(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123676
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】光デバイス、光送信装置及び光受信装置
(51)【国際特許分類】
G02B 6/12 20060101AFI20240905BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20240905BHJP
G02B 6/30 20060101ALI20240905BHJP
G02B 6/32 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G02B6/12
G02B6/42
G02B6/30
G02B6/32
G02B6/12 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031286
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌樹
【テーマコード(参考)】
2H137
2H147
【Fターム(参考)】
2H137AA01
2H137BA35
2H137BA53
2H137BB02
2H137BB12
2H137BC02
2H137CC01
2H137DB09
2H137DB10
2H137HA00
2H147AA01
2H147AB04
2H147AB05
2H147BB02
2H147BD10
2H147BG06
2H147BG09
2H147BG10
2H147BG14
2H147CC12
2H147EA13A
2H147EA13C
2H147EA14B
2H147GA00
2H147GA26
(57)【要約】
【課題】実装工数を減らしながら、光導波路と光ファイバとの間の結合損失を抑制できる光デバイス等を提供する。
【解決手段】光デバイスは、基板と、前記基板上に形成されたトレンチと、前記基板上に形成され、前記トレンチの第1の側面と接続する光導波路と、前記トレンチ内の前記第1の側面に配置され、前記光導波路と接続するレンズと、を有する。更に、光デバイスは、前記トレンチ内の前記第1の側面と対向する第2の側面に近接したチップ端面に接着剤で固定された光ファイバを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成されたトレンチと、
前記基板上に形成され、前記トレンチの第1の側面と接続する光導波路と、
前記トレンチ内の前記第1の側面に配置され、前記光導波路と接続するレンズと、
前記トレンチ内の前記第1の側面と対向する第2の側面に近接したチップ端面に接着剤で固定された光ファイバと、
を有することを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記チップ端面は、
前記基板上に形成された第1のクラッド層と、
前記第1のクラッド層上に形成された第2のクラッド層と、を有し、
前記トレンチは、
前記第1のクラッド層及び前記第2のクラッド層を貫通するトレンチで形成することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記チップ端面は、
前記基板上に形成された第1のクラッド層と、
前記第1のクラッド層上に形成された第2のクラッド層と、を有し、
前記トレンチは、
前記第1のクラッド層及び前記第2のクラッド層を貫通する第1のトレンチと、
前記第1のトレンチの底面にある前記基板に形成された第2のトレンチと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記光導波路は、
前記第1の側面に対して斜めに配置されるように前記基板上に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記トレンチは、
前記光導波路に対して斜めに配置されるように前記基板上に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記チップ端面には、
前記光導波路に対して斜めに配置され、前記光ファイバを接合する傾斜面を有する実装トレンチが形成されたことを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項7】
前記チップ端面内の前記傾斜面と、前記光ファイバとの間を接合する前記接着剤の厚みが前記傾斜面に応じて異なることを特徴とする請求項6に記載の光デバイス。
【請求項8】
前記基板は、
前記トレンチの底面、前記第1の側面及び前記第2の側面が形成された部位を切り欠いて基板側トレンチを有することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項9】
前記第2の側面は、
前記光導波路を通過する信号光の通過する部位を切り欠いて形成する切欠き部を有することを特徴とする請求項8に記載の光デバイス。
【請求項10】
電気信号に対する信号処理を実行するプロセッサと、
光を発生させる光源と、
前記プロセッサから出力される電気信号を用いて、前記光源から発生する光を変調する光送信器と、を有する光送信装置であって、
前記光送信器内の光デバイスは、
基板と、
前記基板上に形成されたトレンチと、
前記基板上に形成され、前記トレンチの第1の側面と接続する光導波路と、
前記トレンチ内の前記第1の側面に配置され、前記光導波路と接続するレンズと、
前記トレンチ内の前記第1の側面と対向する第2の側面に近接したチップ端面に接着剤で固定された光ファイバと、
を有することを特徴とする光送信装置。
【請求項11】
光を発生させる光源と、
前記光源からの光を用いて受信光を復調する光受信器と、を有する光受信装置であって、
前記光受信器内の光デバイスは、
基板と、
前記基板上に形成されたトレンチと、
前記基板上に形成され、前記トレンチの第1の側面と接続する光導波路と、
前記トレンチ内の前記第1の側面に配置され、前記光導波路と接続するレンズと、
前記トレンチ内の前記第1の側面と対向する第2の側面に近接したチップ端面に接着剤で固定された光ファイバと、
を有することを特徴とする光受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス、光送信装置及び光受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信容量の増加に伴って、光ファイバ通信の需要が増大している。光ファイバ通信では、例えば、コンピュータで用いられる電気信号を光ファイバに通すための光信号に変換する光デバイスが必要となる。光デバイスは市場の要求に合わせて小型かつ低電力で大容量なものが求められており、それを実現するためにSi基板上に導波路や電極基板を集積させたSiPh(Silicon-Photonics)素子が非常に高い注目を集め、日々活発に研究・開発が行われている。SiPhの大きな利点は、CMOS製造に用いられる高精細プロセス技術を生かして、多数の要素デバイスから構成される大規模な光集積回路を容易に製造できる点にある。
【0003】
こうした光集積素子(Photonics Integrated Circuit: PIC)を光通信用のモジュールとして実装するには、光集積素子のSi導波路をチップ端面まで引き回し、Si導波路と光ファイバとを光学的に接続して光の入出力を行う必要がある。従って、Si導波路と光ファイバとの間の接続には低い結合損失と長期的信頼性とが要求されている。
【0004】
図25は、従来の光デバイス100の一例を示す平面模式図、
図26は、
図25に示すJ-J線の略断面模式図である。光デバイス100は、光ICチップ110と、光ファイバ120と、を有し、光ICチップ110に光ファイバ120を実装するエッジカプラである。光ICチップ110は、Si基板111と、Si基板111上に積層されたSiO
2の第1のクラッド層112Aと、第1のクラッド層112A上に積層されたSi導波路113と、を有する。光ICチップ110は、第1のクラッド層112A及びSi導波路113上を積層するSiO
2の第2のクラッド層112Bを有する。第1のクラッド層112A及び第2のクラッド層112Bでクラッド層112を形成する。
【0005】
Si導波路113は、直線導波路113Aと、テーパ導波路113Bとを有する。直線導波路113Aは、直線状の光導波路である。テーパ導波路113Bは、上面から見て、直線導波路113Aからチップ端面114に向けて徐々に導波路幅を小さくするテーパ形状の光導波路である。
【0006】
光ファイバ120は、コア121を有し、光ファイバ120の先端を接合面122としている。そして、光ICチップ110のチップ端面114では、接着剤130を使用して光ファイバ110の接合面122のコア121とSi導波路113の端面との間を光結合する。エッジカプラでは、光ファイバ120と結合するチップ端面114においてSi導波路113の導波路幅を小さくすることで光のモードフィールドが大きくできるため、Si導波路113と光ファイバ120との間の結合損失を小さくできる。
【0007】
光ICチップ110のチップ端面114に光ファイバ120を実装する場合、接着剤130をチップ端面114に塗布し、光ファイバ120をSi導波路113にアライメントし、接着剤130を硬化させて光ファイバ120を光ICチップ110に固定する。
【0008】
しかしながら、エッジカプラ内のSi導波路113の導波路幅を小さくしても、Si導波路113のモードフィールドは光ファイバ120のモードフィールドに比べて小さい。従って、モードフィールドのミスマッチにより、Si導波路113と光ファイバ120のコア121との間で結合損失が発生する。
【0009】
そこで、Si導波路と光ファイバのコアとの間の結合損失を小さくすべく、Si導波路と光ファイバとの間にレンズが配置された光デバイスが知られている。
図27は、従来の光デバイス200の一例を示す平面模式図、
図28は、
図27に示すK-K線の略断面模式図である。光デバイス200は、光ICチップ210と、光ファイバ220と、を有し、光ICチップ210に光ファイバ220を実装するエッジカプラである。
【0010】
光ICチップ210は、Si基板211と、第1のクラッド層212Aと、Si導波路213と、第2のクラッド層212Bとを有する。第1のクラッド層212A及び第2のクラッド層212Bでクラッド層212を形成する。Si導波路213は、直線導波路213Aと、テーパ導波路213Bとを有する。直線導波路213Aは、直線状の光導波路である。テーパ導波路213Bは、直線導波路213Aからチップ端面214に向けて導波路幅を徐々に小さくする光導波路である。Si導波路213のチップ端面214には、レンズ215を配置する。チップ端面114にレンズ215を配置する方法としては、チップ端面114に感光性レジストを塗布し、3Dプリンタを用いてレンズ215を形成する。
【0011】
光デバイス200は、レンズ215を用いて、Si導波路213のモードフィールドと光ファイバ220のコア221のモードフィールドとをマッチングさせることで、結合損失を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2020-173408号公報
【特許文献2】特開2015-22224号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2016/0246004号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、光デバイス200では、Si導波路213のチップ端面214にレンズ215を配置したので、チップ端面214に対して光ファイバ220を離して実装する必要がある。従って、サブマウント上に光ファイバ220を固定する機構が別途必要となるため、従来の光デバイス100に比較して実装工数が多くなる。
【0014】
そこで、このような事態に対処すべく、Si導波路213と光ファイバ220との間の結合損失を抑制しながら、光ICチップ210に対して光ファイバ220を実装する際の実装工数を減らすことができる光デバイスが求められている。
【0015】
一つの側面では、実装工数を減らしながら、光導波路と光ファイバとの間の結合損失を抑制できる光デバイス等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一つの態様の光デバイスは、基板と、前記基板上に形成されたトレンチと、前記基板上に形成され、前記トレンチの第1の側面と接続する光導波路と、前記トレンチ内の前記第1の側面に配置され、前記光導波路と接続するレンズと、を有する。更に、光デバイスは、前記トレンチ内の前記第1の側面と対向する第2の側面に近接したチップ端面に接着剤で固定された光ファイバを有する。
【発明の効果】
【0017】
一つの側面によれば、実装工数を減らしながら、光導波路と光ファイバとの間の結合損失を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施例1の光デバイスの一例を示す平面模式図である。
【
図3】
図3は、実施例2の光デバイスの一例を示す平面模式図である。
【
図5】
図5は、光デバイスで発生する反射光の一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、実施例3の光デバイスの一例を示す平面模式図である。
【
図8】
図8は、光デバイスで発生する反射光の一例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、実施例4の光デバイスの一例を示す平面模式図である。
【
図11】
図11は、光デバイスで発生する反射光の一例を示す説明図である。
【
図12】
図12は、実施例5の光デバイスの一例を示す平面模式図である。
【
図14】
図14は、光デバイスで発生する反射光の一例を示す説明図である。
【
図15】
図15は、実施例6の光デバイスの一例を示す平面模式図である。
【
図17】
図17は、光デバイスで発生する反射光の一例を示す説明図である。
【
図18】
図18は、実施例7の光デバイスの一例を示す平面模式図である。
【
図20】
図20は、光デバイスで発生する反射光の一例を示す説明図である。
【
図21】
図21は、実施例8の光デバイスの一例を示す平面模式図である。
【
図23】
図23は、光デバイスで発生する反射光の一例を示す説明図である。
【
図24】
図24は、本実施例の光通信装置の一例を示す説明図である。
【
図25】
図25は、従来の光デバイスの一例を示す平面模式図である。
【
図27】
図27は、従来の光デバイスの一例を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本願の開示する光デバイス等の実施例を詳細に説明する。尚、本実施例により、開示技術が限定されるものではない。また、以下に示す各実施例は、矛盾を起こさない範囲で適宜組み合わせても良い。
【実施例0020】
図1は、実施例1の光デバイス1の一例を示す平面模式図、
図2は、
図1に示すA-A線の断面模式図である。
図1に示す光デバイス1は、光ICチップ10と、光ファイバ20とを有し、接着剤30を用いて、光ICチップ10に対して光ファイバ20を実装するエッジカプラである。
【0021】
光ICチップ10は、Si基板11と、Si基板11上に積層されたSiO2の第1のクラッド層12Aと、第1のクラッド層12A上に積層されたSi導波路13と、を有する。光ICチップ10は、Si導波路13及び第1のクラッド層12A上に積層されたSiO2の第2のクラッド層12Bを有する。第1のクラッド層12A及び第2のクラッド層12Bでクラッド層12を形成する。
【0022】
光ICチップ10は、Si基板11上に形成されたトレンチ15と、トレンチ15の第1の側面41と、トレンチ15内に配置され、Si導波路13の端面に形成されたレンズ16と、を有する。トレンチ15は、第1のクラッド層12A及び第2のクラッド層12Bを表裏に貫通するトレンチで形成する。トレンチ15は、Si導波路13の端面と接続する第1の側面41と、第1の側面41と対向する第2の側面42とを有する。レンズ16は、トレンチ15内の第1の側面41にあるSi導波路13の端面に感光性レジストを塗布して形成する。
【0023】
光ICチップ10は、トレンチ15の第1の側面41と対向する第2の側面42に近接したチップ端面14を有する。第2の側面42に近接するチップ端面14は、光ファイバ20のコア21と接着剤30で接合する接合面である。
【0024】
光ファイバ20を光ICチップ10に実装する場合、光ICチップ10のチップ端面14に接着剤30を塗布し、光ファイバ20のコア21とSi導波路13とのアライメントを確保しながら、接着剤30を硬化させる。その結果、接着剤30を用いて光ファイバ20を光ICチップ10に対して固定する。
【0025】
実施例1の光デバイス1は、Si基板11上に形成されたトレンチ15と、Si基板11上に形成され、トレンチ15の第1の側面41と接続するSi導波路13と、トレンチ15内に配置され、Si導波路13の端面に形成されたレンズ16と、を有する。更に、光デバイス1は、トレンチ15内の第1の側面41と対向する第2の側面42に近接したチップ端面14に接着剤30で光ファイバ20を固定する。その結果、レンズ16による光の結合と、接着剤30による光ファイバ20と光ICチップ10との固定とが両立できるので、実装の工数を減らしながら、光ファイバ20とSi導波路13との間の結合損失を抑制できる。
【0026】
尚、実施例1の光デバイス1内のトレンチ15の底面はSi基板11の面で構成する場合を例示したが、トレンチ15内で光のモードが広がるため、Si基板11による光の吸収によって結合損失が増加してしまう。そこで、このような事態に対処する実施の形態につき、実施例2として以下に説明する。
光ICチップ10は、クラッド層12内に形成された第1のトレンチ15A1と、Si基板11に形成された第2のトレンチ11Aとが連通するトレンチ15Aを有する構造にした。
実施例2の光デバイス1Aでは、トレンチ15A内のSi基板11上に第2のトレンチ11Aを配置したので、光のモードがSi基板11で吸収しないため、結合損失を低減できる。
しかしながら、例えば、接合面22と接着剤30との間、接着剤30とチップ端面14との間、第2の側面42、レンズ16と第1の側面41との間で通過する光に対する反射光が発生し、反射光がSi導波路13に戻ることで光損失が増大することも考えられる。そこで、このような反射光の影響を抑制できる実施の形態につき、実施例3として以下に説明する。