(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123718
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 50/159 20210101AFI20240905BHJP
H01M 50/176 20210101ALI20240905BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240905BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20240905BHJP
H01M 50/534 20210101ALI20240905BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20240905BHJP
H01G 11/80 20130101ALI20240905BHJP
H01M 50/562 20210101ALI20240905BHJP
H01M 50/557 20210101ALI20240905BHJP
【FI】
H01M50/159
H01M50/176
H01M50/103
H01M50/533
H01M50/534
H01G11/78
H01G11/80
H01M50/562
H01M50/557
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031352
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 一生
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5E078EA09
5E078EA11
5E078HA12
5E078HA23
5E078KA06
5H011AA13
5H011CC06
5H011EE04
5H011FF04
5H011HH02
5H011KK00
5H043AA04
5H043CA04
5H043GA22
5H043JA01E
5H043LA00
5H043LA00E
(57)【要約】
【課題】安全性の高い蓄電デバイスを提供すること。
【解決手段】ここに開示される蓄電デバイスは、ケース本体12と、端子装着孔を有する封口板14と、ケース本体12の内部に収容された電極体と、集電端子と、封口板14と集電端子との間に配置される絶縁部材40と、を備えている。蓄電デバイスにおいて、絶縁部材40は、封口板14の端子装着孔18の周縁部分および集電端子と一体成型された状態で端子装着孔18の周縁18aに配置される。ここで、封口板14と集電端子は、0.2%耐力および破断伸びが所定の範囲を満たす金属材料から構成されている、蓄電デバイス。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するケース本体と、
端子装着孔を有し、前記開口部を封口する金属製の封口板と、
前記ケース本体の内部に収容された電極体と、
一端が前記ケース本体の内部で前記電極体と電気的に接続され、他端が前記端子装着孔を通過して前記封口板の外面側に露出する集電端子と、
前記封口板と前記集電端子との間に配置される絶縁部材と、
を備える蓄電デバイスであって、
前記絶縁部材は、前記封口板の端子装着孔の周縁部分および前集電端子と一体成型された状態で前記端子装着孔の周縁に配置されており、
前記封口板は、0.2%耐力Aが95~350N/mm2であり、破断伸びXが4~27%である金属材料から構成され、
前記集電端子は、0.2%耐力Bが25~200N/mm2であり、破断伸びYが20~45%である金属材料から構成され、
ここで、前記耐力Aに対する前記耐力Bの比(B/A)が、0.08~0.8であり、
前記破断伸びXに対する前記破断伸びYの比(Y/X)が1.1~10.8である、蓄電デバイス。
【請求項2】
前記集電端子の前記絶縁部材と接する表面の少なくとも一部には、その周囲の表面よりも凹凸のある粗化エリアを有している、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の二次電池やリチウムイオンキャパシタ等のキャパシタを包含するいわゆる蓄電デバイスは、パソコンや携帯端末等のポータブル電源のほか、BEV(電気自動車)、HEV(ハイブリッド自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド自動車)等の車両駆動用電源として普及している。
かかる用途の蓄電デバイスとして、矩形状の六面からなる六面体形状のいわゆる角型形状の金属製ケース内に正負極を有する電極体を収容した形態のものが挙げられる。かかる形態の蓄電デバイスの典型例として、一面が開口した角型形状のケース本体と、該開口部分を塞ぐ矩形板状の封口板(蓋体)とを備え、ケースに収容する電極体の正負極それぞれと電気的に接続された正負極それぞれの集電端子を、上記封口板に設けられた正負極それぞれの端子装着孔を通して該端子の一部を該封口板の外面に配置した形態のものが挙げられる。
【0003】
この種の蓄電デバイスとして、予め上記端子装着孔の周縁部分に合成樹脂製の絶縁部材を配置した状態で、当該装着孔に上記集電端子の一部を通しつつ該集電端子を封口板に装着した封口板と集電端子との組立体(以下「集電端子-封口板組立体」という。)を所定の型を用いて一体に成型しておき、かかる一体成型された集電端子-封口板組立体に所定形状の電極体を接続したものをケース本体に収容し、そして該ケースの開口部分に封口板を接合する密閉型の蓄電デバイスが挙げられる。
例えば、特許文献1には、かかる一体成型された集電端子-封口板組立体を用いて製造された密閉型の蓄電デバイスの一例(リチウムイオン二次電池)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるような集電端子-封口板組立体と、ケース本体とが溶接された蓄電デバイスでは、封口板と集電端子と絶縁部材とが一体成型された部分の剛性は、一体成型によって、その他の部分(一体成型に関与していない部分)の剛性よりも高まりやすい。特に、封口板と集電端子とがそれぞれ所定の強度を満たすように強固な材質で構成されているため、このような一体成型されている部分の剛性が高まる傾向にあると考えられる。本発明者らの検討によれば、封口板に何らかの状況で応力が生じた際、かかる応力は相対的に剛性が低い部分に集中するため、一体成型に関与していない部分(例えば、封口板とケース本体との境界に沿って設けられる溶接部)では、破断が生じやすいことを見出した。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、上述したような集電端子および絶縁部材が封口板(具体的には上記端子装着孔の周縁部分を包含する部分)と一体成型された集電端子-封口板組立体と、ケース本体とが溶接される蓄電デバイスにおいて、当該蓄電デバイスの安全性をより向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される蓄電デバイスは、開口部を有するケース本体と、端子装着孔を有し、上記開口部を封口する金属製の封口板と、上記ケース本体の内部に収容された電極体と、一端が上記ケース本体の内部で上記電極体と電気的に接続され、他端が上記端子装着孔を通過して上記封口板の外面側に露出する集電端子と、上記封口板と上記集電端子との間に配置される絶縁部材と、を備える蓄電デバイスである。上記絶縁部材は、上記封口板の端子装着孔の周縁部分および前集電端子と一体成型された状態で上記端子装着孔の周縁に配置されている。上記封口板は、0.2%耐力Aが95~350N/mm2であり、破断伸びXが4~27%である金属材料から構成され、上記集電端子は、0.2%耐力Bが25~200N/mm2であり、破断伸びYが20~45%である金属材料から構成される。ここで、上記蓄電デバイスは、上記耐力Aに対する上記耐力Bの比(B/A)が、0.08~0.8であり、上記破断伸びXに対する上記破断伸びYの比(Y/X)が1.1~10.8である
【0008】
かかる構成によれば、封口板と集電端子と絶縁部材とが一体成型される部分の剛性を好適に低減することができ、一体成型されている部分と一体成型に関与していない部分(例えば溶接部)との剛性差を小さくすることができる。これにより、応力集中が発生することを抑制することができ、安全性の高い蓄電デバイスが実現される。
【0009】
なお、本明細書において、金属材料に関する「0.2%耐力(N/mm2)」および「破断伸び(%)」は、特に断りのない限り、JIS13号B試験片を用いて、JISZ2241に準拠して求められる値のことをいう。また、0.2%耐力のことを単に「耐力」ということがある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電池を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る電池の内部構造を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、電極体の構成を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、封口板と集電端子と絶縁部材とが一体成型された、集電端子-封口板組立体を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る集電端子近傍を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る成形金型を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、ここで開示される技術の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、ここに開示される技術を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と、当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、各図面は模式的に描かれており、寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を必ずしも反映するものではない。また、以下に説明する図面において、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、本明細書において範囲を示す「A~B」(A,Bは任意の数値)の表記は、A以上B以下を意味する。
【0012】
本明細書において、「蓄電デバイス」とは、電解質を介して一対の電極(正極および負極)の間で電荷担体が移動することによって充放電反応が生じるデバイスをいう。かかる蓄電デバイスは、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の二次電池;リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(すなわち、物理電池);を包含する。
以下では、上述した蓄電デバイスのうち、リチウムイオン二次電池を例に挙げて、ここに開示される技術の一実施形態について説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る二次電池100の斜視図である。
図2は、二次電池100の内部構造を模式的に示す図である。なお、以下の説明において、図面中の符号X、Y、Zは、二次電池100の短辺方向、短辺方向と直交する長辺方向、上下方向を、それぞれ表すものとする。また、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表す。ただし、これらの方向は説明の便宜上の定めたものであり、二次電池100の設置形態を何ら限定するものではない。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は、必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。
【0014】
図1および
図2に示すように、二次電池100は、電極体20と、電解質(図示せず)と、電極体20および電解質を収容するケース本体12と、封口板14と、正極端子30と、負極端子35と、絶縁部材40と、を備えている。
【0015】
図3は、電極体20の構成を模式的に示す図である。電極体20は、ここでは
図3に示すように、帯状の正極シート22と帯状の負極シート24とが、2枚の帯状のセパレータ26を介して絶縁された状態で積層され、巻回軸WLを中心として長手方向に巻回されてなる巻回電極体である。ただし、電極体は、方形状の正極シートと方形状の負極シートとが、方形状のセパレータによって絶縁された状態で積み重ねられてなる積層電極体であってもよい。あるいは、電極体は、方形状の正極シートと方形状の負極シートとが、つづら折りされたセパレータによって絶縁された状態で積み重ねられてなる積層電極体であってもよい。
【0016】
正極シート22は、
図3に示すように、長尺な帯状の部材である。正極シート22の構成は特に限定されず、従来公知の電池に用いられているものと同様でよい。例えば、正極シート22は、帯状の正極芯体22cと、正極芯体22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aおよび正極保護層22pと、を有する。ただし、正極保護層22pは必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0017】
正極芯体22cは、長尺な帯状の部材である。正極芯体22cは、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属から構成される。正極芯体22cは、ここでは金属箔、具体的にはアルミニウム箔である。正極芯体22cの寸法は特に限定されず、電池設計に応じて適宜決定すればよい。正極芯体22cの長辺方向Yの一方の端部(
図3の左端部)には、複数の正極タブ22tが設けられている。複数の正極タブ22tは、セパレータ26よりも長辺方向Yに突出している。複数の正極タブ22tは、セパレータ26よりも長辺方向Yに突出している。複数の正極タブ22tは、正極芯体22cの長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。正極タブ22tは、正極芯体22cの一部であり、金属箔(アルミ箔)からなっている。正極タブ22tの一部には、正極活物質層22aが形成されている。正極タブ22tの少なくとも一部では、正極活物質層22aが形成されずに正極芯体22cが露出している。複数の正極タブ22tは長辺方向Yの一方の端部(
図2の左端部)で積層され、正極タブ群23を構成している。複数の正極タブ22tは、外方側の端が揃うように折り曲げられて湾曲している。正極タブ群23は、正極集電体50を介して正極端子30と電気的に接続されている。
【0018】
正極活物質層22aは、
図3に示すように、正極芯体22cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。正極活物質層22aは、正極活物質を含有する。正極活物質としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の正極活物質を用いてよい。具体的に例えば、正極活物質として、リチウム複合酸化物、リチウム遷移金属リン酸化合物等を用いることができる。これらの正極活物質は、1種単独で用いてよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。正極活物質層22aは、正極活物質以外の成分、例えば、導電材、バインダ等を含み得る。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラックやその他(例、グラファイトなど)の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。
【0019】
正極保護層22pは、
図3に示すように、長辺方向Yにおいて正極芯体22cと正極活物質層22aとの境界部分に設けられている。正極保護層22pは、正極活物質層22aよりも電気伝導性が低くなるように構成された層であり得る。正極保護層22pは、ここでは正極芯体22cの長辺方向Yの一方の端部(
図3の左端部)に設けられている。ただし、正極保護層22pは、長辺方向Yの両端部に設けられていてもよい。正極保護層22pは、正極活物質層22aに沿って、帯状に設けられている。正極保護層22pは、無機フィラー(例えば、アルミナ)を含んでいる。正極保護層22pは、無機フィラー以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。
【0020】
負極シート24は、
図3に示すように、長尺な帯状の部材である。負極シート24の構成は特に限定されず、従来公知の電池に用いられているものと同様でよい。例えば、負極シート24は、負極芯体24cと、負極芯体24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を有する。
【0021】
負極芯体24cは、長尺な帯状の部材である。負極芯体24cは、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極芯体24cは、ここでは金属箔、具体的には銅箔である。負極芯体24cの寸法は特に限定されず、電池設計に応じて適宜決定すればよい。負極芯体24cの長辺方向Yの一方の端部(
図3の右端部)には、複数の負極タブ24tが設けられている。複数の負極タブ24tは、セパレータ26よりも長辺方向Yに突出している。複数の負極タブ24tは、セパレータ26よりも長辺方向Yに突出している。複数の負極タブ24tは、負極シート24の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている負極タブ24tは、負極芯体24cの一部であり、金属箔(銅箔)からなっている。負極タブ24tの一部には、負極活物質層24aが形成されている。負極タブ24tの少なくとも一部では、負極活物質層24aが形成されずに負極芯体24cが露出している。複数の負極タブ24tは長辺方向Yの一方の端部(
図2の右端部)で積層され、負極タブ群25を構成している。複数の負極タブ24tは、外方側の端が揃うように折り曲げられて湾曲している。負極タブ群25は、負極集電体60を介して負極端子35と電気的に接続されている。
【0022】
負極活物質層24aは、
図3に示すように、帯状の負極芯体24cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24aは負極活物質を含有する。当該負極活物質としては、特に限定されないが、例えば黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料を使用し得る。黒鉛は、天然黒鉛であっても人造黒鉛であってもよく、黒鉛が非晶質な炭素材料で被覆された形態の非晶質炭素被覆黒鉛であってもよい。なお、負極活物質は、炭素系材料以外の材料を使用してもよい。かかる炭素系材料以外の材料としては、チタン酸リチウム(LTO)やシリコン系材料(SiO)等が挙げられる。負極活物質層24aは、負極活物質以外の成分、例えばバインダや増粘剤等を含み得る。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
【0023】
セパレータ26は、電荷担体が通過し得る微細な貫通孔が複数形成された絶縁性の樹脂シートである。セパレータ26の構成は特に限定されず、従来公知の電池に用いられているものと同様でよい。セパレータ26としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂から構成される多孔性シート(フィルム)が挙げられる。セパレータ26の表面には、耐熱層(HRL)が設けられていてもよい。
【0024】
上記したとおり、二次電池100は電解質を備えている。電解質は特に限定されず、従来公知の電池に用いられているものと同様でよい。電解質は、例えば、非水系溶媒(有機溶媒)と電解質塩(支持塩)とを含み得る。非水系溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等を用いることができる。また、支持塩としては、種々のリチウム塩を用いることができ、なかでもLiPF6、LiBF4等のリチウム塩が好適である。電解液は、例えば、被膜形成剤、ガス発生剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0025】
図1に示すように、ケース10(ここでは、電池ケース10)は、ケース本体12と、封口板14と、を備えている。電池ケース10は、ここでは有底の直方体形状(角型)の外形を有する。ケース本体12は、電極体20と電解質とを収容する筐体である。ケース本体12は、一側面(ここでは上面)に開口部12h(
図2参照)を有する有底かつ角型の容器である。開口部12hは、ここでは略矩形状である。ケース本体12は、
図1に示すように、長辺および短辺を有し、平面視で略矩形状の底面12aと、底面12aの長辺から上下方向Zの上方に延び相互に対向する一対の長側壁12bと、底面12aの短辺から上下方向Zの上方に延び相互に対向する一対の短側壁12cと、を備えている。短側壁12cの面積は、長側壁12bの面積よりも小さい。特に限定されるものではないが、ケース本体12の平均厚み(平均板厚)は、耐久性等の観点から、概ね0.5mm以上、例えば1mm以上であるとよく、コストやエネルギー密度の観点から、概ね3mm以下、例えば2mm以下であるとよい。
【0026】
封口板14は、互いに対向する一対の長辺部と、互いに対向する一対の短辺部と、を有する略矩形の板部材である。封口板14は、ケース本体12の略矩形状の開口部12hを封口する部材である。封口板14の外縁とケース本体12の開口部12hの周縁部とは、溶接接合されている。
図2に示すように、封口板14は、当該封口板14の厚み方向に貫通する2つの端子装着孔18、19を有する。端子装着孔18、19は、封口板14の長辺方向Yの両端部に1個ずつ設けられている。一方側(
図2の左側)の端子装着孔18は正極端子30用であり、他方側(
図2の右側)の端子装着孔19は負極端子35用である。端子装着孔18、19の形状は、平面視においてここでは、略真円状である。ただし、端子装着孔18、19は、平面視において、楕円形状であってもよいし、四角形状や六角形状等の多角形状であってもよい。端子装着孔18、19の形状は、正極端子30および負極端子35の形状に合わせて適宜選択されればよい。
【0027】
また、封口板14には、注液孔15と、ガス排出弁17とが設けられている。注液孔15は、ケース本体12に封口板14を組み付けた後、電池ケース10の内部に電解液を注液するための貫通孔である。注液孔15は、電解液の注液後に封止部材16によって封止される。ガス排出弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、電池ケース10内のガスを外部に排出するように構成されている。
【0028】
特に限定されるものではないが、封口板14の平均厚みは、耐久性等の観点から、概ね0.3mm以上、例えば0.5mm以上であるとよく、コストやエネルギー密度の観点から、概ね4.0mm以下、例えば3.0mm以下であるとよい。封口板14の平均厚みは、ケース本体12の平均厚みよりも薄くてもよい。
【0029】
図1に示すように、封口板14の外縁部と、ケース本体12の開口部12hの周縁部とは溶接接合されており、ケース本体12と封口板14との境界(嵌合部)に沿って溶接部13が形成されている。これにより、ケース本体12の開口部12hが封口板14により隙間なく塞がれ、電池ケース10が密閉され得る。溶接部13は、例えばレーザ溶接等の溶接接合によって形成され得る。溶接部13は、ケース本体12と封口板14との嵌合部がレーザ溶接されることによって、ケース本体12の構成金属と封口板14の構成金属とが溶融されて形成された部分である。溶接部13は、封口板14の外表面側に位置している。溶接部13では、ケース本体12の開口部12hの内周縁と封口板14の外周縁とが面一になるように連結されている。溶接部13は、封口板14とケース本体12との嵌合部に沿って全周に形成されている。
【0030】
図4は、封口板14と集電端子と絶縁部材40とが一体成型された、集電端子-封口板組立体14Aを模式的に示す図である。ここに開示される蓄電デバイスでは、
図4に示されるように、封口板14と集電端子と絶縁部材40とが一体成型された、集電端子-封口板組立体14Aを備えている。なお、
図4では、封口板14と集電端子と絶縁部材40とに加え、正極集電体50および負極集電体60も一体に成型されている。
【0031】
図2に示すように、正極端子30は、一端が封口板14の外面側に露出するように配置され、他端がケース本体12の内部で電極体20の正極22と接続されている。正極端子30は、電池ケース10の内部で、正極集電体50を介して複数の正極タブ22tからなる正極タブ群23と接続されている。
図2に示すように、正極集電体50は、例えば、長辺方向Yに沿って延びる第1集電部51と、ケース本体12の短側壁12cに沿って延びる第2集電部52とを有している。負極端子35は、一端が封口板14の外面側に露出するように配置され、他端がケース本体12の内部で電極体20の負極24と接続されている。負極端子35は、電池ケース10の内部で、負極集電体60を介して複数の負極タブ24tからなる負極タブ群25と接続されている。
図2に示すように、負極集電体60は、例えば、長辺方向Yに沿って延びる第1集電部61と、ケース本体12の短側壁12cに沿って延びる第2集電部62とを有している。
【0032】
正極集電体50と正極端子30、および、負極集電体60と負極端子35とは、例えば超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接等の溶接によって接合されている。あるいは、正極集電体50および負極集電体60は、後述する一体成型工程において、正極端子30および負極端子35とともに封口板14と一体成型されることによって接合されていてもよい。また、正極集電体50と正極端子30、および、負極集電体60と負極端子35とは、かしめ加工(リベッティング)等の機械的な加工によって接合されていてもよい。
【0033】
図5は、正極端子近傍の模式的な断面図である。
図5に示すように、正極集電体50の第1集電部51は、封口板14と電極体20との間に配置される。第1集電部51は、封口板14の内面14aに沿って、水平に広がっている。
図5に示すように、封口板14と第1集電部51との間には、絶縁部材40が配置されている。第1集電部51は、絶縁部材40によって、封口板14と絶縁されている。第1集電部51は、正極端子30の内面側の端部と接続されている。
図2に示すように、正極集電体50の第2集電部52は、上下方向Zの一方側(
図2の上方側)が正極集電体50の第1集電部51と接続され、他方側(
図2の下方側)が正極タブ群23と接続される。なお、上記では正極側の構造について説明したが、負極側も同様の構造であってよい。
【0034】
絶縁部材40は、封口板14と集電端子(正極端子30および負極端子35)との導通を防止する部材である。
図5に示すように、絶縁部材40は、封口板14の端子装着孔18の周縁部分および正極端子30と一体成型された状態で端子装着孔18の周縁18aに配置されている。なお、本明細書において、「端子装着孔の周縁」とは、端子装着孔の縁だけでなく、その周囲の領域を含む。端子装着孔の周縁は、具体的に、端子装着孔の端(縁)から5mm~10mmの領域を含む。
【0035】
絶縁部材40は、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂や、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の合成樹脂材料によって構成される。なかでも、十分な接合強度を確保することができる観点から、絶縁部材40はポリフェニレンサルファイドから構成されることが好ましい。
【0036】
絶縁部材40は、
図5に示すように、第1フランジ部41と、第2フランジ部42と、筒状部43と、突出部44と、を有している。第1フランジ部41と第2フランジ部42と筒状部43と突出部44とは一体に形成されている。また、絶縁部材40は、封口板14の端子装着孔18と対応する位置において、上下方向Zに貫通した貫通孔40hを有している。第1フランジ部41は、封口板14の外面側に配置され、正極端子30のケース本体12の外部側に配置される端部(以下、「封口板外面側31」ともいう。)と、封口板14の外面14bとを絶縁している。第1フランジ部41は、
図4に示すように、平面視において、正極端子30および負極端子35よりも外側にはみ出し、外部に露出している。
図5に示すように、第2フランジ部42は、封口板14の内面側に配置され、正極端子30のケース本体12の内部側に配置される端部(以下、「封口板内面側32」ともいう。)と、封口板14の内面14aとを絶縁している。第2フランジ部42は、封口板14の内面14aに沿って水平方向に延びている。第1フランジ部41および第2フランジ部42の外形は、正極端子30の封口板外面側31および封口板内面側32の外形よりも大きい。
【0037】
筒状部43は、端子装着孔18と正極端子30の軸部33との間に位置している。筒状部43は、端子装着孔18と軸部33とを絶縁している。突出部44は、
図5に示すように、長辺方向Yにおいて、第2フランジ部42よりも封口板14の中央側に設けられている。突出部44は、第2フランジ部42の長辺方向Yの一方の端部(
図5の右端部)から上下方向Zの下方に向けて延びている。突出部44は、電極体20の湾曲部と対向し得る。これにより、二次電池100の使用時において、振動や衝撃が加わって電極体20が多少移動したとしても、封口板14と直接接触することを抑制することができる。
【0038】
ここに開示される蓄電デバイスでは、
図4に示すように、封口板14と集電端子(正極端子30および負極端子35)と絶縁部材40とが一体成型された集電端子-封口板組立体14Aを備えている。ところで、このような集電端子-封口板組立体は、接合強度が所定の基準を満たすようそれぞれの部材が設計され、集電端子と封口板とが強固に接合されることが一般的である。このため、封口板と集電端子と絶縁部材とが一体成型された部分は、見かけの剛性が急激に高くなる傾向にある。一方で、一体成型に関与していない部分(例えば、溶接部)は、相対的に剛性が低くなっている。蓄電デバイスにおいて、このような剛性差が生じている場合、ケース内部に何らかの応力が生じた際に、剛性が高い部分(すなわち、一体成型されている部分)と剛性が低い部分(すなわち、溶接部)との境界では、剛性が低い部分に応力が集中するため、特に破断が生じやすい。
そこで、ここに開示される蓄電デバイスは、封口板14と集電端子と絶縁部材40とが一体成型されており、封口板14および集電端子は、0.2%耐力と破断伸びとが所定の関係を満たす材料から構成されている。これにより、集電端子-封口板組立体14Aの強度を一定以上確保しつつ、封口板14と集電端子と絶縁部材40とが一体成型されている部分の見かけの剛性が急激に上昇することを抑制することができる。このため、剛性が低い部分に応力が集中することを緩和し、蓄電デバイスの破断強度を好適に向上させることができる。
【0039】
金属材料では、一般的に耐力と破断伸びとが背反の関係にある。ここに開示される蓄電デバイスでは、封口板14は、0.2%耐力が高く、破断伸びが低い材料から構成され、集電端子は、相対的に0.2%耐力が低く、破断伸びが高い材料から構成される。すなわち、封口板14は、硬くて変形し難い材料から構成される一方で、集電端子は、柔らかく変形しやすい材料から構成されている。具体的に、封口板14は、耐力Aが95N/mm2~350N/mm2であり、破断伸びXが4%~27%である材料から構成されている。集電端子は、耐力Bが25N/mm2~200N/mm2であり、破断伸びYが20%~45%である材料から構成されている。そして、耐力Aに対する耐力Bの比(B/A)は、0.08~0.8であり、破断伸びXに対する破断伸びYの比(Y/X)は、1.1~10.8である。これにより、集電端子-封口板組立体14Aが所定の強度を確保しつつ、剛性が急激に高くなることを抑制することができる。
【0040】
封口板14は、0.2%耐力と破断伸びとが上記した範囲を満たす金属材料によって構成されている限り、特に限定されない。封口板14は、集電端子-封口板組立体14Aの所定の強度を確保する部材である。封口板14は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、鉄、鉄合金等から構成されているとよい。より具体的には、封口板14は、フェライト系ステンレス鋼、Al-Mn系合金(例えば、A3003)、Al-Fe系合金から構成されていることが好ましい。上記した耐力と破断伸びとは、構成元素が同じであったとしても、調質(加工や熱処理)によって変化するものである。具体的に例えば、封口板14は、Al-Mn系合金であって、加工硬化が施されたH材(例えば、A3003―H18材)から構成されることが好ましい。
【0041】
封口板14を構成する金属材料の耐力Aは、集電端子-封口板組立体14Aの強度を確保する観点から、95N/mm2以上であって、125N/mm2以上であってもよく、145N/mm2以上であってもよい。一方で、耐力が高くなりすぎる場合には、破断伸びが低くなりすぎるため、封口板14が変形し難くなり、一体成型される部分の剛性が過度に高くなる。かかる観点から、耐力Aの上限は、350N/mm2以下であって、275N/mm2以下であることが好ましく、200N/mm2以下あることがより好ましく、185N/mm2以下であってもよい。ここに開示される蓄電デバイスでは、封口板14は集電端子および絶縁部材40と一体成型されるため、耐力が上記した範囲を満たす材料から構成されていることにより、集電端子-封口板組立体14Aの強度を十分に確保することができる。
【0042】
封口板14を構成する金属材料の破断伸びXは、一体成型される部分の剛性を低くする観点から、少なくとも4%以上である。破断伸びXは、剛性を低くする観点からはより高いことが好ましいが、集電端子-封口板組立体14Aの強度を十分に確保する観点からは、27%以下である。封口板14の破断伸びXは、4%~27%であって、例えば4%~22%であることが好ましく、4%~10%であってもよい。
【0043】
集電端子は、耐力と破断伸びとが上記した範囲を満たす金属材料から構成されている限り、特に限定されない。集電端子は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等から構成される。より具体的には、正極端子30は、純アルミニウムから構成されることが好ましい。負極端子35は、タフピッチ銅や無酸素銅などの純銅または純アルミニウムから構成されることが好ましい。上記したとおり、耐力と破断伸びとは、構成元素が同じであったとしても、調質によって変化するものである。具体的に例えば、正極端子30は、純アルミニウムであって、焼きなましが施されたO材(例えば、A1050-O材)から構成されることが好ましい。負極端子35は、純アルミニウまたはタフピッチ銅であって、焼きなましが施されたO材(例えば、A1050-O材またはC1100-O材)から構成されることが好ましい。なお、本明細書において、「純アルミニウム」とは、構成元素の99%以上がAlであるものをいう。
【0044】
集電端子を構成する材料の耐力Bは、低すぎる場合には、集電端子が所定の強度を確保することができないため好ましくない。かかる観点から、耐力Bは、少なくとも25N/mm2以上であって、30N/mm2以上であることが好ましい。一方で、耐力Bが高すぎる場合には、破断伸びが小さくなる傾向にあり、封口板14と絶縁部材40と一体成型されている部分の剛性が急激に高くなる。そして、一体成型される部分と一体成型されていない部分との剛性差が大きくなるため好ましくない。かかる観点からは、耐力Bは、200N/mm2以下であって、150N/mm2以下であることが好ましく、100N/mm2以下あることがより好ましく、70N/mm2以下であってもよい。なお、上記した範囲を満たす限りにおいて、正極端子30と負極端子35は、耐力Bが同じ材料から構成されていてもよいし、耐力Bが異なる材料から構成されていてもよい。
【0045】
集電端子を構成する金属材料の破断伸びYが高いことにより、集電端子が比較的変形しやすい性質を有する。このため、集電端子と封口板14と絶縁部材40とが一体成型された部分の剛性を好適に下げることができる。かかる観点からは、破断伸びYは20%以上であって、28%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましい。一体成型された部分の剛性を低減する観点からは、破断伸びYはより高いことが好ましいが、集電端子の強度を一定以上確保する観点からは、45%以下である。破断伸びYは、43%以下であることが好ましく、40%以下であってもよい。なお、上記した範囲を満たす限りにおいて、正極端子30と負極端子35は、破断伸びYが同じ材料から構成されていてもよいし、破断伸びYが異なる材料から構成されていてもよい。
【0046】
ここに開示される蓄電デバイスでは、上記した耐力Aと耐力Bとが所定の関係を満たすよう調整されていることにより、一体成型されている部分の見かけの剛性が過度に高くなることを抑制する。かかる観点からは、耐力Aに対する耐力Bの比(B/A)は、0.8以下であって、0.66以下であることが好ましく、0.38以下であることがより好ましい。一方で、耐力Aに対する耐力Bの比が小さすぎる場合には、封口板14と集電端子との間に剛性差が生じる虞があるため好ましくない。かかる観点からは、耐力Aに対する耐力Bの比(B/A)は、0.08以上であって、0.1以上であってもよく、0.24以上であることが好ましい。なお、正極端子30と負極端子35において耐力Bが異なる材料からそれぞれ構成されている場合には、耐力Aと正極端子30を構成する材料の耐力Bとの関係、および、耐力Aと負極端子35を構成する材料の耐力Bとの関係が、それぞれ、上記した範囲を満たすように調整されていればよい。
【0047】
また、ここに開示される蓄電デバイスでは、上記した破断伸びXと破断伸びYとが所定の関係を満たすように調整されていることにより、一体成型されている部分の見かけの剛性を好適に低減することができる。かかる観点からは、破断伸びXに対する破断伸びYの比(Y/X)は、1.1以上であって、1.29以上であることが好ましく、1.59以上であることがより好ましい。破断伸びXに対する破断伸びYの比が大きすぎる場合には、封口板14と集電端子との間に剛性差が生じる虞があるため好ましくない。かかる観点からは、破断伸びXに対する破断伸びYの比(Y/X)は、10.8以下であって、8.8以下であってもよく、7以下であってもよく、4.3以下であってもよい。なお、正極端子30と負極端子35において破断伸びYが異なる材料で構成されている場合には、破断伸びXと正極端子30を構成する材料の破断伸びYとの関係、および、破断伸びXと負極端子35を構成する材料の破断伸びYとの関係が、それぞれ、上記した範囲を満たすように調整されていればよい。
【0048】
上記した耐力Aと耐力B、および、破断伸びXと破断伸びYが所定の関係を満たす材料の組み合わせとしては、例えば、封口板14がフェライト系ステンレス鋼(耐力A:275N/mm2~350N/mm2、破断伸び:27%~30%)から構成され、正極端子30が純アルミニウム(耐力B:30N/mm2~35N/mm2、破断伸びY:35%~43%)から構成され、負極端子35がタフピッチ銅(耐力B:195N/mm2、破断伸びY:35%)から構成されるとよい。また、封口板14がAl-Mn系合金(耐力A:125N/mm2~185N/mm2、破断伸び:4%~10%)から構成され、集電端子(正極端子30および負極端子35)が上記した純アルミニウムから構成されるとよい。
【0049】
特に限定されるものではないが、集電端子を構成する材料のヤング率は、封口板14を構成する材料のヤング率よりも小さいことが好ましい。ヤング率は、値が高いほど変形し難い材料であると言える。したがって、集電端子は、封口板14よりも変形しやすい材料で構成されている。集電端子を構成する材料のヤング率は、封口板14を構成する材料のヤング率の半分以下であってもよく、1/10以下であってもよい。
【0050】
図5に示すように、集電端子-封口板組立体14Aにおいて、封口板14および/または集電端子のうち少なくとも一部の表面には、粗面化処理された粗化エリア30rが設けられていることが好ましい。粗面化処理は、表面に凹凸を形成することによって表面積を大きくするとともにアンカー効果を高め、絶縁部材40と封口板14との接合性や密着性を向上させる表面処理である。したがって、粗化エリア30rは、その周囲よりも凹凸が多いエリアである。
【0051】
特に限定されるものではないが、集電端子の表面であって、絶縁部材40と接する表面の少なくとも一部には、粗化エリア30rが設けられているとよい。これにより、集電端子と絶縁部材40との気密性が好適に向上する。粗化エリア30rは、集電端子の封口板外面側31に設けられていてもよいし、封口板内面側32に設けられていてもよいし、軸部33に設けられていてもよいし、封口板外面側31、封口板内面側32および軸部33の絶縁部材40と接する表面の全てに設けられていてもよい。粗化エリア30rが設けられている箇所は、上記したとおり、アンカー効果が発揮されて、特に剛性が高くなる傾向にある。したがって、集電端子の絶縁部材40と接する表面の少なくとも一部に粗化エリア30rが設けられている場合、封口板14と集電端子の耐力および破断強度を上記した範囲に調整されることの効果がより一層発揮され得る。
【0052】
特に限定されないが、粗化エリア30rは、封口板14に設けられていてもよい。粗化エリア30rは、例えば、封口板14の表面であって、絶縁部材40と接する表面のうち、少なくとも一部に設けられていることが好ましい。これにより、さらに封口板14と集電端子と絶縁部材40との気密性が向上し得る。
【0053】
<蓄電デバイスの製造方法>
以下、ここで開示される蓄電デバイスの製造方法の好適な一実施形態として、リチウムイオン二次電池を例にして説明するが、適用対象をかかる電池に限定することを意図したものではない。
【0054】
上記したような二次電池100は、封口板14、正極端子30、負極端子35およびその他必要な部材を用意する工程と、封口板14と集電端子とを一体成型する工程と、一体成型された集電端子-封口板組立体14Aとケース本体12とを組み立てる工程と、を含み得る。なお、任意の段階でさらに他の工程を含んでいてもよい。
【0055】
用意工程では、封口板14と、正極端子30と、負極端子35と、電極体20と、を用意する。封口板14、正極端子30および負極端子35は、0.2%耐力と破断伸びとが上記した範囲を満たす材料から構成されるものを用意する。また、正極端子30および負極端子35は、ケース本体12の内部に配置される側の端部が、端子装着孔18、19を挿通可能に構成されているものを用意する。
【0056】
電極体20は、公知方法に従って作製することができる。
図3に示すように、電極体20が巻回電極体である場合、かかる巻回電極体は、例えば次のようにして準備することができる。まず、帯状の正極シート22と帯状の負極シート24とを、2枚の帯状のセパレータ26によって絶縁された状態となるように積層する。このとき、正極シート22の正極タブ22tと負極シート24の負極タブ24tとが、2枚のセパレータ26の長辺方向Yの端部から、それぞれ反対方向にはみ出すように重ね合わせる。次いで、用意した積層体を、巻回軸を中心として長手方向に巻回する。積層体の巻回は、公知方法に従って実施することができる。巻回した積層体をプレス処理して、扁平形状の巻回電極体を作製する。このプレス処理は、一般的な扁平形状の巻回電極体の製造に用いられる公知のプレス装置を用いて実施すればよく、特に限定されない。このようにして、電極体20を用意することができる。
【0057】
図6は、成形金型120を模式的に示す図である。一体成型工程では、インサート成型することによって、封口板14と集電端子とを一体化して集電端子-封口板組立体14Aを作製する。インサート成型は、従来公知の方法に従って行うことができる。具体的に、インサート成型は、
図6に示すような下型121と上型122とを有する成形金型120を用いて、部品セット工程、位置決め工程、上型セット工程、射出成形工程、上型リリース工程、および部品取出工程、を含む方法によって作製できる。
【0058】
部品セット工程では、成形金型120に封口板14と集電端子とを装着する。まず、封口板14の端子装着孔18に集電端子を挿通する。集電端子は、上記したように、封口板内面側32が端子装着孔18に挿通可能な大きさに構成されている。このため、集電端子は、封口板内面側32から2つの端子装着孔18にそれぞれ挿通される。そして、2つの端子装着孔18にそれぞれ集電端子が挿通された封口板14を、下型121の凹部121aに装着する。
【0059】
位置決め工程では、封口板14と集電端子との位置決めが実施される。下型121に封口板14と集電端子とを装着した後、例えばスイッチ押下等の所定の操作を行うと、位置決め工程が開始される。具体的には、スイッチ押下等の所定の操作によって、後方側に退避していたスライド部材123aおよび123bが前方側に移動する。そして、スライド部材123aおよび123bによって、それぞれの集電端子が挟まれる。集電端子は、スライド部材123aおよび123bによって支持され、所望する位置に配置される。
【0060】
上型セット工程では、下型121にセットされた封口板14と集電端子とを上下方向Zに挟むように、上型122をセットする。上型122は、図示は省略するが、下型121と当接するシール部と、樹脂を供給する樹脂供給部と、供給された樹脂が流れ込む凹部と、を有し得る。上型122の凹部は、封口板14と集電端子とを挟んで下型121の凹部121aと対向するように配置される。
【0061】
射出成型工程では、樹脂供給部から樹脂を供給(射出)して、封口板14と集電端子とを一体成型する。射出成型工程では、まず、成形金型120を加熱する。加熱温度は樹脂の種類によって異なるため、特に限定されないが、例えば100℃~200℃程度であってよい。成形金型120の加熱が完了すると、樹脂供給部から溶融樹脂が供給される。このとき、供給される樹脂は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポロエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド(PAI)等の合成樹脂であることが好ましい。これにより、より強硬な一体成型部を形成することができる。供給された樹脂は上型122の凹部に充填され、さらに端子装着孔18を通って下型121の凹部121aに充填される。その後、成形金型120と成型品とが冷却される。これにより、封口板14と集電端子とを一体成型することができる。
【0062】
上型リリース工程では、上型122が上昇し下型121から離間する。その後、部品取出工程では、成型品が下型121から取り外される。これにより、集電端子と封口板14とが一体に成型された集電端子-封口板組立体14Aを作製することができる。なお、部品取出工程の後に成型の際にできたバリを除去する工程があってもよい。
【0063】
組立工程では、上記用意した電極体20をケース本体12の内部に収容した状態で、集電端子-封口板組立体14Aをケース本体12に取り付け、封口する。具体的には、まず、電極体20の正極タブ群23と正極集電体50の第2集電部52とを接続し、電極体20の負極タブ群25と負極集電体60の第2集電部62とを接続する。次いで、集電端子-封口板組立体14Aの正極端子30に正極集電体50の第1集電部51を取り付け、負極端子35に負極集電体60の第1集電部61を取り付ける。そして、正極集電体50の第1集電部51と第2集電部52とを接続し、負極集電体60の第1集電部61と第2集電部62とを接続する。これによって、集電端子-封口板組立体14Aと電極体20とを接続することができる。集電端子-封口板組立体14Aに取り付けられた電極体20を、ケース本体12の開口部12hから挿入する。このとき、電極体20の巻回軸WLが底面12aに沿った向き(すなわち、巻回軸WLが長辺方向Yと平行になる向き)でケース本体12の内部に配置されるように、挿入するとよい。電極体20がケース本体12の内部に収容された状態で、集電端子-封口板組立体14Aとケース本体12の開口部12hの周縁とをレーザ溶接等によって接合する。そして、注液孔15から電解液を注入し、該注液孔15を封止部材16で塞ぐことによって、二次電池100を密閉する。以上のようにして、二次電池100を製造することができる。
【0064】
<電池の用途>
上述した蓄電デバイスは各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。かかる蓄電デバイスは、当該蓄電デバイスを所定の配列方向に複数個並べて、配列方向に沿って拘束機構で荷重を加えてなる形態(例えば、リチウムイオン二次電池を所定の方向に複数個並べた組電池)としても好適に用いることができる。
【0065】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 ケース(電池ケース)
12 ケース本体
12a 底面
12b 長側壁
12c 短側壁
12h 開口部
13 溶接部
14 封口板
14a 内面
14A 集電端子-封口板組立体
14b 外面
15 注液孔
16 封止部材
17 ガス排出弁
18 端子装着孔
18a 周縁
19 端子装着孔
20 電極体
22 正極(正極シート)
22a 正極活物質層
22c 正極芯体
22p 正極保護層
22t 正極タブ
23 正極タブ群
24 負極(負極シート)
24a 負極活物質層
24c 負極芯体
24t 負極タブ
25 負極タブ群
26 セパレータ
30 正極端子
30r 粗化エリア
31 封口板外面側
32 封口板内面側
33 軸部
35 負極端子
40 絶縁部材
40h 貫通孔
41 第1フランジ部
42 第2フランジ部
43 筒状部
44 突出部
50 正極集電体
51 第1集電部
52 第2集電部
60 負極集電体
61 第1集電部
62 第2集電部
100 二次電池
120 成形金型
121 下型
121a 凹部
122 上型
123a スライド部材
123b スライド部材