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特開2024-123770解析システム、解析システムの解析方法、サーバ装置、サーバ装置の制御方法、及び、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123770
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】解析システム、解析システムの解析方法、サーバ装置、サーバ装置の制御方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 23/16 20060101AFI20240905BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20240905BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G01R23/16 D
G08C17/00 Z
G01H17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031437
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】230128026
【弁護士】
【氏名又は名称】駒木 寛隆
(72)【発明者】
【氏名】酒田 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】寒河江 大輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇之
【テーマコード(参考)】
2F073
2G064
【Fターム(参考)】
2F073AA02
2F073AA03
2F073AA11
2F073AA19
2F073AA25
2F073AA40
2F073AB01
2F073AB04
2F073BB01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CD11
2F073DD02
2F073DE02
2F073DE08
2F073DE13
2F073EE01
2F073FF01
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG08
2F073GG09
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064CC02
2G064CC43
2G064DD08
2G064DD14
(57)【要約】
【課題】無線センサによってより長期間に測定された測定値の周波数解析の結果を他の装置で利用できるようにする。
【解決手段】解析システム1は、互いに通信可能な無線センサ10及びサーバ装置20を備える。無線センサ10は、予め定められた間隔で分布する予め定められた測定時間において測定された測定対象物の物理量の測定値を取得し、取得した物理量の測定値をサーバ装置20へ送信する、第1制御部11を備える。サーバ装置20は、無線センサ10から受信した、予め定められた間隔で分布する測定時間において測定された物理量の測定値を結合して、時間的に連続した測定値とした結合情報を取得し、結合情報に対して周波数解析を行い、結合情報に対する周波数解析の結果を出力する、第2制御部21を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに通信可能な無線センサ及びサーバ装置を備える解析システムであって、
前記無線センサは、
予め定められた間隔で分布する予め定められた測定時間において測定された測定対象物の物理量の測定値を取得し、
取得した前記物理量の測定値を前記サーバ装置へ送信する、
第1制御部を備え、
前記サーバ装置は、
前記無線センサから受信した、前記予め定められた間隔で分布する前記測定時間において測定された前記物理量の測定値を結合して、時間的に連続した測定値とした結合情報を取得し、
前記結合情報に対して周波数解析を行い、
前記結合情報に対する前記周波数解析の結果を出力する、
第2制御部を備える、
解析システム。
【請求項2】
前記サーバ装置の前記第2制御部は、前記予め定められた間隔で分布する前記測定時間において測定された前記物理量の測定値に対して窓関数処理を行い、当該窓関数処理が行われた前記測定値を結合して、前記結合情報を取得する、請求項1に記載の解析システム。
【請求項3】
前記サーバ装置の前記第2制御部は、時間的間隔を前記無線センサへ送信し、
前記無線センサの前記第1制御部は、前記サーバ装置から受信した前記時間的間隔を前記予め定められた間隔として、前記物理量の測定値を取得する、
請求項1に記載の解析システム。
【請求項4】
前記サーバ装置の前記第2制御部は、時間的間隔の範囲を前記無線センサへ送信し、
前記無線センサの前記第1制御部は、前記物理量の測定値を取得するたびに、前記サーバ装置から受信した前記範囲内で前記時間的間隔をランダムに決定し、当該ランダムに決定された前記時間的間隔を前記予め定められた間隔として、前記物理量の測定値を取得する、
請求項1に記載の解析システム。
【請求項5】
前記サーバ装置の前記第2制御部は、所定の時間を前記無線センサへ送信し、
前記無線センサの前記第1制御部は、前記サーバ装置から受信した前記所定の時間を前記測定時間として、前記物理量の測定値を取得する、
請求項1に記載の解析システム。
【請求項6】
前記サーバ装置の前記第2制御部は、前記測定時間において測定する測定値の個数を前記無線センサへ送信し、
前記無線センサの前記第1制御部は、前記サーバ装置から受信した前記個数だけ、前記測定時間における前記物理量の測定値を取得する、
請求項1に記載の解析システム。
【請求項7】
互いに通信可能な無線センサ及びサーバ装置を備える解析システムの解析方法であって、
前記無線センサが、
予め定められた間隔で分布する予め定められた測定時間において測定された測定対象物の物理量の測定値を取得する工程と、
取得した前記物理量の測定値を前記サーバ装置へ送信する工程と、
を含み、
前記サーバ装置が、
前記無線センサから受信した、前記予め定められた間隔で分布する前記測定時間において測定された前記物理量の測定値を結合して、時間的に連続した測定値とした結合情報を取得する工程と、
前記結合情報に対して周波数解析を行う工程と、
前記結合情報に対する前記周波数解析の結果を出力する工程と、
を含む、解析システムの解析方法。
【請求項8】
予め定められた間隔で分布する予め定められた測定時間において測定された測定対象物の物理量の測定値を取得する、無線センサと通信可能であり、
前記無線センサから前記測定値を受信し、
前記無線センサから受信した、前記予め定められた間隔で分布する前記測定時間において測定された前記物理量の測定値を結合して、時間的に連続した測定値とした結合情報を取得し、
前記結合情報に対して周波数解析を行い、
前記結合情報に対する前記周波数解析の結果を出力する、
制御部を備える、サーバ装置。
【請求項9】
予め定められた間隔で分布する予め定められた測定時間において測定された測定対象物の物理量の測定値を取得する、無線センサと通信可能な、制御部を備えるサーバ装置の制御方法であって、
前記制御部が、
前記無線センサから前記測定値を受信する工程と、
前記無線センサから受信した、前記予め定められた間隔で分布する前記測定時間において測定された前記物理量の測定値を結合して、時間的に連続した測定値とした結合情報を取得する工程と、
前記結合情報に対して周波数解析を行う工程と、
前記結合情報に対する前記周波数解析の結果を出力する工程と、
を含む、サーバ装置の制御方法。
【請求項10】
予め定められた間隔で分布する予め定められた測定時間において測定された測定対象物の物理量の測定値を取得する、無線センサと通信可能なコンピュータに、
前記無線センサから前記測定値を受信する処理と、
前記無線センサから受信した、前記予め定められた間隔で分布する前記測定時間において測定された前記物理量の測定値を結合して、時間的に連続した測定値とした結合情報を取得する処理と、
前記結合情報に対して周波数解析を行う処理と、
前記結合情報に対する前記周波数解析の結果を出力する処理と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、解析システム、解析システムの解析方法、サーバ装置、サーバ装置の制御方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
フーリエ変換及び周波数フィルタ等の信号の周波数解析に関する技術が知られている(特許文献1、2)。
また、電池で駆動する小型の無線センサが知られている。このような無線センサは、例えば、温度、圧力、又は、振動等の様々な物理量を測定し、物理量の測定値を無線通信により他の装置へ送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-021597号公報
【特許文献2】特開2019-035666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無線センサの測定結果に対して周波数解析を行い、他の装置で解析結果を利用する場合、無線センサ又は他の装置において周波数解析を行うことが考えられる。ここで、信号の周波数解析を行うには、一定時間分のデータに対して演算処理を行う必要がある。そのため、物理量の測定値の周波数解析の結果を他の装置で利用できるようにする場合、無線センサは、周波数解析前、又は、周波数解析後の測定結果の大量のデータを送信する必要がある。無線通信により大量のデータを送信するには電力を消費し、また、無線センサの通信速度が遅くなる場合があり、そのような場合、従来の構成においては、短期間に測定された物理量の測定値のみを送受信するだけで、無線センサの電池が枯渇してしまう課題があった。換言すると、他の装置は、ある特定の短期間の測定値の周波数解析の結果しか利用できない場合があった。
【0005】
そこで、本開示は、無線センサによってより長期間に測定された測定値の周波数解析の結果を他の装置で利用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る解析システムは、
(1)互いに通信可能な無線センサ及びサーバ装置を備える解析システムであって、
前記無線センサは、
予め定められた間隔で分布する予め定められた測定時間において測定された測定対象物の物理量の測定値を取得し、
取得した前記物理量の測定値を前記サーバ装置へ送信する、
第1制御部を備え、
前記サーバ装置は、
前記無線センサから受信した、前記予め定められた間隔で分布する前記測定時間において測定された前記物理量の測定値を結合して、時間的に連続した測定値とした結合情報を取得し、
前記結合情報に対して周波数解析を行い、
前記結合情報に対する前記周波数解析の結果を出力する、
第2制御部を備える。
【0007】
このように、予め定められた間隔で分布する測定時間において測定された測定対象物の物理量の測定値を結合した上で周波数解析を行うため、より長期間に測定された測定値の周波数解析の結果を他の装置であるサーバ装置側で利用することが可能となる。
【0008】
一実施形態において、
(2)(1)の解析システムにおいて、
前記サーバ装置の前記第2制御部は、前記予め定められた間隔で分布する前記測定時間において測定された前記物理量の測定値に対して窓関数処理を行い、当該窓関数処理が行われた前記測定値を結合して、前記結合情報を取得してもよい。
【0009】
このように、窓関数を適用した上で測定値を結合して結合情報を取得するため、信号が不連続になることにより周波数成分に誤差が生じることを防止することができる。
【0010】
一実施形態において、
(3)(1)又は(2)の解析システムにおいて、
前記サーバ装置の前記第2制御部は、時間的間隔を前記無線センサへ送信し、
前記無線センサの前記第1制御部は、前記サーバ装置から受信した前記時間的間隔を前記予め定められた間隔として、前記物理量の測定値を取得してもよい。
【0011】
このように、無線センサは、サーバ装置から受信した時間的間隔に基づき物理量の測定値を取得するため、サーバ装置から物理量測定の時間間隔を設定することができる。
【0012】
一実施形態において、
(4)(1)から(3)のいずれかの解析システムにおいて、
前記サーバ装置の前記第2制御部は、所定の時間を前記無線センサへ送信し、
前記無線センサの前記第1制御部は、前記サーバ装置から受信した前記所定の時間を前記測定時間として、前記物理量の測定値を取得してもよい。
【0013】
このように、無線センサは、サーバ装置から受信した所定の時間を測定時間として、物理量の測定値を取得するため、サーバ装置から物理量測定の測定時間を設定することができる。
【0014】
一実施形態において、
(5)(1)又は(2)の解析システムにおいて、
前記サーバ装置の前記第2制御部は、時間的間隔の範囲を前記無線センサへ送信し、
前記無線センサの前記第1制御部は、前記物理量の測定値を取得するたびに、前記サーバ装置から受信した前記範囲内で前記時間的間隔をランダムに決定し、当該ランダムに決定された前記時間的間隔を前記予め定められた間隔として、前記物理量の測定値を取得してもよい。
【0015】
このように、無線センサは、一定の範囲内で時間的間隔をランダムに決定し、当該ランダムに決定された時間的間隔で物理量の測定値を取得するため、一定の周期で発生する信号をとり逃すことを防止することができる。
【0016】
一実施形態において、
(6)(1)から(6)のいずれかの解析システムにおいて、
前記サーバ装置の前記第2制御部は、前記測定時間において測定する測定値の個数を前記無線センサへ送信し、
前記無線センサの前記第1制御部は、前記サーバ装置から受信した前記個数だけ、前記測定時間における前記物理量の測定値を取得してもよい。
【0017】
このように、無線センサは、サーバ装置から準した個数だけ物理量の測定値を取得するため、サーバ装置から物理量の測定値のサンプリング数を設定することができる。
【0018】
幾つかの実施形態に係る解析システムの解析方法は、
(7)互いに通信可能な無線センサ及びサーバ装置を備える解析システムの解析方法であって、
前記無線センサが、
予め定められた間隔で分布する予め定められた測定時間において測定された測定対象物の物理量の測定値を取得する工程と、
取得した前記物理量の測定値を前記サーバ装置へ送信する工程と、
を含み、
前記サーバ装置が、
前記無線センサから受信した、前記予め定められた間隔で分布する前記測定時間において測定された前記物理量の測定値を結合して、時間的に連続した測定値とした結合情報を取得する工程と、
前記結合情報に対して周波数解析を行う工程と、
前記結合情報に対する前記周波数解析の結果を出力する工程と、
を含む。
【0019】
このように、予め定められた間隔で分布する測定時間において測定された測定対象物の物理量の測定値を結合した上で周波数解析を行うため、より長期間に測定された測定値の周波数解析の結果をサーバ装置側で利用することが可能となる。
【0020】
幾つかの実施形態に係るサーバ装置は、
(8)予め定められた間隔で分布する予め定められた測定時間において測定された測定対象物の物理量の測定値を取得する、無線センサと通信可能であり、
前記無線センサから前記測定値を受信し、
前記無線センサから受信した、前記予め定められた間隔で分布する前記測定時間において測定された前記物理量の測定値を結合して、時間的に連続した測定値とした結合情報を取得し、
前記結合情報に対して周波数解析を行い、
前記結合情報に対する前記周波数解析の結果を出力する、
制御部を備える。
【0021】
このように、予め定められた間隔で分布する測定時間において測定された測定対象物の物理量の測定値を結合した上で周波数解析を行うため、より長期間に測定された測定値の周波数解析の結果をサーバ装置側で利用することが可能となる。
【0022】
幾つかの実施形態に係るサーバ装置の制御方法は、
(9)予め定められた間隔で分布する予め定められた測定時間において測定された測定対象物の物理量の測定値を取得する、無線センサと通信可能な、制御部を備えるサーバ装置の制御方法であって、
前記制御部が、
前記無線センサから前記測定値を受信する工程と、
前記無線センサから受信した、前記予め定められた間隔で分布する前記測定時間において測定された前記物理量の測定値を結合して、時間的に連続した測定値とした結合情報を取得する工程と、
前記結合情報に対して周波数解析を行う工程と、
前記結合情報に対する前記周波数解析の結果を出力する工程と、
を含む。
【0023】
このように、予め定められた間隔で分布する測定時間において測定された測定対象物の物理量の測定値を結合した上で周波数解析を行うため、より長期間に測定された測定値の周波数解析の結果をサーバ装置側で利用することが可能となる。
【0024】
幾つかの実施形態に係るプログラムは、
(10)予め定められた間隔で分布する予め定められた測定時間において測定された測定対象物の物理量の測定値を取得する、無線センサと通信可能なコンピュータに、
前記無線センサから前記測定値を受信する処理と、
前記無線センサから受信した、前記予め定められた間隔で分布する前記測定時間において測定された前記物理量の測定値を結合して、時間的に連続した測定値とした結合情報を取得する処理と、
前記結合情報に対して周波数解析を行う処理と、
前記結合情報に対する前記周波数解析の結果を出力する処理と、
を実行させる。
【0025】
このように、予め定められた間隔で分布する測定時間において測定された測定対象物の物理量の測定値を結合した上で周波数解析を行うため、より長期間に測定された測定値の周波数解析の結果をサーバ装置側で利用することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本開示の一実施形態によれば、無線センサによってより長期間に測定された測定値の周波数解析の結果を他の装置で利用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】比較例に係る構成による周波数解析を説明する図である。
図2】一実施形態に係る解析システムの構成例を示す図である。
図3図2の解析システムの一部のブロックの詳細な構成例を示す図である。
図4図2の解析システムによる周波数解析を説明する図である。
図5図2の無線センサの動作例を示すフローチャートである。
図6図2のサーバ装置の動作例を示すフローチャートである。
図7】解析対象の信号の一例を示す図である。
図8図7に例示した信号の周波数解析後の一例を示す図である。
図9図7に例示した信号の周波数解析後の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<比較例>
比較例に係る解析システムは、物理量を測定する無線センサ、及び、無線センサから物理量の測定値を受信して所定の処理を行うサーバ装置を備える。無線センサは、物理量を測定し、物理量の測定値に対してAD(Analog-to-Digital)変換等の処理を行い、低速無線通信によりサーバ装置へ送信する。サーバ装置は、無線センサから受信した物理量の測定値に対して所定の処理を行い、ディスプレイ等へ出力する。このような構成において、無線センサの測定結果に対してフーリエ変換等の周波数解析を行い、サーバ装置で解析結果を利用する場合、無線センサ又はサーバ装置において周波数解析を行うことが考えられる。すなわち、無線センサにおいて測定値に周波数解析を行い、サーバ装置へ送信する構成と、無線センサは周波数解析を行わずに物理量の測定値をサーバ装置へ送信し、サーバ装置側で周波数解析を行う構成とが考えられる。
【0029】
このような構成において、無線センサ又はサーバ装置は、FFT(Fast Fourier Transform)により高速にフーリエ変換を行う。一般的なSTFT(Short-Term Fourier Transform)は、測定値に対して窓関数をずらしながら適用してフーリエ変換する。ここで、無線センサ又はサーバ装置は、窓関数を適用する範囲が互いにオーバーラップをするように窓関数を移動させて処理を進めることで、時系列データが失われないようにする。無線センサ側でFFTを行う場合、送信対象のデータ量を削減するために、無線センサは、FFTの処理後、ピーク周波数のみを検波して、その周波数のデータをサーバ装置へ送信することも考えられる。
【0030】
FFT等の周波数解析を行うには、一定時間分のデータに対して演算処理を行う必要があるため、このような比較例においては、FFT演算に必要となる膨大なデータ、もしくはFFT演算後の膨大なデータを収集して、送信する必要がある。その結果、低速通信ではデータの送信に時間がかかり、無線センサの消費電力が増大する。無線センサ側でFFTを実行する構成においては、CPU(Central Processing Unit)の演算処理により消費電力が更に増大し、また、大容量のメモリが必要となる。ピーク周波数の抽出等を実行する場合、大容量メモリ、及び、演算動作に伴う消費電力が更に必要となり、また、選択したデータ以外が失われてしまう。STFTを使用する構成においても、互いに隣接する窓関数の適用範囲をオーバーラップさせるか、その間を短く設定することが一般的であるため、膨大なデータを処理及び送信するための電力が消費されることとなる。
【0031】
このように、無線通信により大量のデータを送信するにはデータ量に比例した電力を消費し、また、無線センサの通信速度が遅くなる場合があり、そのような場合に、比較例に係る構成においては、短期間に測定された物理量の測定値のみを送受信するだけで、無線センサの電池が枯渇してしまう課題があった。換言すると、サーバ装置は、ある特定の短期間の測定値の周波数解析の結果しか利用できない場合があった。
【0032】
図1は、比較例に係る構成による周波数解析を説明する図である。図1は、比較例に係る無線センサが、連続して測定されたN0個の測定値を、時間T0だけかけて送信する例を示している。このように比較例に係る無線センサは、周波数解析の分解能を上げるために、連続して測定された多数(N0個)の測定値を一定時間T0だけかけて送信するため、それだけで電池の電力が枯渇する可能性がある。換言すると、比較例に係る構成においては、サーバ装置は、ある特定の短期間の測定値の周波数解析の結果しか利用できない場合があった。
【0033】
そこで、本開示は、電池で駆動する無線センサによってより長期間に測定された測定値の周波数解析の結果を他の装置で利用できるようにすることを目的とする。
【0034】
<実施形態>
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。各図面中、同一の構成又は機能を有する部分には、同一の符号を付している。本実施形態の説明において、同一の部分については、重複する説明を適宜省略又は簡略化する場合がある。
【0035】
(解析システム)
図2は、一実施形態に係る解析システム1の構成例を示す図である。解析システム1は、無線センサ10及びサーバ装置20を備える。無線センサ10及びサーバ装置20は、例えば、インターネット、イントラネット、及び移動体通信網等を含むネットワークNと通信可能に接続される。
【0036】
無線センサ10は、例えば、加速度等の物理量を測定し、無線通信により物理量の測定値をサーバ装置20へ送信する。無線センサ10は、電池で駆動してもよい。本実施形態において、無線センサ10は測定対象物に設置され、測定対象物の加速度を測定する。ただし、無線センサ10が測定する物理量は加速度に限られず、例えば、温度、圧力、又は、流量等の任意の物理量でもよい。無線センサ10は、長周期で状態が変動する物理量についての測定値を収集する。無線センサ10は、物理量の測定値を、例えば、LoRa通信等の通信方式により、ネットワークNを介してサーバ装置20へ送信する。
【0037】
サーバ装置20は、無線センサ10から物理量の測定値を受信し、フーリエ変換等の周波数解析を行った上で、表示等の所定の処理を行う。
【0038】
このような構成において、無線センサ10は、一定の間隔で断続的に物理量を測定し、測定ごとに物理量の測定値をサーバ装置20へ送信する。サーバ装置20は、一定の間隔で断続的に測定された物理量の測定値を受信すると、これらの測定値を時間的に連続して測定された測定値として結合し、結合された測定値(結合情報)を周波数解析する。したがって、本実施形態に係る構成によれば、従来の構成よりも長期にわたって測定された測定値を反映したデータについて、周波数解析を行うことが可能である。本実施形態に係る構成は、測定対象物の状態が長周期で変動する場合に、より効果的な周波数解析を行うことが可能となる。
【0039】
(無線センサ)
図2に示すように、無線センサ10は、制御部11、記憶部12、測定部13、信号処理部14、及び、通信部15を備える。無線センサ10は、例えば、専用の電子機器として構成されるが、これに限定されず、例えば、一部又は全ての構成要素がFPGA(Field Programmable Gate Array)等の汎用性を有する任意の電子機器により構成されてもよい。
【0040】
制御部(第1制御部)11は、1つ以上のプロセッサを含む。一実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。制御部11は、無線センサ10を構成する各構成部と通信可能に接続され、無線センサ10全体の動作を制御する。
【0041】
記憶部12は、例えば、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及びSSD(Solid State Drive)等の任意の記憶モジュールを含む。記憶部12は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部12は、無線センサ10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部12は、測定した物理量の測定値、及び、測定時刻等の情報を記憶してもよい。制御部11及び記憶部12は、MCU(Micro Controller Unit)等として一体に構成されてもよい。MCU等として一体に構成されるのは、制御部11及び記憶部12に限られない。例えば、無線センサ10は、制御部11、記憶部12、測定部13、信号処理部14、及び、通信部15の全て又は任意の一部がMCU等として一体に構成されてもよい。
【0042】
測定部13は、測定対象物に関する物理量を測定して測定値を取得するセンサである。測定部13は、例えば、加速度センサであるが、これに限られず、例えば、温度センサ、圧力センサ、又は、流量センサでもよい。
【0043】
信号処理部14は、測定部13が測定した物理量の測定値の信号を解析する。信号処理部14の詳細は、図3を参照して後述する。
【0044】
通信部15は、ネットワークNを介してサーバ装置20と無線通信するための任意の通信モジュールを含む。本実施形態において、通信部15は、LoRa通信を行うための通信モジュールであるが、無線通信の種類はこれに限られない。例えば、通信部15は、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)、又は、無線LAN(Local Area Network)等の任意の無線通信の通信モジュールを含んでもよい。
【0045】
無線センサ10の一部又は全ての構成要素が、制御部11に含まれる専用回路により実現されてもよい。すなわち、無線センサ10の一部又は全ての構成要素が、ハードウェアにより実現されてもよい。あるいは、無線センサ10の一部又は全ての構成要素が、コンピュータプログラム(プログラム)を、制御部11に含まれるプロセッサで実行することにより実現されてもよい。すなわち、無線センサ10の一部又は全ての構成要素が、ソフトウェアにより実現されてもよい。
【0046】
図3は、図2の解析システム1の一部のブロックの詳細な構成例を示す図である。図3においては、無線センサ10の信号処理部14及び通信部15が備える構成要素が示されている。
【0047】
図3に示すように、信号処理部14は、測定値入力部141、増幅器142、フィルタ143、タイミング設定部144、及び、A/D変換器145を備える。測定値入力部141は、測定部13が取得した物理量の測定値の信号を、測定部13から入力して取得する。増幅器142は、測定値入力部141が取得した測定値の信号を予め定められた倍率で増幅する。フィルタ143は、増幅器142により増幅された測定値の信号に対して周波数フィルタリングの処理を行い、予め定められた周波数の範囲の測定値に関する信号を出力する。A/D変換器145は、フィルタ143から出力された信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。タイミング設定部144は、フィルタ143及びA/D変換器145の動作タイミングを設定する。具体的には、タイミング設定部144は、A/D変換器145に対してサンプリング周期を設定してもよい。タイミング設定部144は、サンプリング周期に応じて使用するフィルタを変更するように、フィルタ143に設定してもよい。
【0048】
通信部15は、信号送信部151を備える。信号送信部151は、A/D変換器145から出力されたデジタル形式の測定値の信号をLoRa通信によりサーバ装置20へ送信する。
【0049】
図3を参照して説明した信号処理部14及び通信部15が備える各構成要素は、例えば、それぞれ独立した別個のハードウェアにより構成される。具体的には、信号処理部14及び通信部15が備える各構成要素は、FPGAの中の別個のブロックとして実現されてもよい。あるいは、信号処理部14及び通信部15が備える各構成要素は、ソフトウェアにより実現されてもよい。
【0050】
(サーバ装置)
図2に示すように、サーバ装置20は、制御部21、記憶部22、入力部23、出力部213、及び、通信部15を備える。サーバ装置20は、例えば、WS(WorkStation)又はPC(Personal Computer)等の汎用のコンピュータにより実現されるが、FPGA又は専用の電子機器等でもよい。
【0051】
制御部(第2制御部)21は、1つ以上のプロセッサを含む。制御部21は、サーバ装置20を構成する各構成部と通信可能に接続され、サーバ装置20全体の動作を制御する。
【0052】
記憶部22は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD、ROM、及びRAM等の任意の記憶モジュールを含む。記憶部22は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部22は、サーバ装置20の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部22は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、及び通信部25によって受信された各種情報等を記憶してもよい。記憶部22は、サーバ装置20に内蔵されているものに限定されず、外付けのデータベース又は外付け型の記憶モジュールであってもよい。例えば、記憶部22は、無線センサ10から受信した物理量の測定値を保持してもよい。
【0053】
入力部23は、ユーザの入力操作を受け付けて、ユーザの操作に基づく入力情報を取得する1つ以上の入力インターフェースを含む。例えば、入力部23は、物理キー、静電容量キー、ポインティングディバイス、又は、出力部24のディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン等であるが、これらに限定されない。
【0054】
出力部24は、ユーザに対して情報を出力し、ユーザに通知する1つ以上の出力インターフェースを含む。例えば、出力部24は、情報を画像として出力するディスプレイ、又は情報を音声で出力するスピーカ等であるが、これらに限定されない。このようなディスプレイは、例えば、液晶パネルディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等としてもよい。なお、上述の入力部23及び出力部24の少なくとも一方は、サーバ装置20と一体に構成されてもよいし、別体として設けられてもよい。
【0055】
通信部25は、任意の通信技術によって他の装置と通信接続可能な、任意の通信モジュールを含む。通信部25は、さらに、他の装置との通信を制御するための通信制御モジュール、及び他の装置との通信に必要となる識別情報等の通信用データを記憶する記憶モジュールを含んでもよい。
【0056】
図3に示すように、サーバ装置20の通信部25は、信号受信部251を備える。信号受信部251は、無線センサ10から送信された測定値の信号を、ネットワークNを介して受信する。
【0057】
制御部21は、データ結合部211、及び、解析部212を備える。データ結合部211は、一定の間隔で断続的に測定された物理量の測定値を蓄積し、結合する。解析部212は、データ結合部211において結合された測定値(結合情報)の信号に対してフーリエ変換等の周波数解析を行う。
【0058】
出力部24は、表示部241を備える。解析部212においてフーリエ変換等の周波数解析が行われた信号を表示する。
【0059】
図3を参照して説明した制御部21が備える各構成要素は、例えば、ソフトウェアにより実現される。もっとも、制御部21備える各構成要素の少なくとも一部が専用のハードウェアにより実現されてもよい。また、出力部24の表示部241及び通信部25の表示部241は、例えば、それぞれハードウェアにより構成される。もっとも、出力部24及び通信部25が備える各構成要素の少なくとも一部がソフトウェアにより実現されてもよい。
【0060】
(解析システムの動作)
前述のように、本実施形態に係る解析システム1において、無線センサ10は、通常の周波数解析手法とは異なり、一回の周波数解析に必要なデータを断続的に測定して、サーバ装置20へ送信する。サーバ装置20は、無線センサ10から断続的に受信した測定値を結合したものに対して周波数解析を実行する。これにより、サーバ装置20は、通常の周波数解析の手法を用いた場合よりも、より長期にわたって測定された測定値を反映した周波数解析結果を取得して利用することができる。
【0061】
図4は、図2及び図3の解析システム1による周波数解析を説明する図である。ここでは、比較例に係る構成における周波数解析を示す図1と比較して、本実施形態に係る解析システム1による周波数解析を説明する。
【0062】
一般的なLPWA(Low Power Wide Area)通信であるLoRaWAN(Wide Area Network)では11バイトのデータを送信するために400ms程度の気中送信時間が必要となる。ここでは、電力消費に影響する気中送信時間(Time on Air)について考慮し、電力消費に影響しないDuty制限による待ち時間は考慮しない。例えば、比較例に係る構成において、一回の測定でのサンプリング期間をT0、サンプリング点数をN0=2048点として、測定値1点当たり2バイトの情報とすると、送信すべきデータ量は4096バイトとなる。その結果、気中送信時間Tair0は149秒となる(図1)。例えば、比較例に係る無線センサの電池が蓄える電力の容量は、このような気中送信時間Tair0=149秒の通信を1回行えるだけの電力量であるとする。その場合、比較例に係るサーバ装置は、2.048秒という短時間の測定値を反映した周波数解析の結果しか利用することができない。
【0063】
一方、本実施形態に係る解析システム1において、例えば測定と測定の間隔を変えず、1回の測定で取得するサンプリング期間をt1=0.064秒、データ点数をn1=64点とし、測定値1点当たり2バイトの情報としたとする。この場合、1回の測定による測定値の気中送信時間は、4.7秒まで削減される。このような測定及び送信を、無線センサ10が、例えばt2=1日ごとに32回繰り返し、測定ごとに、測定値をサーバ装置20へ送信したとする。この場合、サーバ装置20は、測定値を蓄積した上で、これらを結合していくことで、最終的にΣt1=T=2.048秒、Σn1=N1=2048点のデータ量に相当するデータを収集することが可能となる。この場合、気中送信時間Tair1=4.7秒×32=149秒となり、比較例に係る構成において説明した気中送信時間Tair0と同一である。無線センサ10における消費電力は気中送信時間に比例する。そのため、解析システム1における無線センサ10の電池が蓄える電力容量が比較例の無線センサと同一であるとすると、解析システム1におけるサーバ装置20は、32日にわたって測定された測定値を反映した周波数解析の結果を利用することができる。このように、本実施形態に係る解析システム1によれば、サーバ装置20は、比較例に係る構成よりもより長期間に測定された測定値の周波数解析の結果を他の装置で利用することができる。
【0064】
なお、サーバ装置20が取得する測定値のデータは、図4に示すように、歯抜けのデータとなるが、サンプリングごとの測定値の信号に対して窓関数を適用した上で結合し、フーリエ変換等の周波数解析を行うことで、一度にデータを収集した周波数解析と同等な波形を取得できる。本実施形態に係る解析システム1による解析は、測定値の周波数が短期的に時変動する系ではなく、故障等が原因で長期的に見た際に周波数が変動する系に対してより効果的である。
【0065】
図5は、図2の無線センサ10の動作例を示すフローチャートである。図2を参照して説明する無線センサ10の動作は、解析システム1の解析方法の少なくとも一部に相当してもよい。図5の各ステップの動作は、無線センサ10の制御部11による制御に基づき実行されてもよい。
【0066】
ステップS1において、無線センサ10の制御部11は、サンプリングレート及び測定間隔を決定する。具体的には、制御部11は、サーバ装置20等の外部装置からの信号、又は、ユーザから指示に応じてサンプリングレート及び測定間隔を決定してもよい。サンプリングレートとは、1回の測定時間t1における測定値の取得間隔である。測定間隔は、1回の測定を行う間隔t2である。
【0067】
ステップS2において、制御部11は、A/D変換器145の設定を行う。具体的には、制御部11は、サンプリングレート及び測定間隔t2に応じた動作タイミング、並びに、振幅率等をA/D変換器145に対して設定する。サーバ装置20等の外部装置からの信号、又は、ユーザから指示に応じて、これらの設定値を決定してもよい。
【0068】
制御部11は、ステップS3~ステップS6の各処理を、測定間隔t2ごとに実行する。
【0069】
ステップS3において、制御部11は、測定部13を制御して測定対象物の物理量を測定する。具体的には、制御部11は、ステップS1で決定したサンプリングレートで測定時間t1の時間、物理量を測定する。これにより、制御部11は、n1個の測定値を取得する。
【0070】
ステップS4において、制御部11は、ステップS3で取得した物理量の測定値のデジタル信号を取得する。具体的には、制御部11は、ステップS2で動作タイミング等が設定されたA/D変換器145により、物理量の測定値のアナログ信号をデジタル信号に変換して、測定値のデジタル信号を取得する。
【0071】
ステップS5において、制御部11は、デジタル化された測定値の信号を信号送信部151によりサーバ装置20へ送信する。
【0072】
ステップS6において、制御部11は、処理を終了するか否かを判定する。具体的には、制御部11は、予め設定された処理期間が経過したこと、ユーザから終了が指示されたこと、又は、電池の残量が予め定められた閾値よりも小さくなったこと等に基づき、処理を終了すると判定してもよい。制御部11は、処理を終了する場合(ステップS6でYES)は図5のフローチャートの処理を終了し、そうでない場合(ステップS6でNO)は、測定間隔t2経過後、ステップS3以降の処理を再開する。
【0073】
図6は、図2のサーバ装置20の動作例を示すフローチャートである。図6を参照して説明するサーバ装置20の動作は、解析システム1の解析方法、又は、サーバ装置20の制御方法の少なくとも一部に相当してもよい。図6の各ステップの動作は、サーバ装置20の制御部21による制御に基づき実行されてもよい。
【0074】
ステップS11において、サーバ装置20の制御部21は、ネットワークNを介して無線センサ10から物理量の測定値を受信する。具体的には、制御部21は、図4の測定時間t1において測定されたn1個の測定値を受信する。
【0075】
ステップS12において、制御部21は、受信したn1個の測定値に対して窓関数を適用する。例えば、制御部21は、Hamming窓、Hanning窓、又は、Blackman窓等の任意の窓関数を測定値に対して適用してもよい。
【0076】
ステップS13において、制御部21は、ステップS11及びS12で窓関数が適用された各測定値を蓄積し、連続時間のデータとして結合する。具体的には、制御部21は、ステップS11,S12の処理を繰り返し実行することで、周波数解析に必要な予め設定された個数の測定値を記憶部22に蓄積していく。ステップS13において、制御部21は、記憶部22に蓄積された測定間隔t2毎に取得されたn1個の測定値を結合し、結合データを時間的に連続して取得されたデータとして取得する。
【0077】
ステップS14において、制御部21は、ステップS13で取得された結合データに対し、連続時間のデータとして周波数解析を行う。制御部21は、任意の公知の手法により周波数解析を実行してもよい。制御部21が実行する周波数解析は、FFT、又は、STFT等のフーリエ変換に限られず、例えば、周波数フィルタ等でもよい。
【0078】
ステップS15において、制御部21は、ステップS14で周波数解析が行われた測定値の周波数データを出力する。例えば、記憶部22に保存したり、表示部241に周波数データの画像を表示させたりしてもよい。そして、制御部21は、図6のフローチャートの処理を終了する。
【0079】
図4図6を参照して説明した解析システム1の解析処理の効果について、図7図9を参照して説明する。図7は、解析対象の信号の一例を示す図である。図7において、グラフ101~104は、サーバ装置20において、ステップ12の処理により窓関数が適用される前の、物理量の測定値を示す信号の例を示している。0~16秒の期間、16~32秒の期間、32~48秒の期間、及び、48~64秒の期間は、それぞれ1回の測定時間t1に対応する。換言すると、グラフ101~104は全体として、窓関数を適用せずに、一定の間隔で断続的に測定された物理量の信号を結合したものに相当する。ここで、グラフ101は、0~16秒の期間の測定値の変動を示している。グラフ102は、16~32秒の期間の測定値の変動を示している。グラフ103は、32~48秒の期間の測定値の変動を示している。グラフ104は、48~64秒の期間の測定値の変動を示している。グラフ105は、グラフ101~グラフ104を連結したグラフに対し、0~16秒の期間、16~32秒の期間、32~48秒の期間、及び、48~64秒の期間の各々において窓関数を適用した後の測定値の変動を示している。
【0080】
図8及び図9は、図7に例示した信号のフーリエ変換後の一例を示す図である。図8において、グラフ201は、図7のグラフ101の信号をフーリエ変換して得られる、グラフ101の周波数成分を示すグラフである。グラフ202は、グラフ102の信号をフーリエ変換して得られる、グラフ102の周波数成分を示すグラフである。グラフ203は、グラフ103の信号をフーリエ変換して得られる、グラフ103の周波数成分を示すグラフである。グラフ204は、グラフ104の信号をフーリエ変換して得られる、グラフ104の周波数成分を示すグラフである。換言すると、グラフ201~グラフ204は、それぞれ比較例に係る構成により取得される周波数解析後の信号を示しているといえる。ただし、比較例に係る構成においては、1回の測定によりサーバ装置側で取得される周波数解析後の信号は、グラフ201~グラフ204のいずれか一つである。例えば、図1及び図4を参照して前述の例のように、1回の測定により無線センサの電池が枯渇する場合、比較例において、サーバ装置は、グラフ201~グラフ204のいずれか一つのみを利用することが可能である。
【0081】
一方、図9のグラフ205は、図7のグラフ105の信号をフーリエ変換して得られる、グラフ105の周波数成分を示すグラフである。前述のように、グラフ105は、グラフ101~グラフ104に対しそれぞれ窓関数を適用した上で結合したものであるから、グラフ205は、本実施形態に係る解析システム1により取得される周波数解析後の信号を示している。図8のグラフ201~グラフ204と、図9のグラフ205とを比較して明らかなように、グラフ205は、グラフ201~グラフ204全体の周波数成分の分布を反映した波形を示している。具体的には、グラフ205は、グラフ201~グラフ204の各ピーク周波数の大局的な分布を認識することが可能な波形を有している。したがって、解析システム1によれば、サーバ装置20は、無線センサ10が比較例における無線センサと同一の電力を消費する処理を行う場合において、比較例に係る構成と比べて、より長期間に測定された測定値の周波数解析の結果を利用することができる。換言すると、比較例に係る構成においては、解析波形が長周期(例えば、日又は月単位)で変動する場合、サーバ装置は、個別の時点の波形しか取得することができず、波形の変動を含む解析をすることができない。これに対し、本実施形態に係る解析システム1においては、サーバ装置20は、そのような長周期の変動を含めた解析を行うことが可能である。さらに、解析システム1においても、サーバ装置20は、比較例において個別の時点で取得された各波形のピーク周波数及び振幅等の情報を取得することができる。
【0082】
以上のように、解析システム1は、互いに通信可能な無線センサ10及びサーバ装置20を備える。無線センサ10は、予め定められた間隔で分布する予め定められた測定時間において測定された測定対象物の物理量の測定値を取得し、取得した物理量の測定値をサーバ装置20へ送信する。サーバ装置20は、無線センサ10から受信した、予め定められた間隔で分布する測定時間において測定された物理量の測定値を結合して、時間的に連続した測定値とした結合情報を取得し、結合情報に対して周波数解析を行い、結合情報に対する周波数解析の結果を出力する。このように、解析システム1は、予め定められた間隔で分布する測定時間において測定された測定対象物の物理量の測定値を結合した上で周波数解析を行う。したがって、より長期間に測定された測定値の周波数解析の結果を他の装置であるサーバ装置側で利用することが可能となる。
【0083】
また、サーバ装置20は、予め定められた間隔で分布する測定時間t1において測定された物理量の測定値に対して窓関数処理を行い、その窓関数処理が行われた測定値を結合して、結合情報(結合された測定値)を取得する。したがって、窓関数を適用した上で測定値を結合して結合情報を取得するため、信号が不連続になることにより周波数成分に誤差が生じることを防止することができる。
【0084】
なお、本実施形態に係る解析システム1においては、測定時間t1としてより長時間を設定し、より長時間を対象とする窓関数を使用することで、測定値の個数、すなわち、無線センサ10の消費電力を変えずに、低周波での分解能を向上させることができる。
【0085】
なお、解析システム1においては、比較例に係る構成と比べて、ある時点において測定された測定値の個数は少なくなる。そのため、解析可能な周波数範囲が狭まり、サーバ装置20は、解析したい周波数範囲のデータを取得できなくなることが考えられる。そのような状況を回避するため、解析システム1は、ダウンサンプリング(低い周波数で再度サンプリングすること)をすることでデータ点数を変えずにウィンドウ幅を変更してもよい。また、サーバ装置20からの指示に基づき、無線センサ10から送信される送信データ数(n1)を変更できるようにして、サーバ装置20が所望の周波数範囲を測定できるようにしてもよい。ウィンドウ幅の情報を無線センサ10からサーバ装置20へ送信することで、サーバ装置20が、ウィンドウ幅に応じた解析を行えるようにしてもよい。
【0086】
また、無線センサ10の測定間隔t2は、サーバ装置20等の外部の装置から設定できるようにしてもよい。すなわち、サーバ装置20は、所望の時間的間隔を無線センサ10へ送信してもよい。無線センサ10は、サーバ装置20から受信した時間的間隔を予め定められた間隔(測定間隔t2)として、物理量の測定値を取得してもよい。例えば、モータ等の回転機に加速度センサを備えた無線センサ10を取り付け、回転機の回転数の整数倍の周波数を解析することが考えられる。このように、定期的に発生する周波数変動が予め判明している場合、その周期に応じた測定間隔を、サーバ装置20等から無線センサ10に設定してもよい。また、測定間隔t2は、固定値ではなく、一定の範囲でランダムに変動するように設定してもよい。
例えば、サーバ装置20が時間的間隔の範囲(例えば、時間的範囲の上限及び下限)を無線センサ10へ送信し、無線センサ10は、その範囲内で、物理量の測定値を取得するたびに、時間的間隔t2をランダムに決定してもよい。あるいは、サーバ装置20側で時間的間隔t2毎に時間的間隔t2をランダムに決定し、決定した時間的間隔t2を無線センサ10に指示するようにしてもよい。例えば、不定期に発生する周波数変動を捉えたい場合、測定間隔t2をランダムに設定することで、そのような周波数変動を効果的に解析することが可能となる。
【0087】
また、前述の例では、サーバ装置20において窓関数の処理を行う例を説明したが、窓関数の処理は無線センサ10側において行ってもよい。サーバ装置20で窓関数の処理を行う場合、無線センサ10側では、矩形窓の窓関数により処理を行ってもよい。
【0088】
また、サーバ装置20は、FFT等の周波数解析の処理を行わず、図7のグラフ105のように、受信した測定値の時系列の波形を結合して表示部241に表示してもよい。また、サーバ装置20は、フーリエ変換等の周波数解析の処理を行わずに、無線センサ10から受信した信号を解析してもよい。
【0089】
サーバ装置20は、周波数解析に十分な数の測定値を受信していない場合、データ数が不足している区間の測定値は0等の固定値としたり、それまでに受信している測定値の平均値等の代表値としたりして、解析を行ってもよい。例えば、サーバ装置20は、32個の測定時間t1の測定値を収集して時間T1のデータを作成する場合において、10個の測定値しか受信していないようなときは、このような処理を行うようにしてもよい。さらに、サーバ装置20は、収集するデータ点数を変更してもよい。例えば、サーバ装置20は32個の測定値を結合して解析を行い、また同時に8個の測定値を結合して解析を行ってもよい。
【0090】
また、無線センサ10は、電池ではなく、振動発電等のエナジーハーベスト技術により駆動する構成としてもよい。あるいは、無線センサ10は、安定した電源に接続されているものの、低消費消費電力が要求される任意の機器でもよい。
【0091】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の複数のブロックは統合されてもよいし、又は1つのブロックは分割されてもよい。フローチャートに記載の複数のステップは、記述に従って時系列に実行する代わりに、各ステップを実行する装置の処理能力に応じて、又は必要に応じて、並列的に又は異なる順序で実行されてもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 解析システム
10 無線センサ
11 制御部
12 記憶部
13 測定部
14 信号処理部
141 測定値入力部
142 増幅器
143 フィルタ
144 タイミング設定部
145 A/D変換器
15 通信部
151 信号送信部
20 サーバ装置
21 制御部
211 データ結合部
212 解析部
22 記憶部
23 入力部
24 出力部
241 表示部
25 通信部
251 信号受信部
101~105 グラフ
201~205 グラフ
N ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9