出金する硬貨の内訳を0.2ユーロ硬貨1枚と決定する(ステップS11)。硬貨処理装置10は、0.2ユーロ硬貨が混合収納部に収納されていることから(ステップS12;Yes)、代替出金条件に基づいて代替出金の可否を判定する(ステップS13)。出金対象を混合収納部の0.2ユーロから単一収納部の0.1ユーロに変更しても、
図5(a)の代替出金パターンにあるように、0.2ユーロ硬貨に代えて出金される0.1ユーロ硬貨の枚数は2枚で閾値以下となる。言い換えれば、0.2ユーロ硬貨を0.1ユーロ硬貨で代替出金しても、0.2ユーロ硬貨1枚当たり代替出金される硬貨は2枚で、閾値の2枚を超えない。このため、硬貨処理装置10は、代替出金条件を満たすと判定して(ステップS13;Yes)、出金対象の金種を変更する(ステップS14)。この結果、出金対象の金種が0.2ユーロから0.1ユーロに変更されて、硬貨処理装置10から出金される硬貨の内訳は、0.2ユーロ硬貨1枚から、0.1ユーロ硬貨2枚に変更される。閾値は、変更前の硬貨1枚当たりで設定されている。このため、例えば釣銭金額が0.2ユーロ硬貨2枚で構成される0.4ユーロである場合も、代替出金条件を満たすと判定されて、単一収納部から0.1ユーロ硬貨4枚が出金されることになる。
【0062】
一方、釣銭金額が0.5ユーロである場合、
図5(a)に示すように、硬貨処理装置10は、理想パターンを、混合収納部の0.5ユーロ硬貨1枚と決定する(ステップS11)。硬貨処理装置10は、混合収納部の0.5ユーロ硬貨を(ステップS12;Yes)、単一収納部の硬貨で出金する代替出金の可否を判定する(ステップS13)。
図5(a)に示すように、代替出金パターンでは、出金される硬貨の合計枚数が閾値の2枚を超えて5枚になる。このため、硬貨処理装置10は、代替出金条件を満たさないと判定して(ステップS13;No)、出金する硬貨の金種を変更しない。この結果、硬貨処理装置10から出金される硬貨の内訳は、0.5ユーロ硬貨1枚となる。
【0063】
図5(b)は、混合収納部における硬貨の混合率に基づく代替出金条件を説明するための図である。出金対象に含まれる硬貨の混合率が、予め設定された閾値に満たない場合、混合収納部の硬貨に代えて単一収納部の硬貨を繰り出すように、代替出金条件が設定される。混合率とは、混合収納部に収納されている全ての硬貨の枚数に対する各金種の硬貨枚数の割合である。例えば、混合収納部に収納されている全ての硬貨の枚数500枚のうち金種Aの硬貨が200枚であれば、金種Aの硬貨の混合率は40%(=金種Aの硬貨の枚数200枚/全ての硬貨の枚数500枚)になる。混合率の閾値が50%に設定され、混合収納部における混合率が50%未満の硬貨は、単一収納部の硬貨で代替出金するように代替出金条件が設定されているものとして説明を続ける。
【0064】
図5(b)に示すように、釣銭金額が1.5ユーロであれば、硬貨処理装置10は、釣銭を構成する硬貨枚数が最小となる理想パターンとして、出金する硬貨の内訳を1ユーロ硬貨1枚、0.5ユーロ1枚と決定する(ステップS11)。硬貨処理装置10は、これらの硬貨が混合収納部に収納されていることから(ステップS12;Yes)、代替出金条件に基づいて代替出金の可否を判定する(ステップS13)。
図5(b)に示すように、第5収納部における1ユーロ硬貨の混合率が55%である場合、混合率が閾値の50%を超えているため、硬貨処理装置10は、代替出金条件を満たさないと判定して(ステップS13;No)、金種を変更しない。
【0065】
一方、第6収納部における0.5ユーロ硬貨の混合率が30%である場合、混合率が閾値の50%に満たないため、硬貨処理装置10は、代替出金条件を満たすと判定して(ステップS13;Yes)、出金する硬貨の金種を、単一収納部に割り当てられている金種に変更する(ステップS14)。単一収納部に割り当てられている金種のうち、0.5ユーロ硬貨に代えて最小枚数で出金できる硬貨の組み合わせは、0.1ユーロ硬貨5枚であることから、硬貨処理装置10は、出金対象の金種を0.5ユーロから0.1ユーロに変更する。この結果、硬貨処理装置10から出金される硬貨の内訳は、1ユーロ硬貨1枚及び0.5ユーロ硬貨1枚から、1ユーロ硬貨1枚及び0.1ユーロ硬貨5枚に変更される。
【0066】
なお、代替出金条件には優先順位が設定される。例えば、
図5(b)の混合率に基づく代替出金条件の優先順位は、
図5(a)の硬貨1枚当たりの代替枚数に基づく代替出金条件の優先順位よりも高く設定される。
図5(b)に示す例では、0.5ユーロ硬貨1枚が0.1ユーロ硬貨5枚で代替出金されることになり、
図5(a)で説明した閾値の2枚を超えるが、代替出金条件の優先順位に基づいて、0.5ユーロ硬貨に代えて0.1ユーロ5枚を出金することが決定される。
【0067】
このように、出金処理を実行する際、硬貨処理装置10は、混合収納部から硬貨を繰り出す前に、混合収納部からの繰り出しを決定した硬貨の金種を、単一収納部の硬貨の金種に変更して代替出金を実行するか否かを決定することができる。硬貨処理装置10は、硬貨1枚当たりの金種変更後の出金枚数が所定枚数以下に収まる場合や、混合収納部における混合率が低い場合は、混合収納部からの硬貨の出金をとりやめて、代わりに単一収納部の硬貨を出金することを決定し、決定後に硬貨の繰出を開始する。これにより、混合収納部から硬貨の繰り出しを開始したのに出金対象の硬貨がなかなか繰り出されず、釣銭を出金し終えるまでに長時間かかるといった状況を回避することができる。
【0068】
なお、代替出金条件を満たすかどうかの判定及び対応する制御(ステップS12~S14)は、必須ではない。例えば、混合収納部に収納されている、ある金種の硬貨の在高が所定の閾値未満になった場合、又は、混合収納部における、ある金種の硬貨の割合が所定の割合未満になった場合にのみ、代替出金条件を満たすかどうかの判定及び対応する制御を行うようにしてもよい 。
【0069】
こうして出金対象硬貨の金種及び金種別枚数を決定した後、硬貨処理装置10は、
図4に示すように、収納部150から硬貨を繰り出して識別部120で識別する処理を開始する(ステップS15)。
【0070】
図3で説明したように、収納部150から繰り出した硬貨を下部搬送部130bへ落下させて1枚ずつ識別部120へ搬送する構成の硬貨処理装置10では、出金処理時に、各収納部150から複数枚の硬貨を連続して繰り出すことができる。
【0071】
単一収納部は、出金すべき枚数分の硬貨を連続して繰り出す。例えば1つの単一収納部から2枚の硬貨を出金する必要がある場合、硬貨1枚を繰り出して下部搬送部130bによる搬送を待って、残り1枚を繰り出すのではなく、硬貨2枚が連続して繰り出される。下部搬送部130bによる搬送状況によらず、出金対象の硬貨全てを連続して繰り出すことで出金処理を終えるまでの時間を短縮することが期待できる。
【0072】
混合収納部についても、出金する枚数よりも多い枚数の硬貨を連続して繰り出す設定とすることができる。出金対象の硬貨1枚を混合収納部から繰り出す必要がある場合に、下部搬送部130bによる搬送状況及び識別部120による識別状況によらず、連続して複数枚の硬貨を繰り出す設定とすることができる。これにより、混合収納部から硬貨1枚を繰り出して、識別部120で出金対象の金種でないことが判明してから次の硬貨を混合収納部から繰り出す場合に比べて、出金処理の時間を短縮することができる。
【0073】
例えば、硬貨処理装置10では、100%を混合率の値で割った枚数の硬貨を混合収納部から連続して繰り出す設定とすることができる。この設定では、混合収納部に収納されている金種Aの硬貨1枚を出金する際、金種Aの混合率が50%であれば2枚(=100%/混合率50%)が連続して繰り出され、混合率が20%であれば5枚(=100%/混合率20%)が連続して繰り出される。同様に、混合率50%の硬貨を2枚出金する際には硬貨1枚に対して2枚で合計4枚が連続して繰り出されて、混合率20%の硬貨を2枚出金する際には硬貨1枚当たり5枚で合計10枚が連続して繰り出される。100%を混合率の値で割った数が少数になる場合は、切り上げ、切り下げ、四捨五入等によって枚数を決定すればよい。混合収納部から繰り出す硬貨枚数の決定方法は例示であって特に限定されない。例えば、混合収納部から繰り出す硬貨1枚に対して3枚を繰り出すというように、混合率によらず、予め設定された所定枚数を連続して繰り出す態様であってもよい。
【0074】
こうして収納部150から繰り出されて下部搬送部130bに落下した複数枚の硬貨は、1枚ずつ識別部120へ搬送されて識別された後、識別結果に基づいて、元の混合収納部へ戻されるか又は出金部140から出金されることになる。
【0075】
硬貨処理装置10では、出金対象の硬貨の金種及び金種別枚数を決定して収納部150からの硬貨の繰り出しを開始した後も、必要に応じて、出金する硬貨の金種を変更できるようになっている。具体的には、
図4に示すように、硬貨処理装置10は、予め設定された金種変更条件を満たすか否かを判定し(ステップS16)、金種変更条件を満たす場合は(ステップS16;Yes)、出金対象の金種を変更する(ステップS17)。金種変更条件を満たさない場合(ステップS16;No)、出金対象の金種を変更することなく処理が続けられる。金種変更条件については後述する。
【0076】
硬貨処理装置10は、収納部150から繰り出された硬貨を識別部120で識別して、硬貨が出金対象の金種であるか否かを判定する(ステップS18)。硬貨処理装置10は、出金対象の金種でなければ(ステップS18;No)、この硬貨を元の収納部150へ戻し(ステップS19)、出金対象の金種であれば(ステップS18;Yes)、この硬貨を出金部140から出金する(ステップS20)。
【0077】
出金金額分の硬貨、すなわち釣銭全ての出金を終えるまで(ステップS21;No)、ステップS15~S20の処理が繰り返し行われる。釣銭全ての出金を終えると(ステップS21;Yes)、硬貨処理装置10は、出金履歴を記憶部180に記録して(ステップS22)、出金処理を終了する。
【0078】
図4に示すステップS16の金種変更条件について説明する。例えば、混合収納部の硬貨の繰り出しを開始してから、予め閾値として設定された時間が経過しても、出金対象の硬貨を出金できない場合、出金する硬貨の金種を変更するように、金種変更条件が設定される。
【0079】
金種変更条件が、各混合収納部からの繰出時間を別々に計測して、閾値時間に達した混合収納部を対象に、出金する硬貨の金種を単一収納部の金種へ変更するように設定されていてもよい。金種変更条件が、全収納部150を対象にいずれかの収納部150で硬貨の繰り出しが開始されてからの時間を計測して、閾値時間に達したら、出金する硬貨の金種全てを単一収納部の金種へ変更するように設定されていてもよい。
【0080】
例えば、識別部120で出金対象外の金種と識別されて混合収納部に戻された硬貨の枚数が、予め閾値として設定された枚数に達した場合に、出金する硬貨の金種を変更するように、金種変更条件が設定される。
【0081】
金種変更条件が、各混合収納部へ戻された硬貨枚数を別々に計数して、閾値枚数に達した混合収納部があれば、この混合収納部から出金する硬貨の金種を単一収納部の金種へ変更するように設定されていてもよい。金種変更条件が、各混合収納部へ戻された硬貨の合計枚数を計数して、合計枚数が閾値枚数に達したら、出金する硬貨の金種全てを単一収納部の金種へ変更するように設定されていてもよい。
【0082】
例えば、出金金額0.5ユーロを出金するために、2ユーロ硬貨及び0.5ユーロ硬貨を収納する第6収納部で硬貨繰出を開始して、出金対象の0.5ユーロ硬貨1枚が繰り出されずに予め設定された閾値(例えば10秒)に達すると、金種変更条件を満たすと判定される(ステップS16;Yes)。また、例えば、第6混合収納部へ戻した2ユーロ硬貨の枚数が、予め設定された閾値(例えば5枚)に達した場合も、金種変更条件を満たすと判定される(ステップS16;Yes)。金種変更条件が満たされると、出金する硬貨の金種が、混合収納部の0.5ユーロから、単一収納部の金種に変更される(ステップS17)。硬貨処理装置10は、単一収納部に収納されている硬貨の最小枚数の組み合わせで出金できるように、混合収納部の0.5ユーロ硬貨1枚に代えて、0.1ユーロ硬貨5枚を単一収納部から繰り出して出金する。この結果、0.5ユーロ硬貨1枚の内訳で出金される予定であった0.5ユーロの出金金額が、0.1ユーロ硬貨5枚の内訳で出金されることになる。
【0083】
金種変更条件は、識別部120で識別して得られた金種の順序に基づいて、混合収納部から繰り出す硬貨の金種及び金種別枚数を変更するように、設定することができる。識別部120が出金対象外の金種と識別した場合でも、この金種を含めた構成で出金金額分の硬貨を出金可能であれば、この金種を含めて出金金額分の金種及び金種別枚数を再構成し、再構成した内訳で硬貨を出金するよう金種変更条件が設定される。
【0084】
図6は、識別順序に基づく金種変更条件を説明するための図である。硬貨処理装置10が、1.5ユーロの出金金額を、混合収納部の1ユーロ硬貨1枚、0.5ユーロ硬貨1枚の内訳で出金することを決定して、収納部150から硬貨の繰り出しを開始したものとする。
【0085】
出金処理時には、第5収納部から0.2ユーロ硬貨又は1ユーロ硬貨が繰り出されて、第6収納部から0.5ユーロ又は2ユーロ硬貨が繰り出されることになる。例えば、上述したように、第5収納部及び第6収納部から複数枚の硬貨が連続して繰り出され、下部搬送部130bに落下した複数枚の硬貨が1枚ずつ順に識別部120へ搬送されて識別される。2ユーロ硬貨は、1.5ユーロの出金金額を超えるため第6収納部に戻される。
【0086】
識別部120で硬貨を1枚ずつ順に識別して、
図6に示す第1パターンのように、出金対象の1ユーロ硬貨1枚及び0.5ユーロ硬貨1枚のうち1ユーロ硬貨が先に得られて、続いて0.5ユーロ硬貨が得られた場合、これら2枚の硬貨が出金される。
【0087】
最初に0.5ユーロ硬貨が得られた場合、硬貨処理装置10は1ユーロ硬貨1枚が得られるのを待って、これを出金することになる。
図6に示す第2パターンのように、0.5ユーロ硬貨が得られた後、続いて1ユーロ硬貨が得られた場合は、これら2枚の硬貨が出金される。
【0088】
1枚目の0.5ユーロ硬貨に続いて1ユーロ硬貨が得られるのを待っているときに、1ユーロ硬貨ではなく、再度0.5ユーロ硬貨が得られたとする。この場合、2枚目の0.5ユーロ硬貨を釣銭に含めた場合でも、出金金額の1.5ユーロを出金可能である。このため、硬貨処理装置10は、金種変更条件を満たすと判定して(
図4ステップS16;Yes)、出金する硬貨の金種を1ユーロから0.5ユーロに変更する(ステップS17)。この変更に基づいて、硬貨処理装置10は、1枚目の0.5ユーロ硬貨に続いて、2枚目の0.5ユーロ硬貨も出金対象として(ステップS18;Yes)、出金部140から出金する(ステップS20)。
【0089】
この結果、硬貨処理装置10は、最終的に、例えば
図6に示す第3パターンのように、0.5ユーロ硬貨3枚を出金する。最終的に出金される硬貨は、得られる硬貨金種の順序に応じて変化する。例えば、1枚目及び2枚目の0.5ユーロ硬貨に続いて0.2ユーロ硬貨1枚が得られて、出金変更条件を満たすとして再び金種が変更され、最終的に0.5ユーロ硬貨2枚、0.2ユーロ硬貨1枚、0.1ユーロ硬貨3枚が出金される場合もある。0.5ユーロ硬貨2枚に続いて0.2ユーロ硬貨2枚が得られて、最終的に0.5ユーロ硬貨2枚、0.2ユーロ硬貨2枚、0.1ユーロ硬貨1枚が出金される場合もある。
【0090】
このように、硬貨処理装置10は、出金処理の実行中に混合収納部から得られた硬貨の順序に応じて、出金する硬貨の金種及び金種別枚数の内訳を再構成し、再構成後の内訳で硬貨を出金することができる。混合収納部から繰り出された硬貨の金種に応じて、出金する硬貨の金種及び金種別枚数を変更することにより、出金処理を終えるまでの時間を短縮することが期待できる。
【0091】
硬貨処理装置10が、出金対象の硬貨を装置内に一時保留できる場合は、一時保留を実行して、出金する硬貨を変更してもよい。
図7は、硬貨を一時保留して出金する例を説明するための図である。
図7に示す硬貨処理装置10は、出金対象の硬貨を入金部110に一時保留した後、入金部110の硬貨を出金部140から出金するよう構成されている。例えば、入金部110の底面に開閉可能なゲートが設けられ、このゲートを開くことにより、入金部110の硬貨が出金部140へ落下して出金される。具体的には、
図3に示した例で、出金処理時に下部搬送部130bから上部搬送部130aに硬貨を直接受け渡す構成として、識別後の硬貨を繰出部110bまで搬送して一時保留し、一時保留した硬貨をゲート110cを開いて出金部140から出金すればよい。
【0092】
図7に示す硬貨処理装置10では、収納部150から繰り出されて識別部120で識別された硬貨のうち、出金対象外の硬貨が収納部150へ戻される一方で、出金対象の硬貨は入金部110に一時保留される。例えば、
図6で説明したように、1ユーロ硬貨1枚及び0.5ユーロ硬貨1枚の出金処理中に、1ユーロ硬貨が得られず0.5ユーロ硬貨2枚が続けて得られたために、金種変更が行われて、0.5ユーロ硬貨3枚を出金することが決定されたものとする。
【0093】
この場合、硬貨処理装置10は、既に得られた2枚の0.5ユーロ硬貨を入金部110に一時保留した状態で、出金金額の1.5ユーロとなるように、残り1枚の0.5ユーロ硬貨が得られるのを待つことになる。ところが、次に得られた硬貨が1ユーロ硬貨であった場合、この1ユーロ硬貨を、入金部110に一時保留している0.5ユーロ硬貨1枚と組み合わせることで、出金金額1.5ユーロを出金することができる。このため、硬貨処理装置10は、出金する硬貨の金種を再び0.5ユーロから1ユーロに変更して、得られた1ユーロ硬貨を出金対象とみなして、
図7(a)に示すように入金部110へ搬送して一時保留する。この結果、1.5ユーロを出金する処理であるにも拘わらず、入金部110に0.5ユーロ硬貨2枚、1ユーロ硬貨1枚の合計2ユーロが一時保留された状態となる。
【0094】
続いて硬貨処理装置10は、
図7(b)に示すように、入金部110に一時保留していた0.5ユーロ硬貨2枚と1ユーロ硬貨1枚とを搬送路に1枚ずつ繰り出して、識別部120で識別する。硬貨処理装置10は、識別結果に基づいて、0.5ユーロ硬貨1枚を元の混合収納部へ戻す一方で、1ユーロ硬貨1枚及び0.5ユーロ硬貨1枚を、入金部110を介して出金部140から出金する。これにより、硬貨処理装置10は、最終的に、最初に決定した1ユーロ硬貨1枚及び0.5ユーロ硬貨1枚の内訳で、出金金額1.5ユーロを出金することができる。
【0095】
このように、硬貨処理装置10は、出金処理の実行中に一時保留している出金対象の硬貨と、識別部120で識別した硬貨の金種とに基づいて、出金する金種及び金種別枚数の内訳を再構成し、再構成後の内訳で硬貨を出金することができる。具体的には、上述したように、一時保留している1又は複数枚の硬貨と、識別部120で新たに識別した硬貨とを入れ換えることによって、出金金額分の硬貨を出金できる場合は、硬貨の入れ換えを行って出金金額分の硬貨が出金される。これにより出金処理を終えるまでの時間を短縮することが期待できる。
【0096】
図4で説明したように、出金処理を終えた硬貨処理装置10は、記憶部180に出金履歴を記録する。
図8は、出金履歴の例を示す図である。出金履歴には、取引ID(識別番号)、出金金額、理想内訳、内訳変更、最終内訳、出金時間の項目が含まれている。
【0097】
取引IDの項目には、硬貨処理装置10が出金処理を実行した各取引を一意に特定することができる識別番号が登録される。出金金額の項目には、取引時に客に返された釣銭金額、すなわち硬貨処理装置10が出金した硬貨の合計金額が登録される。理想内訳の項目には、収納部150に割り当てられている金種の硬貨を用いて最小枚数で釣銭を返す場合の内訳、すなわち金種及び金種別枚数が登録される。理想内訳の項目には、硬貨処理装置10が出金処理を開始して最初に決定した硬貨内訳が登録されることになる。
【0098】
硬貨処理装置10は理想内訳で出金処理を開始するが、上述したように、出金する硬貨の内訳を途中で変更する場合がある。内訳変更の項目には、出金処理の途中で、理想内訳の金種が他金種へ変更されたか否かを示す情報が登録される。最終内訳の項目には、硬貨処理装置10から最終的に出金された硬貨の内訳、すなわち金種及び金種別枚数が登録される。出金時間の項目には、出金処理に要した処理時間が登録される。理想内訳と最終内訳とが同一である場合、
図8に示す取引ID「T0002」のように、この内訳は理想内訳の項目へは登録されず最終内訳の項目に登録される。言い換えれば、理想内訳が登録されていない取引については、最終内訳が理想内訳を示している。
【0099】
例えば、
図8に示す取引ID「T0001」の出金履歴は、1ユーロ硬貨1枚、0.5ユーロ硬貨1枚の理想内訳で出金処理が開始された後、途中で金種変更が行われて、0.5ユーロ硬貨3枚の最終内訳で1.5ユーロが出金されたことを示している。取引ID「T0002」の出金履歴は、出金途中で金種の変更が行われることなく、理想内訳と同一の最終内訳で、0.1ユーロ硬貨1枚、0.05ユーロ硬貨1枚、合計0.15ユーロが出金されたことを示している。
【0100】
硬貨処理装置10は、出金履歴に基づいて収納部設定を変更することができる。
図9は、収納部設定を変更する処理の例を説明するための図である。例えば、収納部設定の変更条件が予め準備されて記憶部180に保存される。硬貨処理装置10は、所定のタイミングで、収納部設定の変更条件に基づいて、
図9に示す処理を開始する。例えば、1日1回、1週間に1回、1ヶ月に1回というように、所定期間が経過する度に、この所定期間内に記録された出金履歴に基づいて
図9に示す処理が実行される。
【0101】
硬貨処理装置10は、記録された出金履歴が収納部設定の変更条件を満たすか否かを判定する(ステップS21)。例えば、所定期間内に記録された複数の出金履歴のうち、出金履歴の内訳変更の項目に「有」と登録されている取引の数、すなわち出金処理中に金種変更が行われた取引回数が、予め閾値として設定された回数を超えている場合に、変更条件を満たすと判定される。所定期間内に記録された出金履歴の総数に対して、金種変更が行われた取引回数の割合が、予め閾値として設定された割合を超えている場合に、変更条件を満たすと判定する態様であってもよい。
【0102】
また、例えば、所定期間内に記録された複数の出金履歴の中に、出金時間の項目に記録された時間が、予め閾値として設定された時間を超えている取引が含まれている場合に、変更条件を満たすと判定される態様であってもよい。所定期間内に記録された出金履歴のうち、出金時間が、予め閾値として設定された時間を超える取引の回数又は割合が、予め閾値として設定された回数又は割合を超える場合に、変更条件を満たすと判定されて態様であってもよい。
【0103】
判定条件を満たさない場合(ステップS21;No)、硬貨処理装置10は、収納部設定を変更することなく処理を終了する。一方、判定条件を満たす場合(ステップS21;Yes)、硬貨処理装置10は、所定期間内に記録された出金履歴を対象に金種別枚数の集計を行って、金種の順位を特定する(ステップS22)。すなわち、理想内訳に基づいて釣銭として出金されるはずであった硬貨枚数が金種別に集計される。
【0104】
具体的には、
図8に示した出金履歴で、理想内訳が記録されている取引については理想内訳を対象に、理想内訳が記録されていない取引については最終内訳を対象に、金種別枚数の集計が行われる。
図8に示す例では、取引ID「T0001」の出金処理については、理想内訳に登録されている1ユーロ硬貨1枚及び0.5ユーロ硬貨1枚が集計対象に含まれる。取引ID「T0002」の出金処理については、最終内訳に登録されている0.1ユーロ硬貨1枚及び0.05ユーロ硬貨1枚が集計対象に含まれることになる。
【0105】
この集計により、理想内訳から金種を変更することなく出金処理が行われていた場合に出金に必要であった硬貨の金種別枚数、すなわち釣銭出金に必要であった硬貨の金種別枚数が算出されて、枚数が最も多いものから順に金種の順位が特定される。理想内訳が登録されていない出金履歴については最終内訳が理想内訳であることから、出金履歴に登録された全取引の理想内訳を対象に、金種別枚数を集計して、枚数が多いものから順に順位付けされることになる。
【0106】
硬貨処理装置10は、枚数が最も多い金種から所定順位内の金種の中に、混合収納部へ割り当てられている金種があるか否かを判定する(ステップS23)。例えば、上位3位までというように、所定順位までの金種について判定が行われる。例えば、全金種のうち上位30%以内というように、上位の所定割合の順位の金種について判定が行われてもよい。
【0107】
上位金種の中に混合収納部に割り当てられている金種がなければ(ステップS23;No)、硬貨処理装置10は、収納部設定を変更することなく処理を終了する。一方、上位金種の中に、混合収納部に割り当てられている金種があれば(ステップS23;Yes)、硬貨処理装置10は、収納部設定を変更する(ステップS24)。硬貨処理装置10は、上位の金種を単一収納部に割り当てるように収納部設定を変更する。例えば、ステップS22で集計した結果に基づいて、単一収納部に割り当てられている金種のうち最も枚数が少ないものから順に、すなわち順位が低い金種から順に、混合収納部に割り当てられている上位金種と入れ換える金種割当の変更が行われる。金種割当の変更により、釣銭として出金される枚数が多い金種が単一収納部に割り当てられて、この金種に比べて、釣銭として出金される枚数が少ない金種が混合収納部に割り当てられることになる。
【0108】
理想内訳に基づく金種別枚数の集計結果において順位が高いものから順に、金種割当の変更要否が判定される態様に限定されない。例えば、順位が何位であるかによらず、単一収納部に割り当てられている金種よりも上位の金種が混合収納部に割り当てられている場合に、これらの金種割当を入れ換えて、上位の金種を単一収納部に、下位の金種を混合金種に割り当てるように変更してもよい。言い換えれば、過去に実行された出金処理における理想内訳を対象に、混合収納部に割り当てられている金種について集計した硬貨枚数が、単一収納部に割り当てられている金種について集計した硬貨枚数よりも多い場合に、これらの混合収納部と単一収納部との間で金種割当を変更する態様であってもよい。
【0109】
収納部設定を変更した硬貨処理装置10は、変更後の収納部設定に基づいて、収納部150の硬貨を入れ換える入換処理を実行する(ステップS25)。硬貨処理装置10が
図9に示す処理を実行するタイミングは予め設定できるようになっている。例えば、店舗の営業に影響しないよう、店舗の営業を終了してから翌日の営業を開始するまでの間に
図9に示す処理が完了するように、タイミングを設定すればよい。
図9に示す処理を、店舗の休業日に実行するように設定される態様であってもよい。
【0110】
図10は、硬貨処理装置10が実行する入換処理の例を説明するための図である。
図10(a)は、6つの収納部150に、
図2(b)に示す収納部設定に基づいて金種が割り当てられた例を示している。
図2(b)に示す収納部設定で、混合収納部に割り当てられている1ユーロ硬貨を、単一収納部に割り当てられている0.01ユーロ硬貨と入れ換える金種割当の変更が決定されたものとする。すなわち、
図10に示す2段3列の収納部150において、左上の収納部150と右上の収納部150との間で金種割当が変更されたものとする。
【0111】
この場合、硬貨処理装置10は、
図10(b)に示すように、入換対象の金種が割り当てられている2つの収納部150から、全ての硬貨を下部搬送部130bへ繰り出して、これら2つの収納部150を空にする。
【0112】
硬貨処理装置10は、
図10(c)に示すように、下部搬送部130bから硬貨を1枚ずつ搬送して識別部120で識別した後、空にした左上の収納部150へ1ユーロ硬貨を収納して、空にした右上の収納部150へ0.2ユーロ硬貨及び0.01ユーロ硬貨を収納する。すなわち、硬貨処理装置10は、1ユーロ硬貨を単一収納部に収納して、0.2ユーロ硬貨及び0.01ユーロ硬貨を混合収納部へ収納する。この結果、
図10(d)に示すように、
図10(a)に示す収納状態から、1ユーロ硬貨と0.01ユーロ硬貨を入れ換えた収納状態になって、入換処理が完了する。
【0113】
図10は入換処理の例示であって、入換処理の方法を限定するものではない。例えば、オーバーフロー収納部200を入換処理に利用してもよい。具体的には、右上の収納部150から0.2ユーロ硬貨及び1ユーロ硬貨全てを下部搬送部130bへ繰り出して、識別部120による識別結果に基づいて、1ユーロ硬貨をオーバーフロー収納部200へ収納して、0.2ユーロ硬貨を右上の収納部150へ戻す。続いて、左上の収納部150から0.01ユーロ硬貨全てを繰り出して識別することなく右上の収納部150へ収納すれば、左上の収納部150が空になる一方で、右上の収納部150は0.2ユーロ硬貨及び0.01ユーロ硬貨を収納した状態になる。この後、オーバーフロー収納部200の硬貨全てを繰り出して、1ユーロ硬貨を、空になった左上の収納部150へ収納し、それ以外の硬貨をオーバーフロー収納部200へ戻せば、
図10(d)に示す収納状態とすることができる。
【0114】
また、例えば、単一収納部として利用していた左上の収納部150を混合収納部に、混合収納部として利用していた右上の収納部150を単一収納部にしてよい場合、
図10(a)に示す右上の収納部150から左上の収納部150へ0.2ユーロ硬貨を移動すればよい。具体的には、混合収納部である右上の収納部150から0.2ユーロ硬貨及び1ユーロ硬貨全てを下部搬送部130bへ繰り出す。この後、繰り出した硬貨を1枚ずつ識別部120で識別して、0.2ユーロ硬貨を、0.01ユーロ硬貨が収納されている左上の収納部150へ収納する一方で、0.01ユーロ硬貨を右上の収納部150へ戻せばよい。この結果、左上の収納部150を、0.01ユーロ硬貨及び0.2ユーロ硬貨の混合収納部にして、右上の収納部150を1ユーロ硬貨の単一収納部にすることができる。
【0115】
収納部設定を変更する処理、すなわち混合収納部に割り当てられている金種と単一収納部に割り当てられている金種との間で金種割当を入れ換える処理は、他にも行われる場合がある。
図11は、収納部設定が変更される別の例を説明するための図である。
【0116】
例えば、
図11(a)に示すように、硬貨処理装置10は、現在の収納部設定と、予め準備されている自動割当設定とを比較する(ステップS31)。自動割当設定は、硬貨処理装置10の記憶部180に予め準備されている、好ましい収納部設定である。例えば、通貨の種類別に自動割当設定が予め準備されている。
【0117】
図11(b)は、自動割当設定の例を示す図である。
図11(b)に示す自動割当設定は、0.01ユーロ硬貨、0.1ユーロ硬貨及び1ユーロ硬貨、すなわち10のn乗(nは整数)に相当する金種を単一収納部に優先的に割り当てて、残った単一収納部に、代替出金を行う際に組み合わせる硬貨枚数が多くなる金種を小さいものから順に割り当てた設定である。
図11(b)に示す例では、10のn乗の金種が単一収納部に割り当てられた後、残った0.02ユーロ、0.05ユーロ、0.2ユーロ、0.5ユーロ、2ユーロを対象に、単一収納部に割り当てる金種が選択されている。単一収納部の硬貨を用いて代替出金を行う場合に、0.02ユーロ硬貨、0.2ユーロ硬貨、2ユーロ硬貨は2枚の硬貨で代替出金できるのに対して、0.05ユーロ硬貨及び0.5ユーロは5枚の硬貨が必要になる。このため、0.05ユーロ硬貨及び0.5ユーロ硬貨が優先的に単一収納部に割り当てられるが、単一収納部が1つしか残っていないため、低額金種である0.05ユーロが優先して単一収納部に割り当てられている。
【0118】
例えば、利用者が単一収納部に割り当てた金種と、自動割当設定で単一収納部に割り当てられている金種とが一致していれば、硬貨処理装置10は、両者が一致すると判定して(ステップS31;No)、収納部設定を変更することなく処理を終了する。全ての単一収納部で金種割当が一致する場合に限定されず、例えば、自動割当設定で複数の単一収納部に割り当てられている金種のうち最低金種を含む一部の金種が、利用者による収納部設定で単一収納部に割り当てられていれば、硬貨処理装置10が両者は一致すると判定する態様であってもよい。具体的には、例えば
図11(b)に示す自動割当設定の第1~第4収納部のうち、第1収納部及び第2収納部に割り当てられている0.01ユーロ硬貨及び0.1ユーロ硬貨が、利用者による収納部設定で、いずれかの単一収納部に割り当てられていれば、他の設定が異なっていても両者は一致すると判定される態様であってもよい。
【0119】
図11(a)に示すように、現在の収納部設定が自動割当設定と異なっている場合(ステップS31;Yes)、硬貨処理装置10は、利用者による収納部設定を、自動割当設定に変更することを決定する。硬貨処理装置10は、上述したように、収納部設定における金種割当の変更と(ステップS32)、金種割当に伴って硬貨現物を入れ換える入換処理を実行する(ステップS33)。
【0120】
図11(b)に示す自動割当設定は例示であって、自動割当設定の設定内容を限定するものではない。例えば、自動割当設定が
図11(c)に示すように設定されていてもよい。
図11(c)に示す自動割当設定は、0.05ユーロ、0.5ユーロ等、代替出金を行う際に組み合わせる硬貨枚数が多くなる可能性がある金種を優先的に単一収納部に割り当てて、残りの単一収納部に10のn乗(nは整数)の金種を小さいものから順に割り当てた設定である。このように代替出金の際に硬貨枚数が多くなる可能性がある金種を単一収納部に割り当てることで、出金枚数を減らして出金時間を短縮することが期待できる。
【0121】
図12は、収納部設定が変更されるさらに別の例を説明するための図である。
図12に示す例では、硬貨処理装置10が、収納部に割り当てる金種を変更するシミュレーションを実行する(ステップS41)。
【0122】
具体的には、硬貨処理装置10は、現在の収納部設定から金種の割り当てを変更して、出金履歴に記録されている各出金処理を実行した場合に必要となる出金時間を算出する。硬貨処理装置10は、単一収納部から硬貨を繰り出して出金部140から出金するまでに要する平均時間と、混合収納部から硬貨を繰り出して出金部140から出金するまでに要する混合率に応じた平均時間とに基づいて、金種割当を変更した場合の各出金処理のシミュレーションを実行して各出金処理に要する時間を算出する。平均時間については、例えば、硬貨処理装置10が、出金処理を行う際に各収納部150から出金部140へ搬送されるまでの時間を実測して記録し、記録された実時間から統計的手法を用いて算出すればよい。シミュレーションに利用する平均時間が予め記憶部180に準備されていてもよい。例えば、収納部150から出金部140迄の搬送距離、混合収納部における混合率と繰出時間の関係等に基づく平均時間を予め記憶部180に準備しておいてシミュレーションに利用すればよい。シミュレーションが、機械学習、AI(Artificial Intelligence)等の技術を利用して行われる態様であってもよい。
【0123】
例えば、各収納部150を混合収納部として利用するか単一収納部として利用するかの設定はそのまま変更せずに、混合収納部に割り当てられているそれぞれの金種を、単一収納部に割り当てられているそれぞれの金種と総当たり的に入れ換えたシミュレーションが実行される。各収納部150を混合収納部として利用するか単一収納部として利用するかの変更も含めたシミュレーションが実行される態様であってもよい。混合収納部に割り当てる金種の数を2金種から3金種に変更するというように、混合収納部に割り当てる金種の数の変更を含めたシミュレーションが実行される態様であってもよい。シミュレーションの実行条件を予め準備すれば、硬貨処理装置10は、この設定に基づいてシミュレーションを実行する。
【0124】
シミュレーションを実行した結果、収納部150の金種割当すなわち収納部設定を変更しても出金時間を短縮できなかった場合(ステップS42;No)、硬貨処理装置10は、収納部設定を変更することなく処理を終了する。シミュレーションの結果、出金履歴に記録されている出金時間を短縮できる金種割当パターンが見つかった場合(ステップS42;Yes)、硬貨処理装置10は、収納部への金種割当を、見つかった金種割当パターンに変更して(ステップS43)、収納部の硬貨を入れ換える入換処理を実行する(ステップS44)。
【0125】
例えば、出金履歴に記録された各取引を対象に、出金時間が短縮されるものが1つでもあれば、収納部設定が変更される態様であってもよい。出金時間の短縮幅が出金時間の10%以上である場合というように、出金時間が所定割合以上短縮された場合に収納部設定が変更される態様であってもよい。取引履歴の出金時間の項目に登録された時間を合計した総時間と、シミュレーションで各取引について予測した時間を合計した総時間とを比較して、収納部設定を変更するか否かが決定される態様であってもよい。
【0126】
このように、硬貨処理装置10は、現在の収納部150への金種割当に比べて出金時間を短縮可能な金種割当を探索するシミュレーションを実行することができる。言い換えれば、シミュレーションを実行することにより、出金処理開始時に決定した出金対象の金種を出金完了前に他金種へ変更する回数を減らすことができる各収納部150への金種割当を探索することができる。シミュレーションは、店舗で実際に出金する必要があった釣銭金額に基づいて実行されるため、店舗で行われる取引傾向に応じた金種割当を探索することができる。
【0127】
本実施形態では、硬貨処理装置10が処理する複数の硬貨金種のうち一部を混合収納部に割り当てる例を説明したが、硬貨処理装置10では、出金できない釣銭が発生しないように、金種割当を制限できるようになっている。例えば、最低金種である0.01ユーロが混合収納部に割り当てられているために釣銭を出金できないという状況にならないよう、0.01ユーロは単一収納部に設定するように金種割当が制限される。例えば、単一収納部には、1又は複数の他金種の貨幣を組み合わせても、予め設定された所定枚数以下(例えば2枚以下)の貨幣で金種相当額を出金できない金種を割り当てるように、金種割当を制限することができる。また、例えば、混合収納部には、1又は複数の単一収納部に割り当てられている金種の貨幣を組み合わせて金種相当額を出金できる金種を割り当てるように、金種割当を制限することができる。
【0128】
本実施形態の
図9~
図12では、単一収納部に割り当てられた金種と、混合収納部に割り当てられた金種とを対象に、金種割当を変更して硬貨を入れ換える例を説明したが、金種割当の変更及び硬貨の入れ換えは、単一収納部間で行われてもよい。金種割当の変更及び硬貨の入れ換えは、混合収納部間で行われてもよい。また、硬貨の入換処理には、ある収納部から他の収納部へ、ある金種の硬貨を移動する処理も含まれる。
【0129】
例えば、硬貨処理装置10内における単一収納部の位置によって出金部140までの搬送時間に違いがあり、単一収納部に割り当てた金種を入れ換えることで出金処理に要する時間の短縮が期待できる場合に、これらの単一収納部の間で金種割当及び硬貨現物の入れ換えを行う態様であってもよい。
【0130】
また、例えば、硬貨処理装置10が、出金履歴に加えて、入金処理時に各収納部150に収納された硬貨の金種及び金種別枚数を含む入金履歴を記録して、入金履歴及び出金履歴に基づいて、1つの混合収納部に収納される複数金種の混合率が均等に近くなるように、複数の混合収納部の間で金種割当及び硬貨現物の入れ換えを行う態様であってもよい。例えば、第1の混合収納部の金種Aと金種Bの混合率の差が大きく、第2の混合収納部の金種Cと金種Dの混合率の差も大きい場合に、第1の混合収納部と第2の混合収納部との間で、金種Aと金種Cの割り当てを入れ換えると共に硬貨現物を入れ換える入換処理を行えばよい。第1混合収納部の金種Aと第2混合収納部の金種Cとを入れ換えることで、第1混合収納部の金種Cと金種Bの混合率の差が小さくなり、第2混合収納部の金種Aと金種Dの混合率の差も小さくなることが期待できる。混合率差の縮小を期待できるか否かについては、上述した出金履歴を対象に行うシミュレーションと同様に、入金履歴及び出金履歴を対象に各収納部150の金種割当を変更するシミュレーションを実行して、現在の金種割当に比べて、混合収納部に収納中の各金種の貨幣枚数の割合が均等に近付く金種割当を探索すればよい。
図12で説明した単一収納部と混合収納部の金種割当変更に関するシミュレーションで、出金履歴及び入金履歴を対象に入出金される硬貨枚数まで含めて、すなわち硬貨処理装置10の在高変化まで含めてシミュレーションされる態様であってもよい。入金履歴及び出金履歴が、硬貨処理装置10の記憶部180に保存される態様に限定されず、例えばサーバ装置や専用の記憶装置等、硬貨処理装置10と通信可能に接続された外部装置に記憶される態様であってもよい。
【0131】
本実施形態では、収納部150のいずれかを混合収納部に割り当てる例を説明したが、割当方法はこれに限定されない。収納部150には、1金種の硬貨をそれぞれ割り当てて収納し、オーバーフロー収納部200に残りの取り扱い金種の硬貨を混合で収納するようにしてもよい。オーバーフロー収納部200に割り当てられた金種は出金には用いないため、オーバーフロー収納部200に収納されている硬貨が所定枚数以上になった場合、又は、収納部150に割り当てられている硬貨の在高が所定枚数未満になった場合に、オーバーフロー収納部200と収納部150の金種割当を変更するようにしてもよい。
【0132】
本実施形態では、釣銭出金を例に説明を行ったが、上述した各処理の対象が釣銭出金に限定されるものではない。例えば、客が口座から引き出した金額分の貨幣を出金する貨幣処理装置においても、上述した各処理を実行することによって出金処理の効率を高めることができる。同様に、自動販売機、券売機等においても上述した各処理を実行することによって出金処理の効率を高めることができる。また、主に硬貨を対象に各例の説明を行ったが、上述した各処理が紙幣を対象に行われる態様であってもよい。
【0133】
上述したように、貨幣処理装置では、複数の収納部それぞれを単一収納部として使用することもできるし、混合収納部として使用することも可能となっている。出金処理時に、混合収納部から出金すべき貨幣がなかなか繰り出されず、出金を終えるまでに長時間かかることを回避するため、貨幣処理装置は、必要に応じて、出金する貨幣の内訳を自動的に変更することができる。また、貨幣処理装置は、出金処理に係る情報を記録して、過去の出金処理内容に基づいて、複数の収納部の間で金種割当を変更すると共に、変更後の金種割当に基づいて収納部間で貨幣現物を移動することができる。これにより、収納部に複数金種を割り当てたために出金し終えるまでに長時間かかるといった状況を回避して、出金処理を効率よく行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0134】
1 貨幣処理装置
10 硬貨処理装置
11 紙幣処理装置
100 硬貨処理部
110、210 入金部
120 識別部
130 搬送部
140、240 出金部
150 収納部
160 制御部
170 操作表示部
180 記憶部
190 通信部
200 オーバーフロー収納部