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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123780
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
H02K1/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031452
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】土江 哲広
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 学
(72)【発明者】
【氏名】矢野 卓司
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA08
5H601AA16
5H601DD01
5H601DD11
5H601GA23
5H601GE14
5H601HH05
5H601JJ04
5H601KK15
5H601KK18
(57)【要約】
【課題】モータ(回転電機)におけるモータハウジングとステータコアとの固定構造を改善することで、発生するトルク反力に対して十分な固定力を確保しながらも、低コスト化を図ることができる回転電機を提供する。
【解決手段】モータハウジング(12)と、モータハウジング(12)内に固定されたステータコア(14)と、を備える回転電機(10)であって、ステータコア(14)をモータハウジング(12)にボルト(27)で締結してなるボルト締結部(20)と、モータハウジング(12)の内周面(28b)とステータコア(14)の外周面(28a)とを焼き嵌めしてなる焼き嵌め部(28)と、を備えると共に、モータハウジング(12)における焼き嵌め部(28)の外周側には、冷却媒体が流通する冷却媒体流通路(60)が設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータハウジングと、前記モータハウジング内に固定されたステータコアと、を備える回転電機であって、
前記ステータコアを前記モータハウジングにボルトで締結してなるボルト締結部と、
前記モータハウジングの内周面と前記ステータコアの外周面とを焼き嵌めしてなる焼き嵌め部と、を備えると共に、
前記モータハウジングにおける前記焼き嵌め部の外周側には、冷却媒体が流通する冷却媒体流通路が配設されている
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記ボルト締結部は、前記ステータコアの外周部に設けられて前記軸方向に延びる挿通穴を備え、
前記挿通穴に挿通した前記ボルトで前記ステータコアを前記モータハウジングにおける前記軸方向の端部に固定する構造である
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記ボルト締結部は、前記ステータコアの外周部の周方向に沿って等間隔で複数個が設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記焼き嵌め部及び前記冷却媒体流通路は、前記モータハウジング及び前記ステータコアの周方向において隣り合う前記ボルト締結部の間に配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記冷却媒体流通路は、前記ステータコアの外周部における周方向に複数設けられてそれぞれが前記ステータコアの軸方向の一方の端部から他方の端部まで連通する軸方向流路と、
前記複数の軸方向流路のうち周方向で隣接するもの同士を連通する周方向流路と、を備え、
前記ステータコアに設けた流入部から流入した冷却媒体が前記複数の軸方向流路と前記複数の周方向流路を流通して流出部から流出する
ことを特徴とする請求項3に記載の回転電機。
【請求項6】
前記焼き嵌め部の外周側に配設された前記冷却媒体流通路は、前記軸方向流路である
ことを特徴とする請求項5に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド自動車や電気自動車の動力源として回転電機(モータ)が使用されている。モータは、ロータと、ロータの外周に配置されコイルが巻回されたステータコアと、ステータコアを収容してなるハウジング(モータハウジング)とを備える。
【0003】
上記のようなモータでは、従来、鉄製のステータコアをアルミニウム製のモータハウジングに焼き嵌めによって固定する構造が用いられている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-161861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、鉄製のステータをアルミニウム製のモータハウジングに焼き嵌めによって固定する構造においては、モータの運転時に発生するトルク反力に対して十分な固定力を確保することができる焼き嵌め締め代を設定する必要がある。また、高温状態になると線膨張係数差により焼き嵌め締め代が減少する(緩くなる)ことで、締め代抜けが発生するおそれがある。そのため、高温状態でも十分な固定力を得るためには、焼き嵌め締め代を高めに設定する必要がある。その一方で、低温状態では線膨張係数差により締め代が増加する(きつくなる)ことで、焼き嵌め締め代による応力が増加する。そのため、低温状態の焼き嵌め応力を成立させるため、モータハウジングを構成する材料として、高強度・高強度な材料を採用する必要があり、それによってモータのコスト高につながるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、回転電機(モータ)におけるモータハウジングとステータコアとの固定構造を改善することで、発生するトルク反力に対して十分な固定力を確保しながらも、低コスト化を図ることができる回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る回転電機(10)は、モータハウジング(12)と、モータハウジング(12)内に固定されたステータコア(14)と、を備える回転電機(10)であって、ステータコア(14)をモータハウジング(12)にボルト(27)で締結してなるボルト締結部(20)と、モータハウジング(12)の内周面(28b)とステータコア(14)の外周面(28a)とを焼き嵌めしてなる焼き嵌め部(28)と、を備えると共に、モータハウジング(12)における焼き嵌め部(28)の外周側には、冷却媒体が流通する冷却媒体流通路(60)が配設されていることを特徴とする。
【0008】
本発明にかかる回転電機によれば、ステータコアをモータハウジングにボルトで締結してなるボルト締結部と、モータハウジングの内周面とステータコアの外周面とを焼き嵌めしてなる焼き嵌め部と、を備えると共に、モータハウジングにおける焼き嵌め部の外周側には、冷却媒体が流通する冷却媒体流通路が配設されていることで、モータハウジングへのステータコアの固定構造を焼き嵌めによる固定構造ではなくボルトの締結による固定構造とすることができる。すなわち、焼き嵌め面の機能は、従来構造の回転電機では、ステータコアの固定と回転電機の冷却の両方であったが、本発明の回転電機では、回転電機の冷却のみとなるため、従来構造と比較して焼き嵌め部の締め代を緩和することができる。焼き嵌め部の締め代の緩和により、モータハウジングに用いる材料を低圧鋳造法(LPDC)等で製造される高強度・高コストな材料から、高圧鋳造法(HPDC)等で製造されるより低強度・低コストな材料に変更することが可能となるので、回転電機のコストダウンを達成することができる。したがって、本発明によれば、発生するトルク反力に対して十分な固定力を確保しながらも、回転電機の低コスト化を図ることができる。
【0009】
また、本発明の回転電機では、ボルト締結部(20)は、ステータコア(14)の外周部(14a)に設けられて軸方向に延びる挿通穴(21)を備え、挿通穴(21)に挿通したボルト(27)でステータコア(14)をモータハウジング(12)における軸方向の端部に固定する構造であってよい。
【0010】
この構成によれば、モータハウジングに対してステータコアを強固に固定することが可能となるので、発生するトルク反力に対して十分な固定力を確保することができる。
【0011】
また、本発明の回転電機では、ボルト締結部(20)は、ステータコア(14)の外周部(14a)の周方向に沿って等間隔で複数個が設けられていてよい。
【0012】
この構成によれば、モータハウジングに対してステータコアを強固に固定することが可能となるので、発生するトルク反力に対して十分な固定力を確保することができる。
【0013】
また、本発明の回転電機では、焼き嵌め部(28)及び冷却媒体流通路(60)は、モータハウジング(12)及びステータコア(14)の周方向において隣り合うボルト締結部(20)の間に配置されていてよい。
【0014】
この構成によれば、モータハウジング及びステータコアの周方向において隣り合うボルト締結部の間に焼き嵌め部及び冷却媒体流通路を設けたことで、モータハウジングにステータコアを固定するためのボルト締結部を設けていながらも、焼き嵌め部を介して冷却媒体流通路を流通する冷却媒体で回転電機の効果的な冷却が可能となる。
【0015】
また、本発明の回転電機では、冷却媒体流通路(60)は、ステータコア(14)の外周部(14a)における周方向に複数設けられてそれぞれがステータコア(14)の軸方向の一方の端部から他方の端部まで連通する軸方向流路(61)と、複数の軸方向流路(61)のうち周方向で隣接するもの同士を連通する周方向流路と、を備え、ステータコア(14)に設けた流入部(60a)から流入した冷却媒体が複数の軸方向流路(61)と複数の周方向流路を流通して流出部(60b)から流出するように構成してよい。
【0016】
この構成によれば、ステータコアの流入部から流出部へ冷却媒体流通路を一方向に流通する冷却媒体によって、ステータコアの全体を均等かつ効果的に冷却することが可能となる。したがって、回転電機の運転時の過度の発熱を効果的に抑制することができる。
【0017】
また、本発明の回転電機では、焼き嵌め部(28)の外周側に配設された冷却媒体流通路(60,61)は、軸方向流路(61)であってよい。
【0018】
この構成によれば、冷却媒体流通路の軸方向流路が焼き嵌め部の外周側に隣接して設けられていることで、軸方向流路を流通する冷却媒体で焼き嵌め部の効果的な冷却を行うことが可能となる。したがって、回転電機の運転時の過度の発熱を抑制することができる。
【0019】
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における対応する構成要素の図面参照番号を参考のために示すものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、モータ(回転電機)におけるモータハウジングとステータコアとの固定構造を改善することで、発生するトルク反力に対して十分な固定力を確保しながらも、モータの低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態にかかるモータ(回転電機)を備えた車両用駆動装置の外観構成を示す斜視図である。
図2】車両用駆動装置の一部を分解した分解斜視図である。
図3】モータを示す分解斜視図である。
図4】モータを示す図で、図3のX矢視に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態では、本発明の回転電機として、ハイブリッド自動車や電気自動車のような車両用の駆動ユニット(車両用駆動装置)に採用するモータ(回転電機)について説明する。但し、本発明の構成は、車両用の駆動ユニットに採用するモータに限らず、発電用モータやその他の用途のモータ、または車両用以外の回転電機(発電機を含む)にも適用可能である。なお、以下の説明で前又は後というときは、後述する車両駆動装置1を車両(車体)に搭載した状態での当該車両の前進方向である前側、又は後進方向である後側を示すものとする。また、左、右というときはそれぞれ車両(車体)の前進方向(前側)を向いた状態での車幅方向の左、右を示すものとする。また、上、下というときは車両(車体)の上下方向(鉛直上下方向)を示すものとする。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態にかかるモータ(回転電機)を備えた車両用駆動装置の外観構成を示す斜視図である。また、図2は、車両用駆動装置の一部を分解した分解斜視図である。また、図3及び図4は、モータ(回転電機)を示す図で、図3は分解斜視図、図4図3のX矢視に対応する図である。図1に示すように、車両用駆動装置1は、モータ(回転電機)10と、モータ10と電気的に接続され、モータ10に供給する電力及びモータ10から供給される電力を変換する電力変換装置30と、モータ10の動力を車両の駆動輪(図示せず)に伝達する動力伝達機構50とを一体化してなる装置である。
【0024】
車両用駆動装置1では、モータ10の回転軸11の軸方向を車両の車幅方向に配置し、車幅方向におけるモータ10の右側(一方側)と左側(他方側)それぞれに電力変換装置30と動力伝達機構50を配置している。すなわち、モータ10は、略円筒形状を有し、その回転軸(駆動軸)11が車幅方向に略水平に延びている。回転軸11は、モータ10の回転軸心である。動力伝達機構50は、後述するモータ軸51の軸心がモータ10の回転軸11と同軸となるように、モータ10と車幅方向に並んで配置されている。
【0025】
動力伝達機構50は、互いに平行に配置した複数の回転軸(モータ軸51,カウンタ軸53,ファイナル軸55)とそれらに固定した複数のギヤ(モータギヤ52,カウンタギヤ54,ファイナルギヤ56)とを備えた構造で、モータ10の回転軸11と同軸上に配置したモータ軸(第一回転軸)51及び該モータ軸51周りに回転するモータギヤ52と、モータ軸51と平行に配置されたカウンタ軸(第二回転軸)53及び該カウンタ軸53周りに回転するカウンタギヤ54と、モータ軸51及びカウンタ軸53と平行に配置されたファイナル軸(第三回転軸)55と該ファイナル軸55周りに回転するファイナルギヤ56とを備えている。モータ10から伝達された動力の回転は、モータギヤ52からカウンタギヤ54に伝達され、さらにカウンタギヤ54からファイナルギヤ56に伝達されて、ファイナルギヤ56から車両の駆動軸に伝達される。動力伝達機構50が備える回転軸及びギヤなどの構成要素は、動力伝達機構ケース58内に配置されている。
【0026】
電力変換装置30は、電力変換装置ケース38を有する。電力変換装置ケース38は、その内側面38dがモータハウジング12の右端面と対向するようにモータハウジング12に固定されている。電力変換装置ケース38内には、例えばインバータなどの装置が格納されている。
【0027】
図3及び図4に示すように、モータ10は、モータハウジング12と、ステータコア14と、ロータ16と、回転軸11とを備えている。モータハウジング12は、ステータコア14およびロータ16を収容するとともに回転軸11を回転可能に支持している。なお、ステータコア14、ロータ16および回転軸11は、それぞれ軸線Cを共通軸線として配置されている。以下、軸線Cの延びる方向を軸方向と称し、軸線Cに直交する方向を径方向と称し、軸線C回りに周回する方向を周方向と称して説明する。
【0028】
ステータコア14は、ロータ16を径方向の外側から取り囲む筒状に形成されている。ステータコア14は、電磁鋼板に対して打ち抜き加工等を施して形成された環状のプレートが軸方向に積層されて構成されている。なお、ステータコア14は、いわゆる圧粉コアであっても構わない。
【0029】
ステータコア14は、外周を囲む外周部(バックヨーク部)14aと、外周部14aにおける周方向の一部を径方向の外側に突出させてなる突出部14bと、外周部14aの内径側に配列した複数のティース14cを有している。なお、ティース14cは、図4においてそれらの一部のみを点線で図示している。外周部14aは、軸線Cと同軸上に配置された筒状に形成されている。複数のティース14cは、周方向に所定間隔をおいて形成され、外周部14aの内周面から径方向の内側に突出している。周方向において隣り合うティース14c間に、スロット14dが所定間隔をおいて溝状に形成されている。すなわち、複数のスロット14dは、複数のティース14cに対して周方向へ交互に形成された状態でステータコア14に備えられている。複数のスロット14dにコイル(図示せず)が配置され、コイルが複数のティース14cに取り付けられている。この状態において、ステータコア14にコイルが装着されている。ステータコア14は、コイルに電流が流れることにより磁界を発生する。また、ステータコア14の内部にロータ16が設けられている。
【0030】
モータハウジング12は、軸方向を長手方向とする略円筒形状で、軸方向にける電力変換装置30側の端部が塞がれた底部12bとなっており、有底の容器状に形成されている。内部には、略円筒状の空洞からなる収容部13を有しており、収容部13内には、後述するステータコア14の突出部14bを避けるための凹部13bが周方向において等間隔で複数個所(図では4か所)に設けられている。凹部13bは、略円筒状の収容部13の内周面28bから径方向の外側に窪んでなる窪みとして形成されている。凹部13bは、軸方向に沿ってモータハウジング12の一方の端部(電力変換装置30側の端部)から他方の端部(動力伝達機構50側の端部)まで延びている。
【0031】
また、モータハウジング12とステータコア14には、それらの周方向において等間隔で複数個所(図では4か所)にボルト締結部20が設けられている。ボルト締結部20は、ステータコア14の突出部14bに設けた軸方向に延びる貫通孔からなる挿通穴21と、モータハウジング12の軸方向の端部である底部12bに設けた台座状の座部23と、座部23に形成した締結穴25とを備え、挿通穴21に挿通したボルト27を締結穴25に締結することでステータコア14をモータハウジング12に固定する構造である。座部23及び締結穴25は、モータハウジング12の底部12bにおける凹部13bに面した部分に設けられている。
【0032】
また、ステータコア14の外周部14aにおける周方向で隣り合う突出部14b(ボルト締結部20)の間の部分の表面(外周面)28aは、対向するモータハウジング12の内周面28bに対してステータコア14を焼き嵌めする焼き嵌め部28になっている。そして、この焼き嵌め部28の締め代は、後述する冷却水流通路60を流通する冷却水によるステータコア14の冷却を行うために必要な締め代に設定されている。この締め代は、従来のステータコアをモータハウジングに焼き嵌めのみで固定する場合の締め代よりも緩い締め代である。なお、焼き嵌め部28を構成するモータハウジング12の内周面28bとステータコア14の外周面28aは、モータハウジング12とステータコア14の周方向の一部のみに設けられており、また、周方向において等間隔で複数個所(図では4か所)に分かれて設けられている。
【0033】
また、モータハウジング12には、モータ冷却用の冷却水(冷却媒体)が流通する冷却水流通路(冷却媒体流通路)60が形成されている。冷却水流通路60は、モータハウジング12の焼き嵌め部28の外周側に設けられて軸方向に延びる軸方向流路61と、モータハウジング12の軸方向の端部又はその近傍で周方向に延びる周方向流路(図示せず)とを備えている。軸方向流路61は焼き嵌め部28の外周側における周方向の複数個所に設けられており、周方向流路は、周方向で隣接する軸方向流路61の軸方向の端部同士を連通するように複数が設けられている。これにより、複数の軸方向流路61と複数の周方向流路とが互いに一本の連通路として連通しており、流入部60a(図1参照)から流入した冷却水が冷却水流通路60の各軸方向流路61と周方向流路を順に通過して流出部60b(図1参照)から流出するようになっている。
【0034】
ここで、上記構成のモータ10の組み立てにおいて、モータハウジング12にステータコア14を固定する手順を説明する。モータハウジング12にステータコア14を固定するには、図3に示すように、モータハウジング12の軸方向に沿って収容部13内にステータコア14を収容する。その際、互いに対向するモータハウジング12の内周面28bとステータコア14の外周面28aとを焼き嵌めする。また、ステータコア14をモータハウジング12の収容部13に収容した状態で、ステータコア14の挿通穴21に挿通したボルト27をモータハウジング12の締結穴25に締結することで、当該ボルト27の締結によってステータコア14をモータハウジング12に固定する。
【0035】
以上説明したように、本実施形態のモータ10によれば、ステータコア14をモータハウジング12にボルト27で締結してなるボルト締結部20と、モータハウジング12の内周面28bとステータコア14の外周面28aとを焼き嵌めしてなる焼き嵌め部28と、を備えると共に、モータハウジング12における焼き嵌め部28の外周側には、冷却水(冷却媒体)が流通する冷却水流通路60(冷却媒体流通路)が設けられていることで、モータハウジング12へのステータコア14の固定構造を焼き嵌めによる固定構造ではなくボルト27の締結による固定構造とすることができる。すなわち、従来構造のモータの焼き嵌め部の機能は、ステータコアの固定とモータの冷却の両方であり、特に焼き嵌めのみによってステータコアを固定していたため、モータが発生する反力に対して十分な固定力を発生できる焼き嵌め締め代が必要であったが、本実施形態のモータ10では、焼き嵌め部28の機能は、モータ10(ステータコア14)の冷却のみとなる。そのため、従来構造のモータと比較して焼き嵌め部28の締め代を緩和することができる。焼き嵌め部28の締め代の緩和により、ステータコア14に用いる材料を、低圧鋳造法(LPDC)で製造される高強度・高コストな材料から、高圧鋳造法(HPDC)で製造されるより低強度・低コストな材料に変更することが可能となるので、モータ10及び車両用駆動装置1のコストダウンを達成することができる。したがって、本実施形態のモータ10によれば、発生するトルク反力に対して十分な固定力を確保しながらも、モータ10の低コスト化を図ることができる。
【0036】
また、本実施形態のモータ10では、ボルト締結部20は、ステータコア14の外周部14aに設けられて軸方向に延びる挿通穴21を備え、挿通穴21に挿通したボルト27でステータコア14をモータハウジング12におけるモータ10の軸方向の端部に固定する構造である。そして、このボルト締結部20は、ステータコア14の外周部14aの周方向に沿って等間隔で複数個が設けられている。
【0037】
この構成によれば、モータハウジング12に対してステータコア14を強固に固定することが可能となるので、モータ10の運転時に発生するトルク反力に対して十分な固定力を確保することができる。
【0038】
また、本実施形態のモータ10では、焼き嵌め部28及び冷却水流通路60は、モータハウジング12及びステータコア14の周方向において隣り合うボルト締結部20の間に配置されている。
【0039】
この構成によれば、モータハウジング12及びステータコア14の周方向において隣り合うボルト締結部20の間に焼き嵌め部28及び冷却水流通路60を設けたことで、モータハウジング12にステータコア14をボルト27の締結で固定するためのボルト締結部20を設けていながらも、焼き嵌め部28を介して、冷却水流通路60を流通する冷却水でモータの効果的な冷却が可能となる。
【0040】
また、本実施形態のモータ10では、冷却水流通路60は、ステータコア14の軸方向の一方の端部から他方の端部まで連通する軸方向流路61がステータコア14の外周部14aにおける周方向に複数設けられている、また、複数の軸方向流路61のうち周方向で隣接するもの同士を連通する周方向流路を備えている。これらによって、モータハウジング12の流入部60aから流入した冷却水が複数の軸方向流路61と複数の周方向流路を流通して流出部60bから流出するようになっている。
【0041】
この構成によれば、モータハウジング12の流入部60aから流出部60bへ冷却水流通路60を一方向に流通する冷却水によって、ステータコア14の全体を均等かつ効果的に冷却することが可能となる。したがって、モータ10の運転時の過度の発熱を効果的に抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態のモータ10では、軸方向流路61は焼き嵌め部28の外周側に隣接して設けられている。
【0043】
この構成によれば、冷却水流通路60の軸方向流路61は焼き嵌め部28の外周側に隣接して設けられていることで、軸方向流路61を流通する冷却水で焼き嵌め部28の効果的な冷却を行うことが可能となる。したがって、モータ10の運転時の過度の発熱を抑制することができる。
【0044】
なお、従来構造のモータでは、一般的に、電気自動車用のモータは水冷構造が主流のため、モータハウジングとステーコアやの固定は焼き嵌めによる固定が多く、その一方で、ハイブリッド自動車用のモータは油冷構造が主流のため、モータハウジングとステーコアの固定はボルト締結による固定が多い。これに対して、本発明(本実施形態)のモータ10は、冷却構造は水冷構造でありながら、焼き嵌め部28における焼き嵌めによる固定とボルト締結部20におけるボルト27の締結による固定とを組み合わせることで、焼き嵌めとボルト締結の両方の利点を活かした固定構造としている。これにより、モータの効果的な冷却と十分な固定力の確保によって、冷却性能の向上と耐久性の向上の両立を図ったものである。
【0045】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 車両用駆動装置
10 モータ(回転電機)
11 回転軸
12 モータハウジング
12b 底部
13 収容部
13b 凹部
14 ステータコア
14a 外周部
14b 突出部
14c ティース
16 ロータ
20 ボルト締結部
21 挿通穴
23 座部
25 締結穴
27 ボルト
28 焼き嵌め部
28a (ステータコアの)外周面
28b (モータハウジングの)内周面
30 電力変換装置
38 電力変換装置ケース
38d 内側面
50 動力伝達機構
51 モータ軸
52 モータギヤ
53 カウンタ軸
54 カウンタギヤ
55 ファイナル軸
56 ファイナルギヤ
58 動力伝達機構ケース
60 冷却水流通路(冷却媒体流通路)
60a 流入部
60b 流出部
61 軸方向流路
C 軸線
図1
図2
図3
図4