(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123781
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 5/04 20060101AFI20240905BHJP
H02K 1/18 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H02K5/04
H02K1/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031453
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】土江 哲広
【テーマコード(参考)】
5H601
5H605
【Fターム(参考)】
5H601AA08
5H601DD01
5H601DD11
5H601GA23
5H601JJ04
5H601KK18
5H605CC01
5H605CC10
5H605GG04
5H605GG06
(57)【要約】
【課題】モータ(回転電機)におけるモータハウジングの形状を改善することで、モータハウジングの応力集中を緩和して、強度及び耐久性を効果的に高めることができる回転電機を提供することを目的とする。
【解決手段】モータハウジング(12)の収容部(12a)に収容したステータコア(14)のボルト締結部(20)を配置する凹部(13)を備え、凹部(13)における径方向の外側の内面である内側面(13a)は、軸方向から見て、回転軸(11)の軸心(C)を中心とする円弧面状に形成されていることで、当該内側面(13a)の湾曲度を緩やかにすることができる。したがって、モータハウジング(12)における凹部(13)及びその周辺の応力集中を緩和することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータのハウジングと、前記モータハウジングの収容部内に固定されるステータコアと、を備える回転電機であって、
前記ステータコアを前記モータハウジングにボルトで締結してなるボルト締結部を備え、
前記ボルト締結部は、前記ステータコアの外周部に形成されて回転軸の軸方向に延びるボルト挿通穴を備え、前記ステータコアの前記外周部における前記ボルト挿通穴の部分が径方向の外側に突出してなる突出部になっており、
前記モータハウジングは、前記収容部に収容した前記ステータコアの前記突出部を配置する凹部を備え、
前記凹部は、前記収容部の内周面を径方向の外側へ窪ませてなる形状であり、
前記凹部における少なくとも一部の内面は、軸方向から見て、前記回転軸の軸心を中心とする円弧面状に形成されている
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記円弧面状の内面は、前記凹部における径方向の外側の内面を形成する内側面である
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記凹部は、前記モータハウジングの前記軸方向の一方の端部である底部まで延伸しており、
前記ボルト締結部は、
前記ステータコアの前記挿通穴に挿通した前記ボルトを前記底部に設けた締結部に締結する構造である
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項4】
前記凹部における周方向の両側の内面それぞれを形成する一対の横側面は、軸方向から見て、前記凹部における径方向の外側から内側に向かって次第に周方向の間隔が広がっている
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項5】
前記収容部の内周面を前記ステータコアの外周面に焼き嵌めしてなる焼き嵌め部を備え、
前記焼き嵌め部は、前記内周面における前記凹部以外の部分に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項6】
前記焼き嵌め部は、周方向において前記凹部に隣接する位置に設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載の回転電機。
【請求項7】
前記ボルト締結部の前記突出部及び前記モータハウジングの前記凹部は、前記ステータコアの外周部及び前記モータハウジングの周方向に沿って等間隔で複数が設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド自動車や電気自動車の動力源としてモータ(回転電機)が使用されている。モータは、ロータと、ロータの外周に配置されコイルが巻回されたステータコアと、ステータコアを収容してなるハウジング(モータハウジング)とを備える。
【0003】
ところで、上記のようなモータにおけるステータコアの固定構造として、従来、鉄製のステータコアをアルミニウム製のモータハウジングに焼き嵌めによって固定する構造が用いられている(例えば特許文献1)。また、特許文献2には、ステータホルダをモータハウジングにボルトの締結で固定する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-161861号公報
【特許文献2】特許第3666727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ステータホルダやステータコアなどをモータハウジングの収容部内に収容してボルトの締結で固定する構造では、モータハウジングの収容部内にボルト締結部を避けるための凹部などを設けることが必要な場合がある。その場合、当該凹部の内面の湾曲度が強いと、その部分に応力集中が生じ易くなり、それによって、モータハウジングの耐久性を十分に高めることができないおそれがある。特に、モータハウジングの温度が低下した場合に温度変化に伴う変形(熱収縮による変形)が生じ易くなるため、その場合にも応力集中を緩和できるように、凹部を含むモータハウジングの形状を改善することが必要となる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、モータ(回転電機)におけるモータハウジングの形状を改善することで、モータハウジングの応力集中を緩和して、強度及び耐久性を効果的に高めることができる回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る回転電機(10)は、モータハウジング(12)と、モータハウジング(12)の収容部(12a)内に固定されるステータコア(14)と、を備える回転電機(10)であって、ステータコア(14)をモータハウジング(12)にボルト(27)で締結してなるボルト締結部(20)を備え、ボルト締結部(20)は、ステータコア(14)の外周部(14a)に形成されて回転軸(11)の軸方向に延びるボルト挿通穴(21)を備え、ステータコア(14)の外周部(14a)におけるボルト挿通穴(21)の部分が径方向の外側に突出してなる突出部(14b)になっており、モータハウジング(12)は、収容部(12a)に収容したステータコア(14)の突出部(14b)を配置する凹部(13)を備え、凹部(13)は、収容部(12a)の内周面(28b)を径方向の外側へ窪ませてなる形状であり、凹部(13)における少なくとも一部の内面(13a)は、軸方向から見て、回転軸(11)の軸心(C)を中心とする円弧面状に形成されていることを特徴とする。また、この円弧面状の内面(13a)は、凹部(13)における径方向の外側の内面を形成する内側面(13a)であってよい。
【0008】
本発明にかかる回転電機によれば、モータハウジングの収容部に収容したステータコアのボルト締結部を配置する凹部を備え、凹部における少なくとも一部の内面は、軸方向から見て、回転軸の軸心を中心とする円弧面状に形成されていることで、当該内面の湾曲度を緩やかにすることができる。したがって、モータハウジングにおける凹部及びその周辺の応力集中を緩和することができる。すなわち、仮に、凹部における少なくとも一部の内面が凹部内のボルト締結穴の軸心を中心とする円弧面状に形成されていると、当該円弧面状の湾曲度が強くなることで、凹部及びその周辺の応力集中を十分に緩和することができないおそれがあるところ、本発明によれば、凹部の内面の湾曲度を収容部の他の部分の内面と同程度に緩やかできることで、モータハウジングにステータコアのボルト締結部を配置するための凹部を設けている場合であっても、凹部及びその周辺の応力集中を緩和することができるので、特に、モータハウジングの温度が低下した場合に温度変化に伴う変形(熱収縮による変形)が生じる際の応力集中を抑制することができる。したがって、モータ(回転電機)の強度や耐久性を効果的に高めることができる。
【0009】
また、本発明の回転電機では、凹部(13)は、モータハウジング(12)の軸方向の一方の端部である底部(12b)まで延伸しており、ボルト締結部(20)は、ステータコア(14)の挿通穴(21)に挿通したボルト(27)を当該底部(12b)に設けた締結部(25)に締結する構造であってよい。
【0010】
また、本発明の回転電機では、凹部(13)における周方向の両側の内面それぞれを形成する一対の横側面(13b,13c)は、軸方向から見て、凹部(13)における径方向の外側から内側に向かって次第に周方向の間隔が広がっていてもよい。
【0011】
この構成によれば、凹部における周方向の両側それぞれの内面を形成する一対の横側面は、軸方向から見て、凹部における径方向の外側から内側に向かって次第に周方向の間隔が広がっていることで、凹部内に配置するボルト締結部と横側面との隙間を広くすることができる。したがって、凹部における底部から横側面への立ち上がり部分(横側面と底部が交わる部分)を大きくすることができるので、当該立ち上がり部分を緩やかに湾曲させることができる。これにより、凹部及びその周辺への応力集中をより効果的に緩和することができる。
【0012】
また、本発明の回転電機では、前記収容部(12a)の内周面(28b)を前記ステータコア(14)の外周面(28a)に焼き嵌めしてなる焼き嵌め部(28)を備え、前記焼き嵌め部(28)は、前記内周面(28b)における前記凹部(13)以外の部分に設けられていてもよい。またこの場合、前記焼き嵌め部(28)は、周方向において前記凹部(13)に隣接する位置に設けられていてもよい。
【0013】
モータハウジングの収容部の内周面をステータコアの外周面に焼き嵌めしてなる焼き嵌め部を備えている場合、当該焼き嵌め部においてモータハウジングの内径側にステータコアが接している。そのため、モータハウジング及びステータコアが低温になった際に、モータハウジングの温度変化(温度低下)に伴う変形(熱収縮による変形)がステータコアによって妨げられ、当該変形の影響による応力がモータハウジングの凹部に集中するおそれがある。これに対して、本発明の上記構成によれば、モータハウジングの凹部の内面の湾曲度を緩やかにしたことで、焼き嵌め部の影響で凹部に集中する応力を効果的に緩和することが可能となる。したがって、モータハウジングの収容部の内周面をステータコアの外周面に焼き嵌めしてなる焼き嵌め部を備えている場合であっても、モータハウジングの凹部に生じる応力集中の影響を効果的に緩和することが可能となる。
【0014】
また、本発明の回転電機では、ボルト締結部(20)の突出部(14b)及びモータハウジング(12)の凹部(13)は、ステータコア(14)の外周部(14a)及びモータハウジング(12)の周方向に沿って等間隔で複数が設けられていてよい。
【0015】
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における対応する構成要素の図面参照番号を参考のために示すものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、モータハウジングの形状を改善することで、モータハウジングの応力集中を緩和して、モータ(回転電機)の強度及び耐久性を効果的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるモータ(回転電機)を備えた車両用駆動装置の外観構成を示す斜視図である。
【
図2】車両用駆動装置の一部を分解した分解斜視図である。
【
図4】モータを示す図で、
図3のX矢視に対応する図である。
【
図5】モータハウジングの凹部の形状を説明するための図で、凹部及びその周辺の断面図(軸方向から見た断面図)である。
【
図6】モータハウジングの凹部の形状を説明するための図で、凹部及びその周辺を収容部の内側から見た斜視図(一部断面図)である。
【
図7】従来構造のモータハウジングの凹部の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態では、本発明の回転電機として、ハイブリッド自動車や電気自動車のような車両用の駆動ユニット(車両用駆動装置)に採用するモータ(回転電機)について説明する。但し、本発明の構成は、車両用の駆動ユニットに採用するモータに限らず、発電用モータやその他の用途のモータ、または車両用以外の回転電機(発電機を含む)にも適用可能である。なお、以下の説明で前又は後というときは、後述する車両用駆動装置1を車両(車体)に搭載した状態での当該車両の前進方向である前側、又は後進方向である後側を示すものとする。また、左、右というときはそれぞれ車両(車体)の前進方向(前側)を向いた状態での車幅方向の左、右を示すものとする。また、上、下というときは車両(車体)の上下方向(鉛直上下方向)を示すものとする。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態にかかるモータ(回転電機)を備えた車両用駆動装置の外観構成を示す斜視図である。また、
図2は、車両用駆動装置の一部を分解した分解斜視図である。また、
図3及び
図4は、モータ(回転電機)を示す図で、
図3は分解斜視図、
図4は
図3のX矢視に対応する図である。
図1に示すように、車両用駆動装置1は、モータ(回転電機)10と、モータ10と電気的に接続され、モータ10に供給する電力及びモータ10から供給される電力を変換する電力変換装置30と、モータ10の動力を車両の駆動輪(図示せず)に伝達する動力伝達機構50とを一体化してなる装置である。
【0020】
車両用駆動装置1では、モータ10の回転軸11の軸方向を車両の車幅方向に配置し、車幅方向におけるモータ10の右側(一方側)と左側(他方側)それぞれに電力変換装置30と動力伝達機構50を配置している。すなわち、モータ10は、略円筒形状を有し、その回転軸(駆動軸)11が車幅方向に略水平に延びている。回転軸11は、モータ10の回転軸心である。動力伝達機構50は、後述するモータ軸51の軸心がモータ10の回転軸11と同軸となるように、モータ10と車幅方向に並んで配置されている。
【0021】
動力伝達機構50は、互いに平行に配置した複数の回転軸(モータ軸51,カウンタ軸53,ファイナル軸55)とそれらに固定した複数のギヤ(モータギヤ52,カウンタギヤ54,ファイナルギヤ56)とを備えた構造で、モータ10の回転軸11と同軸上に配置したモータ軸(第一回転軸)51及び該モータ軸51周りに回転するモータギヤ52と、モータ軸51と平行に配置されたカウンタ軸(第二回転軸)53及び該カウンタ軸53周りに回転するカウンタギヤ54と、モータ軸51及びカウンタ軸53と平行に配置されたファイナル軸(第三回転軸)55と該ファイナル軸55周りに回転するファイナルギヤ56とを備えている。モータ10から伝達された動力の回転は、モータギヤ52からカウンタギヤ54に伝達され、さらにカウンタギヤ54からファイナルギヤ56に伝達されて、ファイナルギヤ56から車両の駆動軸に伝達される。動力伝達機構50が備える回転軸及びギヤなどの構成要素は、動力伝達機構ケース58内に配置されている。
【0022】
電力変換装置30は、電力変換装置ケース38を有する。電力変換装置ケース38は、その内側面38dがモータハウジング12の右端面と対向するようにモータハウジング12に固定されている。電力変換装置ケース38内には、例えばインバータなどの装置が格納されている。
【0023】
図3及び
図4に示すように、モータ10は、モータハウジング12と、ステータコア14と、ロータ16と、回転軸11とを備えている。モータハウジング12は、ステータコア14を収容するとともにロータ16及び回転軸11を回転可能に支持している。なお、ステータコア14、ロータ16および回転軸11は、それぞれ軸線C(
図3参照)を共通軸線として配置されている。以下、軸線Cの延びる方向を軸方向と称し、軸線Cに直交する方向を径方向と称し、軸線C回りに周回する方向を周方向と称して説明する。
【0024】
ステータコア14は、ロータ16を径方向の外側から取り囲む筒状に形成されている。ステータコア14は、電磁鋼板に対して打ち抜き加工等を施して形成された環状のプレートが軸方向に積層されて構成されている。なお、ステータコア14は、いわゆる圧粉コアであっても構わない。
【0025】
ステータコア14は、外周を囲む外周部(バックヨーク部)14aと、外周部14aにおける周方向の一部を径方向の外側に突出させてなる突出部14bと、外周部14aの内径側に配列した複数のティース14cを有している。なお、ティース14cは、
図3においてそれらの一部のみを点線で図示している。外周部14aは、軸線Cと同軸上に配置された筒状に形成されている。複数のティース14cは、周方向に所定間隔をおいて形成され、外周部14aの内周面から径方向の内側に突出している。周方向において隣り合うティース14c間に、スロット14dが所定間隔をおいて溝状に形成されている。すなわち、複数のスロット14dは、複数のティース14cに対して周方向へ交互に形成された状態でステータコア14に備えられている。複数のスロット14dにコイル(図示せず)が配置され、コイルが複数のティース14cに取り付けられている。この状態において、ステータコア14にコイルが装着されている。ステータコア14は、コイルに電流が流れることにより磁界を発生する。また、ステータコア14の内部にロータ16が設けられている。
【0026】
モータハウジング12は、軸方向を長手方向とする略円筒形状で、軸方向にける電力変換装置30側の端部が塞がれた底部12bとなっており、有底の容器状に形成されている。内部には、略円筒状の空洞からなる収容部12aを有しており、収容部12a内には、後述するステータコア14のボルト締結部20を避けるための凹部13が周方向において等間隔で複数個所(図では4か所)に設けられている。凹部13は、略円筒状の収容部12aの内周面28bから径方向の外側に窪んでなる窪みとして形成されている。凹部13は、軸方向に沿ってモータハウジング12の一方の端部(電力変換装置30側の端部)から他方の端部(動力伝達機構50側の端部)まで延びている。
【0027】
また、モータハウジング12とステータコア14には、それらの周方向において等間隔で複数個所(図では4か所)にボルト締結部20が設けられている。ボルト締結部20は、ステータコア14の外周部14aに設けた軸方向に延びる貫通孔からなる挿通穴21と、モータハウジング12の軸方向の端部である底部12bに設けた台座状の座部23と、座部23に形成した締結穴25とを備え、挿通穴21に挿通したボルト27を締結穴25に締結することでステータコア14をモータハウジング12に固定する構造である。座部23及び締結穴25は、モータハウジング12の底部12bにおける凹部13に面した部分に設けられている。ステータコア14の外周部14aは、軸方向から見て、ボルト締結部20の部分が他の部分よりも径方向の外側に突出した形状の突出部14bとなっている。
【0028】
また、モータハウジング12の内周面28bにおける周方向で隣り合う凹部13の間の部分は、対向するステータコア14の外周面28aに対してステータコア14を焼き嵌めする焼き嵌め部28になっている。そして、この焼き嵌め部28の締め代は、後述する冷却水流通路60を流通する冷却水によるステータコア14の冷却を行うために必要な締め代に設定されている。この締め代は、従来のステータコアをモータハウジングに焼き嵌めのみで固定する場合の締め代よりも緩い締め代である。なお、焼き嵌め部28を構成するモータハウジング12の内周面28bとステータコア14の外周面28aは、モータハウジング12とステータコア14の周方向の一部のみに設けられており、また、周方向において等間隔で複数個所(図では4か所)に分かれて設けられている。
【0029】
また、モータハウジング12には、モータ冷却用の冷却水(冷却媒体)が流通する冷却水流通路(冷却媒体流通路)60が形成されている。冷却水流通路60は、モータハウジング12の焼き嵌め部28の外周側に設けられて軸方向に延びる軸方向流路61と、モータハウジング12の軸方向の端部又はその近傍で周方向に延びる周方向流路(図示せず)とを備えている。軸方向流路61は焼き嵌め部28の外周側における周方向の複数個所に設けられており、周方向流路62は、周方向で隣接する軸方向流路61の軸方向の端部同士を連通するように複数が設けられている。これにより、複数の軸方向流路61と複数の周方向流路とが互いに一本の連通路として連通しており、流入部60a(
図1参照)から流入した冷却水が冷却水流通路60の各軸方向流路61と周方向流路を順に通過することで、モータハウジング12における収容部12aの周囲の全体(全周)を順に流れて流出部60b(
図1参照)から流出するようになっている。
【0030】
ここで、上記構成のモータ10の組み立てにおいて、モータハウジング12にステータコア14を固定する手順を説明する。モータハウジング12にステータコア14を固定するには、モータハウジング12の軸方向に沿って収容部12a内にステータコア14を収容する。その際、互いに対向するモータハウジング12の内周面28bとステータコア14の外周面28aとを焼き嵌めする。また、ステータコア14をモータハウジング12の収容部12aに収容した状態で、ステータコア14の挿通穴21に挿通したボルト27をモータハウジング12の締結穴25に締結することで、当該ボルト27の締結によってステータコア14をモータハウジング12に固定する。
【0031】
次に、モータハウジング12の凹部13の形状について詳細に説明する。
図5及び
図6は、凹部の形状を説明するための図で、
図5は、モータハウジングの凹部及びその周辺の断面図(軸方向から見た断面図)であり、
図6は、凹部及びその周辺を収容部の内側から見た斜視図(一部断面図)である。なお、
図5及び
図6の断面は、モータハウジング12における軸方向の途中位置での断面を示しているため、当該断面の形状は、
図4に示すモータハウジング12の端面の形状とは異なる形状となっている。
【0032】
モータハウジング12の凹部13は、略円筒形状に形成された収容部12aの内周面28bを軸方向から見て径方向の外側へ向けて断面略コ字型に窪ませてなる部分である。この凹部13は、モータハウジング12の軸方向の一方の端部(
図4に示す手前側の端部)から底部12bに設けた座部23(凹部13の内底部)の位置まで軸方向に延伸している。そして、この凹部13は、軸方向から見て、径方向の外側の内面を構成する内側面13aと、周方向の両側それぞれの内面を構成する一対の横側面13b,13cとを備えている。そして、本実施形態の凹部13では、内側面13aは、軸方向から見たその面形状が、モータハウジング12の軸線(軸心)Cを中心とする半径R1の円弧面状に形成されている。さらに、内側面13aを形成しているモータハウジング12の壁部12cの外側面12dは、軸方向から見たその面形状が、モータハウジング12の軸心Cを中心とする半径R2(>R1)の円弧面状に形成されている。
【0033】
このように、本実施形態では、モータハウジング12の収容部12aに収容したステータコア14のボルト締結部20を配置する凹部13を備え、凹部13における径方向の外側の内面である内側面13aは、軸方向から見て、回転軸11の軸心Cを中心とする円弧面状に形成されていることで、当該内側面13aの湾曲度を緩やかにすることができる。すなわち、内側面13aの湾曲度を円筒状の収容部12aの内周面28bと同程度の湾曲度に抑えることが可能となる。これにより、モータハウジング12における凹部13及びその周辺への応力集中を緩和することができる。
【0034】
ここで、仮に、
図7に示す従来構造のモータハウジング112のように、凹部113の内側面113aが凹部113内のボルト締結穴125の軸線(軸心)C´を中心とする(半径R3の)円弧面状に形成されていると、当該円弧面状の内側面113aの湾曲度が強くなることで、凹部113及びその周辺の応力集中を十分に緩和することができないおそれがある。これに対して、本実施形態のモータハウジング12では、凹部13の内側面13aの湾曲度を緩やかにしていることで、モータハウジング12にステータコア14のボルト締結部20(突出部14b)を配置するための凹部13を設けている場合であっても、当該凹部13及びその周辺の応力集中を緩和することができるので、特に低温時におけるモータハウジング12の応力集中による劣化を効果的に抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態では、凹部13における一対の横側面13b,13cは、軸方向から見て、凹部13における径方向の外側から内側に向かって次第に径方向の間隔が広がっていることで、一対の横側面13b,13cが略「ハ」の字形状になっている。
【0036】
このように、本実施形態では、凹部13における周方向の両側それぞれの内面を形成する一対の横側面13b,13cは、軸方向から見て、凹部13における径方向の外側から内側に向かって次第に周方向の間隔が広がっていることで、凹部13内に配置するボルト締結部20(突出部14b)と横側面13b,13cとの隙間(
図5のS部分)を広くすることができる。したがって、凹部13における底部23から横側面13b,13cへの立ち上がり部分P(底部23と横側面13b,13cが交わる部分)を大きくすることができるので、当該立ち上がり部分Pを緩やかに湾曲させることができる。これによっても、凹部13及びその周辺への応力集中をより効果的に緩和することができる。
【0037】
また、本実施形態では、モータハウジング12の収容部12aの内周面28bをステータコア14の外周面28aに焼き嵌めしてなる焼き嵌め部28を備え、当該焼き嵌め部28は、収容部12の内周面28bにおける凹部13以外の部分に設けられている。また、焼き嵌め部28は、内周面28bの周方向において凹部13に隣接する位置に設けられている。
【0038】
このように、本実施形態では、モータハウジング12の収容部12aの内周面28bをステータコア14の外周面28aに焼き嵌めしてなる焼き嵌め部28を備えていることで、焼き嵌め部28においてモータハウジング12の内径側にステータコア14が接している。そのため、モータハウジング12及びステータコア14が低温になった際に、モータハウジング12の温度変化(温度低下)に伴う変形(熱収縮による変形)がステータコア14によって妨げられ、当該変形の影響による応力がモータハウジング12の凹部13に集中するおそれがある。これに対して、本実施形態の上記構成によれば、モータハウジング12の凹部13の内側面13aの湾曲度を緩やかにしたことで、焼き嵌め部28の影響で凹部13に集中する応力を効果的に緩和することが可能となる。したがって、アルミニウム製のモータハウジング12の収容部12aの内周面28bを鉄製のステータコア14の外周面28aに焼き嵌めしてなる焼き嵌め部28を備えている場合であっても、モータハウジング12の凹部13に生じる応力集中の影響を効果的に緩和することが可能となる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態のモータ10によれば、モータハウジング12の凹部13の形状を改善したことで、モータハウジング12における凹部13及びその周辺の応力集中を緩和することができるので、特に低温時の収縮でモータハウジング12に変形(熱収縮による変形)が生じる際の応力集中を抑制することができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変更が可能である。
【0041】
例えば、上記実施形態では、モータハウジング12の凹部13とステータコア14のボルト締結部20の組は、周方向で等間隔に4組が設けられている場合を示したが、本発明の回転電機が備えるモータハウジングの凹部とステータコアのボルト締結部の組の数や配置はこれには限らず、他の数や配置であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 車両用駆動装置
10 モータ(回転電機)
11 回転軸
12 モータハウジング
12a 収容部
12b 底部
12c 壁部
12d 外側面
13 凹部
13a 内側面(円弧面状の内面)
13b,13c (一対の)横側面
14 ステータコア
14a 外周部
14b 突出部
14c ティース
16 ロータ
20 ボルト締結部
21 挿通穴
23 座部
25 締結穴(締結部)
27 ボルト
28 焼き嵌め部
28a 外周面
28b 内周面
30 電力変換装置
38 電力変換装置ケース
38d 内側面
50 動力伝達機構
51 モータ軸
52 モータギヤ
53 カウンタ軸
54 カウンタギヤ
55 ファイナル軸
56 ファイナルギヤ
58 動力伝達機構ケース
60 冷却水流通路
60a 流入部
60b 流出部
61 軸方向流路
C 軸線(軸心)