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特開2024-123765樹脂組成物、ペレット、および、成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123765
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】樹脂組成物、ペレット、および、成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20240905BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240905BHJP
   C08K 5/435 20060101ALI20240905BHJP
   C08K 9/00 20060101ALI20240905BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240905BHJP
   C08K 3/40 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C08L69/00 ZAB
C08K3/22
C08K5/435
C08K9/00
C08L21/00
C08K3/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031425
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】林 宏美
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 智文
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC002
4J002BN122
4J002CG011
4J002DE136
4J002DL008
4J002EV287
4J002FB076
4J002FB096
4J002FD016
4J002FD018
4J002FD067
4J002FD096
4J002FD202
4J002GG01
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】 優れた反射率を達成しつつ、耐熱試験後の変色を高いレベルで抑制できる成形品を提供可能な樹脂組成物、ペレット、および、成形品の提供。
【解決手段】 ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、二酸化チタン粒子(B)10質量部超30質量部以下と、フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)0.01~2質量部と、を含み、前記二酸化チタン粒子(B)は、その90質量%以上が二酸化チタンであり、かつ、粒子の表面に、アルミニウム化合物およびオルガノシロキサン類を有する、樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、
二酸化チタン粒子(B)10質量部超30質量部以下と、
フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)0.01~2質量部と、を含み、
前記二酸化チタン粒子(B)は、その90質量%以上が二酸化チタンであり、かつ、粒子の表面に、アルミニウム化合物およびオルガノシロキサン類を有する、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂組成物におけるガラスフィラーの含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0質量部以上1質量部未満である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記オルガノシロキサン類が、ハイドロジェンメチルポリシロキサン構造を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)が、フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)が、フルオロメタンスルホニルイミドの、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩およびセシウム塩の少なくとも1種である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)が、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、エラストマー(D)を0.5~20質量部含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリカーボネート樹脂(A)がリサイクルポリカーボネート樹脂を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記樹脂組成物におけるガラスフィラーの含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0質量部以上1質量部未満であり、
前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)が、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
さらに、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、エラストマー(D)を0.5~20質量部含む、請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1、2、9または10に記載の樹脂組成物のペレット。
【請求項12】
請求項1、2、9または10に記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【請求項13】
請求項11に記載のペレットから形成された成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、ペレット、および、成形品に関する。特に、ポリカーボネート樹脂を主要成分とする樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、機械的物性、電気的特性に優れた樹脂であり、例えば自動車材料、電気電子機器材料、住宅材料、その他の工業分野における部品製造用材料等に幅広く利用されている。特に、難燃化されたポリカーボネート樹脂組成物は、コンピューター、ノートブック型パソコン、携帯電話、プリンター、複写機等のOA・情報機器等の部材として好適に使用されている。
【0003】
ここで、ポリカーボネート樹脂を用いた成形品に反射率が求められる場合がある。例えば、特許文献1には、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、(b)ガラスフィラー1~150質量部、(c)酸化チタン3~50質量部、および、所定のパーフルオロアルカンジスルホンイミド化合物のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の難燃剤0.01~5質量部を、配合してなることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-176630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記樹脂組成物から形成された成形品は、優れた反射率を達成するものであるが、近年、耐熱試験後の変色の抑制を高いレベルで求められる用途が増加している。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、優れた反射率を達成しつつ、耐熱試験後の変色を高いレベルで抑制できる成形品を提供可能な樹脂組成物、ペレット、および、成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、二酸化チタン粒子として、表面に所定の化合物を有する粒子を用い、かつ、所定の金属塩を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、二酸化チタン粒子(B)10質量部超30質量部以下と、フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)0.01~2質量部と、を含み、前記二酸化チタン粒子(B)は、その90質量%以上が二酸化チタンであり、かつ、粒子の表面に、アルミニウム化合物およびオルガノシロキサン類を有する、樹脂組成物。
<2>前記樹脂組成物におけるガラスフィラーの含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0質量部以上1質量部未満である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記オルガノシロキサン類が、ハイドロジェンメチルポリシロキサン構造を含む、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)が、フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)が、フルオロメタンスルホニルイミドの、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩およびセシウム塩の少なくとも1種である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)が、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>さらに、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、エラストマー(D)を0.5~20質量部含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8>前記ポリカーボネート樹脂(A)がリサイクルポリカーボネート樹脂を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9>前記樹脂組成物におけるガラスフィラーの含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0質量部以上1質量部未満であり、前記フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)が、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩を含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10>さらに、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、エラストマー(D)を0.5~20質量部含む、<9>に記載の樹脂組成物。
<11><1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物のペレット。
<12><1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形品。
<13><11>に記載のペレットから形成された成形品。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、優れた反射率を達成しつつ、耐熱試験後の変色を高いレベルで抑制できる成形品を提供可能な樹脂組成物、ペレット、および、成形品を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2023年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0009】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、二酸化チタン粒子(B)10質量部超30質量部以下と、フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)(以下、単に、「フルオロ金属塩(C)」と省略することがある)0.01~1質量部とを含み、二酸化チタン粒子(B)は、その90質量%以上が二酸化チタンであり、かつ、粒子の表面に、アルミニウム化合物およびオルガノシロキサン類を有することを特徴とする。このような構成とすることにより、優れた反射率を達成しつつ、耐熱試験後の変色を高いレベルで抑制できる成形品を提供可能になる。
すなわち、ポリカーボネート樹脂に二酸化チタン粒子を配合することにより、得られる成形品について高い反射率を達成できる。しかしながら、二酸化チタン粒子は、通常、その表面に水酸基を有している。そのため、ポリカーボネート樹脂に二酸化チタン粒子を配合した成形品を長時間高温で加熱すると、二酸化チタン粒子が有する水酸基がポリカーボネート樹脂を攻撃し、ポリカ―ネート樹脂の劣化により成形品に変色を引き起こしてしまう。また、ポリカーボネート樹脂の分解(分子量低下)によっても黄色原因を引き起こす場合もある。
本発明においては、ポリカーボネート樹脂(A)に配合する二酸化チタン粒子として、表面にアルミニウム化合物およびオルガノシロキサン類を有する二酸化チタン粒子(B)を用い、さらに、フルオロ金属塩(C)を用いることにより、得られる成形品の耐熱試験後の変色を効果的に抑制できたと推測される。この理由は、アルミニウム化合物は、二酸化チタンによるポリカーボネート樹脂を黄変する触媒の活性を抑制すると推測される。また、フルオロ金属塩(C)の酸性度が高めであり、二酸化チタン粒子(B)が有する塩基性部分を、オルガノシロキサン類がキャップし、全体として、中和系となり、二酸化チタン粒子(B)の表面の水酸基をキャップし、ポリカーボネート樹脂(A)への悪影響を小さくできたと推測される。 以下、本発明の詳細について説明する。
【0010】
<ポリカーボネート樹脂(A)>
ポリカーボネート樹脂(A)は、分子主鎖中に炭酸エステル結合を含む-[O-R-OC(=O)]-単位(Rが、炭化水素基、具体的には、脂肪族基、芳香族基、または、脂肪族基と芳香族基の双方を含むもの、さらに直鎖構造あるいは分岐構造を持つもの)を含むものであれば、特に限定されない。本実施形態においては、ポリカーボネート樹脂(A)は、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましく、ビスフェノール骨格を有するポリカーボネート樹脂がより好ましく、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂がさらに好ましい。このようなポリカーボネート樹脂を用いることにより、より優れた耐熱性と靱性が達成される。本実施形態においては、ビスフェノール骨格を有するポリカーボネート樹脂は、全構成単位の90モル%以上がビスフェノール骨格(好ましくはビスフェノールA骨格)を有する構成単位であることが好ましい。
【0011】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂(A)は、リサイクルポリカーボネート樹脂であってもよい。本実施形態においては、リサイクルポリカーボネート樹脂を用いてもバージンポリカーボネート樹脂と同等の優れた反射率および耐熱試験後の変色の抑制性能を達成することができる。
リサイクルポリカーボネート樹脂とは、バージンポリカーボネート樹脂に何かしらの成形や加工等の工程を施されたものを意味し、市場回収品の他、ポリカーボネート樹脂成形品の不合格品、ポリカーボネート樹脂成形品製造の際の端材などを含む趣旨である。成形加工品としては、射出成形品、押出成形品、その他の製法によって成形された成形品を含む趣旨である。
リサイクルポリカーボネート樹脂としては、また、回収された使用済ポリカーボネート樹脂成形品を粉砕、アルカリ洗浄して繊維等に再利用するマテリアルリサイクルにより得られたもの、ケミカルリサイクル(化学分解法)より得られたものおよびメカニカルリサイクルにより得られたもの等が挙げられる。
ケミカルリサイクルは、回収された使用済ポリカーボネート樹脂成形品を化学分解して、原料レベルに戻してポリカーボネート樹脂を再合成するものである。一方、メカニカルリサイクルは、上述したマテリアルリサイクルにおけるアルカリ洗浄をより厳密に行うこと、あるいは高温で真空乾燥すること等によって、マテリアルリサイクルよりもポリカーボネート樹脂成形品の汚れを確実に取り除くことを可能にした手法である。
例えば、使用済ポリカーボネート樹脂成形品からは、異物が取り除かれた後に、粉砕・洗浄され、次に押出機によりペレット化することにより、リサイクルポリカーボネート樹脂が得られる。
使用済みポリカーボネート樹脂成形品の例には、ディスク、シート(フィルムを含む)、メーターカバー、ヘッドランプレンズ、ボトルが含まれる。
【0012】
また、ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)(樹脂組成物が2種以上のポリカーボネート樹脂(A)を含む場合は、その混合物の平均Mv)は、10,000以上であることが好ましく、より好ましくは12,000以上である。前記ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)の上限値は、100,000以下であることが好ましく、より好ましくは80,000以下であり、さらには50,000以下で、35,000以下、30,000以下、25,000以下であってもよい。
【0013】
本実施形態において、ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度25℃での極限粘度[η](単位dL/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10-4×Mv0.83から算出される値を意味する。
本実施形態の樹脂組成物が2種以上のポリカーボネート樹脂(A)を含む場合は、混合物の粘度平均分子量とする。
【0014】
ポリカーボネート樹脂(A)の詳細は、上記の他、特開2021-084942号公報の段落0013~0041の記載、特開2019-035001号公報の段落0040~0073の記載、特開2018-103518号公報の段落0016~0043の記載、国際公開第2021/090823号の段落0011~0048の記載、特開2019-156942号公報の段落0011~0043の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0015】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物が強化材(ガラスフィラー等)を含まない場合、樹脂組成物中、70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、85質量%以上であることが一層好ましく、87質量%以上であることがより一層好ましい。また、前記ポリカーボネート樹脂(A)の含有量の上限は、樹脂組成物中、二酸化チタン粒子(B)およびフルオロ金属塩(C)以外のすべての成分がポリカーボネート樹脂(A)であることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物が強化材(ガラスフィラー等)を含む場合、樹脂組成物中、40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、55質量%以上であることが一層好ましい。また、前記ポリカーボネート樹脂(A)の含有量の上限は、樹脂組成物中、二酸化チタン粒子(B)、フルオロ金属塩(C)および強化材以外のすべての成分がポリカーボネート樹脂(A)であることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0016】
<二酸化チタン粒子(B)>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、二酸化チタン粒子(B)を10質量部超30質量部以下の割合で含み、二酸化チタン粒子(B)は、その90質量%以上が二酸化チタンであり、かつ、粒子の表面に、アルミニウム化合物およびオルガノシロキサン類を有する。
このような二酸化チタン粒子(B)を用いることにより、得られる成形品の反射率を高くできると共に、耐熱試験後の変色を効果的に抑制できる。
【0017】
本実施形態で用いる二酸化チタン粒子(B)とは、二酸化チタンを90質量%以上含む粒子である。
【0018】
本実施形態で用いる二酸化チタン粒子(B)は、粒子の表面に、アルミニウム化合物およびオルガノシロキサン類を有する。
アルミニウム化合物は、酸化アルミニウム(Al23)および/または水酸化アルミニウム(Al(OH)3)であることが好ましい。
【0019】
オルガノシロキサン類は、後述する実施例に記載のとおり、二酸化チタン粒子(B)を加熱脱着-ガスクロマトグラフ/質量分析装置(TD-GC/MS)を用い、樹脂1gを320℃で10分間加熱して発生したガス成分について、デカン換算でした値を意味する。すなわち、通常、O-Si(R)2構造を含む化合物を主成分(例えば、70質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、また、例えば、94質量%以下)とする混合物である。ここで、Rは水素原子または炭化水素基等の置換基であり、水素原子、メチル基、フェニル基が好ましい。本実施形態において、オルガノシロキサン類は、O-Si(R)2構造を4つ以上含むオルガノポリシロキサン構造を含むことが好ましく、ハイドロジェンメチルポリシロキサン構造を含むことがさらに好ましい。
本実施形態においては、オルガノシロキサン類は、その70質量%以上(好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、また、例えば、94質量%以下)がオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
また、オルガノシロキサン類は、その70質量%以上(好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、また、例えば、94質量%以下)がハイドロジェンメチルポリシロキサン構造、ジメチルポリシロキサン構造、メチルフェニルポリシロキサン構造およびジフェニルポリシロキサン構造の少なくとも1種であることがより好ましく、ハイドロジェンメチルポリシロキサン構造であることがさらに好ましい。ハイドロジェンメチルポリシロキサン構造とは、ハイドロジェンメチルポリシロキサンそのものであってもよいし、ハイドロジェンメチルポリシロキサンを含む化合物であってもよい。メチルフェニルポリシロキサン構造等についても同様である。
【0020】
本実施形態においては、二酸化チタン粒子(B)が粒子の表面に表面処理剤を含み、前記表面処理剤がアルミニウム化合物およびオルガノシロキサン類を含むことが好ましい。
【0021】
本実施形態で用いる二酸化チタン粒子(B)は、無機成分については、蛍光X線分で測定し、酸化物換算で算出した場合、酸化物の合計100質量%中、酸化アルミニウムの割合が、1.0質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、また、10.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態で用いる二酸化チタン粒子(B)は、また、無機成分については、蛍光X線分で測定し、酸化物換算で算出した場合、酸化物の合計100質量%中、二酸化チタンの割合が、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、また、97質量%以下であることが好ましい。
本実施形態で用いる二酸化チタン粒子(B)は、さらに、無機成分については、蛍光X線分で測定し、酸化物換算で算出した場合、酸化物の合計100質量%中、二酸化チタンと酸化アルミニウムと二酸化ケイ素の合計割合が、96.0質量%以上であることが好ましく、98.0質量%以上であることがより好ましく、また、99.9質量%以下であることが好ましい。ここでの二酸化ケイ素には、有機物(オルガノシロキサン類)由来の成分も含まれる。
上記蛍光X線分析による分析は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0022】
本実施形態で用いる二酸化チタン粒子(B)におけるオルガノシロキサン類は、後述する実施例に記載のとおり、二酸化チタン粒子(B)を加熱脱着-ガスクロマトグラフ/質量分析装置(TD-GC/MS)を用い、320℃で10分間加熱して発生したガス成分1gについて、デカン換算したとき、ハイドロジェンメチルシロキサン構造の割合が、50μg/g以上であることが好ましく、100μg/g以上であることがより好ましく、また、2000μg/g以下であることが好ましく、1000μg/g以下であることがより好ましく、700μg/g以下であることがさらに好ましい。
前記TD-GC/MSを用いた測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0023】
本実施形態の樹脂組成物が二酸化チタン粒子(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、10質量部超であり、11質量部以上であることが好ましく、12質量部以上であることがより好ましく、13質量部以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、光遮光性がより向上する傾向にある。また、前記二酸化チタン粒子(B)の含有量の上限値は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、30質量部以下であり、29質量部以下であることが好ましく、用途等に応じて、25質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましく、15質量部以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、ポリカーボネート樹脂の加工性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、表面に有する化合物の種類や割合、二酸化チタンの割合が異なる、二酸化チタン粒子(B)を2種以上含んでいてもよい。二酸化チタン粒子(B)を2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0024】
<フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)>
本実施形態の樹脂組成物は、フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(フルオロ金属塩(C))を含み、フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩を含むことが好ましい。前記フルオロ金属塩(C)を含むことにより、樹脂組成物の耐熱性を向上させることができる。
【0025】
本実施形態で用いるフルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)は、1種または2種以上の下記式(X)で表される化合物であることが好ましい。
式(X)
【化1】
(式(X)中、Xは水素原子またはフッ素原子を表す。Yはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表す。Mは、Yがアルカリ金属のときは1であり、Yがアルカリ土類金属のときは2である。)
Mが2のときは、アニオンは1価のアニオンが2つあることを示している。
5つのXのうちフッ素原子の数は、0~5であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、2~5であることがさらに好ましく、3~5であることが一層好ましく、4~5であることがより一層好ましく、5であること、すなわち、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩であることがより一層好ましく、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩であることがさらに一層好ましい。
Yは、アルカリ金属であることが好ましい。
アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、または、フランシウムが好ましく、リチウム、ナトリウム、カリウムまたはセシウムがより好ましく、リチウム、カリウムまたはセシウムがさらに好ましく、リチウムまたはカリウムが一層好ましく、カリウムがより一層好ましい。
アルカリ土類金属としては、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、または、ラジウムが好ましく、カルシウム、または、バリウムがより好ましい。
【0026】
上記フルオロ金属塩(C)は、アルカリ金属塩および/またはアルカリ金属塩である。かかるアルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩およびフランシウム塩が挙げられ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩およびセシウム塩の少なくとも1種を含むことが好ましく、リチウム塩、カリウム塩およびセシウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、リチウム塩および/またはカリウム塩がさらに好ましく、カリウム塩が一層好ましい。また、アルカリ土類金属塩としては、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩、および、ラジウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、カルシウム塩、および、バリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
特に、フルオロ金属塩(C)として、カリウム塩を用いることにより、各種物性により優れた樹脂組成物になる傾向にある。
【0027】
本実施形態において、フルオロ金属塩(C)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.01質量部以上であり、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.08質量部以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、耐熱試験後の変色をより効果的に抑制することができる。また、前記フルオロ金属塩(C)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、2質量部以下であり、1.5質量部以下であることが好ましく、1.2質量部以下であることがより好ましく、1質量部以下であることがさらに好ましく、0.80質量部以下であることが一層好ましく、0.70質量部以下であることがより一層好ましく、0.50質量部以下であることがさらに一層好ましく、用途等に応じて、0.25質量部以下、0.20質量部以下であってもよい。上記上限値以下とすることにより、得られる成形品の難燃性をより向上させることができる。
本実施形態の樹脂組成物は、フルオロ金属塩(C)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0028】
<エラストマー(D)>
本実施形態の樹脂組成物は、さらに、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、エラストマー(D)を0.5~20質量部含んでいてもよい。エラストマー(D)を配合することにより、耐衝撃性がより向上する傾向にある。
【0029】
エラストマー(D)の種類については、特に定めるものではないが、非ブタジエン系エラストマーであることが好ましい。非ブタジエン系エラストマーを用いることにより、フルオロ金属塩(C)による耐熱試験後の変色の抑制効果がより向上する傾向にある。
本実施形態で用いうるエラストマーとしては、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマー、シリコーンアクリル系エラストマー等が例示される。
アクリル系エラストマーとしては、コアシェル型エラストマー(例えば、コアがポリブチルアクリレート/シェルがポリメチルメタクリレート)が例示される。また、シリコーンアクリル/ポリスチレンアクリルニトリルなども好ましい例として挙げられる。
【0030】
本実施形態の樹脂組成物がエラストマー(D)を含む場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.5質量部以上であることが好ましく、0.8質量部以上であることがより好ましく、1.0質量部以上であることがさらに好ましく、1.5質量部以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、耐衝撃性がより向上する傾向にある。また、前記エラストマー(D)含有量の上限値は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、20質量部以下であることが好ましく、18質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐熱性等、ポリカーボネート樹脂が本来的に有する優れた性能をより効果的に維持できる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、エラストマー(D)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0031】
<その他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて、上記以外の他の成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、ガラスフィラー、カーボネートオリゴマーや各種樹脂添加剤などが挙げられる。
【0032】
<<ガラスフィラー>>
ガラスフィラーとしては、ガラス繊維やガラスフレーク等が例示され、ガラス繊維が好ましい。
ガラスフィラーを構成するガラスとしては、Eガラス(Electricalglass)、Cガラス(Chemical glass)、Aガラス(Alkali glass)、Sガラス(High strength glass)、Dガラス、Rガラス、および耐アルカリガラス等が例示され、Eガラスが好ましい。
【0033】
本実施形態で用いるガラスフィラー(特に、ガラス繊維)は、シランカップリング剤、ウレタン系集束剤、エポキシ系集束剤等の表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。
【0034】
本実施形態の樹脂組成物がガラスフィラー(特に、ガラス繊維)を含む場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましく、40質量部以上であることが一層好ましく、50質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品がより高弾性率となる傾向にあると共に、インサート成形品として用いやすくなる。また、前記ガラスフィラー(特に、ガラス繊維)の含有量の上限値は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、100質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、70質量部以下であることがさらに好ましく、65質量部以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の加工安定性が向上すると共に、得られる成形品の外観がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、ガラスフィラー(特に、ガラス繊維)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。ガラスフィラー(特に、ガラス繊維)を2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0035】
本実施形態の樹脂組成物は、また、ガラスフィラーを実質的に含まない構成であってもよい。
例えば、樹脂組成物におけるガラスフィラーの含有量が、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0質量部以上1質量部未満であってもよい。このようにガラスフィラーを含まないか、含んでいてもごく微量とすることにより、得られる成形品の耐熱試験後の変色をより効果的に抑制することが可能になる。これは、ガラスフィラーも耐熱試験後の変色を引き起こしやすい傾向にあるためと推測される。
【0036】
<<カーボネートオリゴマー>>
また、本実施形態の樹脂組成物は、カーボネートオリゴマーを含んでいてもよい。カーボネートオリゴマーは、例えば、粘度平均分子量(Mv)が、10,000未満のカーボネートオリゴマーである。前記粘度平均分子量(Mv)は3000以上であることが好ましく、また、8000以下であることがより好ましい。カーボネートオリゴマーの粘度平均分子量(Mv)は、上記ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)と同様の方法で測定される。
特に、本実施形態の樹脂組成物がガラスフィラー(特に、ガラス繊維)を含むときに、カーボネートオリゴマーを含むことが好ましい。すなわち、カーボネートオリゴマーがポリカーボネート樹脂(A)とガラスフィラーの親和性を向上する傾向にある。
【0037】
本実施形態の樹脂組成物がカーボネートオリゴマーを含む場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましく、15質量部以上であることが一層好ましく、20質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、カーボネートオリゴマーがポリカーボネート樹脂(A)とガラスフィラーの親和性がより向上する傾向にある。また、前記カーボネートオリゴマーの含有量の上限値は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましく、35質量部以下であることがさらに好ましく、30質量部以下であることが一層好ましく、25質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、ポリカーボネート樹脂が本来的に有する優れた性能をより効果的に維持できる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、カーボネートオリゴマーを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0038】
<<樹脂添加剤>>
樹脂添加剤としては、例えば、ビス(メタンスルホニル)イミドアルカリ金属塩、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤等)、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤(但し、フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩に該当するものは除く)、難燃助剤、滴下防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、撥水・溌油剤(界面活性剤)、相溶化剤、キレート剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。
帯電防止剤としては、特開2016-216534号公報の段落0063~0067の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、本実施形態の樹脂組成物は、フルオロ金属塩を含むため、帯電防止剤を配合しなくても、帯電防止性能を発揮しうる。
【0039】
<<<紫外線吸収剤>>>
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、樹脂組成物の各種性能がより良好なものになる。
紫外線吸収剤の具体例としては、特開2016-216534号公報の段落0059~0062の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0040】
本実施形態の樹脂組成物が紫外線吸収剤を含む場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。
本実施形態の樹脂組成物は、紫外線吸収剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0041】
<<<安定剤>>>
安定剤としては、熱安定剤や酸化防止剤が挙げられる。
安定剤としては、フェノール系安定剤、アミン系安定剤、リン系安定剤、チオエーテル系安定剤などが挙げられる。中でも本実施形態においては、リン系安定剤が好ましい。
リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜リン酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
【0042】
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標。以下同じ)1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP-10」、城北化学工業社製「JP-351」、「JP-360」、「JP-3CP」、BASF社製「イルガフォス(登録商標。以下同じ)168」等が挙げられる。
【0043】
フェノール系安定剤としては、ヒンダードフェノール系安定剤が好ましく用いられる。ヒンダードフェノール系安定剤の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフェート、3,3',3'',5,5',5''-ヘキサ-tert-ブチル-a,a',a''-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0044】
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなヒンダードフェノール系安定剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「Irganox(登録商標。以下同じ)1010」、「Irganox1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」等が挙げられる。
【0045】
本実施形態の樹脂組成物における安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。安定剤の含有量を前記範囲とすることにより、安定剤の添加効果がより効果的に発揮される。
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0046】
<<<離型剤>>>
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイル、ケトンワックス、ライトアマイドなどが挙げられ、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルが好ましい。
離型剤の詳細は、特開2018-095706号公報の段落0055~0061の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物が離型剤を含む場合、その含有量は、樹脂組成物中、0.05~3質量%であることが好ましく、0.08~0.8質量%であることがより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0047】
<<<滴下防止剤>>>
本実施形態の樹脂組成物は、滴下防止剤を含んでいてもよい。
滴下防止剤としては、フルオロポリマーが好ましく、フルオロポリマーとしては、例えば、フルオロオレフィン樹脂が挙げられる。フルオロオレフィン樹脂は、通常フルオロエチレン構造を含む重合体(共重合体を含む)である。具体例としては、ジフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン樹脂、テトラフルオロエチレン/パーフルアルキルビニルエーテル樹脂等が挙げられる。なかでも好ましくはテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)が挙げられる。このフルオロエチレン樹脂としては、フィブリル形成能を有するフルオロエチレン樹脂が好ましい。
【0048】
フィブリル形成能を有するフルオロエチレン樹脂としては、例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製「テフロン(登録商標)6J」、「テフロン(登録商標)640J」、「テフロン(登録商標)6C」、ダイキン工業社製「ポリフロンMPAF201L」、「ポリフロンMPAF103」、「ポリフロンMPAFA500H」などが挙げられる。さらに、フルオロエチレン樹脂の水性分散液の市販品として、例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製「テフロン(登録商標)30J」、「テフロン(登録商標)31-JR」、ダイキン工業社製「フルオンD-1」等が挙げられる。
【0049】
さらに、ビニル系単量体を重合してなる多層構造を有するフルオロエチレン重合体も使用することができ、このようなフルオロエチレン重合体としては、ポリスチレン-フルオロエチレン重合体、ポリスチレン-アクリロニトリル-フルオロエチレン重合体、ポリメタクリル酸メチル-フルオロエチレン重合体、ポリメタクリル酸ブチル-フルオロエチレン重合体等が挙げられ、具体例としては三菱ケミカル社製「メタブレンA-3800」、GEスペシャリティケミカル社製「ブレンデックス449」等が挙げられる。
【0050】
本実施形態の樹脂組成物が、滴下防止剤を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上であり、より好ましくは0.02質量部以上であり、さらに好ましくは0.03質量部以上であり、また、好ましくは5.0質量部以下であり、より好ましくは3.0質量部以下であり、さらに好ましくは1.0質量部以下であり、一層好ましくは0.7質量部以下である。前記下限値以上とすることにより、難燃性向上効果がより効果的に発揮され、また、前記上限値以下とすることにより、成形品の外観が向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、滴下防止剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0051】
<樹脂組成物の物性>
本実施形態の樹脂組成物は、反射率が高いものとすることができる。
例えば、本実施形態の樹脂組成物を1mm厚の試験片に成形し、波長450nmの光に対する反射率が、87%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましく、93%以上であることがさらに好ましく、95%であることが一層好ましい。反射率の上限は、100%未満が実際的である。反射率は後述する実施例の記載に従って測定される。
【0052】
本実施形態の樹脂組成物は、耐熱試験後の変色を効果的に抑制できる。本実施形態の樹脂組成物を1mm厚さの試験片に成形し、110℃で1000時間処理した前後のΔE*(色差)が0.45未満であることが好ましく、0.44以下であることがより好ましく、0.40以下であることがさらに好ましい。ΔE*の下限は、0超が実施的である。
ΔE*は後述する実施例の記載に従って測定される。
【0053】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知の樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂(A)、二酸化チタン粒子(B)、フルオロ金属塩(C)および、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240~320℃の範囲である。
【0054】
<成形品>
本実施形態の成形品は、本実施形態の樹脂組成物から形成される。上記した樹脂組成物(例えば、ペレット)は、各種の成形法で成形して成形品とされる。成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム状、ロッド状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状、ボタン状のもの等が挙げられる。
【0055】
成形品を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコ-ティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。特に、本実施形態の樹脂組成物は、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法で得られる成形品に適している。しかしながら、本実施形態の樹脂組成物がこれらで得られた成形品に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0056】
本実施形態の樹脂組成物および成形品は、ポリカーボネート樹脂を含む成形品、特に、高い反射率と耐熱安定性が求められる用途に広く用いることができる。
具体的には、電気電子機器/部品、OA機器/部品、情報端末機器/部品、機械部品、家電製品、車輌部品(自動車内外装)、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器などに好ましく用いられる。
【実施例0057】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0058】
1.原料
本実施例で用いる原料の詳細を下記に示す。
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
上記二酸化チタン粒子(B)中の無機成分については、蛍光X線分で測定し、酸化物換算で算出した。具体的には、リガク社製、ZSX Primusを用い、半定量測定にて評価した。酸化物の合計を100質量%とし、各酸化物の割合を質量%で示した。結果を表3に示す。
その他は、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン以外の酸化物の総割合を示す。また、SiO2成分については、有機物由来の成分も含んでいる。
【表3】
【0061】
上記二酸化チタン粒子(B)中の有機成分については、加熱脱着-ガスクロマトグラフ/質量分析装置(TD-GC/MS)を用い、樹脂1gを320℃で10分間加熱して発生したガス成分について、デカン換算で、オルガノシロキサン類の量を確認した。いずれも、オルガノシロキサン類の80質量%以上がハイドロジェンメチルシロキサン構造であった。単位は、μg/gで示した。
加熱脱着-ガスクロマトグラフ/質量分析装置としては、島津製作所製 TD-20(TD)、GC-2010 Plus(GC)、GCMS-QP2010 Ultra(MS)を用いた。
結果を表4に示す。
【表4】
【0062】
実施例1~9、比較例1~9
<樹脂ペレットの調製>
表1~表4に記載の各成分を表5~表7に示す割合(各成分は質量部である)で配合し、タンブラーで20分間混合した。この混合物を日本製鋼所製押出機(TEX30HSST)に供給しスクリュー回転数450rpm、吐出量30~45kg/時間、バレル温度260℃の条件で混練し、ストランド状に押出した。これを水で冷却し、ペレタイザーを用いてペレットとした。
【0063】
<試験片の製造>
得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、射出成形機(日本製鋼所社製「J55AD-6H」)にて、鋼材金型を使用してシリンダー温度280℃、金型温度80℃、射出速度100mm/secの条件で射出成形を行い、1,2,3mm厚の三段プレート試験片を作製した。
【0064】
<色相評価>
上記で得られた試験片を110℃の乾燥機にて1000時間処理した前後の、試験片の1mm厚さの部分について、色相を評価し、初期との差分をΔE*とした。
色素の測定は、日本電色工業(株)製のSE6000型色差計を使用して、反射モード D65 10°視野にて、10mmΦ 厚さ1mm部分の色相を測定し、熱処理後のL*,a*,b*を測定し、初期L*,a*,b*との差より、ΔE*を求めた。
ΔE*=〔(ΔL*2+(Δa*2+(Δb*21/2
【0065】
<反射率>
上記で得られた試験片の1mm厚さの部分について、コニカミノルタ社製の分光測色計(CM3600d)を用い、光源をD65、視野を10度に設定し、SCI通常測定モード、10mmΦ にて、波長450nmにおける反射率(単位:%)を測定した。
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
【表7】
【0069】
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物から成形された成形品は、優れた反射率を達成しつつ、耐熱試験後の変色を高いレベルで抑制できた(実施例1~9)。実施例8では、本発明で規定する二酸化チタン粒子(B)に加え、表面にオルガノシロキサン類を有さない二酸化チタンを含んでいたため、他の実施例と比較すると、やや耐熱試験後の変色の抑制の度合いが低いものの、十分な変色抑制効果が認められた。また、エラストマーを配合した場合、耐熱試験後の変色をより効果的に抑制できた(実施例7、実施例9)。特に、エラストマーを配合した場合、さらにガラス繊維を配合しても、耐熱試験後の変色を十分に抑制できた(実施例9)。
これに対し、フルオロメタンスルホニルイミドのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩(C)以外の金属塩を用いた場合、耐熱試験後の変色を十分に抑制できなかった(比較例1、2、4~9)。
二酸化チタン粒子(B)の含有量が少ない場合、反射率が低かった(比較例3)。
また、二酸化チタン粒子を含んでいても、表面にオルガノシロキサン類を有さない場合、耐熱試験後の変色が十分に抑制できなかった(比較例4)。