(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123730
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】目標識別装置および目標識別方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/86 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
G01S13/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031367
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 友之
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AC01
5J070AC13
5J070AE02
5J070AK15
5J070BB06
5J070BD06
5J070BD08
(57)【要約】
【課題】 複数の電波情報を効果的に組み合わせて目標を識別することの可能な目標識別装置を提供すること。
【解決手段】 実施形態によれば、目標識別装置は、データ入力部と、予測部と、判定部と、識別部とを具備する。データ入力部は、目標の位置に関する第1電波情報と、目標の方位に関する第2電波情報とを取得する。予測部は、第1電波情報から目標の予測航路を算出する。判定部は、第2電波情報から得られた方位情報と予測航路とを時間軸で照合して、予測航路に関する目標と方位情報に関する目標とが同一か否かを判定する。識別部は、予測航路に関する目標と方位情報に関する目標とが同一と判定された場合に、第1電波情報と第2電波情報とを統合的に分析して目標を識別する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標の位置に関する第1電波情報と、目標の方位に関する第2電波情報とを取得するデータ入力部と、
前記第1電波情報から目標の予測航路を算出する予測部と、
前記第2電波情報から得られた方位情報と前記予測航路とを時間軸で照合して、前記予測航路に関する目標と前記方位情報に関する目標とが同一か否かを判定する判定部と、
前記予測航路に関する目標と前記方位情報に関する目標とが同一と判定された場合に、前記第1電波情報と前記第2電波情報とを統合的に分析して前記目標を識別する識別部とを具備する、目標識別装置。
【請求項2】
前記第1電波情報は、アクティブレーダで取得される目標位置である、請求項1に記載の目標識別装置。
【請求項3】
前記第2電波情報は、パッシブレーダで取得されるエコー情報に基づく目標方位である、請求項1に記載の目標識別装置。
【請求項4】
前記第1電波情報は、画像データから算出される目標位置である、請求項1に記載の目標識別装置。
【請求項5】
目標識別装置のプロセッサにより実行される目標識別方法であって、
前記プロセッサが、目標の位置に関する第1電波情報と、目標の方位に関する第2電波情報とを取得し、
前記プロセッサが、前記第1電波情報から目標の予測航路を算出し、
前記プロセッサが、前記第2電波情報から得られた方位情報と前記予測航路とを時間軸で照合して、前記予測航路に関する目標と前記方位情報に関する目標とが同一か否かを判定し、
前記プロセッサが、前記予測航路に関する目標と前記方位情報に関する目標とが同一と判定された場合に、前記第1電波情報と前記第2電波情報とを統合的に分析して前記目標を識別する、目標識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、目標識別装置および目標識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航路予測装置は、例えば車輌、船舶、航空機、あるいはドローン等の移動する目標を特定し、移動軌跡を予測するために用いられてきた。目標は遠くにあることが多いので、電波情報(電磁波情報)が利用される。例えば、レーダ(アクティブ方式、パッシブ方式)で得られたビデオ信号は電波情報の一つといえるし、カメラ等で得られた赤外線画像、可視光画像などの画像情報も電波情報である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-49226号公報
【特許文献2】特開2000-214254号公報
【特許文献3】特開2007-193765号公報
【特許文献4】特開2020-67410号公報
【特許文献5】特開2022-117845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電波情報を用いて目標を識別したり、目標の将来の航路を予測する技術がある。しかし、同じ目標を、種別の異なる電波情報で同時に捕らえることは難しい。例えば、レーダで捕捉された船舶を同時刻にカメラで撮影できるとは限らない。このため既存の技術では、多様な電波情報のうちいずれかの電波情報を単独で用いるしかなかった。
【0005】
そこで、目的は、複数の電波情報を効果的に組み合わせて目標を識別することの可能な目標識別装置および目標識別方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、目標識別装置は、データ入力部と、予測部と、判定部と、識別部とを具備する。データ入力部は、目標の位置に関する第1電波情報と、目標の方位に関する第2電波情報とを取得する。予測部は、第1電波情報から目標の予測航路を算出する。判定部は、第2電波情報から得られた方位情報と予測航路とを時間軸で照合して、予測航路に関する目標と方位情報に関する目標とが同一か否かを判定する。識別部は、予測航路に関する目標と方位情報に関する目標とが同一と判定された場合に、第1電波情報と第2電波情報とを統合的に分析して目標を識別する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係わる目標識別装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される目標識別装置におけるデータの流れの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る目標識別装置100の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、表示部21に表示される目標情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[構成]
図1は、実施形態に係わる目標識別装置の一例を示す機能ブロック図である。目標識別装置100は、CPUやMPU等のプロセッサ10と、ストレージ30、ROM(Read Only Memory)40、RAM(Random Access Memory)50等の記憶部とを備えるコンピュータである。目標識別装置100は、さらに、光学メディアドライブ60、通信部80、および、表示部90を備える。
【0009】
ストレージ30は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの不揮発性記憶デバイスである。ストレージ30は、プロセッサ10により実行されるプログラム30aを記憶する。このプログラム30aは、例えば通信部80を介してサーバからダウンロードされ、ストレージ30にインストールされることができる。
【0010】
また、ストレージ30は、学習データベース13、および、予測データベース17を記憶する。
学習データベース13は、学習用データを保存するデータベースである。例えば、既に観測された履歴のある、目標の過去の航路(過去航路)を学習用データとして利用できる。ここで過去航路は、時系列で記録された目標の位置データである。目標の機種が既知であれば、併せて機種情報も学習データベース13に保存される。
【0011】
予測データベース17は、目標の将来の航路(予測航路)を予測するための予測用データを保存するデータベースである。
【0012】
ROM40は、BIOS(Basic Input Output System)やUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)などの基本プログラム、および各種の設定データ等を記憶する。RAM50は、ストレージ30からロードされたプログラムやデータを一時的に記憶する。
【0013】
光学メディアドライブ60は、CD-ROM70などの記録媒体に記録されたディジタルデータを読み取る。目標識別装置100で実行される各種プログラムは、例えばCD-ROM70に記録されて頒布される。このCD-ROM70に格納されたプログラムは光学メディアドライブ60により読み取られ、ストレージ30にインストールされる。
【0014】
通信部80は、通信機能を備え、他の装置(アクティブレータ、パッシブレーダなど)との通信を制御する。実施形態において、例えば、地上に設置されたレーダにより船舶の航路が取得され、その航路データが、通信部80を介して目標識別装置100に入力されることを考える。航路データは、時系列データとして目標識別装置100に入力される。
【0015】
ところで、プロセッサ10は、OS(Operating System)および各種のプログラムを実行する。また、プロセッサ10は、実施形態に係る処理機能として、データ入力部11、データ保存部12、機種情報付与部14、航路クラスタリング部15、予測データ保存部16、機種推定部18、航路推定部19、同一目標特定部20、および、表示部21を備える。
【0016】
これらの機能ブロックは、ストレージ30に記憶されたプログラム20aがRAM50にロードされ、当該プログラムの進行に伴ってプロセッサ10が計算処理を実行することで生成されるプロセスとして、理解され得る。つまりプログラム20aは、目標識別装置100を動作させるためのプログラムであって、コンピュータである目標識別装置100を、データ入力部11、データ保存部12、機種情報付与部14、航路クラスタリング部15、予測データ保存部16、機種推定部18、航路推定部19、同一目標特定部20、および、表示部21として動作させる。
【0017】
データ入力部11は、互いに種別の異なる複数のデータの入力を受け付ける。実施形態では、以下の3種類のデータを想定し、データ1、データ2、データ3と称して区別する。
【0018】
・データ1:航空画像やレーダ可視化画像などの画像情報。この種の電波情報により目標位置を算出することができる。画像の精細度によっては対象の機種を特定することも可能である。データ1は、第1電波情報の一例である。
【0019】
・データ2:電波情報のうち、対象の位置情報(緯度、経度)は取得できるが、機種が不明の情報。この種の電波情報として、アクティブレーダで取得される目標位置が挙げられる。データ2は、第1電波情報の一例である。
【0020】
・データ3:電波情報のうち、対象の機種は取得できるが、位置情報が不明の情報。ただし方位情報を取得することはできる。この種の電波情報として、パッシブレーダで取得される目標方位が挙げられる。受信したエコーの諸元を解析すれば対象の機種を特定することが可能である。データ3は、第2電波情報の一例である。
【0021】
入力された各種のデータを学習用として使用するか、予測用として使用するかは、目標識別装置100に予め設定することができる。データ入力部11は、この設定に従って、データ保存部12または予測データ保存部16にデータを渡す。
【0022】
データ保存部12は、学習用データを学習データベース13に保存する。
機種情報付与部14は、例えばユーザの手入力操作により、機種情報の無い学習用データに機種情報を付与する。
航路クラスタリング部15は、データ2について、類似の航路を持つデータをクラスタリングする。クラスタリングした結果は学習データベース13に登録される。
予測データ保存部16は、予測用データを予測データベース17に保存する。
機種推定部18は、予測用データのデータ1およびデータ2に関して、画像のパターンマッチング、ポイントのマッチングにより、機種の候補を推定し、予測データベース17の情報を上書きする。
【0023】
予測部としての航路推定部19は、第1電波情報から目標の予測航路を算出する。すなわち航路推定部19は、予測用データのデータ1およびデータ2に関して、画像のパターンマッチング、ポイントのマッチング、機種推定部18で推定した機種より、航路を推定し、予測データベース17の情報を上書きする。
【0024】
判定部としての同一目標特定部20は、第2電波情報から得られた方位情報と予測航路とを時間軸で照合して、予測航路に関する目標と方位情報に関する目標とが同一か否かを判定する。すなわち同一目標特定部20は、データ1とデータ2の予測値、およびデータ3を照合し、例えば互いの相関の強さをしきい値判定することで、データ1に関する目標と、データ2に関する目標と、データ3に関する目標とが同一の目標であるか否かをどうかを特定する。
【0025】
さらに、機種推定部18は、識別部としての機能を備える。すなわち機種推定部18は、予測航路に関する目標と方位情報に関する目標とが同一と判定された場合に、第1電波情報と第2電波情報とを統合的に分析して目標を識別する。
表示部21は、予測された航路、あるいは機種候補などの情報を視覚的に表示する。
【0026】
図2は、
図1に示される目標識別装置におけるデータの流れの一例を示す図である。データ入力部11に入力されたデータ1,2,3は、学習用、予測用に振り分けられる。学習用データはデータ保存部12により学習データベース13に渡される。さらに、ユーザにより与えられた機種情報が、機種情報付与部14により学習用データに付与される。学習用データが航路クラスタリング部15によりクラスタリングされ、グループ化される。機種情報を付与された学習用データ、および、グループ化された航路データのいずれも学習データベース13に渡され、保存される。
【0027】
予測用データは、データ入力部11から予測データ保存部16に渡されてバッファされたのち、機種推定部18と予測データベース17に送られる。機種推定部18は、与えられた予測用データから目標の機種を推定する。
【0028】
推定された機種は、航路推定部19に渡され、目標の機種に応じた航路が推定される。推定された航路は、表示部21に渡されて視覚的に表示される。次に、上記構成における作用を説明する。
【0029】
[作用]
図3は、実施形態に係る目標識別装置100の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図3のステップS11において、目標識別装置100は、データ入力を受け付ける。次に、目標識別装置100は、ステップS12において、入力されたデータが学習用の設定か、または予測用の設定であるかを読み込み、次の処理へ移る。学習用に設定されたデータであれば、目標識別装置100は、ステップS13において当該データを保存する設定か、または分類する設定のいずれであるかを読み込み、次の処理へ移る。保存の設定であれば、目標識別装置100は、ステップS14において、入力されたデータを学習データベース13に保存する。
【0030】
分類の設定であれば、目標識別装置100は、ステップS15において、学習データベース13から学習用データを読み出す。さらにステップS16において、読み出した学習用データに機種情報を付与する。次に、目標識別装置100は、ステップS17において、機種情報を付与された学習用データをクラスタリングし、ステップS18において、クラスタリングした結果を学習データベース13に保存する。
【0031】
一方、予測用に設定されたデータであれば(ステップS12)、目標識別装置100は、ステップS19において、入力されたデータを予測データベース17に保存する(ステップS20)。次に、目標識別装置100は、ステップS21において、入力されたデータがデータ1、データ2、あるいはデータ3のいずれであるかに応じて次の処理に移る。
【0032】
入力されたデータがデータ1、またはデータ2であれば、目標識別装置100は、ステップS22において、目標の機種を推定する。データ1であれば、学習用データベースとの画像マッチングにより機種の候補を推定する。データ2であれば、ポイントの距離マッチングによって機種の候補を推定する。さらに、目標識別装置100は、ステップS23において、目標の航路を推定する。目標の航路は、推定した機種、および入力されたデータ1またはデータ2の示す位置により、学習データベース13から取得した予測モデルに基づいて航路の候補を推定する。
【0033】
次に、目標識別装置100は、ステップS24において、入力されたデータが同一の目標であるか否かを特定する。つまり、データ1、データ2、データ3が同じ目標からもたらされたものか、または別々の目標からもたらされたものであるかを判定する。そして、目標識別装置100は、ステップS25において、同じ目標からのデータであると特定された予測航路、機種候補等を表示部21に表示する。ここで、表示部21は、予測データベース17に登録されているデータを表示する。
【0034】
図4は、表示部21に表示される目標情報の一例を示す図である。
図4に示される状況において、10:00のデータ1が入力されると、機種推定部18は機種A、B、Cを目標の機種の候補として算出する。また、航路推定部19は予測航路AおよびBを算出する。その後、10:35にデータ3が入力されたとする。そうすると、航路推定部19は、予測航路A、Bの機種候補と位置とを参照し、同一の目標であるか否かを判定する。
【0035】
図4においては、データ3が10:35に機種Bとして入力され、予測航路Aが機種Bを候補として持ち、10:30付近にデータ3がある。そこで、予測航路Aとデータ3は同一の目標からのものと結論付けることができる。さらに、機種Bを確定して、これらの結果に基づいて予測データベース17が更新される。
【0036】
[効果]
以上述べたように、実施形態では複数の電波情報を取得し、時間的に先行して入力された情報から目標の航路を予測し、次に入力された別種の(種別の異なる)電波情報を用いて、先んじて予測された航路、時刻、機種とのマッチングを行う。これにより、必ずしも同時刻に取得されるとは限らない電波情報を統合的に分析することが可能になる。つまり、それぞれの電波情報単体では特定できなかった機種や航路の特定が可能となる。ひいては、目標識別の精度を高めることが可能になる。
【0037】
また、予測航路とのマッチングを実施するため、各電波情報の取得時刻が離れていた場合でも同一の目標と特定することができる。さらに、予測航路、機種候補をリアルタイムに更新・表示することで最新の状況を確認することが可能となる。これらのことから、実施形態によれば、複数の電波情報を効果的に組み合わせて目標を識別することの可能な目標識別装置および目標識別方法を提供することが可能になる。
【0038】
実施形態において、コンピュータに関連して用いられるプロセッサという用語は、例えばCPU、MPU、GPU、或いは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、またはFPGA等の回路と理解され得る。
【0039】
プロセッサは、メモリに記憶されたプログラムを読み出し実行することで、プログラムに基づく特有の機能を実現する。また、メモリに代えて、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成することも可能である。このケースでは、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することでその機能を実現する。
【0040】
実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示するものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
10…プロセッサ、11…データ入力部、12…データ保存部、13…学習データベース、14…機種情報付与部、15…航路クラスタリング部、16…予測データ保存部、17…予測データベース、18…機種推定部、19…航路推定部、20…同一目標特定部、20a…プログラム、21…表示部、30…ストレージ、30a…プログラム、40…ROM、50…RAM、60…光学メディアドライブ、80…通信部、90…表示部、100…目標識別装置。