(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123796
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】パッケージと伝送路の接続構造
(51)【国際特許分類】
H01P 5/08 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
H01P5/08 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031483
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神馬 萌子
(72)【発明者】
【氏名】神園 隆司
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
(57)【要約】
【課題】高周波伝送特性を改善できる金属製のパッケージと伝送路の接続構造を提供する。
【解決手段】コネクタ50が取り付けられた金属製のパッケージ40と、パッケージ内に収容され、誘電体からなる基板本体11の表面に信号線パターン12と該信号線パターンの両側に間隔を開けて配置されたグランドパターン13,13とからなる伝送路14が形成され、基板本体の裏面に裏面グランドパターン15が形成され、コネクタの中心導体51が信号線パターンの端部に電気的に接続され、コネクタの外部導体52が裏面グランドパターンに電気的に接続されている伝送路基板10と、を備える。表面のグランドパターン13において信号線パターンに対向する側の縁部に沿って、グランドパターンと裏面グランドパターンとを導通させるビアホール16が形成され、グランドパターンの縁部とビアホールとの距離がデザインルールの下限値に等しい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタ(50)が取り付けられた金属製のパッケージ(40)と、
前記パッケージ内に収容され、誘電体からなる基板本体(11)の表面に信号線パターン(12)と該信号線パターンの両側に間隔を開けて配置されたグランドパターン(13,13)とからなる伝送路(14)が形成され、前記基板本体の裏面に裏面グランドパターン(15)が形成され、前記コネクタの中心導体(51)が前記信号線パターンの端部に電気的に接続され、前記コネクタの外部導体(52)が前記裏面グランドパターンに電気的に接続されている伝送路基板(10)と、
を備え、
前記グランドパターンにおいて前記信号線パターンに対向する側の縁部に沿って、前記グランドパターンと前記裏面グランドパターンとを導通させるビアホール(16)が形成され、前記グランドパターンの前記縁部と前記ビアホールとの距離がデザインルールの下限値に等しいことを特徴とするパッケージと伝送路の接続構造。
【請求項2】
隣接する前記ビアホールの間隔がデザインルールの下限値に等しい、請求項1に記載のパッケージと伝送路の接続構造。
【請求項3】
前記グランドパターンにおいて前記信号線パターンに対向する側とは反対側の縁部に沿って、前記グランドパターンと前記裏面グランドパターンとを導通させるビアホールが形成されている、請求項2に記載のパッケージと伝送路の接続構造。
【請求項4】
前記基板本体において前記コネクタが取り付けられた側の前記パッケージの壁部(43)に対向する側の縁部に、前記基板本体の側面がメタライズされて前記グランドパターンと前記裏面グランドパターンとを導通させるキャスタレーション(17)が形成されている、請求項3に記載のパッケージと伝送路の接続構造。
【請求項5】
前記コネクタの前記外部導体又は前記外部導体に接続された前記パッケージと前記表面の前記グランドパターンとを接続する金属製の接続導体(18)が設けられる、請求項4に記載のパッケージと伝送路の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製のパッケージと伝送路の接続構造に関するものであり、特に、金属製のパッケージと該パッケージに収容されたグランデッドコプレーナ型伝送路との接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば100Gbaudを超える高周波のPAM4(Pulse Amplitude Modulation 4)信号を増幅可能な進行波アンプがモジュール化されて構成された高周波モジュールが求められている。一般に、このような高周波モジュールは、例えば、金属製のパッケージに入力伝送路と集積回路と出力伝送路とが順に接続された状態で収容され、パッケージに取り付けられた入力コネクタに入力された高周波信号が、入力伝送路を通って集積回路で増幅され、増幅された信号が出力伝送路を通ってパッケージに取り付けられた出力コネクタから取り出されるようになっている。高周波信号を増幅等する高周波モジュールでは、インピーダンス不整合などによる伝送特性の劣化を抑制するために、種々の対策が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、インピーダンス不整合の問題を解消するために、信号パターンが形成された基板とメタルパッケージとの境界部分において、信号伝送路の断面形状が連続的になるように、信号パターンの外端部を基板の外端部から所定距離だけ内側の位置に寄せることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来の技術では、例えば100Gbaudを超える高周波のPAM4信号など高周波信号を扱う上では不十分であり、特に高周波数での反射特性や通過特性などの伝送特性の更なる改善が必要であった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、高周波伝送特性を改善することができる金属製のパッケージと伝送路の接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のパッケージと伝送路の接続構造は、コネクタ(50)が取り付けられた金属製のパッケージ(40)と、前記パッケージ内に収容され、誘電体からなる基板本体(11)の表面に信号線パターン(12)と該信号線パターンの両側に間隔を開けて配置されたグランドパターン(13,13)とからなる伝送路(14)が形成され、前記基板本体の裏面に裏面グランドパターン(15)が形成され、前記コネクタの中心導体(51)が前記信号線パターンの端部に電気的に接続され、前記コネクタの外部導体(52)が前記裏面グランドパターンに電気的に接続されている伝送路基板(10)と、を備え、前記グランドパターンにおいて前記信号線パターンに対向する側の縁部に沿って、前記グランドパターンと前記裏面グランドパターンとを導通させるビアホール(16)が形成され、前記グランドパターンの前記縁部と前記ビアホールとの距離がデザインルールの下限値に等しいことを特徴とする。
【0008】
上述のように、本発明のパッケージと伝送路の接続構造(以下、単に接続構造ともいう)は、グランドパターンにおいて信号線パターンに対向する側の縁部に沿って、グランドパターンと裏面グランドパターンとを導通させるビアホールが形成され、グランドパターンの縁部とビアホールとの距離がデザインルールの下限値に等しい構成となっている。従来の接続構造では、信号線パターン近傍のグランドパターンにおいてビアホールが存在しない領域を信号が伝搬することにより、伝送特性における落ち込み(以下、ディップともいう)が生じる原因になっていた。これに対し、上記構成により、信号が伝搬する上記領域においてグランドパターンと裏面グランドパターンとを直接接続して電気的に一体化することにより、高周波数での反射特性や通過特性などの高周波伝送特性を改善することができる。
【0009】
また、本発明のパッケージと伝送路の接続構造において、隣接する前記ビアホールの間隔がデザインルールの下限値に等しい構成であってもよい。
【0010】
この構成により、本発明のパッケージと伝送路の接続構造は、信号線パターン近傍のグランドパターンにおいて信号が伝搬する領域において表面のグランドパターンと裏面グランドパターンとを直接接続して電気的に更に一体化することにより、高周波伝送特性を更に改善することができる。
【0011】
また、本発明のパッケージと伝送路の接続構造は、前記グランドパターンにおいて前記信号線パターンに対向する側とは反対側の縁部に沿って、前記グランドパターンと前記裏面グランドパターンとを導通させるビアホールが形成された構成であってもよい。
【0012】
この構成により、本発明のパッケージと伝送路の接続構造は、ビアホールの数を最小限に抑えて伝送路基板の強度を確保しつつ、表面のグランドパターンと裏面グランドパターンとを接続して電気的に一体化することにより、高周波伝送特性を改善することができる。
【0013】
また、本発明のパッケージと伝送路の接続構造は、前記基板本体において前記コネクタが取り付けられた側の前記パッケージの壁部(43)に対向する側の縁部に、前記基板本体の側面がメタライズされて前記グランドパターンと前記裏面グランドパターンとを導通させるキャスタレーション(17)が形成された構成であってもよい。
【0014】
従来の接続構造では、基板本体においてコネクタが取り付けられた側のパッケージの壁部に対向する側の縁部近傍の領域を信号が伝搬することにより、伝送特性のディップが生じる原因になっていた。これに対し、上記構成とすることにより、キャスタレーションにより表面のグランドパターンと裏面グランドパターンとを直接接続して電気的に一体化することにより、高周波伝送特性を改善することができる。
【0015】
また、本発明のパッケージと伝送路の接続構造において、前記コネクタの前記外部導体又は前記外部導体に接続された前記パッケージと前記表面の前記グランドパターンとを接続する金属製の接続導体(18)が設けられる構成であってもよい。
【0016】
従来の接続構造では、基板本体の表面のグランドパターンにおいて、ビアホールを配置することができない基板端からビアホールまでの間の領域は、金属製のパッケージと表面のグランドパターンが直接的に電気的に接続されていない。このように基板本体のコネクタ側の基板端からビアホール間で表裏のグランドパターンが接続されていない領域を信号が伝搬することにより、高周波伝送特性が劣化していた。これに対し、コネクタの外部導体又は外部導体に接続されたパッケージと表面のグランドパターンとを接続導体で直接的に接続することにより、金属製のパッケージと表面のグランドパターンとを電気的に一体化して、高周波伝送特性を改善することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高周波伝送特性を改善することができる金属製のパッケージと伝送路の接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る接続構造が用いられた高周波モジュールの概略平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る金属製のパッケージと伝送路の接続構造の一例を示す部分平面図である。
【
図3】(a)は伝送路基板のシミュレーションモデルを示し、(b)は反射特性、(c)は透過特性のシミュレーション結果を示す図であり、破線はグランドパターン端-ビアホール間の距離d1がデザインルール下限値の3倍強に設定された構成例1、実線は距離d1がデザインルール下限値に設定された構成例2を示す。
【
図4】(a)は伝送路基板のシミュレーションモデルを示し、(b)は反射特性、(c)は透過特性のシミュレーション結果を示す図であり、実線はキャスタレーションのある構成例3、破線はキャスタレーションのない構成例1を示す。
【
図5】(a)は伝送路基板の淵に沿ってビアホールが形成されたシミュレーションモデル(構成例4)を示し、(b)は反射特性、(c)は透過特性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図6】(a)は本発明の一実施形態に係る接続構造に用いられる伝送路基板のシミュレーションモデルを示し、(b)は反射特性、(c)は透過特性のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る金属製のパッケージと伝送路の接続構造が使用された高周波モジュールの構成を示す図である。高周波モジュール1は、例えば100Gbaudを超える高周波のPAM4信号を増幅可能な高周波モジュールである。
図1に示すように、高周波モジュール1は、入力側の伝送路14が設けられた伝送路基板10と、出力側の伝送路24が設けられた伝送路基板20と、アンプ回路などの集積回路31を有する集積回路素子30と、これらの構成要素を収容する金属製のパッケージ40とを備えている。本実施形態に係る接続構造100は、コネクタ50が取り付けられた金属製のパッケージ40と伝送路基板10に形成された伝送路14との接続構造である。
【0021】
(伝送路基板)
図2に示すように、入力側の伝送路基板10は、例えば石英などの誘電体からなる基板本体11の表面11aに、金属箔からなる線状の信号線パターン12と、信号線パターン12の両側に間隔を開けて配置されたグランド(GND)パターン13,13とが形成されている。以下では、信号線パターン12とGNDパターン13,13との組み合わせを伝送路14という。裏面11bあるいは中間層には、GNDパターン15(裏面GNDパターンともいう)が形成されている。すなわち、伝送路基板10には、グランデッドコプレーナー線路型の伝送路14が形成されている。
【0022】
伝送路基板10には、基板本体11の表面11aから裏面11bに貫通した複数のビアホール16が形成され、表面11aのGNDパターン13と裏面GNDパターン15とを導通させている。ビアホール16は、GNDパターン13と裏面GNDパターン15との導通を図る上では多い方が好ましいが、多すぎると伝送路基板10の強度が弱くなるので、必要な強度は確保しつつ十分に導通をとるよう個数及び配置を適宜設定する。本実施形態の信号線パターン12の中途には、直流成分をカットするシリコンキャパシタ19が設けられているが、必要に応じて省いてもよい。
【0023】
(出力側の伝送路基板)
図1に示すように、出力側の伝送路基板20は、入力側の伝送路基板10と同様の構成を有している。
【0024】
(集積回路素子)
集積回路素子30は、半導体基板(又はチップ)上に例えばアンプなどの集積回路(IC)31が形成されている。集積回路31の入力側は、伝送路基板10の信号線パターン12の一端に例えばワイヤーで接続され、集積回路31のGNDは、伝送路基板10のGNDパターン13に例えばワイヤーで接続されている。集積回路31の出力側は、伝送路基板20の信号線パターン22の一端に例えばワイヤーで接続され、集積回路31のGNDは、伝送路基板20のGNDパターン23に例えばワイヤーで接続されている。
【0025】
(パッケージ)
パッケージ40は、金属製であり、具体的には金属製の容器41と金属製の蓋とを有し、容器41に蓋が取り付けられて金属壁で囲まれた内部空間を形成し、内部空間に伝送路基板10、集積回路素子30、及び伝送路基板20が収容されるようになっている。容器41の対向する壁部43a,43bには、それぞれ貫通孔が形成され、貫通孔に例えばWコネクタなどの同軸型のコネクタ50及びコネクタ60が取り付けられている。入力用のコネクタ50は、先端が伝送路基板10の信号線パターン12に接続された中心導体51と、絶縁材を介して中心導体51に対し同軸状に形成された外部導体52とを備えている。出力用のコネクタ60は、先端が伝送路基板20の信号線パターン22に接続された中心導体61と、絶縁材を介して中心導体61に対し同軸状に形成された外部導体62とを備えている。また、金属製の蓋の裏側には電波吸収体が取り付けられており、形成された内部空間での空間共振が抑制されるようになっている。
【0026】
(接続構造)
次に、金属製のパッケージ40と伝送路基板10の伝送路14との接続構造100について説明する。
【0027】
コネクタ50の中心導体51は、伝送路基板10の信号線パターン12の一端部にハンダ付けなどにより電気的に接続されている。コネクタ50の外部導体52は、パッケージ40の壁部43に電気的に接続されるとともに、壁部43又は適当な導電部材などを介して、あるいは直接的に伝送路基板10の裏面GNDパターン15に電気的に接続されている。
【0028】
<GNDパターンにおけるビアホールの配置>
伝送路基板10には、GNDパターン13において信号線パターン12に対向する側の縁部に沿って、GNDパターン13と裏面GNDパターン15とを導通させるビアホール16が1列で形成され、ビアホール16は、GNDパターン13の縁部(すなわちGNDパターン13を画する境界又は端)とビアホール16との距離が、製造上の制限であるデザインルールの下限値に等しいように配置される。ここで、GNDパターン13の縁部とビアホール16との距離とは、GNDパターン13の信号線パターン12に対向する側の縁部(境界)からビアホール16の信号線パターン12側の端までの最短距離を指すものとする。また、ビアホール16は、隣接するビアホール16,16の間隔がデザインルールの下限値に等しいように配置される。ここで、隣接するビアホール16,16の間隔とは、ビアホール16の相手側寄りの端同士の間隔を指すものとする。具体的には、本実施形態では、例えば、GNDパターン13の縁部からビアホール16との距離を0.05mm、隣接ビアホール16,16の間隔を0.2mmとした。
【0029】
また、GNDパターン13においてビアホール16が多いほど、金属製のパッケージ40に接続された裏面GNDパターン15と表面11aのGNDパターン13とが電気的に一体化するが、伝送路基板10が割れてしまうリスクが高くなるので、ビアホール16の個数は必要最小限にするのが好ましい。そのため、GNDパターン13の淵に沿うようにビアホール16を配置してもよい。本実施形態では、GNDパターン13において信号線パターン12に対向する側の縁部に沿って配置された1列のビアホール16に加えて、GNDパターン13において信号線パターン12に対向する側とは反対側の縁部に沿って、GNDパターン13と裏面GNDパターン15とを導通させるビアホール16が1列で形成されている。本実施形態では、ビアホール16は1つのGNDパターン13においてこれら2列のみに限定している。また、伝送路基板10が割れるリスクを下げるために、ビアホール16の径は、デザインルールの下限値にしている。
【0030】
<キャスタレーション>
デザインルールにより、ビアホール16は伝送路基板10の基板端に配置することができない。そのため、伝送路基板10においてパッケージ40の壁部43a側の基板端からビアホール16間は、金属製のパッケージ40と伝送路基板10の表面11aのGNDパターン13とが直接的には接続されていない領域となる。そこで、この領域の伝送路基板10の側面11cをメタライズするキャスタレーション17を設けることにより、伝送路基板10の基板端まで十分に金属製のパッケージ40とGNDパターン13とが電気的に接続されるようになる。
【0031】
具体的には、伝送路基板10の基板本体11においてコネクタ50が取り付けられた側のパッケージ40の壁部43aに対向する側の縁部に、基板本体11の側面11cがメタライズされてGNDパターン13と裏面GNDパターン15とを導通させるキャスタレーション17が形成されている。キャスタレーション17の平面視の形状は、半円、半楕円、矩形など任意の形状でよく、個数も任意に設定できる。本実施形態では、平面視で矩形の伝送路基板10においてパッケージ40の壁部43aに対向する側の一辺に、平面視で角が丸くなった長方形の形状のキャスタレーション17が、2個設けられ、該一辺の反対側の辺にも同様の形状のキャスタレーション17が2個設けられている。
【0032】
また、伝送路基板10の表面11aのGNDパターン13において、ビアホール16を配置することができない基板端からビアホール16間の領域は、金属製のパッケージ40と表面11aのGNDパターン13とが直接的に繋がっていない。そこで、コネクタ50の外部導体52又は外部導体52に接続されたパッケージ40と表面11aのGNDパターン13とを接続する金属(例えば金)製の接続導体18が設けられている。
【0033】
<シミュレーション結果>
図3(a)は、本実施形態に係る接続構造100に用いられる伝送路基板10Aのシミュレーションモデルを示し、(b)は反射特性、(c)は透過特性のシミュレーション結果を示す。
図3(b)及び(c)において、破線は、GNDパターン13の縁部とビアホール16との距離d1が168μmに設定されたケース(構成例1)を示し、実線は、GNDパターン13の縁部とビアホール16との距離d1がデザインルールの下限値の50μmに設定されたケース(構成例2)を示す。
図3(b)及び(c)に示すように、構成例1では、120GHz付近に反射特性のディップが生じること、構成例2でGNDパターン13の縁部とビアホール16との距離d1を小さくすると伝送性能が改善することが確認できた。
【0034】
図4(a)は、本実施形態に係る接続構造100に用いられる伝送路基板10Bのシミュレーションモデルを示し、(b)は反射特性、(c)は透過特性のシミュレーション結果を示す図である。
図4(b)及び(c)において、実線は、キャスタレーション17が形成されているケース(構成例3)を示し、破線は、比較のため、キャスタレーションが形成されていないケース(上記構成例1)を示す。
図4(b)及び(c)に示すように、構成例3において、キャスタレーション17が形成されることによって伝送特性の良好な帯域が伸びることが確認できた。
【0035】
図5(a)は、本実施形態に係る接続構造100に用いられる伝送路基板10Cのシミュレーションモデルを示し、(b)は反射特性、(c)は透過特性のシミュレーション結果を示す図である。このケース(構成例4)は、GNDパターン13の縁部とビアホール16との距離d1がデザインルールの下限値の50μmに設定され、かつ、キャスタレーション17が8つ形成されている。さらに、基板割れを防止するため、GNDパターン13の淵に沿ってビアホール16を配置し、
図4の構成例3よりビアホール16の個数を少なくしている。
図5(b)及び(c)に示すように、構成例4では、ビアホール16の個数をこの程度に抑えても、GNDパターン13の縁部とビアホール16との距離d1をデザインルールの下限値の50μmとし、かつ、キャスタレーション17を形成することによって、伝送特性を改善できることが確認できた。
【0036】
図6(a)は、本実施形態に係る接続構造100に用いられる伝送路基板10のシミュレーションモデルを示し、(b)は反射特性、(c)は透過特性のシミュレーション結果を示す図である。このケース(実施例)は、GNDパターン13において信号線パターン12に対向する側の縁部とその反対側の縁部に沿ってだけ、ビアホール16を形成して、
図5の構成例4よりもビアホール16の個数を減らし、個数を最小限に抑えている。この実施例は、GNDパターン13の縁部とビアホール16との距離d1がデザインルールの下限値の50μmに設定され、かつ、キャスタレーション17が4つ形成されている。
図6(b)及び(c)に示すように、この実施例においてビアホール16の個数を最小限に抑えても、GNDパターン13の縁部とビアホール16との距離d1をデザインルールの下限値の50μmとし、かつ、キャスタレーション17を形成することによって、伝送特性を改善できることが確認できた。
【0037】
伝送路基板10とパッケージ40との接続構造について説明したが、伝送路基板20とパッケージ40との接続構造についても同様である。
【0038】
<作用・効果>
上述のように、本実施形態の金属製のパッケージ40と伝送路14の接続構造100は、GNDパターン13において信号線パターン12に対向する側の縁部に沿って、GNDパターン13と裏面GNDパターン15とを導通させるビアホール16が形成され、GNDパターン13の縁部とビアホール16との距離がデザインルールの下限値に等しい構成となっている。従来の接続構造では、信号線パターン12近傍のGNDパターン13においてビアホール16が存在しない領域を信号が伝搬することにより、伝送特性におけるディップが生じる原因になっていた。これに対し、上記構成により、信号が伝搬する上記領域においてGNDパターン13と裏面GNDパターン15とを直接接続して電気的に一体化することにより、高周波数での反射特性や通過特性などの高周波伝送特性を改善することができる。
【0039】
また、本実施形態のパッケージ40と伝送路14の接続構造100において、隣接するビアホール16,16の間隔はデザインルールの下限値に等しい。この構成により、信号線パターン12近傍のGNDパターン13において信号が伝搬する領域においてGNDパターン13と裏面GNDパターン15とを直接接続して電気的に更に一体化することにより、高周波伝送特性を更に改善することができる。
【0040】
また、本実施形態のパッケージ40と伝送路14の接続構造100は、GNDパターン13において信号線パターン12に対向する側の縁部に沿って配置された1列のビアホール16に加えて、GNDパターン13において信号線パターン12に対向する側とは反対側の縁部に沿って、GNDパターン13と裏面GNDパターン15とを導通させるビアホール16が1列で形成されている。この構成により、ビアホール16の数を最小限に抑えて伝送路基板10の強度を確保しつつ、GNDパターン13と裏面GNDパターン15とを接続して電気的に一体化することにより、高周波伝送特性を改善することができる。
【0041】
また、本実施形態のパッケージ40と伝送路14の接続構造100は、基板本体11においてコネクタ50が取り付けられた側のパッケージ40の壁部43aに対向する側の縁部に、基板本体11の側面11cがメタライズされてGNDパターン13と裏面GNDパターン15とを導通させるキャスタレーション17が形成されている。従来の接続構造では、基板本体11においてコネクタ50が取り付けられた側のパッケージ40の壁部43aに対向する側の縁部近傍の領域を信号が伝搬することにより、伝送特性のディップが生じる原因になっていたが、上記構成により、キャスタレーション17によりGNDパターン13と裏面GNDパターン15とを直接接続して電気的に一体化することにより、高周波伝送特性を改善することができる。
【0042】
また、従来の接続構造では、基板本体11の表面11aのGNDパターン13において、ビアホール16を配置することができない基板端からビアホール16までの間の領域は、金属製のパッケージ40と表面11aのGNDパターン13が直接的に電気的に接続されておらず、この領域を信号が伝搬することにより、高周波伝送特性が劣化していた。本実施形態の接続構造100では、コネクタ50の外部導体52又は外部導体52に接続されたパッケージ40と表面11aのGNDパターン13とを接続する金属製の接続導体18を設けることで、金属製のパッケージ40と表面11aのGNDパターン13とを電気的に一体化して、高周波伝送特性を改善することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明したように、本発明は、高周波伝送特性を改善することができるという効果を有し、金属製のパッケージと伝送路の接続構造の全体に有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 高周波モジュール
10、10A、10B、10C、20 伝送路基板
11 基板本体
11a 表面
11b 裏面
11c 側面
12、22 信号線パターン
13、23 GNDパターン
14、24 伝送路
15 裏面GNDパターン
16 ビアホール
17 キャスタレーション
18 接続導体
19 シリコンキャパシタ
30 集積回路素子
31 集積回路
40 パッケージ
41 容器
43、43a、43b 壁部
50、60 コネクタ
51、61 中心導体
52、62 外部導体
100 接続構造