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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123737
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】プリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K3/46 S
H05K3/46 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031378
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 純
(72)【発明者】
【氏名】吉川 恭平
(72)【発明者】
【氏名】畑中 隼也
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA15
5E316AA32
5E316AA43
5E316CC08
5E316CC32
5E316DD17
5E316DD24
5E316DD33
5E316DD47
5E316EE33
5E316GG17
5E316GG22
5E316GG28
5E316HH11
(57)【要約】
【課題】プリント配線板の品質向上。
【解決手段】実施形態のプリント配線板2は、第一導体層10と、第一面22及び第一面と反対側の第二面24とを有し、第二面24が第一導体層10と対向して第一導体層上に形成されている樹脂絶縁層20と、樹脂絶縁層20の第一面22に形成され、樹脂絶縁層側のシード層10aと、シード層上の金属層(電解めっき層30b)と、を含む第二導体層30と、樹脂絶縁層20を貫通し第一導体層10と第二導体層30とを接続するビア導体40と、樹脂絶縁層20とシード10a層の間に位置する部分を含み、樹脂に対し鉄又はクロムのいずれかを0.2at%以上5.0at%以下で含有する下地層33と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一導体層と、
第一面及び前記第一面と反対側の第二面とを有し、前記第二面が前記第一導体層と対向して前記第一導体層上に形成されている樹脂絶縁層と、
前記樹脂絶縁層の前記第一面に形成され、前記樹脂絶縁層側のシード層と、前記シード層上の金属層と、を含む第二導体層と、
前記樹脂絶縁層を貫通し前記第一導体層と前記第二導体層とを接続するビア導体と、
前記樹脂絶縁層と前記シード層の間に位置する部分を含み、樹脂に対し鉄又はクロムのいずれかを0.2at%以上5.0at%以下で含有する下地層と、
を有するプリント配線板。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント配線板であって、
前記金属層が銅めっき層である。
【請求項3】
請求項1に記載のプリント配線板であって、
前記シード層が、
前記樹脂絶縁層側に位置し銅合金により形成されている第一シード層と、
前記第一シード層上で銅により形成されている第二シード層と、
を含む。
【請求項4】
請求項1に記載のプリント配線板であって、
前記樹脂絶縁層は、樹脂と無機粒子と、を含む。
【請求項5】
請求項4に記載のプリント配線板であって、
前記第一面は前記樹脂で形成されている。
【請求項6】
請求項4に記載にプリント配線板であって、
前記ビア導体が形成されているビア孔の内壁面は前記樹脂と前記無機粒子とで形成されている。
【請求項7】
請求項1に記載のプリント配線板であって、
前記第一面の算術平均粗さ(Ra)は0.02μm以上0.60μm以下である。
【請求項8】
請求項1に記載のプリント配線板であって、
前記下地層は、前記樹脂絶縁層の前記第一面において前記第二導体層がない部分にも存在している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示する技術は、プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、層間樹脂絶縁層と導体回路とが交互に積層され、上層の導体回路と下層の導体回路とがバイアホールを介して接続されてなる多層プリント配線板が記載されている。特許文献1には、ポリオレフィン系樹脂絶縁層の表面にNi薄膜を形成し、さらに、Ni金属層上に銅層を形成し、ついで無電解めっきを施して、銅の無電解めっき膜を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-302588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂絶縁層上にスパッタリング等で導体層(スパッタ膜)を形成する場合、樹脂絶縁層に対する導体層の密着性を高くすることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のプリント配線板は、第一導体層と、第一面及び前記第一面と反対側の第二面とを有し、前記第二面が前記第一導体層と対向して前記第一導体層上に形成されている樹脂絶縁層と、前記樹脂絶縁層の前記第一面に形成され、前記樹脂絶縁層側のシード層と、前記シード層上の金属層と、を含む第二導体層と、前記樹脂絶縁層を貫通し前記第一導体層と前記第二導体層とを接続するビア導体と、前記樹脂絶縁層と前記シード層の間に位置する部分を含み、樹脂に対し鉄又はクロムのいずれかを0.2at%以上5.0at%以下で含有する下地層と、を有する。
【0006】
本開示の実施形態によれば、樹脂絶縁層に対する第一導体層の密着性を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の第一実施形態のプリント配線板を示す断面図である。
図2A】本開示の第一実施形態のプリント配線板を部分的に拡大して示す断面図である。
図2B】本開示の第一実施形態のプリント配線板を部分的に拡大して示す断面図である。
図3A】本開示の第一実施形態のプリント配線板の製造工程の一例を示す断面図である
図3B】本開示の第一実施形態のプリント配線板の製造工程の一例を示す断面図である
図3C】本開示の第一実施形態のプリント配線板の製造工程の一例を示す断面図である
図3D】本開示の第一実施形態のプリント配線板の製造工程の一例を示す断面図である
図3E】本開示の第一実施形態のプリント配線板の製造工程の一例を示す断面図である
図3F】本開示の第一実施形態のプリント配線板の製造工程の一例を示す断面図である
図3G】本開示の第一実施形態のプリント配線板の製造工程の一例を示す断面図である
図3H】本開示の第一実施形態のプリント配線板の製造工程の一例を示す断面図である
図3I】本開示の第一実施形態のプリント配線板の製造工程の一例を示す断面図である
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0009】
各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものである。図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
図1は実施形態のプリント配線板2を示す断面図である。図2A及び図2Bは実施形態のプリント配線板2の一部を示す拡大断面図である。図1に示されるように、プリント配線板2は、絶縁層4と第一導体層10と樹脂絶縁層20と第二導体層30とビア導体40とを有する。
【0011】
絶縁層4は樹脂を用いて形成される。絶縁層4はシリカ等の無機粒子を含んでもよい。絶縁層4は、ガラスクロス等の補強材を含んでもよい。絶縁層4は、第三面6(図中の上面)と第三面6と反対側の第四面8(図中の下面)を有する。
【0012】
第一導体層10は絶縁層4の第三面6上に形成されている。第一導体層10は信号配線12とパッド14とを含む。第一導体層10は、信号配線12とパッド14とは別の導体回路も含んでいてもよい。第一導体層10は主に銅によって形成される。第一導体層10は、絶縁層4上のシード層10aとシード層10a上の電解めっき層10bで形成されている。
【0013】
樹脂絶縁層20は絶縁層4の第三面6と第一導体層10上に形成されている。樹脂絶縁層20は第一面22(図中の上面)と第一面22と反対側の第二面24(図中の下面)を有する。樹脂絶縁層20の第二面24は第一導体層10と対向する。樹脂絶縁層20は樹脂80と多数の無機粒子90を含む。樹脂80は、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂を用いてもよい。樹脂80は、一例としてエポキシ系樹脂を用いてもよい。多数の無機粒子90は樹脂80内に分散されている。無機粒子90は、例えば、シリカ、アルミナを用いてもよい。無機粒子90の粒子径は、例えば、平均粒子径0.5μm、粒子径範囲は、0.1μm以上5.0μm以下である。樹脂絶縁層20は厚み方向に貫通する貫通孔としてのビア孔26を有している。ビア孔26の内壁面27は樹脂80と無機粒子90とで形成されている。
【0014】
図1に示されるように、樹脂絶縁層20の第一面22は樹脂80のみで形成されている。第一面22から無機粒子90は露出しない。具体的には、第一面22は無機粒子90の表面を含まない。樹脂絶縁層20の第一面22には凹凸が形成されていない。第一面22は荒らされていない。第一面22は平滑に形成されている。第一面22の算術平均粗さ(Ra)は、例えば0.02μm以上0.06μm以下である。
【0015】
一方、図2Bに示されるように、ビア孔26の内壁面27には無機粒子90が露出する。ビア孔26の内壁面27は無機粒子90の表面を含む。ビア孔26の内壁面27は凹凸を有する。ビア孔26の内壁面27は樹脂80の露出面と無機粒子90の露出面とで形成される。
【0016】
樹脂絶縁層20の厚さは、第二導体層30の厚さの2倍以上である。樹脂絶縁層20の厚さTは第一面22と第一導体層10の上面の間の距離である。
【0017】
図2Bに示されるように、ビア孔26の内壁面27は傾斜している。パッド14の上面と内壁面27との間の角度(傾斜角度)θ1は例えば70°以上85°以下である。パッド14の上面は第一導体層10の上面に含まれる。樹脂絶縁層20の第一面(上面)22と内壁面27との間の角度(傾斜角度)θ2は例えば95°以上110°以下である。
【0018】
図1に示されるように、第二導体層30は樹脂絶縁層20の第一面22上に形成されている。第二導体層30は第一信号配線32と第二信号配線34とランド36とを含む。第二導体層30は第一信号配線32と第二信号配線34とランド36とは別の導体回路も含んでいてもよい。第一信号配線32と第二信号配線34はペア配線を形成している。第二導体層30は主に銅によって形成される。第二導体層30は、第一面22上のシード層30aとシード層30a上の電解めっき層30bで形成されている。シード層30aは第一面22上の第一シード層31aと第一シード層31a上の第二シード層31bで形成されている。第一シード層31aは銅とケイ素とアルミニウムを含む合金(銅合金)で形成されている。第二シード層31bは銅で形成されている。電解めっき層30bは銅で形成されている。第一シード層31aは第一面22に接している。第二シード層31bは電解めっき層30bと接着している。第二導体層30のうち樹脂絶縁層20の第一面22と対向する面は第一面22の表面形状に沿って形成されている。第二導体層30は樹脂絶縁層20の第一面22の内側に入り込まない。
【0019】
樹脂絶縁層20とシード層30aの間には、下地層33が位置している。下地層33は、樹脂絶縁層20を構成している樹脂に対し、鉄又はクロムのいずれかを0.2at%以上5.0at%以下で含有する。「at%」は、アトミックパーセント(原子百分率)である。
【0020】
ビア導体40はビア孔26内に形成されている。ビア導体40は、積層方向に隣り合う第一導体層10と第二導体層30とを接続する。なお、積層方向とは各層を積層した方向であり、各層の厚み方向と同じ方向である。本実施形態では積層方向は上下方向と同じである。図1ではビア導体40はパッド14とランド36を接続する。ビア導体40はシード層30aとシード層30a上の電解めっき層30bで形成されている。ビア導体40を形成するシード層30aと第二導体層30を形成するシード層30aは共通である。第一シード層31aは内壁面27に接している。
【0021】
樹脂絶縁層20及び第二導体層30の表面には、被膜層35が形成されている。被膜層35により、樹脂絶縁層20及び第二導体層30と、樹脂絶縁層20及び第二導体層30に積層される他の層との密着性が高められる。被膜層35は無くてもよい。
【0022】
[実施形態のプリント配線板2の製造方法]
【0023】
図3A図3Iは実施形態のプリント配線板2の製造方法を示す。図3A図3Iは断面図である。図3Aは絶縁層4と絶縁層4の第三面6上に形成されている第一導体層10を示す。第一導体層10はセミアディティブ法によって形成される。
【0024】
図3Bに示されるように、絶縁層4と第一導体層10上に樹脂絶縁層20と保護膜50が形成される。樹脂絶縁層20の第二面24が絶縁層4の第三面6と対向している。樹脂絶縁層20の第一面22上に保護膜50が形成される。樹脂絶縁層20は樹脂80と無機粒子90とを有する。無機粒子90は樹脂80内に埋まっている。樹脂絶縁層20の第一面22は樹脂80のみで形成される。第一面22から無機粒子90は露出しない。第一面22は無機粒子90の表面を含まない。樹脂絶縁層20の第一面22には凹凸が形成されていない。
【0025】
保護膜50は樹脂絶縁層20の第一面22を完全に覆っている。保護膜50は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムである。保護膜50と樹脂絶縁層20との間に離型剤による層が形成されている。
【0026】
図3Cに示されるように、保護膜50の上からレーザ光Lが照射される。レーザ光Lは保護膜50と樹脂絶縁層20を同時に貫通する。第一導体層10のパッド14に至るビア導体用のビア孔26が形成される。レーザ光Lは例えばUVレーザ光、CO2レーザ光である。ビア孔26によりパッド14が露出される。ビア孔26が形成される時、樹脂絶縁層20の第一面22は保護膜50で覆われている。そのため、ビア孔26が形成される時、樹脂が飛散しても、第一面22に樹脂が付着することが抑制される。レーザ光照射後のビア孔26の内壁面27は樹脂80と樹脂80から突出している無機粒子90で形成されている。
【0027】
その後、ビア孔26内が洗浄される。ビア孔26内を洗浄することによりビア孔26形成時に発生する樹脂残渣が除去される。ビア孔26内の洗浄はプラズマによって行われる。即ち洗浄はドライプロセスで行われる。ドライプロセスのガス種は、ハロゲン系ガス(フッ素系ガス、塩素系ガス等)とOガスの混合ガス、あるいはハロゲン系ガス(フッ素系ガス、塩素系ガス等)、Oガスの単独のガスである。洗浄はデスミア処理を含む。
【0028】
プラズマにより、樹脂80が選択的に除去される。プラズマは無機粒子90より樹脂80を早く除去する。ビア孔26内を洗浄することにより、ビア孔26の内壁面27には無機粒子90が露出する(図3C)。ビア孔26の内壁面27は無機粒子90の表面を含む。ビア孔26の内壁面27には凹凸が形成される。一方、樹脂絶縁層20の第一面22は保護膜50で覆われている。第一面22はプラズマの影響を受けない。第一面22は樹脂80のみで形成されている。第一面22から無機粒子90は露出しない。第一面22は無機粒子90の表面を含まない。樹脂絶縁層20の第一面22には凹凸が形成されない。第一面22は平滑に形成されている。
【0029】
図3Dに示されるように、ビア孔26内を洗浄後に、樹脂絶縁層20から保護膜50が除去される。保護膜50除去後、樹脂絶縁層20の第一面22を荒らすことは行われない。第一面22は平滑に形成される。第一面22の算術平均粗さ(Ra)は、例えば、0.02μm以上0.06μm以下である。
【0030】
図3Eに示されるように、樹脂絶縁層20の第一面22、及びビア孔26から露出する内壁面27に対し、LIS(Linear Ion Source)処理が行われる。LIS処理は、スパッタの前に行われる処理である。
【0031】
LIS処理では、レーザイオン源から第一面22及び内壁面27にビーム状のアルゴンプラズマPが照射される。第一面22又は内壁面27に表層離型剤が付与されている場合は、表層離型剤は、ビーム状のアルゴンプラズマPの照射により除去される。
【0032】
第一面22及び内壁面27には、ビーム状のアルゴンプラズマPの照射により、下地層33が生じる。下地層33は、樹脂絶縁層20を構成している樹脂に対し、鉄又はクロムのいずれかを0.2at%以上5.0at%以下で含有する層である。たとえば、レーザイオン源を備えているプラズマ照射装置からプラズマ照射を行った場合、鉄又はクロムのいずれか(これらの組み合わせを含む)が第一面22及び内壁面27に到達するようにできる。この場合、樹脂絶縁層20を構成している樹脂に対し、鉄又はクロムのいずれかを0.2at%以上5.0at%以下で含有するように、プラズマ照射を行い得る。第一面22及び内壁面27は、ビーム状のアルゴンプラズマPの照射により、スパッタ層であるシード層30aの密着性が高い表面性状となる。
【0033】
図3Fに示されるように、第一面22及び内壁面27(下地層33)上にシード層30aが形成される。シード層30aはスパッタによって形成される。シード層30aの形成はドライプロセスで行われる。第一シード層31aが第一面22上にスパッタで形成される。同時に、ビア孔26から露出する内壁面27とパッド14上に第一シード層31aがスパッタで形成される。その後、第一シード層31a上に第二シード層31bがスパッタで形成される。シード層30aはビア孔26から露出するパッド14の上面とビア孔26の内壁面27にも形成される。第一シード層31aは銅とケイ素とアルミニウムを含む合金で形成される。第二シード層31bは銅で形成される。
【0034】
図3Gに示されるように、シード層30a上にめっきレジスト60が形成される。めっきレジスト60は、第一信号配線32と第二信号配線34とランド36(図1参照)を形成するための開口を有する。
【0035】
図3Hに示されるように、めっきレジスト60から露出するシード層30a上に電解めっき層30bが形成される。電解めっき層30bは銅で形成される。電解めっき層30bはビア孔26を充填する。第一面22上のシード層30aと電解めっき層30bによって、第一信号配線32と第二信号配線34とランド36が形成される。第二導体層30が形成される。ビア孔26内のシード層30aと電解めっき層30bによって、ビア導体40が形成される。第二導体層30とビア導体40は同時に形成される。ビア導体40は、パッド14とランド36を接続する。第一信号配線32と第二信号配線34はペア配線を形成する。
【0036】
図3Iで示されるように、めっきレジスト60が除去される。電解めっき層30bから露出するシード層30aが除去される。下地層33は、第一信号配線32、第二信号配線34及びランド36が形成されていない部分であっても、除去されずに残される。
【0037】
その後、樹脂絶縁層20の第一面22に対し、必要に応じてOアッシング処理が行われる。Oアッシング処理では、樹脂絶縁層20の第一面22にOプラズマが照射される。
【0038】
その後、第二導体層30に対しさらに化成処理が施される。たとえば、樹脂絶縁層20及び第二導体層30の表面に、被膜層35が形成される。実施形態のプリント配線板2(図1参照)が得られる。
【0039】
実施形態のプリント配線板2(図1図2B参照)では、樹脂絶縁層20とシード層30aの間に、下地層33が位置している。下地層33は、樹脂絶縁層20を構成している樹脂に対し、銅、鉄又はクロムのいずれかを0.2at%以上5.0at%以下で含有する。
【0040】
実施形態のプリント配線板2は、第一面22及び内壁面27への、ビーム状のアルゴンプラズマPの照射により、スパッタ層であるシード層30aの密着性が高い表面性状となる。
【0041】
実施形態のプリント配線板2(図1参照)では樹脂絶縁層20の第一面22は樹脂80で形成されている。第一面22には無機粒子90が露出しない。第一面22には凹凸が形成されない。樹脂絶縁層20の第一面22近傍部分の比誘電率の標準偏差が大きくなることが抑制される。第一面22の比誘電率は場所によって大きく変わらない。第一信号配線32と第二信号配線34が第一面22に接していても、第一信号配線32と第二信号配線34間の電気信号の伝搬速度の差を小さくすることができる。そのため、実施形態のプリント配線板2ではノイズが抑制される。実施形態のプリント配線板2にロジックICが実装されても、第一信号配線32で伝達されるデータと第二信号配線で伝達されるデータがロジックICにほぼ遅延なく到達する。ロジックICの誤動作を抑制することができる。第一信号配線32の長さと第二信号配線34の長さが5mm以上であっても、両者の伝搬速度の差を小さくすることができる。第一信号配線32の長さと第二信号配線34の長さが10mm以上、20mm以下であっても、ロジックICの誤動作を抑制することができる。高い品質を有するプリント配線板2が提供される。
【0042】
実施形態のプリント配線板2(図1参照)では、樹脂絶縁層20の厚さTは第二導体層30の厚さの2倍以上である。プリント配線板2がヒートサイクルを受けると、ビア孔26の内壁面27とビア導体40の間に加わるストレスは、第一面22と第二導体層30の間に加わるストレスより大きいと考えられる。また、ビア孔26の内壁面27に無機粒子90が存在していると、ビア孔26の内壁面27とビア導体40との密着強度が低下する懸念がある。しかし、下地層33があることにより、ビア孔26の内壁面27とビア導体40との密着強度の低下が抑制される。ビア導体40が樹脂絶縁層20から剥離し難くなる。
【0043】
実施形態のプリント配線板2では、シード層30aはスパッタで形成される(図3E参照)。シード層30aを形成する粒子は第一面22と垂直に衝突する。そのため、第一面22とシード層30aとの密着強度は高い。一方、シード層30aを形成する粒子とビア孔26の内壁面27は斜めに衝突する。シード層30aを形成する粒子がビア孔26の内壁面27に斜めに衝突するため、ビア孔26の内壁面27とビア導体40との密着強度は、垂直に衝突する場合と比較して低下する懸念がある。しかし、下地層33があることにより、プリント配線板2がヒートサイクルを受けても、ビア導体40が樹脂絶縁層20から剥離し難い。高い品質を有するプリント配線板2が提供される。
【0044】
本開示の技術では、30aの第一シード層31aは、銅と第二元素で形成されている。第二元素は、ケイ素、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、炭素、酸素、スズ、カルシウム、マグネシウム、鉄、モリブデン、銀、の中から選ばれる。第一シード層31aは銅を含む合金で形成される。第二シード層31bは銅で形成される。第二シード層31bを形成している銅の量(原子量%)は99.9%以上である。99.95%以上が好ましい。
【0045】
シード層30aの第一シード層31aは、ケイ素、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、炭素、酸素、スズ、カルシウム、マグネシウム、鉄、モリブデン、銀、のうちのいずれか1つの金属で形成されてもよい。
【0046】
本開示の技術のプリント配線板2では、樹脂絶縁層20は樹脂80と無機粒子90を含むが、繊維補強材を含んでいてもよい。繊維補強材としては、例えば、ガラスクロス、ガラス不織布、アラミド不織布を用いてもよい。
【0047】
本開示の技術のプリント配線板2では、樹脂絶縁層が一層であるが、二層以上積層されてもよい。
【0048】
本開示の技術のプリント配線板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。前述したように、実施形態のプリント配線板は任意の積層構造を有し得る。例えば実施形態の配線基板はコア基板を含まないコアレス基板であってもよい。実施形態のプリント配線板は、任意の数の導体層及び絶縁層を含み得る。
【0049】
本開示の技術のプリント配線板の製造方法は、各図面を参照して説明された方法に限定されない。例えば、各絶縁層は、フィルム状の樹脂に限らず、任意の形態の樹脂を用いて形成され得る。実施形態のプリント配線板の製造方法には、前述された各工程以外に任意の工程が追加されてもよく、前述された工程のうちの一部が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0050】
2 プリント配線板
4 絶縁層
6 第三面
8 第四面
10 第一導体層
10a シード層
10b 層
12 信号配線
14 パッド
20 樹脂絶縁層
22 第一面
24 第二面
26 ビア孔
27 内壁面
30 第二導体層
30a シード層
30b 層
31a 第一シード層
31b 第二シード層
32 第一信号配線
33 下地層
34 第二信号配線
35 被膜層
36 ランド
40 ビア導体
50 保護膜
60 レジスト
80 樹脂
90 無機粒子
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I