(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123784
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】車両用警報装置
(51)【国際特許分類】
G08B 21/02 20060101AFI20240905BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20240905BHJP
G08G 1/123 20060101ALI20240905BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G08B21/02
G08B25/04 K
G08G1/123 A
B60R11/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031456
(22)【出願日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】596013143
【氏名又は名称】加藤電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100188075
【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 修
(72)【発明者】
【氏名】加藤 学
【テーマコード(参考)】
3D020
5C086
5C087
5H181
【Fターム(参考)】
3D020BA11
3D020BB02
3D020BC01
3D020BE03
5C086AA22
5C086BA22
5C086CA09
5C086CA23
5C086DA08
5C086FA02
5C086FA11
5C087AA23
5C087AA32
5C087DD03
5C087DD14
5C087EE08
5C087FF01
5C087FF02
5C087GG08
5C087GG09
5C087GG66
5C087GG84
5H181AA06
5H181AA24
5H181CC11
5H181MA25
5H181MA28
5H181MA29
(57)【要約】
【課題】乗員の置き去りを車室内での乗員の動きとは異なる手段で検知できる車両用警報装置を提供する。
【解決手段】車両用警報装置1は、児童送迎の車両5に用いられるものであり、車室3内の乗員の存在を検知する検知センサ7と、検知センサ7の信号に基づいて車室3外に発報する外部発報部8とを備える。
ここで、検知センサ7は、音を検知する音響センサであり、車両5の駆動手段停止後の所定時間経過後に検知センサ7により、車室3内で乗員の存在が確認された際に、外部発報部8が発報する。
これにより、車室3内に乗員が置き去りにされても、乗員の発する泣き声等に検知センサ7が反応することで、乗員の置き去りを車室3外に知らせることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の乗員の存在を検知する検知センサと、前記検知センサの信号に基づいて前記車室外に発報する外部発報部とを備える児童送迎の車両に用いられる車両用警報装置において、
前記検知センサは、音を検知する音響センサであり、
前記車両の駆動手段停止後の所定時間経過後に前記検知センサにより、前記車室内で乗員の存在が確認された際に、前記外部発報部が発報することを特徴とする車両用警報装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用警報装置において、
前記検知センサにより検知される音の周波数が1200Hz~2000Hzの周波数である場合に、前記外部発報部が発報することを特徴とする車両用警報装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用警報装置において、
前記車室は乗員の歩行可能な通路が形成され、
前記車両の駆動手段停止時に前記車室内に発報する内部発報部と、
前記通路を経由した位置に存する前記内部発報部の発報を停止させる停止部とを具備し、
前記停止部を操作する操作乗員の停止操作と、前記操作乗員の前記通路を経由して前記停止部にまで至る歩行動作に対応する前記検知センサの信号に基づき、前記内部発報部の発報は停止することを特徴とする車両用警報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用警報装置、特に児童送迎の車両に用いられる車両用警報装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、児童送迎の車両である送迎バス等の車室内に児童が置き去りにされて閉じ込められてしまう事故が多発している。
これは、送迎バス等が体格が大きく、児童の体格が小さいため、死角が生じやすくなっており、注意深く各シートにおける最終確認を行わないと児童の存在を見落としてしまうことに起因している。
【0003】
そこで、従来から存在する車両用盗難防止装置(例えば、特許文献1参照。)を応用して、児童等の乗員の車室内の置き去りを防止する車両用警報装置が提案されている。
このような車両用警報装置では、乗員の車室内における動きを検知する検知センサと、検知センサの信号に基づいて車室外に発報する外部発報部とを備えている。
【0004】
そして、置き去りにされた乗員が車室内で動くことにより検知センサで動きが検知され、この検知センサによる信号に基づいて外部発報部が車室外に発報することで、車室内に乗員が取り残されていることを周囲に知らせることができる。
しかし、特許文献1の検知センサは振動検知センサであるため、風等による振動をも誤検知してしまう虞がある。また、風等による振動とは異なる振動であることを判別するためには、装置全体が複雑化してしまう問題もある。
【0005】
また、車室内に置き去りにされた乗員は必ずしも車室内で動いているとは限らないため、乗員の動きとは異なる手段での車室内の乗員の置き去りを検知できる方法の確立が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、車室内での乗員の置き去りを乗員の動きとは異なる手段で検知できる車両用警報装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の車両用警報装置は、児童送迎の車両に用いられるものであり、車室内の乗員の存在を検知する検知センサと、検知センサの信号に基づいて車室外に発報する外部発報部とを備える。
【0009】
ここで、検知センサは、音を検知する音響センサであり、車両の駆動手段停止後の所定時間経過後に検知センサにより、車室内で乗員の存在が確認された際に、外部発報部が発報する。
【0010】
これにより、車室内に乗員が置き去りにされても、乗員の発する泣き声等に検知センサが反応することで、乗員の置き去りを車室外に知らせることができる。
すなわち、車室内に置き去りにされた乗員である児童が動いていない場合であっても、動きと異なる手段で車室内での乗員である児童の存在を検知でき車室外に知らせることが可能となる。
さらに、車室内に置き去りにされた乗員である児童がそもそも動くことのできない乳幼児等であっても、泣き声を介して車室内での置き去りを容易に車室外に知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)車両の駆動手段稼働時、(b)駆動手段停止時における車両用警報装置の説明図である(実施例)。
【
図2】車両用警報装置のブロック図である(実施例)。
【
図3】車両用警報装置の制御フロー図である(実施例)。
【
図4】内部発報部の発報を停止しない場合における車両用警報装置の説明図である(実施例)。
【
図5】内部発報部の発報を停止した場合における車両用警報装置の説明図である(実施例)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示を実施するための形態を実施例に基づいて説明する。
なお、以下の実施例は具体的な一例を開示するものであり、本開示が以下の実施例に限定されないことは言うまでもない。
【実施例0013】
[実施例の構成]
実施例の車両用警報装置1の構成を、
図1~5を用いて説明する。
車両用警報装置1は、乗員が歩行可能な通路2の形成される車室3を有する児童送迎の車両5に用いられるものである。
より具体的には、車両5は、児童送迎用のバス等である。
【0014】
また、車両用警報装置1は、車室3内の乗員の存在を検知する検知センサ7と、検知センサ7の信号に基づいて車室3外に発報する外部発報部8とを備えている。
さらに、車両用警報装置1は、車両5の駆動手段停止時に車室3内に発報する内部発報部9と、通路2を経由した位置に存する内部発報部9の発報を停止させる停止部10とを具備している。
【0015】
ここで、検知センサ7は、車室3内の音を検知するコンデンサマイク等の周知の音響センサとなっており、外部発報部8は周知の警報音発生器となっている。
また、内部発報部9は、周知の警報音発生器となっており、停止部10は押釦式となっており釦を押し込むことにより内部発報部9に対する発報停止信号を送る。
ここで、内部発報部9は車両5の前方に、停止部10は、通路2を隔てた車両5の後方に設けられている。
【0016】
なお、車両用警報装置1は、車両5の駆動手段停止信号に連動して起動する。具体的には、車両5の始動キーの押下等による駆動手段停止信号に応じて起動する。
また、車両5の駆動手段稼働時には、車両用警報装置1は
図1(a)に示すように作動していない。すなわち、車両5に乗員が乗車する際には、車両用警報装置1の作動を止める必要がある。
【0017】
そして、車両用警報装置1は、停止部10を操作する操作乗員Dの停止操作と、操作乗員Dの通路2を経由して停止部10にまで至る歩行動作に対応する検知センサ7の信号に基づき、内部発報部9の発報を停止する。
【0018】
ここで、内部発報部9の発報停止に至る過程について、
図2のブロック図、
図3のフロー図を用いて詳しく説明する。
車両用警報装置1は、起動時、すなわち車両5の駆動手段停止時に、制御部11からの作動信号に基づき内部発報部9を発報させる。
なお、制御部11は、制御機能および演算機能を有するCPUを含む判定部12、ROMやRAMのような各種の記憶部13、入力部および出力部を有する周知のマイクロコンピュータを含むように構成されている。
【0019】
判定部12は、停止部10を操作する操作乗員Dが通路2を経由して停止部10にまで至る歩行動作に対応する検知センサ7の信号に対して、停止部10からの発報停止信号を内部発報部9に送るか否かを判定している。すなわち、操作乗員Dによる停止部10の停止操作に対して検知センサ7の信号を基に内部発報部9を停止させるか否かを判定している。
また、判定部12は判定に際して、記憶部13を参照することもできる。
【0020】
ここで、車両用警報装置1での、判定部12による判定の対象となる歩行動作は、所定の動作となっている。
なお、所定の動作とは、操作乗員Dが各シートを十分に確認でき得るものとなっており、例えば、操作乗員Dの歩行動作時の足音が移動と停止とを繰り返すもの、足音から見積もられる歩行速度が通常の歩行速度の半分程度のもの等が該当する。
また、判定部12による判定においては、検知センサ7からの信号を直接用いるものであっても、記憶部13に記憶されたモデルケース等との対比によるものであってもよい。
【0021】
より具体的には、
図3に示すようなフロー図に従った制御となっている。
先ず、ステップS1で、車両5の駆動手段停止信号に連動して、内部発報部9が発報する。
次に、ステップS2において、操作乗員Dによって停止部10に対する停止操作が行われたか否かを判定する。
【0022】
操作乗員Dによって停止部10に対する停止操作が行われていた場合(Y)はステップS3へと移行する。
操作乗員Dによって停止部10に対する停止操作が行われていない場合(N)はステップS8へと移行する。
【0023】
次に、ステップS3において、操作乗員Dの通路2を経由して停止部10にまで至る歩行動作に対応する検知センサ7の信号が先述の所定の動作となっているか否かを判定する。
操作乗員Dの歩行動作に対応する検知センサ7の信号が所定の動作となっていない場合(N)、ステップS1へと移行する。
操作乗員Dの歩行動作に対応する検知センサ7の信号が所定の動作となっている場合(Y)、ステップS4へと移行する。
そして、ステップS4で、内部発報部9に制御部11から発報停止信号を出力し、内部発報部9の発報を停止させ、ステップS5へと移行する。
【0024】
次に、ステップS5において、内部発報部9の発報開始からの時間が所定時間を経過したか否かが判定され、所定時間が経過していない場合(N)はステップS4に移行し、所定時間を経過している場合(Y)はステップS6に移行する。
【0025】
次に、ステップS6において、検知センサ7による検知信号の周波数が1200Hz~2000Hzの範囲内であるか否かを判定する。
検知センサ7による検知信号の周波数が1200Hz~2000Hzの範囲外である場合(N)、ステップS5に移行する。
検知センサ7による検知信号の周波数が1200Hz~2000Hzの範囲内である場合(Y)、ステップS7に移行し、外部発報部8を発報させフローを終了する。
【0026】
なお、ステップS8において、内部発報部9の発報開始からの時間が所定時間を経過したか否かが判定され、所定時間を経過していない場合(N)はステップS1に移行し、所定時間を経過している場合(Y)はステップS7に移行し、外部発報部8を発報させ、フローを終了する。
【0027】
すなわち、操作乗員Dが、内部発報部9の停止、最終確認等を怠って降車した場合であっても、
図4に示すように内部発報部9の発報が所定時間経過した後に、外部発報部8が発報することで周囲に車両5において異常事態が発生したことを知らせることができる。
【0028】
また、車両用警報装置1は、
図5に示すように、内部発報部9の発報後の所定時間経過後、すなわち、車両5の駆動手段停止後の所定時間経過後に検知センサ7により、車室3内で乗員の存在が検知された際に、外部発報部8が外部に向けて発報する。
詳説すると、車両用警報装置1は、検知センサ7による検知信号の周波数が1200Hz~2000Hzの範囲内である場合に、車室3内で乗員の存在を検知していることになる。
なお、車両用警報装置1は、車両5の駆動手段停止信号に連動して起動し、次回乗員が乗車に際し、車両用警報装置1の作動を止めるまで、作動状態が維持されている。
【0029】
[実施例の効果]
実施例の車両用警報装置1は、児童送迎の車両5に用いられるものであり、車室3内の乗員の存在を検知する検知センサ7と、検知センサ7の信号に基づいて車室3外に発報する外部発報部8とを備える。
【0030】
ここで、検知センサ7は、音を検知する音響センサであり、車両5の駆動手段停止後の所定時間経過後に検知センサ7により、車室3内で乗員の存在が確認された際に、外部発報部8が発報する。
【0031】
これにより、車室3内に乗員が置き去りにされても、乗員の発する泣き声等に検知センサ7が反応することで、乗員の置き去りを車室3外に知らせることができる。
すなわち、車室3内に置き去りにされた乗員である児童が動いていない場合であっても、動きと異なる手段で車室3内での乗員である児童の存在を検知でき車室3外に知らせることが可能となっている。
さらに、車室3内に置き去りにされた乗員である児童がそもそも動くことのできない乳幼児等であっても、泣き声を介して車室3内での置き去りを容易に車室3外に知らせることができる。
【0032】
実施例の車両用警報装置1は、検知センサ7により検知される音の周波数が1200Hz~2000Hzの周波数である場合に、外部発報部8が発報する。
これにより、検知センサ7は乗員である児童の泣き声に反応することになるため、他の周波数帯の音に反応せず、検知センサ7による誤検知の発生を抑制することができる。
【0033】
なお、音の周波数として1200Hzは、比較的年齢の高い小学生中高学年の男子生徒の泣き声の下限周波数である。
また、音の周波数として2000Hz近辺は、成人の最も聴感度のよい領域であり、声帯の未発達な一般的な児童の泣き声の周波数領域ともなっている。
【0034】
また、所謂サイレン音等は特定の周波数、周期での発報音となっているため、予め、各種サイレン音等を記憶部13に記憶させておくことで、周波数帯が重なる環境音が混在する場合であっても容易に車室3内での児童の泣き声との識別、分離が可能となっている。
【0035】
実施例の車両用警報装置1は、車室3に乗員の歩行可能な通路2が形成され、車両の駆動手段停止時に車室3内に発報する内部発報部9と、通路2を経由した位置に存する内部発報部9の発報を停止させる停止部10とを具備する。
そして、停止部10を操作する操作乗員Dの停止操作と、操作乗員Dの通路2を経由して停止部10にまで至る歩行動作に対応する検知センサ7の信号に基づき、内部発報部9の発報は停止する。
【0036】
これにより、内部発報部9の発報の停止には、操作乗員Dの通路2における歩行動作を要件とすることができる。
すなわち、内部発報部9の発報を停止させるためには、操作乗員Dは必然的に通路2を経由して停止部10まで移動しなければならないが、その際における操作乗員Dの歩行動作を制限することができる。
【0037】
このため、強制的に通路2の周囲に配されるシートを十分に確認可能なように操作乗員Dの通路通過時の歩行動作を所定の動作へと導くことが可能となる。
この結果、乗員である児童の置き去りの発生を抑制することができる。
【0038】
なお、内部発報部9による発報音を、予め、記憶部13に記憶させておくことで、操作乗員Dの通路2における歩行動作に伴う足音の識別、分離は可能となっており、操作乗員Dが所定動作を行っているか否かの判定を容易に行うことができる。
【0039】
[変形例]
本発明はその要旨を逸脱しない範囲で様々な変形例を考えることができる。
例えば、実施例においては、検知センサ7は、音響センサ1つのみであったが、検知センサ7を複数設ける構成であってもよい。
これにより、検知センサ7による検知範囲を広げることもでき、検知センサ7の故障時における冗長性を確保することもできる。
【0040】
また、検知センサ7を複数設ける際に、異なる種類の検知センサを設ける構成であってもよい。例えば、検知センサ7として、音響センサと振動検知センサ、動き検知センサ等を設ける構成とすることもできる。
これにより、検知センサ7として複数種の検知信号を基に判定等を行えるため、検知センサ7による誤検知等の発生を抑制することができる。
【0041】
また、実施例においては、外部発報部8、内部発報部9はそれぞれ警報音発生器となっていたが、それぞれ回転警告灯型の発報部とすることもできる。
これにより、発報時における騒音の発生を抑制することができ、住宅街等での使用も可能になる。
【0042】
また、内部発報部9が回転警告灯型の発報部であると、操作乗員Dの歩行動作に伴う足音を発報音から分離する必要がなくなるため車両用警報装置1の操作乗員Dの歩行動作の判定における負荷を低減できる。
【0043】
また、車両5の駆動手段は、所謂内燃機関であってもよく、燃料電池、バッテリー等によるモータであってもよい。
さらに、実施例においては、車両5は送迎用のバス等であったが、この構成に拘るものではなく、鉄道用車両等であってもよい。