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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123774
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/46 20060101AFI20240905BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
F16F9/46
F16F9/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031444
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】514241869
【氏名又は名称】カヤバモーターサイクルサスペンション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】望月 隆久
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA50
3J069AA64
3J069CC15
3J069CC33
3J069CC34
3J069EE06
3J069EE16
3J069EE28
3J069EE38
3J069EE39
(57)【要約】
【課題】減衰力調整の電動化が可能な緩衝器を提供する。
【解決手段】本発明の緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入される筒状のピストンロッド2と、ピストンロッド2に連結されてシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路Pと、ピストンロッド2内に軸方向へ移動可能に挿通されるコントロールロッド4と、コントロールロッド4の変位によって減衰通路Pを通過する液体の流れに与える抵抗を変更する減衰力調整バルブ5と、ピストンロッド2に連結されるとともに断面円形状の孔6cを有するハウジング6と、ハウジング6の孔6c内に挿入されたプッシュナット7と、ハウジング6に設けられたモータ8と、プッシュナット7に設けられた偏心螺子孔7aに螺合されてモータ8によって駆動される螺子軸9とを備えている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入される筒状のピストンロッドと、
前記ピストンロッドに連結されて前記シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともに前記シリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、
前記伸側室と前記圧側室とを連通する減衰通路と、
前記ピストンロッド内に軸方向へ移動可能に挿通されるコントロールロッドと、
前記減衰通路に設けられて前記コントロールロッドの変位によって前記減衰通路を通過する液体の流れに与える抵抗を変更する減衰力調整バルブと、
前記ピストンロッドに連結されるとともに断面円形状の孔を有するハウジングと、
前記ハウジングの前記孔内に軸方向へ摺動可能に挿入されるとともに前記コントロールロッドに当接して前記孔内で軸方向へ変位することにより前記コントロールロッドを軸方向へ変位させる円柱状のプッシュナットと、
前記ハウジングに設けられたモータと、
前記プッシュナットの軸線から径方向へ偏心した位置に設けられた偏心螺子孔に螺合されて前記モータによって駆動される螺子軸とを備えた
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記プッシュナットと前記コントロールロッドとの移動方向が異なっており、
前記プッシュナットは、前記コントロールロッドに当接して前記プッシュナットの軸方向への移動を前記コントロールロッドの軸方向への移動に変換する移動方向変換部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記孔内に装着されて前記プッシュナットの反コントロールロッド側を摺動自在に支持する支持部材を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記プッシュナットは、前記ハウジングの前記孔内に摺動自在に挿入される支持部材を反プッシュロッド側に有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器は、たとえば、鞍乗型車両の車体と車輪との間に介装されて使用され、伸縮時に発生する減衰力で車体と車輪の振動を抑制する。
【0003】
このような緩衝器は、たとえば、シリンダと、シリンダ内に移動可能に挿入されてシリンダ内を作動油が充填される伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダ内に移動可能に挿入されるとともにピストンに連結されるピストンロッドと、作動油を貯留するタンクと、ピストンに設けられて伸側室から圧側室へ向かう作動油の流れに抵抗を与える許容する伸側リーフバルブと、ピストンに設けられて圧側室から伸側室へ向かう作動油の流れに抵抗を与える圧側リーフバルブと、ピストンロッド内を介して伸側室と圧側室とを連通するバイパス路と、バイパス路内に設けられてバイパス路を通過する作動油の流れに抵抗を与えるニードルバルブとを備えて構成される(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
このように構成された緩衝器では、ニードルバルブにおける開口度合の調整を可能とするために、ピストンロッドを筒状として、ピストンロッド内に挿通されてニードルバルブに当接するコントロールロッドを挿入するとともに、ピストンロッドの先端に設けた車体取付用のブラケットにコントロールロッドを軸方向へ変位させるアジャスタを備えている。
【0005】
アジャスタは、円柱状であって先端にコントロールロッドの先端に当接する円錐状の当接部と、基端外周に設けられた螺子部と、基端に設けられた工具差込み用の溝とを備えており、前記ブラケットの側方から開口してピストンロッドの上端の開口部に臨む螺子孔に螺着されている。
【0006】
工具を利用してアジャスタを回転操作すると、アジャスタを螺子孔内で軸方向へ進退させることができる。そして、アジャスタを螺子孔内へ侵入させる方向へ変位させると円錐状の当接部がコントロールロッドをピストンロッド内へ押し込むため、コントロールロッドはピストンロッド内へ侵入する方向へ移動してニードルバルブの開口面積を減少させ得る。反対に、アジャスタを螺子孔から後退させる方向へ変位させると当接部が後退するとともにニードルバルブが受けるピストンロッド内の圧力によってコントロールロッドがピストンロッド外へ移動する方向へ押圧されるので、コントロールロッドはピストンロッド内から後退する方向へ移動してニードルバルブの開口面積が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-047310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の緩衝器では、前述したように緩衝器のユーザが手動操作によってアジャスタを操作することによって、ニードルバルブの開口度合を調整して緩衝器が発生する減衰力を高低調整することができる。このように従来の緩衝器ではアジャスタを手動操作することで減衰力調整を行っているが、アジャスタをモータの利用によって回転操作して減衰力調整の電動化が要望される場合がある。
【0009】
ところが、従来の緩衝器では、外径が大きなアジャスタをブラケットの螺子孔に螺合する構造を採用しているため、アジャスタの回転操作時に大きな摩擦抵抗を受ける。よって、アジャスタを回転操作するには、前記摩擦抵抗に打ち勝つトルクの発生が可能な大型なモータが必要となり、緩衝器全体が大型化して車両への搭載性が困難となってしまうため、従来の緩衝器では減衰力調整の電動化が難しい。
【0010】
そこで、本発明は、減衰力調整の電動化が可能な緩衝器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入される筒状のピストンロッドと、ピストンロッドに連結されてシリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともにシリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、伸側室と圧側室とを連通する減衰通路と、ピストンロッド内に軸方向へ移動可能に挿通されるコントロールロッドと、減衰通路に設けられてコントロールロッドの変位によって減衰通路を通過する液体の流れに与える抵抗を変更する減衰力調整バルブと、ピストンロッドに連結されるとともに断面円形状の孔を有するハウジングと、ハウジングの孔内に軸方向へ摺動可能に挿入されるとともにコントロールロッドに当接して孔内で軸方向へ変位することによりコントロールロッドを軸方向へ変位させる円柱状のプッシュナットと、ハウジングに設けられたモータと、プッシュナットの軸線から径方向へ偏心した位置に設けられた偏心螺子孔に螺合されてモータによって駆動される螺子軸とを備えている。
【0012】
このように構成された緩衝器では、モータによって駆動される螺子軸をプッシュナットに設けた偏心螺子孔に螺合するようにしているので、従来構造に比較して螺子の外径が小さくなってプッシュナットを変位させるのにモータに要求されるトルクが小さくなる。また、プッシュナットは円柱状であって断面円形の孔内に摺動可能に挿入されており、孔とプッシュナットとの嵌合により回り止めが構成されるので、キー等を用いる回り止め機構に比較して孔とプッシュナットとの間で生じる摩擦力を低減できる。
【0013】
また、緩衝器におけるプッシュナットとコントロールロッドとの移動方向が異なっており、プッシュナットは、コントロールロッドに当接してプッシュナットの軸方向への移動をコントロールロッドの軸方向への移動に変換する移動方向変換部を備えてもよい。このように構成された緩衝器によれば、モータによって駆動されるプッシュナットとコントロールロッドとの移動方向が一致しなくてもよいので、モータの緩衝器への取付姿勢の設計自由度が向上する。
【0014】
さらに、緩衝器は、ハウジングが孔内に装着されてプッシュナットの反コントロールロッド側を摺動自在に支持する支持部材を有して構成されてもよいし、プッシュナットがハウジングの孔内に摺動自在に挿入される支持部材を反プッシュロッド側に有して構成されてもよい。このように構成された緩衝器によれば、プッシュナットがブッシュとともに孔内を移動でき、ブッシュの利用によってプッシュナットがハウジングにおける孔内でより一層滑らかに軸方向へ移動できるようになるので、モータで負担するトルクをより一層低減でき、より小型のモータの利用で減衰量調整が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の緩衝器によれば、減衰力調整の電動化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、一実施の形態における緩衝器の断面図である。
図2図2は、鞍乗型車両に取り付けられた緩衝器を示した図である。
図3図3は、一実施の形態における緩衝器の一部拡大断面図である。
図4図4は、一実施の形態の第1変形例における緩衝器の一部拡大断面図である。
図5図5は、一実施の形態の第2変形例における緩衝器の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1に示すように、一実施の形態における緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入される筒状のピストンロッド2と、ピストンロッド2に連結されてシリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともにシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路Pと、ピストンロッド2内に軸方向へ移動可能に挿通されるコントロールロッド4と、減衰通路Pに設けられてコントロールロッド4の変位によって減衰通路Pを通過する液体の流れに与える抵抗を変更する減衰力調整バルブとしてのニードルバルブ5と、ピストンロッド2に連結されるとともに断面円形状の孔6cを有するハウジング6と、ハウジング6の孔6c内に挿入されたプッシュナット7と、ハウジング6に設けられたモータ8と、プッシュナット7に設けられた偏心螺子孔7aに螺合されてモータ8によって駆動される螺子軸9とを備えている。
【0018】
そして、この緩衝器Dは、図2に示すように、自動二輪車等の鞍乗型車両Mにおける車体Fと後輪Wとの間に介装されて使用され、車体Fおよび後輪Wの振動を抑制する。なお、緩衝器Dは、鞍乗型車両M以外の振動の抑制に利用されてもよい。
【0019】
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。シリンダ1は、図1に示すように、筒状であって図1中下端がボトムキャップ11によって閉塞されている。また、シリンダ1の図1中上端には、ピストンロッド2が挿通される環状のロッドガイド10が取り付けられている。ロッドガイド10は、内周にピストンロッド2の外周に摺接する環状のシール部材10aと環状のブッシュ10bとを備えており、シール部材10aによりピストンロッド2の外周をシールしてシリンダ1内を密閉するとともに、ブッシュ10bによってピストンロッド2の軸方向への移動を案内する。
【0020】
シリンダ1内は、ピストンロッド2の先端の外周に装着されるピストン3によって、液体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画されている。なお、液体は、本実施の形態では、作動油とされるが、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体の使用可能である。
【0021】
ピストンロッド2は、筒状とされて内部が中空となっており、図1中上端がロッドガイド10を貫通してシリンダ1外へ突出している。また、ピストンロッド2の図1中上端には、鞍乗型車両Mにおける車体Fに連結可能なブラケット6bを備えたハウジング6が装着されている。さらに、ピストンロッド2の下端にはピストン3が装着される小径部2aが設けられている。
【0022】
ピストン3は、環状であってピストンロッド2の小径部2aの外周に装着されており、伸側室R1と圧側室R2とをそれぞれ並列して連通する伸側ポート3aと圧側ポート3bとを備えている。ピストン3の図1中下端には、環状であって小径部2aの外周に装着されて伸側ポート3aを開閉する伸側減衰バルブ13が積層されている。また、ピストン3の図1中上端には、環状であって小径部2aの外周に装着されて圧側ポート3bを開閉する圧側チェックバルブ14が積層されている。そして、ピストン3、伸側減衰バルブ13および圧側チェックバルブ14は、ピストンロッド2の小径部2aの外周に嵌合されるともに、小径部2aの下端に螺着されるピストンナット15によってピストンロッド2に固定されている。
【0023】
伸側減衰バルブ13は、本実施の形態の緩衝器Dでは、ピストン3の図1中下端に環状板を複数枚積層して構成されて、内周側が固定されており伸側室R1の圧力によって外周側が撓むと伸側ポート3aを開放する積層リーフバルブとされている。伸側減衰バルブ13は、伸側ポート3aを開閉可能であって緩衝器Dの伸長時には、開弁して伸側ポート3aを伸側室R1から圧側室R2へ向けて通過する液体の流れに対して抵抗を与えるとともに、緩衝器Dの収縮時には閉弁して伸側ポート3aを遮断する。なお、伸側減衰バルブ13は、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与えて緩衝器Dの伸長時に緩衝器Dの伸長を妨げる減衰力を発揮できる減衰バルブであればよいので、積層リーフバルブ以外の減衰バルブであってもよい。
【0024】
対して、圧側チェックバルブ14は、本実施の形態の緩衝器Dでは、ピストン3の図1中上端に重ねられて内周が固定されたリーフバルブで構成されており圧側室R2の圧力によって外周側が撓むと圧側ポート3bを開放するバルブとされている。圧側チェックバルブ14は、圧側ポート3bを開閉可能であって緩衝器Dの伸長時には、閉弁して圧側ポート3bを遮断し、緩衝器Dの収縮時には開弁して圧側ポート3bを圧側室R2から伸側室R1へ向けて通過する液体の流れを許容する。なお、圧側チェックバルブ14は、緩衝器Dの収縮時に圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを然程抵抗を与えずに許容できるバルブとなっているが、抵抗を与えるように設定されてもよい。
【0025】
ボトムキャップ11は、本実施の形態では、図1に示すように、シリンダ1の図1中下端に装着されるキャップ部11aと、タンク16を保持するタンク保持部11bと、キャップ部11aの側方から延びてタンク保持部11bに接続される接続部11cとを備えている。
【0026】
キャップ部11aは、有底筒状であってシリンダ1の図1中下端に取り付けられて、シリンダ1の下端を閉塞するともに、底部である図1中下方に鞍乗型車両Mにおける後輪Wを保持するスイングアームSAに連結可能なブラケット11dを備えている。
【0027】
タンク保持部11bには、円筒状のタンク16が取り付けられている。そして、タンク16内には、フリーピストン17が摺動自在に挿入されており、タンク16内がフリーピストン17によって液体が充填される液室Lと、気体が充填される気室Gとに区画されている。なお、気室Gには、緩衝器Dの最伸長時において少なくとも気室G内の圧力が大気圧以上となるように気体が封入されている。なお、タンク16内の液室Lと気室Gとの区画は、フリーピストン17を利用する以外にも、ダイヤフラムやブラダ等の利用によってもよい。
【0028】
タンク16における液室Lは、接続部11cに設けられた圧側減衰通路11eと吸込通路11fを通じてシリンダ1内の圧側室R2に連通されている。圧側減衰通路11eには、圧側室R2からタンク16の液室Lへ向かう液体の流れのみを許容するとともに当該液体の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブ18が設けられており、吸込通路11fには、液室Lから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する伸側チェックバルブ19が設けられている。
【0029】
つづいて、ピストンロッド2は、筒状であってピストン3よりも図1中上方の側方から開口して内方まで通じる横孔2bを備えており、当該横孔2bと内部とを通じて伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路Pを形成している。また、ピストンロッド2の内周であって横孔2bよりも図1中下方には、環状の弁座部材51が装着されている。また、ピストンロッド2内には、ニードル弁体52が軸方向へ移動可能に挿入されている。ニードル弁体52は、先端となる図1中下端に円錐状のニードル52aを備えるとともに基端となる図1中上端にピストンロッド2の内周に摺接する大径な摺動部52bを備えている。
【0030】
ニードル弁体52は、弁座部材51とともにニードルバルブ5を構成しており、ピストンロッド2内を軸方向となる図1中上下方向へ移動することによって、先端のニードル52aを弁座部材51の上端開口端に遠近させることによってニードル52aと弁座部材51との間の環状隙間の大きさを調整できる。よって、ニードルバルブ5は、ニードル弁体52が軸方向に移動させられると流路面積を大小調整することができ、減衰通路Pを通過する液体の流れに与える抵抗の大きさを調整できる。また、ニードルバルブ5は、ニードル弁体52におけるニードル52aを弁座部材51の開口端に着座させると閉弁して減衰通路Pによる伸側室R1と圧側室R2との連通を断つこともできる。
【0031】
また、摺動部52bは、ピストンロッド2の内周であって横孔2bよりも図1中上方に摺接しており、外周には軸方向に沿って切欠溝52cが設けられている。なお、ニードル弁体52の摺動部52bより図1中下方の外径はピストンロッド2の内径よりも小径となっており、ニードルバルブ5が開弁すると液体はニードル弁体52の摺動部52bより下方の外周とピストンロッド2の内周との間を通過して減衰通路P内を行き来することができる。
【0032】
コントロールロッド4は、下端をニードル弁体52の摺動部52bの上端に当接させた状態でピストンロッド2内に軸方向へ移動可能に挿入されており、上端をピストンロッド2の上端から上方へ突出させている。なお、コントロールロッド4は、上端となる頭部4aと、頭部4aから垂下されてピストンロッド2内に挿通されてニードル弁体52に当接する軸部4bとを備えており、頭部4aの上端は円錐形状となっている。軸部4bの外径はピストンロッド2の内径よりも小径となっており、ピストンロッド2の上端内周に設けられた環状の軸受22、環状のパッキン23および環状のキャップ24内に摺動自在に挿入されている。コントロールロッド4は、軸受22内に摺動自在に挿入されているので軸ぶれせずにピストンロッド2内を軸方向へ変位できる。また、軸部4bとピストンロッド2との間がパッキン23によってシールされているので、減衰通路Pを通過する液体の一部が摺動部52bの切欠溝52cを通過してピストンロッド2の上方端から緩衝器D外へ漏洩するのが防止されている。
【0033】
なお、キャップ24は、パッキン23を上方から押さえられてパッキン23の脱落を防止している。このようにコントロールロッド4は、軸部4bがニードル弁体52から離間するとピストンロッド2内に充満する液体の圧力を受けてピストンロッド2に対して上方へ向けて押圧されるが、軸部4bの外径をピストンロッド2の内径よりも小さくして受圧面積を小さくしているので、コントロールロッド4を上方へ押圧する力を小さくして、後述するプッシュナット7に大きな荷重が作用するのを抑制できる。また、コントロールロッド4は、ピストンロッド2内の圧力によって常時ピストンロッド2に対して上方へ向けて付勢されている。
【0034】
ピストンロッド2の上端に取り付けられたハウジング6は、図1および図3に示すように、ピストンロッド2の上端に螺着されるハウジング本体6aと、ハウジング本体6aの上端に設けられて鞍乗型車両Mにおける車体Fに連結可能なブラケット6bとを備えている。
【0035】
ハウジング本体6aは、側方から開口する断面円形の孔6cと、下端から開口してピストンロッド2の上端が螺着される螺子孔6dと、孔6cと螺子孔6dとを連通する螺子孔6dと同心に設けられるロッド挿通孔6eを備えている。ロッド挿通孔6eは、孔6cの途中に開口しており、孔6cは、ハウジング本体6aの側方から開口して水平方向へ延びてロッド挿通孔6eを跨いでさらに先に延びている。ロッド挿通孔6e内は、コントロールロッド4の頭部4aが挿通される。よって、螺子孔6d内にピストンロッド2をねじ込んでハウジング6にピストンロッド2を螺子締結すると、コントロールロッド4の頭部4aはロッド挿通孔6eを介して孔6c内に突出する。
【0036】
プッシュナット7は、図3に示すように、円柱状であって孔6cよりも軸方向長さが短く、ハウジング6の孔6c内に軸方向へ摺動可能に挿入されている。よって、プッシュナット7は、孔6c内で軸方方向への変位が許容されている。また、プッシュナット7は、孔6cの入り口側の端部となる後端の軸線が通る中央から径方向となる上方側へ偏心した位置から開口する偏心螺子孔7aと、側面から先端面にかけて形成される切欠溝によって形成された傾斜面7bとを備えている。傾斜面7bは、側面から先端に向かうほど側面から遠ざかる傾斜面とされており、傾斜面7bの傾斜角度は、コントロールロッド4の頭部4aの上端の円錐面を径方向から見た円錐面の傾斜角度と同じになっていて傾斜面7bは頭部4aに線接触で当接できる。
【0037】
傾斜面7bを頭部4aに当接させた状態で、プッシュナット7を孔6cの軸線に沿って孔6c内に押し込む方向へ移動させると、傾斜面7bが孔6cの奥側へ移動するため、頭部4aが傾斜面7bを滑ってコントロールロッド4をピストンロッド2内に押し込む方向へ変位させることができる。反対にプッシュナット7を孔6cの軸線に沿って孔6c内から後退する方向へ移動させると、傾斜面7bが孔6cの入口へ向けて移動しコントロールロッド4がピストンロッド2内の圧力で上方へ向けて付勢されているため、頭部4aが傾斜面7bに当接する位置までピストンロッド2内から上方へ向けて変位する。
【0038】
よって、プッシュナット7の孔6cに対する移動方向と、コントロールロッド4の移動方向とは異なっているが、傾斜面7bによってプッシュナット7の孔6cに対する水平方向の移動がコントロールロッド4の上下方向の移動に変換される。このようにプッシュナット7における傾斜面7bは、コントロールロッド4に当接してプッシュナット7の軸方向への移動をコントロールロッド4の軸方向への移動に変換する移動方向変換部として機能している。プッシュナット7の軸線に直交する平面と傾斜面7bとがなす角度が90度近くなればなるほどコントロールロッド4を上下方向へ移動させる際にプッシュナット7を軸方向へ駆動するために必要な力が少なくなる。なお、傾斜面7bは、プッシュナット7を側方から先端にかけて側方から切り落としてできる傾斜面とされてもよい。
【0039】
モータ8は、図3に示すように、ロータのシャフト自体が先端外周に螺子部が備えた螺子軸9とされており、通電によって螺子軸9を回転駆動できる。なお、螺子軸9は、モータ8のシャフトにカップリングを介して連結されてもよいし、図示したように、シャフトの外周に螺子溝を設けて形成されてもよい。モータ8は、ハウジング6の側面に装着されると、螺子軸9を孔6c内に突出させるとともに螺子軸9の軸心を孔6cの中心から図3中で上方へずれた位置に位置決める。また、螺子軸9は、プッシュナット7の偏心螺子孔7a内に螺合されており、モータ8は、螺子軸9が回転駆動させるとプッシュナット7に偏心螺子孔7aの軸心を中心として回転させるトルクを作用させる。よって、プッシュナット7は、偏心螺子孔7aを中心にして周方向へ回転しようとするが、孔6c内に摺動可能に嵌合されており、偏心螺子孔7aがプッシュナット7の軸線から径方向へずれた位置に位置している関係で偏心螺子孔7aを中心として回転することができない。このようにプッシュナット7は、螺子軸9の駆動による回転中心が軸線から径方向へずれた位置となっていて、かつ、ハウジング6の孔6cに嵌合されていることによって回転が阻止されるので、孔6c内を軸方向へ進退する移動のみが許容される。
【0040】
よって、モータ8を駆動して螺子軸9が回転すると、螺子軸9の回転方向に応じてプッシュナット7は、軸線回りに回転することなくそのままの姿勢で孔6c内を奥側或いは入り口側へ向けて軸方向へ変位する。プッシュナット7が変位すると、コントロールロッド4がピストンロッド2に対して軸方向となる上下方向へ変位するので、モータ8の駆動によってコントロールロッド4を上下方向へ移動させ得る。
【0041】
緩衝器Dは、以上のように構成され、ボトムキャップ11に設けられたブラケット11dとピストンロッド2の先端に取り付けられたハウジング6に設けられたブラケット6bとにより、鞍乗型車両Mの車体Fと後輪Wとの間に介装される。なお、本実施の形態の緩衝器Dは、図2に示すように、ピストンロッド2を車体Fに連結してシリンダ1を後輪Wに連結して車体Fと後輪Wとの間に介装されているが、天地逆向きにしてピストンロッド2を後輪Wに連結してシリンダ1を車体Fに連結して車体Fと後輪Wとの間に介装されてもよい。
【0042】
以下、緩衝器Dの作動を説明する。シリンダ1に対してピストン3が図1中上方へ移動する緩衝器Dの伸長行程において、ピストン3によって圧縮される伸側室R1から伸側ポート3aを介して圧側室R2へ液体が移動する。この伸長行程において緩衝器Dは、伸側ポート3aを通過する液体の流れに対して伸側減衰バルブ13により抵抗を与えて、伸長を妨げる伸側の減衰力を発生する。また、緩衝器Dの伸長行程では、減衰通路Pにおけるニードルバルブ5が開弁している場合、液体は、伸側減衰バルブ13以外にもニードルバルブ5も通過して伸側室R1から圧側室R2へ移動するので、ニードルバルブ5も伸側の減衰力の発生に寄与する。そして、モータ8の駆動によってプッシュナット7を軸方向へ移動させてコントロールロッド4をピストンロッド2内で上下方向へ変位させることにより、ニードル弁体52を弁座部材51に対して遠近させて流路面積を変更でき、伸側の減衰力を調整できる。
【0043】
また、緩衝器Dの伸長行程では、ピストンロッド2がシリンダ1から退出するので、圧側室R2内でピストンロッド2がシリンダ1から退出した体積分の液体が不足するが、この不足分の液体は、フリーピストン17がタンク16内を移動して気室Gを拡大させてタンク16の液室Lから伸側チェックバルブ19が開弁して吸込通路11fを介して圧側室R2に供給される。
【0044】
なお、緩衝器Dの伸長行程では、圧側減衰バルブ18は閉弁して圧側減衰通路11eを遮断するので、伸側減衰バルブ13によって緩衝器Dの伸長行程の減衰力の特性が決定され、ニードルバルブ5は伸長行程の減衰力に影響を与えない。
【0045】
他方、シリンダ1に対してピストン3が図1中下方へ移動する緩衝器Dの収縮行程において、ピストン3によって圧縮される圧側室R2内の作動油は、圧側チェックバルブ14を開弁させて圧側ポート3bを介して伸側室R1へ移動する。また、緩衝器Dの収縮行程では、ピストンロッド2がシリンダ1内へ侵入するので、シリンダ1内でピストンロッド2がシリンダ1内へ侵入した体積分の液体が過剰となる。この過剰分の液体は、圧側減衰バルブ18を開弁させて圧側減衰通路11eを介してタンク16内の液室Lへ排出される。なお、液体が排出されるタンク16内では、フリーピストン17がタンク16内を移動して気室Gを縮小する。
【0046】
このように緩衝器Dの収縮行程では、緩衝器Dの収縮速度に応じて、液体が圧側室R2から圧側減衰バルブ18を通過してタンク16へ移動する。以上、緩衝器Dの収縮行程では、圧側ポート3bが開放されてシリンダ1内の伸側室R1と圧側室R2と連通状態におかれ、圧側減衰バルブ18が圧側室R2からタンク16へ向かう液体の流れに対して抵抗を与える。
【0047】
緩衝器Dの収縮行程では、圧側ポート3bを通じて伸側室R1と圧側室R2とが連通状態におかれるため、伸側室R1内と圧側室R2内の圧力がともに上昇して略同じ圧力となる。本実施の形態の緩衝器Dでは、伸側室R1に面しているピストン3の面積が圧側室R2に面しているピストン3の面積よりもピストンロッド2の外径の円の面積分だけ小さいので、収縮する緩衝器Dは、シリンダ1内の圧力にピストンロッド2の外径の円の面積を乗じた値の減衰力を、前記収縮を妨げる方向に発揮する。つまり、前述したピストン3の片方にのみピストンロッド2が存在する片ロッド型に設定された緩衝器Dの場合、収縮行程時にピストンロッド2の外径の円の面積に比例した減衰力を発生する。
【0048】
なお、圧側チェックバルブ14の代わりに減衰バルブを設ける場合、緩衝器Dの収縮行程時に伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力とに差が生じるようになるため、ニードルバルブ5による減衰力調整も可能となって緩衝器Dの圧側の減衰力調整が可能となる。
【0049】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、ニードルバルブ5の流路面積の調整には、モータ8が利用されている。前述した通り、モータ8に通電して螺子軸9を回転させると、孔6c内で回り止めされたプッシュナット7がハウジング6に対して孔6cの軸線方向に沿って図3中左右方向へ移動する。プッシュナット7の移動方向に応じてコントロールロッド4も軸方向に沿って上方或いは下方へ移動してニードル弁体52を弁座部材51に対して遠近させてニードルバルブ5の流路面積を大小調整し得る。そして、本実施の形態の緩衝器Dでは、孔6cの内周に螺子部を設けてアジャスタを螺子締結する従来の緩衝器で採用していた構造を採用せず、モータ8によって駆動される螺子軸9をプッシュナット7に設けた偏心螺子孔7aに螺合するようにしているので、従来構造に比較して螺子の外径が小さくなってプッシュナット7を変位させるのにモータ8に要求されるトルクが小さくなる。また、プッシュナット7は円柱状であって断面円形の孔6c内に摺動可能に挿入されており、孔6cとプッシュナット7との嵌合により回り止めが構成されるので、キー等を用いる回り止め機構に比較して孔6cとプッシュナット7との間で生じる摩擦力を低減できる。
【0050】
以上、本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入される筒状のピストンロッド2と、ピストンロッド2に連結されてシリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともにシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路Pと、ピストンロッド2内に軸方向へ移動可能に挿通されるコントロールロッド4と、減衰通路Pに設けられてコントロールロッド4の変位によって減衰通路Pを通過する液体の流れに与える抵抗を変更するニードルバルブ(減衰力調整バルブ)5と、ピストンロッド2に連結されるとともに断面円形状の孔6cを有するハウジング6と、ハウジング6の孔6c内に軸方向へ摺動可能に挿入されるとともにコントロールロッド4に当接して孔6c内で軸方向へ変位することによりコントロールロッド4を軸方向へ変位させる円柱状のプッシュナット7と、ハウジング6に設けられたモータ8と、プッシュナット7の軸線から径方向へ偏心した位置に設けられた偏心螺子孔7aに螺合されてモータ8によって駆動される螺子軸9とを備えている。
【0051】
このように構成された緩衝器Dでは、モータ8によって駆動される螺子軸9をプッシュナット7に設けた偏心螺子孔7aに螺合するようにしているので、従来構造に比較して螺子の外径が小さくなってプッシュナット7を変位させるのにモータ8に要求されるトルクが小さくなる。また、プッシュナット7は円柱状であって断面円形の孔6c内に摺動可能に挿入されており、孔6cとプッシュナット7との嵌合により回り止めが構成されるので、キー等を用いる回り止め機構に比較して孔6cとプッシュナット7との間で生じる摩擦力を低減できる。
【0052】
以上より、本実施の形態の緩衝器Dによれば、コントロールロッド4の駆動の際にモータ8が受ける摩擦抵抗が低減されて小型なモータ8の利用によってコントロールロッド4の駆動できるようになり、モータ8を搭載しても緩衝器Dの全体の大型化を招かないので、減衰力調整の電動化が可能となる。
【0053】
なお、本実施の形態の緩衝器Dでは、減衰力調整バルブは、ニードルバルブ5とされているが、コントロールロッド4の変位によって減衰通路Pを流れる液体の流れに与える抵抗を変更できるものであればよい。よって、たとえば、コントロールロッド4のピストンロッド2に対する軸方向の移動によって、筒状であってピストンロッド2内に摺動可能に挿入されてピストンロッド2の横孔2bに対向可能なポートを備えて、軸方向への移動によって横孔2bとポートとの対向度合を変更して流路面積を大小調整可能なスプールバルブとされてもよい。また、減衰力調整バルブは、伸側ポート3a(圧側ポート3a)を減衰通路Pとして利用し、コントロールロッド4に連動してピストンロッド2に対して軸方向へ移動可能なばね受と、当該ばね受と伸側減衰バルブ13(圧側チェックバルブ14)との間に介装されて伸側減衰バルブ13(圧側チェックバルブ14)を付勢するばねとを備えて、コントロールロッド4の変位によってばねの付勢力を調整して伸側減衰バルブ13(圧側チェックバルブ14)が伸側ポート3a(圧側ポート3a)を通過する液体の流れに与える抵抗を調整可能なものであってもよい。
【0054】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、プッシュナット7とコントロールロッド4との移動方向が異なっており、プッシュナット7は、コントロールロッド4に当接してプッシュナット7の軸方向への移動をコントロールロッド4の軸方向への移動に変換する傾斜面(移動方向変換部)7bを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、モータ8によって駆動されるプッシュナット7とコントロールロッド4との移動方向が一致しなくてもよいので、モータ8の緩衝器Dへの取付姿勢の設計自由度が向上する。なお、本実施の形態の緩衝器Dでは、プッシュナット7における傾斜面(移動方向変換部)7bがプッシュナット7の側面から先端面にかけて形成される切欠溝によって形成されているので、傾斜面(移動方向変換部)7bがプッシュナット7を側方から切り落とした形状に形成される場合と比較して、プッシュナット7の孔6cの内周面に摺接する周面の面積を大きくすることができ、プッシュナット7がより滑らかに孔6c内を移動できる。
【0055】
また、前述した緩衝器Dでは、モータ8は、軸線をピストンロッド2の軸線に対して直交するようにしてハウジング6に取り付けられているが、コントロールロッド4をピストンロッド2内で軸方向へ変位させ得る限りにおいてモータ8のハウジング6に対する取付姿勢について設計変更できる。
【0056】
よって、図4に示した第1変形例における緩衝器D1のように、プッシュナット7の移動方向をコントロールロッド4の移動方向に一致させる場合、ハウジング6の孔6cをピストンロッド2の軸線方向に沿って形成してプッシュナット7を孔6cに挿入し、プッシュナット7に傾斜面を設けずプッシュナット7の下端面をコントロールロッド4の頭部4aに当接させるようにしてもよい。この場合、モータ8は、ハウジング6に螺子軸9が孔6c内に突出するように取り付けられ、螺子軸9がプッシュナット7の軸線から偏心した位置に開口する偏心螺子孔7a内に螺合されればよい。また、コントロールロッド4の頭部4aの上端面はプッシュナット7の下端面と平行な面とされていると、プッシュナット7から荷重を受けるコントロールロッド4の頭部4aがプッシュナット7の下端面をかじって傷つけるのを防止できる。このように、第1変形例における緩衝器D1では、モータ8、プッシュナット7およびコントロールロッド4は直列に配置されているのでモータ8を備えていても緩衝器D1の径方向へ大型化を招くことがない。よって、この第1変形性の緩衝器D1は、全長が比較的長く軸方向で内部にモータ8の設置スペースを確保しやすいフロントフォークに内蔵される緩衝器として利用し易くなる。
【0057】
さらに、図5に示した第2変形例における緩衝器D2のように、ハウジング6は、孔6c内に装着されてプッシュナット7の軸方向の両端に摺動自在に嵌合される支持部材としての環状の一対のブッシュ30,31を備えていてもよい。この場合、プッシュナット7に設けられる傾斜面7bは、ブッシュ30,31に摺接する両端を避けてプッシュナット7の軸方向で中央部に設けられており、コントロールロッド4の頭部4aに当接している。この場合は、プッシュナット7は、ブッシュ30,31にガイドされて孔6c内を軸方向へ移動するようになり、ブッシュ30,31の利用によってプッシュナット7がハウジング6における孔6c内でより一層滑らかに軸方向へ移動できるようになるので、モータ8で負担するトルクをより一層低減でき、より小型のモータ8の利用で減衰量調整が可能となる。また、支持部材は、プッシュナット7の反コントロールロッド側に配置されてプッシュナット7を支持してプッシュナット7の軸方向への移動を許容しつつ反コントロールロッド側となる図5中上方への移動を規制できればよく、その限りにおいて形状および構造について設計変更でき、環状でなくともよいし、一対のブッシュ30,31以外の部材で構成されてもよい。
なお、支持部材としてのブッシュ30,31は、プッシュナット7の軸方向の両端に装着されてもよい。このように構成されても、プッシュナット7がブッシュ30,31とともに孔6c内を移動でき、ブッシュ30,31の利用によってプッシュナット7がハウジング6における孔6c内でより一層滑らかに軸方向へ移動できるようになるので、モータ8で負担するトルクをより一層低減でき、より小型のモータ8の利用で減衰量調整が可能となる。また、プッシュナット7に装着される支持部材は、プッシュナット7の反コントロールロッド側に配置されてプッシュナット7を支持してプッシュナット7の軸方向への移動を許容しつつ反コントロールロッド側となる図5中上方への移動を規制できればよく、その限りにおいて形状および構造について設計変更でき、環状でなくともよいし、一対のブッシュ30,31以外の部材で構成されてもよい。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1・・・シリンダ、2・・・ピストンロッド、3・・・ピストン、P・・・減衰通路、4・・・コントロールロッド、5・・・ニードルバルブ(減衰力調整バルブ)、6・・・ハウジング、6c・・・孔、7・・・プッシュナット、7a・・・偏心螺子孔、7b・・・傾斜面(移動方向変換部)、8・・・モータ、9・・・螺子軸、30,31・・・ブッシュ(支持部材)、D,D1,D2・・・緩衝器、R1・・・伸側室、R2・・・圧側室
図1
図2
図3
図4
図5