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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123707
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】循環水の回路構造
(51)【国際特許分類】
   F01P 7/16 20060101AFI20240905BHJP
   F01P 3/20 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
F01P7/16 A
F01P7/16 504E
F01P3/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031334
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪田 隆
(72)【発明者】
【氏名】松本 哲平
(57)【要約】
【課題】電動車両に搭載される循環水の回路構造のコストを減らし、且、管内圧力の増加を逃せるようにする。
【解決手段】水が流れて所定部品を冷却する冷却水回路と、水を加熱する加熱ヒータが配設されたヒータ回路と、前記冷却水回路と前記ヒータ回路とを直結させた状態と、前記冷却水回路と前記ヒータ回路とを分断させた状態と、を切り替える4方向バルブと、前記冷却水回路及び前記ヒータ回路のうち一方に配設されたリザーブタンクと、を備え、前記4方向バルブによって前記冷却水回路と前記ヒータ回路とが分断された状態において、前記冷却水回路及び前記ヒータ回路のうち他方の圧力が上昇した際に前記冷却水回路と前記ヒータ回路とを連通させて圧力逃しを行う圧力逃し経路が、該4方向バルブに設けられた循環水の回路構造。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が流れて所定部品を冷却する冷却水回路と、
水を加熱する加熱ヒータが配設されたヒータ回路と、
前記冷却水回路と前記ヒータ回路とを直結させた状態と、前記冷却水回路と前記ヒータ回路とを分断させた状態と、を切り替える4方向バルブと、
前記冷却水回路及び前記ヒータ回路のうち一方に配設されたリザーブタンクと、を備え、
前記4方向バルブによって前記冷却水回路と前記ヒータ回路とが分断された状態において、前記冷却水回路及び前記ヒータ回路のうち他方の圧力が上昇した際に前記冷却水回路と前記ヒータ回路とを連通させて圧力逃しを行う圧力逃し経路が、前記4方向バルブに設けられた循環水の回路構造。
【請求項2】
前記圧力逃し経路は、前記4方向バルブの外周に沿うように設けられた請求項1に記載の循環水の回路構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、循環水の回路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、BEV(Battery Electric Vehicle)等の電動車両に搭載される循環水の回路構造は、通常時において、水をヒータによって加熱して循環させて車両内の暖房とするヒータ回路と、車両のバッテリ等を冷却するための冷却水回路と、ヒータ回路と冷却水回路とを接続しヒータ回路と冷却水回路とを分断させた状態とする4方向バルブと、リザーブタンクと、を備えているタイプがある。このような循環水の回路構造は、車両環境が低温時の場合には、バッテリ加温のため、ヒータ回路と冷却水回路とを4方向バルブで直結した状態に切り替える。なお、HEV(Hybrid Electric Vehicle)では、例えば、水をエンジンで加熱して車両内で循環させる。また、BEVにおいて、車両のバッテリ等を、回路を流れる水ではなく、冷媒で冷却するタイプもある。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている循環水の回路構造の発明では、独立した冷却水回路を、4方向バルブで独立した状態と連通した状態とに切り換え可能としている。また、例えば、特許文献2又は特許文献3に開示されている発明においては、回路内の水の流れを3方向バルブで制御するとともに、独立した冷却水回路を、リザーブタンクを介して連通させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-218135号公報
【特許文献2】特開2017-106432号公報
【特許文献3】特開平10-266856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、4方向バルブによってヒータ回路と冷却水回路とが独立した状態(分断された状態)にある場合に、ヒータ回路及び冷却水回路を流れる水の温度変化によって上昇した管内圧力をリザーブタンクに逃がすため、ヒータ回路と冷却水回路との間に金属配管やゴムホースを使用して圧力逃し経路が設定されることがある。したがって、配管又はホースのような種々の部品によりコストが増加する。
【0006】
よって、電動車両等に搭載される循環水の回路構造においては、コストを減らし、且、管内圧力を逃すことができるようにするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本実施形態の循環水の回路構造は、水が流れて所定部品を冷却する冷却水回路と、水を加熱する加熱ヒータが配設されたヒータ回路と、前記冷却水回路と前記ヒータ回路とを直結させた状態と、前記冷却水回路と前記ヒータ回路とを分断させた状態と、を切り替える4方向バルブと、前記冷却水回路及び前記ヒータ回路のうち一方に配設されたリザーブタンクと、を備え、前記4方向バルブによって前記冷却水回路と前記ヒータ回路とが分断された状態において、前記冷却水回路及び前記ヒータ回路のうち他方の圧力が上昇した際に前記冷却水回路と前記ヒータ回路とを連通させて圧力逃しを行う圧力逃し経路が、前記4方向バルブに設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態の循環水の回路構造によれば、圧力逃し経路が4方向バルブ自体に設けられている。そのため、ヒータ回路及び冷却水回路を流れる水の温度変化によって上昇した回路内圧力(管内圧力)をリザーブタンクに逃がすために、従来のような圧力逃し経路をヒータ回路と冷却水回路との間に配管やホースのような他の部品を用いて配設する必要が無い。したがって、該循環水の回路構造は、圧力逃し経路を形成するための他の部品の分だけ循環水の回路構造を構築するためのコストを減らすことができ、且、4方向バルブによって冷却水回路とヒータ回路とを分断させた状態における管内圧力が上昇した際の圧力逃しも実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、電動車両に搭載される本実施形態の循環水の回路構造、インバータ冷却回路、及びヒートポンプシステムを説明する説明図である。
図2図2は、循環水の回路構造の4方向バルブの一例を示す斜視図である。
図3図3は、4方向バルブのディスクを示す斜視図である。
図4図4は、4方向バルブに設けられた圧力逃し経路を示す斜視図である。
図5図5は、循環水の回路構造の別例である縦型の4方向バルブを示す斜視図である。
図6図6は、縦型の4方向バルブに設けられた圧力逃し経路を示す斜視図である。
図7図7は、縦型の4方向バルブのケースを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本実施形態の循環水の回路構造1を説明する。本実施形態の循環水の回路構造1は、例えば、BEV等の電動車両9に搭載される。循環水の回路構造1は、例えば、冷却水回路3と、ヒータ回路4とを備えている。冷却水回路3は、バッテリ回路とも称される。
【0011】
冷却水回路3は、冷却配管36でつながれた循環路であり、例えば、電動のウォータポンプ30(以下、ポンプ30とする)と、冷却水回路3を流れる水の温度を測定する水温センサ31と、バッテリ32と、電子ユニット33と、チラー35と、4方向バルブ6とが、上記の順で配設されている。なお、本実施形態において、冷却水回路3が冷却する対象である所定部品はバッテリ32となっているが、該所定部品はバッテリ32に限定されない。また、冷却水回路3は、上記構成に限定されない。
【0012】
バッテリ32は、組電池やその他の電子デバイス等から構成されている。電子ユニット33は、バッテリ32の充放電電流を検知する電流センサ、並びに充電、電力変換、及び電力分配の機能を集約したユニットである。ポンプ30は、例えば、4方向バルブ6とバッテリ32との間の冷却配管36に配設される。ポンプ30は、チラー35で冷却された冷却水をバッテリ32に供給するように循環させる駆動源である。4方向バルブ6は、例えば、チラー35とポンプ30との間の冷却配管36に配設される。
【0013】
ヒータ回路4は、ヒータ配管48でつながれた循環路であり、例えば、電動のウォータポンプ40(以下、ポンプ40とする)と、放熱器として機能する水冷コンデンサ41と、水を加熱する高電圧式の加熱ヒータ42(以下、ヒータ42とする)と、4方向バルブ6と、加熱された水で空気を加熱し車両内暖房とする熱交換器であるヒータコア44と、水温センサ45と、リザーブタンク46とが、上記の順で配設されている。なお、ヒータ回路4は、上記構成に限定されない。例えば、本実施形態の循環水の回路構造1において、リザーブタンク46をヒータ回路4に配設せず、冷却水回路3にリザーブタンクを配設するものとしてもよい。
【0014】
ポンプ40は、リザーブタンク46と水冷コンデンサ41との間のヒータ配管48に備えられ、ヒータ42で加熱された水をヒータコア44に供給するように循環させる駆動源である。水冷コンデンサ41は、ヒータ回路4内を流れる水の温度を上げる場合に作動する。水温センサ45は、例えば、ヒータコア44を通過した水の温度を測定する。
【0015】
リザーブタンク46は、例えば、密閉型リザーブタンクである。リザーブタンク46は、例えば、硬質樹脂材等で構成され、内部に形成されたエアスペース460によって上昇した管内圧力を吸収する。
【0016】
図2は、図1に示す4方向バルブ6の全体を具体的に示す斜視図である。なお、図2以下においては、X軸Y軸Z軸直交座標系を用いる。例えば、X軸Y軸平面は水平面であり、Z軸方向は鉛直方向(上下方向)である。
【0017】
図2に示すように、4方向バルブ6は、例えば、ケース60と、ケース60上に着脱可能に固定された蓋61と、ケース60内に収容されたディスク62と、ディスク62をケース60内で回転させる回転機構63と、を備えている。
【0018】
図3は、図2に示すディスク62のみを示す斜視図である。図4は、図2に示す4方向バルブ6のケース60から蓋61を取り外した状態を示す斜視図である。
【0019】
図2、及び図4に示すように、ケース60は、例えば、略有底円筒状に形成された基部600を有している。そして、基部600の側面には、X軸方向における一方向に延在する第一ポート601、Y軸方向における一方向に延在する第三ポート603、及びX軸方向において第一ポート601と反対方向に延在する第四ポート604が、基部600内部の空間とそれぞれ連通するように形成されている。また、基部600の底面には、Z軸方向における一方向に延在する第二ポート602が、基部600内部の空間と連通するように形成されている。
【0020】
図2図4に示すディスク62は、可動弁体であり、例えば、基部600の円柱状の内部の空間に緩く嵌合できる大きさに形成されている。ディスク62は、円形板状で例えば上面に回転機構63が連結される天板620と、天板620のケース60の内部側を向く下面に一体的に形成されZ軸方向に沿って垂下する仕切板621と、仕切板621の下部側に一体的に接続され図2に示すケース60の基部600の底面に接触するリング部622とを備えている。リング部622は、天板620と略同径の平面視円環状に形成されている。図2図4に示すように、ディスク62がケース60に収容されることで、ケース60の内部に仕切板621で仕切られた第一室623と第二室624とが形成される。
【0021】
4方向バルブ6は、図1に示す状態においては、横向きで示すディスク62(以下、分断モードのディスク62とする)によって、第一ポート601と第一室623と第二ポート602とが連通させられており、第三ポート603と第二室624と第四ポート604とが連通させられており、冷却水回路3とヒータ回路4とが分断されている。同様に、図4に示す4方向バルブ6は、ディスク62が分断モードとなった状態を示している。
【0022】
図1に示す4方向バルブ6のディスク62が、横向きで示す状態から回転して仮に縦向きで示す状態になると、第一ポート601と第一室623と第三ポート603とが連通し、第二ポート602と第二室624と第四ポート604とが連通した状態となり、冷却水回路3とヒータ回路4とが直結した状態となる。縦向きで表示された場合のディスク62を、以下、直結モードのディスク62とする。図2に示す4方向バルブ6は、図1、及び図4とは異なり、ディスク62が直結モードとなった状態を示している。
【0023】
ケース60の基部600の側面の第一ポート601、第三ポート603、及び第四ポート604よりも上側となる位置には、水平方向外側に向かって延出するようにマウントフランジ605が形成されている。例えば、図2、及び図4に示す例において、マウントフランジ605は、円環の略1/4が切り欠かれた形状となっている。マウントフランジ605は、ケース60と蓋61との接続部分となる。
【0024】
図4に示すように、マウントフランジ605の上面には、円の略3/4の円弧状の溝が、圧力逃し経路606として形成されている。圧力逃し経路606は、ケース60の基部600の円柱状の内部空間に対して、例えば同心円状となるように形成されている。即ち、図4に示す例における圧力逃し経路606は、4方向バルブ6の円筒状のケース60の外周に沿うように設けられている。
【0025】
圧力逃し経路606の一端606a、及び他端606bは基部600内部の空間にそれぞれ連通している。即ち、ディスク62が分断モードとなっている図4において、圧力逃し経路606の一端606aは、例えば、第一ポート601の上方に位置しつつ、ケース60内に形成された第一室623に連通している。また、図4に示す圧力逃し経路606の他端606bは、例えば、第三ポート603の上方に位置しつつ、ケース60内に形成された第二室624に連通している。
【0026】
圧力逃し経路606は、例えば、樹脂成型によって4方向バルブ6に設けられている。即ち、圧力逃し経路606の長さや断面積は、樹脂成型によって容易に所望の値に設定されることができる。
【0027】
圧力逃し経路606は、4方向バルブ6の外周、即ち、有底円筒状の基部600の外周に沿うように設けられており、例えば、円の3/4の長さに設定されているが、円の3/4以上の長さに設定されていてもよい。なお、圧力逃し経路606は、マウントフランジ605の上面に例えば1本の溝状に形成されているが、複数本の溝がマウントフランジ605の上面に同心円状に並べて形成されていてもよい。圧力逃し経路606の長さや断面積は、ヒータ回路4と冷却水回路3との水温差が影響しにくくなるように、循環水の回路構造1の構成に合わせて適宜の値に設定されている。
【0028】
図2に示す回転機構63は、例えば、モータ630、及びモータ630を内部に収容するアーム631を備えている。モータ630は、例えば、パルスモータであるが、サーボモータであってもよい。アーム631の下面からは、モータ630のシャフトが下方に向かって突き出ている。そして、回転機構63は、図示しないパルス発振器から供給される駆動パルスによって、モータ630が駆動することに伴って、モータ630のシャフトに連結されたディスク62を例えばZ軸を軸に回転させる。モータ630に供給される駆動パルス数によって、原点位置から回転したディスク62の回転角度が認識可能となる。なお、回転機構63のモータ630が直接ディスク62に連結されておらず、回転機構63が図示しないプーリ機構等を介してディスク62に連結されていてもよい。
【0029】
図2に示す蓋61は、ケース60に合わせて平面視略円形に形成された蓋基部610と、蓋基部610の側面から水平方向外側に向かって延出するように形成された蓋側フランジ611と、蓋基部610の中央領域にZ軸方向に沿って貫通形成された図示しないシャフト挿通孔とを有している。蓋側フランジ611は、ケース60のマウントフランジ605の形状と合わせるように円環の3/4の円弧形状となっている。そして、図2に示すように、ディスク62を収容した状態のケース60のマウントフランジ605の上面と蓋61の蓋側フランジ611の下面とを重ね合わせて、図示しないボルト等によってマウントフランジ605と蓋側フランジ611とが締結固定される。これにより、溝状の圧力逃し経路606は、蓋側フランジ611に覆われ、圧力逃し経路606内の水が4方向バルブ6外に漏れ出てしまうような事態が生じることが防止される。なお、ケース60と蓋61とが、熱板溶着、振動溶着、又は接着剤等によって固定されていてもよいし、マウントフランジ605と蓋側フランジ611との接続部分に、図示しないシーリング等が配設されていてもよい。
【0030】
また、蓋61の上面に回転機構63のアーム631が接続されるとともに、蓋61の図示しないシャフト挿通孔にモータ630のシャフトが挿通され、該シャフトにケース60内のディスク62が連結される。これにより、ディスク62に回転機構63の生み出す回転動力が伝達可能となる。
【0031】
なお、ケース60のマウントフランジ605の上面が平坦面であり、蓋側フランジ611の下面に溝状の圧力逃し経路が形成されてもよい。また、マウントフランジ605の上面及び蓋側フランジ611の下面の両面に、溝状の圧力逃し経路が互いに合致するように形成されてもよい。
【0032】
図1に示すように、電動車両9は、循環水の回路構造1の他に、例えば、インバータ冷却回路2と、ヒートポンプシステム7と、を備えている。インバータ冷却回路2は、冷却水回路3、ヒータ回路4、及びヒートポンプシステム7とは別回路で配設されている。インバータ冷却回路2は、配管25でつながれた循環路であり、配管25を流れる水の熱を外気との熱交換を通じて放熱するラジエータ20と、ラジエータ20に接続されたリザーブタンク21と、水を循環させる駆動源となるポンプ22と、配管25を流れる水の温度を測定する水温センサ23と、ポンプ22が回ることで冷却水が送られるインバータ24と、が配設されている。インバータ24は、例えば、図示しない走行用モータと直流電流を交流に変換し、走行用モータに供給する。なお、インバータ冷却回路2の構成は、本例に限定されるものではない。
【0033】
図1に示す例えばカーエアコン用のヒートポンプシステム7は、配管70でつながれた循環路である。ヒートポンプシステム7は、大気と冷媒との熱交換を行う空冷コンデンサ71と、配管70内を流れる冷媒を圧縮して循環させる駆動源である電動コンプレッサ72と、エバポレータ73と、アキュームレータ(圧力タンク)74と、チラー75と、水冷コンデンサ76と、配管70の各所に配設された電気式膨張弁772と、を備えている。
【0034】
図1に示す循環水の回路構造1は、冷却水回路3とヒータ回路4とに注水が行われることで使用可能な状態となる。注水は、例えば、図1に示す4方向バルブ6によって冷却水回路3とヒータ回路4とが直結された状態(図1に示す4方向バルブ6のディスク62が縦向きにされた状態)としてから、注水起点であるリザーブタンク46内に水を注ぎこむ。その後、ポンプ30、ポンプ40を稼働させ、冷却水回路3及びヒータ回路4内のエア抜きを行ない、注水を完了させる。
【0035】
注水が完了したヒータ回路4及び冷却水回路3の通常時における水の流れについて、以下に説明する。本実施形態における通常時とは、ヒータ回路4内に加熱した水を循環させて電動車両9の暖房を機能させるとともに、冷却水回路3内に冷却した水を循環させてバッテリ32等を冷却している状態である。通常時では図1に示すように、4方向バルブ6のディスク62が分断モードとされ、ヒータ回路4と冷却水回路3とが分断された状態に設定される。
【0036】
ヒータ回路4のポンプ40が作動することで、ヒータ回路4に注水された水が、水冷コンデンサ41、ヒータ42、4方向バルブ6の第四ポート604、第二室624、4方向バルブ6の第三ポート603、ヒータコア44、及びリザーブタンク46の順で流れて、ヒータ回路4をヒータ42により加熱された水が循環する。そして、ヒータコア44による電動車両9内の暖房が機能する。
【0037】
また、冷却水回路3のポンプ30が作動することで、冷却水回路3に注水された水が、バッテリ32、電子ユニット33、チラー35、4方向バルブ6の第一ポート601、第一室623、4方向バルブ6の第二ポート602の順で流れて、冷却水回路3を冷却された水が循環し、バッテリ32が冷却される。
【0038】
例えば、図4に示す圧力逃し経路606の流路断面積は、第一ポート601及び第二ポート602の流路断面積よりもずっと小さく設定されている。そのため、図1に示す冷却水回路3内の圧力が許容された範囲に収まっている状態では、冷却水回路3を循環する冷却された水が、圧力逃し経路606に流れ込むことが抑制される。即ち、冷却水回路3の水が、圧力逃し経路606を通り図1に示すヒータ回路4内に流れ込むことが抑制される。例えば、圧力逃し経路606には、予め水が充満しており新たな水が進入しないため、圧力逃し経路606の水が、ヒータ回路4と、回路内圧力が許容される範囲内に収まっている冷却水回路3との熱交換を遮断する壁のような役割を果たす。
【0039】
本実施形態の循環水の回路構造1では、図4に示すように、圧力逃し経路606が、4方向バルブ6の外周に沿うように設けられている。そのため、4方向バルブ6は、圧力逃し経路606を、スペースを無駄に取らずに所定距離確保することができ、冷却水回路3内の圧力が許容された範囲に収まっている状態では、ヒータ回路4を循環する水と冷却水回路3を循環する水とが混ざってしまうのを防ぐことができる。よって、循環水の回路構造1は、ヒータ回路4の加温効率及び冷却水回路3の冷却効率を高く保つことが可能となる。
【0040】
例えば、冷却された水が循環する冷却水回路3と加熱された水が循環するヒータ回路4とを図1に示すように分断した状態が所定時間続くことで、リザーブタンクが配設されていない冷却水回路3内の圧力が上昇する。そして、冷却水回路3内とヒータ回路4内の圧力を同じにするように冷却水回路3内を循環する水が圧力逃し経路606にも流れる。
【0041】
即ち、図1、及び図4に示す第一ポート601からケース60内の第一室623に至り第一室623から第二ポート602に流れる水の一部が、第一室623内において圧力逃し経路606に一端606aから流れ込む。圧力逃し経路606に冷却水回路3を循環していた水が新たに流れて、他端606bからケース60の第二室624に流れ込み、ヒータ回路4を循環する水と合流する。したがって、図1に示すヒータ回路4のリザーブタンク46内に冷却水回路3内を循環していた水の一部が新たに流れ込むため、循環水の回路構造1は、リザーブタンク46によって冷却水回路3の圧力増加を吸収することができる。
【0042】
本実施形態の循環水の回路構造1においては、4方向バルブ6によって冷却水回路3とヒータ回路4とを分断させた状態において、例えば冷却水回路3内の回路内圧力が上昇した際に冷却水回路3とヒータ回路4とを連通させて圧力逃しを行う圧力逃し経路606を、4方向バルブ6に設けている。そのため、冷却水回路3内の圧力が許容された範囲に収まるように圧力逃しを行うことができる。したがって、循環水の回路構造1は、冷却水回路3に配設されたバッテリ32の電子デバイスの流路内圧増加を緩和でき、バッテリ32の信頼性を向上させる。また、循環水の回路構造1は、バッテリ32以外の機器も許容内圧に保つことができ、圧力の上昇による循環水の回路構造1の水漏れの発生も抑止できる。さらに、循環水の回路構造1は、冷却水回路3にリザーブタンクを配設せずに済み、且、ヒータ回路4と冷却水回路3との間に、金属配管やゴムホース等で構成される圧力逃し経路を従来のように別途設定する必要が無いため、循環水の回路構造1の構築コストを従来よりも減らせる。
【0043】
次に、図1に示す電動車両9の車両環境が低温時になっている場合等における、循環水の回路構造1内の水の流れについて説明する。冷却水回路3のバッテリ32を加温するために、4方向バルブ6のディスク62が図2に示すような直結モードとされ、図1に示す冷却水回路3とヒータ回路4とが直結された状態(図1に示すディスク62が縦向きにされた状態)となる。
【0044】
図1に示す4方向バルブ6のディスク62が、図2に示す直結モードとされることで、水がヒータ回路4のポンプ40、水冷コンデンサ41、ヒータ42、4方向バルブ6の第四ポート604、第一室623、第二ポート602、冷却水回路3の冷却配管36、ポンプ30、バッテリ32、電子ユニット33、チラー35、4方向バルブ6の第一ポート601、第二室624、第三ポート603、ヒータ回路4のヒータコア44、リザーブタンク46の順で、ヒータ回路4から冷却水回路3にわたって循環する。したがって、バッテリ32は、ヒータ回路4内で加熱された水によって温められる。なお、冷却水回路3とヒータ回路4とが直結されている場合には、チラー35は、バッテリ32を加温するために作動させられていない。
【0045】
本実施形態の循環水の回路構造1では、ヒータ回路4と冷却水回路3とが直結されて上記のような加熱された水の循環が行われる場合に、4方向バルブ6において、圧力逃し経路606にも水が流れる。これにより、圧力逃し経路606は、循環流路として機能し、4方向バルブ6の通水抵抗を軽減することが可能である。
【0046】
図1に示す循環水の回路構造1における4方向バルブは、図2図4に示す4方向バルブ6に限定されるものではなく、例えば、図5図6に示す縦型の4方向バルブ6Aが採用されてもよい。図5は、4方向バルブの別例である縦型の4方向バルブ6Aを示す斜視図である。また、図6は、縦型の4方向バルブ6Aに設けられた圧力逃し経路を説明する斜視図である。なお、4方向バルブ6Aにおいて、4方向バルブ6と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。
【0047】
4方向バルブ6Aは、例えば、ケース65と、ケース65上に着脱可能に配設された蓋66と、ケース65内に収容されたディスク67と、蓋66を介してディスク67に連結された回転機構63と、を備えている。
【0048】
ケース65は、例えば、略有底円筒状に形成された基部650を有している。そして、基部650の側面には、Y軸方向における一方向に延在する第一ポート651、X軸方向における一方向に延在する第二ポート652、X軸方向において第二ポート652と反対方向に延在する第三ポート653、及び第一ポート651よりも下方となる位置で第一ポート651の延在方向と同方向に延在する第四ポート654が、基部650内部の空間と連通するように配設されている。
【0049】
図5、及び図6に示す第一ポート651及び第二ポート652は、図1に示す冷却水回路3の冷却配管36が接続される。また、図5、及び図6に示す第三ポート653及び第四ポート654は、図1に示すヒータ回路4のヒータ配管48が接続される。
【0050】
図7は、縦型の4方向バルブ6Aのケース65を示す平面図である。図7に示すように、基部650の内部に、三つの隔壁650aが設けられる。三つの隔壁650aは、有底円筒状の基部650の底からZ軸方向に突出し、互いに接続されている。三つの隔壁650aは、基部650内部の空間を、第二ポート652に連通する第二前室652a、及び第三ポート653に連通する第三前室653a、及び第四ポート654に連通する第四前室654aに区画する。第一ポート651は、隔壁650aの上端よりも上方に位置する。
【0051】
図5図6に示すディスク67は、可動弁体であり、例えば、ケース65の基部650の円柱状の内部の空間に緩く嵌合できる大きさに形成されている。ディスク67は、円形板状に形成され、図5における例えば上面に回転機構63が連結される。
【0052】
ディスク67には、2つの貫通孔67aと、凹部67bとが設けられる。2つの貫通孔67aは、ディスク67を厚さ方向(Z軸方向)に貫通する。2つの貫通孔67aは、互いに隔てられて隣接する。凹部67bは、2つの貫通孔67aから隔てられて、ディスク67の下面から上方へ窪んでいる。図5、及び図6に示す例では、2つの貫通孔67aがそれぞれ平面視略扇状に形成され、凹部67bが平面視半円状に形成されており、その中心角側がディスク67の中心部分に略合致している。
【0053】
ディスク67は、基部650の内部に収容される。ディスク67は、隔壁650aの上方、且つ第一ポート651の下方に位置する。このため、ディスク67は、基部650内部の空間を、第二前室652a、第三前室653a、及び第四前室654aを含む下部空間と、第一ポート651に連通する第一前室651aとに区画する。第一前室651aは、ディスク67の上方に位置する。
【0054】
4方向バルブ6Aは、図5、及び図6に示す状態においては、ディスク67によって、第一ポート651と、第一前室651aと、貫通孔67aと、第二前室652aと、第二ポート652と、が連通している。また、ディスク67によって、第四ポート654と、第四前室654aと、凹部67bと、第三前室653aと、第三ポート653と、が連通している。したがって、図1に示す循環水の回路構造1が、仮に図5、及び図6に示す縦型の4方向バルブ6Aを備えている場合には、4方向バルブ6Aが、図5、及び図6に示す状態となっている際に、冷却水回路3とヒータ回路4とが分断された状態となる。
【0055】
ケース65の基部650の側面の上記各ポートよりも上方の位置には、水平方向外側に向かってマウントフランジ655が延出するように形成されている。図5、及び図6に示す例において、マウントフランジ655は、半円弧形状となっている。マウントフランジ655は、ケース65と蓋66との接続部分となる。
【0056】
マウントフランジ655の上面には、半円弧状の溝が、圧力逃し経路656として形成されている。圧力逃し経路656は、ケース65の基部650の円柱状の内部空間に対して、例えば同心円状となるように形成されている。そして、圧力逃し経路656の一端656aは、例えば、第二ポート652の上方に位置しつつ、第一前室651aに連通している。
【0057】
図6に示すように、圧力逃し経路656の他端656b側は、マウントフランジ655から基部650の外側面に沿って下るようにダクト状に延在し、例えば、第三ポート653に連通している。圧力逃し経路656は、例えば、樹脂成型で形成されることで、その長さや断面積を容易に所望の値に設定可能である。
【0058】
本実施形態において、圧力逃し経路656は、4方向バルブ6Aの外周、即ち、ケース65の有底円筒状の基部650の外周に沿うように設けられている。圧力逃し経路656の長さや断面積は、図1に示すヒータ回路4と冷却水回路3との水温差の影響が生じにくくなるように、循環水の回路構造1の要求に合わせて適宜の値が設定される。
【0059】
図5に示す蓋66は、ケース65に合わせて平面視略円形に形成された蓋基部660と、蓋基部660の側面から水平方向外側に向かって延出するように形成された蓋側フランジ661と、蓋基部660の中央にZ軸方向に貫通形成された図示しないシャフト挿通孔とを有している。蓋側フランジ661は、ケース65のマウントフランジ655の形状と合致するように半円弧状に形成されている。
【0060】
ディスク67を収容した状態のケース65のマウントフランジ655の上面と蓋66の蓋側フランジ661の下面とを重ね合わせて、図示しないボルトによってマウントフランジ655と蓋側フランジ661とが、例えば締結固定される。また、蓋66の上面に回転機構63のアーム631が接続されるとともに、蓋66に貫通形成されるとともにシーリング部材が配設された図示しないシャフト挿通孔をモータ630のシャフトが通過して、該シャフトにケース65内のディスク67が連結される。これにより、ディスク67がケース65内で回転可能な状態となっている。
【0061】
図1に示す循環水の回路構造1が、図5、及び図6に示す縦型の4方向バルブ6Aを備えている場合における、ヒータ回路4及び冷却水回路3の通常時の水の流れについて、以下に説明する。該通常時では、4方向バルブ6Aのディスク67が図5、及び図6に示す分断モードとされ、図1に示すヒータ回路4と冷却水回路3とが分断した状態に設定される。
【0062】
ヒータ回路4では、水冷コンデンサ41、ヒータ42、図5図6に示す4方向バルブ6Aの第四ポート654、第四前室654a、凹部67b、第三前室653a、第三ポート653、図1に示すヒータコア44、及びリザーブタンク46の順で、加熱された水が循環し、電動車両9内の暖房が機能する。
【0063】
冷却水回路3では、バッテリ32、電子ユニット33、チラー35、図5図6の4方向バルブ6Aの第一ポート651、第一前室651a、2つの貫通孔67aのうち一方、第二前室652a、及び第二ポート652の順で、冷却された水が循環し、バッテリ32が冷却される。なお、2つの貫通孔67aのうち他方は、隔壁650aによって塞がれている。
【0064】
例えば、図6に示す圧力逃し経路656の断面積は、第一ポート651、第一前室651a、貫通孔67a、第二前室652a、及び第二ポート652の断面積等よりも小さく設定されている。そのため、冷却水回路3内の圧力が許容された範囲内に収まっている状態では、冷却水回路3を循環する冷却された水が、ケース65内の第一前室651aにおいて、圧力逃し経路656に流れることが抑制される。また、4方向バルブ6Aは、圧力逃し経路656を、該4方向バルブ6Aの外周に沿うように設けていることで、スペースを取らずに圧力逃し経路656を所定距離確保でき、ヒータ回路4を循環する水と冷却水回路3を循環する水とが混ざることを抑制し、ヒータ回路4及び冷却水回路3の作動効率を高く保てる。
【0065】
冷却された水が循環する冷却水回路3と加熱された水が循環するヒータ回路4とが分断された状態が所定時間続くと、リザーブタンクが設けられていない冷却水回路3内の圧力が上昇する。これに伴って、冷却水回路3内を循環して図5、及び図6に示す第一ポート651からケース65内の第一前室651aに至った水が、貫通孔67aに流れるとともに、圧力逃し経路656にも一端656aから流れ込む。圧力逃し経路656を流れる水は、他端656bから第三ポート653を通過してヒータ回路4を循環する水と合流する。そして、ヒータ回路4のリザーブタンク46内に冷却水回路3内を循環していた水の一部が入るため、リザーブタンク46によって冷却水回路3の圧力増加が吸収される。
【0066】
上記のように、循環水の回路構造1は、図2図4に示す4方向バルブ6に代えて、図5図6に示す縦型の4方向バルブ6Aを備えている場合であっても、冷却水回路3の回路内圧力の上昇を緩和でき、バッテリ32や、バッテリ32以外の機器も許容内圧に保つことができ、圧力の上昇による循環水の回路構造1の水漏れの発生も抑止できる。また、冷却水回路3にリザーブタンクを配設せずに済み、かつ、ヒータ回路4と冷却水回路3との間に、金属配管やゴムホースを用いた圧力逃し経路を別途設定する必要が無いため、回路構造のコストを従来よりも減らすことができる。
【0067】
図1に示す電動車両9の車両環境が低温時となっている場合には、冷却水回路3のバッテリ32を加温するために、図5、及び図6に示す4方向バルブ6Aのディスク67が、Z軸方向側から見て反時計回り方向に略90度回転され、直結モードとなる。そして、水がヒータ回路4のポンプ40、水冷コンデンサ41、ヒータ42、4方向バルブ6Aの第四ポート654、第四前室654a、凹部67b、第二前室652a、第二ポート652、冷却水回路3の冷却配管36、ポンプ30、バッテリ32、電子ユニット33、チラー35、4方向バルブ6Aの第一ポート651、ケース65内の第一前室651a、2つの貫通孔67aのうち一方、第三前室653a、第三ポート653、ヒータ回路4のヒータコア44、及びリザーブタンク46の順で、ヒータ回路4から冷却水回路3にわたって循環する。したがって、バッテリ32は、ヒータ回路4内で加熱された水によって温められる。
【0068】
上記のように本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態およびその変形は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1:循環水の回路構造
2:インバータ冷却回路
3:冷却水回路 30:ウォータポンプ 32:バッテリ 33:電子ユニット
35:チラー 36:冷却配管
4:ヒータ回路 40:ウォータポンプ 41:水冷コンデンサ 42:加熱ヒータ
44:ヒータコア 46:リザーブタンク
48:ヒータ配管
6:4方向バルブ
60:ケース 600:基部 601:第一ポート 602:第二ポート
603:第三ポート 604:第四ポート 605:マウントフランジ
606:圧力逃し経路
61:蓋 610:蓋基部 611:蓋側フランジ
62:ディスク 620:天板 621:仕切板 622:リング部 623:第一室
624:第二室
63:回転機構
7:ヒートポンプシステム
9:電動車両
6A:縦型の4方向バルブ 656:圧力逃し経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7