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特開2024-123721シリカ質コーティング層形成用シリカ質混合液
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  • 特開-シリカ質コーティング層形成用シリカ質混合液 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123721
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】シリカ質コーティング層形成用シリカ質混合液
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/05 20060101AFI20240905BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20240905BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20240905BHJP
【FI】
C09D183/05
C09D7/62
C09D7/20
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031355
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】521089823
【氏名又は名称】株式会社トラディショナルインテリジェンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 泰雄
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DL041
4J038HA446
4J038JC32
4J038KA06
4J038MA07
4J038PB08
4J038PB09
(57)【要約】
【課題】シリカ微粒子と、Siに結合する側鎖が水素のみのシリコン樹脂と、の混合液であって、粘度安定性に優れるシリカ質コーティング層形成用シリカ質混合液を提供する。
【解決手段】本発明のシリカ質コーティング層形成用シリカ質混合液は、メチル基、エチル基、ビニル基、メタクリロキシ基またはアクリロキシ基を有する1種以上のシランカップリング剤で表面修飾した一次粒子径が100nm以下のシリカ微粒子と、水素化ポリシロキサン、水素化ポリシラザンまたは水素化ポリシロキサザンと、を有機溶剤中で混合したものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチル基、エチル基、ビニル基、メタクリロキシ基またはアクリロキシ基を有する1種以上のシランカップリング剤で表面修飾した一次粒子径が100nm以下のシリカ微粒子と、水素化ポリシロキサン、水素化ポリシラザンまたは水素化ポリシロキサザンと、を有機溶剤中で混合したシリカ質コーティング層形成用シリカ質混合液。
【請求項2】
前記シランカップリング剤の量が前記シリカ微粒子の量に対して、0.1wt%以上3wt%以下である請求項1に記載のシリカ質コーティング層形成用シリカ質混合液。
【請求項3】
前記シリカ微粒子の、前記水素化ポリシロキサン、前記水素化ポリシラザンまたは前記水素化ポリシロキサザンとの混合比率が、2wt%以上80wt%以下である請求項2に記載のシリカ質コーティング層形成用シリカ質混合液。
【請求項4】
前記有機溶剤が水分含有量0.03wt%以下である芳香族炭化水素類、飽和炭化水素類、エーテル類、エステル類またはケトン類から選ばれる単一または複数種類の溶媒から選択される化合物である請求項2又は3に記載のシリカ質コーティング層形成用シリカ質混合液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度安定性に優れるシリカ質コーティング層形成用シリカ質混合液に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカ質膜は、半導体や液晶などの電子デバイスの構成部材として、絶縁や保護などを目的として広く使用されている。
【0003】
シリカ質膜の形成方法の一つとして、溶剤に溶解されたゾルゲル液やシリコン樹脂などを基材に塗布し、加熱するウェット法が知られている。シリコン樹脂の一種である水素化ポリシラザンや水素化ポリシロキサンなどは、加熱反応により高純度のシリカ質膜に転換できることが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
また、形成されるシリカ質膜の耐熱性、気密封止性、耐久性、透明性確保などのため、シリカ質膜にシリカ微粒子を混合する手法が知られている(例えば、特許文献3、4、5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3212400号公報
【特許文献2】特開平5-243212号公報
【特許文献3】特開平6-240208号公報
【特許文献4】特開平8-325460号公報
【特許文献5】特許第7055294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
緻密性と均質性に優れるシリカ微粒子分散シリカ質膜をウェット法により得るための基本工程は次の通りである。
1.シリカ微粒子と、加熱するとシリカ質膜に転換するシリコン樹脂を均一混合する
2.混合液を基材に塗布し、加熱してシリコン樹脂をシリカ質へ転換する
【0007】
高密度のシリカ質膜を得るためには、できるだけ有機成分を含まないシリカ微粒子とシリコン樹脂を用いることが望ましい。例えば、水素化ポリシラザンや水素化ポリシロキサンなどは、Siに結合する側鎖が水素のみ(Si-H結合、すなわちメチル基などの有機基を含まない)のシリコン樹脂であるため、加熱後の分解や収縮が少なく、高密度のシリカ質膜が得られる。
【0008】
しかし、Si-H結合は、水やアルコールなどのOH基と容易に反応して、重合・ゲル化を起こす。一方で、シリカ微粒子表面にはOH基が残存する。そのため、シリカ微粒子と、Si-H結合する側鎖が水素のみのシリコン樹脂と、を混合すると、混合液の粘度安定性が悪くなる。
【0009】
本発明の目的は、シリカ微粒子と、Siに結合する側鎖が水素のみのシリコン樹脂と、の混合液であって、粘度安定性に優れるシリカ質コーティング層形成用シリカ質混合液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のシリカ質コーティング層形成用シリカ質混合液は、メチル基、エチル基、ビニル基、メタクリロキシ基またはアクリロキシ基を有する1種以上のシランカップリング剤で表面修飾した一次粒子径が100nm以下のシリカ微粒子と、水素化ポリシロキサン、水素化ポリシラザンまたは水素化ポリシロキサザンと、を有機溶剤中で混合したものである。
【0011】
シランカップリング剤の量は、シリカ微粒子の量に対して0.1wt%以上3wt%以下としてもよい。
【0012】
シリカ微粒子の、水素化ポリシロキサン、水素化ポリシラザンまたは水素化ポリシロキサザンとの混合比率は、2wt%以上80wt%以下としてもよい。
【0013】
有機溶剤は、水分含有量0.03wt%以下である芳香族炭化水素類、飽和炭化水素類、エーテル類、エステル類またはケトン類から選ばれる単一または複数種類の溶媒から選択される化合物としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シリカ微粒子と、Siに結合する側鎖が水素のみのシリコン樹脂と、の混合液であって、粘度安定性に優れるシリカ質コーティング層形成用シリカ質混合液を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】それぞれの実施例及び比較例の、構成及び実施結果の一覧表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のシリカ質コーティング層形成用シリカ質混合液は、表面修飾を行ったシリカ微粒子を有機溶剤に混合したものと、Siに結合する側鎖が水素のみのシリコン樹脂である水素化ポリシロキサン、水素化ポリシラザン又は水素化ポリシロキサザンを有機溶剤に溶解したものと、を混合することにより得られる。
【0017】
シリカ微粒子は、一次粒子径が100nm以下のものが好適である。
【0018】
シリカ微粒子の表面修飾は、メチル基、エチル基、ビニル基、メタクリロキシ基又はアクリロキシ基を有する1種以上のシランカップリング剤により行う。
【0019】
シリカ微粒子を表面修飾するシランカップリング剤の量は、シリカ微粒子の量に対して0.1wt%以上3wt%以下とするのが望ましく、0.2wt%以上2.5wt%以下とすることがより望ましい。0.1wt%未満であると、混合液調整後の粘度安定性が悪くなる。これは、樹脂の分子量上昇速度が速いためと考えられる。一方で、3wt%を超えると、形成されたシリカ質コーティング層に含有される有機成分量が増加してシリカ質コーティング層の密度が低下する。
【0020】
有機溶剤は、水分含有量が0.03wt%以下である、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘキセン、オクタン等の飽和炭化水素類、ブチルエーテル、アミルエーテル、アニソール等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類から選ばれる単一または複数種類の溶剤から選択される化合物が好適である。水分含有量が0.03wt%を超えると、混合液調整後の粘度安定性が悪化する。これも、樹脂の分子量上昇速度が速いためと考えられる。そのため、用意した有機溶剤の水分含有量が0.03wt%を超える場合、脱水処理で水分含有量を0.03wt%以下とした上で混合に用いるとよい。
【0021】
表面修飾を行ったシリカ微粒子の、水素化ポリシロキサン、水素化ポリシラザン又は水素化ポリシロキサザンとの混合比率は、2wt%以上80wt%以下(すなわち、水素化ポリシロキサン、水素化ポリシラザン又は水素化ポリシロキサザンの混合比率として20wt%以上98wt%以下)とするのが望ましい。さらに、5wt%以上72wt%以下とすることがより望ましい。シリカ微粒子の混合比率が2wt%未満の場合、混合液を基板に塗布し加熱するとクラックが生じやすくなる。これは、内部応力によると考えられる。また、シリカ微粒子の混合比率が80wt%を超える場合、加熱後の膜密度が低くなる。これは、シリカ微粒子間を空隙なく埋めるマトリックスとして働くシリコン樹脂の量が不十分なためと考えられる。
【0022】
以上のように調整したシリカ質コーティング層形成用シリカ質混合液によれば、シリカ微粒子と、Siに結合する側鎖が水素のみのシリコン樹脂と、の混合液であって、粘度安定性に優れるシリカ質コーティング層形成用シリカ質混合液を提供することができる。
【実施例0023】
<各実施例の構成要素の説明>
実施例の説明に先立ち、各実施例の構成要素となる、シリカ微粒子の表面修飾方法、ポリマー(水素化ポリシロキサン、水素化ポリシラザン及び水素化ポリシロキサザン)の合成方法、シリカ微粒子とシリコン樹脂との混合方法、及び実施結果の評価方法について説明する。
【0024】
・シリカ微粒子の表面修飾方法(A1)
撹拌機、加熱装置を備えた容量1Lのガラス製反応器に、シリカ微粒子の材料としてコロイダルシリカ(日産化学工業社製スノーテックスOS:平均粒径10nm、固形分濃度20%)を室温下で300gを撹拌しながら注入し、更にイソプロパノール200gを注入した。これに、シランカップリング剤である3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM-503)3gを注入し、40℃に加熱して60時間保持した。
シリカ微粒子の粒径は、製膜後の断面電子顕微鏡(SEM)観察にて3nm~25nmの範囲であることを確認した。
室温まで放冷した後、35%塩酸(本田薬品社製)20gを注入してシリカ微粒子を沈殿させ、これをガラスフィルター(P16グレード)で濾過し、続いて、濾過残渣を純水でよく洗浄した。更にこれを100℃の真空乾燥機で十分に乾燥させた。
【0025】
・表面修飾量の算出
表面修飾方法(A1)により得られた、表面修飾後のシリカ微粒子10gを、モレキュラーシーブ4Aで乾燥させたメチルエチルケトン(水分量0.02%)40gと混合し、超音波分散した。これにCDClを加えて、H-NMR(400MHz)を測定した。ケミカルシフト1.06ppm(メチルエチルケトンのエチル基-CHCH)とケミカルシフト5.5ppm及び6.1ppm(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランのアクリル基の=CH)に帰属されるピーク積分値より、シリカ微粒子に対する表面修飾量を計算した結果、2.5wt%であった。
【0026】
・シリカ微粒子の表面修飾方法(A2)
表面修飾方法(A1)のうち、シリカ微粒子の材料としてコロイダルシリカ(日産化学工業社製スノーテックスOL:平均粒径50nm、固形分濃度20%)を使用した以外は、表面修飾方法(A1)と同様の方法で生成物を得た。表面修飾量の算出も同様の方法で行い、計算結果は1.6wt%であった。
シリカ微粒子の粒径は、製膜後の断面電子顕微鏡(SEM)観察にて25nmから95nmの範囲であることを確認した。
【0027】
・シリカ微粒子の表面修飾方法(A3)
表面修飾方法(A1)のうち、シランカップリング剤としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM-1003)を使用した以外は、表面修飾方法(A1)と同様の方法で生成物を得た。表面修飾量の算出は、シランカップリング剤の帰属をケミカルシフト5.8から6.1ppm(ビニルトリメトキシシランのビニル基の-CH=CH2)とした以外は、表面修飾方法(A1)と同様の方法で行い、計算結果は0.7wt%であった。
【0028】
・シリカ微粒子の表面修飾方法(A4)
表面修飾方法(A1)のうち、シランカップリング剤としてメチルトリメトキシシラン(東京化成工業社製M0660)を使用した以外は、表面修飾方法(A1)と同様の方法で生成物を得た。表面修飾量の算出は、シランカップリング剤の帰属をケミカルシフト0.1ppm(メチルトリメトキシシランのメチル基のプロトン)とした以外は、表面修飾方法(A1)と同様の方法で行い、計算結果は0.2wt%であった。
【0029】
・シリカ微粒子の表面修飾方法(B1)
表面修飾方法(A1)のうち、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM-503)の注入量を12gとした以外は、表面修飾方法(A1)と同様の方法で生成物を得た。表面修飾量の算出も、表面修飾方法(A1)と同様の方法で行い、計算結果は3.8wt%であった。
【0030】
・シリカ微粒子の表面修飾方法(B2)
表面修飾方法(A1)のうち、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM-503)の注入量を0.5gとした以外は、表面修飾方法(A1)と同様の方法で生成物を得た。表面修飾量の算出も、表面修飾方法(A1)と同様の方法で行い、計算結果は0.05wt%であった。
【0031】
・水素化ポリシラザンの合成方法
撹拌機、冷却装置を備えた容量2LのSUS316製反応器を乾燥窒素により十分に乾燥させた後、乾燥ピリジン1500gを入れて、撹拌しながら0℃に冷却した。これに、ジクロロシラン120gを1時間かけて加え、ピリジンとジクロロシラン錯体を形成した。引き続き温度を0℃に維持しつつ、撹拌しながら乾燥アンモニア120gを5時間かけて注入した。反応終了後、乾燥窒素雰囲気下でスラリー状生成物を濾過精度100μmのSUS316製フィルターで濾別して、濾液1100gを得た。これをロータリーエバポレーターで減圧留去すると、粘性樹脂状生成物30gが得られた。得られた生成物の数平均分子量をGPCにより測定したところ、標準ポリスチレン換算で1200であった。これをFTIRスペクトル測定した結果、波数3350cm-1、1175cm-1のNHに基づく吸収、及び2170cm-1の、1000~800cm-1のSiHに基づく吸収が確認された。
【0032】
・水素化ポリシロキサザンの合成方法
撹拌機、冷却装置を備えた容量2LのSUS316製反応器を乾燥窒素により十分に乾燥させた後、乾燥ピリジン1500gを入れて、撹拌しながら0℃に冷却した。これに、ジクロロシラン120gを1時間かけて加え、ピリジンとジクロロシラン錯体を形成した。引き続き温度を0℃に維持しつつ、撹拌しながら純水5.5gと乾燥ピリジン200gの混合液を1時間かけて注入し、更にこれに引き続き、乾燥アンモニア80gを4時間かけて注入した。反応終了後、乾燥窒素雰囲気下でスラリー状生成物を濾過精度100μmのSUS316製フィルターで濾別して、濾液1200gを得た。これをロータリーエバポレーターで減圧留去すると、粘性樹脂状生成物27gが得られた。得られた生成物の数平均分子量をGPCにより測定したところ、標準ポリスチレン換算で1100であった。これをFTIRスペクトル測定した結果、波数3350cm-1、1175cm-1のNHに基づく吸収、2170cm-1の、1000~800cm-1のSiHに基づく吸収、及び1080cm-1のSiOに基づく吸収が確認された。
【0033】
・表面修飾を行ったシリカ微粒子と、水素化ポリシロキサン、水素化ポリシラザン又は水素化ポリシロキサザンと、の混合方法(M1)
混合に用いる有機溶剤、一例としてメチルイソブチルケトンに、250℃で乾燥させたモレキュラーシーブ4Aを室温下で投入し、72時間放置して脱水処理を行った。脱水処理後の有機溶剤の水分量が0.03wt%(300ppm)以下であることをカールフィッシャー水分計により確認した後、当該有機溶剤を、撹拌機を備え、乾燥窒素により十分に乾燥させたSUS316製容器に注入した。以上の操作は、窒素ボックス内で実施した。当該有機溶剤が注入された容器に、表面修飾を行ったシリカ微粒子を濃度20wt%になるように室温下で注入して混合し、十分に撹拌する。
また別途、同様の方法で乾燥した有機溶剤を別のSUS316製容器に注入し、窒素ボックス内で、当該有機溶剤が注入された容器に、水素化ポリシロキサン、水素化ポリシラザン又は水素化ポリシロキサザンを濃度20wt%になるように室温下で注入し混合して溶解させ、十分に撹拌する。
続いて、表面修飾を行ったシリカ微粒子を混合した有機溶剤と、水素化ポリシロキサン、水素化ポリシラザン又は水素化ポリシロキサザンが溶解された有機溶剤を、乾燥窒素で十分に乾燥させた新たなSUS316製容器に、室温下で撹拌しながら注入する。なお、表面修飾を行ったシリカ微粒子を混合した有機溶剤と、水素化ポリシロキサン、水素化ポリシラザン又は水素化ポリシロキサザンが溶解された有機溶剤の混合比率は、条件によって調節する。
【0034】
・表面修飾を行ったシリカ微粒子と、水素化ポリシロキサン、水素化ポリシラザン又は水素化ポリシロキサザンと、の混合方法(M2)
混合に用いる有機溶剤の脱水処理を行わない以外は、混合方法(M1)と同様の方法で混合した。なお、一例として脱水処理を行わなかったメチルイソブチルケトンの水分量は、カールフィッシャー水分計にて0.05wt%以上であった。
【0035】
・表面修飾を行ったシリカ微粒子と、水素化ポリシロキサン、水素化ポリシラザン又は水素化ポリシロキサザンのそれぞれと、を混合した各混合液の保存安定性評価方法
各混合液を注射器で3cc分取し、アドバンテック社ディスポフィルター(25mm径、濾過精度1μm)を用いて濾過する。そして、濾過後の混合液の粘度を、振動式粘度計(セコニック社製VM-10A)を用いて測定した。
また別途、各混合液を窒素雰囲気中、室温で1時間放置した上で、注射器で3cc分取し、アドバンテック社ディスポフィルター(25mm径、濾過精度1μm)を用いて濾過する。そして、濾過後の混合液の粘度を、振動式粘度計(セコニック社製VM-10A)を用いて測定した。
【0036】
・表面修飾を行ったシリカ微粒子と、水素化ポリシロキサン、水素化ポリシラザン又は水素化ポリシロキサザンのそれぞれと、を混合した各混合液を用いて形成した薄膜の評価方法
各混合液を注射器で3cc分取し、アドバンテック社ディスポフィルター(25mm径、濾過精度1μm)を用いて濾過する。そして、濾過後の混合液を8インチシリコンウェハーにメイン回転数800~1500rpmの範囲でスピンコートした。続いて、塗布したシリコンウェハーを120℃のホットプレートにより大気雰囲気中で2分間加熱して溶剤を飛散させ、更に、500℃のオーブンにより大気雰囲気中で90分間加熱してシリカ質膜に転換させる。オーブンを室温まで放冷した後、目視及び100倍の光学顕微鏡でクラックの有無を観察し、更にエリプソメーター(大塚電子社製FE-5000)を用いて膜厚を測定した(8ポイントの平均値)。また、このシリカ膜付きシリコンウェハーと混合液を塗布する前のシリコンウェハーの重量差と、塗布面積とから、シリカ質膜の密度を算出した。
【0037】
以上の構成要素を前提に、8つの実施例及び5つの比較例について、それぞれの構成及び実施結果を以下に示す。なお、図1は以下に示す内容を一覧表にまとめたものである。網掛け部分は、実施例1との実施条件の相違を示しており、太枠は問題のある実施結果を示している。
【0038】
<実施例1>
以下の条件にて混合液の調整を行った。
・シリカ微粒子の表面修飾方法:A1
・ポリマー:水素化ポリシラザン
・表面修飾後のシリカ微粒子とポリマーとの混合方法:M1
・混合に用いる有機溶剤:メチルイソブチルケトン
・表面修飾後のシリカ微粒子とポリマーとの混合比率:30対70(重量基準)
【0039】
評価結果
・混合液の保存安定性:濾過直後粘度1.4cP、1時間放置後粘度1.4cP
・混合液で形成した薄膜の評価:クラック無し、シリカ質膜の密度2.3g/cm
【0040】
<実施例2>
ポリマーを水素化ポリシロキサザンとした以外は、実施例1と同じ条件にて混合液の調整を行った。
【0041】
評価結果
・混合液の保存安定性:濾過直後粘度1.3cP、1時間放置後粘度1.4cP
・混合液で形成した薄膜の評価:クラック無し、シリカ質膜の密度2.2g/cm
【0042】
<実施例3>
シリカ微粒子の表面修飾方法をA2とした以外は、実施例1と同じ条件にて混合液の調整を行った。
【0043】
評価結果
・混合液の保存安定性:濾過直後粘度1.4cP、1時間放置後粘度1.4cP
・混合液で形成した薄膜の評価:クラック無し、シリカ質膜の密度2.3g/cm
【0044】
<実施例4>
シリカ微粒子の表面修飾方法をA3とした以外は、実施例1と同じ条件にて混合液の調整を行った。
【0045】
評価結果
・混合液の保存安定性:濾過直後粘度1.4cP、1時間放置後粘度1.4cP
・混合液で形成した薄膜の評価:クラック無し、シリカ質膜の密度2.3g/cm
【0046】
<実施例5>
シリカ微粒子の表面修飾方法をA4とした以外は、実施例1と同じ条件にて混合液の調整を行った。
【0047】
評価結果
・混合液の保存安定性:濾過直後粘度1.4cP、1時間放置後粘度1.5cP
・混合液で形成した薄膜の評価:クラック無し、シリカ質膜の密度2.3g/cm
【0048】
<実施例6>
表面修飾後のシリカ微粒子とポリマーとの混合比率を5対95とした以外は、実施例1と同じ条件にて混合液の調整を行った。
【0049】
評価結果
・混合液の保存安定性:濾過直後粘度1.3cP、1時間放置後粘度1.4cP
・混合液で形成した薄膜の評価:クラック無し、シリカ質膜の密度2.2g/cm
【0050】
<実施例7>
表面修飾後のシリカ微粒子とポリマーとの混合比率を72対28とした以外は、実施例1と同じ条件にて混合液の調整を行った。
【0051】
評価結果
・混合液の保存安定性:濾過直後粘度1.3cP、1時間放置後粘度1.4cP
・混合液で形成した薄膜の評価:クラック無し、シリカ質膜の密度2.4g/cm
【0052】
<実施例8>
混合に用いる有機溶剤をメチルエチルケトンとした以外は、実施例1と同じ条件にて混合液の調整を行った。
【0053】
評価結果
・混合液の保存安定性:濾過直後粘度1.3cP、1時間放置後粘度1.4cP
・混合液で形成した薄膜の評価:クラック無し、シリカ質膜の密度2.3g/cm
【0054】
<比較例1>
シリカ微粒子の表面修飾方法をB1とした以外は、実施例1と同じ条件にて混合液の調整を行った。
【0055】
評価結果
・混合液の保存安定性:濾過直後粘度1.3cP、1時間放置後粘度1.3cP
・混合液で形成した薄膜の評価:クラック無し、シリカ質膜の密度1.9g/cm
【0056】
<比較例2>
シリカ微粒子の表面修飾方法をB2とした以外は、実施例1と同じ条件にて混合液の調整を行った。
【0057】
評価結果
・混合液の保存安定性:濾過直後粘度1.4cP、1時間放置後粘度1.8cP
・混合液で形成した薄膜の評価:クラック有り、シリカ質膜の密度2.3g/cm
【0058】
<比較例3>
表面修飾後のシリカ微粒子とポリマーとの混合比率を1.5対98.5とした以外は、実施例1と同じ条件にて混合液の調整を行った。
【0059】
評価結果
・混合液の保存安定性:濾過直後粘度1.3cP、1時間放置後粘度1.4cP
・混合液で形成した薄膜の評価:クラック多数、シリカ質膜の密度は評価不能
【0060】
<比較例4>
表面修飾後のシリカ微粒子とポリマーとの混合比率を85対15とした以外は、実施例1と同じ条件にて混合液の調整を行った。
【0061】
評価結果
・混合液の保存安定性:濾過直後粘度1.5cP、1時間放置後粘度1.5cP
・混合液で形成した薄膜の評価:クラック無し、シリカ質膜の密度1.8g/cm
【0062】
<比較例5>
表面修飾後のシリカ微粒子とポリマーとの混合方法をM2とした以外は、実施例1と同じ条件にて混合液の調整を行った。
【0063】
評価結果
・混合液の保存安定性:フィルター詰まりによる濾過不能のため評価不能
・混合液で形成した薄膜の評価:濾液が得られなかったため評価不能
【0064】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。すなわち、本発明において表現されている技術的思想の範囲内で適宜変更が可能であり、その様な変更や改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含む。
図1