IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田合成株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-発光装置 図1
  • 特開-発光装置 図2
  • 特開-発光装置 図3
  • 特開-発光装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123658
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/54 20100101AFI20240905BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20240905BHJP
   H01L 33/58 20100101ALI20240905BHJP
【FI】
H01L33/54
H01L33/56
H01L33/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031263
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷山 嘉紀
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA02
5F142BA32
5F142CA11
5F142CD02
5F142CG07
5F142CG14
5F142CG23
5F142CG26
5F142CG32
5F142CG45
5F142DB12
(57)【要約】
【課題】発光素子が液体に封止された発光装置であって、液体に含まれる気泡による光取り出し効率の低下を抑えることのできる発光装置を提供する。
【解決手段】基板10上に実装された発光素子11と、発光素子11を覆うように基板10上に被せられたレンズ12と、レンズ12の内側の空間に封入され、発光素子11を封止する封止液13と、を備え、レンズ12の内面が、発光素子11の光軸Lと重ならない位置に上側に窪んだ窪み121を有し、窪み121の位置が前記内面の光軸L上の点Pの位置よりも高く、前記内面の高さが、光軸L上の点Pから窪み121まで単調増加する、発光装置1を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に実装された発光素子と、
前記発光素子を覆うように前記基板上に被せられたレンズと、
前記レンズの内側の空間に封入され、前記発光素子を封止する封止液と、
を備え、
前記レンズの内面が、前記発光素子の光軸と重ならない位置に上側に窪んだ窪みを有し、
前記窪みの位置が前記内面の前記光軸上の点の位置よりも高く、
前記内面の高さが、前記光軸上の点から前記窪みまで単調増加する、
発光装置。
【請求項2】
前記窪み内の少なくとも一部に気泡が含まれる、
請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記封止液がフッ素オイルである、
請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記窪みが、水平方向の位置が前記発光素子と重ならない位置に設けられた、
請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項5】
前記窪みが、前記光軸を囲む環状の平面パターンを有する、
請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項6】
前記レンズの内面が、前記光軸と重なる位置に、前記発光素子に向かって湾曲する突起を有する、
請求項1又は2に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光素子が液体中によって封止された発光モジュールが知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1の発光モジュールにおいては、パッケージの内部空間に液体が充填され、発光素子を封止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-207754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の発光モジュールにおいては、パッケージの内部空間に液体を完全に充填させることは容易ではなく、気泡が混入するおそれがある。そして、気泡と液体の界面では発光素子から発せられた光が全反射され得るため、気泡が発光素子の真上に位置する場合には、光取り出し効率が低下する。
【0005】
本発明の目的は、発光素子が液体に封止された発光装置であって、液体に含まれる気泡による光取り出し効率の低下を抑えることのできる発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記の発光装置を提供する。
【0007】
[1]基板上に実装された発光素子と、前記発光素子を覆うように前記基板上に被せられたレンズと、前記レンズの内側の空間に封入され、前記発光素子を封止する封止液と、を備え、前記レンズの内面が、前記発光素子の光軸と重ならない位置に上側に窪んだ窪みを有し、前記窪みの位置が前記内面の前記光軸上の点の位置よりも高く、前記内面の高さが、前記光軸上の点から前記窪みまで単調増加する、発光装置。
[2]前記窪み内の少なくとも一部に気泡が含まれる、上記[1]に記載の発光装置。
[3]前記封止液がフッ素オイルである、上記[1]又は[2]に記載の発光装置。
[4]前記窪みが、水平方向の位置が前記発光素子と重ならない位置に設けられた、上記[1]又は[2]に記載の発光装置。
[5]前記窪みが、前記光軸を囲む環状の平面パターンを有する、上記[1]又は[2]に記載の発光装置。
[6]前記レンズの内面が、前記光軸と重なる位置に、前記発光素子に向かって湾曲する突起を有する、上記[1]又は[2]に記載の発光装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発光素子が液体に封止された発光装置であって、液体に含まれる気泡による光取り出し効率の低下を抑えることのできる発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(a)は、本発明の実施の形態に係る発光装置の垂直断面図である。図1(b)は、切断線A-Aで切断された図1(a)に示される発光装置の断面図の例である。
図2図2は、比較例としての通常の形状を有するレンズを備えた発光装置の垂直断面図である。
図3図3(a)、(b)は、窪みの平面パターンの他の例を示す。
図4図4(a)は、窪みが対称性の低い平面パターンを有する場合の発光装置の垂直断面図である。図4(b)、(c)は、切断線B-Bで切断された図4(a)に示される発光装置の断面図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発光装置の構成)
図1(a)は、本発明の実施の形態に係る発光装置1の垂直断面図である。図1(b)は、切断線A-Aで切断された図1(a)に示される発光装置1の断面図の例である。
【0011】
発光装置1は、基板10上に実装された発光素子11と、発光素子11を覆うように基板10上に被せられたレンズ12と、レンズ12の内側の空間に封入され、発光素子11を封止する封止液13と、を備える。
【0012】
そして、発光装置1においては、レンズ12の内面が、発光素子11の光軸Lと重ならない位置に上側に窪んだ窪み121を有する。少なくとも、窪み121の頂点(最も高い位置にある点)の水平方向の位置は光軸Lと重ならない。窪み121は、封止液13中に含まれる気泡15を収容するためのポケットとして機能する。すなわち、封止液13中に気泡15が含まれる場合、窪み121内の少なくとも一部に気泡15が含まれる。
【0013】
窪み121が発光素子11の光軸Lと重ならない位置にあるため、窪み121に収容される気泡15も発光素子11の光軸Lと重ならない位置にある。ここで、光軸Lは、発光素子11の発光強度が最も強い方向を向く軸であり、通常、発光素子11の中心を通る、基板10の主面に垂直な方向を向く軸である。
【0014】
図1(a)に示されるように、窪み121の位置は、レンズ12の内面の光軸L上の点Pの位置よりも高い。また、レンズ12の内面の高さは、光軸L上の点Pから窪み121まで単調増加する。ここで、単調増加は、広義の単調増加であり、光軸L上の点Pから窪み121までの間に内面の高さが一度も減少しない。すなわち、光軸L上の点Pから窪み121までの水平方向の距離をx、レンズ12の内面の高さをf(x)としたときに、x<xならばf(x)≦f(x)が成り立つ。このため、封止液13中に含まれる気泡15は、浮力によって、発光素子11の光軸Lの近傍に留まることなく窪み121まで移動し、窪み121内に収まる。
【0015】
図2は、比較例としての通常の形状を有するレンズ51を備えた発光装置5の垂直断面図である。図2に示されるように、レンズ51の内側の封止液13が収容された空間は、ドーム状の形状を有する。
【0016】
このため、封止液13中に含まれる気泡15は、浮力によって、レンズ51の内側の空間の中央に移動しやすい。その結果、発光素子11の光軸Lの近傍に気泡15が位置することになり、発光素子11から光軸L周りの方向に発せられる光が封止液13と気泡15の界面で反射されることにより、発光装置5の光取り出し効率が低下する。
【0017】
図2に示される発光装置5においては、発光素子11から光軸L周りの方向に発せられた光は、封止液13、気泡15、レンズ51を通って外部に取り出される。気泡15の屈折率は1.0と低いため、気泡15よりも屈折率が大きい封止液13と気泡15の界面で全反射が生じ得る。
【0018】
一方で、本発明の実施の形態に係る発光装置1においては、気泡15が窪み121内に収まるため、気泡15が光軸Lと重ならず、発光素子11から光軸L周りの方向に発せられた光は、気泡15を通らず、封止液13、レンズ12を通って外部に取り出される。このため、気泡15による光取り出し効率の低下を抑えることができる。
【0019】
例えば、封止液13の材料に屈折率が1.3のフッ素オイル、レンズ12の材料に屈折率が1.5の石英を用いる場合、封止液13の屈折率がレンズ12の屈折率よりも小さいために封止液13とレンズ12の界面で全反射は生じず、また、両者の屈折率差が小さいために反射率が小さくなる。このため、高い効率で光を取り出すことができる。
【0020】
窪み121は、より好ましくは、水平方向の位置が発光素子11と重ならない位置(少なくとも、窪み121の頂点の水平方向の位置が発光素子11と重ならない位置)に設けられる。これにより、窪み121に収容される気泡15の水平方向の位置が発光素子と重ならないようにすることができる。その結果、気泡15による光取り出し効率の低下をより効果的に抑えることができる。
【0021】
図1(b)に示される封止液13の水平断面の形状は、窪み121の平面パターンに対応している。図1(b)に示される例では、窪み121の平面パターンは円環状であるが、窪み121の平面パターンはこれに限定されない。ここで、平面パターンとは、基板10の表面に平行な方向のパターンをいうものとする。
【0022】
なお、窪み121に気泡15が集まっている状態で、レンズ12の内面(窪み121の内面)と気泡15の間に封止液13が入り込んでも、通常、光取り出し効率にはほとんど影響がないと考えられる。しかしながら、レンズ12の内面と気泡15の間に入り込んだ封止液13の体積分だけ気泡15が発光素子11の上面に近づくため、レンズ12の内面と気泡15の間の気泡15の量によっては、光取り出し効率に影響を及ぼす場合がある。窪み121の内面に角がある場合、封止液13が表面張力でその角に溜まり、レンズ12の内面と気泡15の間に入り込む封止液13の量が大きくなるおそれがあるため、レンズ12の垂直断面における窪み121の形状は、図1(a)に示されるように、曲線で構成されることが好ましい。
【0023】
図3(a)、(b)は、切断線A-Aで切断された図1(a)に示される発光装置1の断面図の他の例であり、封止液13の断面形状に対応する窪み121の平面パターンの他の例を示すものである。
【0024】
図3(a)に示される窪み121の平面パターンは、四角形の環状のパターンである。この図3(a)に示されるパターンのように、窪み121の平面パターンは、多角形の環状であってもよい。図3(b)に示される窪み121の平面パターンは、2本の平行な直線からなるパターンである。この図3(b)に示されるパターンのように、窪み121の平面パターンは、環状でなくてもよい。
【0025】
図4(a)は、窪み121が対称性の低い平面パターンを有する場合の発光装置1の垂直断面図である。図4(b)、(c)は、切断線B-Bで切断された図4(a)に示される発光装置1の断面図の例である。
【0026】
図4(b)、(c)に示されるパターンは、いずれも、図1(b)、図3(a)、(b)に示されるパターンと異なり、レンズ12の中心を軸とする回転対称性を有しない。このように、窪み121の平面パターンの対称性が低くてもよい。
【0027】
特に好ましい窪み121の平面パターンは、図1(b)や図3(a)に示されるような、発光素子11の光軸Lを囲む環状のパターンである。この場合、封止液13に含まれる気泡15がどの方向に移動したとしても、窪み121内に容易に入ることができる。
【0028】
なお、封止液13の粘度などによって、封止液13に含まれる気泡15の量が変わる場合がある。その場合、封止液13の粘度などに応じて、気泡15を十分に収容できるように、窪み121の深さや幅などを調整することができる。
【0029】
図1(a)に示されるように、レンズ12の内面は、発光素子11の光軸Lと重なる位置に、発光素子11に向かって湾曲する突起122を有することが好ましい。突起122は、発光素子11の光軸Lの近傍から窪み121までの気泡15の移動を促進することができる。
【0030】
発光素子11は、典型的にはLEDチップである。また、発光素子11は、典型的にはフリップチップ型の素子であるが、フェイスアップ型の素子であってもよい。発光素子11の発光波長は特に限定されず、例えば、可視領域の波長であってもよく、紫外領域の波長であってもよい。なお、発光素子11は、レーザーダイオード(LD)等のLED以外の発光素子であってもよい。
【0031】
基板10は、その表面にCuなどからなる配線14を有する。発光素子11がフリップチップ型の素子である場合、AuSnや半田などからなる導電性の接合部材により配線14に接続される。
【0032】
レンズ12の外形は、典型的には、図1(a)に示されるようなドーム状であるが、これに限定されるものではない。レンズ12の材料としては、例えば、石英、アルミナ、フッ素樹脂などを用いることができる。
【0033】
封止液13は、フッ素オイル、水などの、発光素子11が発する光を透過する液体からなる。また、封止液13は、放熱性、防湿性、光をレンズ12へ効率的に導入する性質や、レンズ12を基板10に固定するまでの間、表面張力によりレンズ12を保持する性質を有することが好ましい。例えば、防湿性を備えたフッ素オイルは、封止液13の材料として特に好ましい。
【0034】
封止液13の粘度が高すぎると気泡15が動き難くなり、窪み121まで移動させることが難しくなる。このため、封止液13の粘度は1000Pa・Sec以下であることが好ましい。
【0035】
封止液13をレンズ12内に封入するための典型的な手順は、次の通りである。まず、レンズ12を逆さにして、内側の空間に封止液13を流入させる。次に、封止液13が入ったレンズ12の上方から、発光素子11が実装された基板10を近付け、発光素子11が封止液13に入った状態でレンズ12と基板10を固定する。レンズ12と基板10は、例えば、シリコーンなどの樹脂材料や、はんだによって固定する。
【0036】
(実施の形態の効果)
上記の本発明の実施の形態に係る発光装置1によれば、窪み121をレンズ12に設けることにより、封止液13中に含まれる気泡15を発光素子11の光軸Lと重ならない位置に留め、気泡15による光取り出し効率の低下を抑えることができる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。また、発明の主旨を逸脱しない範囲内において上記実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【0038】
また、上記の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0039】
1 発光装置
10 基板
11 発光素子
12 レンズ
121 窪み
122 突起
13 封止液
15 気泡
図1
図2
図3
図4