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特開2024-123704電池監視装置、抵抗値導出方法及びセル電圧導出方法
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  • 特開-電池監視装置、抵抗値導出方法及びセル電圧導出方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123704
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】電池監視装置、抵抗値導出方法及びセル電圧導出方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20240905BHJP
   G01R 27/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G01R19/00 A
G01R27/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031330
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤野 隆良
【テーマコード(参考)】
2G028
2G035
【Fターム(参考)】
2G028AA01
2G028BB01
2G028BD02
2G028GL07
2G035AD08
2G035AD10
2G035AD13
2G035AD47
2G035AD55
2G035AD56
2G035AD65
(57)【要約】
【課題】電池セルとセル選択スイッチとの間に設けられる抵抗素子の抵抗値の測定を可能とする。
【解決手段】電池監視装置は、アナログ・デジタル変換器と、複数の電池セルうちのいずれかを選択的に前記アナログ・デジタル変換器に接続する複数のセル選択スイッチと、を含む。セル選択スイッチの各々は、複数の電池セルの1つからアナログ・デジタル変換器に至る導電経路上に設けられ、オン状態において導電経路を導通状態とし、オフ状態において導電経路を非導通状態とする第1のスイッチ部と、第1のスイッチ部のオンオフを切り替える第2のスイッチ部と、第1のスイッチ部がオン状態にあるときに第1のスイッチ部に流入する電流の大きさを切り替える第3のスイッチ部と、導電経路上に設けられた抵抗素子と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ・デジタル変換器と、
複数の電池セルうちのいずれかを選択的に前記アナログ・デジタル変換器に接続する複数のセル選択スイッチと、
を含み、
前記セル選択スイッチの各々は、
前記複数の電池セルの1つから前記アナログ・デジタル変換器に至る導電経路上に設けられ、オン状態において前記導電経路を導通状態とし、オフ状態において前記導電経路を非導通状態とする第1のスイッチ部と、
前記第1のスイッチ部のオンオフを切り替える第2のスイッチ部と、
前記第1のスイッチ部がオン状態にあるときに前記第1のスイッチ部に流入する電流の大きさを切り替える第3のスイッチ部と、
前記導電経路上に設けられた抵抗素子と、
を有する電池監視装置。
【請求項2】
前記第1のスイッチ部がオン状態にあるときに、前記導電経路から分岐した分岐経路に接続される第1の電流源と、
前記第1のスイッチ部及び前記第3のスイッチ部の双方がオン状態にあるときに、前記分岐経路に接続される第2の電流源と、
を有する請求項1に記載の電池監視装置。
【請求項3】
前記抵抗素子の抵抗値を導出する抵抗値導出部を更に含み、
前記抵抗値導出部は、
前記第1のスイッチ部をオン状態とし、前記第3のスイッチ部をオフ状態とした場合における前記アナログ・デジタル変換器の出力値である第1のデジタル値を取得し、
前記第1のスイッチ部をオン状態とし、前記第3のスイッチ部をオン状態とした場合における前記アナログ・デジタル変換器の出力値である第2のデジタル値を取得し、
前記第1のデジタル値と前記第2のデジタル値に基づいて、前記抵抗素子の抵抗値を導出する
請求項1に記載の電池監視装置。
【請求項4】
前記電池セルのセル電圧を導出するセル電圧導出部を更に含み、
前記セル電圧導出部は、
前記第1のデジタル値又は前記第2のデジタル値を取得したときに前記抵抗素子において生じる電圧降下の成分を、前記抵抗素子の抵抗値に基づいて導出し、前記電圧降下の成分を前記第1のデジタル値又は前記第2のデジタル値から除去したものを前記セル電圧として導出する
請求項3に記載の電池監視装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の電池監視装置を用いて、前記抵抗素子の抵抗値を導出する抵抗値導出方法であって、
前記第1のスイッチ部をオン状態とし、前記第3のスイッチ部をオフ状態とした場合における前記アナログ・デジタル変換器の出力値である第1のデジタル値を取得し、
前記第1のスイッチ部をオン状態とし、前記第3のスイッチ部をオン状態とした場合における前記アナログ・デジタル変換器の出力値である第2のデジタル値を取得し、
前記第1のデジタル値と前記第2のデジタル値に基づいて、前記抵抗素子の抵抗値を導出する
抵抗値導出方法。
【請求項6】
請求項5に記載の抵抗値導出方法によって導出された抵抗値に基づいて、前記電池セルのセル電圧を導出するセル電圧導出方法であって、
前記第1のデジタル値又は前記第2のデジタル値を取得したときに前記抵抗素子において生じる電圧降下の成分を、前記抵抗素子の抵抗値に基づいて導出し、前記電圧降下の成分を前記第1のデジタル値又は前記第2のデジタル値から除去したものを前記セル電圧として導出する
セル電圧導出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、電池監視装置、抵抗値導出方法及びセル電圧導出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直列に接続された複数の電池セルを含んで構成される組電池の電池セルの各々の電圧を測定する技術に関して、以下の技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、複数の電池セルが直列に接続される組電池と、第1の巻線と電池セル各々に並列に接続される複数の第2の巻線を有するトランスと、第1の巻線と直列に接続され、組電池と並列に接続される第1のスイッチと、電池セルと第2の巻線とを接続する配線の間に設けられる複数の第2のスイッチと、電池セル各々の電圧を計測する計測部と、第2の巻線から電池セルへ一定方向の電流を流すダイオードと、計測部が計測した電池セル電圧を取得し、最も低い電圧の電池セルを特定し、特定した電池セルに対応する第2のスイッチを接続状態にさせ、他の第2のスイッチを遮断状態にさせ、特定した電池セル電圧が全ての電池セルの平均電圧に同じまたは超えるまで第1のスイッチに接続と遮断を繰り返させる制御をする制御部と、を備える電池充電装置が記載されている。
【0004】
特許文献2には、複数の電池セルが直列に接続された積層電池の電圧を測定する装置であって、積層電池の電圧を測定する測定回路と、複数の電池セルの正極端子がそれぞれ接続される複数の入力端子と、測定回路が接続される出力端子とを有し、入力端子と出力端子との間の接続を電池セル単位で切り替える切替器と、切替器の接続を順次切り替えて、各電池セルの電圧を所定周期ごとに測定回路に出力させる制御部と、測定回路によって所定周期ごとに測定される所定電池セルの電圧に基づいて所定電池セルの発電状態を監視する監視部と、を含むセル電圧監視装置が記載されている。
【0005】
特許文献3には、電池セルを直列に接続した複数の電池セル群と、複数の電池セル群の総電圧を検出する総電圧検出部と、複数の電池セル群を並列に接続する並列接続スイッチと、複数の電池セル群の一方の電池セル群の最下位セルと他方の電池セル群の最上位セルとを接続する直列接続スイッチと、複数の電池セル群を並列または直列に切り替えるために、並列接続スイッチ及び直列接続スイッチをオフまたはオンに制御する切替制御部と、切替制御部によって直列接続スイッチをオフ状態に制御している期間中に、総電圧に基づいて前記直列接続スイッチの溶着を判定する溶着判定部と、を備えた車両用バッテリ充電装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-223320号公報
【特許文献2】特開2015-34750号公報
【特許文献3】特開2019-165583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
直列に接続された複数の電池セルを含んで構成される組電池の電池セルの状態を監視する電池監視装置は、複数の電池セルの各々の両端電圧(以下セル電圧と称する)を測定する機能を有する。この機能を実現するために電池監視装置は、アナログ・デジタル変換器と、複数の電池セルうちのいずれかを選択的にアナログ・デジタル変換器に接続する複数のセル選択スイッチと、を有する。セル電圧測定時においては、セル選択スイッチの動作に起因してセル選択スイッチに動作電流が流れる。電池監視装置と各電池セルとの間には、セル電圧測定時に混入するノイズを除去するために抵抗素子及びキャパシタを含んで構成されるローパスフィルタが接続される。セル電圧測定時においては、セル選択スイッチの動作電流は、ローパスフィルタを構成する抵抗素子にも流れ、抵抗素子において電圧降下が生じるため、セル電圧の測定値に無視できない程度の誤差が生じる。例えば、ローパスフィルタを構成する抵抗素子の抵抗値が1kΩであり、セル選択スイッチの動作電流が1μAである場合、セル電圧の測定値に1mVの誤差を生じる。この誤差は、近年の車載用電池監視装置において許容されるものではない。ローパスフィルタを構成する抵抗素子の抵抗値を測定することができれば、セル電圧測定時の抵抗素子における電圧降下の大きさを求めることができる。アナログ・デジタル変換器から出力されるデジタル値から抵抗素子における電圧降下の成分を除去することで、正確なセル電圧を得ることができる。しかしながら、複数の電池セルの各々に対応して設けられる抵抗素子の各々の抵抗値を測定することは容易ではない。
【0008】
開示の技術は上記の点に鑑みてなされたものであり、電池セルとセル選択スイッチとの間に設けられる抵抗素子の抵抗値の測定を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示の技術に係る電池監視装置は、アナログ・デジタル変換器と、複数の電池セルうちのいずれかを選択的に前記アナログ・デジタル変換器に接続する複数のセル選択スイッチと、を含む。前記セル選択スイッチの各々は、前記複数の電池セルの1つから前記アナログ・デジタル変換器に至る導電経路上に設けられ、オン状態において前記導電経路を導通状態とし、オフ状態において前記導電経路を非導通状態とする第1のスイッチ部と、前記第1のスイッチ部のオンオフを切り替える第2のスイッチ部と、前記第1のスイッチ部がオン状態にあるときに前記第1のスイッチ部に流入する電流の大きさを切り替える第3のスイッチ部と、前記導電経路上に設けられた抵抗素子と、を有する。
【0010】
開示の技術に係る抵抗値導出方法は、上記の電池監視装置を用いて、前記抵抗素子の抵抗値を導出する抵抗値導出方法であって、前記第1のスイッチ部をオン状態とし、前記第3のスイッチ部をオフ状態とした場合における前記アナログ・デジタル変換器の出力値である第1のデジタル値を取得し、前記第1のスイッチ部をオン状態とし、前記第3のスイッチ部をオン状態とした場合における前記アナログ・デジタル変換器の出力値である第2のデジタル値を取得し、前記第1のデジタル値と前記第2のデジタル値に基づいて、前記抵抗素子の抵抗値を導出することを含む。
【0011】
開示の技術に係るセル電圧導出方法は、上記の抵抗値導出方法によって導出された抵抗値に基づいて、前記電池セルのセル電圧を導出するセル電圧導出方法であって、前記第1のデジタル値又は前記第2のデジタル値を取得したときに前記抵抗素子において生じる電圧降下の成分を、前記抵抗素子の抵抗値に基づいて導出し、前記電圧降下の成分を前記第1のデジタル値又は前記第2のデジタル値から除去したものを前記セル電圧として導出することを含む。
【発明の効果】
【0012】
開示の技術によれば、電池セルとセル選択スイッチとの間に設けられる抵抗素子の抵抗値の測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】開示の技術の実施形態に係る電池監視装置の構成の一例を示す図である。
図2】開示の技術の実施形態に係るセル選択スイッチ20の構成の一例を示す図である。
図3】開示の技術の実施形態に係る制御部が抵抗値導出部として機能する場合に、制御部において実施される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】開示の技術の実施形態に係る制御部がセル電圧導出部として機能する場合に、制御部において実施される処理の流れの一例を示すフローチャートである
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1は、開示の技術の実施形態に係る電池監視装置10の構成の一例を示す図である。電池監視装置10は、直列に接続された複数の電池セル50を含んで構成される組電池51の各電池セル50の両端電圧(以下、セル電圧と称する)を測定する機能を有する。電池監視装置10は、半導体基板上に設けられた集積回路によって構成されている。電池監視装置10は、複数のセル選択スイッチ20、極性反転回路30、アナログ・デジタル変換器40及び制御部12を有する。電池監視装置10は、電池セル50の各々に対応して設けられた複数の接続端子11を有する。接続端子11の各々には、ローパスフィルタ60を介して対応する電池セル50の正極が接続される。
【0016】
複数のローパスフィルタ60は、電池セル50の各々に対応して設けられており、それぞれ、抵抗素子61及びキャパシタ62を有する。抵抗素子61は、一端が対応する電池セル50の正極に接続され、他端が対応する接続端子11及びキャパシタ62の一端に接続されている。キャパシタ62の他端は、1つ下位の電池セル50に対応する接続端子11に接続されている。なお、最下位の電池セル50に対応するローパスフィルタ60を構成するキャパシタ62は、一端が対応する接続端子11に接続され、他端がグランドに接続されている。
【0017】
複数のセル選択スイッチ20は、電池セル50の各々に対応して設けられている。複数のセル選択スイッチ20は、複数の電池セル50のうちのいずれかを選択的にアナログ・デジタル変換器40に接続する。セル選択スイッチ20は、一端が接続端子11及びローパスフィルタ60を介して対応する電池セル50の正極に接続され、他端が統合ノードn1又はn2に接続されている。互いに隣接する2つのセル選択スイッチ20のうちの一方のセル選択スイッチ20が、統合ノードn1及びn2のうちの一方に接続され、他方のセル選択スイッチ20が、統合ノードn1及びn2のうちの他方に接続されている。
【0018】
極性反転回路30は、トランジスタ等の半導体素子を含んで構成される4つのスイッチ30A、30B、30C及び30Dを有する。スイッチ30Aは、一端が統合ノードn1に接続され、他端がアナログ・デジタル変換器40のアナログ入力に接続されている。スイッチ30Bは、一端が統合ノードn2に接続され、他端がアナログ・デジタル変換器40のアナログ入力に接続されている。スイッチ30Cは、一端が統合ノードn2に接続され、他端がアナログ・デジタル変換器40の基準入力に接続されている。スイッチ30Dは、一端が統合ノードn1に接続され、他端がアナログ・デジタル変換器40の基準入力に接続されている。アナログ・デジタル変換器40は、アナログ入力に入力された電圧と、基準入力に入力された電圧の差分に相当するデジタル値を出力する。
【0019】
制御部12は、複数のセル選択スイッチ20及び極性反転回路30を構成するスイッチ30A~30Dのオンオフを制御する。例えば、電池セル50のセル電圧を測定する場合、制御部12は、セル選択スイッチ20及び20n-1をオン状態、極性反転回路30のスイッチ30B及び30Dをオン状態、極性反転回路30のスイッチ30A及び30Cをオフ状態に制御する。これにより、電池セル50の正極がアナログ・デジタル変換器40のアナログ入力に接続され、電池セル50の負極がアナログ・デジタル変換器40の基準入力に接続され、電池セル50のセル電圧に相当するデジタル値がアナログ・デジタル変換器40から出力される。
【0020】
制御部12は、アナログ・デジタル変換器40から出力されるデジタル値に基づいて、抵抗素子61の抵抗値を導出する。制御部12は、更に抵抗素子61の抵抗値に基づいてセル電圧を導出する。制御部12は、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを有するコンピュータによって構成されている。制御部12は、開示の技術における「抵抗値導出部」及び「セル電圧導出部」の一例である。
【0021】
図2は、セル選択スイッチ20の構成の一例を示す図である。なお、複数のセル選択スイッチ20の各々の構成は互いに同じである。図2において、極性反転回路30の図示が省略されている。セル選択スイッチ20は、第1のスイッチ部21、第2のスイッチ部22、第3のスイッチ部23、カレントミラー回路24、ツェナーダイオード25、第1の電流源26A及び第2の電流源26Bを有する。
【0022】
第1のスイッチ部21は、電池セル50の正極からアナログ・デジタル変換器40に至る導電経路P1上に設けられている。第1のスイッチ部21は、直列に接続された2つのPチャネル型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)1A及び1Bを有する。MOSFET1A及び1Bは、所謂DMOS(Double-diffused MOSFET)の構成を有するパワーMOSFETである。MOSFET1Aは、ソースが接続端子11及び抵抗素子61を介して対応する電池セル50の正極に接続され、ドレインがMOSFET1Bのソースに接続されている。MOSFET2Bは、ドレインがアナログ・デジタル変換器40のアナログ入力に接続されている。MOSFET1A及び1Bのゲートは、それぞれ、ツェナーダイオード25のアノードが接続されたノードn3に接続されている。
【0023】
MOSFET1A及び1Bの双方がオン状態となることで、第1のスイッチ部21がオン状態となり、導電経路P1が導通状態となる。1つ下位のセル選択スイッチ20n-1も併せてオン状態となることで、電池セル50の正極及び負極がアナログ・デジタル変換器40に接続され、電池セル50のセル電圧に相当するデジタル値がアナログ・デジタル変換器40から出力される。一方、MOSFET1A及び1Bの双方がオフ状態となることで、第1のスイッチ部21がオフ状態となり、導電経路P1が非導通状態となる。
【0024】
カレントミラー回路24は、2つのPチャネル型のMOSFET2A及び2Bを有する。MOSFET2A及び2Bのソースは、それぞれ、MOSFET1A及び1Bの接続点であるノードn4に接続されている。MOSFET2A及び2Bのゲートは、それぞれ、MOSFET2Aのドレインに接続されている。MOSFET2Aのドレインはノードn5に接続され、MOSFET2Bのドレインはノードn3に接続されている。ツェナーダイオード25は、アノードがMOSFET2Bのドレイン(ノードn3)に接続され、カソードがMOSFE2Bのソース(ノードn4)に接続されている。
【0025】
第2のスイッチ部22は、トランジスタ等の半導体素子を含んで構成されるスイッチ3A及び3Bを有する。スイッチ3Aは一端がノードn5に接続され、他端が第1の電流源26Aに接続されている。スイッチ3Bは一端がノードn3に接続され、他端が第2の電流源26Bに接続されている。第1の電流源26Aは、電流値Iの定電流を引き込む。第2の電流源26Bは、電流値Iの定電流を引き込む。本実施形態においてI=Iである。なお、I≠Iであってもよい。
【0026】
第2のスイッチ部22は、第1のスイッチ部21のオンオフを切り替える。第2のスイッチ部22は、制御部12による制御に従って相補的にオンオフするスイッチ3A及び3Bを有する。スイッチ3Aがオン状態且つスイッチ3Bがオフ状態となることにより、カレントミラー回路24に電流値Iの電流が流れる。これにより、第1のスイッチ部21を構成するMOSFET1A及び1Bのゲート・ソース間電圧が略0Vとなり、MOSFET1A及び1Bがオフ状態(すなわち、第1のスイッチ部21がオフ状態)となる。一方、スイッチ3Aがオフ状態且つスイッチ3Bがオン状態となることにより、ツェナーダイオード25が降伏し、ツェナーダイオード25に電流値Iのツェナー電流が流れ、ツェナーダイオード25の両端にツェナー電圧が発生する。これにより、第1のスイッチ部21を構成するMOSFET1A及び1Bのゲート・ソース間がツェナー電圧によってバイアスされ、MOSFET1A及び1Bがオン状態(すなわち、第1のスイッチ部21がオン状態)となる。なお、ノードn4からツェナーダイオード25を経由してノードn3に至る経路を分岐経路P2と称する。
【0027】
第3のスイッチ部23は、トランジスタ等の半導体素子を含んで構成されるスイッチ4を有する。スイッチ4は一端がノードn3に接続され、他端が第1の電流源26Aの高電位側に接続されている。第3のスイッチ部23は、第1のスイッチ部21がオン状態にあるときに第1のスイッチ部21に流入する電流の大きさを切り替える。第1のスイッチ部21がオン状態且つ第3のスイッチ部23がオフ状態である場合、第1の電流源26A及び第2の電流源26Bのうち、第2の電流源26Bのみが分岐経路P2に接続されるので、第1のスイッチ部21から流出する流出電流Ioutがゼロの場合、第1のスイッチ部21に流入する流入電流Iinの電流値はI(=I)となる。一方、第1のスイッチ部21がオン状態且つ第3のスイッチ部23がオン状態である場合、第1の電流源26A及び第2の電流源26Bの双方が分岐経路P2に接続されるので、第1のスイッチ部21から流出する流出電流Ioutがゼロの場合、第1のスイッチ部21に流入する流入電流Iinの電流値はI+I(=2I)となる。
【0028】
電池監視装置10において電池セル50のセル電圧を測定する場合、第1のスイッチ部21をオン状態とすることにより、導電経路P1を導通状態とするので、第1のスイッチ部21には流入電流Iinが流入する。流入電流Iinはローパスフィルタ60を構成する抵抗素子61にも流れ、抵抗素子61において電圧降下が生じるため、セル電圧の測定値に無視できない程度の誤差が生じる。抵抗素子61の抵抗値を測定することができれば、セル電圧測定時の抵抗素子61における電圧降下の大きさを求めることができる。アナログ・デジタル変換器40から出力されるデジタル値から抵抗素子61における電圧降下の成分を除去することで、正確なセル電圧を得ることができる。しかしながら、複数の電池セル50の各々に対応して設けられる抵抗素子61の各々の抵抗値を測定することは容易ではない。本実施形態に係る電池監視装置10によれば、抵抗素子61の抵抗値を容易に導出することが可能である。
【0029】
図3は、制御部12が、抵抗素子61の各々の抵抗値を導出する抵抗値導出部として機能する場合に、制御部12において実施される処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、抵抗素子61の抵抗値を導出する場合、1つ下位のセル選択スイッチ20n-1において、第1のスイッチ部21はオン状態、第3のスイッチ部23はオフ状態に維持される。
【0030】
ステップS1において制御部12は、セル選択スイッチ20において、第2のスイッチ部22のスイッチ3Aをオフ状態、スイッチ3Bをオン状態に制御することにより、第1のスイッチ部21をオン状態に制御する。ステップS2において制御部12は、第3のスイッチ部23をオフ状態に制御する。
【0031】
ステップS1及S2におけるスイッチ制御により、電池セル50の正極がアナログ・デジタル変換器40のアナログ入力に接続され、電池セル50の負極がアナログ・デジタル変換器40の基準入力に接続される。このとき、第1のスイッチ部21から流出する流出電流Ioutがゼロの場合、第1のスイッチ部21に流入する流入電流Iinの電流値はI(=I)となる。流入電流Iinはローパスフィルタ60を構成する抵抗素子61にも流れ、抵抗素子61において電圧降下が生じる。ステップS1及S2におけるスイッチ制御を行った場合のアナログ・デジタル変換器40の出力値である第1のデジタル値D1は、下記の(1)式によって表される。(1)式においてVcell_nは、電池セル50のセル電圧、Rは抵抗素子61の抵抗値、Rn-1は抵抗素子61n-1の抵抗値である。第1のデジタル値D1は、電池セル50のセル電圧に相当するが、抵抗素子61、61n-1における電圧降下に起因する誤差を含む。
D1=Vcell_n-R×I+Rn-1×I ・・・(1)
【0032】
ステップS3において制御部12は、アナログ・デジタル変換器40から出力される第1のデジタル値D1を取得して、これを電池セル50の個体識別情報と対応付けてメモリ(図示せず)に保存する。
【0033】
ステップS4において制御部12は、第1のスイッチ部21をオン状態に維持しつつ、第3のスイッチ部23をオン状態に制御する。このとき、第1のスイッチ部21から流出する流出電流Ioutがゼロの場合、第1のスイッチ部21に流入する流入電流Iinの電流値はI+I(=2I)となる。流入電流Iinはローパスフィルタ60を構成する抵抗素子61にも流れ、抵抗素子61において電圧降下が生じる。ステップS4におけるスイッチ制御を行った場合のアナログ・デジタル変換器40の出力値である第2のデジタル値D2は、下記の(2)式によって表される。第2のデジタル値D2は、電池セル50のセル電圧に相当するが、抵抗素子61、61n-1における電圧降下に起因する誤差を含む。
D2=Vcell_n-R×2I+Rn-1×I ・・・(2)
【0034】
ステップS5において制御部12は、アナログ・デジタル変換器40から出力される第2のデジタル値D2を取得して、これを電池セル50の個体識別情報と対応付けてメモリ(図示せず)に保存する。
【0035】
ステップS6において制御部12は、ステップS3において取得した第1のデジタル値D1とステップS5において取得した第2のデジタル値D2に基づいて、抵抗素子61の抵抗値Rを導出する。具体的には、制御部12は、下記の(3)式を演算することにより、抵抗素子61の抵抗値Rを導出する。制御部12は、導出した抵抗値Rを電池セル50の個体識別情報と対応付けてメモリ(図示せず)に保存する。
=(D1-D2)/I ・・・(3)
【0036】
制御部12はステップS7において、全ての抵抗素子61について抵抗値の導出が完了したか否かを判定する。制御部12は、全ての抵抗素子61について抵抗値の導出が完了するまで、ステップS1からステップS6までの処理を繰り返す。
【0037】
図4は、制御部12が、電池セル50の各々のセル電圧を導出するセル電圧導出部として機能する場合に、制御部12において実施される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0038】
ステップS11において制御部12は、図3に示すフローチャートのステップS6において導出した抵抗素子61の抵抗値R及び抵抗素子61n―1の抵抗値Rn-1をメモリ(図示せず)から読み出す。
【0039】
ステップS12において制御部12は、抵抗値Rを導出する際に用いた第1のデジタル値D1をメモリ(図示せず)から読み出す。
【0040】
ステップS13において制御部12は、第1のデジタル値D1を取得したときに抵抗素子61、61n-1において生じる電圧降下の成分を、抵抗素子61、61n-1の抵抗値R、Rn-1に基づいて導出し、上記電圧降下の成分を第1のデジタル値D1から除去したものをセル電圧Vcell_nとして導出する。具体的には、制御部12は、ステップS11において読み出した抵抗値R及びRn-1及びステップS12において読み出したデジタル値D1について、下記の(4)式によって示される演算を行うことにより、電池セル50のセル電圧Vcell_nを導出する。なお電流値Iは既知であるものとする。
cell_n=D1+R×I-Rn-1×I ・・・(4)
【0041】
制御部12はステップS14において、全ての電池セル50についてセル電圧の導出が完了したか否かを判定する。制御部12は、全ての電池セル50についてセル電圧の導出が完了するまで、ステップS11からステップS13までの処理を繰り返す。
【0042】
なお、以上の説明では、デジタル値D1を用いて電池セル50のセル電圧Vcell_nを導出する場合を例示したが、デジタル値D2を用いて電池セル50のセル電圧Vcell_nを導出することも可能である。すなわち、制御部12は、ステップS12においてデジタル値D2を読み出し、ステップS13において抵抗値R及びRn-1及びデジタル値D2について、下記の(5)式によって示される演算を行うことにより、電池セル50のセル電圧Vcell_nを導出してもよい。
cell_n=D2+R×2I-Rn-1×I ・・・(5)
【0043】
以上のように、開示の技術に係る電池監視装置10は、アナログ・デジタル変換器40と、複数の電池セル50うちのいずれかを選択的にアナログ・デジタル変換器40に接続する複数のセル選択スイッチ20と、を含む。セル選択スイッチ20の各々は、複数の電池セル50の1つからアナログ・デジタル変換器40に至る導電経路P1上に設けられ、オン状態において導電経路P1を導通状態とし、オフ状態において導電経路P1を非導通状態とする第1のスイッチ部21と、第1のスイッチ部21のオンオフを切り替える第2のスイッチ部22と、第1のスイッチ部21がオン状態にあるときに第1のスイッチ部21に流入する流入電流Iinの大きさを切り替える第3のスイッチ部23と、導電経路P1上に設けられた抵抗素子61と、を有する。また、電池監視装置10は、第1のスイッチ部21がオン状態にあるときに、導電経路P1から分岐した分岐経路P2に接続される第1の電流源26Aと、第1のスイッチ部21及び第3のスイッチ部23の双方がオン状態にあるときに、分岐経路P2に接続される第2の電流源26Bと、を有する。
【0044】
また、電池監視装置10において制御部12は、抵抗値導出部として機能する。抵抗値導出部として機能する制御部12は、第1のスイッチ部21をオン状態とし、第3のスイッチ部23をオフ状態とした場合におけるアナログ・デジタル変換器40の出力値である第1のデジタル値D1を取得し、第1のスイッチ部21をオン状態とし、第3のスイッチ部23をオン状態とした場合におけるアナログ・デジタル変換器40の出力値である第2のデジタル値D2を取得し、第1のデジタル値D1と第2のデジタル値D2に基づいて、抵抗素子61の抵抗値Rを導出する。
【0045】
また、電池監視装置10において制御部12は、セル電圧導出部として機能する。セル電圧導出部として機能する制御部12は、第1のデジタル値D1又は第2のデジタル値D2を取得したときに抵抗素子61、61n-1において生じる電圧降下の成分を、抵抗素子61、61n-1の抵抗値R、Rn-1に基づいて導出し、上記電圧降下の成分を第1のデジタル値D1又は第2のデジタル値D2から除去したものをセル電圧Vcell_nとして導出する。
【0046】
開示の技術の実施形態に係る電池監視装置10によれば、抵抗素子61の抵抗値の測定が可能となる。また、測定された抵抗値に基づいて、セル電圧の測定を高精度に行うことが可能となる。
【0047】
なお、本実施形態においては、抵抗素子61の抵抗値の導出及びセル電圧の導出を、電池監視装置10が行う場合を例示したが、抵抗素子61の抵抗値の導出及びセル電圧の導出を電池監視装置10と連携する外部装置が行ってもよい。この場合、電池監視装置10は、第1のデジタル値D1n及び第2のデジタル値D2nを外部装置に供給する。
【0048】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
アナログ・デジタル変換器と、
複数の電池セルうちのいずれかを選択的に前記アナログ・デジタル変換器に接続する複数のセル選択スイッチと、
を含み、
前記セル選択スイッチの各々は、
前記複数の電池セルの1つから前記アナログ・デジタル変換器に至る導電経路上に設けられ、オン状態において前記導電経路を導通状態とし、オフ状態において前記導電経路を非導通状態とする第1のスイッチ部と、
前記第1のスイッチ部のオンオフを切り替える第2のスイッチ部と、
前記第1のスイッチ部がオン状態にあるときに前記第1のスイッチ部に流入する電流の大きさを切り替える第3のスイッチ部と、
前記導電経路上に設けられた抵抗素子と、
を有する電池監視装置。
【0049】
(付記2)
前記第1のスイッチ部がオン状態にあるときに、前記導電経路から分岐した分岐経路に接続される第1の電流源と、
前記第1のスイッチ部及び前記第3のスイッチ部の双方がオン状態にあるときに、前記分岐経路に接続される第2の電流源と、
を有する付記1に記載の電池監視装置。
【0050】
(付記3)
前記抵抗素子の抵抗値を導出する抵抗値導出部を更に含み、
前記抵抗値導出部は、
前記第1のスイッチ部をオン状態とし、前記第3のスイッチ部をオフ状態とした場合における前記アナログ・デジタル変換器の出力値である第1のデジタル値を取得し、
前記第1のスイッチ部をオン状態とし、前記第3のスイッチ部をオン状態とした場合における前記アナログ・デジタル変換器の出力値である第2のデジタル値を取得し、
前記第1のデジタル値と前記第2のデジタル値に基づいて、前記抵抗素子の抵抗値を導出する
付記1又は付記2に記載の電池監視装置。
【0051】
(付記4)
前記電池セルのセル電圧を導出するセル電圧導出部を更に含み、
前記セル電圧導出部は、
前記第1のデジタル値又は前記第2のデジタル値を取得したときに前記抵抗素子において生じる電圧降下の成分を、前記抵抗素子の抵抗値に基づいて導出し、前記電圧降下の成分を前記第1のデジタル値又は前記第2のデジタル値から除去したものを前記セル電圧として導出する
請求項3に記載の電池監視装置。
【0052】
(付記5)
付記1から付記4のいずれか1つに記載の電池監視装置を用いて、前記抵抗素子の抵抗値を導出する抵抗値導出方法であって、
前記第1のスイッチ部をオン状態とし、前記第3のスイッチ部をオフ状態とした場合における前記アナログ・デジタル変換器の出力値である第1のデジタル値を取得し、
前記第1のスイッチ部をオン状態とし、前記第3のスイッチ部をオン状態とした場合における前記アナログ・デジタル変換器の出力値である第2のデジタル値を取得し、
前記第1のデジタル値と前記第2のデジタル値に基づいて、前記抵抗素子の抵抗値を導出する
抵抗値導出方法。
【0053】
(付記6)
付記5に記載の抵抗値導出方法によって導出された抵抗値に基づいて、前記電池セルのセル電圧を導出するセル電圧導出方法であって、
前記第1のデジタル値又は前記第2のデジタル値を取得したときに前記抵抗素子において生じる電圧降下の成分を、前記抵抗素子の抵抗値に基づいて導出し、前記電圧降下の成分を前記第1のデジタル値又は前記第2のデジタル値から除去したものを前記セル電圧として導出する
セル電圧導出方法。
【符号の説明】
【0054】
10 電池監視装置
12 制御部
20 セル選択スイッチ
21 第1のスイッチ部
22 第2のスイッチ部
23 第3のスイッチ部
24 カレントミラー回路
25 ツェナーダイオード
26A 第1の電流源
26B 第2の電流源
30 極性反転回路
40 アナログ・デジタル変換器
50 電池セル
51 組電池
61 抵抗素子
図1
図2
図3
図4