(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123769
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】電場応答性粒子及びその製造方法、並びに電気泳動用媒体
(51)【国際特許分類】
G02F 1/167 20190101AFI20240905BHJP
C09C 1/48 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G02F1/167
C09C1/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031431
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(71)【出願人】
【識別番号】303018827
【氏名又は名称】Tianma Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100183955
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 悟郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100180334
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋美
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100174067
【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 成美
(72)【発明者】
【氏名】谷口 竜王
(72)【発明者】
【氏名】ラウ チー イー
(72)【発明者】
【氏名】岡本 守
(72)【発明者】
【氏名】植山 洋
(72)【発明者】
【氏名】田邉 浩
【テーマコード(参考)】
2K101
4J037
【Fターム(参考)】
2K101AA04
2K101BA02
2K101BB05
2K101BB06
2K101BB34
2K101BC02
2K101BC23
2K101BC41
2K101BE07
2K101BE09
2K101BE32
2K101BE41
2K101EC02
2K101EE02
2K101EK12
4J037AA02
4J037CC13
4J037CC16
4J037FF11
(57)【要約】
【課題】電場応答性粒子及びその製造方法と、電場応答性粒子を含む電気泳動用媒体とを提供する。
【解決手段】
電場応答性粒子10は、カーボンブラックからなる芯材11と、芯材11の表面に結合され、正電荷を有する官能基を含む第1ポリマー21と、を備える。正電荷を有する官能基は、第四級アンモニウム基又はその塩であり、電場応答性粒子10は、液体媒体中において正電荷に帯電する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電場応答性粒子は、
カーボンブラックと、
前記カーボンブラックの表面に結合され、正電荷を有する官能基を含む第1ポリマー を備え、
前記第1ポリマーに含まれる前記官能基は、第四級アンモニウム基又はその塩であり、
前記電場応答性粒子は、液体媒体中において正電荷に帯電する、電場応答性粒子。
【請求項2】
前記第1ポリマーは、アゾ基を介して、前記カーボンブラックの表面に結合される、請求項1に記載の電場応答性粒子。
【請求項3】
前記電場応答性粒子は、動的光散乱法による平均粒径が1nm~10μmであり、多分散度多分散指数が0.3以下である、請求項1に記載の電場応答性粒子。
【請求項4】
電場応答性粒子は、
カーボンブラックと、
前記カーボンブラックの表面に結合され、正電荷を有する官能基を含む第1ポリマーと、
前記第1ポリマーに対して積層され、負電荷を有する官能基を含む第2ポリマーと、を備え、
前記第2ポリマーは前記第1ポリマーに対して静電的に吸着されており、
前記電場応答性粒子は、液体媒体中において負電荷に帯電する、電場応答性粒子。
【請求項5】
前記第1ポリマーに含まれる前記官能基は、第四級アンモニウム基又はその塩である、請求項4に記載の電場応答性粒子。
【請求項6】
前記第1ポリマーは、アゾ基を介して、前記カーボンブラックの表面に結合される、請求項4に記載の電場応答性粒子。
【請求項7】
前記第2ポリマーに含まれる前記官能基は、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、又はこれらの塩である、請求項4に記載の電場応答性粒子。
【請求項8】
電場応答性粒子は、
カーボンブラックと、
前記カーボンブラックの表面に結合され、正電荷を有する官能基を含む第1ポリマーと、
前記第1ポリマーに対して積層され、負電荷を有する官能基を含む第2ポリマーと、
前記第2ポリマーに対して積層され、正電荷を有する官能基を含む第3ポリマーと、を備え、
前記第2ポリマーは前記第1ポリマーに対して静電的に吸着されており、
前記第3ポリマーは前記第2ポリマーに対して静電的に吸着されており、
前記電場応答性粒子は、液体媒体中において正電荷に帯電する、電場応答性粒子。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電場応答性粒子と、
前記電場応答性粒子が分散される溶媒と、を含む、電気泳動用媒体。
【請求項10】
液体媒体中において正電荷に帯電する電場応答性粒子の製造方法であって、
ニトロ基を含む重合開始基に単量体を重合させ、ニトロ基を含む第1ポリマーを形成する重合工程と、
前記第1ポリマーに含まれるニトロ基をアミノ基に変換する変換工程と、
ジアゾカップリングにより、アミノ基を有する前記第1ポリマーをカーボンブラック表面に結合させる結合工程と、
を含み、
前記重合工程で、第四級アンモニウム基を有する単量体を用いて前記第1ポリマーを重合する、又は、
前記重合工程で、アミノ基を含む単量体を用いて前記第1ポリマーを重合し、且つ、前記結合工程後に、ハロゲン化アルキルを用いて前記第1ポリマーに含まれるアミノ基を第四級アンモニウム基とする四級化工程を更に行う、電場応答性粒子の製造方法。
【請求項11】
液体媒体中において負電荷に帯電する電場応答性粒子の製造方法であって、
ニトロ基を含む重合開始基に単量体を重合させ、ニトロ基を含む第1ポリマーを形成する重合工程と、
前記第1ポリマーに含まれるニトロ基をアミノ基に変換する変換工程と、
ジアゾカップリングにより、アミノ基を有する前記第1ポリマーをカーボンブラック表面に結合させる結合工程と、
を含み、
前記重合工程で、第四級アンモニウム基を有する単量体を用いて前記第1ポリマーを重合する、又は、
前記重合工程で、アミノ基を含む単量体を用いて前記第1ポリマーを重合し、且つ、前記結合工程後に、ハロゲン化アルキルを用いて前記第1ポリマーに含まれるアミノ基を第四級アンモニウム基とする四級化工程を更に行い、
前記カーボンブラック表面に結合され、第四級アンモニウム基を有する前記第1ポリマーに対して、負電荷を有する官能基を含む第2ポリマーを静電的に吸着させる工程を更に含む、電場応答性粒子の製造方法。
【請求項12】
液体媒体中において正電荷に帯電する電場応答性粒子の製造方法であって、
ニトロ基を含む重合開始基に単量体を重合させ、ニトロ基を含む第1ポリマーを形成する重合工程と、
前記第1ポリマーに含まれるニトロ基をアミノ基に変換する変換工程と、
ジアゾカップリングにより、アミノ基を有する前記第1ポリマーをカーボンブラック表面に結合させる結合工程と、
を含み、
前記重合工程で、第四級アンモニウム基を有する単量体を用いて前記第1ポリマーを重合する、又は、
前記重合工程で、アミノ基を含む単量体を用いて前記第1ポリマーを重合し、且つ、前記結合工程後に、ハロゲン化アルキルを用いて前記第1ポリマーに含まれるアミノ基を第四級アンモニウム基とする四級化工程を更に行い、
前記カーボンブラック表面に結合され、第四級アンモニウム基を有する前記第1ポリマーに対して、負電荷を有する官能基を含む第2ポリマーを静電的に吸着させる工程と、
前記第2ポリマーに対して、正電荷を有する官能基を含む第3ポリマーを静電的に吸着させる工程と、を更に含む、電場応答性粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電場応答性粒子及びその製造方法、並びに電気泳動用媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行ATM(Automatic Teller Machine)などの産業機器では操作パネルの背後からの覗き見(ショルダーハッキング)防止に対して高い関心が寄せられてきた。近年、ノートパソコン、スマートフォン、及びタブレット等の携帯型端末が普及し、プライバシー保護の観点からも覗き見対策への要望が高まっている。
【0003】
現在までに開発されている覗き見対策技術としては、視野角の制限技術を基盤としていくつかの手法が提案されている。例えば、液晶ディスプレイそのものを新たに設計する方法では、スイッチ液晶層を液晶メインパネル上部へ配置する。この方法では、スイッチ液晶層のオン/オフの切り替えが可能であるが、遮蔽性は必ずしも高くない。一方、比較的安価な製品としては、遮光部がマイクロルーバー状に配列されたフィルムがある。このフィルムでは、遮蔽性に優れるが、遮蔽が不要な場合には、フィルムを脱着することが必要となる。このため、遮蔽機能のオン/オフの切り替えが可能であり、遮蔽性に優れたプライバシーフィルタを実現することが期待されている。
【0004】
ここで、カーボンブラックは優れた遮光性及び耐熱性を有し、優れた黒色であるため、電気泳動粒子としてプライバシーフィルタへ利用することが期待される。しかし、カーボンブラック単体では、電気的に中性であるため、電場応答性を発揮することが困難である。
【0005】
また、オン/オフ切り替え可能で遮光性に優れたプライバシーフィルタの実現において、重要な役割を担っているのはカーボンブラック分散体である。しかし、カーボンブラック分散体では、カーボンブラックは凝集性が高く、各種溶媒中における分散安定性が必ずしも高くないという課題がある。更に、カーボンブラックに電気泳動性を付与するためには、電荷の導入量を増大させなければならないという課題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Advances in Polymer Technology, 2021, 2021, 1-11
【非特許文献2】Journal of Materials Chemistry A, 2014,2, 16039-16050
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カーボンブラック表面への高分子鎖を導入する方法としては、例えば、非特許文献1では、ポリドーパミンによりカーボンブラックを被覆した後に原子移動ラジカル重合を行う方法が、非特許文献2では、カーボンブラック表面を酸化した後に原子移動ラジカル重合を行う方法が、それぞれ報告されている。しかし、これらの方法では、カーボンブラックの電場応答性の評価には至っていない。
【0008】
このように、カーボンブラックに電荷導入させた電場応答性を有するカーボンブラックが求められている。
【0009】
また、プライバシーフィルタ以外にも、電子ペーパーのような装置でも、同様にカーボンブラックを用いた電場応答性粒子が求められている。
【0010】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明は、電場応答性粒子及びその製造方法と、電場応答性粒子を含む電気泳動用媒体とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の第1の実施態様に係る電場応答性粒子は、
カーボンブラックと、
前記カーボンブラックの表面に結合され、正電荷を有する官能基を含む第1ポリマー を備え、
前記第1ポリマーに含まれる前記官能基は、第四級アンモニウム基又はその塩であり、
前記電場応答性粒子は、液体媒体中において正電荷に帯電する。
【0012】
本開示の第2の実施態様に係る電場応答性粒子は、
カーボンブラックと、
前記カーボンブラックの表面に結合され、正電荷を有する官能基を含む第1ポリマーと、
前記第1ポリマーに対して積層され、負電荷を有する官能基を含む第2ポリマーと、を備え、
前記第2ポリマーは前記第1ポリマーに対して静電的に吸着されており、
前記電場応答性粒子は、液体媒体中において負電荷に帯電する。
【0013】
本開示の第3の実施態様に係る電場応答性粒子は、
カーボンブラックと、
前記カーボンブラックの表面に結合され、正電荷を有する官能基を含む第1ポリマーと、
前記第1ポリマーに対して積層され、負電荷を有する官能基を含む第2ポリマーと、
前記第2ポリマーに対して積層され、正電荷を有する官能基を含む第3ポリマーと、を備え、
前記第2ポリマーは前記第1ポリマーに対して静電的に吸着されており、
前記第3ポリマーは前記第2ポリマーに対して静電的に吸着されており、
前記電場応答性粒子は、液体媒体中において正電荷に帯電する。
【0014】
本開示の第4の実施態様に係る電気泳動用媒体は、第1の実施態様~第3の実施態様のいずれかに係る電場応答粒子と、
前記電場応答性粒子が分散される溶媒と、を含む。
【0015】
本開示の第5の実施態様に係る電場応答性粒子の製造方法は、
液体媒体中において正電荷に帯電する電場応答性粒子の製造方法であって、
ニトロ基を含む重合開始基に単量体を重合させ、ニトロ基を含む第1ポリマーを形成する重合工程と、
前記第1ポリマーに含まれるニトロ基をアミノ基に変換する変換工程と、
ジアゾカップリングにより、アミノ基を有する前記第1ポリマーをカーボンブラック表面に結合させる結合工程と、
を含み、
前記重合工程で、第四級アンモニウム基を有する単量体を用いて前記第1ポリマーを重合する、又は、
前記重合工程で、アミノ基を含む単量体を用いて前記第1ポリマーを重合し、且つ、前記結合工程後に、ハロゲン化アルキルを用いて前記第1ポリマーに含まれるアミノ基を第四級アンモニウム基とする四級化工程を更に行う。
【0016】
本開示の第6の実施態様に係る電場応答性粒子の製造方法は、
液体媒体中において負電荷に帯電する電場応答性粒子の製造方法であって、
ニトロ基を含む重合開始基に単量体を重合させ、ニトロ基を含む第1ポリマーを形成する重合工程と、
前記第1ポリマーに含まれるニトロ基をアミノ基に変換する変換工程と、
ジアゾカップリングにより、アミノ基を有する前記第1ポリマーをカーボンブラック表面に結合させる結合工程と、
を含み、
前記重合工程で、第四級アンモニウム基を有する単量体を用いて前記第1ポリマーを重合する、又は、
前記重合工程で、アミノ基を含む単量体を用いて前記第1ポリマーを重合し、且つ、前記結合工程後に、ハロゲン化アルキルを用いて前記第1ポリマーに含まれるアミノ基を第四級アンモニウム基とする四級化工程を更に行い、
前記カーボンブラック表面に結合され、第四級アンモニウム基を有する前記第1ポリマーに対して、負電荷を有する官能基を含む第2ポリマーを静電的に吸着させる工程を更に含む。
【0017】
本開示の第7の実施態様に係る電場応答性粒子の製造方法は、
液体媒体中において正電荷に帯電する電場応答性粒子の製造方法であって、
ニトロ基を含む重合開始基に単量体を重合させ、ニトロ基を含む第1ポリマーを形成する重合工程と、
前記第1ポリマーに含まれるニトロ基をアミノ基に変換する変換工程と、
ジアゾカップリングにより、アミノ基を有する前記第1ポリマーをカーボンブラック表面に結合させる結合工程と、
を含み、
前記重合工程で、第四級アンモニウム基を有する単量体を用いて前記第1ポリマーを重合する、又は、
前記重合工程で、アミノ基を含む単量体を用いて前記第1ポリマーを重合し、且つ、前記結合工程後に、ハロゲン化アルキルを用いて前記第1ポリマーに含まれるアミノ基を第四級アンモニウム基とする四級化工程を更に行い、
前記カーボンブラック表面に結合され、第四級アンモニウム基を有する前記第1ポリマーに対して、負電荷を有する官能基を含む第2ポリマーを静電的に吸着させる工程と、
前記第2ポリマーに対して、正電荷を有する官能基を含む第3ポリマーを静電的に吸着させる工程と、を更に含む。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、電場応答性粒子及びその製造方法と、電場応答性粒子を含む電気泳動用媒体とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態1に係る電場応答性粒子の構造を模式的に示す図である。
【
図2】実施形態1に係る電場応答性粒子の表面を模式的に示す図である。
【
図3】電場応答性粒子を含む電気泳動用媒体を用いたアクティブルーバーの構造を模式的に示す図である。
【
図4】実施形態1に係る電場応答性粒子の製造プロセスを模式的に示す図である。
【
図5】実施形態2に係る電場応答性粒子の構造を模式的に示す図である。
【
図6】実施形態2に係る電場応答性粒子の表面を模式的に示す図である。
【
図7】実施形態2に係る電場応答性粒子の製造プロセスを模式的に示す図である。
【
図8】実施形態3に係る電場応答性粒子の構造を模式的に示す図である。
【
図9】実施形態3に係る電場応答性粒子の表面を模式的に示す図である。
【
図10】実施例における電場応答性粒子が電極間で分散又は凝集する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し、本実施形態に係る電場応答性粒子及びその製造方法、並びに電場応答性粒子を含む電気泳動用媒体を説明する。
【0021】
(実施形態1)
本実施形態に係る電場応答性粒子10は、
図1に示すように、芯材11と、芯材11上に設けられた第1ポリマー21から形成される第1の層12を備える。
図2に模式的に示すように、芯材11は、カーボンブラックであり、第1ポリマー21は、正電荷を有する官能基を有するポリマーである。第1ポリマー21が正電荷の官能基を有することから、電場応答性粒子10は、液体媒体中において、最表層に位置する第1の層12が全体として正電荷を帯び、電場応答性粒子10の表面電荷が正となる。これにより、電場応答性粒子10は、液体媒体中において、電場に応答する性質を有する。本実施形態で、電場応答性とは、電圧の印加のオン・オフにより分散又は凝集と変化する性質を示す。
【0022】
なお、
図1では、電場応答性粒子10の断面形状が、円形である場合を例に挙げて説明しているが、本実施形態の電場応答性粒子10の形状は任意である。
【0023】
芯材11としては、カーボンブラックを用いる。カーボンブラックは、炭素の微粒子である。芯材11の形状は任意である。カーボンブラック粒子は、一般に球状の粒子を最小単位とし、いくつかの粒子が付着して、ストラクチャーと呼ばれる複雑な構造を持つことが知られている。芯材11の形状は、本実施形態に示す球状に限られず、そのストラクチャーは長円状、多角形状であることができる。芯材11は、カーボンブラックの表面に、第1ポリマー21を結合させるためのヒドロキシ基又はカルボキシ基のような電子を供与する官能基を有する。官能基は、予めカーボンブラック表面に設けられていてもよいし、酸化反応によってカーボンブラックの表面に導入されてもよい。酸化反応は、既知の方法を用いて行うことができ、例えば硫酸及び過マンガン酸を用いて行うことができる。
【0024】
第1ポリマー21は、以下に詳細に説明するように、単独の単量体又は複数の単量体をリビングラジカル重合によって得られる重合体である。また、第1ポリマー21は、
図2に模式的に示すように芳香族化合物部位21aと、単量体が繰り返し重合された重合部21bとを有する。芳香族化合物部位21aがアゾ基によりカーボンブラックの表面に結合されることで、第1ポリマー21は、芯材11の表面に結合される。芳香族化合物部位21aはカーボンブラック(芯材11)と重合部21bとを連結する。重合部21bを構成する単量体が正電荷を有する官能基を有する。これにより、第1ポリマー21は、正電荷を有する官能基を備え、第1ポリマー21が正電荷を帯びる。
【0025】
また、本実施形態では、芳香族ニトロ化合物を重合開始基として使用し、1種類の単量体又は、複数種類の単量体を重合することで重合部21bが形成される。また、開始基として使用した芳香族ニトロ化合物のニトロ基をアミノ基に変換して芳香族アミンとした後、カーボンブラック表面にジアゾカップリングさせることで、アゾ基を介して芳香族部位を有する第1ポリマーを結合させた芳香族化合物部位21aが形成される。
【0026】
第1ポリマー21を、芯材11に対して設ける量は任意であるが、例えば、第1ポリマー21は、カーボンブラックの重量に対し、5%重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%を超えて結合させることができる。第1ポリマー21をより多くカーボンブラックに設けることができると正電荷を有する官能基を増加させることができる。従って、電場応答性粒子10の荷電量を増加させることができる。これにより、電場応答性粒子10の泳動動作を向上させることができる。また、第1ポリマー21は、正電荷を有する官能基により正電荷を有する。化学的に結合する官能基により正電荷が付与されるため、電荷の分離が生じにくく、電荷が安定して得られる。従って、信頼性を向上させることができる。
【0027】
また、電場応答性粒子10は、電気泳動用媒体の電気泳動粒子として使用することができる。電気泳動粒子として電場応答性粒子10を使用する場合、電場応答性粒子10は、溶媒中での分散安定性を向上させる観点から、動的光散乱法により液体媒体中で測定された平均粒径が、10μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、500nm以下であることが更に好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。加えて、電場応答性粒子10の効率の良い生産性を考慮する観点から、1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることが更に好ましく、10nm以上であることが更に好ましい。また、電場応答性粒子10は、動的光散乱法により液体媒体中で測定された多分散指数が0.3以下であることが好ましい。
【0028】
本実施形態の電場応答性粒子10は、一例として、プライバシーフィルター(アクティブルーバー)の電気泳動粒子として用いられる。また、アクティブルーバー40の一例を
図3に示す。アクティブルーバー40では、
図3に示すオン状態、オフ状態を問わず、ディスプレイが発する光の透過率が高いことが、視認性や消費電力増加の抑制の観点から望ましい。そのため、電気泳動用媒体30が収容される透過・遮光切替部(セル)43は、透過・遮光切替部43に隣接する透過部46に比べ、その体積(幅)が小さいことが望ましい。例えば、透過・遮光切替部43の幅wは、例えば、5~20μmに設定される。透過部46の幅の大きさに応じて、電場応答性粒子の大きさは透過・遮光切替部43の幅の1/10以下に設定されることが望ましく、1/50~1/100程度に設定されることがより望ましい。
【0029】
ここで、平均粒径及び粒径分布は、動的光散乱法によって測定することができる。動的光散乱測定装置の一例は、光源に半導体レーザー(70mW)、検出器にフォトカウント用光電子増倍管を備えたnanoSAQLA(大塚電子社製)である。
【0030】
電場応答性粒子10は、配合時の遮光性を向上させる観点と、配合時に凝集のような不均一性が生じることを抑制するという観点とから、CV(Coefficient of Variation)値が、40%以下であることが好ましく、35%以下であることがより好ましく、25%以下であることが更に好ましく、10%以下であることが特に好ましい。なお、CV値は、動的光散乱法において散乱強度分布に基づく標準偏差を平均粒径で除して100を掛けた変動係数の値である。
【0031】
(第1ポリマー21)
本実施形態の第1ポリマー21は、正電荷を有する官能基を含むポリマーである。第1ポリマー21は、電場応答性粒子10において、芯材11の表面に導入される物質である。第1ポリマー21は、1種であってもよく、2種以上のポリマーを組み合わせて使用することもできる。第1ポリマー21は、
図2に模式的に示すように芳香族化合物部位21aと、単量体が繰り返し重合された重合部21bとを有する。
【0032】
カーボンブラックに結合される前の第1ポリマー21では、芳香族化合物部位21aはアミノ基を有している。カーボンブラックに結合される前の芳香族化合物部位21aのアミノ基は、カーボンブラックの表面のヒドロキシ基を有するフェノールに対して反応性を示すため、このアミノ基を用いたジアゾカップリングにより、カーボンブラックの表面に結合される。このため、芳香族化合物部位21aはアゾ基を介して、カーボンブラック表面に結合している。
【0033】
本実施形態では、予め重合済みの第1ポリマー21をカーボンブラックの表面に結合させる。このため、芯材11の表面で重合を行う場合と比較して、第1ポリマー21の重合度のバラつきを抑えることができる。これにより、電場応答性粒子10の粒子間の粒径の均一性を向上させることができる。また、第1ポリマー21の重合度を変えることで、粒径の制御がし易くなるという利点がある。
【0034】
また、第1ポリマー21は正電荷を有する官能基を含むことで、液体媒体中で正電荷を帯びる。第1ポリマー21の正電荷は、正電荷の官能基により付与される。
【0035】
正電荷の官能基は、アンモニウム基、ピリジニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基又はこれらの塩から選択され、アンモニウム基又はその塩が好ましい。塩は、塩化物、臭素化物、ヨウ素塩、フッ化物、テトラフルオロホウ酸塩、六フッ化リン酸塩、メチルサルフェート塩等である。
【0036】
ここで、第1ポリマー21は、芯材11の表面へ結合させる前に、正電荷を有する官能基を有していてもよい。この場合は、正電荷を有する官能基を含む単量体を重合させて重合部21bを形成する。芯材11の表面に結合された後に、化学反応により第1ポリマー21に正電荷を有する官能基を導入する場合は、電荷を有しない単量体を重合させて重合部を形成し、芯材11に結合した後に、官能基を導入する。
【0037】
単独の単量体又は単量体混合物を重合する際には、リビングラジカル重合等の重合方法によって製造することができる。リビングラジカル重合としては、例えば、ニトロキシド媒介重合(NMP:Nitroxide-Mediated Radical Polymerization)、原子移動ラジカル重合(ATRP:Atom Transfer Radical Polymerization)、可逆的付加開裂型連鎖移動重合(RAFT:Reversible Addition Fragmentation chain Transfer Polymerization)等を用いることができる。特に芯材11であるカーボンブラックへの化学結合による固定化の観点から、末端に芳香族アミンを導入できる原子移動ラジカル重合が好ましい。
【0038】
原子移動ラジカル重合に用いる重合開始基としては、芳香族アミンに変換することができるニトロフェニル基を有する芳香族ニトロ化合物を使用する。重合開始基に芳香族アミンが含まれている場合、アミン部位が遷移金属錯体の配位子と交感反応を起こす可能性があるため、重合後にニトロ基をアミノ基に変換することが好ましいためである。このような重合開始基としては、p-ニトロベンジル-2-クロロプロパノエート、ニトロベンジルイソチオシアネート、ニトロベンジルクロリド、ニトロベンジルブロミド、ニトロフェニルエチルクロリド、ニトロフェニルエチルブロミド、エチルα-ブロモニトロフェニルアセテート等を用いることができる。
【0039】
遷移金属錯体を用いて、芳香族アミンに変換することができるニトロフェニル基等を有する重合開始基から、単量体の原子移動ラジカル重合により第1ポリマー21を合成する。単量体は、電場応答性粒子を原子移動ラジカル重合により合成できれば、特に限定されない。単量体は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
ここで、第1ポリマー21は、以下の式で表される構造を有する。
【化1】
ここで、Rは重合開始基から、ニトロフェニル基及びハロゲン原子を除いた部位であり、mは重合度を示し、Xはハロゲン原子を示す。Xは、例えばCl又はBrである。また、芳香族化合物部位21aは、アゾ基、フェニル基、及びRに相当し、重合部21bは、単量体の重合体、ハロゲン原子に相当する。
【0041】
予め正電荷を有する官能基が導入されている第1ポリマー21では、単量体は、N,N-ジメチル-N-アルキル-N-2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアンモニウムブロミド、N,N-ジエチル-N-アルキル-N-2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアンモニウムブロミド、N-アルキル-ビニルプリジニウムクロリド、メタクリロイルオキシフェニルジメチルスルホニウムメチルサルフェート、又は(4-ビニルベンジル)トリアルキルホスホニウムクロリドのいずれか1つ、又は2種以上から選択されてもよい。
【0042】
次に、芯材11に結合させた後に化学反応により、第1ポリマー21に正電荷を導入する場合、化学反応により、アンモニウム基、スルホニウム基、又はホスホニウム基のような正電荷を有する官能基を導入することができる単量体を使用する。
【0043】
また、化学反応により電荷を導入する方法としては、ハロゲン化アルキルを用いる方法がある。具体的には、ハロゲン化アルキルを用いて第三級アミノ基又は第四級アンモニウム基に形成する。この際に用いるハロゲン化アルキルは、第1ポリマー21との反応により第三級アミノ基又は四級化アンモニウム基を形成できれば、特に限定されない。ハロゲン化アルキルは、例えば、ヨードメタン、ヨードエタン、ブロモエタン、クロロエタン、ヨードプロパン、ブロモプロパン、クロロプロパン、ヨードブタン、ブロモブタン、クロロブタンを使用することができる。正電荷は四級化アンモニウム基のN原子により付与されることを考慮すると、ハロゲン化アルキルのアルキルは、メタン、エタンのように分子サイズが小さいことが好ましいと考えられる。また、ハロゲン化アルキルとしては、特にヨードメタンが好ましいと考えられる。
【0044】
この場合、単量体としては、第三級アミノ基又は第四級アンモニウム基を形成可能な物質が好ましく、第四級アンモニウム基を形成可能であることが更に好ましい。このような単量体としては、例えば、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(N,N-ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、2-(N,N-ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート又は2-アミノエチル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリレート系モノマー、ビニルピリジン等の単量体が挙げられる。このような単量体を用いる場合は、ポリ[(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート]、ポリ[2-(N,N-ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート]、ポリビニルピリジン等を重合させた後、ヨードメタンのようなハロゲン化アルキルとの反応で、第三級アミノ基又は四級化アンモニウム基を導入する。
【0045】
加えて、単量体は、電場応答性粒子の表面電荷量等を改良するため、必要に応じて、多官能単量体、官能基を有する単量体を併用してもよい。多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0046】
本実施形態では、単量体として第四級アンモニウム基が形成可能な物質が好ましく、以下の化学式で示される(メタ)アクリレート系モノマーが特に好ましい。
【化2】
ここで、R
1は、炭素数1~18の環式又は鎖式炭化水素であり、好ましくは炭素数2~10の鎖式飽和炭化水素であり、更に好ましくは炭素数2又は3の鎖式飽和炭化水素であり、R
2はメチル基又はエチル基であり、R
3はメチル基又はエチル基であり、R
4は水素原子又はメチル基である。なお、R
2とR
3は同じであることが好ましい。
【0047】
第1ポリマー21の分子量は、特に制限されない。しかし、分子量が大きすぎると、第1ポリマー21が嵩高くなるため、芯材11の表面への導入に不利となる。このため、第1ポリマー21の分子量は10000Daを超えないことが好ましい。また、第1ポリマー21の分子量が小さい場合、正電荷を付与する官能基の量が足りない可能性がある。このため、第1ポリマー21の分子量は、200以上であることが好ましい。また、第1ポリマーの重合度(m)は、2~1000、より好ましくは5~100である。
【0048】
本開示の電場応答性粒子10では、第1ポリマー21では、化学的に結合する官能基により正電荷が付与されるため、電荷の分離が生じにくく、電荷が安定して得られる。
【0049】
また、第1ポリマー21は、予め重合させた後に芯材11に結合させることから、第1ポリマー21の重合部21bの重合度の制御をすることで、電場応答性粒子10の粒子間の粒径の均一性を向上させることができる。また、第1ポリマー21の重合度を変えることで、粒径の制御も行い易いという利点がある。
【0050】
本開示の電場応答性粒子は、液体媒体中で正電荷を帯び、液体媒体中に分散した状態で電圧を印加すると、電極間で泳動する優れた電場応答性を示す。
【0051】
更に、本開示の電場応答性粒子では、粒径の制御を行いやすく、粒径を小さくすることもできる。これにより、液体媒体中での沈降が抑制され、分散安定性を向上させることができる。
【0052】
(電場応答性粒子の製造方法)
次に、電場応答性粒子の製造方法を、図を用いて説明する。
図4に本実施形態の製造プロセスを模式的に示す。また、本実施形態では第1ポリマー21は、合成されたポリマーをカーボンブラック表面に結合させた後に、正電荷を付与する構成を例に挙げて説明する。
【0053】
まず、第1工程として、カーボンブラック(CB)の表面に、第1ポリマー21を結合させるためのヒドロキシ基又はカルボキシ基のような電子を供与する官能基を導入するため、カーボンブラック表面の酸化処理を行う。酸化反応は、既知の方法を用いて行うことができ、例えば硫酸及び過マンガン酸を用いて行うことができる。酸化処理により、
図4に示すように酸化カーボンブラック(oCB)が得られる。
【0054】
次に、第2工程として、リビングラジカル重合によるポリマーの合成を行う。
【0055】
リビングラジカル重合としては、例えば、ニトロキシド媒介重合(NMP:Nitroxide-Mediated Radical Polymerization)、原子移動ラジカル重合(ATRP:Atom Transfer Radical Polymerization)、可逆的付加開裂型連鎖移動重合(RAFT:Reversible Addition Fragmentation chain Transfer Polymerization)等を用いることができる。特に芯材11であるカーボンブラックへの化学結合による固定化の観点から、末端に芳香族アミンを導入できる原子移動ラジカル重合が好ましい。
【0056】
原子移動ラジカル重合に用いる重合開始基としては、芳香族アミンに変換することができるニトロフェニル基を有する化合物を使用する。このような重合開始基としては、p-ニトロベンジル-2-クロロプロパノエート、ニトロベンジルイソチオシアネート、ニトロベンジルクロリド、ニトロベンジルブロミド、ニトロフェニルエチルクロリド、ニトロフェニルエチルブロミド、エチルα-ブロモニトロフェニルアセテート等を挙げることができる。
【0057】
遷移金属錯体を用いて、芳香族アミンに変換することができるニトロフェニル基等を有する重合開始基から、単量体の原子移動ラジカル重合により第1ポリマー21を合成する。重合開始基に芳香族アミンが含まれている場合、アミン部位が遷移金属錯体の配位子と交感反応を起こす可能性があるため、重合後にニトロ基をアミノ基に変換することが好ましい。
【0058】
原子移動ラジカル重合に用いる遷移金属錯体としては、中心金属としてルテニウム、鉄、ニッケル、銅等の遷移金属を備え、2,2’-ビピリジン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス(2-ピリジルメチル)アミン、トリス[2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル]アミン等、又はこれらの誘導体を配位子とする錯体が挙げられる。
【0059】
単量体は、電場応答性粒子をリビングラジカル重合により合成できれば、特に限定されない。単量体は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
本実施形態では、重合開始基として、p-ニトロベンジル-2-クロロプロパノエート(式1)、単量体として、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(式2)を用いる場合を例に挙げる。
【0061】
重合開始基として、p-ニトロベンジル-2-クロロプロパノエート(式1)、単量体として、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(式2)を用いてラジカル重合により、式3に示すNO
2-Ar-PDMAEMA(ポリジメチルアミノエチルメタアクリレート)が得られる。
(式1)
【化3】
(式2)
【化4】
(式3)
【化5】
【0062】
次に、水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤により、ポリマー末端のニトロ基をアミノ基に還元する。例えば、式3のニトロ基をアミノ基に還元し、式4に示すNH
2-Ar-PDMAEMAが得られる。
(式4)
【化6】
【0063】
次に、第3工程として、カーボンブラックへのポリマーの化学的固定化を行う。第2工程で得られた末端にアミノ基を有するポリマーを、ジアゾカップリングにより、第1工程で得られたカーボンブラック表面に結合させる。ジアゾカップリングには、亜硝酸ナトリウムと塩酸とを用いる。
【0064】
例えば、式4に示すNH
2-Ar-PDMAEMAをカーボンブラックの表面のヒドロキシ基を有するフェノールに対して反応させる。これにより、
図4に示すように、式5に示す、-N=N-Ar-PDMAEMAが、カーボンブラック表面に結合される。
(式5)
【化7】
【0065】
次に、第4工程として、カーボンブラックに化学的に固定化されたポリマーへの正電荷の導入を行う。
【0066】
化学反応により電荷を導入する方法としては、ハロゲン化アルキルを用いる方法がある。具体的には、ハロゲン化アルキルを用いて第三級アミノ基又は第四級アンモニウム基に形成する。この際に用いるハロゲン化アルキルは、第1ポリマー21との反応により四級化アンモニウム基を形成できれば、特に限定されない。ハロゲン化アルキルは、例えば、ヨードメタン、ヨードエタン、ブロモエタン、クロロエタン、ヨードプロパン、ブロモプロパン、クロロプロパン、ヨードブタン、ブロモブタン、クロロブタンを使用することができる。正電荷は四級化アンモニウム基のNにより付与されることを考慮すると、ハロゲン化アルキルのアルキルは、メタン、エタンのように分子サイズが小さいことが好ましいと考えられる。また、ハロゲン化アルキルとしては、特にヨードメタンが好ましいと考えられる。
【0067】
一例として、カーボンブラック表面にグラフトされた式5に示すNH
2-Ar-PDMAEMAの第三級アミノ基を、ハロゲン化アルキルとしてヨードメタンを用いて、式6に示すように四級化する。これにより、式6に示すように、正電荷を有する官能基を備える第1ポリマー21が得られる(
図4に示すoCB-g-PDMAEMA+CH
3)。
(式6)
【化8】
【0068】
以上の工程から、電場応答性粒子を得ることができる。
なお、第2工程で、予め正電荷を有する官能基を含む単量体を用いる場合は、上記の第4工程を省略することができる。
【0069】
本開示の電場応答性粒子の製造方法によれば、第1ポリマー21は、予め重合させた後に芯材11に結合させることから、第1ポリマー21の重合部21bの重合度の制御をすることで、電場応答性粒子10の粒子間の粒径の均一性を向上させることができる。また、第1ポリマー21の重合度を変えることで、粒径の制御も行い易いという利点がある。
【0070】
第1ポリマー21では、化学的に結合する官能基により正電荷が付与されるため、電荷の分離が生じにくく、電荷が安定して得られ、電場応答性粒子10を、液体媒体中で正電荷を帯びさせることができる。電場応答性粒子10は、液体媒体中に分散した状態で電圧を印加すると、電極間で泳動する優れた電場応答性を示す。
【0071】
(アクティブルーバー)
本実施形態に係る電場応答性粒子10は、例えば、アクティブルーバーの電気泳動粒子として使用される。
図3に、電場応答性粒子10を用いた電気泳動用媒体30を、アクティブルーバー40に利用する場合の一例を示す。アクティブルーバー40は、第1電極41と、第1電極41に対向して配置された第2電極42と、第1電極41と第2電極42との間に設けられた透過・遮光切替部43と、第1基板44と、第2基板45と、を有する。透過・遮光切替部43は、マイクロメートルスケールで羽板状に並べられる。透過・遮光切替部43に隣接し、透過部46が設けられる。第1電極41は第1基板44の一方の面上に設けられ、第2電極42は第2基板45の一方の面上に設けられる。第1電極41、第2電極42、第1基板44及び第2基板45は、いずれも透光性を有する。なお、第1電極41及び/又は第2電極42は、透過・遮光切替部43に対応するようにパターン化されていてもよい。第2電極42がパターン化されている場合、第2電極42は、非透光性であってもよい。透過・遮光切替部43中には、本実施形態の電気泳動用媒体30が設けられる。また、アクティブルーバー40は液晶パネル、有機ELパネル、又はマイクロLEDパネルなどのディスプレイ(図示しない)上に設けられる。また、液晶パネルであれば、液晶パネルとバックライトとの間に設けることも可能である。
【0072】
電気泳動用媒体30は、溶媒31と、溶媒中に分散された電場応答性粒子10と、を含む。電気泳動用媒体30は、電場応答性粒子10の溶媒31中の分散性を向上させるため、界面活性剤を更に含んでもよい。
【0073】
第1電極41及び第2電極42間に電圧が印加されない場合、換言すると遮蔽機能がオン状態の場合、
図3に示すように、電場応答性粒子10は溶媒31中に分散して存在する。このため、光の一部は電気泳動用媒体30が設けられた透過・遮光切替部43を通過することができず、光の一部を遮蔽することができる。第1電極41及び第2電極42間に電圧が印加された場合、換言すると遮蔽機能がオフ状態の場合、本実施形態の電場応答性粒子10は溶媒31中では負電荷を帯びているため、正電圧が印加された電極、
図3では第1電極41の近傍に凝集する。電場応答性粒子10が一方の電極に凝集することで、透過・遮光切替部43間を光が通過することができる。これにより、アクティブルーバー40では、遮蔽機能のオン、オフが可能となり、プライバシーフィルタが実現される。
【0074】
アクティブルーバー40では、
図3に示すオン状態、オフ状態を問わず、ディスプレイが発する光の透過率が高いことが、視認性や消費電力増加の抑制の観点から望ましい。そのため、電気泳動用媒体30が収容される透過・遮光切替部43の体積(幅)は、透過・遮光切替部43に隣接する透過部46の体積(幅)に比べて、小さいことが望ましい。例えば、透過・遮光切替部43の幅wは、例えば、5~20μmに設定される。また、狭視野時に光線が透過する角度範囲を小さくするためには、透過・遮光切替部43の高さが高い、すなわち高さ/幅のアスペクト比が大きいことが望ましい。アスペクト比について電子ペーパーと比較すると、電子ペーパーの場合は表示体として電気泳動媒体が収容される画素の開口率(幅に相当)が大きいことが望ましい。従って、電子ペーパーでは、必ずしも大きなアスペクト比(高さ/幅)は求められず、薄型化の観点からはかえってより低いアスペクト比(高さ/幅)が望ましい。このような差異からは、プライバシーフィルタ(アクティブルーバー)の方が、左右に狭小且つ上下に長い距離を移動する必要があるため、より敏感な電場応答性が求められる。本実施形態の電場応答性粒子10は、第1ポリマー21をより多く設けることで、正電荷を有する官能基をより多く設けることができ、正電荷量を増加させることができる。従って、本実施形態の電場応答性粒子10は、プライバシーフィルタの電気泳動粒子として有利に用いられる。
【0075】
(電気泳動用媒体)
本開示の電気泳動用媒体30は、溶媒31と、溶媒31中に分散された電場応答性粒子10とを含む。電場応答性粒子の濃度は、電場応答性粒子10は、0.01~20重量%含まれ、好ましくは2~10重量%含まれ、更に好ましくは3~5重量%含まれる。電気泳動用媒体30は、例えば、
図3に示すようにルーバー40の透過・遮光切替部43内に注入される。
【0076】
溶媒31は、電場応答性粒子10を分散させる液体状の物質である。溶媒31は、電場応答性粒子10が分散する液体媒体であれば、特に限定されない。電場応答性粒子10を製造する工程、及び電気泳動セルに導入する工程において、揮発を防止する観点と、電気泳動セルの絶縁性を保持する観点とから、沸点が80℃以上の有機溶媒であることが好ましい。
【0077】
溶媒31として用いることが可能な溶媒としては、例えば、酢酸エチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン等のケトン系溶媒、メタノール等のアルコール系溶媒、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、エチレングリコール等のグリコール系溶媒、アイソパーなどのイソパラフィン系溶剤、メチルナフタレン、エチルビフェニル、ジフェニルエタン、安息香酸エチル、酢酸ベンジル等の芳香族炭化水素、イソパラフィン等の鎖状飽和炭化水素、ジブロモプロパンなどの有機臭素化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0078】
また、イソパラフィン系溶剤としては、日油社より市販されているNAS?3、NAS?4、NAS?5、或いはエクソンモービル社より市販されているアイソパーC、アイソパーD、アイソパーE、アイソパーF、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーK、アイソパーL、アイソパーM、アイソパーV、エネオス社から市販されているアイソゾール、或いは丸善石油化学社より市販されているマルカゾールRが好ましく、アイソパーGが特に好ましい。
【0079】
界面活性剤は、任意のものを用いることができるが、非イオン性界面活性剤であるソルビタントリオレエート(Span 85)が好ましい。また、界面活性剤は、溶媒に対して1重量%~15重量%含まれることが好適である。溶媒31中に界面活性剤を加えることにより、分散安定性を向上させることができる。
【0080】
電気泳動用媒体30は、更に、必要に応じて、例えば、潤滑剤、安定化剤、染料等の添加剤を含んでもよい。
【0081】
本開示の電場応答性粒子は、液体媒体中に分散した状態で電圧を印加すると、電極間で泳動する優れた電場応答性を示す。従って、優れた電場応答性を有する電気泳動用媒体を提供することができる。
【0082】
更に、本開示の電場応答性粒子では、粒径の制御を行いやすく、粒径を小さくすることもできる。これにより、液体媒体中での沈降が抑制され、分散安定性が向上することができる。
【0083】
また、本開示の電場応答性粒子は、電圧のオン・オフにより分散又は凝集と変化するため、電場に対して応答して遮光性又は遮蔽性を発現するアクティブルーバー等の用途に適用することができる。
【0084】
(実施形態2)
本実施形態に係る電場応答性粒子20について、図を用いて説明する。実施形態2に係る電場応答性粒子20が、実施形態1に係る電場応答性粒子10と異なる点は、第2の層13を備える点にある。実施形態1と共通する部分については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0085】
電場応答性粒子20は、
図5に示すように、芯材11と、芯材11上に設けられた第1ポリマー21から形成される第1の層12と、第1ポリマー21に対して積層された第2ポリマー22から形成される第2の層13と、備える。
【0086】
図6に模式的に示すように、芯材11は、カーボンブラックであり、第1ポリマー21は、正電荷を有する官能基を有するポリマーであり、第2ポリマー22は負電荷を有する官能基を有するポリマーである。第2ポリマー22が負電荷の官能基を有することから、電場応答性粒子20は、液体媒体中において、最表層に位置する第2の層13が全体として負電荷を帯び、電場応答性粒子20の表面電荷が負となる。これにより、電場応答性粒子20は、液体媒体中において、電場に応答する性質を有する。
【0087】
第1ポリマー21を、芯材11に対して設ける量は任意であるが、例えば、第1ポリマー21は、カーボンブラックの重量に対し、5%重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%を超えて結合させることができる。第1ポリマー21をより多くカーボンブラックに設けることができると正電荷を有する官能基を増加させることができる。正電荷を有する官能基を増加させると、第2ポリマー22が静電的に吸着する部位が増加し、第2ポリマー22を積層させる量を増加させることができる。従って、電場応答性粒子20の荷電量を増加させることができる。これにより、電場応答性粒子20の泳動動作を向上させることができる。また、信頼性を向上させることができる。
【0088】
第2ポリマー22は、第1ポリマー21とは逆の電荷、つまり負電荷を有する官能基を有するポリマーである。第2ポリマー22は、単独の単量体又は単量体の混合物の重合により得られる重合体である。第2ポリマー22としては、負電荷を有する官能基を有する既知のポリマーを使用することができる。
【0089】
(第2ポリマー)
本開示の第2ポリマー22は、正電荷を有する第1ポリマー21に対して、静電的結合又は水素結合のような相互作用により積層されることにより、電場応答性粒子20の表面に導入される。負電荷を有する第2ポリマー22としては、負電荷の官能基を有するモノマーの重合物、又はポリスチレンスルホン酸のような公知のポリマーを使用することができる。負電荷を有するポリマーは、単独のポリマーを使用しても、2種以上のポリマーを組み合わせて使用することもできる。
【0090】
負電荷の官能基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、又はこれらの塩等が挙げられる。塩は、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等であってよい。
【0091】
また、負電荷の官能基を有するモノマーは、負電荷の官能基を1分子中に1つ、又は2つ以上含むモノマーであってもよい。
【0092】
負電荷を有する第2ポリマー22としては、(メタ)アクリル酸、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N、N-ジメチルアンモニウム-α-N-メチルカルボキシベタイン、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)ブチルホスホン酸、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスホン酸等の単独重合体又はこれらのうちの2種以上の共重合体等であってもよい。
【0093】
第2ポリマー22としては、ポリスチレンスルホン酸を用いることが好適である。
【0094】
本開示の電場応答性粒子20では、第1ポリマー21では、化学的に結合する官能基により正電荷が付与されるため、電荷の分離が生じにくく、電荷が安定して得られる。この第1ポリマー21に対して、第2ポリマー22は静電的作用で吸着する。第1ポリマー21の表面には複数の正電荷の官能基が存在し、吸着される部位も複数存在し、第1ポリマー21と第2ポリマー22とが良好に静電的に吸着することができる。このため、第2ポリマー22に覆われた電場応答性粒子20を、液体媒体中で負電荷を帯びさせることができる。
【0095】
次に、本実施形態の電場応答性粒子20は、実施形態1の電場応答性粒子10の製造プロセスの第1工程から第4工程を行った後に、第5工程として、負電荷を有する第2ポリマーを積層する。この工程では、負電荷を有する官能基を有する第2ポリマー溶液に、第4工程で得られた第1ポリマー21がグラフトされた酸化カーボンブラックを接触させることで、第2ポリマーを積層させる。
【0096】
一例として、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム溶液中に、第4工程で得られた第1ポリマー21がグラフトされた酸化カーボンブラック(
図7に示すoCB-g-PDMAEMA+CH
3)を入れる。それにより、
図7に示すように、ポリスチレンスルホン酸が、第1ポリマー21に静電的に吸着し、積層される。
【0097】
第1ポリマー21では、化学的に結合する官能基により正電荷が付与されるため、電荷の分離が生じにくく、電荷が安定して得られる。この第1ポリマー21に対して、第1ポリマー21と第2ポリマー22とが良好に静電的に吸着することができる。従って、第2ポリマー22に覆われた電場応答性粒子20を、液体媒体中で負電荷を帯びさせることができ、電場応答性粒子20は、液体媒体中に分散した状態で電圧を印加すると、電極間で泳動する優れた電場応答性を示す。
【0098】
(実施形態3)
実施形態3に係る電場応答性粒子50を
図8及び
図9に示す。本実施形態の電場応答性粒子50が、実施形態2に係る電場応答性粒子20と異なる点は、第2ポリマー22に対して更に積層され、正電荷を有する官能基を含む第3ポリマー23からなる第3の層14を有する点にある。また、電場応答性粒子50は液体媒体中において正の表面電荷を有する。実施形態2と共通する部分については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0099】
第3の層14は、
図8に示すように第2の層13を覆うように設けられる。
【0100】
第3ポリマー23は、正電荷を有するポリマーであり、静電的結合又はイオン結合のような相互作用によって、
図9に示すように、第2ポリマー22に対して積層される。また、第3ポリマー23に覆われた電場応答性粒子50は、最表層に位置する第3ポリマー23の電荷、つまり正電荷を帯びる。
【0101】
第3ポリマー23は、正電荷の官能基を有するモノマーの重合物、又はポリアリルアミン塩酸塩(PAH)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(PDADMAC)のような公知のポリマーを使用することができる。正電荷を有するポリマーは、単独のポリマーを使用しても、2種以上のポリマーを組み合わせて使用することもできる。
【0102】
正電荷の官能基は、アンモニウム基、ピリジニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基又はこれらの塩から選択される。塩は、塩化物、臭素化物、ヨウ素塩、フッ化物、テトラフルオロホウ酸塩、六フッ化リン酸塩、メチルサルフェート塩等である。
【0103】
また、正電荷の官能基を有するモノマーは、正電荷の官能基を1分子中に1つ、又は2つ以上含むモノマーであってもよい。
【0104】
正電荷を有する第3ポリマー23としては、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(PDADMAC)、4級アンモニウム基を有するアクリレート、メタクリレート又はアクリルアミド等のポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドのポリマー、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド)、ポリエチレンイミン、又はポリアミジン等が挙げられる。
【0105】
電場応答性粒子50を製造する場合は、実施形態2に記載の第5工程に続き、第6工程として、正電荷を有する第3ポリマーを積層する工程を実施する。この工程は、第5工程と同様に、正電荷を有する官能基を有する第3ポリマー溶液に、第5工程で得られた第2ポリマー22が第1ポリマー21に対して積層された粒子を接触させることで実施する。
【0106】
本実施形態の電場応答性粒子50によれば、実施形態2の電場応答性粒子20の表面電荷を反転させ、正電荷を帯びた粒子とすることができる。
【0107】
(実施例)
以下に実施例を挙げて本開示を更に詳細に説明する。しかし、本開示は以下の実施例に限定されることを意図するものではない。
【0108】
また、本実施例では、第1ポリマー21は、合成されたポリマーをカーボンブラック表面に結合させた後に、正電荷を付与することで得られる。
【0109】
(第1工程:カーボンブラックの酸化処理)
200mLのナス型フラスコにカーボンブラック6.03g、硫酸160mLを加えた。氷浴しながら、過マンガン酸カリウム18.1gをゆっくりと加えた。50℃で3時間加熱した後、過酸化水素水6mLと氷とを加えた。得られた酸化カーボンブラックを吸引濾過した後、純水で繰り返し洗浄した。濾紙上の酸化カーボンブラックを100℃で乾燥させた。
【0110】
(第2工程:原子移動ラジカル重合によるポリマーの合成)
30mLのナス型フラスコにテトラヒドロフラン30mLを加え、p-ニトロベンジル-2-クロロプロパノエート646mg、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート7mL、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミンを溶解させた。凍結脱気操作により溶存酸素を除去した。窒素雰囲気下、塩化銅262mgを加え、30℃で24時間原子移動ラジカル重合を行った(以下の反応式1参照)。重合溶液を空気に曝露し、ヘキサン中に滴下して、ポリマーを沈殿させた。得られたポリマーをテトラヒドロフランに溶解させた後、再度ヘキサン中に滴下する再沈殿操作を3回繰り返し、ポリマーを精製した。テトラヒドロフランにポリマーを溶解させた後、アルミナカラムを加えて残存する銅錯体を吸着させた。濾過によりアルミナを除去した後、真空乾燥させた。本実施例で、重合度nは48であった。
(反応式1)
【化9】
【0111】
500mLのナス型フラスコ中でメタノール200mLにポリマー3.31gを溶解させた後、ラネーニッケル30mgを加えた。水素化ホウ素ナトリウム385mgをゆっくりと加え、室温で6時間反応させ、ポリマー末端のニトロ基をアミノ基に還元した(以下の反応式2参照)。反応溶液を濾過してラネーニッケルを除去し、濾液を真空乾燥させた。
(反応式2)
【化10】
【0112】
(第3工程:カーボンブラックへのポリマーの化学的固定化)
氷浴しながら、第2工程で得られた末端にアミノ基を有するポリマー4.66g、亜硝酸ナトリウム185mg、1M塩酸5mLを加えた。第1工程で得られた0.1重量%の酸化カーボンブラック300mLを加えて、2時間撹拌した。14500rpmで反応溶液を遠心分離し、純水で洗浄する操作を3回繰り返し、第1ポリマーがグラフトされたカーボンブラック(以下の反応式3参照)を得た後、300mLの純水中に再分散させた。
(反応式3)
【化11】
【0113】
(第4工程:カーボンブラックに化学的に固定化されたポリマーへの正電荷の導入)
第2工程で得られたポリマーがグラフトされたカーボンブラックの水分散体150mLとヨードメタン7.5mLを200mLのナス型フラスコに加え、室温で72時間撹拌しグラフトしたポリマーのジメチルアミノ基の四級化を行った(以下の反応式4参照)。14500rpmで遠心分離し、残存するヨードメタンを除去した。ポリマーがグラフトされたカーボンブラックを150mLの純水中に分散させた。
(反応式4)
【化12】
【0114】
(第5工程:負電荷を有する第2ポリマーの積層)
純水15mLにポリスチレンスルホン酸ナトリウム153mgを溶解させ、第4工程で得られたカーボンブラックの水分散液に滴下し、1時間撹拌し、ポリスチレンスルホン酸を第1ポリマーに対して積層させた。反応溶液を14500rpmで遠心分離し、残存するポリスチレンスルホン酸ナトリウムを除去し、電場応答性粒子を得た。
【0115】
(電場応答性粒子の粒径測定)
実施例に記載の方法で得られた電場応答性粒子の粒径を、表1に示す。なお、測定機器、及び測定条件は以下の通りである。表1のDhは、平均粒径を示し、PDIは、多分散指数を示す。
測定機器:nanoSAQLA(大塚電子株式会社)
測定温度:25℃
積算回数:75回
【0116】
【0117】
表1に示すように、oCB-g-PDMAEMAは、oCBと比較して平均粒径(Dh)が23nm増加した。また、oCB-g-PDMAEMA+CH3/PSSNaは、oCB-g-PDMAEMAと比較して平均粒径(Dh)が12nm増加したことが確認できる。
【0118】
(電場応答性粒子のゼータ電位)
電場応答性粒子の作成過程で得られた化合物のゼータ電位を、表2に示す。ゼータ電位の測定機器、及び測定条件は以下の通りである。
測定機器:ゼータ電位・粒径測定システム(ELSZ-1000ZSCK、大塚電子株式会社製)
測定温度:25℃
【0119】
【0120】
表2に示すように、第3工程後のoCB-g-PDMAEMAのゼータ電位と第4工程後のoCB-g-PDMAEMA+CH3のゼータ電位を比較すると、8.8mV増加しており、第4工程における四級化で粒子の表面に正電荷を付与できたことが分かる。更に、また、第5工程後のoCB-g-PDMAEMA+CH3/PSSNaでは、ゼータ電位は-16.3mVを示しており、粒子の表面が負電荷を帯びていることが分かる。
【0121】
(電場応答性粒子の熱重量分析)
電場応答性粒子の作成過程で得られた化合物の熱重量減少測定を、表3に示す。熱重量減少測定の測定機器、および測定方法は以下の通りである。
測定機器::DTG-60A (SHIMADZU)
温度範囲:100℃~600℃
昇温速度:10℃/分(r.t.~100℃)、5℃/分(100℃~600℃)
保持時間:30分間(100℃で)
【0122】
【0123】
表3に示すように、第3工程のカーボンブラックへのポリマーの化学的固定化において、また、第5工程の第2ポリマーの積層において、それぞれ7.6重量%、13.4重量%のポリマーを導入できたことがわかった。
【0124】
(電場応答性粒子の電気泳動)
アイソパーGに、実施例で得られた電気泳動粒子及びソルビタントリオレエート(SPAN85)がそれぞれ1重量%及び5重量%となるように加え、電気泳動用媒体を調製した。電極(電極1と電極2)間距離15μm、セルギャップ10μmのクシ型の電極セル中に、電気泳動用媒体を、毛細管現象を利用して注入した。同様に、電極間距離40μm、セルギャップ10μmのクシ型の電極セル、及び電極(電極1と電極2)間距離40μm、セルギャップ10μmのクシ型の電極セルについても、電気泳動用媒体を注入した。それぞれの電極に+30V又は-30Vの電圧を印加し、電極(電極1と電極2)間を電気泳動粒子が泳動する様子を光学顕微鏡で観察した。各セルについて、0V、+30V、-30Vの状態の光学顕微鏡写真を
図10に示す。
【0125】
図10に示すように、電極間距離15μm、40μm、190μmのいずれの場合でも、0Vでは媒体中に分散していた電気泳動粒子は、電圧の印加により、電極間を泳動し、正電圧を印加された側の電極の近傍で凝集した。
【0126】
以上の結果から、実施例に記載の製造方法により、電場応答性粒子を製造できることが分かった。また、電場応答性粒子は、電圧のオン・オフにより分散又は凝集と状態が良好に変化することが分かった。従って、電場応答性粒子は、電場に対して応答して遮光性又は遮蔽性を発現するプライバシーフィルタなどの用途に応用できる。
【0127】
各実施形態に沿って本開示を説明したが、本開示をこれらに限定されるものではない。種々の変更、改良、組合せ等が可能なことは当業者には自明である。
【0128】
上述した実施形態では、電気泳動粒子が、アクティブルーバーとして使用される構成を例に挙げた。しかし、本実施形態の電気泳動粒子は、電場応答性が求められる粒子が用いられる任意の装置に用いることができる。例えば、電子ペーパー等に用いることもできる。
【0129】
また、電場応答性粒子10は、
図1に示すように全体に第1の層12によって覆われる場合に限られず、芯材11の表面の一部は第1の層12に覆われていなくともよい。電場応答性粒子20、50についても同様である。また、電場応答性粒子20、50において、第1の層12の一部は、第2の層13に覆われていなくともよい。加えて、電場応答性粒子50において、第2の層13の一部は、第3の層14に覆われていなくともよい。
【符号の説明】
【0130】
10,20,50 電場応答性粒子
11 芯材
12 第1の層
13 第2の層
14 第3の層
21 第1ポリマー
21a 芳香族化合物部位
21b 重合部
22 第2ポリマー
23 第3ポリマー
30 媒体
31 溶媒
40 ルーバー
41 第1電極
42 第2電極
43 透過・遮光切替部
44 第1基板
45 第2基板
46 透過部