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特開2024-123758ポリプロピレン系樹脂粒子の製造方法、ポリプロピレン系発泡粒子の製造方法およびポリプロピレン系発泡成形体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123758
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂粒子の製造方法、ポリプロピレン系発泡粒子の製造方法およびポリプロピレン系発泡成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20240905BHJP
   C08J 9/16 20060101ALI20240905BHJP
   B29B 7/38 20060101ALI20240905BHJP
   B29B 9/06 20060101ALI20240905BHJP
   B29B 9/12 20060101ALI20240905BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20240905BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20240905BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20240905BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20240905BHJP
   C08L 25/16 20060101ALI20240905BHJP
   C08L 25/12 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C08J3/20 Z CES
C08J9/16 CET
B29B7/38
B29B9/06
B29B9/12
B29C44/00 G
C08L23/10
C08L25/04
C08L53/00
C08L25/16
C08L25/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031409
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松宮 豊
【テーマコード(参考)】
4F070
4F074
4F201
4F214
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA06
4F070AA13
4F070AA15
4F070AA18
4F070AB08
4F070AB11
4F070AC11
4F070AC27
4F070AC36
4F070DA55
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB06
4F070FB07
4F070FC06
4F074AA09B
4F074AA17B
4F074AA24
4F074AA32
4F074AA32B
4F074AA98
4F074AB02
4F074AB03
4F074AC33
4F074AC36
4F074AD04
4F074AG20
4F074BA32
4F074BC12
4F074CA34
4F074CA39
4F074CA49
4F074DA02
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4F074DA22
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4F214AA11
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4F214UB01
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4J002BP03X
4J002GG02
4J002GL00
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】成形後の収縮が低減されたポリプロピレン系発泡成形体を提供し得るポリプロピレン系樹脂粒子を効率よく提供すること。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂と特定量のポリスチレン系樹脂と特定のスチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体とを含有するポリプロピレン系樹脂組成物を押出機で溶融混練した後、ダイから押出し、押出されたポリプロピレン系樹脂組成物を40m/分以上の引取り速度で引取る工程を含む、ポリプロピレン系樹脂粒子の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂100重量部と、ポリスチレン系樹脂5重量部~60重量部と、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体と、を含有するポリプロピレン系樹脂組成物を、ダイを備える押出機を用いて溶融混練する溶融混練工程と、
溶融混練されたポリプロピレン系樹脂組成物を、前記ダイから押出す押出工程と、
押出されたポリプロピレン系樹脂組成物を、40m/分以上の引取り速度で引取る引取り工程と、を含み、
前記スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体のスチレン単位含有量は、当該スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体100重量%中、35重量%以上であり、
前記ポリプロピレン系樹脂組成物中における、前記ポリスチレン系樹脂の含有量Mpsを前記スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体の含有量Msebsで除した値(Mps/Msebs)が1.5~6.5である、ポリプロピレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記ポリスチレン系樹脂は、ポリスチレン単独重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/α-メチルスチレン共重合体および高分岐型発泡用スチレン系樹脂組成物からなる群から選択されるいずれか1種以上である、請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリプロピレン系樹脂粒子の製造方法により得られたポリプロピレン系樹脂粒子を、発泡する工程を含む、ポリプロピレン系発泡粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のポリプロピレン系発泡粒子の製造方法により得られたポリプロピレン系発泡粒子を、成形する工程を含む、ポリプロピレン系発泡成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂粒子の製造方法、ポリプロピレン系発泡粒子の製造方法およびポリプロピレン系発泡成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系発泡成形体は、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材をはじめ、断熱材、緩衝包装材、通い箱など様々な用途に用いられている。
【0003】
ところで、ポリプロピレン系樹脂は結晶性熱可塑性樹脂であるため、ポリスチレン等の非結晶性熱可塑性樹脂と比較して、ポリプロピレン系発泡粒子を成形して得られるポリプロピレン系発泡成形体は、成形後の収縮が大きい。従来、ポリプロピレン系樹脂の発泡体の収縮を抑制する手段として、ポリスチレン等非晶性樹脂をブレンドする方法が知られている(例えば、特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-302837号
【特許文献2】国際公開公報WO2022/149538
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来技術は、ポリプロピレン系樹脂粒子の生産性、および当該ポリプロピレン系樹脂粒子を用いて得られるポリプロピレン系発泡成形体の収縮抑制の観点において改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明の一実施形態の目的は、成形後の収縮が低減されたポリプロピレン系発泡成形体を提供し得る、ポリプロピレン系樹脂粒子を効率よく提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
〔1〕ポリプロピレン系樹脂100重量部と、ポリスチレン系樹脂5重量部~60重量部と、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体と、を含有するポリプロピレン系樹脂組成物を、ダイを備える押出機を用いて溶融混練する溶融混練工程と、
溶融混練されたポリプロピレン系樹脂組成物を、前記ダイから押出す押出工程と、
押出されたポリプロピレン系樹脂組成物を、40m/分以上の引取り速度で引取る引取り工程と、を含み、
前記スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体のスチレン単位含有量は、当該スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体100重量%中、35重量%以上であり、
前記ポリプロピレン系樹脂組成物中における、前記ポリスチレン系樹脂の含有量Mpsを前記スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体の含有量Msebsで除した値(Mps/Msebs)が1.5~6.5である、ポリプロピレン系樹脂粒子の製造方法。
〔2〕前記ポリスチレン系樹脂は、ポリスチレン単独重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/α-メチルスチレン共重合体および高分岐型発泡用スチレン系樹脂組成物からなる群から選択されるいずれか1種以上である、〔1〕に記載のポリプロピレン系樹脂粒子の製造方法。
〔3〕〔1〕または〔2〕に記載のポリプロピレン系樹脂粒子の製造方法により得られたポリプロピレン系樹脂粒子を、発泡する工程を含む、ポリプロピレン系発泡粒子の製造方法。
〔4〕〔3〕に記載のポリプロピレン系発泡粒子の製造方法により得られたポリプロピレン系発泡粒子を、成形する工程を含む、ポリプロピレン系発泡成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、成形後の収縮が低減されたポリプロピレン系発泡成形体を提供し得る、ポリプロピレン系樹脂粒子を効率よく提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0011】
本明細書において、重合体または共重合体に含まれる、X単量体に由来する構成単位を「X単位」と称する場合がある。
【0012】
本明細書において特記しない限り、構成単位として、X単位と、X単位と、・・・およびX単位(nは2以上の整数)とを含む共重合体を、「X/X/・・・/X共重合体」とも称する。X/X/・・・/X共重合体としては、明示されている場合を除き、重合様式は特に限定されず、ランダム共重合体であってもよく、交互共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよい。
【0013】
〔1.ポリプロピレン系樹脂粒子の製造方法〕
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂粒子の製造方法は、ポリプロピレン系樹脂100重量部と、ポリスチレン系樹脂5重量部~60重量部と、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体と、を含有するポリプロピレン系樹脂組成物を、ダイを備える押出機を用いて溶融混練する溶融混練工程と、溶融混練されたポリプロピレン系樹脂組成物を、前記ダイから押出す押出工程と、押出されたポリプロピレン系樹脂組成物を、40m/分以上の引取り速度で引取る引取り工程と、を含み、前記スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体のスチレン単位含有量は、当該スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体100重量%中、35重量%以上であり、前記ポリプロピレン系樹脂組成物中における、前記ポリスチレン系樹脂の含有量Mpsを前記スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体の含有量Msebsで除した値(Mps/Msebs)が1.5~6.5である。
【0014】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂粒子の製造方法で製造された(得られた)ポリプロピレン系樹脂粒子は、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂粒子といえる。本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂粒子を発泡することにより、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系発泡粒子を得ることができる。また、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系発泡粒子を成形することにより、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系発泡成形体を得ることができる。
【0015】
本明細書において、「ポリプロピレン系樹脂組成物」を「樹脂組成物」と称する場合があり、「ポリプロピレン系樹脂粒子」を「樹脂粒子」と称する場合があり、「ポリプロピレン系発泡粒子」を「発泡粒子」と称する場合があり、「ポリプロピレン系発泡成形体」を「発泡成形体」と称する場合がある。また、本明細書において、「本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂粒子」を「本樹脂粒子」と称する場合があり、「本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂粒子の製造方法」を「本製造方法」と称する場合がある。また、本明細書において、「スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンブロック共重合体」を、「SEBS」と称する場合がある。
【0016】
本製造方法は、前記構成を有するため、成形後の収縮が低減されたポリプロピレン系発泡成形体を提供し得る、ポリプロピレン系樹脂粒子を効率よく提供することができるという利点を有する。
【0017】
樹脂粒子の製造方法において、溶融混練された後、ダイから押出された樹脂組成物を引き取る際の引取り速度は、樹脂組成物の組成に応じて適宜設定される。特に、非結晶性熱可塑性樹脂であり、ポリオレフィン系樹脂と比較して脆いポリスチレン系樹脂を含む樹脂組成物の引取りに際しては、従来、押出された樹脂組成物(ストランド)の割れの防止または低減の観点から、引取り速度を遅く(例えば、40m/分以下)設定することがこの技術分野の常識であった。実際、本発明者は、鋭意検討の過程にて、特許文献1の技術において、押出されたポリプロピレン系樹脂組成物を40m/分以上の引取り速度で引取る場合、カット不良となる樹脂粒子の数が多いという知見を得た。すなわち、本発明者は、特許文献1のような従来技術では、ポリプロピレン系樹脂組成物の最大引き取り速度が遅い(少なくとも、40m/分未満である)という新規知見を独自に得た。そこで、本発明者は、樹脂粒子を効率的に得るため、樹脂組成物の最大引き取り速度を向上させることを目的として、鋭意検討を行った。結果、本発明者は、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体のスチレン単位含有量を特定の範囲内とし、かつ前記Mps/Msebsの上限値を特定の値以下とすることにより、樹脂組成物の最大引き取り速度を向上させることができるという新規知見を独自に得た。
【0018】
すなわち、本製造方法では、上述したように、(i)ポリプロピレン系樹脂組成物が、ポリプロピレン系樹脂100重量部と、ポリスチレン系樹脂5重量部~60重量部と、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体と、を含有し、(ii)スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体のスチレン単位含有量が、当該スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体100重量%中、35重量%以上であり、かつ(iii)ポリプロピレン系樹脂組成物中における、ポリスチレン系樹脂の含有量Mpsをスチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体の含有量Msebsで除した値(Mps/Msebs)が、1.5~6.5である。これにより、本製造方法では、溶融混練した後、ダイから押出されたポリプロピレン系樹脂組成物を40m/分以上の引取り速度で引取る場合であっても、カット不良となる樹脂粒子の数が少ないという利点を有する。換言すれば、本製造方法では、ポリプロピレン系樹脂組成物の最大引取り速度が40m/分以上であるため、ポリプロピレン系樹脂粒子を効率よく提供することができるという利点を有する。なお、ポリプロピレン系樹脂組成物の最大引取り速度の算出方法については、後述の実施例にて詳説する。
【0019】
また、本製造方法により得られる樹脂粒子、すなわち、本樹脂粒子は、当該樹脂粒子を発泡して発泡粒子とした後、さらに当該発泡粒子を成形することにより、発泡成形体を提供できる。本樹脂粒子を実質的に構成しているポリプロピレン系樹脂組成物は、上述した構成を有するため、本樹脂粒子が提供する発泡成形体は、従来品と比較して、成形後の収縮が低減されている、換言すれば、成形後の収縮が非常に少ないという利点を有する。本明細書中において、発泡成形体に関して、「成形後の収縮が低減される」ことを、「収縮性に優れる」と称する場合がある。例えば、「成形後の収縮が低減された発泡成形体」を、「収縮性に優れる発泡成形体」と称する場合がある。また、本明細書において、「成形後の収縮が抑制された発泡成形体を提供し得る樹脂粒子」を、「収縮抑制効果を示す樹脂粒子」と称する場合がある。以上のように、本製造方法によると、収縮抑制効果を示す樹脂粒子の提供と、当該樹脂粒子の効率的な提供とを、両立することができる。
【0020】
まず、本製造方法で使用する原料(材料)について説明する。
【0021】
(2-1.ポリプロピレン系樹脂)
本明細書において、「ポリプロピレン系樹脂」とは、当該ポリプロピレン系樹脂を構成している全構成単位100モル%中、プロピレン単位を50モル%以上含む樹脂を意図する。
【0022】
ポリプロピレン系樹脂は、(i)プロピレンの単独重合体であってもよく、(ii)プロピレンとプロピレン以外の単量体とのブロック共重合体、交互共重合体、ランダム共重合体もしくはグラフト共重合体であってもよく、または(iii)これらの2種以上の混合物であってもよい。
【0023】
ポリプロピレン系樹脂は、樹脂に含まれる全構造単位100モル%中、プロピレン単位を75モル%以上含むことが好ましい。
【0024】
樹脂粒子の発泡、および発泡粒子の成形において、低い加熱温度で樹脂粒子および発泡粒子を加工できるという利点があることから、ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンとプロピレン以外の単量体とのランダム共重合体であることが好ましい。
【0025】
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単位に加えて、プロピレン単量体以外の単量体に由来する構成単位を1単位以上有していてもよく、1種以上有していてもよい。ポリプロピレン系樹脂の製造で使用される「プロピレン単量体以外の単量体」を「コモノマー」と称する場合もある。ポリプロピレン系樹脂に含まれる「プロピレン単量体以外の単量体に由来する構成単位」を「コモノマー単位」と称する場合もある。
【0026】
コモノマーとしては、エチレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、3-メチル-1-ヘキセン、1-オクテンおよび1-デセンなどの炭素数2または4~12のα-オレフィンが挙げられる。
【0027】
ポリプロピレン系樹脂の具体例としては、ポリプロピレン単独重合体、エチレン/プロピレンランダム共重合体、1-ブテン/プロピレンランダム共重合体、1-ブテン/エチレン/プロピレンランダム共重合体、エチレン/プロピレンブロック共重合体、1-ブテン/プロピレンブロック共重体、プロピレン/塩素化ビニル共重合体、プロピレン/無水マレイン酸共重合体およびスチレン改質ポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。
【0028】
ポリプロピレン系樹脂として、上述した具体例の中の1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。樹脂粒子が良好な発泡性を有する点、および、発泡粒子が良好な成形性を有する点から、上述した具体例の中でも、ポリプロピレン系樹脂としては、エチレン/プロピレンランダム共重合体および/または1-ブテン/エチレン/プロピレンランダム共重合体が好ましい。
【0029】
ポリプロピレン系樹脂として、エチレン/プロピレンランダム共重合体または1-ブテン/エチレン/プロピレンランダム共重合体を用いる場合(場合Aとする)を考える。場合Aにて、エチレン/プロピレンランダム共重合体または1-ブテン/エチレン/プロピレンランダム共重合体におけるエチレン含有率としては、特に限定されないが、各共重合体100重量%中、0.2重量%~10.0重量%が好ましく、0.2重量%~5.0重量%がより好ましく、0.2重量%~1.0重量%がさらに好ましい。共重合体中のエチレン含有率とは、共重合体を構成している全構成単位100重量%中に含まれるエチレン単位の含有量(重量%)を意図する。エチレン/プロピレンランダム共重合体または1-ブテン/エチレン/プロピレンランダム共重合体中のエチレン含有率が、(i)0.2重量%以上である場合、樹脂粒子の発泡性、および/または、発泡粒子の成形性が良好となる傾向があり、(ii)10.0重量%以下である場合、発泡成形体の機械的物性が低下する虞がない。
【0030】
また、場合Aにて、1-ブテン/エチレン/プロピレンランダム共重合体における1-ブテン含有率としては、特に限定されないが、共重合体100重量%中、0.2重量%~10.0重量%が好ましく、1.0重量%~8.0重量%がより好ましく、2.0重量%~6.0重量%がさらに好ましく、3.0重量%~5.0重量%が特に好ましい。共重合体中の1-ブテン含有率とは、共重合体を構成している全構成単位100重量%中に含まれる1-ブテン単位の含有量(重量%)を意図する。1-ブテン/エチレン/プロピレンランダム共重合体中の1-ブテン含有率が、(i)0.2重量%以上である場合、樹脂粒子の発泡性、および/または、発泡粒子の成形性が良好となる傾向があり、(ii)10.0重量%以下である場合、発泡成形体の機械的物性が低下する虞がない。
【0031】
また、場合Aにて、1-ブテン/エチレン/プロピレンランダム共重合体におけるエチレン単位および1-ブテン単位の合計含有率としては、特に限定されないが、1-ブテン/エチレン/プロピレンランダム共重合体100重量%中、0.5重量%~10.0重量%が好ましく、1.0重量%~8.0重量%がより好ましく、2.0重量%~6.0重量%がさらに好ましく、3.0重量%~5.0重量%が特に好ましい。1-ブテン/エチレン/プロピレンランダム共重合体中のエチレン単位および1-ブテン単位の合計含有率が、(i)0.5重量%以上である場合、樹脂粒子の発泡性、および/または、発泡粒子の成形性が良好となる傾向があり、(ii)10.0重量%以下である場合、発泡成形体の機械的物性が低下する虞がない。
【0032】
ポリプロピレン系樹脂の融点としては、特に限定されないが、128.0℃~160.0℃が好ましく、130.0℃~158.0℃がより好ましく、133.0℃~156.0℃がより好ましく、135.0℃~154.0℃がより好ましく、138.0℃~152.0℃がさらに好ましく、140.0℃~150.0℃が特に好ましい。ポリプロピレン系樹脂の融点が、(i)128.0℃以上である場合、優れた耐熱性を有する発泡成形体を得ることができ、(ii)160.0℃以下である場合、発泡粒子の製造において発泡粒子の発泡倍率を高めることが容易になる。なお、ポリプロピレン系樹脂の融点の測定方法については、後述の実施例にて詳説する。
【0033】
ポリプロピレン系樹脂の230℃におけるメルトインデックス(MI)としては、特に限定されないが、3.0g/10分~30.0g/10分が好ましく、4.0g/10分~20.0g/10分がより好ましく、5.0g/10分~15.0g/10分がさらに好ましく、6.0g/10分~13.0g/10分が特に好ましい。なお、MIは「メルトフローレート(MFR)」と称する場合もある。ポリプロピレン系樹脂のMIが3.0g/10分以上である場合、発泡粒子の製造において発泡粒子の発泡倍率を高めることが容易になる。ポリプロピレン系樹脂のMIが30.0g/10分以下である場合、発泡粒子の気泡が連通化する虞がないという利点を有する。発泡粒子の連続気泡率が低いほど、当該発泡粒子を成形してなる発泡成形体の圧縮強度が高くなる傾向、および、表面性が良好となる傾向がある。なお、ポリプロピレン系樹脂のMIの測定方法については、後述の実施例にて詳説する。
【0034】
ポリプロピレン系樹脂は公知の方法で得ることができる。ポリプロピレン系樹脂を合成するときの重合触媒としては、特に制限はなく、例えば、チーグラー系触媒およびメタロセン触媒などを用いることができる。
【0035】
(2-2.ポリスチレン系樹脂)
本明細書において、ポリスチレン系樹脂とは、樹脂に含まれる全構成単位100重量%中、スチレン系単位を20重量%以上含む樹脂を意図する。ポリスチレン系樹脂は、非晶性樹脂といえる。なお、本明細書において、樹脂100重量%中、プロピレン単位を50重量%含む樹脂は、スチレン系単位を20重量%以上含む場合であっても、ポリスチレン系樹脂とは見なさない。また、後述する水添スチレン系共重合体(SEBSも含む)もまた、ポリスチレン系樹脂とは見なさない。
【0036】
ポリスチレン系樹脂は、(a)1種のスチレン系単量体の単独重合体であってもよく、(b)2種以上のスチレン系単量体のブロック共重合体、交互共重合体、ランダム共重合体もしくはグラフト共重合体であってもよく、(c)スチレン系単量体1種以上とスチレン系単量体以外の単量体1種以上とのブロック共重合体、交互共重合体、ランダム共重合体もしくはグラフト共重合体であってもよく、または(d)これらの2種以上の混合物であってもよい。
【0037】
スチレン系単量体としては、例えば、(a)スチレン、並びに、(b)α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、о-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、о-エチルスチレン、t-ブチルスチレン、およびクロルスチレン等のスチレン系誘導体、が挙げられる。
【0038】
これらスチレン系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。すなわち、ポリスチレン系樹脂が含むスチレン系単位は、1種であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。発泡性が良好であり、かつ、良好な収縮抑制効果を示す樹脂粒子を提供できることから、上述した中でも、スチレン系単量体としては、スチレンおよび/またはα-メチルスチレンが好ましい。すなわち、ポリスチレン系樹脂は、スチレン単位および/またはα-メチルスチレン単位を含むことが好ましい。
【0039】
スチレン系単量体以外の単量体としては、アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル;エチレン、プロピレン等のオレフィン;無水マレイン酸;塩化ビニル;塩化ビニリデン;ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、3-メチル-1,3-オクタジエン、4-エチル-1,3-ヘキサジエン等の、共役ジエン;および、その他のスチレン系単位と共重合可能な単量体などが挙げられる。
【0040】
これらスチレン系単量体以外の単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
ポリスチレン系樹脂が含む、スチレン系単位の量は、ポリスチレン系樹脂100重量%中、20重量%以上であり、30重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましい。ポリスチレン系樹脂が含む、スチレン系単位の量が上記の範囲内であれば、良好な収縮抑制効果を示す樹脂粒子を提供でき、成形後の収縮がより低減された発泡成形体を提供することができる。スチレン系単位の量の上限は特に限定されず、100重量%であってもよい。すなわち、ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単位のみから構成されてもよい。
【0042】
ポリスチレン系樹脂の具体例としては、ポリスチレン単独重合体;アクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/α-メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル/p-メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル/m-メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル/о-メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル/2,4-ジメチルスチレン共重合体、アクリロニトリル/p-エチルスチレン共重合体、アクリロニトリル/m-エチルスチレン共重合体、アクリロニトリル/о-エチルスチレン共重合体、アクリロニトリル/t-ブチルスチレン共重合体、およびアクリロニトリル/クロルスチレン共重合体等のアクリロニトリル単位およびスチレン系単位を含む共重合体;エチレン/スチレン共重合体;スチレン/無水マレイン酸共重合体;特開2013-100427に記載の高分岐型発泡用スチレン系樹脂組成物;等が挙げられる。
【0043】
これらポリスチレン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
発泡性に優れ、かつ、良好な収縮抑制効果を示す樹脂粒子を提供できるため、ポリスチレン系樹脂は、(i)(i-1)ポリスチレン単独重合体と、(i-2)アクリロニトリル単位およびスチレン系単位を含む共重合体と、(i-3)高分岐型発泡用スチレン系樹脂組成物と、からなる群から選択される1種以上であることが好ましく、(ii)ポリスチレン単独重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/α-メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル/p-メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル/m-メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル/о-メチルスチレン共重合体および高分岐型発泡用スチレン系樹脂組成物からなる群から選択される1種以上であることがより好ましく、(iii)ポリスチレン単独重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/α-メチルスチレン共重合体および高分岐型発泡用スチレン系樹脂組成物からなる群から選択される1種以上であることがさらに好ましい。
【0045】
ポリスチレン系樹脂のガラス転移温度(「Tg」と称する場合がある。)としては、特に限定されないが、90℃~140℃が好ましく、95℃~135℃がより好ましく、97℃~130℃がさらに好ましく、100℃~125℃が特に好ましい。ポリスチレン系樹脂のTgが、(i)90℃以上である場合、耐熱性に優れる発泡成形体を得ることができるという利点を有し、(ii)140℃以下である場合、連続気泡率の低い発泡粒子を得ることができる。なお、ポリスチレン系樹脂の融点の測定方法については、後述の実施例にて詳説する。
【0046】
ポリスチレン系樹脂の230℃におけるメルトインデックス(MI)は、特に制限は無いが、2.0g/10分~15.0g/10分が好ましく、3.0g/10分~12.0g/10分がより好ましく、4.0g/10分~10.0g/10分がさらに好ましい。MIが上述の範囲内であるポリスチレン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂との相溶性に優れ、得られる樹脂粒子を発泡させたときの連泡化を低減できる。その結果、連続気泡率の低い発泡粒子が得られるという利点を有する。なお、ポリスチレン系樹脂が、複数種類の共重合体の混合物である場合、ポリスチレン系樹脂のMIとは、当該混合物のMIを意図する。また、ポリスチレン系樹脂のMIの測定方法については、後述の実施例にて詳説する。
【0047】
樹脂組成物における、ポリスチレン系樹脂の含有量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、5重量部~60重量部であり、8重量部~55重量部がより好ましく、10重量部~50重量部がより好ましく、15重量部~35重量部がさらに好ましく、20重量部~30重量部が特に好ましい。ポリスチレン系樹脂の含有量が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、(a)5重量部以上である場合には、成形後の収縮が低減された発泡成形体を得ることができ、(b)60重量部以下である場合には、連続気泡率の低い発泡粒子を得ることができるという利点を有する。
【0048】
(2-3.スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンブロック共重合体(SEBS))
本発明の一実施形態において、SEBSは、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との相溶化効果を有する。換言すれば、SEBSは、相溶化剤として機能し得る。樹脂組成物がSEBSを含むことにより、得られる樹脂粒子は、発泡性に優れ、かつ、従来品と比較して成形後の収縮がより低減された発泡成形体を提供できるという利点を有する。
【0049】
SEBSは、(a)スチレン単位のみから構成されるスチレンブロック、(b)ブタジエン単位のみから構成されるブタジエンブロックおよび(c)スチレン単位のみから構成されるスチレンブロック、がこの順で結合してなる共重合体を水素添加して得られる共重合体である。より具体的に、SEBSは、(a)スチレン単位のみから構成されるスチレンブロック、(b)(b-1)1,2付加重合されたブタジエン単位を水添してなるブチレン単位と、(b-2)1,4付加重合されたブタジエン単位を水添してなるエチレン単位と、がランダムに結合しているブロック、および(c)前記スチレンブロックが、この順で結合してなる共重合体である。SEBSにおける、ブチレン単位とエチレン単位とがランダムに結合しているブロックは、ブタジエン単位を含んでいてもよい。
【0050】
SEBSのスチレン単位含有量は、当該SEBS100重量%中、35重量%以上である。当該構成により、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との相溶性を高めることができる。その結果、得られる樹脂粒子は、従来品と比較して成形後の収縮がより低減された発泡成形体を提供できるという利点を有する。
【0051】
SEBSのスチレン単位含有量は、当該SEBS100重量%中、35重量%~90重量%であることが好ましく、35重量%~85重量%であることが好ましく、35重量%~80重量%であることがさらに好ましく、35重量%~55重量%であることが特に好ましい。当該構成によると、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との相溶性をより高めることができる。その結果、得られる樹脂粒子は、成形後の収縮がさらに低減された発泡成形体を提供できるという利点を有する。
【0052】
樹脂組成物における、SEBSの含有量としては、特に限定されないが、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、3.0重量部~30.0重量部が好ましく、4.0重量部~25.0重量部がより好ましく、5.0重量部~20.0重量部がより好ましく、5.0重量部~15.0重量部がさらに好ましく、5.0重量部~10.0重量部が特に好ましい。SEBSの含有量が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して3.0重量部以上である場合、SEBSによるポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との相溶化効果が十分に発揮されるという利点を有する。SEBSの含有量が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して30.0重量部以下である場合、(a)発泡性に優れる発泡粒子が得られ、(b)発泡粒子を成形してなる発泡成形体の剛性が十分となり、かつ(c)従来品と比較して成形後の収縮がより低減された発泡成形体が得られるという利点を有する。
【0053】
ポリスチレン系樹脂の含有量MpsをSEBSの含有量Msebsで除した値(Mps/Msebs)は、1.5~6.5である。当該構成により、得られる樹脂粒子は良好な発泡性を有し、結果として、従来品と比較して成形後の収縮がより低減された発泡成形体を提供できるという利点を有する。
【0054】
Mps/Msebsは、2.0~6.0が好ましく、2.5~5.5がより好ましく、3.0~5.0がさらに好ましく、3.5~4.5が特に好ましい。当該構成によると、得られる樹脂粒子はより良好な発泡性を有し、結果として、従来品と比較して成形後の収縮がさらに低減された発泡成形体を提供できるという利点を有する。
【0055】
SEBSは、水添スチレン系共重合体ともいえる。水添スチレン系共重合体は、SEBSと同様に、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との相溶化効果を有する。換言すれば、水添スチレン系共重合体は、SEBSと同様に、相溶化剤として機能し得る。
【0056】
樹脂組成物は、SEBS以外の水添スチレン系共重合体をさらに含んでいてもよい。
【0057】
本明細書において、「水添スチレン系共重合体」とは、スチレン単位のみから構成されるスチレンブロックと共役ジエン系単位のみからなる共役ジエン系ブロックとを含むブロック共重合体(以下、共重合体Xとも称する。)を水素添加して得られる共重合体である。本明細書において「水素添加」を「水添」と称する場合がある。より具体的に、「水添スチレン系共重合体」とは、共重合体Xの共役ジエン系単位中の炭素-炭素二重結合の少なくとも一部が飽和されるように、共重合体Xを水素添加して得られる共重合体を意図する。
【0058】
共重合体Xに含まれる共役ジエン系単位としては、ブタジエン単位、イソプレン単位、1,3-ペンタジエン単位、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン単位、3-メチル-1,3-オクタジエン単位、または4-エチル-1,3-ヘキサジエン単位等が挙げられるが、特に限定されない。
【0059】
水添スチレン系共重合体の製造において、共重合体Xの共役ジエン系単位中の炭素-炭素二重結合は、少なくともその一部が飽和されていればよく、そのすべてが飽和されている必要はない。換言すれば、水添スチレン系共重合体は、水添スチレン系共重合体の製造に使用した共重合体Xが含んでいる共役ジエン系単位を含んでいてもよい。より具体的には、共重合体Xが共役ジエン系単位としてブタジエン単位を含む場合、当該共重合体Xを水添してなる水添スチレン系共重合体は、(a)水素が付加されなかったブタジエン単位を含んでいてもよく、(b-1)水素がブタジエン単位の炭素-炭素二重結合に1,2付加重合されてなるブチレン単位を含んでいてもよく、(b-2)水素がブタジエン単位の炭素-炭素二重結合に1,4付加重合されてなるエチレン単位を含んでいてもよい。
【0060】
水添スチレン系共重合体において、製造に使用した共重合体Xの共役ジエン系単位全量のうち、炭素-炭素二重結合に水素が添加されている共役ジエン系単位の割合(以下、「水素添加率」と称する場合がある)は、50%以上であることが好ましく、70%~100%であることがより好ましく、80%~100%であることがさらに好ましい。水添スチレン系共重合体の水素添加率が上記の範囲である場合、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との界面に、水添スチレン系共重合体が存在しやすくなり、水添スチレン系共重合体の相溶化効果が向上する傾向がある。水添スチレン系共重合体の水素添加率は、100%であってもよい。
【0061】
SEBS以外の水添スチレン系共重合体としては、特に限定されないが、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレンブロック共重合体(SEPS)などが挙げられる。SEPSは、(a)スチレン単位のみから構成されるスチレンブロック、(b)イソプレン単位のみから構成されるイソプレンブロックおよび(c)スチレン単位のみから構成されるスチレンブロック、がこの順で結合してなる共重合体(共重合体X)を水素添加して得られる共重合体である。より具体的に、SEPSは、(a)スチレン単位のみから構成されるスチレンブロック、(b)イソプレン単位を水添してなる、エチレン単位およびプロピレン単位がランダムに結合しているブロック、および(c)前記スチレンブロックが、この順で結合してなる共重合体である。
【0062】
水添スチレン系共重合体の中でも、SEBSは、比較的強度が高いという利点、および他の水添スチレン系共重合体よりもポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との相溶化能力が高いという利点がある。それ故、SEBSを使用する本製造方法により得られる樹脂粒子は、発泡時に発泡粒子が破泡しにくくなるため、当該発泡粒子を成形して得られる成形体の強度が高くなる傾向があるという利点を有する。
【0063】
SEBS以外の水添スチレン系共重合体のスチレン単位含有量としては、特に限定されないが、当該水添スチレン系共重合体100重量%中、5重量%~90重量%であることが好ましく、10重量%~85重量%であることが好ましく、15重量%~80重量%であることがより好ましく、25重量%~55重量%であることがより好ましい。当該構成によると、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との相溶性を高めることができるという利点を有する。特に、SEBS以外の水添スチレン系共重合体のスチレン単位含有量が当該水添スチレン系共重合体100重量%中、15重量%以上である場合、従来品と比較して成形後の収縮がより低減された発泡成形体が得られる傾向がある。
【0064】
樹脂組成物において、SEBSの含有量とSEBS以外の水添スチレン系共重合体の含有量との合計量としては、特に限定されないが、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、3.0重量部~30.0重量部が好ましく、4.0重量部~25.0重量部がより好ましく、5.0重量部~20.0重量部がより好ましく、5.0重量部~15.0重量部がさらに好ましく、5.0重量部~10.0重量部が特に好ましい。前記合計量が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して3.0重量部以上である場合、SEBSおよびSEBS以外の水添スチレン系共重合体によるポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との相溶化効果が十分に発揮されるという利点を有する。前記合計量が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して30.0重量部以下である場合、(a)発泡性に優れる発泡粒子が得られ、(b)発泡粒子を成形してなる発泡成形体の剛性が十分となり、かつ(c)従来品と比較して成形後の収縮がより低減された発泡成形体が得られるという利点を有する。
【0065】
ポリスチレン系樹脂の含有量Mpsを、SEBSの含有量と水添スチレン系共重合体の含有量との合計量Mhyで除した値(Mps/Mhy)は、1.5~6.5であることが好ましく、2.0~6.0が好ましく、2.5~5.5がより好ましく、3.0~5.0がさらに好ましく、3.5~4.5が特に好ましい。当該構成によると、得られる樹脂粒子は良好な発泡性を有し、それを発泡してなる本発泡粒子は、成形により収縮率の小さな成形体を提供することができるという利点を有する。
【0066】
(2-4.その他の樹脂等)
樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、樹脂成分として、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、SEBSおよびSEBS以外の水添スチレン系共重合体、以外の樹脂(その他の樹脂等、と称する場合がある。)をさらに含んでいてもよい。前記その他の樹脂等としては、(a)高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、およびエチレン/メタアクリル酸共重合体などのエチレン系樹脂、(b)ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテルなどのポリフェニレンエーテル系樹脂、(c)プロピレン/α-オレフィン系ワックスなどのポリオレフィン系ワックス、並びに(d)エチレン/プロピレンゴム、エチレン/ブテンゴム、エチレン/ヘキセンゴム、エチレン/オクテンゴムなどのオレフィン系ゴム、などが挙げられる。なお、ポリフェニレンエーテル系樹脂は非晶性樹脂である。
【0067】
樹脂組成物がその他の樹脂等を含む場合、当該樹脂組成物における、その他の樹脂等の含有量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、例えば、0.1重量部~20.0重量部であり、0.5重量部~15.0重量部がより好ましく、1.0重量部~10.0重量部がさらに好ましく、3.0重量部~8.0重量部がよりさらに好ましい。その他の樹脂等の含有量が、上記の範囲内である場合、樹脂粒子の収縮抑制効果、発泡粒子の成形性、および、得られる発泡成形体の強度、の3つのバランスに優れるという利点を有する。
【0068】
(2-5.添加剤)
樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、SEBSおよびSEBS以外の水添スチレン系共重合体の他に、さらに任意で添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、着色剤、親水性化合物、結晶核剤、帯電防止剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、導電剤、滑剤等が挙げられる。このような添加剤は、樹脂組成物に添加することにより得られる樹脂粒子へ含有させてもよく、樹脂粒子を発泡するときに、分散液へ直接添加してもよい。
【0069】
親水性化合物は、樹脂粒子中の含浸水分量を増加させることを目的として、使用される物質である。樹脂組成物が親水性化合物を含む場合、樹脂粒子に発泡性を付与することができる。親水性化合物による樹脂粒子への発泡性付与効果は、発泡剤として水を用いる場合に特に顕著になる。
【0070】
本発明の一実施形態で用いられ得る親水性化合物としては、例えば、グリセリン化合物、ポリエチレングリコール、C12~C18の脂肪族アルコール類(例えば、ペンタエリスリトール、セチルアルコール、ステアリルアルコール)、メラミン、イソシアヌル酸、メラミン-イソシアヌル酸縮合物、ホウ酸亜鉛等が挙げられる。これら親水性化合物の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の親水性化合物を混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。
【0071】
樹脂組成物における親水性化合物の含有量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.01重量部~1.00重量部であることが好ましく、0.05重量部~0.70重量部であることがより好ましく、0.10重量部~0.60重量部であることがさらに好ましい。親水性化合物の含有量が、(i)0.01重量部以上である場合、親水性化合物による発泡性付与効果を十分に得ることができ、(ii)1.00重量部以下である場合、得られる発泡粒子が過度に収縮する虞がない。
【0072】
樹脂組成物に配合される結晶核剤は、樹脂粒子を発泡するときに発泡核となり得る物質である。樹脂組成物は結晶核剤を含むことが好ましい。
【0073】
本発明の一実施形態で用いられ得る結晶核剤としては、例えば、1粒子当たりの平均粒子径が1000nm超のタルク、長石、ゼオライト、カオリン、マイカ、ステアリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、ベントナイト、硫酸バリウム、ホウ酸亜鉛等が挙げられる。なお、これら結晶核剤の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の結晶核剤を混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。
【0074】
樹脂組成物における結晶核剤の含有量は、平均気泡径の均一性の観点から、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.01重量部~2.00重量部が好ましく、0.02重量部~1.00重量部がより好ましく、0.03重量部~0.50重量部がさらに好ましい。
【0075】
続いて、本製造方法の各工程について説明する。
【0076】
(2-6.溶融混練工程)
溶融混練工程は、押出機を用いて樹脂組成物を溶融混練する工程である。
【0077】
押出機としては、特に限定されず、単軸押出機および二軸押出機などが挙げられる。混練性に優れ、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との相溶性を高めることができることから、押出機としては、二軸押出機が好ましい。
【0078】
ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂およびSEBS、並びに必要に応じて用いられるSEBS以外の水添スチレン系共重合体、その他の樹脂等および添加剤は、押出機に投入する前にあらかじめそれらの一部または全てがブレンドされていてもよい。あるいは、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂およびSEBS、並びに必要に応じて用いられるSEBS以外の水添スチレン系共重合体、その他の樹脂等および添加剤は、各々独立して、または一部を組み合わせて、押出機に投入してもよい。
【0079】
樹脂組成物を溶融混練するときの温度(樹脂温度)は、特に限定されないが、例えば、180℃~270℃が好ましく、190℃~260℃がより好ましく、200℃~250℃がさらに好ましい。当該構成によると、樹脂組成物(特に樹脂成分)の劣化を防ぎつつ、2種以上の樹脂の相溶性を高められるという利点を有する。なお、樹脂温度は、溶融混練温度または加熱温度と称される場合もある。樹脂温度は、例えば、ダイの直前に設けられた温度計によって、ダイから押出される直前の樹脂組成物(溶融混練物)の温度を測定して得ることができる。
【0080】
(2-7.押出工程)
押出工程は、溶融混練された樹脂組成物(「溶融混練物」と称する場合もある。)を、押出機に設けられたダイから押出す工程である。より具体的に、樹脂組成物は、押出機が備えるダイに設けられた吐出孔を通して、例えばストランド状に、押出される。
【0081】
ダイには、1つ以上の吐出孔が設けられている。ダイに設けられた吐出孔の数は、特に限定されないが、例えば、10個~40個である。
【0082】
吐出孔1つあたりの面積は、特に限定されないが、例えば、1.0mm~8.0mmである。吐出孔1つあたりの面積とは、吐出孔1つあたりの吐出孔の断面の面積(断面積)を意図する。本明細書において、「吐出孔の断面」とは、樹脂組成物(溶融混練物)が押し出される方向(押出方向)に対して垂直な面にそって、吐出孔を切断したときに得られる断面を意図する。吐出孔1つあたりの面積は、吐出孔の断面形状、および吐出孔の断面径などを変更することで調整され得る。
【0083】
吐出量は、とくに限定されないが、例えば、30kg/時~60kg/時である。吐出量とは、押出機のダイから単位時間あたりに押出されるポリプロピレン系樹脂組成物の量を意図する。ダイが複数の吐出孔を有する場合、吐出量は、複数の吐出孔から、単位時間あたりに押出されるポリプロピレン系樹脂組成物の総量ともいえる。
【0084】
(2-8.引取り工程)
引取り工程は、ダイから押出された樹脂組成物(溶融混練物)を、40m/分以上の引取り速度で引取る工程である。
【0085】
溶融混練物を引取るため装置としては、特に限定されず、公知の引取り装置を使用できる。また、続く細断工程を行う場合、樹脂組成物を細断装置で引取りつつ細断してもよい。
【0086】
前記引取り速度は、1つの吐出孔から押出された樹脂組成物(溶融混練物)の引取り速度を意図する。ダイに複数の吐出孔が設けられており、複数の吐出孔から樹脂組成物(溶融混練物)が押出される場合、「押出されたポリプロピレン系樹脂組成物を、40m/分以上の引取り速度で引取る」とは、各々の吐出孔から押出された樹脂組成物の引取り速度が、全て40m/分以上であることを意図する。
【0087】
引取り速度が速いほど、樹脂粒子を効率よく提供することができる。それゆえ、引取り速度は、41m/分以上が好ましく、42m/分以上がより好ましく、43m/分以上がさらに好ましく、44m/分以上が特に好ましい。引取り速度の上限は、特に限定されないが、例えば、100mm/分以下が好ましい。
【0088】
(2-9.その他の工程)
本製造方法は、溶融混練工程、押出工程および引取り工程に加えて、さらに、冷却工程および細断工程を備えていてもよい。
【0089】
(冷却工程)
冷却工程は、押出工程と引取り工程の間に実施される工程であり、ダイから押出された溶融混練物(樹脂組成物)を冷却する工程である。冷却工程を実施する場合、溶融混練物を固化することができる。これにより、続く引取り工程において、樹脂組成物の引取りが容易となるという利点、および細断工程において、樹脂組成物の細断が容易となる利点を有する。
【0090】
溶融混練物(樹脂組成物)を冷却する方法としては、特に限定されず、例えば、(i)冷却装置を用いて溶融混練物を冷却する方法、または(ii)溶融混練物を室温に放置することのみによる、いわゆる自然冷却が挙げられる。
【0091】
冷却装置としては、冷却媒体として水を備える水槽および水路等が挙げられる。
【0092】
冷却媒体(例えば、水)の温度としては、特に限定されないが、例えば、15℃~40℃である。
【0093】
冷却工程を実施する場合、引取り工程は、ダイから押出された後に冷却された溶融混練物(樹脂組成物)を、40m/分以上の引取り速度で引取る工程、となる。
【0094】
(細断工程)
細断工程は、引取り工程と同時に、または引取り工程の後に実施される工程である。細断工程は、樹脂組成物を引取りつつ所望の形状に成形および細断するか、引取られた樹脂組成物を所望の形状に成形および細断し、樹脂粒子を得る工程である。
【0095】
細断装置としては、特に限定されないが、例えば、回転式のカッター刃(回転刃)を備えるペレタイザー等が挙げられる。細断装置が備える刃の数は、特に限定されないが、例えば、5個~20個である。
【0096】
細断装置が回転刃を備えている場合、回転刃の回転速度は、特に限定されないが、例えば、1500rpm~4000rpmである。
【0097】
従来技術のように、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体のスチレン単位含有量が35重量%未満であるか、および/またはMps/Msebsが1.5未満もしくは6.5超である場合、回転刃の回転速度を速く(例えば1500rpm以上)すると、カット不良の樹脂粒子が得られる傾向があった。本製造方法であれば、驚くべきことに、回転刃の回転速度を速く(例えば1500rpm以上)する場合でも、カット不良の樹脂粒子が無いかまたは得られるとしても非常に少ない、という利点を有する。
【0098】
細断装置は、樹脂組成物を引取る機能を備えていてもよい。この場合、上述したように、樹脂組成物を細断装置で引取りつつ、細断することができる。
【0099】
細断装置にて成形および細断してなる樹脂粒子の形状としては、特に限定されず、例えば、円柱状、楕円状、球状、立方体状、直方体状、筒状(ストロー状)等が挙げられる。
【0100】
以上のようにして得られる樹脂粒子の一粒あたりの重量としては、0.5mg/粒~3.0mg/粒が好ましく、0.7mg/粒~2.5mg/粒がより好ましい。樹脂粒子の一粒あたりの重量が、(a)0.5mg/粒以上である場合、樹脂粒子のハンドリング性が向上する傾向があり、(b)3.0mg/粒以下である場合、金型を用いて発泡粒子を型内発泡成形する際、発泡粒子の金型充填性が向上する傾向がある。
【0101】
〔2.ポリプロピレン系発泡粒子の製造方法〕
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系発泡粒子の製造方法は、前記〔1.ポリプロピレン系樹脂粒子の製造方法〕に記載の製造方法により製造して得られたポリプロピレン系樹脂粒子を、発泡する工程を含む。
【0102】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系発泡粒子の製造方法は、前記構成を有するため、成形後の収縮が低減されたポリプロピレン系発泡成形体を提供し得る、ポリプロピレン系発泡粒子を提供することができるという利点を有する。
【0103】
ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡する工程(発泡工程)の態様としては、樹脂粒子を発泡させることができる限り、特に限定されない。本発明の一実施形態において、発泡工程は、以下の(a)~(d)の工程を含むことが好ましい:
(a)容器内にて、樹脂粒子と、発泡剤と、必要に応じて分散剤および/または分散助剤とを水系分散媒中に分散させる分散工程と、
(b)容器内温度を一定温度まで昇温し、かつ容器内圧力を一定圧力まで昇圧する昇温-昇圧工程と、
(c)容器内温度を一定温度で保持し、かつ容器内圧力を一定圧力で保持する保持工程と、
(d)容器の一端を解放し、容器内の分散液を、発泡圧力(すなわち、容器内圧力)よりも低圧の領域(空間)に放出する放出工程。
【0104】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系発泡粒子の製造方法により製造して得られたポリプロピレン系発泡粒子もまた、本発明の一実施形態といえる。
【0105】
(発泡粒子の発泡倍率)
本発明の一実施形態に係る発泡粒子は、発泡倍率が10.0倍~50.0倍であることが好ましく、11.0倍~40.0倍であることがより好ましく、13.0倍~25.0倍であることがさらに好ましく、15.0倍~20.0倍であることが特に好ましい。発泡粒子の発泡倍率が(i)10.0倍以上であれば、軽量な発泡成形体を、生産効率よく得ることができ、(ii)50.0倍以下であれば、得られる発泡成形体の強度が不足する虞がないという利点を有する。なお、発泡粒子の発泡倍率の測定方法については、後の実施例にて詳説する。
【0106】
(連続気泡率)
本発明の一実施形態に係る発泡粒子の連続気泡率は、低いほど好ましい。本発明の一実施形態に係る発泡粒子の連続気泡率は、15.0%以下であることが好ましく、10.0%以下であることがより好ましく、9.0%以下であることがより好ましく、8.0%以下であることがより好ましく、7.0%以下であることがより好ましく、6.0%以下であることがさらに好ましく、5.0%以下であることが特に好ましい。発泡粒子の連続気泡率の下限値は特に限定されず、例えば0.0%以上である。当該構成によると、(a)発泡粒子の成形時に、セルが破泡して収縮することがほとんどないため、当該発泡粒子が成形性に優れるという利点、および(b)当該発泡粒子を用いて得られた発泡成形体において、形状の任意性、緩衝性、軽量性、圧縮強度および断熱性などの特徴がより発揮されるという利点を有する。発泡粒子の連続気泡率は、例えば、ポリスチレン系樹脂および/またはSEBSの使用量、すなわちポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂の相溶状態などにより制御することができる。なお、発泡粒子の連続気泡率の測定方法については、後の実施例にて詳説する。
【0107】
〔3.ポリプロピレン系発泡成形体の製造方法〕
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系発泡成形体の製造方法は、前記〔2.ポリプロピレン系発泡粒子の製造方法〕に記載の製造方法により製造して得られたポリプロピレン系発泡粒子を、成形する工程を含む。
【0108】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系発泡成形体の製造方法は、前記構成を有するため、成形後の収縮が低減されたポリプロピレン系発泡成形体を提供することができるという利点を有する。
【0109】
ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡する工程(発泡工程)の態様としては、樹脂粒子を発泡させることができる限り、特に限定されない。本発明の一実施形態において、発泡工程は、以下の(a)~(d)の工程を含むことが好ましい:
発泡粒子を成形する工程(成形工程)の態様としては、発泡粒子を成形することができる限り、特に限定されない。本発明の一実施形態において、発泡粒子の成型方法は、例えば金型を使用する型内発泡成形であり、成形工程は、以下(a)~(f)を順に行う工程であることが好ましい:
(a)駆動し得ない固定型と駆動可能な移動型とから構成される金型を型内発泡成形機に搭載する。ここで、固定型および移動型は、固定型に向かって移動型を駆動させる(当該操作を「型閉じ」と称する場合がある)ことにより、固定型および移動型の内部に成形空間を形成可能である;
(b)固定型と移動型とが完全に型閉じされないように、固定型と移動型との間にわずかな隙間(クラッキングとも称する)が形成されるように、固定型に向かって移動型を駆動させる;
(c)固定型および移動型の内部に形成された成形空間内に、例えば充填機を通して、発泡粒子を充填する;
(d)固定型と移動型とが完全に型閉じするように移動型を駆動させる(すなわち、完全に型閉じする);
(e)金型を水蒸気で予熱した後、金型を水蒸気で一方加熱および逆一方加熱し、さらに金型を水蒸気で両面加熱することにより、型内発泡成形を行う;
(f)金型を水冷し、取り出し後の型内発泡成形物の変形を抑制できる程度まで冷却した後、型内発泡成形物を金型から取り出し、乾燥(例えば、75℃で乾燥)することで、発泡成形体を得る。
【0110】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系発泡成形体の製造方法により製造して得られた発泡成形体もまた、本発明の一実施形態といえる。本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系発泡成形体は、成形後の収縮が非常に少ないという利点を有する。
【0111】
(対金型収縮率)
本明細書において、発泡成形体に関して「成形後の収縮が非常に少ない」とは、以下の(1)~(3)の方法によって測定して求められる対金型収縮率が小さいことを意図する:(1)寸法が既知である金型(例えば、長手方向369mm×短手方向319mm×厚み方向50mm)を用いて、発泡粒子を型内発泡成形する。ここで、金型の長手方向の長さをL0とする;(2)得られる発泡成形体の長手方向の長さL1を測定する。;(3)下記式に従って対金型収縮率(%)を算出する:
対金型収縮率(%)=((L0-L1)×100)/L0。
【0112】
本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系発泡成形体は、対金型収縮率が1.0%以下であることが好ましく、0.9%以下であることがより好ましく、0.8%以下であることがさらに好ましく、0.7%以下であることが特に好ましい。対金型収縮率が1.0%以下である発泡成形体は、製造によって得られる発泡成形体において、発泡成形体の収縮による寸法上のばらつきが生じ難い、収縮が抑制された(収縮がほとんどない)発泡成形体であるといえる。収縮が抑制された発泡成形体を提供し得る樹脂粒子、発泡粒子、および当該発泡成形体は、金属などの他の素材と一体成型されるインサート成形の分野において、特に好適に利用できるという利点を有する。
【実施例0113】
以下、実施例および比較例をあげて、本発明の一実施形態をより詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0114】
〔材料〕
以下に、実施例および比較例で使用した材料について説明する。
【0115】
(ポリプロピレン系樹脂)
・ポリプロピレン系樹脂:1ブテン/エチレン/プロピレン系ランダム共重合体(融点149℃、1-ブテン含有率3.8重量%、エチレン含有率0.5重量%およびMI=10.1g/10分)
(ポリスチレン系樹脂)
・ポリスチレン系樹脂-1:ポリスチレン(スチレン単独重合体)(Tg101℃およびMI=7.0g/10分)
・ポリスチレン系樹脂-2:アクリロニトリル/α-メチルスチレン共重合体(Tg121℃、MI=4.9g/10分、およびα-メチルスチレン含量70重量%)
(水添スチレン系共重合体)
・SEBS-1:Dynaron(登録商標)9901P(JSR株式会社製、スチレン単位含有量53重量%)
・SEBS-2:Dynaron(登録商標)8903P(JSR株式会社製、スチレン単位含有量35重量%)
・SEBS-3:Dynaron(登録商標)8300P(JSR株式会社製、スチレン単位含有量9重量%)
・SEBS-4:Tuftech(登録商標)H1041(旭化成株式会社製、スチレン単位含有量30重量%)
・SEBS以外の水添スチレン系共重合体:TR2250(JSR株式会社製、スチレン単位含有量50重量%)
(添加剤)
(親水性化合物)
・グリセリン:精製グリセリンD(ライオン株式会社製)
・ホウ酸亜鉛:ホウ酸亜鉛2335(富田製薬株式会社製)
(結晶核剤)
・タルク:タルカンパウダー(登録商標)PK-S(林化成株式会社製)。
【0116】
〔測定方法〕
実施例および比較例において実施した各種項目の測定および評価方法に関して、以下に説明する。
【0117】
(ポリプロピレン系樹脂の融点)
ポリプロピレン系樹脂の融点は、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(株)製、DSC6200型)を用いたDSC法により測定して求められる値とした。具体的な操作手順は以下(1)~(4)の通りであった:(1)ポリプロピレン系樹脂5mg~6mgの温度を10.0℃/分の昇温速度で40.0℃から220.0℃まで昇温することにより、当該ポリプロピレン系樹脂を融解させた;(2)その後、融解されたポリプロピレン系樹脂の温度を10.0℃/分の降温速度で220.0℃から40.0℃まで降温することにより当該ポリプロピレン系樹脂を結晶化させた;(3)その後、さらに、結晶化されたポリプロピレン系樹脂の温度を10.0℃/分の昇温速度で40.0℃から220.0℃まで昇温した;(4)2回目の昇温時(すなわち(3)のとき)に得られる当該ポリプロピレン系樹脂のDSC曲線のピーク(融解ピーク)の温度を当該ポリプロピレン系樹脂の融点とした。なお、上述の方法により、2回目の昇温時に得られる、ポリプロピレン系樹脂のDSC曲線において、ピーク(融解ピーク)が複数存在する場合、融解熱量が最大のピーク(融解ピーク)の温度を、当該ポリプロピレン系樹脂の融点とした。
【0118】
(ポリスチレン系樹脂のガラス転移温度(Tg))
ポリスチレン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121(1987)により示差走査熱量測定(示差走査熱量計[セイコーインスツルメンツ(株)製、DSC6200型])にて得られるDSC曲線の中間点ガラス転移温度として求めた。尚、ガラス転移温度を求めるための試験片はJIS K7121(1987)の3.試験片の状態調節(3)記載の『一定の熱処理を行った後、ガラス転移温度を測定する場合』に準拠して試験片をDSC装置の容器に入れ、210℃まで10℃/分にて昇温して加熱溶解させ、直ちに30℃まで10℃/分にて冷却する状態調整を行ったものを試験片とした。
【0119】
(ポリプロピレン系樹脂およびポリスチレン系樹脂のMI)
ポリプロピレン系樹脂およびスチレン系樹脂のMIは、それぞれ、JIS K7210:1999に記載のMI測定器を用い、以下の条件下で測定して求められる値とした:オリフィスの直径が2.0959±0.005mmφ、オリフィスの長さが8.000±0.025mm、荷重が2.16kgf、かつ温度が230℃(230±0.2℃)。
【0120】
(発泡粒子(1段発泡粒子)の連続気泡率)
発泡粒子(1段発泡粒子)の連続気泡率は、空気比較式比重計[東京サイエンス(株)製、モデル1000]を用いて、ASTM D2856-87の手順C(PROSEDURE C)に記載の方法に従って、測定して求めた。より具体的には、発泡粒子の連続気泡率は、以下(1)~(4)を順に実施して算出した:(1)空気比較式比重計を用いて発泡粒子の体積Vc(cm)を測定した;(2)次いで、Vcを測定後の発泡粒子の全量を、メスシリンダーに入っているエタノール中に沈めた;(3)その後、メスシリンダーにおけるエタノールの位置の上昇量から、発泡粒子の見かけ上の体積Va(cm)を求めた;(4)以下の式により、発泡粒子の連続気泡率を算出した:
連続気泡率(%)=((Va-Vc)×100)/Va。
【0121】
(発泡粒子(1段発泡粒子)の発泡倍率)
発泡粒子(1段発泡粒子)の発泡倍率は、以下(1)~(6)の方法によって算出して求められる値とした:(1)一定量の発泡粒子の重量Gi(g)を小数点以下第3位まで(すなわち0.001gの単位まで)正確に測定した(小数点以下4桁目を四捨五入);(2)次に、重量Giを測定した発泡粒子の全量を、メスシリンダー内に収容された23℃、100mLの水中に浸漬させた;(3)メスシリンダーの液面位置の上昇分に基づき当該発泡粒子の体積yi(cm)を測定した;(4)発泡粒子の重量Gi(g)を当該発泡粒子の体積yi(cm)で除し、これをg/L単位に換算することにより発泡粒子の見かけ密度di(g/L)算出した;(5)発泡粒子の代わりに発泡粒子の製造に使用した樹脂粒子を用いて(1)~(4)と同様の操作を行うことにより、樹脂粒子の密度ds(g/L)を算出した;(6)以下の式によって発泡粒子の発泡倍率を算出する:
発泡倍率Ki=ds/di。
【0122】
(発泡成形体の対金型収縮率)
発泡成形体の対金型収縮率の測定方法は以下の(1)~(3)のとおりであった:(1)寸法が既知である金型(長手方向370mm×短手方向320mm×厚み方向50mm)を用いて、発泡粒子を型内発泡成形した。ここで、金型の長手方向の長さをL0とした;(2)得られた発泡成形体の長手方向の長さL1を測定した;(3)下記式に従って対金型収縮率(%)を算出した:
対金型収縮率(%)=((L0-L1)×100)/L0。
【0123】
(最大引取り速度)
各実施例および比較例について、細断装置の引取速度を44m/分に設定し、かつ後述する方法でポリプロピレン系樹脂粒子を作製し、得られたポリプロピレン系樹脂粒子25gを計量カップで秤量した。25gのポリプロピレン系樹脂粒子について、目視でカット不良のポリプロピレン系樹脂粒子の数を確認した。カット不良の樹脂粒子とは、(i)他の多くの樹脂粒子と比較して明らかに長さが長い樹脂粒子、(ii)砕けた樹脂粒子、(iii)2つ以上の樹脂粒子が切断されずつながっているもの、などである。続いて、カット不良のポリプロピレン系樹脂粒子が6個以上の場合、引取り速度を2m/分または1m/分下げ、樹脂粒子の形状が変わらないよう、吐出量および細断装置の回転刃の回転速度などを調整して、再度、ポリプロピレン系樹脂粒子を作製した。なお、引取り速度については、引取り速度44m/分~40m/分の間では引取り速度を2m/分ずつ下げ、引取り速度40m/分以下では引取り速度を1m/分ずつ下げた。続いて、得られたポリプロピレン系樹脂粒子25gを計量カップで秤量し、25gのポリプロピレン系樹脂粒子について、目視でカット不良のポリプロピレン系樹脂粒子の数を確認した。カット不良の樹脂粒子が5個以下となるまでこの作業を繰り返し、カット不良が5個以下となったときの引取り速度を最大引取り速度とした。
【0124】
なお、上述したように、細断装置の引取速度を44m/分に設定したところから最大引取り速度を測定した。すなわち、44m/分を超える引取速度については、測定を実施していない。それゆえ、実施例1、3および7については、44m/分を超える引取り速度で引取り可能であることを否定するものではなく、実施例1、3および7については「最大引取り速度」に替えて「引取り可能速度」ともいえる。
【0125】
〔実施例1〕
(ポリプロピレン系樹脂粒子の作製)
ポリプロピレン系樹脂が100重量部、ポリスチレン系樹脂-1が25重量部、SEBS-1が7重量部、グリセリンが0.25重量部、およびタルクが0.05重量部となるように計量し、オーエヌ機械社製の小型タンブラーを用いてこれらをドライブレンドし、ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。ここで、SEBS-1は、マスターバッチ配合量を除くSEBS-1の配合量である。当該樹脂組成物を、先端に円形ダイを備える二軸押出機(東芝機械株式会社製、TEM26-SX)を用いて、樹脂温度230℃で溶融混練した(溶融混練工程)。続いて、溶融混練されたポリプロピレン系樹脂組成物を、円形ダイからストランド状に押し出した(押出工程)。次に、押出された溶融混練物(ストランド)を長さ2mの水槽中で水冷した(冷却工程)。その後、水冷された溶融混練物を、細断装置[石中鉄工所製]により引取りつつ、円柱状に細断した(引取り工程および細断工程)。かかる操作により、ポリプロピレン系樹脂粒子(一粒当たりの重量は1.2mg)を得た。
【0126】
細断工程において、二軸押出機の吐出量は51kg/時であり、細断装置の引取速度は44m/分であり、細断装置の回転刃の回転速度は2830rpmであった。また、ダイの吐出孔の数は30個であり、細断装置は回転刃を10枚備えるものであった。それ故、回転刃一回転で得られる粒子数は、およそ300個であった。
【0127】
(ポリプロピレン系発泡粒子(1段発泡粒子)の作製)
10Lの耐圧容器に、得られた発泡用ポリプロピレン系樹脂粒子100重量部、水系分散媒として水200重量部、分散剤としてカオリン0.2重量部、分散助剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.06重量部、PH調整剤としてクエン酸0.1重量部および発泡剤として二酸化炭素5~6重量部を発泡圧に応じて仕込み、発泡剤を含む分散液を作製した。得られた分散液を撹拌しながら、(a)発泡温度(耐圧容器内の温度)を151.0℃とした。耐圧容器内の温度および圧力が所定の発泡温度および発泡圧力に達した後、さらに30分間、耐圧容器内の温度および圧力を所定の発泡温度および発泡圧力で保持した。次いで、二酸化炭素を導入し、耐圧容器内の発泡圧力を所定の発泡圧力に保持した。耐圧容器下部のバルブを開き、直径3.6mmφオリフィスを通して、耐圧容器内の分散液を大気圧下に放出し、ポリプロピレン系樹脂一段発泡粒子を得た。前記ポリプロピレン系樹脂一段発泡粒子を75℃で24時間乾燥した。得られた一段発泡粒子は、DSC法による測定により得られたDSC曲線において、ポリプロピレン系樹脂由来の2つのピークを示した。得られた一段発泡粒子の発泡倍率、および連続気泡率を評価した。結果を表1に示す。
【0128】
(ポリプロピレン系発泡粒子(2段発泡粒子)の作製)
得られた一段発泡粒子を、0.2mの耐圧容器に供給した。空気加圧により、当該一段発泡粒子に0.30MPa(絶対圧)~0.45MPa(絶対圧)の内圧を付与した。次いで、二段発泡機に移送した後、0.035MPa(ゲージ圧)~0.060MPa(ゲージ圧)の水蒸気で、一段発泡粒子を加熱して更に発泡させ、発泡倍率25倍の二段発泡粒子を得た。
【0129】
(ポリプロピレン系発泡成形体の作製)
得られたポリプロピレン系樹脂二段発泡粒子を耐圧密閉容器内にて、加圧空気を含浸させて、0.22MPa(絶対圧)のポリプロピレン系樹脂二段発泡粒子内圧(絶対圧)を付与した。空気を含浸したポリプロピレン系樹脂二段発泡粒子を、ポリオレフィン型内発泡成形機(ダイセン株式会社製)を用いて、前記金型に充填した。前記ポリプロピレン系樹脂二段発泡粒子を0.30MPa(ゲージ圧)の水蒸気で加熱圧着させた後、30℃の冷却水を0.4MPaの圧力で金型に噴霧させ、型内発泡成形体を冷却させた。前記型内発泡成形体に設置された樹脂圧計の値が0.01MPa以下となるまで冷却を行った。その後、型を開きエアーや離型治具を用いてポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を金型から取り出した。得られた型内発泡成形体を室温で1時間放置した後、75℃の恒温室内で12時間養生乾燥を行い、再び室温で4時間放置し、対金型収縮率を評価した。結果を表1に示す。
【0130】
〔実施例2~8、比較例1~7〕
各材料の種類および量、ならびに各製造条件を表1に記載のように変更したこと以外は、実施例1と同じ方法によって樹脂粒子、発泡粒子、および発泡成形体を得た。得られた発泡粒子および発泡成形体について、各物性を測定および評価した。また、上述した方法により、最大引き取り速度を算出した。結果を表1に示す。
【0131】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の一実施形態によると、成形後の収縮が低減されたポリプロピレン系発泡成形体を提供し得るポリプロピレン系樹脂粒子を効率よく提供することができる。それゆえ、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系樹脂粒子の製造方法、並びに、当該製造方法で得られる樹脂粒子、発泡粒子および発泡成形体は、緩衝包装材、物流資材、断熱材、土木建築部材、自動車部材など様々な分野、特に、金属などの他の素材と一体成型されるインサート成形の分野において、好適に利用できる。