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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123750
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】キャスター式搬送装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/10 20060101AFI20240905BHJP
   A61G 5/14 20060101ALI20240905BHJP
   A61G 5/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61G 7/14 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61G5/10 704
A61G5/14
A61G5/00 701
A61G7/14
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031395
(22)【出願日】2023-03-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】596103112
【氏名又は名称】明石 昌毅
(74)【代理人】
【識別番号】100071216
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 昌毅
(74)【代理人】
【識別番号】100130395
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】明石 昌毅
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040EE04
4C040GG14
4C040JJ08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】最終の走行過程で直線走行経路を経て所定の作動位置にもたらされ、その後同直線走行経路を逆方向に作動位置より引き出されるキャスター式搬送装置のキャスターの車輪が回動軸線の周りに進行方向前側より後側に回り込むとき生じる横力により搬送装置の引き出しの走行性が損なわれることを改良する。
【解決手段】搬送装置のキャスターが基台により傾動部材を介して2個一組として担持され、傾動部材は基台に対し直線軌道に沿って所定の範囲にて偏倚可能にして且つ傾動可能であり、2個一組のキャスターは回動軸線に対する車輪の偏倚が直線軌道に沿って互に逆とされ、基台が床面に対し直線軌道に沿って一方向か逆向きに付勢されることに応じて傾動部材の偏倚と傾動の向きが反転し、いずれにしても基台の付勢に伴う移動に際して回動軸線が車輪に先行する一方のキャスターの車輪のみが床面に当接する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のキャスターにより床面上を走行するキャスター式搬送装置にして、基台と、前記基台により該基台に対し直線軌道に沿って所定の範囲にて偏倚可能にして且つ該直線軌道に沿って傾動可能に担持された傾動部材とを有し、前記傾動部材には前記キャスターが2個一組として各キャスターの回動軸線に対する車輪の偏倚が前記直線軌道に沿って互に逆になるよう取り付けられており、前記基台が床面に対し前記直線軌道に沿って一方の向きに付勢されたときには前記傾動部材は前記基台に対して前記直線軌道に沿って前記一方の向きとは逆の他方の向きに偏倚し且つ前記直線軌道に沿って一方の傾動方向に傾動して前記基台の付勢に伴う移動に際して回動軸線が車輪に先行する一方のキャスターの車輪のみが床面に当接し、前記基台が床面に対し前記直線軌道に沿って前記一方の向きとは逆の他方の向きに付勢されたときには前記傾動部材は前記基台に対して前記直線軌道に沿って前記他方の向きとは逆の前記一方の向きに偏倚し且つ前記直線軌道に沿って前記一方とは逆の他方の傾動方向に傾動して前記基台の付勢に伴う移動に際して回動軸線が車輪に先行する他方のキャスターの車輪のみが床面に当接するようになっていることを特徴とするキャスター式搬送装置。
【請求項2】
前記複数個のキャスターの車輪は各々前記直線軌道に沿う方向にばねにより可撓的に付勢されていることを特徴とする請求項1に記載のキャスター式搬送装置。
【請求項3】
前記基台は一対の互に平行に隔置された細長い脚部を有し、前記傾動部材は前記脚部の各々にその前記直線軌道を前記脚部の延在方向に整合させて担持されており、前記一対の脚部はそれらの一端にて人が臀部にて腰掛姿勢に着座できる坐板をその一縁部にて片持ち式に且つ昇降可能に支持するようになっていることを特徴とする請求項1または2に記載のキャスター式搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面上を複数個のキャスターにて走行するキャスター式搬送装置に係り、特に歩行困難な被介護者をベッドと洋式トイレの便器上の間に搬送する場合の如く、搬送装置は床面上を走行してベッドの側縁に対向して設置され、また洋式トイレの便器へ向けて便器の縦中心線に沿って正面から対向して設置されるように、所定の目標位置への最終走行過程においては直線走行経路を経て走行し、その後は該目標位置より最終直線走行経路を逆に辿って引き出される要領にて使用されるキャスター式搬送装置に係る。
【背景技術】
【0002】
ベッド、車椅子、洋式トイレの弁座の間に被介護者を搬送する装置として、本願出願人と同一人は、先の特許出願(特願2010-154488、特開2012-16417)にて「複数個のキャスターにより床面上を任意の方向に自由に走行できる台座と、前記台座により垂直に支持された支柱と、前記支柱によりその周りに自由に回動可能に支持されて前記支柱の両側に延在する回動枠体とを有し、前記回動枠体の一方の側の延在端には被介護者を前記支柱に向かって座らせる坐板が取り付けられており、前記回動枠体の他方の側の延在端には介護者が足で踏んで自分の体重を掛ける足踏み台が設けられていることを特徴とする歩行困難な被介護者のための搬送装置」を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-16417公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の先の出願の搬送装置よれば、被介護者をベッドより搬送装置上に移すときには、被介護者を臀部にて掬い上げて腰掛け姿勢に支持する坐板を、ベッドの上面より幾分浮き上がった高さに手前の一縁部にて片持ち式に支持し、その状態で坐板をベッドの側縁よりこれに直角の方向にベッド上に差し入れ、次いで坐板をベッドの上面上に降ろし、次いで被介護者をベッドの側縁に臀部を坐板上に載せた状態に腰掛けさせ、次いで坐板を僅かに持ち上げてベッドの上面より引き離し、次いで被介護者を支持した状態で坐板をベッドの側縁より引き出す操作が行われる。
【0005】
この場合、坐板を支持する台座を床面に沿って支持する複数個のキャスターは、坐板をベッドの側縁よりベッド上に差し入れる操作が終了した時点で、それぞれの車輪がキャスターの回動軸線のほぼ真後ろに整列した状態にある。即ち、坐板をベッド上へ差し入れる操作が終了する直前では、台座はベッドへ向けてその側縁に対し直角に移動していたので、各車輪の接地点は進行方向に沿ってそれぞれのキャスターの回動軸線の後ろに整合して追従しており、ベッドの側から見て各キャスターの車輪の接地点はその回動軸線のほぼ真後ろに位置している。そのため、それに続いて坐板がベッド上から側縁に対し直角方向に引き出されようとすると、各キャスターの車輪の接地点は各キャスターの回動軸線より進行方向に沿ってほぼ真直ぐの前方に位置するので、各車輪はこの前方位置より回動軸線に追走する後方の位置へ回動軸線の周りを回って移動することになるが、引き出し操作開始時に車輪の接地点が真直ぐの前方位置より僅かと雖も左右いずれの側に偏倚しているかにより、引き出し方向への付勢に応じて車輪は回動軸線の周りを左回りまたは右回りに回って回動軸線より遅れ側に追随しようとする。この場合、台座を真直ぐに引き出そうとしても、車輪が回動軸線の周りを時計廻り方向に回わろうとすれば、台座は引き出し方向への付勢に対し右方向の横力を受け、逆に車輪が回動軸線の周りを反時計廻り方向に回わろうとすれば、台座は引き出し方向への付勢に対し左方向の横力を受けるので、複数個のキャスターでは台座を真直ぐに引き出そうとしても、台座にはその都度複雑な横方向の力が作用し、台座の素直な引き出しが妨げられる。また複数個のキャスターの間で横方向に生ずる力が互に逆向きになると、それらの車輪の回動軸線周り回動が抑制されるので、台座を引き出そうとする付勢に対し車輪は横滑りとなり、大きな摩擦抵抗で対抗する。
【0006】
同様の問題は、被介護者を臀部にて支持した坐板を洋式トイレの便器上にその縦中心線に沿う直線経路に沿って差し入れ、用足し後に同じ直線経路を逆方向に辿って坐板を便器上より引き出す場合にも生ずる。
【0007】
本発明は、先の出願の搬送装置の如く、床面上を複数個のキャスターにて走行する台座が、最終の走行過程では直線走行経路を経て所定の作動位置にもたらされ、その後台座が該最終直線走行経路を逆方向に辿って作動位置より引き出されるキャスター式搬送装置における上記の問題点に鑑み、この点において改良されたキャスター式搬送装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、複数個のキャスターにより床面上を走行するキャスター式搬送装置にして、基台と、前記基台により該基台に対し直線軌道に沿って所定の範囲にて偏倚可能にして且つ該直線軌道に沿って傾動可能に担持された傾動部材とを有し、前記傾動部材には前記キャスターが2個一組として各キャスターの回動軸線に対する車輪の偏倚が前記直線軌道に沿って互に逆になるよう取り付けられており、前記基台が床面に対し前記直線軌道に沿って一方の向きに付勢されたときには前記傾動部材は前記基台に対して前記直線軌道に沿って前記一方の向きとは逆の他方の向きに偏倚し且つ前記直線軌道に沿って一方の傾動方向に傾動して前記基台の付勢に伴う移動に際して回動軸線が車輪に先行する一方のキャスターの車輪のみが床面に当接し、前記基台が床面に対し前記直線軌道に沿って前記一方の向きとは逆の他方の向きに付勢されたときには前記傾動部材は前記基台に対して前記直線軌道に沿って前記他方の向きとは逆の前記一方の向きに偏倚し且つ前記直線軌道に沿って前記一方とは逆の他方の傾動方向に傾動して前記基台の付勢に伴う移動に際して回動軸線が車輪に先行する他方のキャスターの車輪のみが床面に当接するようになっていることを特徴とするキャスター式搬送装置を提案するものである。
【0009】
尚、回動軸線に対し車輪が偏倚しているキャスターは、それ自身では車輪は取付け台に対し回動軸線の回りに360度自由に偏倚するものであるので、上記のキャスター式搬送装置において「前記傾動部材には前記キャスターが2個一組として各キャスターの回動軸線に対する車輪の偏倚が前記直線軌道に沿って互に逆になるよう取り付けられており」とは、2個のキャスターの車輪の回動範囲が各々直線軌道より90度以下に制限され、その上で回動範囲が直線軌道に沿って互に逆であることを意味する。後述の実施の形態では、図7に示す通り車輪は溝型部材の溝内にて回動軸線の周りに回動し、その回動範囲は回動軸線の両側の約45度に限られており、2個一組のキャスターの車輪の回動範囲は直線軌道に沿って互に逆とされている。
【0010】
前記複数個のキャスターの車輪は各々前記直線軌道に沿う方向にばねにより可撓的に付勢されていてよい。
【0011】
前記の如きキャスター式搬送装置は、前記基台が一対の互に平行に隔置された細長い脚部を有し、前記傾動部材は前記一対の脚部の各々にその前記直線軌道を前記脚部の延在方向に整合させて担持されており、前記一対の脚部はそれらの一端にて人が臀部にて腰掛姿勢に着座できる坐板をその一縁部にて片持ち式に且つ昇降可能に支持するようになっていてよい。
【発明の効果】
【0012】
上記の如く、複数個のキャスターにより床面上を走行するキャスター式搬送装置が、基台と、前記基台により該基台に対し直線軌道に沿って所定の範囲にて偏倚可能にして且つ該直線軌道に沿って傾動可能に担持された傾動部材とを有し、前記傾動部材には前記キャスターが2個一組として各キャスターの回動軸線に対する車輪の偏倚が前記直線軌道に沿って互に逆になるよう取り付けられており、前記基台が床面に対し前記直線軌道に沿って一方の向きに付勢されたときには前記傾動部材は前記基台に対して前記直線軌道に沿って前記一方の向きとは逆の他方の向きに偏倚し且つ前記直線軌道に沿って一方の傾動方向に傾動して前記基台の付勢に伴う移動に際して回動軸線が車輪に先行する一方のキャスターの車輪のみが床面に当接し、前記基台が床面に対し前記直線軌道に沿って前記一方の向きとは逆の他方の向きに付勢されたときには前記傾動部材は前記基台に対して前記直線軌道に沿って前記他方の向きとは逆の前記一方の向きに偏倚し且つ前記直線軌道に沿って前記一方とは逆の他方の傾動方向に傾動して前記基台の付勢に伴う移動に際して回動軸線が車輪に先行する他方のキャスターの車輪のみが床面に当接するようになっていれば、搬送装置が床面上の所定の目標位置へ移動の最終過程では直線走行となる走行経路を経て移動され、それによって床面に接して有効に作動している一方のキャスターの車輪がキャスターの回動軸線に対し最終直線走行の方向に沿ったほぼ真後ろの位置に偏倚していても、それに続いて搬送装置が目標位置よりの最終直線走行経路を逆方向に辿って引き出されるときには、搬送装置の引出し付勢に伴って先ず傾動部材の傾動方向が反転し、引出し付勢の方向に沿ってキャスターの回動軸線より後方に車輪が偏倚している他方のキャスターの車輪が床面に接して有効に作動する状態となるので、キャスターの車輪の偏倚は安定した追従方向の偏倚となり、搬送装置の引き出しは順調に行われる。
【0013】
前記複数個のキャスターの車輪の各々が前記直線軌道に沿う方向にばねにより可撓的に付勢されていれば、搬送装置の引出しに伴う傾動部材の反転傾動により新たに作動状態となるキャスターの車輪は、事前の遊び状態にあるときに直線軌道に沿う方向に位置決めされているので、作動の頭初から搬送装置の引出し方向に沿った追従走行状態となる。
【0014】
前記の如きキャスター式搬送装置において、前記基台は一対の互に平行に隔置された細長い脚部を有し、前記傾動部材は前記脚部の各々にその前記直線軌道を前記脚部の延在方向に整合させて担持されており、前記一対の脚部はそれらの一端にて人が臀部にて腰掛姿勢に着座できる坐板をその一縁部にて片持ち式に且つ昇降可能に支持するようになっていれば、この搬送装置を用いて被介護者をベッドと洋式トイレの便器上の間に搬送するに当たって、坐板を手前の一縁部にて片持ち式に支持してベッド上に差し入れるべく一対の脚部を床面に沿ってベッドの側縁に対し直角の方向に向けてベッド下の空間に差し入れ、次いでその位置から一対の脚部をベッドの側縁に対し直角の方向に引き出すいずれの操作においても、また坐板を手前の一縁部にて片持ち式に支持して洋式トイレの便器上に差し入れるべく一対の脚部を床面に沿って便器の両側へこれを挟む位置まで便器の縦中心線に沿って真直ぐに差し入れ、次いでその位置から一対の脚部を便器の縦中心線に沿って真直ぐに引き出すいずれの操作においても、キャスターは搬送装置の付勢方向に沿って車輪が回動軸線の後方に位置する安定した追従状態となるので、いずれの操作も順調に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明によるキャリアー式搬送装置を歩行困難な被介護者をベッドと洋式トイレの便器上の間に搬送する介護装置に適用した一つの実施の形態を示す解図的側面図である。ここで解図的側面図とは、標準的作図法によれば、他の部材の後方にあって直接には見えず、破線等で表示されるべき構造をも、構造を明瞭にするために実線で表しているような側面図を意味するものとする。以下の解図的平面図等も同様である。
図2図1に示す介護装置の解図的平面図である。
図3図1および2に示す介護装置は下部構造体と上部構造体の組合せよりなっており、図3はその一つである下部構造体のみを示す解図的側面図である。
図4図3に示す下部構造体の解図的平面図である。
図5図1および2に示す介護装置の上部構造体のみを示す解図的側面図である。
図6図5に示す上部構造体の解図的平面図である。
図7】上記の下部構造体に組み込まれているキャスター組立体を示し、図Aはその解図的側面図、図Bはその解図的端面図、図Cはその解図的底面図、図Dは上記のキャスター組立体をそれを担持する基台が床面に対し図にて左方より右方へ付勢されている作動状態にて示す解図的側面図、図Eは上記のキャスター組立体をそれを担持する基台が床面に対し図にて右方より左方へ付勢せれている作動状態にて示す解図的側面図である。
図8図1および図2に示す介護装置をベッドの側縁に沿って設置し、被介護者をベッドより搬出する状態または搬出されていた被介護者をベッドへ戻す状態にて示す解図的側面図である。
図9図1および図2に示す介護装置を洋式トイレの前縁に向かいあって設置し、被介護者を洋式トイレの便器上に用足し姿勢に着座させた状態にて示す解図的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1図7に示された構造において、10は被介護者を臀部にて腰掛姿勢に支持する坐板であり、その一縁部10aにて、12として全体的に示された基台を構成する一対の互に平行に隔置された細長い脚部14-1と14-2の一端部により片持ち式に且つベッド上面の高さや洋式トイレの便器の上面の高さに合わせた高さに昇降可能に支持されている。より詳細には、細長い脚部14-1および14-2はそれらの一端部にて細長い橋渡し部16の両端に結合されているが、それらの結合部にはそれぞれ板状の支柱18-1および18-2の下端部が介装されており、これによって脚部14-1および14-2と橋渡し部16とは一体となって上から見てコ字形をなす基台12の基部を構成していると同時に、脚部14-1および14-2の一端と橋渡し部16の両端との結合部から垂直に上方向に延びる板状支柱18-1および18-2を支持している。尚、脚部14-1、14-2と橋渡し部16は、いずれも溝型部材である。
【0017】
板状支柱18-1、18-2には、それぞれの板厚を貫通する軸により担持されてこれら板状支柱の表面に接して転動する上方のローラー20-1、20-2および下方のローラー22-1、22-2が設けられている。これら上方のローラー20-1、20-2には、坐板10の一縁部10aの両端にそれぞれの一端にて結合されて垂下する一対の板状ロッド24-1、24-2が一方の側縁(図1~6で見て右側の側縁)にて係合し、また下方のローラー22-1、22-2には板状ロッド24-1、24-2が他方の側縁(図1~6で見て左側の側縁)にて係合しており、坐板10を昇降にさせる際に板状ロッド24-1、24-2がローラー20-1および22-1、20-2および22-2の転動により垂直方向に案内されるようになっている。
【0018】
板状ロッド24-1、24-2には、それらの一方の側縁(図1~6で見て左側の側縁)に沿ってラック歯26-1、26-2が切られており、板状支柱18-1、18-2の対応する位置には、これらのラック歯と噛み合うピニオン28-1、28-2が板状支柱18-1、18-2の板厚を貫通するピニオン軸の一端により回転可能に支持されている。これらの板状支柱の板厚を貫通するピニオン軸の他端にはそれぞれ大径の歯車30-1、30-2が取付けられている。歯車30-1、30-2にはそれぞれピニオン32-1,32-2が噛み合っており、ピニオン32-1,32-2は板状支柱18-1および18-2を貫通して両板状支柱間に延在する回動軸34上に固定されている。回動軸34は両板状支柱を貫通する部分にて両板状支柱に軸受されており、板状支柱18-2より外側に突き出た端部に切換え式ラチェットレンチ機構36を経て上下揺動レバー38を取り付けられている。
【0019】
かくして上下揺動レバー38が上下に揺動されると、切変え式ラチェットレンチ機構36の切り変えに応じて回動軸34はいずれか一方の回転方向に駆動される。即ち、切換え式ラチェットレンチ機構36が図1図3で見て時計廻り方向の回転に対して有効に作動し、反時計廻り方向の回転に対しては遊び回転となるよう切り換えられると、揺動レバー38が持ち上げられるときのみ回動軸34が図1図3で見て時計廻り方向に回転駆動されるので、揺動レバー38が繰り返し上下に揺動されにつれてピニオン32-1、32-2は図1図3で見て時計廻り方向に回転駆動され、これに伴って歯車30-1、30-2および同軸のピニオン28-1、28-2は反時計廻り方向に回転し、これらとラック歯26-1、26-2にて噛み合った板状ロッド24-1、24-2は上向きに駆動され、坐板10の高さが増大される。また切換え式ラチェットレンチ機構36がこれと逆方向に切り換えられると、揺動レバー38の繰り返し揺動に伴って坐板10の高さは低くされる。尚、回動軸34の側より板状ロッド24-1、24-2を駆動する駆動系には大きな減速比があるので、板状ロッド24-1、24-2の側から摩擦に打ち勝って回動軸34が駆動されることはなく、坐板の調整高さは自動的に保持される。
【0020】
坐板10と一対の板状ロッド24-1、24-2の結合部には浅底の舟形の化粧板40-1、40-2が介装されており、これらの化粧板は板状支柱18-1、18-2の互に向かい合った内側を覆う形状に作られている。化粧板40-1、40-2は坐板10や一対の板状ロッド24-1、24-2と一体となって昇降する部材であり、回動軸34によって貫通される位置にあるので、回動軸34を上下に偏倚可能に貫通させる長孔42-1、42-2を具えている。坐板10と一対の板状ロッド24-1、24-2と一対の化粧板40-1、40-2の結合体には、更に坐板10に臀部を置いて腰掛け姿勢に着座した被介護者の脚を支持する足置き板44が取り付けられている。これは被介護者の腰掛け姿勢に合わせて脚のふくらはぎから足先までを後ろから支えるよう、側面から見てL字型に折り曲げられた薄板であり、強度や剛性を増すために両縁に沿って直角に折り曲げられたリブ44a-1、44a-2を具えている。化粧板40-1、40-2に対向して、板状支柱18-1、18-2の外側には、歯車30-1、30-2やピニオン32-1、32-2を覆う浅底の舟形の化粧板46-1、46-2が取り付けられている。
【0021】
一対の脚部14-1、14-2と橋渡し部16と一対の板状支柱18-1、18-2の結合体よりなる基台12には、これを床面上に変向自在に走行させる4個のキャスター組立体48f-1、48r-1、48f-2f、48r-2が取り付けられており、また基台12の一端にはこれをキャスター組立体により床面上に変向自在に走行させるよう、基台12を介護者の力により付勢する把手50が取り付けられている。把手50は坐板10上に臀部を載せ、把手50に向かって腰掛け姿勢に着座した被介護者が上体を安定させるために掴まる装置としても作用するようになっている。把手50はその下端にて脚部14-1、14-2の一端にその溝型断面を閉じるように装着された板片52-1.52-2に固定され、またその中間にて板片54-1、54-2により対応する板状支柱18-1、18-2の側縁に固定されている。
【0022】
坐板10の下面には、その一縁部10aに沿って該坐板を便器に向かって押出す際に坐板10を便器の手前の上縁の中央に位置決めすることを容易にする窪みを中央に呈する板片56が取付けられている。坐板10の中央部には被介護者が該坐板上に臀部にて着座した状態で用足しをするための楕円孔58が開けられており、該坐板の下面には該楕円孔を囲み便器の上縁に整合するU字型のクッション60がマジックテープ(登録商標)の如き可逆的に着脱可能な面ファスナ等で着脱式に装着されている。
【0023】
キャスター組立体48f-1、48r-1、48f-2、48r-2は同形であり、これら同形のキャスター組立体は溝型部材よりなる脚部14-1または14-2の溝内に取り付けられている。キャスター組立体は脚部14-1または14-2の溝内にそれに沿って丁度嵌り合う大きさの溝型部材よりなる傾動台62を具え、その両側壁64-1、64-2に設けられた長孔66-1、66-2に嵌り合うローラー68-1、68-2が脚部14-1、14-2の対応する側壁部に回転式に取り付けられていることにより、脚部14-1、14-2に沿って所定の偏倚距離だけ偏倚可能な態様にて脚部14-1、14-2により担持されている。長孔66-1、66-2はそれに沿って両側壁64-1、64-2の向かい合った内壁に固定された長円形環状部材70-1,70-2により補強され且つ厚みが増されている。上記の通り傾動台62は脚部14-1または14-2の溝内にそれに沿って丁度嵌り合う大きさの溝型部材であることから、長孔66-1、66-2とローラー68-1、68-2の係合により許容される傾動台62の脚部14-1、14-2に対する偏倚は、脚部14-1、14-2の長手方向に沿う直線軌道に沿った偏倚である。
【0024】
傾動台62の溝内には同形のキャスター72f、72rが2個一組としてボルト-ナットBNにより取り付けられている。キャスターの回動軸線74fと74rに対する車輪76fと76rの偏倚は、脚部に対し傾動台が偏倚する直線軌道に沿って互に逆とされている。更に詳細には、脚部14-1、14-2に対する傾動台62の直線軌道に沿った偏倚可能な取り取り付けは、図7図Aに示すように傾動台62が脚部14-1、14-2と平行の姿勢にあるとき、キャスターを傾動台に取付けるボルト-ナットBNの端が脚部14-1、14-2の天井内面より或る距離だけ隔置されているが、図7図Dに示すように傾動台62が脚部14-1、14-2に対して図にて左方へ一杯に偏倚し、従ってローラー68-1、68-2が長孔66-1、66-2の図にて右端に位置すると、ローラー68-1、68-2を経て傾動台62に掛かる荷重によって傾動台62は車輪76fの接地点を支点として図にて右下向きに傾くよう付勢され、左端にあるボルト-ナットBNの端が脚部14-1、14-2の天井内面に突き当たるまで傾動し、車輪76rは床面より離れて浮き上がるようになっている。長孔66-1、66-2とそれに嵌り合うローラー68-1、68-2の寸法や位置の関係は、かかる傾動状態で車輪76rが床面より浮き上がる間隙が5ミリ程度となるように設計されるものとする。
【0025】
キャスターの車輪がゴムタイヤ付きであると、キャスターに荷重が掛かることによりキャスター式搬送装置を移動させようとする付勢に対しそれなりにかなりの走行抵抗が生ずる。この走行抵抗の値に比べれば、金属製のローラー68-1、68-2が金属製の長孔66-1、66-2に沿って転動する抵抗の値はこれより十分小さいと考えられるので、把手50を介して基台12に図にて右方へ向かう力が付勢されると、キャスターの車輪が転動を開始する前に、傾動台62は図7図Dに示すように脚部14-1、14-2に対して図にて左方へ一杯に偏倚し、ローラー68-1、68-2は長孔66-1、66-2の右端に位置し、キャスター組立体は右下がり傾動して車輪76fのみにて接地した状態となり、キャスターは車輪76fの接地点が走行方向に見て回動軸線74fより後に追従する順方向の作動状態となる。
【0026】
この状態で目標位置に到達した後、搬送装置を逆方向に引き出すべく把手50を介して基台12に図にて左方へ向かう力が付勢されると、キャスターの車輪が転動を開始する前に、傾動台62は図7図Eに示すように脚部14-1、14-2に対して図にて右方へ一杯に偏倚し、ローラー68-1、68-2が長孔66-1、66-2の左端に位置し、キャスター組立体は左下がり傾動して車輪76rのみにて接地した状態となる。従って、搬送装置の引き出し方向の移動に対しても、キャスターは引き出し方向に沿って車輪76rの接地点が回動軸線74rの後に追従する順方向の作動状態となる。
【0027】
回転軸線周りに許される車輪の回動角は、図示の設計では図Cに示す通り中心位置より左右に45度程度であるので、それまで床面から浮き上がった遊び状態にあり、傾動台62の傾動切りえにより床面に当接して作動状態となるキャスターの車輪の向きは確実に順方向となるが、切り換え後のキャスターの車輪の向きを脚部14-1、14-2の延在方向に揃えておくよう、図示の如くキャスターの中央部の一箇所と傾動台62の端部の中央部の一箇所との間に引張りコイルばね77f、77rの如きばねを張設してもよい。
【0028】
図8は上記の如き構造の介護装置をベッドの側縁に沿って設置し、被介護者をベッドより搬出する状態または搬出されていた被介護者をベッドへ戻す状態にて示す解図的側面図である。かかる設置位置へ向かう最終の走行過程でキャスター組立体は基台の脚部に対し進行方向の後ろ側に偏倚しており、キャスター組立体は進行方向の前側が低くなるよう傾動し、進行方向の前側のキャスターの車輪で床面に当接している。この状態より介護装置が図で左方向へ引き出されると、その移動の頭初にキャスター組立体は左下向きに傾斜が反転し、引き出し進行方向に沿った前側の図で左側のキャスターが作動状態となる。
【0029】
図9は上記の如き構造の介護装置をその両脚部が便器を挟むように洋式トイレの正面から真直ぐに押し込んで被介護者を洋式トイレの便器上に用足し姿勢に着座させた状態にて示す解図的側面図である。このように介護装置を洋式トイレの便器に対し用足し位置に設置し、次いで介護装置をかかる設置位置より真直ぐに引き出す場合にも、キャスター組立体は同様に作動する。
【0030】
以上においては本発明を一つの実施の形態について詳細に説明したが、図示の実施の形態について本発明の範囲内にて種々の変更が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【符号の説明】
【0031】
10…坐板、10a…坐板の一縁部、12…基台、14…脚部、16…橋渡し部、18…板状支柱、20…ローラー、22…ローラー、24…板状ロッド、26…ラック歯、28…ピニオン、30…歯車、32…ピニオン、34…回動軸、36…切変え式ラチェットレンチ機構、38…上下揺動レバー、40…化粧板、42…長孔、44…足置き板、44a…足置き板のリブ、46…化粧板、48…キャスター組立体、50…把手、52…板片、54…板片、56…板片、58…楕円孔、60…クッション、62…傾動台、64…傾動台の側壁、66…長孔、68…ローラー、70…長円形環状部材、72…キャスター、74…キャスターの回動軸線、76…車輪、77…引張りコイルばね、BN…ボルト-ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-07-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正の内容】
図4