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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123782
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】回転電機のステータコア
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20240905BHJP
   H02K 1/20 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H02K1/18 B
H02K1/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031454
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】戸高 弘貴
(72)【発明者】
【氏名】笠原 麗生
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA08
5H601AA16
5H601BB20
5H601CC01
5H601CC11
5H601DD01
5H601DD11
5H601DD30
5H601GA02
5H601GA22
5H601GB05
5H601GB13
5H601GB32
5H601GC02
5H601GC12
5H601GC22
5H601GC32
5H601GE02
5H601GE11
5H601KK18
5H601KK21
(57)【要約】
【課題】長軸の回転電機用のステータコアであっても、ボルト締結部に過度の応力が発生することを抑制できる回転電機のステータコアを提供する。
【解決手段】ステータコア(14)は、接着剤層(33)を介して積層された複数の鋼板(31)から構成され、ヨーク部は、周方向において等間隔で設けられて径方向外側に突出し、ボルト(27)が挿通する挿通穴(21)が形成された複数のボルト締結部(14b)を含み、接着剤層(33)は、ステータコア(14)の軸方向から見て、ヨーク部におけるボルト締結部(14b)以外の部分に設けられた第一接着剤層(33a)と、ボルト締結部(14b)におけるボルト(27)の頭部(27a)を着座させるボルト座面を除く部分に設けられた第二接着剤層(33b)と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環形状のヨーク部と、
前記ヨーク部の内周縁から径方向の中心へ向かって突出し、前記ヨーク部の周方向に等間隔で形成された複数のティース部と、を有する回転電機のステータコアであって、
前記ステータコアは、接着剤層を介して積層された複数の鋼板から構成され、
前記ヨーク部は、周方向において等間隔で設けられて径方向外側に突出し、ボルトが挿通する挿通穴が形成された複数のボルト締結部を含み、
前記接着剤層は、前記ステータコアの軸方向から見て、前記ヨーク部における前記ボルト締結部以外の部分に設けられた第一接着剤層と、前記ボルト締結部におけるボルトの頭部を着座させるボルト座面を除く部分に設けられた第二接着剤層と、を有する
ことを特徴とする回転電機のステータコア。
【請求項2】
前記ボルト座面は、前記挿通穴の周囲における前記挿通穴の中心から所定距離の円環状の面であり、
前記第二接着剤層は、前記ボルト座面に隣接する位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機のステータコア。
【請求項3】
前記ボルト締結部の前記ボルト座面に隣接する位置には、前記ステータコアの軸方向に貫通する貫通穴が形成されており、
前記第二接着剤層は、軸方向から見て前記貫通穴に隣接する位置に設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の回転電機のステータコア。
【請求項4】
前記貫通穴は、前記ステータコアを冷却するための冷却媒体が流通する冷却媒体流通路として機能する貫通穴である
ことを特徴とする請求項3に記載のステータコア。
【請求項5】
前記ボルト締結部には、前記貫通穴として、一の前記ボルト座面に隣接する複数の貫通穴が設けられており、
軸方向から見て前記複数の貫通穴の間の部分に前記第二接着剤層が配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機のステータコア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のステータコアに関し、特に、積層された複数の電磁鋼板から構成される回転電機のステータコアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の電磁鋼板が積層されることにより構成されたモータ(回転電機)のステータコアが知られている。このようなステータコアにおいて、積層された複数の電磁鋼板を固定するための手段として、例えば、特許文献1に記載された技術がある。
【0003】
特許文献1に記載の回転電機のステータコアは、複数の環状の電磁鋼板を積層させた積層鋼板であって、電磁鋼板の周方向に沿って所定間隔で複数が設けられたボルト締結部と、電磁鋼板のバックヨーク部に形成された接着剤からなる接着剤層とによって、隣り合う電磁鋼板がボルトの締結と接着剤による接着との両方で固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-140741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような、積層した複数の電磁鋼板をボルトの締結と接着剤による接着との両方で固定してなる構造のステータコアでは、特に、軸方向の長さが長い長軸モータ用のステータコアにおいて、ボルト締結部に接着剤が塗布されていないことで、接着剤層の厚みの分だけボルト締結部と接着部とに厚さの差が生じることで、ボルト締結部のステータコア(積層された各電磁鋼板)に強い応力が生じるおそれがある。また、生じる応力が過大となると、ステータコアの製造時にボルト締結部に座屈が生じるおそれもある。すなわち、特許文献1に示すような従来構造のモータに使用するステータコアでは、ステータコアの径を大きくして軸方向の長さを短く抑えていたため、ボルト締結部に発生する応力の問題はあまり生じなかったが、軸方向の長さが長い長軸モータ用のステータコアでは、ボルト締結部にかかる応力によって上記のような問題が生じるおそれがあるため、当該応力を効果的に緩和できるような構造が必要となる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、長軸の回転電機用のステータコアであっても、ボルト締結部に過度の応力が発生することを抑制できる回転電機のステータコアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る回転電機のステータコアは、円環形状のヨーク部(14a)と、ヨーク部(14a)の内周縁から径方向の中心へ向かって突出し、ヨーク部(14a)の周方向に等間隔で形成された複数のティース部(14c)と、を有する回転電機のステータコア(14)であって、ステータコア(14)は、接着剤層(33)を介して積層された複数の鋼板(31)から構成され、ヨーク部(14a)は、周方向において等間隔で設けられて径方向外側に突出し、ボルト(27)が挿通する挿通穴(21)が形成された複数のボルト締結部(14b)を含み、接着剤層(33)は、ステータコア(14)の軸方向から見て、ヨーク部(14a)におけるボルト締結部(14b)以外の部分に設けられた第一接着剤層(33a)と、ボルト締結部(14b)におけるボルト(27)の頭部(27a)を着座させるボルト座面(42)を除く部分に設けられた第二接着剤層(33b)と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明のステータコアでは、ボルト座面(42)は、挿通穴(21)の周囲における挿通穴(21)の中心(C)から所定距離(R)の円環状の面であり、第二接着剤層(33b)は、ボルト座面(42)に隣接する位置に設けられていてもよい。
【0009】
本発明にかかる回転電機のステータコアによれば、複数の鋼板を接着している接着剤層として、ヨーク部におけるボルト締結部以外の部分に設けられた第一接着剤層に加えて、ボルト締結部におけるボルト座面を除く位置に設けた第二接着剤層を備えることで、ボルト締結部の各鋼板間に第二接着剤層が介在した状態となることで、複数の鋼板をボルトで締結しているボルト締結部の各鋼板に発生する応力を効果的に低減することができる。したがって、ステータコアの製造時にボルト締結部に座屈が生じることを回避できるので、軸方向が長い長軸の回転電機に用いるステータコアであってもボルトの締結に伴う座屈を防止できる。
【0010】
また、本発明のステータコアでは、ボルト締結部(14b)のボルト座面(42)に隣接する位置には、ステータコア(14)の軸方向に貫通する貫通穴(43)が形成されており、第二接着剤層(33b)は、軸方向から見て貫通穴(43)に隣接する位置に設けられていてもよい。また、貫通穴(43)は、ステータコア(14)を冷却するための冷却媒体が流通する冷却媒体流通路として機能する貫通穴であってもよい。
【0011】
この構成によれば、第二接着剤層は、軸方向から見て貫通穴に隣接する位置に設けられていることで、貫通穴の周囲の鋼板間の隙間を接着剤で接着することができる。これにより、貫通穴の周囲の隙間が塞がれることで、貫通穴を流通する冷却媒体が貫通穴から漏れることを防止できるので、ボルト締結部に設けた貫通穴を冷却媒体流通路として用いることが可能となる。これにより、冷却媒体による冷却でステータコア及び回転電機の冷却効率を向上させることが可能となる。
【0012】
また、本発明のステータコアでは、ボルト締結部(14b)には、貫通穴(43)として、一のボルト座面(42)に隣接する複数の貫通穴(43,43)が設けられており、軸方向から見て複数の貫通穴(43,43)の間の部分に第二接着剤層(33b)が配置されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、ボルト締結部における複数の貫通穴の間の部分に第二接着剤層が配置されていることで、ボルト締結部に複数の貫通穴を設けている場合でも、ステータコアの製造時にボルト締結部に座屈が生じることを効果的に回避することができる。また、貫通穴を冷却媒体流通路として用いる場合には、冷却媒体流通路を流通する冷却媒体が積層された鋼板の隙間から漏れることをより効果的に防止できる。
【0014】
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における対応する構成要素の図面参照番号を参考のために示すものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、長軸の回転電機用のステータコアであっても、ボルト締結部に過度の応力が発生することを抑制できる回転電機のステータコアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態にかかるステータコアを備えたモータの分解斜視図である。
図2】モータを示す図で、図1のX矢視に対応する図である。
図3】ステータコアのボルト締結部及びその周辺を模式的に示す図(図4のY-Y矢視断面を示す概略図)である。
図4】ステータコアの一部を軸方向から見た図で、積層された複数の電磁鋼板を接着している接着剤層を示す図である。
図5】ステータコアの一部を軸方向から見た図で、第二接着剤層の配置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態では、本発明のステータコアを備える回転電機として、ハイブリッド自動車や電気自動車のような車両用の駆動ユニット(車両用駆動装置)に採用するモータ(回転電機)について説明する。但し、本発明の構成は、車両用の駆動ユニットに採用するモータのステータコアに限らず、発電用モータやその他の用途のモータ、または車両用以外の回転電機(発電機を含む)のステータコアにも適用が可能である。
【0018】
図1及び図2は、本発明の一実施形態にかかるステータコアを備えたモータ(回転電機)を示す図で、図1は分解斜視図、図2図1のX矢視に対応する図である。これらの図に示すように、モータ10は、モータハウジング12と、ステータコア14と、ロータ16と、回転軸11とを備えている。モータハウジング12は、回転軸11の中心を軸心Cとする略円筒形状で、ステータコア14を収容する収容部12aを有するとともにロータ16及び回転軸11を回転可能に支持している。なお、ステータコア14、ロータ16および回転軸11は、それぞれ軸心Cを通る直線を共通軸線として配置されている。以下、軸心Cを通る直線の延びる方向を軸方向と称し、当該直線に直交する方向を径方向と称し、当該直線の回りに周回する方向を周方向と称して説明する。
【0019】
モータハウジング12は、軸方向を長手方向とする略円筒形状で、軸方向にける一方の端部が塞がれた底部12bとなっている有底の容器状に形成されている。内部には、略円筒状の空洞からなる収容部12aを有しており、収容部12a内には、後述するステータコア14のボルト締結部14bを避けるための凹部13が周方向において等間隔で複数個所(図では4か所)に設けられている。凹部13は、略円筒状の収容部12aの内周面28bから径方向の外側に窪んでなる窪みとして形成されている。凹部13は、軸方向に沿ってモータハウジング12の一方の端部(底部12b側の端部)から他方の端部(開口側の端部)まで延びている。
【0020】
また、モータハウジング12とステータコア14には、それらの周方向において等間隔で複数個所(図では4か所)にボルト締結構造20が設けられている。ボルト締結構造20は、ステータコア14のボルト締結部14bに設けた軸方向に延びる貫通孔からなる挿通穴21と、モータハウジング12の軸方向の端部である底部12bに設けた台座状の座部23と、座部23に形成した締結穴25とを備え、挿通穴21に挿通したボルト27を締結穴25に締結することでステータコア14をモータハウジング12に固定する構造である。座部23及び締結穴25は、モータハウジング12の底部12bにおける凹部13に面した部分に設けられている。ステータコア14のボルト締結部14bは、軸方向から見て、当該ボルト締結部14bの部分が他の部分よりも径方向の外側に突出した形状となっている。
【0021】
また、ステータコア14のヨーク部14aにおける周方向で隣り合うボルト締結部20の間の部分の表面(外周面)28aは、対向するモータハウジング12の内周面28bに対してステータコア14を焼き嵌めする焼き嵌め部28になっている。そして、この焼き嵌め部28の締め代は、後述する冷却水流通路60を流通する冷却水によるステータコア14の冷却を行うために必要な締め代に設定されている。この締め代は、従来のステータコアをモータハウジングに焼き嵌めのみで固定する場合の締め代よりも緩い締め代である。なお、焼き嵌め部28を構成するモータハウジング12の内周面28bとステータコア14の外周面28aは、モータハウジング12とステータコア14の周方向の一部のみに設けられており、また、周方向において等間隔で複数個所(図では4か所)に分かれて設けられている。
【0022】
また、モータハウジング12には、モータ冷却用の冷却水(冷却媒体)が流通する冷却水流通路60が形成されている。冷却水流通路60は、モータハウジング12の焼き嵌め部28の外周側に設けられて軸方向に延びる軸方向流路61と、モータハウジング12の軸方向の端部又はその近傍で周方向に延びる周方向流路(図示せず)とを備えている。軸方向流路61は焼き嵌め部28の外周側における周方向の複数個所に設けられており、周方向流路は、隣接する軸方向流路の軸方向の端部同士を連通するように複数が設けられている。これにより、複数の軸方向流路61と複数の周方向流路とが互いに一本の連通路として連通しており、流入部(図示せず)から流入した冷却水が冷却水流通路60の各軸方向流路61と周方向流路を順に通過することで、モータハウジング12における収容部12aの周囲の全体(全周)を順に流れて流出部(図示せず)から流出するようになっている。
【0023】
図3は、ステータコアのボルト締結部及びその周辺を模式的に示す図で、後述する図4のY-Y矢視断面を示す概略図である。図1図3に示すように、ステータコア14は、ロータ16を径方向の外側から取り囲む筒状に形成されている。ステータコア14は、打ち抜き加工等を施して形成された電磁鋼板31(図3参照)が軸方向に積層されて構成されている。
【0024】
すなわち、ステータコア14は、円形環状に形成されたヨーク部14aと、ヨーク部14aの周方向において等間隔で複数箇所(図に示す実施例では4箇所)に設けられたボルト締結部14bと、ヨーク部14aの内周縁から径方向に円環中心(軸心)Cへ向かって突出し、ヨーク部14aの周方向に等間隔で形成された複数のティース部14c(図4参照)と、を有し、同じ形状の複数(多数)の電磁鋼板31(図3参照)が積層されることにより構成されている。ボルト締結部14bは、ヨーク部14aの外周縁15(図4参照)の一部が径方向の外側に突出している部分である。
【0025】
各ボルト締結部14bには、ステータコア14の軸方向(鋼板の積層方向)に貫通するように、ボルト27が挿通する挿通穴21が形成されている。ボルト27は、図1に示すように、挿通穴21に挿通されてモータハウジング12の締結穴25に螺合され、軸力によりステータコア14をボルト27の頭部(ボルトヘッド)27aとモータハウジング12の座部23との間で挟持することで、ステータコア14をモータハウジング12に固定する。
【0026】
また、図3に示すように、ステータコア14における積層された複数の電磁鋼板31は、隣接する電磁鋼板31同士がボルト締結部14bの挿通穴21に挿通されたボルト27で固定されると共に、接着剤層33(33a,33b)による接着で接合されることで一体となっている。
【0027】
ここで、上記構成のモータ10の組み立てにおいて、モータハウジング12にステータコア14を固定する手順を説明する。モータハウジング12にステータコア14を固定するには、モータハウジング12の軸方向に沿って収容部12a内にステータコア14を収容する。その際、互いに対向するモータハウジング12の内周面28bとステータコア14の外周面28aとを焼き嵌めする。また、ステータコア14をモータハウジング12の収容部12aに収容した状態で、ステータコア14の挿通穴21に挿通したボルト27をモータハウジング12の締結穴25に締結することで、当該ボルト27の締結によってステータコア14をモータハウジング12に固定する。
【0028】
次に、ステータコア14の接着剤層33について説明する。図4は、ステータコアの一部を軸方向から見た図で、積層された複数の電磁鋼板を接着している接着剤層を示す図である。同図に示すように、軸方向から見て、ステータコア14のヨーク部14aは、軸心(円環中心)Cを中心とする同心円である帯状の円環形状を有する。また、ステータコア14のボルト締結部14bは、挿通穴21に対する周方向の両側にある両端部41a,41bと軸心Cとを結ぶ直線L1,L2で挟まれた領域である。挿通穴21は、ボルト締結部14bにおけるヨーク部14aの外周縁15よりも外側に突出した部分に配置されており、挿通穴21の周囲はボルト27の頭部27a(あるいは、ボルト27に挿通したワッシャー27b)を着座させるためのボルト座面42になっている。ボルト座面42は挿通穴21の中心Pを中心とする円形環状の面である。そして、ボルト締結部14bにおけるボルト座面42の内周側(ステータコア14の内径側)には、複数個(図では2個)の貫通穴(肉抜き穴)43が設けられている。貫通穴43は、積層された各電磁鋼板31に形成された開口部が連通してなるもので、ボルト締結部14bをステータコア14の軸方向に貫通する貫通穴となっている。2個の貫通穴43,43は、ボルト座面42の外周縁に沿う略三角形状で、ステータコア14の周方向で互いに対称な形状となっている。
【0029】
そして、本実施形態のステータコア14では、積層された複数の電磁鋼板31の間に設けられた接着剤層33は、ヨーク部14a及びボルト締結部14bに配置されており、ティース部14cには配置されていない。さらに、接着剤層33は、ヨーク部14aにおけるボルト締結部14b以外の部分(第一領域A1)に設けられた第一接着剤層33aと、ボルト締結部14bにおけるボルト座面42を除く部分(第二領域A2)に設けられた第二接着剤層33bとを有する。
【0030】
第一接着剤層33a及び第二接着剤層33bは、複数ずつが設けられており、いずれも略円形状である。第一接着剤層33aは、ヨーク部14aにおけるボルト締結部14b以外の部分において周方向に並んでおり、ステータコア14の軸心Cを中心とする円弧状に配列されている。第一接着剤層33aは、その直径がヨーク部14aの幅寸法(ボルト締結部14b以外の部分雄幅寸法)よりも僅かに小さな寸法となっている。一方、第二接着剤層33bは、ヨーク部14aにおけるボルト座面42と貫通穴43に隣接する位置に設けられている。図示する例では、ボルト座面42に隣接する外周側に3個が設けられており、各貫通穴43の内周側(ステータコア14の内径側)に1個ずつが設けられており、合計5個が設けられている。第二接着剤層33bは、第一接着剤層33aよりも径寸法が小さい小径の略円形状である。
【0031】
図5は、第二接着剤層の配置を説明するための図である。同図に示すように、合計5個の第二接着剤層33bのうちボルト座面42に隣接する3個の第二接着剤層33bは、挿通穴21の中心Pを中心としてボルト座面42の外周に沿う円弧帯状の第一帯状部B1内に配列されている。また、貫通穴43,43の内周側(ステータコア14の内径側)に位置する2個の接着剤層33bは、挿通穴21の中心Pを中心として第一帯状部B1の外周に沿う円弧帯状の第二帯状部B2内に配列されている。第一帯状部B1及び第二帯状部B2はいずれもボルト座面42の周囲で貫通穴43を跨ぐように配置されていることで、第一帯状部B1内の3個の第二接着剤層33bと第二帯状部B2内の2個の第二接着剤層33bが貫通穴43の周囲に配置されるようになっている。これにより、積層された複数の電磁鋼板31における貫通穴43の周囲の部分の隙間を第二接着剤層33bで塞ぐことができるので、後述するように、ステータコア14に形成した貫通穴43を冷却用の作動油(冷却媒体)が流通する冷却油流通路(冷却媒体流通路)として用いることが可能となる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態のステータコア14は、接着剤層33を介して積層された複数の電磁鋼板31から構成され、ヨーク部14aは、周方向において等間隔で設けられて径方向外側に突出し、ボルト27が挿通する挿通穴21が形成された複数のボルト締結部14bを含み、接着剤層33は、ステータコア14の軸方向から見て、ヨーク部14aにおけるボルト締結部14b以外の部分に設けられた第一接着剤層33aと、ボルト締結部14bにおけるボルト座面42を除く部分に設けられた第二接着剤層33bとを有する。
【0033】
また、本実施形態のステータコア14では、ボルト座面42は、挿通穴21の周囲における挿通穴21の中心Pを中心とする円環状の面であり、第二接着剤層33bは、ボルト座面42に隣接する位置に設けられている。
【0034】
本実施形態のステータコア14によれば、複数の電磁鋼板31を接着している接着剤層33として、ヨーク部14aにおけるボルト締結部14b以外の部分に設けられた第一接着剤層33aに加えて、ボルト締結部14bにおけるボルト座面42を除く位置に設けた第二接着剤層33bを備えることで、ボルト締結部14bの各電磁鋼板31間に第二接着剤層33bが介在した状態となることで、複数の電磁鋼板31をボルト27で締結しているボルト締結部14bの各電磁鋼板31に発生する応力を効果的に低減することができる。したがって、ステータコア14の製造時にボルト締結部14bに座屈が生じることを回避することができるので、軸方向が長い長軸のモータに用いるステータコア14であってもボルト27の締結に伴う座屈を防止できる。
【0035】
上記の点をより具体的に説明すると、本実施形態のステータコア14では、ボルト締結部14bにおけるボルト座面42を除く位置に設けた第二接着剤層33bを備え、また、この第二接着剤層33bがボルト座面42に隣接する位置に配置されている。これにより、図3に示すように、第二接着剤層33bの端部33cと挿通穴21の中心(ボルト27の軸心)Pとの距離S1を従来構造よりも短くすることが可能となる。これによって、ボルト締結部14bにボルト27を締結することで積層した複数の電磁鋼板31を固定する際、ボルト締結部21の各電磁鋼板31が撓み難くなるので、ボルト締結部14bの積層方向(図の上下方向)の変形量S2がより少ない量に抑えられる。したがって、ボルト締結部14bの各電磁鋼板31に発生する応力を低減することができる。
【0036】
また、本実施形態のステータコア14では、ボルト締結部14bのボルト座面42に隣接する位置には、ステータコア14の軸方向に貫通する貫通穴43からなる冷却油流通路が形成されており、第二接着剤層33bは、軸方向から見てこの貫通穴43に隣接する位置に設けられている。
【0037】
この構成によれば、第二接着剤層33bは、軸方向から見て貫通穴43からなる冷却油流通路に隣接する位置に設けられていることで、貫通穴43の周囲の電磁鋼板31間の隙間を第二接着剤層33bで接着することができる。これにより、貫通穴43の周囲の隙間が塞がれることで、流通する冷却油が貫通穴43から漏れることを防止できるので、ボルト締結部14bに設けた貫通穴43を冷却油流通路として用いることが可能となる。これにより、冷却油による冷却でステータコア14及びモータの冷却効率を向上させることが可能となる。
【0038】
また、本実施形態のステータコア14では、ボルト締結部14bには、一のボルト座面42に隣接する複数(2個)の貫通穴43,43が設けられており、軸方向から見て複数の貫通穴43,43の間の部分に第二接着剤層33bが配置されている。
【0039】
この構成によれば、ボルト締結部14bにおける複数の貫通穴43,43の間の部分に第二接着剤層33bが配置されていることで、ボルト締結部14bに複数の貫通穴43,43を設けている場合でも、ステータコア14の製造時にボルト締結部14bに座屈が生じることを効果的に回避することができる。また、ボルト締結部14bに設けた貫通穴43を冷却油流通路として用いる際に、貫通穴43を流通する冷却油が積層された電磁鋼板31の隙間から漏れることをより効果的に防止できる。
【0040】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変更が可能である。
【0041】
例えば、上記実施形態では、ステータコア14のボルト締結部14bは、周方向で等間隔の4箇所に設けられている場合を示したが、本発明のステータコアが備えるボルト締結部の数や配置はこれには限らず、他の数や配置であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 モータ(回転電機)
11 回転軸
12 モータハウジング
12a 収容部
12b 底部
13 凹部
14 ステータコア
14a ヨーク部(外周部)
14b ボルト締結部
14c ティース部
16 ロータ
20 ボルト締結構造
21 挿通穴
23 座部
25 締結穴
27 ボルト
27a 頭部(ボルトヘッド)
28 焼き嵌め部
28a 外周面
28b 内周面
31 電磁鋼板(鋼板)
33 接着剤層
33a 第一接着剤層
33b 第二接着剤層
41a,41b 両端部
42 ボルト座面
43 貫通穴(冷却媒体流通路)
60 冷却水流通路
61 軸方向流路
A1 第一領域
A2 第二領域
C 軸心
L1,L2 直線
P 中心
図1
図2
図3
図4
図5