(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123778
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】エアブラシユニット
(51)【国際特許分類】
B43K 8/00 20060101AFI20240905BHJP
B05B 7/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B43K8/00 110
B05B7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031448
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村井 瞬
(72)【発明者】
【氏名】本間 悠一郎
(72)【発明者】
【氏名】瀬田川 洋亮
【テーマコード(参考)】
2C350
4F033
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350GA16
2C350HA13
2C350HC07
2C350NA13
2C350NA14
4F033QA01
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QB12Y
4F033QB18
4F033QD03
4F033QD18
4F033QE06
4F033QE09
4F033QF01X
4F033QF07Y
4F033QF12X
(57)【要約】
【課題】塗布具を容易に切り替えることができ、かつ、描画品質を向上できるエアブラシユニットを提供する。
【解決手段】エアブラシユニット10は、ハンドル11と、ハンドル11に設けられ圧縮空気を噴射する噴射口を有するノズル12と、先端からインクを供給する複数の塗布具14a,14b,14cと、周方向に沿って複数の塗布具14a,14b,14cが配置され、回転自在に支持された回転板16Aを有する回転部材16と、ハンドル11と回転部材16とを連結する連結部と、を備え、回転板16Aの回転によって、噴射口の近傍の領域に配置される先端を有する塗布具を複数の塗布具14a,14b,14cの中で切替可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルと、
前記ハンドルに設けられ圧縮空気を噴射する噴射口を有するノズルと、
先端からインクを供給する複数の塗布具と、
周方向に沿って複数の前記塗布具が配置され、回転自在に支持された回転板を有する回転部材と、
前記ハンドルと前記回転部材とを連結する連結部と、を備え、
前記回転板の回転によって、前記噴射口の近傍の領域に配置される前記先端を有する前記塗布具を複数の前記塗布具の中で切替可能である、エアブラシユニット。
【請求項2】
前記連結部として、前記ハンドルと前記回転部材とのうちの一方に形成されたキー溝と、前記ハンドルと前記回転部材とのうちの他方に形成され前記キー溝に嵌合するキー突起と、を有する、
請求項1に記載のエアブラシユニット。
【請求項3】
前記回転部材を径方向に沿って移動可能に支持するスライド部と、
前記回転部材の前記径方向の一端に接触するスペーサーと、
前記スペーサーの前記回転部材との接触部と反対側の端部を前記径方向に沿って前記噴射口の近傍の領域から離れる方向に向かって押す操作部と、を更に備え、
前記回転部材が前記操作部に押されることによって、前記塗布具の前記先端が前記噴射口の近傍の領域から離れる位置まで前記回転部材が前記スペーサーと前記スライド部とを介して後退し、前記キー溝と前記キー突起との嵌合が解除される、
請求項2に記載のエアブラシユニット。
【請求項4】
前記塗布具は、
インクを収容する収容部と、
後端が前記収容部に連結された筒状の継手と、
後端が前記継手の前端に連結され、前記先端の側にボールを有し、内側に前記インクが流れる側壁を有する筒状のボールペンチップと、
前記ボールペンチップの周囲に前記ボールペンチップと間を空けて前記継手に対して軸方向に沿って移動自在に設けられ前記先端の側に開口部を有する筒状のアウターと、を備え、
前記ボールと前記継手の前端との間における前記ボールペンチップの側壁には、前記ボールペンチップと前記アウターとの間の内部空間に連通する貫通孔が形成され、
前記ボールと前記貫通孔との間の位置における前記アウターの内壁面には、前記ボールペンチップに向かって突出する突出部が形成され、
前記アウターが前記先端の側に向かって移動することによって、前記ボールと前記貫通孔との間で前記突出部が前記ボールペンチップの外周面から離れ、前記内部空間を外部に連通させる隙間が前記先端の側に形成される第一状態と、
前記アウターが前記先端とは反対側の側に向かって移動することによって、前記ボールと前記貫通孔との間で前記突出部が前記ボールペンチップの外周面に接触し、前記突出部によって前記内部空間と前記外部とが隔離される第二状態と、の間で切り替え可能である、
請求項3に記載のエアブラシユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアブラシユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、描画等の分野において、塗布具に含まれる絵の具やインク等の液体を飛散させることによって霧状に形成するとともに、霧状に形成されたインクを紙等の対象物の表面に噴霧する事によって描画などを可能とするエアブラシが用いられている。具体的には、たとえば、エアブラシにおけるインク供給手段として、インク供給部材及び空気噴射装置が、エアブラシ本体部に取り付けられる。
【0003】
かかるエアブラシでは、インクの交換を円滑に行うことができないという問題や、インク詰まり、混色等の問題が生じることがある。こうした問題に対し、たとえば特許文献1では、インク供給体としての筆記具をエアブラシ本体部に取り付けた状態で、筆記具のペン先に空気噴射装置から噴射された圧縮空気を接触させる。すなわち、特許文献1には、筆記具と組み合わせて用いることができるエアブラシユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、筆記具とエアブラシユニットとの連結部の剛性や、筆記具の保持能力が十分でない場合、描画におけるインクの切替の際、圧縮空気の噴射口と筆記具のペン先との相対的な位置関係が変化しやすい。このため、インクの微粒化が不十分な状態で描画が行われ、結果、描画の品質が不安定になる。すなわち、圧縮空気の噴射口と塗布具の先端との相対的な位置関係によって、ペン先から吹き付けられるインクの微粒化度合いが変化し、描画品質に影響する。
【0006】
この点、特許文献1のエアブラシユニットの場合、エアブラシ本体部には1つの筆記用具しか塗布具として取り付けできない。このため、塗布具を切り替える際、塗布具を本体部から取り外した後、他の色のインクを有する塗布具を、切替前の状態と同じ相対位置が保持されるように、目視で取り付ける作業が生じる。
【0007】
特許文献1のエアブラシユニットの場合、圧縮空気の噴射口と筆記具のペン先との相対的な位置関係の調整が目視で行われるため、相対的な位置関係が、切替前に比べ変化しやすい。このため、切替前の状態と同じ相対位置の保持が難しく、結果、描画品質に関する使用者の要望を十分に満足できていない場合が生じている。また、塗布具の切替の際、エアブラシ本体部から塗布具を1つずつ取り外すとともに、1つずつ取り付ける手間が生じる。すなわち、塗布具を容易に切り替えることができ、かつ、描画品質を向上できる、新規な形態のエアブラシユニットを提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の様態は、下記の通りである。
【0009】
<態様1>
ハンドルと、前記ハンドルに設けられ圧縮空気を噴射する噴射口を有するノズルと、先端からインクを供給する複数の塗布具と、周方向に沿って複数の前記塗布具が配置され、回転自在に支持された回転板を有する回転部材と、前記ハンドルと前記回転部材とを連結する連結部と、を備え、前記回転板の回転によって、前記噴射口の近傍の領域に配置される前記先端を有する前記塗布具を複数の前記塗布具の中で切替可能である、エアブラシユニット。
【0010】
態様1では、回転部材は、ハンドルに連結される。また、回転板は、周方向に沿って複数の塗布具が配置され、回転自在に支持される。回転板の回転によって噴射口の近傍の領域に配置される先端を有する塗布具を、複数の塗布具の中で切替可能である。
【0011】
このため、態様1では、塗布具を切り替える際、他の色のインクを有する塗布具を、切替前の状態と同じ相対位置が保持されるように、目視でハンドルに取り付ける作業が生じない。すなわち、ハンドルに1つの筆記用具しか取り付けできない場合に比べ、塗布具を安定的に且つ容易に切替できる。結果、圧縮空気の噴射口と塗布具の先端との相対的な位置関係が変化し難い。
【0012】
<態様2>
前記連結部として、前記ハンドルと前記回転部材とのうちの一方に形成されたキー溝と、前記ハンドルと前記回転部材とのうちの他方に形成され前記キー溝に嵌合するキー突起と、を有する、態様1に記載のエアブラシユニット。
【0013】
態様2では、キー溝とキー突起とが嵌合することによって、回転部材とハンドルとが一体化される。噴霧中の回転部材の回転がハンドルによって抑制されるので、インクを安定的に噴霧できる。
【0014】
<態様3>
前記回転部材を径方向に沿って移動可能に支持するスライド部と、前記回転部材の前記径方向の一端に接触するスペーサーと、前記スペーサーの前記回転部材との接触部と反対側の端部を前記径方向に沿って前記先端配置領域から離れる方向に向かって押す操作部と、を更に備え、前記回転部材が前記操作部に押されることによって、前記塗布具の前記先端が前記先端配置領域から離れる位置まで前記回転部材が前記スペーサーと前記スライド部とを介して後退し、前記キー溝と前記キー突起との嵌合が解除される、態様2に記載のエアブラシユニット。
【0015】
態様3では、操作部が、スペーサーの回転部材との接触部と反対側の端部を、径方向に沿って先端配置領域から離れる方向に向かって押す。回転部材が操作部に押されることによって、塗布具の先端が先端配置領域から離れる位置まで回転部材がスライドし、キー溝とキー突起との嵌合が解除される。このため、塗布具の切替時、キー溝とキー突起との嵌合を容易に解除できる。
【0016】
<態様4>
前記塗布具は、インクを収容する収容部と、後端が前記収容部に連結された筒状の継手と、後端が前記継手の前端に連結され、前記先端の側にボールを有し、内側に前記インクが流れる側壁を有する筒状のボールペンチップと、前記ボールペンチップの周囲に前記ボールペンチップと間を空けて前記継手に対して軸方向に沿って移動自在に設けられ前記先端の側に開口部を有する筒状のアウターと、を備え、前記ボールと前記継手の前端との間における前記ボールペンチップの側壁には、前記ボールペンチップと前記アウターとの間の内部空間に連通する貫通孔が形成され、前記ボールと前記貫通孔との間の位置における前記アウターの内壁面には、前記ボールペンチップに向かって突出する突出部が形成され、前記アウターが前記先端の側に向かって移動することによって、前記ボールと前記貫通孔との間で前記突出部が前記ボールペンチップの外周面から離れ、前記内部空間を外部に連通させる隙間が前記先端の側に形成される第一状態と、前記アウターが前記先端とは反対側の側に向かって移動することによって、前記ボールと前記貫通孔との間で前記突出部が前記ボールペンチップの外周面に接触し、前記突出部によって前記内部空間と前記外部とが隔離される第二状態と、の間で切り替え可能である、態様1~3のいずれかに記載のエアブラシユニット。
【0017】
態様4では、第一状態では、隙間とボールの周囲からとの両方からのインクの供給が可能である。このため、ボールの周囲からのみインクが供給される場合と比べ、より大量のインクを噴霧できる。第二状態では、内部空間と外部とが隔離される、すなわち隙間が閉じるので、インクは、塗布具のボールの先端からのみ供給される。このため、インク供給量を第一状態より少なく調整できる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の態様によれば、塗布具を容易に切り替えることができ、かつ、描画品質を向上できるエアブラシユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の実施形態に係るエアブラシユニットを説明する斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るエアブラシユニットを分解して説明する斜視図である。
【
図3】本実施形態に係るエアブラシユニットのスライド部を分解して説明する斜視図である。
【
図4】本実施形態に係るエアブラシユニットを説明する正面図である。
【
図5】本実施形態に係るエアブラシユニットを説明する左側面図である。
【
図7】本実施形態に係るエアブラシユニットの一部を切り欠いて説明する斜視図である。
【
図8】
図8(A)は、本実施形態に係るエアブラシユニットのノズルを説明する正面図であり、
図8(B)は、ノズルを説明する平面図であり、
図8(C)は、ノズルを説明する右側面図であり、
図8(D)は、
図8(A)中の8D-8D線断面図である。
【
図9】本実施形態に係るエアブラシユニットの回転部材のスライド動作を説明する断面図である。
【
図10】本実施形態に係るエアブラシユニットを説明する平面図である。
【
図11】
図11(A)は、本実施形態に係るエアブラシユニットの塗布具を説明する斜視図であり、
図11(B)は、本実施形態に係るエアブラシユニットの塗布具を説明する平面図であり、
図11(C)は、
図11(B)中の11C-11C線断面図である。
【
図12】本実施形態に係るエアブラシユニットの第一状態を説明する断面図である。
【
図13】本実施形態に係るエアブラシユニットの第一状態におけるインクの供給状態を説明する断面図である。
【
図14】本実施形態に係るエアブラシユニットのボールペンチップを説明する断面図である。
【
図15】本実施形態に係るエアブラシユニットの第二状態におけるインクの供給状態を説明する断面図である。
【
図16】本実施形態に係るエアブラシユニットの第二状態におけるインクの供給状態を説明する断面図である。
【
図17】本実施形態に係るエアブラシユニットの回転部材を他方向に回転させて使用する使用方法を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本開示の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一の部分及び類似の部分には、同一の符号又は類似の符号を付している。ただし、図面における厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。また、明細書中に特段の断りが無い限り、本開示の各構成要素の個数は、1つに限定されず、複数存在してもよい。
【0021】
(エアブラシユニットの構造)
図1に示すように、本実施形態に係るエアブラシユニット10は、ハンドル11と、ノズル12と、複数の塗布具14a,14b,14cと、回転部材16と、連結部18(
図10参照)と、を備える。
【0022】
なお、本実施形態では、特に言及しない限り、各部材は、たとえば樹脂によって成形できる。なお、本開示では、各部材の素材は樹脂に限定されず、たとえば金属や木材等、任意の素材を採用できる。
【0023】
また、本実施形態では、複数の塗布具14a,14b,14cのインクの色は、それぞれ異なる。なお、本開示では、これに限定されず、すべてのインクの色が同じであってもよいし、一部のインクの色が同じであってもよい。
【0024】
なお、本実施形態では、複数の塗布具14a,14b,14cについて、説明の便宜のため、特に言及しない限り、
図1中の中央に配置された塗布具14aを代表的に説明する。
図1中の中央に配置された塗布具14aの左右に位置する2つの塗布具14b,14cの構造については、中央に配置された塗布具14aと同様であるため、重複説明を省略する。
【0025】
(方向の定義)
また、本実施形態では、塗布具14aの軸方向においてインクが供給される先端の側を塗布具14aの「前」側と定義するとともに、先端とは反対側を塗布具14aの「後」側と定義する。回転部材16に塗布具14aが取り付けられた状態では、塗布具14aの前後方向は、回転部材16の径方向に沿う。
【0026】
(ハンドル)
図2に示すように、ハンドル11は、筒状部材である。ハンドル11は、使用者の手指によって把持可能である。具体的にはたとえば、ハンドル11は、一般的な小児であっても5本の指で円滑に握ることが可能な程度の外径と高さとを有するように構成できる。
【0027】
(ベース部)
ハンドル11は、ベース部11Aを有する。ベース部11Aは、ハンドル11の上部に着脱自在に設けられる。本実施形態ではベース部11Aは別部材であるが、本開示では、ベース部11Aとハンドル11とは同じ部材として一体的に作製されてよい。ただし、ベース部11Aとハンドル11とが別部材であることによって、分解時の各部材の大きさをコンパクトにできるので、運搬しやすい。
【0028】
図3に示すように、本実施形態では、ベース部11Aは、棒状部材である。ベース部11Aは、前側に位置する塊状の基部11A1と、基部11A1から後側に向かって延びる板状の土台部11A2とを有する。基部11A1の上面であるガイド面17には、キー突起18Aが設けられる。
図3に示すように、土台部11A2の上にはスライド部30が配置される。
【0029】
(キー突起)
図3に示すように、キー突起18Aは、ガイド面17より上側に突出する。
図3中のキー突起18Aの上面は、平面視で六角形状である。キー突起18Aの上部は、回転部材16のキー溝18Ba(
図10参照)に嵌合する。本開示では、キー突起18Aの形状は、適宜変更できる。
【0030】
(嵌合突起)
図2及び
図3に示すように、本実施形態では、基部11A1においてガイド面17を挟む左右の側面には、帯状に延びる2つの嵌合突起19がそれぞれ設けられる。また、
図2に示すように、ハンドル11の上部に設けられ上側に延びる平行四辺形状の支持板20の内面には、嵌合突起19に対応する嵌合溝20Aが形成される。嵌合突起19と嵌合溝20Aとによって、ベース部11Aは、ノズル12に対して一定の傾斜角度を有した状態で、ハンドル11に着脱自在に連結される。
【0031】
なお、本開示では、ベース部11Aに嵌合溝20Aが形成されるとともに、支持板20に嵌合突起19が形成されてもよい。また、本開示では、嵌合突起19の形状及び個数は、任意に変更できるとともに、嵌合溝20Aの形状及び個数は、任意に変更できる。
【0032】
(操作部)
図4及び
図5に示すように、ハンドル11は、第一トリガー操作部21と、第二トリガー操作部22と、を有する。本実施形態の第二トリガー操作部22は、本開示の「操作部」に対応する。
【0033】
(第一トリガー操作部)
本実施形態の第一トリガー操作部21は、板状部材である。第一トリガー操作部21の一部は、ハンドル11の第一開口23から外部に露出する。第一トリガー操作部21は、圧縮空気が蓄積された空気蓄積部(図示せず)に接続される。第一トリガー操作部21をハンドル11の内側に押すことによって、圧縮空気を噴射できる。
【0034】
(第二トリガー操作部)
図6に示すように、本実施形態の第二トリガー操作部22は、V字状の板状部材である。第二トリガー操作部22は、V字の2本の棒の交点の位置で、ハンドル11の第二開口24の内側に回転自在に取り付けられる。
【0035】
第二トリガー操作部22のV字の2本の棒のうちの一方の一部は、第二開口24から外部に露出する。第二トリガー操作部22のV字の2本の棒のうちの他方は、ハンドル11の上部に形成された本体側凹部26の内側に位置する。
【0036】
(ノズル)
図7に示すように、ノズル12は、ハンドル11の上部に設けられる。
図8(A)及び
図8(B)に示すように、本実施形態のノズル12は、円筒状部材である。円筒の前側の部分は、開口する。
図8(C)及び
図8(D)に示すように、ノズル12の前側の噴射用開口部12Fは、底部12Aより拡径している。
図8(B)及び
図8(D)に示すように、噴射部27の上側に位置する部分の側壁12Bには先端用開口部12Uが形成される。
【0037】
ノズル12の底部12Aには、底部12Aの径より小径の筒状の噴射部27が設けられる。ノズル12は、噴射部27の前側に、後側より縮径し圧縮空気を噴射する噴射口27Aを有する。噴射部27の後側の開口部27Bには、圧縮空気を噴射部27に供給する
図7中の空気供給管28の一端が連結される。
【0038】
図8(B)に示すように、本実施形態の先端用開口部12Uの形状は、U字状であるが、本開示では、これに限定されず、適宜変更できる。先端用開口部12Uからノズル12の内側に、塗布具14aの先端が差し込まれることによって、塗布具14aの先端が、
図8(D)中の先端配置領域Aに配置される。
【0039】
図8(D)に示すように、先端配置領域Aは、噴射口27Aの近傍に形成され、塗布具14aの先端が配置される仮想領域である。先端配置領域Aは、本開示の「噴射口の近傍の領域」に対応する。
図8(D)中では、点線で囲まれた円形状の領域が、先端配置領域Aとして例示されているが、実際の先端配置領域Aの形状は、円形状に限定されない。噴射口27Aの近傍であって圧縮空気によってインクを霧状に形成可能な領域であれば、本開示の先端配置領域Aとして設定できる。
【0040】
(スペーサー)
図7に示すように、本実施形態に係るエアブラシユニット10は、スペーサー29を更に備える。スペーサー29は、中央にガイドスリット29Aを有するU字状の部材である。なお、本開示では、スペーサー29の形状は、U字状に限定されず、適宜変更できる。スペーサー29は、本体側凹部26の内側に配置される。ガイドスリット29Aの内側には、一端がノズル12に連結された空気供給管28が差し込まれる。
【0041】
図7に示すように、第二トリガー操作部22のV字の2本の棒のうちの他方(
図7中の右側の棒)は、スペーサー29の前側の端部、すなわちU字の底部に接触する。
図7中のスペーサー29の後側の端部、すなわちU字の頂部に対応する2本の棒の上部における本体側凹部26の側の下面は、ベース部11Aのガイド面17の上に接触する。
【0042】
スペーサー29は、ガイド面17の上で前後方向に沿ってスライド可能である。ガイドスリット29Aによって、スペーサー29は、前後方向に沿ったスライドの際、キー突起18Aを回避しながら回転部材16のみと接触可能である。また、スペーサー29の前後方向(すなわち、径方向)の後側の端部の2本の棒の上部における回転部材16の側の端面は、回転部材16の径方向の一端、すなわち前端に接触する。
【0043】
図9に示すように第二トリガー操作部22は、外部からハンドル11の内側に押されることによって、スペーサー29の回転部材16との接触部と反対側の端部を、前後方向に沿って、先端配置領域Aから離れる方向に向かって押す。このため、スペーサー29は、ガイド面17の上をスライドする。スペーサー29のスライドによって、回転部材16が後側に向かって押される。換言すると、スライド部30に支持された回転部材16は、スペーサー29を介して第二トリガー操作部22に押されることによって、後側にスライドする。
【0044】
(スライド部)
次に、スライド部30を、
図3を参照して具体的に説明する。スライド部30は、回転部材16を径方向、すなわち前後方向に沿って移動可能に支持する。
図3に示すように、スライド部30は、レール部32と、可動部34と、支持部36と、を有する。
【0045】
(レール部)
図3に示すように、レール部32は、板状部材である。レール部32は、底部32Aと一対の側壁部32Bとを有する。底部32Aと一対の側壁部32Bとによって、前後方向に沿って見て、U字状のレール用凹部32Cが形成される。
【0046】
図6に示すように、レール部32には連結用の貫通孔32Dが形成されるとともに、ベース部11Aにも連結用の貫通孔13が形成される。
図6に示すように、レール部32とベース部11Aとは、たとえば、底部32Aの厚み方向に沿って延びるピンやボルト等の連結具38が、貫通孔32Dと貫通孔13とに差し込まれることによって、着脱自在に連結できる。なお、本開示では、レール部32とベース部11Aとは、接着等によって一体的に固定されてもよい。
【0047】
(可動部)
可動部34は、平板状の部材である。
図3に示すように、可動部34は、レール部32のレール用凹部32Cの内側で、レール部32の底部32Aの上面上に配置される。
図3中の可動部34の下面は、底部32Aの上面と滑らかに接触する。このため、可動部34は、レール部32のレール用凹部32Cの内側でスライド可能である。
【0048】
(支持部)
図3に示すように、支持部36は、平板状の本体板36Aと、本体板36Aの上面にそれぞれ設けられたガイド突起36Bと回転用突起36Cとを有する。
【0049】
(ガイド突起)
ガイド突起36Bは、平面視で、円弧状である。
図6に示すように、ガイド突起36Bは、回転部材16の回転板16Aのガイド溝16A1に嵌合する。ガイド突起36Bによって、回転板16Aが回転する際、回転板16Aの回転姿勢の保持が容易になる。
【0050】
図3に示すように、可動部34には連結用の貫通孔34Aが形成されるとともに、支持部36の本体板36Aにも連結用の貫通孔36A1が形成される。なお、
図3中では、本体板36Aの後側の回転用突起36Cの内側に連結用の貫通孔が設けられている。
【0051】
図6に示すように、可動部34と支持部36とは、たとえば、支持部36の厚み方向に沿って延びるピンやボルト等の連結具が、貫通孔34Aと貫通孔36A1とに差し込まれることによって、着脱自在に連結できる。
図6中では、見やすさのため、貫通孔34Aと貫通孔36A1の符号の表記は省略する。なお、本開示では、支持部36と可動部34とは、接着等によって一体的に固定されてもよい。また、本開示では、ガイド突起36Bは、必須ではない。
【0052】
(回転用突起)
回転用突起36Cは、筒状部材である。回転用突起36Cの外径は、回転板16Aの貫通孔16Bの内径とほぼ同じである。回転用突起36Cが回転板16Aの貫通孔16Bに嵌合することによって、回転板16Aは、回転自在に支持される。回転用突起36Cの内側には、雌ネジ部36C1が形成される。
【0053】
(止めネジ)
図6に示すように、本実施形態では、連結部材として止めネジ40が設けられる。止めネジ40は、回転用突起36Cの雌ネジ部36C1に対応する雄ネジ部40Bを有する。
【0054】
止めネジ40は、鍔部40Aを有する。鍔部40Aの外径は、雄ネジ部40Bの径より拡径している。このため、回転板16Aが回転用突起36Cに嵌合した状態で、止めネジ40は、回転用突起36Cの外縁の周囲の回転板16Aの領域を上側から押さえる。止めネジ40によって、回転板16Aが支持部36から浮き上がること、すなわち、回転時の回転部材16の脱落を抑制できる。なお、本開示では、連結部材は必須ではない。また、連結部材の形状は、止めネジ40に限定されず、ピン等の他の形状を適宜採用できる。
【0055】
(回転部材)
図10に示すように、回転部材16は、扇状の回転板16Aを有する。回転板16Aにおいて扇の要に対応する位置には、支持部36の回転用突起36Cが差し込まれる貫通孔16Bが形成される。また、回転板16Aの上面上には、複数の塗布具14a,14b,14cが配置される領域が、それぞれ設けられる。複数の塗布具14a,14b,14cが配置される領域は、貫通孔16Bから径方向の外側に向かって放射状に延びる。すなわち、回転板16Aの上側には、周方向に沿って複数の塗布具14a,14b,14cが並んで配置される。
【0056】
また、本開示では、例えば、複数の塗布具14a,14b,14cが配置される領域の内側に、複数の塗布具14a,14b,14cの差し込み及び取り出しを容易にするための補助部材が配置されてもよい。補助部材としては、具体的には例えば、塗布具14aの軸方向の後側に接触し、塗布具14aを先端の側に押すことが可能な板ばねを設けることができる。板ばねは、例えば金属や樹脂で作製できる。
【0057】
(支持側壁及び支持前壁)
図1に示すように、本実施形態では、回転板16Aの上面には、支持側壁41と支持前壁42とが設けられる。支持側壁41と支持前壁42とは、複数の塗布具14a,14b,14cのそれぞれの周囲に配置される。
【0058】
支持側壁41と支持前壁42とは、回転板16Aの上面から上側に延びる。支持側壁41は、塗布具14aの側面に接触する。支持前壁42は、塗布具14aの収容部の前側の底面に接触する。支持側壁41と支持前壁42とによって囲まれた領域の内側に、塗布具14aが着脱自在に配置される。支持側壁41と支持前壁42とによって、塗布具14aが、回転板16Aの上面の上に安定的に固定される。なお、本開示では、支持側壁41と支持前壁42とは、必須ではない。
【0059】
(ガイド突起)
図1に示すように、回転板16Aの径方向における支持側壁41の一部には、補助突起44が設けられる。補助突起44は、支持側壁41の高さより高い。このため、補助突起44によって、支持側壁41と支持前壁42とによって囲まれた領域の内側に塗布具14aを取り付けやすい。すなわち、補助突起44は位置決め部材として機能する。
【0060】
図10に示すように、補助突起44は、支持側壁41と支持前壁42とによって囲まれた領域の内側に向かって僅かに張り出す。このため、補助突起44によって、支持側壁41と支持前壁42とによって囲まれた領域の内側から塗布具14aが外れることを抑制できる。
【0061】
回転板16Aの回転によって、先端配置領域Aに配置される先端を有する塗布具14aを、複数の塗布具14a,14b,14cの中で切替可能である。複数の塗布具14a,14b,14cが切り替えられても、それぞれの塗布具14a,14b,14cの先端は、同じ先端配置領域Aに配置される。
【0062】
本実施形態では、回転部材16の回転板16Aの上面には、塗布具14aの下面が接触する。すなわち、複数の塗布具14a,14b,14cは、回転板16Aの上面の上に、塗布具14aの下面が接触した状態で配置される。このためたとえば、棒状の塗布具14aが一端の側でのみ本体に回転可能に取り付けられる場合に比べ、塗布具14aが安定的に配置される。
【0063】
なお、本実施形態では、回転部材16は、ガイド面17の面内で回転する場合が例示されたが、本開示では、回転状態はこれに限定されない。たとえば、ガイド面17に直交する面内で回転してもよい。回転部材16がガイド面17に直交する面内で回転する場合、複数の塗布具14a,14b,14cは、先端とは反対側の底部の側が回転板16Aの板面上に取り付けられることによって、回転板16Aの板面からノズル12に向かって延びるように配置できる。
【0064】
また、本開示では、複数の塗布具14a,14b,14cが支持部材としての回転部材16の上に支持されるエアブラシユニット10が例示されたが、本開示では、1つの塗布具14aのみが支持部材の上に支持されるエアブラシユニットが構成されてもよい。すなわち、本開示に係るエアブラシユニットでは、支持部材の上に支持される塗布具14aが、別の色の塗布具14b,14cに1つずつ交換されてもよい。
【0065】
(連結部)
連結部18は、ハンドル11と回転部材16とを連結する構造である。具体的には、
図10に示すように、本実施形態では、連結部18として、回転部材16に形成された複数のキー溝18Ba,18Bb,18Bcと、ハンドル11に形成され、複数のキー溝18Ba,18Bb,18Bcに嵌合するキー突起18Aと、が設けられる。
【0066】
なお、本実施形態では、複数のキー溝18Ba,18Bb,18Bcについて、説明の便宜のため、特に言及しない限り、
図10中の中央に配置されたキー溝18Baを代表的に説明する。
図10中の中央に配置されたキー溝18Baの左右に位置する2つのキー溝18Bb,18Bcの構造については、中央に配置されたキー溝18Baと同様であるため、重複説明を省略する。
【0067】
(キー溝)
図10に示すように、キー溝18Baは、平面視で、回転板16Aの周縁において台形状に切り欠かれた部分である。複数のキー溝18Ba,18Bb,18Bcは、複数の塗布具14a,14b,14cのそれぞれに対応して設けられる。すなわち、インク供給部材として特定の塗布具14aが使用される間、使用される塗布具14aに対応するキー溝18Baが、キー突起18Aに嵌合する。
【0068】
本開示では、連結部18としてのキー溝18Baがハンドル11に設けられるとともに、キー溝18Baに嵌合するキー突起18Aが回転部材16に設けられてもよい。すなわち、本開示では、連結部18として、ハンドル11と回転部材16とのうちの一方に形成されたキー溝18Baと、ハンドル11と回転部材16とのうちの他方に形成されキー溝18Baに嵌合するキー突起18Aと、が設けられればよい。
【0069】
また、本実施形態では、平面視で台形状に切り欠かれたキー溝18Baと、キー溝18Baに嵌合する部分を有する平面視で六角形状のキー突起18Aとが例示されたが、本開示では、キー溝18Baとキー突起18Aとの形状は、これに限定されない。本開示では、キー溝18Baとキー突起18Aとの形状は、たとえば円弧状等、任意の幾何学形状を採用できる。
【0070】
また、本実施形態では、1つの塗布具14aについて1つのキー溝18Baと1つのキー突起18Aとからなる1つの連結部18が構成された場合が例示されたが、本開示では、1つの塗布具14aについて構成される連結部18の個数は、2つ以上、任意である。
【0071】
(連結解除動作)
図9に示すように、回転部材16が第二トリガー操作部22にスペーサー29を介して押されることによって、塗布具14aの先端が先端配置領域Aから離れる位置まで、回転部材16がスペーサー29とスライド部30とを介して後退する。後退によって、キー溝18Baとキー突起18Aとの嵌合が解除される。結果、ハンドル11と回転部材16との連結が解除される。
【0072】
(塗布具)
塗布具14aは、先端からインクを供給するインク供給部材である。
図11(A)、
図11(B)及び
図11(C)に示すように、塗布具14aは、収容部50と、継手52と、ボールペンチップ54と、アウター56と、を備える。
【0073】
(収容部)
図11(C)に示すように、本実施形態の収容部50は、中空の円筒状部材である。なお、本開示では、収容部50の形状は、円筒状に限定されず、たとえば角筒状等他の形状であってよい。収容部50の内部にはインク15(
図13参照)が収容される。収容部50の前側の底部には、開口部50Aが設けられる。
【0074】
(継手)
継手52は、外径が収容部50の外形より小さい中空の筒状部材である。継手52の後端は、収容部50に連結される。具体的には、継手52の軸方向の後端が収容部50の開口部50Aに差し込まれた状態で固定される。固定方法としては、接着やネジ結合等を採用できる。収容部50と継手52とが連結された状態では、収容部50の内部空間と継手52の内部空間とが連通する。このため、収容部50に収容されたインク15は、継手52の前側に向かって流動可能である。
【0075】
図12に示すように、継手52の軸方向の中央の外周面には雄ネジ部52Aが形成される。継手52の軸方向の前側には、内部空間と連通する連結凹部52Bが形成される。連結凹部52Bの内径は、ボールペンチップ54の軸方向の後端の径とほぼ同じである。
【0076】
継手52の連結凹部52Bの内側にボールペンチップ54の後端が嵌合することによって、継手52とボールペンチップ54とが連結される。連結状態では、継手52の内部空間とボールペンチップ54の内部のインク流路とが連通する。このため、インク15は、継手52の内部空間を経由して、ボールペンチップ54の先端のボールに向かって流動可能である。
【0077】
(ボールペンチップ)
ボールペンチップ54は、いわゆる筆記具としてのボールペンに使用されるボールペンチップに相当する。すなわち、たとえば市販の金属製のボールペンチップを用いて本実施形態のボールペンチップ54を作製できる。
【0078】
本実施形態では、ボールペンチップ54は、先端配置領域Aへのインク供給部材としての塗布具14aの先端に設けられる部材である。なお、本開示では、塗布具14aの先端に設けられる部材の具体的な構造としては、ボールペンチップ54に限定されない。たとえば、内側にインクが流動可能な流路を有する筒状のバルブ等が採用されてもよい。
【0079】
図12に示すように、ボールペンチップ54は、ボール54Aと、ボール保持部54Bとを有する。ボールペンチップ54のボール保持部54Bは、内側にインクが流れる側壁を有する筒状部材である。ボールペンチップ54のボール保持部54Bの後端は、継手52の連結凹部52Bに連結される。
【0080】
ボール54Aは、たとえば、ボール保持部54Bの先端がかしめられることによって、先端の側に回転可能に保持できる。インク15は、ボール54Aとかしめ部との隙間から外部に流れることができる。
【0081】
ボール54Aと継手52の前端との間におけるボールペンチップ54の側壁には、貫通孔54Cが形成される。貫通孔54Cは、ボールペンチップ54とアウター56との間の内部空間に連通する。
【0082】
本実施形態では、貫通孔54Cの開口部の形状は、楕円形状であるが、本開示では、貫通孔54Cの開口部の形状は、これに限定されず、円形状や正方形状等、適宜変更できる。また、本実施形態では、貫通孔54Cの個数は、1つであるが、本開示では、貫通孔54Cの個数は、2つ以上、任意である。
【0083】
(アウター)
図12に示すように、アウター56は、先端の側に開口部56Aを有する筒状部材である。開口部56Aの内縁は、ほぼ正円状である。アウター56は、ボールペンチップ54の周囲にボールペンチップ54と間を空けて設けられる。ボール54Aと貫通孔54Cとの間の位置におけるアウター56の側壁には、ボールペンチップ54に向かって突出する突出部56Cが形成される。
【0084】
(突出部)
突出部56Cは、アウター56の側壁において軸方向の前側に設けられる。具体的には本実施形態では、突出部56Cの位置では、アウター56の外壁面と内壁面とは、ボール54Aに向かって窄んでいる。このため、アウター56の内径は、先端の側に向かうに従って徐々に縮む。本実施形態では、突出部56Cの内壁面と、突出部56Cの内壁面に対向するボール保持部54Bの外壁面54B1とは、ほぼ平行である。
【0085】
なお、本開示では、突出部56Cの形状は、内径が先端の側に向かうに従って徐々に縮む場合に限定されない。本開示では、たとえば、先端の側の一部の領域においてアウター56の内径が部分的に、ボールペンチップ54に向かって段差を有して突出してもよい。本開示では、突出部56Cの形状は、適宜変更できる。
【0086】
本実施形態のアウター56は、継手52の外周面の側に、継手52に対して軸方向に沿って移動自在に取り付けられる。具体的には、
図12に示すように、アウター56の内面には、雌ネジ部56Bが形成される。雌ネジ部56Bは、アウター56の内壁面において軸方向(すなわち、前後方向)の中央と後側との領域に形成される。
図12中の継手52の中央の雄ネジ部52Aがアウター56の雌ネジ部56Bにネジ結合することによって、アウター56と継手52とが移動自在、かつ、着脱自在に連結される。
【0087】
(アウターの移動)
図12中のアウター56の開口部56Aの内縁は、貫通孔54Cの先端側の端部よりボール54Aに近い。換言すると、アウター56の開口部56Aの内縁の方が、貫通孔54Cの先端側の端部より、軸中心に近い。
【0088】
このため、アウター56が先端の側(すなわち、
図12中の左側)に向かって移動することによって、ボール54Aと貫通孔54Cとの間で突出部56Cがボールペンチップ54の外周面から離れ、内部空間を外部に連通させる隙間が先端の側に形成される。隙間が先端の側に形成される状態を「第一状態」と称する。
図13に示すように、第一状態では、隙間とボール54Aの周囲からとの両方からのインク15の供給が可能である。
【0089】
一方、
図14に示すように、アウター56が先端とは反対側(すなわち、
図13中の右側)に向かって移動することによって、ボール54Aと貫通孔54Cとの間で突出部56Cがボールペンチップ54の外周面に接触し、突出部56Cによって内部空間と外部とが隔離される。すなわち、第一状態で形成された隙間が、シールされる。内部空間と外部とが隔離されることによって隙間がシールされた状態を「第二状態」と称する。
図15に示すように、第二状態では、インク15は、塗布具14aのボール54Aの先端からのみ供給される。
【0090】
本実施形態では、アウター56の移動に応じて、エアブラシユニット10の状態を第一状態と第二状態との間で切り替え可能である。換言すると、第一状態では、インク流量を第二状態の場合より増加できる。本実施形態に係るエアブラシユニット10では、使用状況に合わせてインク15の流出の有無及び流量を、アウター56の移動によって簡便に制御可能となるインク流出機構が構成される。
【0091】
(拡径部)
図12に示すように、本実施形態では、アウター56の軸方向における後端には、中央より拡径した拡径部56Dが設けられる。
図11(A)に示すように、本実施形態の拡径部56Dは、六角柱状である。本開示では、拡径部56Dの形状は六角柱状に限定されず、四角柱状等、任意に変更できる。
【0092】
(嵌合孔)
また、
図12に示すように、支持前壁42には、拡径部56Dに対応する嵌合孔42Aが形成される。本実施形態の嵌合孔42Aの形状は、六角柱状の拡径部56Dの底部の六角形とほぼ同じ六角形状である。このため、拡径部56Dが支持前壁42に嵌合することによって、アウター56の位置が固定される。結果、アウター56ではなく、収容部50を回転させることによって、アウター56が継手52に対して相対的に移動する。すなわち、継手52が後退する。
図12中には、支持前壁42に固定されたアウター56と、後退した継手52との間に隙間が形成された状態が例示されている。
【0093】
すなわち、収容部50の回転によって、エアブラシユニット10の状態を第一状態と第二状態との間で切り替えることができる。本実施形態では、収容部50の円筒の外径の方が、アウター56の円筒の中央の外径より大きい。このため、たとえば、使用者の手指と収容部50との接触面積を、手指とアウター56との接触面積より大きくすることができる。結果、収容部50を回転させやすい。このため、第一状態と第二状態との間の切替が、アウター56の回転のみで行う場合より、容易になる。
【0094】
<エアブラシユニットの使用方法>
(第1の塗布具の使用)
次に、本実施形態に係るエアブラシユニット10の使用方法を、説明する。まず、使用者は、
図1に示すように、回転部材16に複数の塗布具14a,14b,14cを取り付ける。そして、使用者は、回転部材16をスライド部30を介してハンドル11に取り付ける。使用者は、所望の色を有するインク15の第1の塗布具としての塗布具14aに対応するキー溝18Baを、ハンドル11のキー突起18Aに嵌合することによって、回転部材16をハンドル11に連結する。連結によって、塗布具14aの先端が、先端配置領域Aに配置される。
【0095】
連結状態においては、回転部材16と可動部34とが重力によって前進することによって、キー溝18Baがキー突起18Aに押し付けられる。すなわち、重力を活用することによって、比較的簡便な構造を用いて連結状態を維持できる。また、塗布具14aは先端が下側に位置するので、重力によって、塗布具14aの内部ではインク15が先端に向かって流れる。
【0096】
次に、使用者が第一トリガー操作部21を押すことによって、圧縮空気をノズル12に供給する。圧縮空気によって塗布具14aの先端から供給されたインク15が霧状に形成される。
【0097】
噴霧されたインク15によって、使用者は描画を行うことができる。噴霧されるインク15の供給量は、エアブラシユニット10の状態を第一状態と第二状態との間で切り替えることによって調整可能である。また、噴霧時には、圧縮空気は、ノズル12に最も接近する塗布具14aの先端のみに接触し、他の塗布具14aの先端には接触しない。
【0098】
(第1の塗布具から第2の塗布具への切替、及び第2の塗布具の使用)
次に、インク15の色を変える場合、
図9に示すように、使用者は、第二トリガー操作部22を押すことによって、回転部材16を後退させる。後退によって、回転部材16に取り付けられた塗布具14aも後退するとともに、塗布具14aの先端が、先端配置領域A、すなわちノズル12から離れる。また、後退によって、キー溝18Baとキー突起18Aとの嵌合が外れるとともに、ハンドル11と回転部材16との連結が解除される。
【0099】
図16に示すように、連結が解除された状態で、使用者は、回転部材16を回転させることによって、第2の塗布具として使用される塗布具14bを、ノズル12に対向する位置に移動させる。回転中、第二トリガー操作部22を押す動作は、継続される。回転の際、複数の塗布具14a,14b,14cのそれぞれの先端は、ノズル12の上側の空間において回転するので、ノズル12と干渉しない。
【0100】
塗布具14bの先端がノズル12に対向する位置に移動した後、使用者が第二トリガー操作部22を押す動作を中止することによって、回転部材16が前進する。回転部材16の前進によって回転部材16に取り付けられた塗布具14bも前進するとともに、塗布具14bの先端が、先端配置領域Aに配置される。また、前進によって、ハンドル11と回転部材16との連結が形成される。第1の塗布具の場合と同様に、第2の塗布具として配置された塗布具14bからインク15が供給されることによって、使用者は、描画を行うことができる。
【0101】
(第2の塗布具から第3の塗布具への切替、及び第3の塗布具の使用)
次に、
図17に示すように、第3の塗布具として塗布具14cを使用する場合、使用者は、第2の塗布具への切替の場合と同様に、ハンドル11と回転部材16との連結を解除する。そして、同様に、使用者は、回転部材16を回転させることによって、第3の塗布具として使用される塗布具14cを、ノズル12に対向する位置に移動させる。
【0102】
そして、同様に、使用者が塗布具14cを回転部材16とともに前進させることによって、塗布具14cの先端が、先端配置領域Aに配置されるとともに、ハンドル11と回転部材16との連結が形成される。第1の塗布具の場合及び第2の塗布具の場合と同様に、第3の塗布具として配置された塗布具14cからインク15が供給されることによって、使用者は、描画を行うことができる。
【0103】
(作用効果)
本実施形態では、回転部材16は、把持可能なハンドル11に連結される。また、回転部材16は、周方向に沿って複数の塗布具14a,14b,14cが配置された回転板16Aを回転自在に支持する。回転板16Aの回転によって、先端が先端配置領域Aに配置される塗布具14aを、複数の塗布具14a,14b,14cの中で切替可能である。切り替えられた塗布具14aの先端は、切替前の塗布具14aの先端と同じ先端配置領域Aに配置される。
【0104】
このため、態様1では、塗布具14aを切り替える際、他の色のインクを有する塗布具14aを、切替前の状態と同じ相対位置が保持されるように、目視でハンドル11に取り付ける作業が生じない。すなわち、ハンドル11に1つの筆記用具しか取り付けできない場合に比べ、塗布具14aを安定的に且つ容易に切替できる。結果、圧縮空気の噴射口27Aと塗布具14aの先端との相対的な位置関係が変化し難い。よって、本実施形態に係るエアブラシユニット10によれば、複数の塗布具14a,14b,14cを容易に切り替えることができ、かつ、描画品質を向上できる。
【0105】
また、複数の塗布具14a,14b,14cをハンドル11から取り外すことなく切り替えることができるので、たとえば、インク量が少ない場合に、取り外された塗布具14aに対して行うポンピング動作が不要になる。このため、ポンピング動作に起因する、インクの意図しない流出や混色のリスクを抑制できる。
【0106】
また、本実施形態では、キー溝18Baとキー突起18Aとが嵌合することによって回転部材16とハンドル11とが一体化される。噴霧中の回転部材16の回転がハンドル11によって抑制されるので、インク15を安定的に噴霧できる。
【0107】
また、本実施形態では、操作部が、スペーサー29の回転部材16との接触部と反対側の端部を、径方向に沿って先端配置領域Aから離れる方向に向かって押す。回転部材16が操作部に押されることによって、塗布具14aの先端が先端配置領域Aから離れる位置まで回転部材16がスライドし、キー溝18Baとキー突起18Aとの嵌合が解除される。このため、塗布具14aの切替時、キー溝18Baとキー突起18Aとの嵌合を容易に解除できる。
【0108】
また、本実施形態では、第一状態では、隙間からのインク15の供給が可能である。このため、ボール54Aの周囲からのみインク15が供給される場合と比べ、より大量の、インク15の噴霧に最適な流量を供給できる。
【0109】
また、第二状態では、内部空間と外部とが隔離される、すなわち隙間が閉じるので、インク15は、塗布具14aのボール54Aの先端からのみ供給される。このため、インク供給量を第一状態より少なく調整できる。
【0110】
また、第二状態では、たとえば、塗布具14aをエアブラシユニット10から取り外した後、文字等を書くための筆記具としても使用できる。すなわち、塗布具14aをインク供給部材としてだけでなく、筆記具としても兼用できる。
【0111】
また、本実施形態では、ネジ送りによってアウター56の位置を少しずつ変えることができる。すなわち、貫通孔54Cの開口面積の割合と、先端の開口部56Aの開口面積の割合とを微調整し易い。このため、先端からのインク15の供給量を使用者の要望に応じて制御できる。
【0112】
<その他の実施形態>
本開示は上記の開示された実施の形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本開示を限定するものであると理解すべきではない。本開示は、上記に記載していない様々な実施の形態等を含むとともに、本開示の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0113】
10 エアブラシユニット
11 ハンドル 11A ベース部 11A1 基部
11A2 土台部 12 ノズル 12A 底部
12B 側壁 12F 噴射用開口部 12U 先端用開口部
13 貫通孔
14a,14b,14c 塗布具
15 インク 16 回転部材 16A 回転板
16A1 ガイド溝 16B 貫通孔 17 ガイド面
18 連結部 18A キー突起
18Ba,18Bb,18Bc キー溝
19 嵌合突起 20 支持板 20A 嵌合溝
21 第一トリガー操作部 22 第二トリガー操作部
23 第一開口 24 第二開口 26 本体側凹部
27 噴射部 27A 噴射口 27B 開口部
28 空気供給管 29 スペーサー 29A ガイドスリット
30 スライド部 32 レール部 32A 底部
32B 側壁部 32C レール用凹部 32D 貫通孔
34 可動部 34A 貫通孔 36 支持部
36A 本体板 36A1 貫通孔 36B ガイド突起
36C 回転用突起 36C1 雌ネジ部 38 連結具
40 止めネジ 40A 鍔部 40B 雄ネジ部
41 支持側壁 42 支持前壁 42A 嵌合孔
44 補助突起 50 収容部 50A 開口部
52 継手 52A 雄ネジ部 52B 連結凹部
54 ボールペンチップ 54A ボール 54B ボール保持部
54B1 外壁面 54C 貫通孔 56 アウター
56A 開口部 56B 雌ネジ部 56C 突出部
56D 拡径部
A 先端配置領域