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▶ バーデン−ビュルッテンベルク シュティフトゥング ゲーゲーエムベーハーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012381
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】構造化ガス含有表面
(51)【国際特許分類】
   F15D 1/12 20060101AFI20240123BHJP
   B63B 1/38 20060101ALI20240123BHJP
   B63B 59/04 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
F15D1/12
B63B1/38
B63B59/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023183702
(22)【出願日】2023-10-26
(62)【分割の表示】P 2020556767の分割
【原出願日】2019-04-11
(31)【優先権主張番号】DE102018003141.2
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】514221861
【氏名又は名称】バーデン-ビュルッテンベルク シュティフトゥング ゲーゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シンメル トーマス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】液体と接触状態にある又は液体と接触させられることが意図される表面の摩擦低減特性を更に改善するための新しい手法を提供する。
【解決手段】液体をはじく構造を少なくとも部分的に備え、液面下でガス層を少なくとも一時的に保持する又は保持することができる構造化表面であって、前記液体の流れ方向に平行な又は前記液体に対する該構造化表面の移動方向に平行な突出する長手方向構造を更に備え、前記突出する長手方向構造は、前記ガス層から0.1μm~10mmだけ少なくとも一時的に突出し、前記液体に入る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体をはじく構造を少なくとも部分的に備え、液面下でガス層を少なくとも一時的に保持する又は保持することができる構造化表面であって、前記液体の流れ方向に平行な又は前記液体に対する該構造化表面の移動方向に平行な突出する長手方向構造を更に備え、前記突出する長手方向構造は、前記ガス層から0.1μm~10mmだけ少なくとも一時的に突出し、前記液体に入ることを特徴とする、構造化表面。
【請求項2】
液面下でガス気泡を発生するデバイスと組み合わされ、前記ガス気泡は、前記構造化表面の、液面下で保持された前記ガス層の近くで発生する、又は、前記液体から生じると、前記ガス層の近くに来る、若しくは、前記ガス層と部分的に接触することを特徴とする、請求項1に記載の構造化表面。
【請求項3】
発生した前記ガス気泡は10μm~10mmの径を有することを特徴とする、請求項2に記載の構造化表面。
【請求項4】
前記構造化表面の材料は、シリコーン、シリコーン系ポリマー、及びアクリル系ポリマーからなるリストの少なくとも1つを含有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の構造化表面。
【請求項5】
前記長手方向構造は、前記構造化表面それ自身と異なる材料、好ましくは、セラミック材料又は酸化物又は金属又は鋼からなることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の構造化表面。
【請求項6】
前記長手方向構造は、下地構造化表面に強固に接続されるのではなく、柔軟性がありかつ可動である又は前記下地構造化表面に少なくとも弾性的に接続されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の構造化表面。
【請求項7】
前記ガス層から突出する更なる第2の構造を備え、該更なる第2の構造は、通過する前記ガス気泡からガスが捕捉され、それにより、前記ガス層にガスが供給される又は失ったガスが補充されるように、前記液体内に突出することを特徴とする、請求項2~6のいずれか一項に記載の構造化表面。
【請求項8】
前記ガス層から突出する前記第2の構造は、毛、すなわち上向きに細くなる毛、柱状体及びウェブの形状を有することを特徴とする、請求項7に記載の構造化表面。
【請求項9】
前記ガス層から突出する前記第2の構造は、前記長手方向構造を同時に構成することを特徴とする、請求項7又は8に記載の構造化表面。
【請求項10】
前記ガス層から突出する前記第2の構造は、弾性があり、外部力の非存在下で直立し、前記第2の構造は、該第2の構造の表面の湿潤性によって完全に又は部分的に、少なくとも前記液体内に突出する部分において、撥液特性を有するように更に構成され、前記弾性特性は、前記ガス層が部分的又は完全に喪失する場合、前記構造が、自動的に直立し前記液体内に突出する(前記第2の構造の撥液性層により、該第2の構造は、ガス気泡を捕捉することができ、該ガス気泡は前記ガス層を再び満たす)ように、及び、ガス層が再び形成されるとすぐに、前記第2の構造の弾性特性及び該第2の構造の撥液特性により、該第2の構造が前記ガス層内に戻るように折り曲げられるように調整されることを特徴とする、請求項7~9のいずれか一項に記載の構造化表面。
【請求項11】
前記ガス層から突出する前記第2の構造は、該第2の構造が、前記流れ方向に対して斜
め後方に向く及び/又はこの方向において内方に湾曲するように、前記液体の流れ方向又は前記液体に対する前記構造化表面の移動方向に関して方向付けられることを特徴とする、請求項7、8、又は10に記載の構造化表面。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の少なくとも1つの構造化表面を備えるデバイスであって、2つのプレートの間に配置され、それにより、前記プレートの間に水層及び空気層を形成する、デバイス。
【請求項13】
船舶表面のための請求項1~11のいずれか一項に記載の構造化表面の使用であって、特に、(i)前記船舶と水との間の摩擦力を低減し、(ii)バイオフィルム成長及び汚損を回避し、(iii)腐食を回避し、(iv)船舶コーティングから周囲水への毒性の又は環境的に有害な物質の放出を回避するためのものである、使用。
【請求項14】
特に、複数のガス層及び下地液体を使用することによる、特に上水及び飲料水を得るための水の脱塩のためのシステムにおける、又は、塩生産における塩富化のためのシステムにおける、請求項1~12のいずれか一項に記載の構造化表面又はデバイスの使用であって、前記液体は蒸発して前記ガス層に入り、前記液体の分子で富化した又は飽和したガス(「蒸気」)として前記ガス層から取り出される、使用。
【請求項15】
特に、複数のガス層及び下地液体を使用することによる、蒸発のエンタルピーを使用しながらの、水又は別の液体の蒸発のためのコンパクトな高性能冷却ユニットとしての、好ましくは、発電所内の冷却ユニットとしての、冷却システムにおける、請求項1~12のいずれか一項に記載の構造化表面又はデバイスの使用であって、前記液体は蒸発して前記ガス層に入り、前記液体の分子で富化した又は飽和したガス(「蒸気」)として前記ガス層から取り出される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液面下で保持されるガス層の摩擦低減特性を改善するための、また、乱流の同時抑制のための構造化ガス保持表面に関する。本発明は、この構造化ガス保持表面を備えるデバイス及びこの構造化ガス保持表面の使用に更に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中の国際貿易の約90%は船舶によってカバーされる。しかしながら、船舶は深刻な環境被害を引き起こす。目下の調査によると、大気に入る船舶排気ガスは、1年に最大60000人の死に関わっている。大きさで上位15位に入る15艘の船舶は、世界中の全ての自動車より多くの二酸化硫黄(SO)を生成するとされている。さらに、船舶は、その水面下船体表面の生物汚損を回避するため、大量の高毒性物質を水中に放出する。さらに、大量のエネルギーが、水に対する船体の摩擦により浪費される。
【0003】
船舶が直面する3つの主要な問題は、船体が水と接触状態にあることに関連する。この場合、以下の問題、すなわち、流れ抵抗(「抗力(drag)」とも呼ばれる)、腐食、及び汚損、すなわち、表面上での生物学的成長が生じる。
【0004】
抗力-船舶の燃料消費の大部分は、周囲の水との摩擦に起因する。
【0005】
腐食-船舶が、高い塩分含有量を有する周囲海水と直接接触状態にあることにも実質的に関連する現象。
【0006】
汚損-海洋生物の成長は、船舶が、水の代わりに空気によって囲まれる場合、起こらないであろう。
【0007】
従来技術において、船舶の摩擦を低減するための種々の手法が存在する。例えば、摩擦低減は、水と船体との間の空気層によって達成することができる。例えば、特許文献1は、特定の表面構造を有するそのようなガス保持表面カバーを記載しており、このカバーによって、とりわけ、このガス保持層によって周囲の水から船体を少なくとも部分的に分離することができる。水面下の表面上で永久的空気層を保持する生物工学的コーティングに基づくこの手法は、上記問題を解決する可能性があり、なぜならば、水面下の空気層による船体のカバーが船舶と水との直接接触を回避することになるからである。一方、腐食は、塩を含有する海水がもはや船舶と接触しなくなるため、回避されることになる。汚損もこうして回避される可能性があり、なぜならば、海洋動植物相(flora, fauna)、藻類(algae)、幼生(larvae)が、空気層により船体の表面に達しないからである。最後に、
空気層は、水より非常に低い粘性を有するため、船舶のための「潤滑性層(lubricant layer)」として働くことになる。それにより、周囲の水との摩擦を低減することができる
【0008】
生物工学的表面の分野における最近の開発は、表面と周囲の水との間の直接接触を回避することが可能であることを示す。これらのガス保持表面を用いて、これは、現在でも数年の非常に長い期間にわたって達成されてきており、たとえ表面が水面下に保たれても、表面を乾燥した状態に保つために水面下で空気層を維持することが可能である。これは、例えば、船舶、石油プラットフォーム(oil platforms)、水パイプライン、及び汚染の
ない水コンテナーのための多くの用途で、興味深い視点を開く。
【0009】
水面下で空気を保持する構造化表面を使用することによって、例えば船舶の摩擦を低減
するための上記方法は、空気層が水に比べて著しく低い粘性を有するため、水と水に対して移動する表面との間の摩擦を低減することを非常に効率的に可能にする。
【0010】
水に対する摩擦を低減するために空気層を使用する前でも、乱流を低減することによって船舶の摩擦を低減するための成功裏の手法が存在した。これには、特に、ミリメートル未満のスケールでの、またマイクロメートルのスケールでの非常に微細な長手方向溝が使用され、非常に微細な長手方向溝は、流れに平行に、すなわち、表面、例えば船舶表面と水(又は一般的に液体)との間の相対速度の方向に方向付けられることで、少なくとも表面の中間近傍において、特に乱流(小さい渦の形成)により生じる、移動方向に対して横方向の任意の流れ成分を抑制する。このいわゆるサメ肌効果(shark skin effect)の着
想は、サメ肌の表面構造に基づく生物工学的構造によって表面の中間近傍におけるいわゆる境界層内の乱流を抑制することである。通常、鋭利な縁のリブ先端を有し、また、その高さ及びリブ間隔が、通常、数十μmの範囲内にある、微細リブ、いわゆるリブレット(riblets)によって、乱流内の渦によって引き起こされる流れ方向に対して横方向の運動
量伝達(momentum transfer)が防止され、それにより、文献データによれば、理論上で
最大10%、また実際には最大8%の摩擦低減がもたらされる。
【0011】
しかしながら、構造化表面を同様に必要とするそのような対策は、
-(低粘性空気層の導入によって誘起される)媒体の粘性の変化がないこと、
-(水と表面との間の空気層によって誘起される)表面と水との間の接触を回避することによる汚損の回避がないこと、及び、
-(水と表面との間の空気層によって同様に誘起される)表面と水との間の接触を回避することによる腐食の回避がないこと、
をもたらす。
【0012】
しかしながら、長手方向溝を使用する1つの重大な欠点は、汚損を回避することが可能でないことであり、そのため、摩擦低減効果は一時的に観察可能であるにすぎない。
【0013】
別の手法、すなわち、船舶の側面の中間近傍における水中での微細気泡の発生(いわゆる、空気微小気泡技術)が、技術的にフォローされてきており、またフォローされている。この手法は、実際には、水と(船舶)表面との間の空気層の使用に比べてずっと低いが、媒体の有効粘性変化をもたらす:小さい気泡で「希釈された(diluted)」水は、気泡
がない純粋な水より低い有効粘性を有する。しかしながら、この方法は、船舶の下で又は船舶の中間近傍において微細気泡を発生する特別のデバイスを必要とするという大きな欠点を有する。水の表面張力が高いことから、気泡の発生には大量のエネルギーを必要とする。これに加えて、気泡の半径rの減少に伴って、気泡の内部の圧力は1/rに比例して増加し、それにより、エネルギーが更に費やされる。しかしながら、主要な欠点は、気泡が、水中での浮力により、水の表面まで上昇することで、水から失われるため、コンプレッサが、常に新しい気泡を発生しなければならず、エネルギー節約が、摩擦低減によるエネルギー節約と気泡を発生するために消費されるエネルギーとの差まで減少することである。しかしながら、構造化表面を必要とするのではなく、気泡を連続して途切れのなく発生するためのデバイスを必要とするこれらの対策は、
-(低粘性空気層の導入によって誘起されるよりもずっと低いが)媒体の有効粘性の変化をもたらし、
-これらの対策は、(水と表面との間の空気層によって誘起される)表面と水との間の接触を回避することによる汚損の回避をもたらさず、
-これらの対策は、(水と表面との間の空気層によって同様に誘起される)表面と水との間の接触を回避することによる腐食の回避をもたらさない。
【0014】
要約すると、空気微小気泡技術と水面下の永久的空気層との間の実質的な差に関して、
以下のことを述べることができる。
-水面下の永久的空気層によって、水が船舶に接触しないことがもたらされる。船舶は乾燥したままである。
-一方、空気微小気泡技術によって、空気が船舶に接触しないことがもたらされる。船舶は湿潤したままである。
【0015】
空気微小気泡技術の欠点は、当然、空気微小気泡技術が、コンプレッサを通して空気の一定の途切れのない再圧送を必要とすることである。一方、このことは、この技術に関してとにかくシステム内に本質的に存在する空気損失に対してこの技術を寛容にする。水面下又は別の液面下での船舶又は他の表面のコーティングにおいて、層からの空気損失がある場合、空気層を再生させるのに適した対策を最初に取られなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2013/131618号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の目的は、液体と接触状態にある又は液体と接触させられることが意図される表面の摩擦低減特性を更に改善するための新しい手法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的は、特許請求の範囲で特徴付けられる本発明の実施の形態によって達成される。
【0019】
特に、本発明は、液体をはじく構造を少なくとも部分的に備え、液面下でガス層を少なくとも一時的に保持する又は保持することができる構造化表面を提供し、この構造化表面は、液体の流れ方向に平行な又は液体に対する構造化表面の移動方向に平行な突出する長手方向構造を更に備え、突出する長手方向構造は、ガス層から0.1μm~10mmだけ少なくとも一時的に突出し、液体に入ることを特徴とする。
【0020】
本発明による構造化表面の特定の構成のために、液体との摩擦は、ガス保持層により大幅に減少することができ、なぜならば、保持されるガス層の粘性が、例えば水の形態の液体の粘性より著しく低いからである。本発明による構造化表面は、この表面構造に加えて適した突出する長手方向構造を備えるため、乱流の抑制又は低減を更に達成することができ、それにより、なお更に、ガス層の汚損防止効果及び腐食防止効果を喪失することなく、表面の摩擦低減効果が増加する。
【0021】
流れ方向(流れ方向は表面と周囲液体との間の相対的移動の方向を意味する)に実質的に平行に方向付けられるこれらの長手方向構造は、上記リブレット構造と同様の方法で構成され、好ましくは、鋭利な縁、すなわち、その曲率半径が、構造の幅及び高さより実質的に小さい、理想的には少なくとも10倍小さい縁で終わる。
【0022】
本発明によれば、構造化表面と少なくとも或る領域で接触状態にある液体は任意の液体である。好ましくは、液体は、水、特に淡水若しくは海水、又は水溶液である。さらに、液体は、制限されることなく、アルコール、アルカン、オイル、極性溶媒、及び無極性溶媒を含有することもできる。「水」が以下で参照されるとき、これは、上記液体も含む。
【0023】
ガス保持層内に保持されるガスは、例えば、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、又は別のガスとすることができる。空気、窒素、アルゴン、及びヘリウムが好まし
い。「空気」が以下で参照されるとき、これは、上記ガスも含む。
【0024】
本発明によれば、4つの有利な構成(i)~(iv)が特に述べられ、それらは、互いに組み合わせることもできる:
(i)液面下でガスを含有する、以下でより詳細に述べることになる、個々のコンパートメント、すなわちセルのコンパートメント壁を形成するリブレット構造(時として以下でリブ構造とも呼ばれる)は、その上側端において、リブレット構造が、特に流れに平行に方向付けられるコンパートメント壁の部分を持って、液体(例えば水)内に少なくとも一時的にかつ少なくとも部分的に突出するように構成される。好ましいコンパートメント形状のうちの1つのコンパートメント形状が、個々の互いに分離したガス保持コンパートメントがそれぞれ、上から見ると、長い方の側面が流れ方向に平行に方向付けられる非対称六角形を有する、細長い六角形形状である場合、リブ構造を非常に容易に一体化することができる:長いコンパートメント側面は、リブ構造が液体内に少なくとも一時的にかつ少なくとも部分的に突出するように上方に増加するだけであり、好ましい構成において、リブ構造は、上向きに鋭利な縁で終端する。
(ii)(i)によるリブ構造は、ここで、親水性表面によって完全に又は部分的に構成することができるため、水内に突出するリブ構造の存在によってここで実質的に増加した、コンパートメントの縁における親水性接触エリアとの水の接触エリアは、空気保持特性を改善し、コンパートメント(ピン止めリブレット)から空気を抜き取るために必要とされる減少圧力を実質的に増加させる。コンパートメントが完全に又は部分的に親水性の表面を有するとき、そのリブ構造は、したがって、2つの目的を果たす:一方で、リブ構造は乱流を抑制するために使用され、他方で、リブ構造は、セル壁がセル壁の上側端で水に結合するピン止め力(pinning force)を増加させ、したがって、セル(疎水性、すなわ
ち撥水性であるように内部コーティングされ、また、その上側縁においてまた引き続き外方に向かい水に入るリブ構造の領域においてのみ親水性である)からの空気の漏出を防止する。
(iii)(i)によるリブ構造は、疎水性、すなわち撥水性表面によって完全に又は部分的に構成することもでき、したがって、水から小さい気泡を捕捉するための構造として同時に使用することができる。例えば、船舶の場合、リブが流れ方向に対して長手方向に形成され、小さい気泡が、水中での浮力による上昇中に、底部から上方に水中を移動する場合、小さい気泡は、リブ構造に垂直に移動し、したがって、リブ構造上に留まり、リブ構造によって捕捉されることができる。これは、親水性リブ構造の場合、既に可能である。しかしながら、気泡捕捉の効果は、少なくとも外側縁の領域が疎水性、すなわち撥水性であるリブ構造の形態の構成によって更にもっと実質的に増強される。なぜならば、空気によるリブ構造の表面における水の変位が更なるエネルギー利点を提供するからである。そのために発生される必要がある気泡は、この場合、リブ構造の高さ又は間隔に好ましくは対応する径を有する。1つの好ましい構成の変形形態において、これは、リブ構造の高さ及び隣接リブ構造との間隔の両方について、0.1μm~1mmの範囲、特に好ましくは5μm~500μmの範囲である。
(iv)しかしながら、完全に又は部分的に親水性の表面を有する「ピン止めリブレット(pinning riblets)」の変形形態(ii)は、有利には、完全に下地空気保持表面なし
で使用することができる:例えばサメ肌の生物工学的使用に基づくような純粋なリブレット表面の場合でさえも、乱流抑制は、乱流が流れ方向に対して横方向に抑制されるとき、それに応じてより効果的である。この場合、これらの長手方向リブを有する普通なら疎水性の表面上で、長手方向リブ又はリブレットの上側縁に近い領域を、親水性となるように構成する変形形態が特に推奨できる。
【0025】
本発明は、図とともに以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1(a)】柱状体構造上のリブ構造の個々のリブ構造の側面図である。
図1(b)】柱状体構造上のリブ構造の個々のリブ構造の上面図である。
図2】流れ方向に平行な長手方向側面上で上部に適用されたリブ構造であって、垂直に上方に水内に突出するように配置される、リブ構造を有する細長い六角形コンパートメント構造を示す図である。
図3(a)】空気損失がある場合の空気捕捉構造の原理を示す図であり、水がない状態を示す図である。
図3(b)】空気損失がある場合の空気捕捉構造の原理を示す図であり、水面下の「厚い」(すなわち、充填された)空気層を示す図である。
図3(c)】空気損失がある場合の空気捕捉構造の原理を示す図であり、水面下の図3(b)と比較して「薄い」空気層を示す図である。
図3(d)】空気損失がある場合の空気捕捉構造の原理を示す図であり、毛が、急峻に立ち上がり、またここで、水内に突出する過剰に薄い空気層の状態を示す図である。
図4(a)】コンパートメントの丸みのある内部構成の例を示す図である。
図4(b)】コンパートメントの丸みのある内部構成の例を示す図である。
図4(c)】コンパートメントの丸みのある内部構成の例を示す図である。
図4(d)】コンパートメントの丸みのある内部構成の例を示す図である。
図5(a)】脱塩装置、冷却ユニット、蒸留装置、及び熱交換機の原理を示す図である。
図5(b)】脱塩装置、冷却ユニット、蒸留装置、及び熱交換機の原理を示す図である。
図5(c)】脱塩装置、冷却ユニット、蒸留装置、及び熱交換機の原理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
撥液(liquid-repellent)構造によって形成されるガス保持層は、本発明による構造化表面の意図される使用中に、ガスがガス保持層によって保持されるように構成される。こうして、本発明による構造化表面が適用される本体は、少なくとも部分的に、好ましくは完全にガスによって液体から分離される。ガス保持層によって保持されるガスは、ガスが、有利には、液体表面まで上昇もせず、液体流によって同伴もされないように、ガス保持層によって固定される。
【0028】
本発明によれば、ガス保持層は、完全な参照が行われる特許文献1に記載されているガス保持表面カバーのように構成することができる。
【0029】
特に、ガス保持層は、少なくとも液体の方を向く側面上の領域に突出部又は突出要素を備え、ガス保持層の表面は、少なくとも突出部又は突出要素の領域に液体をはじく表面を備える。便宜上、突出要素間の距離は、液滴が突出要素間に配置できないような寸法に作られる。有利には、個々の液滴は、複数の突出要素によって運ばれるため、突出要素間に位置する液体とガスとの間の界面は、突出要素のエンベロープとして実質的に形成される。特に、2つの隣接突出要素間の距離は、約50μm~約500μm、好ましくは約100μm~約200μmとすることができる。
【0030】
好ましくは、ガス保持層は、流体不透過性分離壁によって複数の自己充足型(self-contained)部分領域(コンパートメントとも呼ばれる)に細分される。好ましくは、分離壁は、好ましくは、少なくとも複数の領域で又は全体に親水性であるように構成されるか、又は、少なくとも複数の領域で又は全体に親水性表面を備える。本発明によれば、流体は、ガス、液体、及びその混合物を意味することが意図される。分離壁は、その結果、液体流又はガス流が隣接部分領域間に形成されることを防止する。有利には、2つの隣接部分領域間に圧力差がある場合、分離壁は、1つの部分領域から隣接部分領域にガスが流れ去
ることを防止し、それにより、接触中の液体に対する流れ抵抗は局所的に増加し、それと対照的に、余剰ガスは、ガスが流れ込む部分領域から液体内に放出される。
【0031】
好ましくは、分離壁は、ワンピースで(in one piece)、又は、ガス保持層の更なる要素と一体的に構成することができる。更に好ましくは、ガス保持層の部分領域のそれぞれに、2次元配置で複数の疎水性突出要素が存在する。
【0032】
コンパートメントの他に、突出部又は突出要素は、好ましくは、親水性でありかつ突出部又は突出要素の疎水性表面領域で囲まれる中央表面領域を備える。有利には、液体とガスとの間の界面は、親水性であるように構成される領域上に位置付けられる。こうして、更に有利には、液体の流れによるガス気泡の分離が回避される。ガス-液体境界のこの局所的確立は、ピン止めとも呼ばれるため、親水性表面領域を、ピン止め中心とも呼ぶこともできる。
【0033】
したがって、本発明による構造化表面は、好ましくは、上述したコンパートメント又は上述したピン止め中心を備える。特に好ましくは、本発明による構造化表面は、上述したピン止め中心と組み合わせた上述したコンパートメントを備えることができる。
【0034】
すなわち、上記問題は、適した構造化表面によって水面下にガスを保持する原理から出発して、ガスを保持する構造が、適した長手方向構造を有するガス保持構造化表面を構成することによって、ガスが低粘性摩擦低減「潤滑膜(lubrication film)」として摩擦を更に低減するだけではなく、長手方向構造の形態での、コンパートメント壁、及び親水性ピン止め中心の更に導入された、適した修正、及び整形によって、中間表面近傍における乱流が更に抑制されるように、修正されることで、本発明によって解決することができる。
【0035】
空気保持層の個々のコンパートメントへの分割の1つの既存の問題は、コンパートメントが何年にもわたって水面下に空気を保持するが、極端な外的影響(強い乱流、高い過剰圧力等)下で、水がコンパートメントに一度でも入った場合、適度に疎水性の表面のみを有する材料が選択される場合、水の残留物(「水ネスト(water nests)」)は、層が、
その後、空気中に戻される場合でも、コンパートメントの角部にあるままであることである。その問題は、コンパートメント内側表面について、水のための非常に大きい接触角度を有する材料、すなわち、非常に疎水性が高い、理想的には超疎水性の材料を使用することによって、又は、コンパートメントの内側ライニングについて少なくとも非常に疎水性が高い又は理想的には超疎水性の表面を使用することによって、解決することができる。これは、可能であるが、通常、かなりコストのかかる変形形態を示す。さらに、多くの技術的に興味がある材料、特に、技術的シリコーン(technical silicones)は、超疎水性
ではないが疎水性の表面を有し、後続の超疎水性コーティングは、コストを必然的に伴うだけでなく、時間がかかりかつ高価な長期試験においてその長期安定性を最初に実証しなければならない。
【0036】
本明細書で提案される本発明による構成において、この問題は、構造の材料ではなく形状を変更することによって解決される。水ネストは、水が、実質的に球の小滴として形成することに比べて、コンパートメントの角部に位置する(nestle)ことがエネルギー的に有利であるときに形成される。したがって、水ネストの形成は、水とコンパートメントの内側表面との接触によって解放されるエネルギーを最小にすることによって防止される。界面エネルギーは、1平方マイクロメートル当たりの界面エネルギーと、水が表面に接触する平方マイクロメートルの数との積である。1平方マイクロメートル当たりの界面エネルギーは超疎水性表面の選択によって最小になり、水が表面に接触する平方マイクロメートルの数は考えられる最小の曲率半径を有する表面の選択によって最小になる。水ネスト
は、まさに曲率半径が最小であるところで、すなわち、コンパートメントの下側側面上の鋭利な縁の角部において、また、ちょうどそこではないところで(not even just there
)形成される:水ネストは、3つのそのような縁が角部で接するときに観察されるだけである。したがって、本発明による表面構造の目的は、空気保持コンパートメントの内部で鋭利な縁及び角部を回避すること、及び、曲率半径を最大にすること、又はより正確には、コンパートメント内で生じる最小曲率半径をできる限り大きく保つことである。実用的な構成において、これは、コンパートメントの長さの10%及び幅の10%を好ましくは下回らない曲率半径の使用を意味する。これは、コンパートメントの内部にだけ適用され、その上側縁に適用されない。上側縁は、水に対して考えられる最大の引力を加えること(ピン止め)が意図され、上側縁のために、鋭利な縁が明確に所望される。これは、上側端における鋭利な縁が、同様に明確に所望されるリブ又はリブレット構造に同様に明確に適用されるのではなく、コンパートメントの空気保持内部にだけ適用される。
【0037】
以下は、コンパートメントの形状の有利な構成である:
図4(b)に示すように、半球形状(凹状、内方に湾曲した)のコンパートメント;
図4(c)に示すように、内方に湾曲した球部分又は球キャップの形態のコンパートメント;
図4(a)に示すように、半球(好ましくは)又は球部分によって底部で終端する円柱の形態のコンパートメント;
図4(d)に示すように、球セグメントの形態の(又は、50%より大きい%の球、したがって、それほどではないがキャビティの最大内部幅より小さい上側開口を有する)コンパートメント。
【0038】
六角形又は2次元六角形密パック(close pack)を形成するためのそのようなコンパートメントの配置構成は、コンパートメント径の20%未満の残留ウェブを有する後者の場合に好ましい。したがって、コンパートメントは、好ましくは六角形形状を、また、特に好ましくは、図2に示すように細長い六角形形状を有する。以下は、コンパートメントの形状の更なる有利な構成である:
-(水の方に向く上側端における)六角形又は細長い六角形形状のコンパートメント。その内部形状は、コンパートメントの下側側面上の角部が、回避され、丸みによって置換されるように構成される。融解可能材料の場合、例えば、熱可塑性ポリマーの場合、これは、下側側面のわずかの融解によって達成するのが技術的に容易である。
-(水の方に向く上側端における)六角形又は細長い六角形形状のコンパートメント。その内部形状は、コンパートメントの下側側面上の角部が回避されるように構成され、その形状は、コンパートメントが、(i)六角形又は細長い六角形形状を有し、上側側面で開放し、(ii)下側側面で閉鎖するように最適化され、(iii)その形状は、生じる最小曲率半径がこれらの制約下で、考えられる最大に達する又はそれに(好ましくは、10%以内に)近づくように選択される。
【0039】
ガス保持層内に保持されるガスは、例えば、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、又は別のガスとすることができ、空気、窒素、アルゴン、及びヘリウムが好ましい。ガスは、特に好ましくは、空気、又は、窒素、アルゴン、及び/又はヘリウムとの空気混合物である。
【0040】
ガス層が液面下で少なくとも一時的に保持される本発明による表面のこのガス保持層により、摩擦低減の他に、上述した他の3つの問題、すなわち、汚損に対する、すなわち表面上での生物学的成長に対する効果、腐食に対する効果、船舶塗料からの毒素の放出の防止(水が船舶表面にもはや接触しないときには、水溶性毒素が船舶表面から水に入る可能性がない)を解決することも可能である。
【0041】
しかしながら、この保持されるガス層は、乱流の形成を低減することに対して、寄与しない、又は、例えば船舶と水との間で相互作用力を低減することによって間接的に寄与するだけである。これらがゼロであった場合、これは、乱流を回避することにもなる。しかしながら、水面下で保持される空気層の単独使用は、乱流を低減する直接の対策でない。
【0042】
本発明によれば、構造化表面は、したがって、乱流を抑制又は低減するために、液体の流れ方向に平行な又は液体に対する構造化表面の移動方向に平行な突出する長手方向構造を更に備え、突出する長手方向構造は、ガス層から0.1μm~10mmだけ少なくとも一時的に突出し、液体内に入る。これらの更なる突出する長手方向構造は、好ましくは、マイクロメートルのスケールで、すなわち、0.1μm~100μmだけ、又は、ミリメートルのスケールで、すなわち、0.1mm~10mmだけ、ガス層から突出するように構成される。これらの長手方向構造は、特に好ましくは、ガス層から、少なくとも1μm、より好ましくは少なくとも5μm、特に好ましくは少なくとも10μmだけ突出する。
【0043】
こうして、乱流の抑制又は低減を更に達成することができ、それにより、従来技術において見られるようなガス層の汚損防止効果及び腐食防止効果の喪失なしに、表面の摩擦低減効果がなお更に高まる。
【0044】
これらの長手方向構造又はリブ構造の形状は、異なるように構成することができ、例えば、矩形、三角形、又は台形の断面を有することができる。それぞれの場合に、構造が、長手方向に、考えられる最大の範囲を有し、0.1μm~10μmの範囲の、特に好ましくは1μm~8μmの縁の曲率半径を持って上向きに鋭角に集中することが有利である。
【0045】
1つの有利な構成において、流れに平行に又は流れに実質的に平行に方向付けられるそのようなリブ構造は、空気保持層にまたがる疎水性柱状体構造のそれぞれの上部に位置する。これは、図1(a)及び図1(b)の例として示される。この場合、複数の構成の変形形態が存在する:
(i)単純な柱状体構造又は毛であって、その疎水性又は超疎水性柱状体表面によって水をはじき、水面下で空気層を保持することに寄与する、単純な柱状体構造又は毛。
(ii)サルビニア効果(Salvinia effect)による親水性端(ピン止め中心)を有する
疎水性柱状体構造。
(iii)両方共、既に述べている構成の可能性である。本発明による新しいことは、親水性端がある状態で又はない状態で、それぞれの個々の疎水性柱状体構造の上側端上にリブ構造を配置することであり、リブ構造は、空気保持層から永久的に又は一時的に完全に又は部分的に突出し、水内に突出し、流れ方向に方向付けられ、他の2次元の場合に比べてこの方向に著しく(好ましくは、2倍~200倍、特に好ましくは5倍~20倍)長く、そして、好ましくは、上部において鋭利な縁で終わる。代替法として、それぞれの柱状体構造上にある代わりに、そのようなリブ構造は、当然、1つおき等の柱状体構造上にのみ配置することができる。
(iv)事例(iii)において、リブ構造は、親水性表面によって構成することもできるため、柱状体の上側端の親水性ピン止め中心を増強する又は更に置換する。
【0046】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、構造化表面は、液面下で、ガス気泡を発生するデバイスと組み合わされ、ガス気泡は、構造化表面の、液面下で保持されたガス層の近くで発生するか、又は、液体から生じると、ガス層の近くに来る、又は、ガス層と部分的に接触する。
【0047】
ガス気泡を発生するためのこのデバイスは、特に制限されず、従来技術において知られているデバイスの形態で構成することができる。このデバイスは、好ましくは、発生するガス気泡が10μm~10mm、特に好ましくは10μm~1mm、特に10μm~10
0μmの径を有するような構成である。
【0048】
例えば船舶の下での又は船舶の側面の中間近傍における、「空気微小気泡技術(air microbubble technology)」すなわち微細ガス又は気泡の発生との組み合わせは、ガス又は空気層による摩擦低減を達成することができ、水と摩擦状態にある表面の中間近傍においてガス又は気泡によって水が希釈されることによる更なる摩擦低減を伴う。
【0049】
構造化表面を構成する材料は、本発明による表面の用途に応じて選択することができる。しかしながら、好ましくは、構造化表面が作られるポリマー材料が使用される。
【0050】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、構造化表面の材料は、シリコーン、シリコーン系ポリマー、及びアクリル系ポリマーからなるリストの少なくとも1つを含有する。更なる突出する長手方向構造は、この場合、構造化表面それ自身のガス保持層と同じ材料から作ることができる。
【0051】
しかしながら、好ましくは、突出する長手方向構造は、構造化表面それ自身と異なる材料からなる。特に、セラミック材料、酸化物、金属、又は鋼が適する。
【0052】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、長手方向構造は、下地構造化表面に強固に接続されるのではない。代わりに、長手方向構造は、好ましくは、柔軟性がありかつ可動であるように構成される。少なくとも、突出する長手方向構造は、下地の構造化表面に弾性的に接続することができる。
【0053】
上述したように、構造化表面は、好ましくは、液面下でガス気泡を発生するデバイスと組み合わされる。本発明によれば、構造化表面は、通過するガス気泡からガスを捕捉することが可能であり、こうして、それ自身にガスを供給する又は喪失したガスを補充することが可能である。
【0054】
この構成において、構造化表面は、ガス層から突出し、液体内に突出する更なる第2の構造を備えることができる。これらの更なる第2の構造によって、通過するガス気泡からガスを捕捉して、ガス層にガスを供給する又は喪失したガスを補充することができる。
【0055】
この場合、毛、すなわち上向きに細くなる毛、柱状体又はウェブの形態の構造が、好ましくは使用される。すなわち、ガス気泡から空気を捕捉するための突出する第2の構造は、乱流を抑制又は低減するための実際に突出する構造に加えて設けられ、液体の流れ方向に平行に又は液体に対する構造化表面の移動方向に平行に配置される。
【0056】
本発明の更なる好ましい実施形態によれば、ガス層から突出する第2の構造は、気泡を捕捉するために使用される長手方向構造を同時に構成する(図3参照)。
【0057】
本発明の更なる好ましい実施形態によれば、構造化表面は、ガス層から突出する第2の構造は、弾性があり、外部力の非存在下で直立し、第2の構造は、第2の構造の表面の湿潤性によって完全に又は部分的に、少なくとも液体内に突出する部分において、撥液特性を有するように更に構成され、弾性特性は、ガス層が部分的又は完全に喪失する場合、構造が、自動的に直立し液体内に突出する(第2の構造の撥液性層により、第2の構造は、ガス気泡を捕捉することができ、ガス気泡はガス層を再び満たす)ように、また、ガス層が再び形成されるとすぐに、第2の構造の弾性特性及び第2の構造の撥液特性により、第2の構造がガス層内に戻るように折り曲げられるように調整されることを特徴とする。これは、ガス層から突出する第2の構造が、ガス層がない直立状態から、第2の構造が、液体内にもはや突出しない又は以前に比べて実質的に小さい範囲にだけ突出する、より浅く
傾斜した角度の状態に移行することを意味する。
【0058】
ガス層から突出する第2の構造は、第2の構造が、流れ方向に対して斜め後方に向く及び/又はこの方向において内方に湾曲するように、液体の流れ方向又は液体に対する構造化表面の移動方向に関して方向付けられることが更に好ましい(図3参照)。
【0059】
空気微小気泡技術との上述した組み合わせにおいて、空気保持層の構成について種々の可能性が存在する。最も単純な場合、水面下に存在する空気保持層は、ガス気泡の発生器(例えば、コンプレッサ+送出ノズル)と組み合わされ、例えば上向きに幅広になる船舶の理想的に外方に傾斜する表面は、上昇するガス気泡と直接接触し、そのガス気泡は、その後、表面張力によりガス層に一体化される。これは、エネルギーが放出されることと同時に起こるプロセスである。水平に又はほぼ水平に延在する表面、例えば、(船舶の船体形状に応じる)船舶の底部は、船体下で発生するガス気泡と直接接触することができる。特に後者の場合、ガス気泡のサイズに関する制限が存在しない。ガス気泡は、空気層と直接接触するとすぐに、空気層内で崩壊する。
【0060】
気泡が垂直の又はほぼ垂直の壁上を上昇する場合、状況はより難しい。ガス気泡は、壁表面上の空気保持層と接触することなく、壁に平行に上昇する場合がある。したがって、ガス気泡からのガスの空気層への一体化は起こらず、空気損失がある場合に所望される補充は起こらない。その後、好ましくは疎水性コーティングを有する、毛、ネット、円盤形状の若しくは溝形状の構造又は他の構造による支援が提供される。それらの構造は、表面から突出し水に入り、上昇する気泡を捕捉し、また、適した整形によって(好ましくは、船舶の側面上で斜め上向きに給送し、したがって、捕捉された気泡を空気層内に直接流すことによって)、気泡を捕捉し、気泡を空気層に給送する。
【0061】
1つの有利な構成において、捕捉は、(水がない状態で)空気中に直立する疎水性で弾性の構造(毛、ネット、リブ)によって実施され、それらの構造は、図3(a)に概略的に示すように、水面下で空気を保持する層に一体化され、また、それらの長さ、及び、90°より浅い、すなわち、直角より浅いことが意図される、表面に対する姿勢角度により、構造化空気保持層から最初に突出する。この層が、ここで水面下にもたらされる場合、構造が疎水性であるため、構造の毛は、図3(b)に示すように、水との接触を回避しようとし、また、構造が弾性であるため、折り曲がり、任意の浅い角度で空気層に一体化されることになる。水面下の空気層が、ここで空気の損失がある場合に益々薄くなる場合、毛は、空気層内に留まるために益々傾斜しなければならない(図3(c)参照)。毛の屈曲の増加とともに、フックの法則(Hooke's law)に従って、毛を再び持ち上げようと試
みる益々強い回復力が作用し、特定の空気層厚の下で、すなわち、毛の特定の屈曲を超えて、これらの回復力は、空気層内に疎水性毛を保持する毛管力(capillary forces)を上回る。毛は、図3(d)に概略的に示すように、直立し、水内に突出し、ここで気泡を収集することができ、気泡は層を再び満たす。
【0062】
この場合の利点は、空気層が供給され、また十分に厚いとき、これらの空気捕捉構造が、水内に突出せず、したがって、流れ抵抗を増加させることに寄与しないことである。空気損失がある場合にのみ、空気層があまりにも薄くなると、毛は広がり、気泡を捕捉する。構造の弾性特性(毛の場合、整形及び厚さによって直接調整可能である)により、毛が広がる空気層厚を調整することが可能である。
【0063】
組み合わせの更なる大きな利点は、4つ全ての効果、すなわち、(i)水面下のガス又は空気層の効果、(ii)船舶表面又は別の表面の近傍における乱流を回避又は抑制する有向の構造の効果、(iii)ガス又は気泡を導入することによる摩擦を低減する効果、及び、(iv)ガス損失がある場合に水からガス気泡を捕捉することを可能にするように
構成される、構造化ガス保持表面と組み合わせたガス又は気泡の連続した又は断続的な発生を達成することができることである。そのため、ガス保持表面の本発明による1つの構成において、層からのガス又は空気損失がある場合、ガス又は気泡を再び捕捉することができ、ガス又は気泡は再びガス又は空気層を再生する。極端な場合、悪条件下で、ガス又は空気層が、例えば、1時間、ガス又は空気を既に喪失している場合でも、ガス又は気泡を発生するためのコンプレッサは、理論上は、構造化ガス保持表面内のガス又は気泡を捕捉する手段によって、構造化ガス保持表面にガス又は空気を補充するために、1時間ごとに約1分、運転する必要があるだけであることになる。そのため、コンプレッサについてのエネルギー消費は、60倍低いことになり、コンプレッサの寿命及び点検間隔は、相応して長くなることになる。さらに、当然、両方の摩擦低減効果を同時に使用するために、気泡を発生するためのコンプレッサを連続して運転させる可能性が更に存在することになる。
【0064】
4つ全ての効果、すなわち、(i)水面下のガス又は空気層の効果、(ii)船舶表面又は別の表面の近傍における乱流を回避又は抑制する有向の構造の効果、(iii)ガス又は気泡を導入することによる摩擦を低減する効果、及び、(iv)ガス損失がある場合に水からガス又は気泡を捕捉することを可能にするように構成される、構造化ガス保持表面と組み合わせたガス又は気泡の連続した又は断続的な発生を、この場合、任意の所望の方法で組み合わせることができる。
【0065】
本発明による構造化表面は、分離用ガス又は空気層によって液体と表面との直接接触を回避することが重要である多くの異なる適用分野で使用することができる。例えば、本発明による構造化表面は、特に以下の分野で使用することができる:
-空気コーティングによって、摩擦を低減し、生物汚損を回避し、腐食を回避するための、船(sea vessels)の空気コーティング;
-内陸船運(inland navigation);
-海洋測定技術;
-海上プラットフォーム(offshore platforms)、掘削用人工島(drilling islands)、水面下建造物(underwater construction);
-海上ウィンドパーク(offshore wind parks);
-水パイプライン及び液体を輸送するための汎用パイプライン(general pipelines)

-長距離加熱システム;
-例えば、液状食品(liquid foodstuffs)、例えばジュースの貯蔵及び輸送のための
、壁上でのバイオフィルム(biofilm)形成のない衛生的な食品貯蔵;
-バイオフィルムの発生のない衛生的な飲料水貯蔵;
-化学システム工学及び反応器。
【0066】
更なる態様において、本発明は、2つのプレート間に配置され、それにより、プレート間に水層及び空気層を形成する、少なくとも1つの本発明による表面を備えるデバイスに関する。これは、スタックの形態で行うことができ、スタック内で、ガス層及び液体層がその中で交互になる少なくとも2つの構造化表面が、重ねて配置される。これは、特に、大きい液体表面が、例えば単位時間当たりに大量の液体を蒸発させるために所望されるときに有利である。
【0067】
3つの用途を、この場合、述べることができる:
(i)太陽が、事実上、制限なしでかつコストがかからずに利用可能である特に太陽がいっぱいの地域で(例えば、砂漠で)、蒸留、すなわち水の蒸発、そしてその後の水の凝縮によって飲料水を得ること。技術的な問題は、非常に大きい水表面をコンパクトに備えることにあり、非常に大きい水表面によって-特に直接日光及び加熱が、それにより起こる
(特に、物体が、例えばマットブラック着色(matt black coloration)によって光及び
赤外線を吸収するように構成されるとき)-単位時間当たりの大量の水を蒸発させることが可能であり、その水を、その後、例えば飲料水の分野で脱塩水として使用するため再凝縮することができる。
(ii)蒸発冷却によって物体を冷却すること。発電所の冷却塔の唯一の目的は、とりわけ水の蒸発による冷却である。これは、きわめて効果的な冷却法であり、なぜならば、水が、個々の分子間のその水素結合のために、蒸発の非常に高いエンタルピー(水1キログラム当たりに必要とされる熱エネルギー)を有するからである。発電所の冷却塔は、必要とされる冷却用電力を達成するのに十分な単位時間当たりの水が蒸発するような大きいエリアを提供することが必要であるためそうである程度の大きさに過ぎない。蒸発原理に従って動作する冷却ユニット(これらは発電所の冷却塔だけではない)をよりコンパクトにするために解決すべき問題は、コンパクトな空間内でできる限り大きい水エリアを提供することである。
(iii)液体混合物の蒸留において、例えば、化学工業において又は水-アルコール混合物内のアルコールの濃縮において、揮発性の高い液体も、蒸発及び再凝集フェーズにおいて濃縮される。三角フラスコ(Erlenmeyer flasks)及びブンゼンバーナー(Bunsen burners)の代わりに、経済的でかつ効率の高い技術的蒸留法は、コンパクトな容積内に非
常に大きい液体-ガス界面を有するシステムを必要とする。
【0068】
これらの技術的問題は、液面下にガスを保持する表面を使用することによる本発明によって解決される。しかしながら、この場合、ガス透過性接続部が、好ましくは、個々のコンパートメント間に確立される、又は、コンパートメントが省略され、構造化疎水性表面のみが、液面下での連続するガス保持層を確保する。液体それ自身は、図5(a)~図5(c)に概略的に示すように、同様に層を形成する。1つの実施形態の変形形態において、例えば、ガラス又は金属又はプラスチックプレートが、水面下で空気を保持する構造が適用される上側カバーとして使用され、例えば、0.1mm~5mmの厚さの空気層が、プレートの下側側面上に位置する、親水性端を持つ又は持たない疎水性又は超疎水性柱状体構造の高さによって与えられる。理想的に同じサイズで、同じ材料又は異なる材料で作られる更なるプレートは、このプレートに平行に嵌合し、プレートの間隔は、空気保持層の厚さより大きい、例えば、0.1mm~30mm大きい、好ましくは1mm~15mm大きい。プレートが、ここで、水平に位置し、プレート間の中間空間が、わずかに上昇した又は減少した圧力(通常、周囲空気圧力より最大30mbar大きい又は小さい)がある状態で又はない状態で水が充填される場合、水は、プレート間の中間空間を完全に充填せず、空気保持層は上側側面上に留まる。水は、ここで、ゆっくり流れることができ、塩で富化した水(塩水)は、他の側面上で抽出することができる。同時に、空気は、水面上で空気運搬層を通して圧送される。乾燥空気が流入される場合、(流入する空気と比較して)より高い湿度を有する空気が、水の蒸発により流出することが見出される。同時に、2つのプレート並びに2つのプレート間に存在する水層及びガス層からなるユニットは、蒸発のエンタルピーによって冷却される。
【0069】
こうして3つの効果が存在する:
(i)通って流れる空気は、蒸発する液体の分子で富化され、ゆっくりした流れの限定的な事例において、その分子で飽和する。冷却中、液体は、再凝縮し、それは、概して、例えば化学工業及び化学プロセス工学における蒸留と、海水の脱塩による飲料水の生産との両方において使用することができる。
(ii)非蒸発性成分、すなわち、ミネラル及び塩は、水中で濃縮される。セルから再び出てくる液体は、非蒸発性成分を得るために塩に富む塩水として使用することができる。1つの用途は、例えばかなりの深さからの、地熱エネルギーの分野で得られる水(the amounts of water)を含み、その水から、地熱だけでなくミネラル及び価値ある溶解性物質を得ることができる。
(iii)装置はそれ自身を冷却することで、発電所の分野においてだけでなく、実質的に受動的で環境的にやさしい冷却ユニットの形態での使用を可能にする。
【0070】
装置はそれ自身を冷却することで、国内部門における実質的に受動的で環境的にやさしい冷却ユニットの形態での使用を可能にし、国内部門において、エネルギー消費冷却ユニットの代わりに、蒸発のエンタルピーを使用する受動冷却ユニットに切り替えることが可能であり、その理由で、本発明によるデバイスは、初めてコンパクト構成を可能にする。夏に、多数のウェットタオルをつるすことも、環境にやさしい冷却を提供するが、以下の欠点を伴う:
-タオルは、常に、再び湿らせる必要がある。
-絶えず新しく蒸発する水は、タオルが使用不能になるまで水垢(limescale)及び塩
類皮殻(salt crusts)の形成をもたらす。
-蒸発する水は、100%湿度の不健康かつ耐えられない蒸し暑さ(sultriness)までの生活空間内の湿度の増加をもたらす。発汗は、人々をもはや冷やさず、循環不全(circulatory failure)のリスクが存在する。
-遅くとも、室内で100%湿度に達すると、水は、もはや蒸発せず、ウェットタオルの冷却効果は終了する。
-そのため、部屋を絶えず換気することが必要である-それは、夏の日中に冷却される、生活空間及びオフィス空間冷却にとって、又は、食品空間、貯蔵空間、及びコンピューター空間にとって逆効果であり、なぜならば、熱が、その後、高い外部温度の外側から入るからである。
-これに加えて、蒸発によって発生する湿気は、建物への被害及び内容物(本、電子部品、コンピューター等)への被害を引き起こす場合がある。
【0071】
これらすべての問題は、本発明によるデバイスによって解決される:
-新しい水は、絶えずゆっくり供給されて、デバイスの出口における蒸発損失及び塩水の放出を補償する。
-水は、絶えず放出されて、塩が沈殿する前に、継続中の蒸発によって、塩及びミネラルで富化した水を放出する。
-1つの好ましい構成において、塩濃度は、絶えずモニターされ-例えば、電気伝導率測定又はサイクリックボルタンメトリー(cyclic voltammetry)及び塩濃度の自動又は手動評価によって-こうして、水供給及び放出が自動的に調節されるため、塩の沈殿はシステム内で起こらず、また、出口で流出する水(塩水)は所望の塩濃度を有し、それは、特に、塩水から未処理材料(塩、ミネラル)を得る場合に、又は、(例えば治療用途のために医療における)塩水の直接使用の場合に非常に有利である。
-湿度の増加は室内で生じない。建物及び内容物への被害は、高い湿度による人についての快適さの喪失及び健康リスクとともに、同様に回避される。
-塩水は、喪失されるのではなく、所望される場合、使用することができる。
【0072】
デバイスの1つの有利な構成において、(好ましくは、下の)水運搬層及び(好ましくは、上の)空気運搬層が間に存在するちょうど2つの平行な、好ましくは水平に位置するプレートの代わりに、複数のそのようなプレートが、層で重ねて使用される。プレートスタックは、この場合、任意の厚さとすることができる。したがって、1層当たりの2つのプレートはもはや必要とされない。各層について、上側側面上ではなく下側側面上に、水面下で空気を保持する構造化層を含む1つのプレートで十分である。スタック内の隣接層の間隔が例えば1cmである場合、100平方メートルの水表面を、1立方メートルの容積内に生成することができる。これは、熱エネルギーを運び去る問題を提起する。それは、表面を冷却することによってもはや十分に行うことができない。それは、この場合、水の循環によって実施される。出口の冷水は、部屋冷却を実施する熱交換機を通して給送され、その後、その入口を通して蒸発システムに戻る。しかしながら、この回路は、ここで
再び、絶えず閉鎖されるのではなく、連続して又は間隔を置いて、塩に富む水が取り出され、塩分が低い淡水が供給されて、沈殿によるシステムのスケーリング(scaling)及び
加塩(salting)が回避される。湿気で富化した空気は、冷却される部屋にではなく外に
放出される。冷却される部屋の湿度が調節されることが更に意図される場合、湿った空気(humid air)の(わずかの)或る部分が、人工加湿の範囲内で、部屋に(理想的には、
調節された方式で)、当然、給送することもできる。
【0073】
経済的生産が特徴であるが、特に水圧変動及び空気圧変動がある場合に、非常に低い安定性が特徴である、上記デバイスの1つの非常に単純な変形形態は、任意の表面を有する構造化してない又は任意に構造化したプレートの使用である。水面下で空気を保持する構造化表面を持たないプレートの場合、親水性下側側面(その上に水層が担持される)及び疎水性又は超疎水性上側側面(空気層との接触が起こる)もまた、デバイスの有利な構成である。
【0074】
さらに、本発明は、船舶表面上での、水の脱塩のためのシステムにおける又は塩生産における塩富化のためのシステムにおける、及びコンパクトな高性能冷却ユニットとしての冷却システムにおける、本発明による構造化表面の使用にも関する。
【0075】
船舶表面上で、本発明による構造化表面は、特に、(i)船舶と水との間の摩擦力を低減することと、(ii)バイオフィルム成長及び汚損を回避することと、(iii)腐食を回避することと、(iv)船舶コーティングから周囲の水への毒性の又は環境的に有害な物質の放出を回避することとに寄与するために使用することができる。
【0076】
水の脱塩のためのシステムにおいて、本発明による構造化表面又はデバイスは、特に、上水及び飲料水を得るために使用することができる。
【0077】
塩生産における塩富化のためのシステムにおいて、本発明による構造化表面は、特に、ガス及び下地液体の複数層システムを使用することによって使用することができ、液体は、ガス層内に蒸発し、ガス層から、液体の分子で富化した又はそれで飽和したガス(「蒸気」)として取り出される。同じことが、脱塩プラントにおける使用のために適用される。
【0078】
上述したように、本発明による構造化表面は、蒸発のエンタルピーを使用しながら、水又は別の液体の蒸発のためのコンパクトな高性能冷却ユニットとして冷却システムにおいて同様に使用することができる。これは、発電所において好ましいものとすることができる。
【0079】
塩富化の場合と同様に、大きな利点を、ここで、ガス及び下地液体の複数層システムを使用することによって得ることができ、液体は、ガス層内に蒸発し、ガス層から、液体の分子で富化した又はそれで飽和したガス(「蒸気」)として取り出される。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
【手続補正書】
【提出日】2023-11-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に接する面に、少なくともガス保持層を形成する液体をはじく構造を有する領域において、ここで、前記液体をはじく構造は突出部又は突出要素であり、前記ガス保持層の表面は、少なくとも突出部又は突出要素の領域に、液体をはじく表面を有する、液面下でガス層を少なくとも一時的に保持する又は保持することができる構造化表面であって、突出するリブ構造を更に備え、
前記突出するリブ構造は、前記液体をはじく構造の上側端上に形成され、前記液体の流れ方向に平行な又は前記液体に対する該構造化表面の移動方向に平行であり、
前記突出するリブ構造は、前記ガス層から0.1μm~10mmだけ少なくとも一時的に突出し、前記液体に入り、かつ
前記突出するリブ構造は、他の2次元の場合に比べて長手方向に2倍~200倍長く、そして、0.1μm~10μmの範囲の縁の曲率半径を持って上向きに鋭角に集中する、構造化表面。
【請求項2】
前記リブ構造が、疎水性表面で構成されている、請求項1に記載の構造化表面。
【請求項3】
前記構造化表面の材料は、シリコーン、シリコーン系ポリマー、及びアクリル系ポリマーからなるリストの少なくとも1つを含有する、請求項1又は2に記載の構造化表面。
【請求項4】
前記リブ構造は、前記構造化表面の前記リブ構造とは異なる部分と異なる材料からなる、請求項1~のいずれか一項に記載の構造化表面。
【請求項5】
前記リブ構造が、セラミック材料又は酸化物又は金属又は鋼からなる、請求項4に記載の構造化表面。
【請求項6】
前記リブ構造は、下地となる液体をはじく構造に強固に接続されるのではなく、柔軟性がありかつ可動である又は前記下地となる液体をはじく構造に少なくとも弾性的に接続されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の構造化表面。
【請求項7】
前記構造化表面は、液面下で、ガス気泡を発生するデバイスと組み合わされ、ガス気泡は、構造化表面の、液面下で保持されたガス層の近くで発生するか、又は、液体から生じると、ガス層の近くに来る、又は、ガス層と部分的に接触する、請求項1~6のいずれか一項に記載の構造化表面。
【請求項8】
前記ガス層から突出する更なる第2の構造を備え、該更なる第2の構造は、通過する前記ガス気泡からガスが捕捉され、それにより、前記ガス層にガスが供給される又は失ったガスが補充されるように、前記液体内に突出する、請求項のいずれか一項に記載の構造化表面。
【請求項9】
前記ガス層から突出する前記第2の構造は、毛、すなわち上向きに細くなる毛、柱状体及びウェブの形状を有する、請求項に記載の構造化表面。
【請求項10】
前記ガス層から突出する前記第2の構造は、弾性があり、外部力の非存在下で直立し、前記第2の構造は、該第2の構造の表面の湿潤性によって完全に又は部分的に、少なくとも前記液体内に突出する部分において、撥液特性を有するように更に構成され、前記弾性特性は、前記ガス層が部分的又は完全に喪失する場合、前記構造が、自動的に直立し前記液体内に突出する(前記第2の構造の撥液性層により、該第2の構造は、ガス気泡を捕捉することができ、該ガス気泡は前記ガス層を再び満たす)ように、及び、ガス層が再び形成されるとすぐに、前記第2の構造の弾性特性及び該第2の構造の撥液特性により、該第2の構造が前記ガス層内に戻るように折り曲げられるように調整される、請求項7~9のいずれか一項に記載の構造化表面。
【請求項11】
前記ガス層から突出する前記第2の構造は、該第2の構造が、前記流れ方向に対して斜め後方に向く及び/又はこの方向において内方に湾曲するように、前記液体の流れ方向又は前記液体に対する前記構造化表面の移動方向に関して方向付けられることを特徴とする、請求項710のいずれか一項に記載の構造化表面。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の少なくとも2つのプレートと、少なくとも1つの構造化表面を備えるデバイスであって、2つのプレートの間に配置され、それにより、前記プレートの間に水層及び空気層を形成する、デバイス。
【請求項13】
船舶表面のための請求項1~11のいずれか一項に記載の構造化表面の使用。
【請求項14】
水の脱塩のためのシステムにおける、請求項1~12のいずれか一項に記載の構造化表面又はデバイスの使用。
【請求項15】
蒸発のエンタルピーを使用しながらの、水又は別の液体の蒸発のためのコンパクトな高性能冷却ユニットとしての、冷却システムにおける、請求項1~12のいずれか一項に記載の構造化表面又はデバイスの使用。