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特開2024-123759産業機器用プログラム及び通信端末装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123759
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】産業機器用プログラム及び通信端末装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20240905BHJP
   B25J 9/22 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B25J19/06
B25J9/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031410
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】石井 淳史
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707HS27
3C707JS07
3C707JU03
3C707JU14
3C707KS11
3C707KS31
3C707KS39
3C707KV18
3C707KW01
3C707MS14
3C707MS16
3C707MS27
(57)【要約】
【課題】産業機器の作業者の心身の異常状態を定常的かつ早期に発見し通知する。
【解決手段】コンピュータを、作業者によるロボット5の教示制御に関する操作を受け付ける操作受付部21、操作受付部21にて受け付けた操作が、予め設定された所定操作に含まれるか否かを判定する操作判定部23、操作判定部23の判定結果に基づき、作業者に対して発声を要求する通知部25、作業者による発声を受け付ける音声受付部26、音声受付部26にて受け付けた発声から得た音声に基づいて作業者の状態を判定する音声判定部27、として機能させ、通知部25は、音声判定部27の判定結果に基づき、作業者の心身状態が異常状態であることを通知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機器の教示制御に関する操作を行う産業機器用プログラムであって、
コンピュータを、
作業者による前記産業機器の教示制御に関する操作を受け付ける操作受付部、
前記操作受付部にて受け付けた操作が、予め設定された所定操作に含まれるか否かを判定する操作判定部、
前記操作判定部の判定結果に基づき、前記作業者に対して発声を要求する通知部、
前記作業者による発声を受け付ける音声受付部、
前記音声受付部にて受け付けた前記発声から得た音声に基づいて前記作業者の心身状態を判定する音声判定部、
として機能させ、
前記通知部は、前記音声判定部の判定結果に基づき、前記作業者の前記心身状態が異常状態であることを通知することを特徴とする産業機器用プログラム。
【請求項2】
前記コンピュータを、
前記操作判定部の判定結果に基づき、前記産業機器の動作を停止する指示を出力し、前記音声判定部の判定結果に基づき、当該指示を解除する指示を出力する出力部、
として更に機能させることを特徴とする請求項1に記載の産業機器用プログラム。
【請求項3】
前記通知部は、前記音声判定部の判定結果に基づき、前記異常状態を通知するとともに、当該異常状態を緩和するための動作の要求を通知することを特徴とする請求項1又は2に記載の産業機器用プログラム。
【請求項4】
前記コンピュータを、
前記音声判定部の判定結果に基づき、前記作業者の前記心身状態が異常状態であることを、前記作業者とは異なる管理者のコンピュータに送信する送信部、
として更に機能させることを特徴とする請求項1又は2に記載の産業機器用プログラム。
【請求項5】
産業機器の教示制御に関する操作を行う通信端末装置であって、
作業者による前記産業機器の教示制御に関する操作を受け付ける操作受付部と、
前記操作受付部にて受け付けた操作が、予め設定された所定操作に含まれるか否かを判定する操作判定部と、
前記操作判定部の判定結果に基づき、前記作業者に対して発声を要求する通知部と、
前記作業者による発声を受け付ける音声受付部と、
前記音声受付部にて受け付けた前記発声から得た音声に基づいて前記作業者の状態を判定する音声判定部と、
を備え、
前記通知部は、前記音声判定部の判定結果に基づき、前記作業者の前記心身状態が異常状態であることを通知することを特徴とする通信端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機器用プログラム及び通信端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業者の心身状態が不調になると操作ミスが増えることが一般的に知られている。特に産業機器を操作する場合には操作ミスが発生すると生産性が下がりコストが増大するため、作業者の心身状態が不調の場合は早期に発見することが重要となる。
【0003】
例えば特許文献1等においては、人の発声からメンタル状態を推定する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5755791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、工場等における産業機器の作業者は作業中に発声する機会が少なく、また、積極的にこの装置を使用して発声しようとすることも考えにくいため、作業者のメンタル不調を含む異常状態を定常的かつ早期に発見することは困難である。
【0006】
上記課題に鑑み、本発明は、産業機器の作業者の心身の異常状態を定常的かつ早期に発見し通知する産業機器用プログラム及び通信端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る産業機器用プログラムは、産業機器の教示制御に関する操作を行う産業機器用プログラムであって、コンピュータを、作業者による前記産業機器の教示制御に関する操作を受け付ける操作受付部、前記操作受付部にて受け付けた操作が、予め設定された所定操作に含まれるか否かを判定する操作判定部、前記操作判定部の判定結果に基づき、前記作業者に対して発声を要求する通知部、前記作業者による発声を受け付ける音声受付部、前記音声受付部にて受け付けた前記発声から得た音声に基づいて前記作業者の心身状態を判定する音声判定部、として機能させ、前記通知部は、前記音声判定部の判定結果に基づき、前記作業者の前記心身状態が異常状態であることを通知する。
【0008】
また、前記コンピュータを、前記操作判定部の判定結果に基づき、前記産業機器の動作を停止する指示を出力し、前記音声判定部の判定結果に基づき、当該指示を解除する指示を出力する出力部、として更に機能させる。
【0009】
また、前記通知部は、前記音声判定部の判定結果に基づき、前記異常状態を通知するとともに、当該異常状態を緩和するための動作の要求を通知する。
【0010】
また、前記コンピュータを、前記音声判定部の判定結果に基づき、前記作業者の前記心身状態が異常状態であることを、前記作業者とは異なる管理者のコンピュータに送信する送信部、として更に機能させる。
【0011】
また、本発明に係る通信端末装置は、産業機器の教示制御に関する操作を行う通信端末装置であって、作業者による前記産業機器の教示制御に関する操作を受け付ける操作受付部と、前記操作受付部にて受け付けた操作が、予め設定された所定操作に含まれるか否かを判定する操作判定部と、前記操作判定部の判定結果に基づき、前記作業者に対して発声を要求する通知部と、前記作業者による発声を受け付ける音声受付部と、前記音声受付部にて受け付けた前記発声から得た音声に基づいて前記作業者の状態を判定する音声判定部と、を備え、前記通知部は、前記音声判定部の判定結果に基づき、前記作業者の前記心身状態が異常状態であることを通知する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る産業機器用プログラム及び通信端末装置によれば、産業機器の作業者の心身の異常状態を定常的かつ早期に発見し通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る産業機器用プログラムを用いるロボット制御システムの全体構成の一例を示す概略図である。
図2図1のティーチングペンダントのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3図1のティーチングペンダントの機能的構成の一例を示すブロック図である。
図4】作業者による操作ミス時に、図3の通知部の処理によってディスプレイに表示される画面の一例を示す図である。
図5】作業者の異常状態時に、図3の通知部の処理によってディスプレイに表示される画面の一例を示す図である。
図6図1のティーチングペンダントによる処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては極力同一の符号を付して、重複する説明は適宜省略する。
【0015】
===実施形態===
≪全体構成≫
図1は、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と記載)に係る産業機器用プログラムを用いるロボット制御システム1の全体構成の一例を示す概略図である。図1に示すように、ロボット制御システム1は、ロボット5及びティーチングペンダント10を含む。なお、図1では、通信ケーブル7,9によって各装置が接続されている例を図示しているが、このような有線接続に限らず、各装置が無線接続されていてもよい。
【0016】
ロボット5は、例えば垂直多関節ロボット等の産業機器であって、ロボット本体6及びロボット制御装置8を含む。なお、図1では、ロボット本体6とロボット制御装置8とを別体として図示するが、ロボット本体6とロボット制御装置8とが一体化されていてもよい。
【0017】
ロボット本体6は、複数のアーム及び当該アーム間を連結する関節を有する。各関節には不図示の駆動モータが設けられており、ロボット制御装置8によって当該駆動モータの回動及び停止が制御されることによって、ロボット本体6のアーム等の動作が制御される。
【0018】
ロボット制御装置8は、ロボット本体6と通信ケーブル7を介して通信可能に接続されている。ロボット制御装置8は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、及び通信装置等を備える情報処理装置である。ロボット制御装置8は、予めメモリ等に記憶された制御プログラム又はティーチングペンダント10から送信された教示データ等に基づき、ロボット本体6の動作を制御する。
【0019】
また、ロボット制御装置8は、切替スイッチ8aを有する。切替スイッチ8aは、物理スイッチであって、作業者(ユーザ)の操作等に応じてティーチングペンダント10の動作モードが教示モード又は非教示モードに切り替えられる。切替スイッチ8aは、後述するティーチングペンダント10の出力部24(図3参照)と連動して、ティーチングペンダント10の動作モードを切り替えるためのスイッチである。ロボット制御装置8は、切替スイッチ8aにより切り替えられた動作モードを示す情報を、ティーチングペンダント10に送信する。
【0020】
動作モードとしては、例えば、ロボット5を教示する教示モードと、当該教示モード以外の非教示モードと、を含む。教示とは、例えば、ロボット5に所定のプログラム等の教示データを与えて、ロボット5が目的の動作をするように教え込むことを示し、ティーチングともいう。教示モードは、例えば教示データとしてロボット5に所定の作業を実行させるための作業プログラムを作成するモードであり、非教示モードは、例えば作業プログラムをロボット5に自動運転させる再生モードである。
【0021】
ティーチングペンダント10は、ロボット5等の産業機器に通信可能に接続され、当該産業機器の各種制御(特に教示制御)に関する操作を行う通信端末装置である。
【0022】
本実施形態において、ティーチングペンダント10は、ロボット5のロボット制御装置8に対して通信ケーブル9を介して接続されている。ティーチングペンダント10は、ロボット5を教示する教示端末である。ティーチングペンダント10は、作業者が手に持って操作可能に構成され、各種の教示データの入力を作業者から受け付ける。ティーチングペンダント10は、当該入力に基づき取得した教示データをロボット制御装置8に対して送信する。また、本実施形態においては、ティーチングペンダント10は、タブレット2等から構成されている。尚、上述したように、ティーチングペンダント10は、ロボット制御装置8に対して無線接続されていても構わない。
【0023】
ティーチングペンダント10は、例えばタブレット2と、安全操作部4と、を有する。タブレット2は、所定のプログラムがインストールされた後、当該プログラムを実行することで、ロボット5に対する教示が可能となる情報処理装置である。タブレット2に、安全操作部4が着脱自在とされており、安全操作部4が取り付けられた状態でロボット5に対する教示作業が可能とされている。タブレット2は、タッチパネルディスプレイ3を含む。タッチパネルディスプレイ3は、表示機能及び入力機能を有し、所定の画面を表示するとともに、画面に対する作業者の操作に応じて、作業者から入力情報を受け付ける。タッチパネルディスプレイ3の画面に対する作業者の操作を、以下、「タッチ操作」と称する。
【0024】
安全操作部4は、タブレット2に対して外付けされており、各種の物理スイッチを有する。物理スイッチとしては、既知の緊急停止スイッチやイネブルスイッチ等が挙げられる。緊急停止スイッチは、ロボット制御装置8によるロボット本体6の動作制御を緊急停止するためのスイッチである。例えば、緊急停止スイッチが作業者によって押し下げられてオン状態とされた場合には、ロボット本体6が動作しないようになる。イネブルスイッチは、誤動作防止を目的とした安全スイッチである。例えば、作業者が教示作業を行う際には、イネブルスイッチが作業者によって押し下げられ押し込み位置が所定位置にある場合のみ、当該教示作業を行うことができるようになっている。
【0025】
≪ティーチングペンダントのハードウェア構成≫
図2は、図1のティーチングペンダント10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0026】
図2に示すように、ティーチングペンダント10は、物理的には、例えば、タッチパネルディスプレイ3と、制御装置11と、操作装置12と、マイクロフォン13と、通信装置14と、記憶装置16と、を備える。なお、ティーチングペンダント10は、一般消費者向けの汎用のタブレットが有するその他の構成を更に備えていてもよい。
【0027】
タッチパネルディスプレイ3は、表示機能を有するディスプレイ3aと、入力機能を有するタッチセンサ3bと、を含んで構成される。ディスプレイ3aは、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)等により構成される。
【0028】
タッチセンサ3bは、作業者のタッチ操作を検出するためのタッチセンサである。検出方式は、静電容量式、抵抗膜式(感圧式)、電磁誘導式等の既知の方式のうち任意の方法を採用することができる。なお、タッチ操作を行う操作子としては、作業者の指又は手に限られず、スタイラス等であってもよい。
【0029】
制御装置11は、CPU及びメモリ等を含んで構成される。制御装置11は、タッチパネルディスプレイ3、操作装置12、マイクロフォン13、通信装置14、及び、記憶装置16と接続されており、これらの接続先を制御する機能を有する。
【0030】
操作装置12は、例えば、上述の安全操作部4に設けられた各種の物理スイッチ等で構成される。
【0031】
マイクロフォン13は、作業者の音声を入力可能である。また、マイクロフォン13は、入力された音声を電気信号に変換する。
【0032】
通信装置14は、ロボット制御装置8等の外部装置との通信を行う。通信装置14は、無線通信、有線通信、USB等のインターフェースで構成される。
【0033】
記憶装置16は、制御装置11における処理の実行に必要なプログラムや各種の情報、及び処理結果の情報を記憶する。
【0034】
≪ティーチングペンダントの機能構成≫
図3は、図1のティーチングペンダント10の機能構成の一例を示すブロック図である。ティーチングペンダント10は、機能的には、記憶部20と、操作受付部21と、認証部22と、操作判定部23と、出力部24と、通知部25と、音声受付部26と、音声判定部27と、送信部28と、を備えている。これらの機能構成は、制御装置11のCPUがメモリや記憶装置16等に記憶された所定のプログラムを実行し、制御装置11の制御下で接続先のハードウェア構成を動作させることにより実現される。
【0035】
記憶部20は、作業者情報20A、操作情報20B、音声情報20C、エラー情報20Dを備えている。
【0036】
作業者情報20Aは、後述の認証部22による判定に用いるパスワードを含んでいる。また、操作情報20Bは、ロボット5の教示制御に関する、複数種類の正常な所定操作(以下、「正常操作群」という。)を含んでいる。また、音声情報20Cは、正常状態の人間の発声における音声パラメータ範囲を含んでいる。なお、音声パラメータ範囲には、周波数の範囲、音量の範囲等を含むものとする。また、エラー情報20Dは、作業者による操作ミス(エラー)の種類ごとに紐付けられた番号を含んでいる。
【0037】
操作受付部21は、作業者による、パスワードの入力、及び、ロボット5の教示制御に関する操作を受け付ける。これらの入力及び操作は、タッチパネルディスプレイ3に対するタッチ操作、及び、イネブルスイッチの操作等によって行われる。
【0038】
なお、ロボット5の教示制御に関する操作とは、ロボット5の動作を教示する教示データの入力操作、教示モードと非教示モード(再生モード)との切替操作、ロック(停止)操作、ロック状態の解除操作、ロック状態の強制解除操作等を含むものとする。
【0039】
なお、上記強制解除操作とは、例えば人がロボット本体6に挟まれたままロボット本体6がロック状態となった場合などの、緊急事態においてのみ可能な、ロック状態の解除操作である。
【0040】
認証部22は、操作受付部21により受け付けたパスワードの認証を実行する。例えば、認証部22は、操作受付部21により受け付けたパスワードが、記憶部20の作業者情報20Aに含まれるパスワードに一致するか否かを判定する。当該判定を肯定判定した場合には、パスワードの認証が成功したものとされ、当該判定を否定判定した場合には、パスワードの認証が失敗したものとされる。
【0041】
操作受付部21は、認証部22によりパスワードの認証が成功した場合に、ロボット5の教示制御に関する操作を受け付けるものとする。
【0042】
操作判定部23は、操作受付部21にて受け付けた操作が、記憶部20に記憶された正常操作群に含まれるか否かを判定する。
【0043】
出力部24は、操作判定部23の判定結果に基づき、操作受付部21において受け付けたロボット5の教示制御に関する操作をロボット5に出力するか、あるいは、操作ミス(エラー)が発生したものとして、ロボット5に対してロック(停止)状態とする指示を出力する。なお、既に説明したが、ロボット5の教示制御に関する操作には、教示モードと非教示モードとの切替操作も含まれる。
【0044】
具体的には、出力部24は、操作判定部23において肯定判定した場合、操作受付部21において受け付けたロボット5の教示制御に関する操作をロボット5(ロボット制御装置8)に出力する。また、出力部24は、操作判定部23において否定判定した場合、操作ミスが発生したものとして、ロボット5(ロボット制御装置8)に対してロック状態とする指示を出力する。
【0045】
また、出力部24は、自らが、ロボット5(ロボット制御装置8)に対してロック状態とする指示を出力した後に、再度、操作受付部21が、ロボット5の教示制御に関する操作を受け付けた場合には、操作判定部23の判定を介さずにそのまま当該操作をロボット5(ロボット制御装置8)に出力する。
【0046】
通知部25は、操作判定部23の判定結果に基づき、作業者に対して操作ミス(エラー)を通知するとともに、発声を要求する。
【0047】
具体的には、通知部25は、操作判定部23において否定判定した場合、作業者に対して操作ミスを通知するとともに、発声を要求する。これら通知及び要求は、ディスプレイ3aに表示される、又は、スピーカ(図示略)によって音声出力されることで行われる。
【0048】
図4は、作業者による操作ミス時に、図3の通知部25の処理によってディスプレイ3aに表示される画面31の一例を示す図である。
【0049】
通知部25は、ロック状態を解除するための番号を発声するよう作業者に要求する。なお、画面31には、「リセットするエラーの番号を、声に出して言ってください」と表示されている。
【0050】
操作受付部21にて受け付けたロボット5の教示制御に関する操作が操作ミス(エラー)である場合、当該操作ミスは複数種類に分類される。作業者は、エラー情報20Dに含まれる、種類ごとに紐付けられた番号を発声によって入力することで、ロックの解除を行う。
【0051】
また、通知部25は、画面31に強制解除ボタン31Aを表示する。強制解除ボタン31Aが押された(クリックされた)場合、出力部24は、ロボット制御装置8に対してロック(停止)状態を解除(強制解除)する指示を出力する。
【0052】
なお、強制解除ボタン31A又は後述の強制解除ボタン32Aがクリックされ、出力部24がロボット5(ロボット制御装置8)に対してロック(停止)状態とする指示を出力した後に、再度、操作受付部21が、ロボット5の教示制御に関する操作を受け付けた場合には、操作判定部23は判定を行わない。強制解除ボタンがクリックされるのは緊急事態の場合であり、判定を省略し、無条件で操作(緊急事態を回避する操作)を受け付けた方が、安全性が向上するためである。
【0053】
図3に戻り、音声受付部26は、作業者によるマイクロフォン13への発声を受け付ける。なお、作業者は、通知部25の要求によって発声を促されることで、当該発声を行う。
【0054】
音声判定部27は、音声受付部26にて受け付けた(作業者の発声から得た)音声に基づいて作業者の心身状態を判定する。
【0055】
具体的には、音声判定部27は、音声受付部26にて受け付けた音声に基づいて作業者が正常であるか否かを判定する。これは、音声受付部26にて受け付けた音声が、記憶部20に記憶された音声パラメータ範囲に含まれ、かつ、通知部25が要求した番号を示す音声である場合には肯定判定とし、それ以外の場合には否定判定とする。
【0056】
音声判定部27の判定結果に基づき、出力部24は、ロボット制御装置8に対してロック状態を解除する指示を出力する。具体的には、音声判定部27において肯定判定した場合、出力部24は、ロボット制御装置8に対してロック状態を解除する指示を出力する。
【0057】
また、音声判定部27において否定判定した場合、作業者は、高ストレス状態、身体的疲労、眠気などの心身の異常状態であるものとする。さらに、音声判定部27は、否定判定した場合、作業者の異常状態の具体的な種類(心的ストレス、身体的疲労、眠気など)を、音声受付部26にて受け付けた音声に基づいて決定することができる。
【0058】
通知部25は、音声判定部27の判定結果に基づき、作業者が異常状態であることを通知するとともに状態緩和動作を要求し、さらに、ロック状態を解除するための番号を発声するよう再度要求する。これら通知及び要求は、ディスプレイ3aに表示される、又は、スピーカ(図示略)によって音声出力されることで行われる。
【0059】
具体的には、通知部25は、音声判定部27において否定判定した場合、作業者が異常状態であることを通知するとともに状態緩和動作を要求し。さらに、ロック状態を解除するための番号を発声するよう再度要求する。これら通知及び要求は、ディスプレイ3aに表示される、又は、スピーカ(図示略)によって音声出力されることで行われる。
【0060】
図5は、作業者の異常状態時に、図3の通知部25の処理によってディスプレイ3aに表示される画面32の一例を示す図である。
【0061】
図5に「深呼吸をするなど、落ち着いてから」と示すように、通知部25は、作業者に対して、状態緩和動作を要求する。状態緩和動作には、深呼吸、休憩、体操、室温調整などを含む。
【0062】
通知部25は、音声判定部27によって決定した、作業者の異常状態の種類に応じた動作の要求を行う。例えば、作業者の異常状態が心的ストレスであれば、深呼吸を要求し、作業者の異常状態が身体的疲労であれば、休憩を要求し、作業者の異常状態が眠気であれば、体操や室温の調整(室温を下げる)を要求する。
【0063】
また、図5に「再度リセットするエラーの番号を、声に出して言ってください」と示すように、通知部25は、作業者に対して、ロック状態を解除するための番号を発声するよう再度要求する。
【0064】
また、通知部25は、画面32に強制解除ボタン32Aを表示する。強制解除ボタン32Aが押された場合、出力部24は、ロボット制御装置8に対してロック(停止)状態を解除する指示を出力する。
【0065】
図3に戻り、送信部28は、音声判定部27の判定結果に基づき、作業者が異常状態であることを、作業者と異なる管理者の図示しないコンピュータ(ティーチングペンダント10及びロボット制御装置8のコンピュータと異なるコンピュータ)に送信する。
【0066】
具体的には、送信部28は、音声判定部27において否定判定した場合、作業者の心身状態が異常状態であることを、作業者と異なる管理者のコンピュータに送信する。さらに、送信部28は、強制解除ボタン32Aが押された場合にも、緊急事態であることを当該管理者のコンピュータに送信する。
【0067】
≪ティーチングペンダントの処理≫
図6は、図1のティーチングペンダント10による処理の一例を示すフローチャートである。また、図6に示す処理の内容及び順番は適宜変更することができる。
【0068】
(ステップSP1)
操作受付部21が、作業者による、パスワードの入力、及び、ロボット5の教示制御に関する操作を受け付ける。パスワードの認証は認証部22において行われる。なお、以下では、パスワードの認証が成功した場合について説明する。その後、処理はステップSP2へ移行する。
【0069】
(ステップSP2)
操作判定部23が、ステップSP1において操作受付部21が受け付けた操作が、記憶部20に記憶された操作情報20Bに含まれる正常操作群に含まれるか否かを判定する。正常操作群に含まれる場合、すなわち肯定判定の場合は、処理はステップSP3へ移行する。正常操作群に含まれない場合、すなわち否定判定の場合は、処理はステップSP4へ移行する。
【0070】
(ステップSP3)
出力部24が、ステップSP1において操作受付部21が受け付けたロボット5の教示制御に関する操作を、ロボット制御装置8に出力する。なお、ロボット制御装置8は、当該操作に基づき、ロボット本体6の教示操作に関する動作制御を行う。
【0071】
(ステップSP4)
出力部24が、ステップSP1において操作受付部21が受け付けたロボット5の教示制御に関する操作は作ミスであるものと判断して、ロボット制御装置8に対してロック状態とする指示を出力する。その後、処理はステップSP5へ移行する。
【0072】
(ステップSP5)
通知部25が、作業者に対して操作ミスを通知するとともに発声を要求する。これら通知及び要求は、ディスプレイ3aに表示する、又は、スピーカ(図示略)によって音声出力することで行われる。ディスプレイ3aに表示する場合は、例えば図4に示す画面31のように表示する。その後、処理はステップSP6へ移行する。
【0073】
(ステップSP6)
作業者が、図4に示す画面31の強制解除ボタン31Aをクリックした場合は、処理はステップSP7へ移行し、強制解除ボタン31Aをクリックしなかった場合は、処理はステップSP9へ移行する。
【0074】
(ステップSP7)
出力部24が、ロボット制御装置8に対してロック状態を解除する指示を出力する。その後、処理はステップSP8へ移行する。
【0075】
(ステップSP8)
操作受付部21が、再度ロボット5の教示制御に関する操作を受け付ける。その後、処理は(ステップSP2における操作判定部23による判定を介さずに)ステップSP3へ移行する。
【0076】
(ステップSP9)
音声受付部26が、作業者によるマイクロフォン13への発声を受け付ける。なお、作業者は、通知部25の要求によって発声を促されることで当該発声を行う。その後、処理はステップSP10へ移行する。
【0077】
(ステップSP10)
音声判定部27が、ステップSP9において音声受付部26が受け付けた音声に基づいて作業者の心身状態が正常であるか否かを判定する。これは、音声受付部26にて受け付けた音声が、記憶部20に記憶された音声情報20Cに含まれた音声パラメータ範囲に含まれ、かつ、通知部25が要求した番号を示す音声である場合には肯定判定とし、それ以外の場合には否定判定とする。肯定判定の場合は、処理はステップSP11へ移行し、否定判定の場合は、処理はステップSP12へ移行する。
【0078】
(ステップSP11)
出力部24が、ロボット制御装置8に対してロック状態を解除する指示を出力する。その後、処理はステップSP1へ移行する。
【0079】
(ステップSP12)
送信部28が、作業者が異常状態であることを管理者のコンピュータ(図示略)に送信する。その後、処理はステップSP13へ移行する。
【0080】
(ステップSP13)
通知部25が、作業者が異常状態であることを通知するとともに状態緩和動作を要求する。さらに、ロック状態を解除するための番号を発声するよう再度要求する。これら通知及び要求は、ディスプレイ3aに表示する、又は、スピーカ(図示略)によって音声出力することで行われる。ディスプレイ3aに表示する場合は、例えば図5に示す画面32のように表示する。その後、処理はステップSP14へ移行する。
【0081】
(ステップSP14)
作業者が、図5に示す画面32の強制解除ボタン32Aをクリックした場合は、処理はステップSP15へ移行し、クリックしなかった場合は、処理はステップSP9へ移行する。
【0082】
(ステップSP15)
出力部24が、ロボット制御装置8に対してロック状態を解除する指示を出力する。その後、処理はステップSP16へ移行する。その後、処理はステップSP16へ移行する。
【0083】
(ステップSP16)
操作受付部21が、再度ロボット5の教示制御に関する操作を受け付ける。その後、処理は(ステップSP2における操作判定部23による判定を介さずに)ステップSP3へ移行する。
【0084】
≪作用効果≫
本実施形態に係る産業機器用プログラムは、ロボット5の教示制御に関する操作を行う産業機器用プログラムであって、コンピュータを、作業者によるロボット5の教示制御に関する操作を受け付ける操作受付部21、操作受付部21にて受け付けた操作が、予め設定された所定操作に含まれるか否かを判定する操作判定部23、操作判定部23の判定結果に基づき、作業者に対して発声を要求する通知部25、作業者による発声を受け付ける音声受付部26、音声受付部26にて受け付けた発声から得た音声に基づいて作業者の状態を判定する音声判定部27、として機能させ、通知部25は、音声判定部27の判定結果に基づき、作業者の心身状態が異常状態であることを通知する。
これにより、作業者による操作ミスが発生した場合に、作業者の発声から作業者の心身状態を判定し、異常状態の場合にそれを通知するので、作業者の心身の異常状態を定常的かつ早期に発見し通知することができる。
【0085】
また、本実施形態に係る産業機器用プログラムは、通知部25は、操作判定部23において否定判定した場合、作業者に対して発声を要求する。
正常な操作に比べて異常な操作(操作ミス)のパターンの種類が多い。そこで、通知部25が、操作判定部23において否定判定した場合に作業者に対して発声を要求するものとすれば、記憶部20に記憶される操作情報20Bが、正常な操作(所定操作)となり、異常な操作である場合に比べて、記憶部20が記憶する情報が少なくて済む。
【0086】
また、本実施形態に係る産業機器用プログラムは、コンピュータを、操作判定部23の判定結果に基づき、ロボット5の動作を停止する指示を出力し、音声判定部27の判定結果に基づき、当該指示を解除する指示を出力する出力部24、として更に機能させる。
これにより、作業者の操作ミスによるロボット5の誤作動を未然に防ぐことができる。
【0087】
また、本実施形態に係る産業機器用プログラムは、通知部25は、音声判定部27の判定結果に基づき、異常状態を通知するとともに、異常状態を緩和するための動作の要求を通知する。
これにより、作業者に対して、心身の異常状態であることを自覚させるとともに、その異常状態を緩和させることができ、作業者が自らの操作ミスに動揺して更なる操作ミスが誘発されることを防ぐことができる。
【0088】
また、本実施形態に係る産業機器用プログラムは、コンピュータを、音声判定部27の判定結果に基づき、作業者の心身状態が異常状態であることを、作業者と異なる管理者のコンピュータに送信する送信部28、として更に機能させる。
これにより、管理者のコンピュータに作業者が異常状態であることを送信することができるので、管理者が作業者の状態を管理及び指導することができ、作業の品質を向上することができる。
【0089】
また、本実施形態に係るティーチングペンダント10は、ロボット5の教示制御に関する操作を行うティーチングペンダント10であって、作業者によるロボット5の教示制御に関する操作を受け付ける操作受付部21と、操作受付部21にて受け付けた操作が、予め設定された所定操作に含まれるか否かを判定する操作判定部23と、操作判定部23の判定結果に基づき、作業者に対して発声を要求する通知部25と、作業者による発声を受け付ける音声受付部26と、音声受付部26にて受け付けた発声から得た音声に基づいて作業者の状態を判定する音声判定部27と、を備え、通知部25は、音声判定部27の判定結果に基づき、作業者の心身状態が異常状態であることを通知する。
これにより、作業者による操作ミスが発生した場合に、作業者の発声から作業者の心身状態を判定し、異常状態の場合にそれを通知するので、作業者の心身の異常状態を定常的かつ早期に発見し通知することができる。
【0090】
===変形例===
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。すなわち、上述した具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、上記実施形態及び下記変形例が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0091】
例えば、上記実施形態における、記憶部20に記憶される作業者情報20Aが、作業者毎に紐付けられたICカード情報を含むものとしてもよい。その場合、作業者毎にICカードを貸与し、認証部22は、作業者情報20Aに基づき作業者を特定するものとしてもよい。
【0092】
ハードウェア構成としては、ティーチングペンダント10にICカード認証装置(図示略)を設け、当該ICカード認証装置によりICカードを読み込むことによって、ティーチングペンダント10が起動するものとすることで、ティーチングペンダント10の起動時にICカード情報から作業者を特定することができる。
【0093】
そして、送信部28によって、作業者が異常状態であることを管理者のコンピュータに送信する場合、特定した作業者の情報も同時に送信するものとする。これにより、管理者が異常状態の作業者を把握することができる。
【0094】
なお、作業者情報20AがICカード情報ではなく指紋データを含むものとし、認証部22がこの作業者情報20Aから作業者を特定するものとしてもよい。ハードウェア構成としては、ティーチングペンダント10が、ICカード認証装置の代わりに、作業者の指紋を認証する指紋認証装置を備えるものとする。
【0095】
また、作業者情報20Aには、上述のように認証部22において特定した作業者の操作ミスの履歴を含めるようにしてもよい。その場合、上記実施形態のステップSP1においてロボット5の教示制御に関する操作を受け付ける前に、通知部25が、当該履歴に基づき、作業者に対して、操作ミスの傾向を通知するようにしてもよい。
【0096】
また、上記実施形態において、記憶部20に音声パラメータ範囲を含む音声情報20Cが記憶されるものとし、音声判定部27はこれを用いて判定を行うものとしたが、音声判定部27の機能をAI(人工知能)により行うものとし、音声情報20Cを省略してもよい。
【0097】
さらに、上記実施形態では、音声判定部27において否定判定した場合に、作業者の異常状態が送信部28により管理者のコンピュータに送信されるものとしていたが、それに代えて、当該否定判定が連続して所定回数以上出た場合(ステップSP9からステップSP14までを所定回数繰り返した場合)に、送信部28が送信するものとしてもよい。
【0098】
また、上記実施形態において、通知部25が、作業者の異常状態が眠気であれば、体操や室温の調整(室温を下げる)を要求するとした。これに代えて、ティーチングペンダント10に温度計を設けたり、あるいは、ティーチングペンダント10に備わる通信装置14がインターネットへの接続機能を含むものとしたりすることで、インターネット上から作業者の作業場所周辺の気温の情報を入手し、作業者の異常状態が眠気、かつ、当該気温が所定温度以上であれば、通知部25は、室温の調整を要求するようにしてもよい。
【0099】
また、上記実施形態においては、操作情報20Bに含まれる「所定操作」が正常な操作である前提で説明したが、当該「所定操作」が異常操作(つまり操作ミス)であるものとしてもよい。その場合は、当然、上記実施形態における操作判定部23の肯定判定、否定判定が逆となる。
【0100】
同様にして、上記実施形態においては、音声情報20Cに含まれる音声パラメータ範囲が正常状態の人間の発声におけるものである前提で説明したが、当該音声パラメータ範囲が異常状態の人間の発声におけるものとしてもよい。その場合は、当然、上記実施形態における音声判定部27の肯定判定、否定判定が逆となる。
【符号の説明】
【0101】
10:ティーチングペンダント(通信端末装置)、21:操作受付部、23:操作判定部、24:出力部、25:通知部、26:音声受付部、27:音声判定部、28:送信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6