(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123810
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】遮光シート及び、遮光層を有するディスプレイ
(51)【国際特許分類】
H10K 50/84 20230101AFI20240905BHJP
C09C 1/48 20060101ALI20240905BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240905BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240905BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20240905BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240905BHJP
【FI】
H10K50/84
C09C1/48
C08J5/18 CEY
C08J5/18 CFF
G09F9/00 313
G02B5/00 B
H10K59/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031518
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白井 篤美
(72)【発明者】
【氏名】南方 克哉
【テーマコード(参考)】
2H042
3K107
4F071
4J037
5G435
【Fターム(参考)】
2H042AA15
2H042AA26
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107CC33
3K107DD89
3K107EE27
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3K107FF18
4F071AA33
4F071AA42
4F071AA53
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4F071BC01
4J037AA02
4J037DD05
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4J037FF02
5G435AA02
5G435BB04
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5G435LL04
5G435LL07
5G435LL08
5G435LL10
(57)【要約】
【課題】
複数の発光素子を光源とするディスプレイに適用した場合においても遮光性に優れ、LED素子を光源とするディスプレイに適用した場合においても埋め込み性に優れる遮光シートを提供することを課題とする。
【解決手段】
少なくとも樹脂(A)と黒色着色剤(B)を含有する遮光層からなり、前記遮光層のガラス転移温度(Tg)が-20℃以上50℃以下であり、厚さが1μm以上100μm以下であり、複数の発光素子を光源とするディスプレイに用いられる遮光シート。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子を光源とするディスプレイに用いられる遮光シートであって、
前記遮光シートは樹脂(A)と、黒色着色剤(B)とを含有する遮光層からなり、
前記遮光層のガラス転移温度(Tg)が-20℃以上50℃以下であり、
前記遮光層の厚さが1μm以上100μm以下である遮光シート。
【請求項2】
前記樹脂(A)は、のガラス転移温度(Tg)が21℃以上100℃以下であり、
重量平均分子量が1万~100万である請求項1に記載の遮光シート。
【請求項3】
前記遮光層が無機フィラーを含有する請求項1または2に記載の遮光シート。
【請求項4】
前記樹脂(A)がアクリル樹脂またはウレタン樹脂を含有する請求項1または2に記載の遮光シート。
【請求項5】
前記黒色着色剤(B)がカーボンブラックを含有し、
前記カーボンブラックの含有率が前記遮光層の全質量に対して5質量%以上45質量%以下である請求項1または2に記載の遮光シート。
【請求項6】
請求項1または2に記載の遮光シートを有するディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遮光シートに関するものであり、詳しくは例えば電子機器やディスプレイをはじめとする様々な製品に使用される複数の発光素子の光拡散防止性能に優れる遮光層を形成するための遮光シート、並びに前記遮光層が搭載されたディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイは、さらなる高性能化を目指して、様々な発光素子を用いる開発が盛んに行われている。特に、マイクロLEDディスプレイは、液晶、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等に代わる新たなディスプレイとして盛んに研究開発が行われており、サイネージやテレビなどの大型ディスプレイ用途からタブレット、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、ウェアラブル機器等の小型サイズまで幅広く応用が期待されている。マイクロLEDディスプレイは、輝度とコントラストが高く、隣接画素間における光の混色を抑制するため、特許文献1に記載されるように遮光性を有する隔壁が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、隣接画素間に特定の形状、光学濃度の遮光部を樹脂と黒色顔料から形成する旨が記載されている。
しかし、近年小型化が進んでいるLED素子においては、LED素子間の間隔もより狭くなり特許文献1に記載される遮光部では遮光性が不足している。さらに、遮光部に含まれる樹脂や黒色顔料は、経時凝集による表面形状変化や端部の浮きなどの問題を引き起こすという問題が発生している。
また、製造工程の簡易化の観点から、マイクロサイズのLED素子と遮光シートを積層しプレスすることで密着させて隔壁を形成する方法が注目されており、マイクロサイズのLED素子に追従して空域を埋められる柔軟性に優れた遮光シートは、実用性が高く、ディスプレイ市場で求められている(以下、埋め込み性)。
【0005】
本開示は上記問題点に鑑みてなされたものであり、LED素子のみならず有機EL等様々な複数の発光素子を光源とするディスプレイに適用した場合においても遮光性や経時凝集性や端部の反りに優れ、LED素子を光源とするディスプレイに適用した場合においても埋め込み性に優れる遮光シートおよび遮光層を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討した結果、以下に示す遮光シートにより上記課題を解決できることを見出し、下記[1]~[6]の本発明を完成するに至った。
【0007】
[1]:複数の発光素子を光源とするディスプレイに用いられる遮光シートであって、
前記遮光シートは樹脂(A)と、黒色着色剤(B)とを含有する遮光層からなり、
前記遮光層のガラス転移温度(Tg)が-20℃以上50℃以下であり、
前記遮光層の厚さが1μm以上100μm以下である遮光シート。
【0008】
[2]:前記樹脂(A)は、ガラス転移温度(Tg)が21℃以上100℃以下であり、
重量平均分子量が1万~100万である[1]に記載の遮光シート。
【0009】
[3]:前記遮光層が無機フィラーを含有する[1]または[2]に記載の遮光シート。
【0010】
[4]:前記樹脂(A)がアクリル樹脂またはウレタン樹脂を含有する[1]または[2]に記載の遮光シート。
【0011】
[5]:前記黒色着色剤(B)がカーボンブラックを含有し、
前記カーボンブラックの含有率が前記遮光層の全質量に対して5質量%以上45質量%以下である[1]または[2]に記載の遮光シート。
【0012】
[6]:[1]または[2]に記載の遮光シートを有するディスプレイ。
【発明の効果】
【0013】
本開示により、複数の発光素子を光源とするディスプレイに適用した場合においても遮光性、経時凝集性や端部の浮きに優れる遮光シートを提供することが可能となった。また本開示により、上記に加え、LED素子を光源とするディスプレイに適用した場合においても埋め込み性に優れる遮光シートおよび遮光層を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】遮光シートの積層構成例を示す模式的断面図。
【
図2】複数の発光素子を有する基板上に遮光層からなる隔壁を形成する工程を示す模式的断面図。
【
図3】マイクロLEDの基板を模した試験基板の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本開示の一例を説明するものである。本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を変更しない範囲において実施される変形例も含まれる。
本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値、および上限値の範囲として含むものとする。(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸をいう。また、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に1種単独でも2種以上を併用してもよい。
[遮光シートの形態]
本開示の遮光シートは、少なくとも遮光層からなる。遮光シートは、
図1(a)に示すように、遮光層と剥離ライナーとが積層した構成、
図1(b)に示すように、遮光層が基材と積層された構成であっても良い。基材または剥離ライナーとの積層構造の数は特に限定されない。
【0016】
前記剥離ライナーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムまたはプラスチックシートに、シリコン樹脂などの剥離剤を塗布し剥離層を設けたものなどが挙げられる。この剥離ライナーの厚さについては特に制限はないが10~200μm程度である。
【0017】
前記基材としては、特に制限はされないが、例えばプラスチックフィルムや、反射防止(AR)フィルム、偏光板、位相差板などの各種光学フィルムが挙げられる。前記プラスチックフィルムとしては、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリウレタンフィルム、ナイロンフィルム、ポリオレフィンフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンフィルムなどが挙げられる。上記記載の基材の厚さは特に制限されないが、10~2000μmが好ましい。また、本開示の遮光シートは、基材/遮光層/剥離ライナーの3層構造が好ましい。
【0018】
本開示の遮光シートは、
図1(c)に示すように、第一剥離ライナー/遮光層/第二剥離ライナーの3層構造をとることが好ましい。
第一剥離ライナーと第二剥離ライナーは任意に選定可能であり、同一の剥離ライナーを用いてもよい。ハンドリングの観点からは、第一剥離ライナーが軽剥離ライナーであり、第二剥離ライナーが重剥離ライナーであることが好ましい。軽剥離ライナーの厚さTlは10~150μm、重剥離ライナーの厚さは25~200μmの範囲が好ましく、且つ、Tl<Thの関係を満たすことが好ましい。また、遮光シートをロール形態とする場合には、軽剥離ライナーを巻外側に設けることが好ましい。
第一剥離ライナー、第二剥離ライナーの剥離力は、各剥離ライナーの遮光層との貼付面の離型処理により調整することができる。例えば、剥離剤の種類、剥離剤の塗布量、離型層の表面粗さにより調整することができる。剥離力の値を小さくしたい場合には、表面粗さを粗くする、剥離剤の塗布量を多くする等の処理が有効であり、剥離力の値を大きくしたい場合には、その逆に調整すればよい。
【0019】
遮光シートを製造後、または遮光シートを製造しながら、巻芯に遮光シートをロール状に巻回することにより遮光シートロールが得られる。巻き取りの長さは用途により設計し得る。生産性を高める観点からは50m以上であることが好ましく、100m以上であることがさらに好ましい。巻き取りの長さは、製造歩留まりの観点から2500m以下とすることが好ましい。
【0020】
本開示の遮光シートは、複数の発光素子を光源とするディスプレイの光の混色を防ぐ隔壁として用いることが好ましい。複数の発光素子を光源とするディスプレイは、例えば、有機ELディスプレイパネル、液晶ディスプレイパネル、マイクロLEDディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、タッチパネル、電子ペーパーなど、高品位が要求されるようなディスプレイが挙げられる。
遮光シートを構成する遮光層は、直接密着させて積層することが好ましい。密着させる被着体としては、特に制限されないが、アクリル、ポリカーボネート、エポキシ、ポリイミド、ガラスまたはポリエチレンテレフタレートなどが好ましい。さらに、被着体は、金属からなる基板電極部位を有するものや、バックライトモジュール、LED、有機ELなどの複数の発光素子部位を有するものがより好ましい。
遮光シートを構成する遮光層は、凹凸面に対する高い追従性を有しているため、複数の発光素子に追従して発光素子の間を充填する使用方法が好適である。発光素子間に遮光層を充填することで、遮光層は隣接する発光素子の光源を遮光し、光の混色を防ぐ隔壁として機能する。特に、マイクロサイズの発光素子に追従することが可能であることから、発光素子としてはマイクロLEDがより好適であり、マイクロLEDディスプレイパネルの隔壁として、遮光層を使用することがより好ましい。
以下、隔壁を形成する工程の一例を、
図2を用いて説明する。
【0021】
工程(a):遮光シートの載置工程
図2(a)に一例を示すように、複数の発光素子を有する基板上に遮光シートの遮光層を、発光素子を直接覆うように載置する。なお、遮光シートが第一剥離ライナーと第二剥離ライナーを有する場合は、第一剥離ライナーを剥離し、遮光層を露出させてから、前述の様に載置する。第二剥離ライナーは、載置後すぐに剥がしても良く、下記に示すプレス工程後に剥がしても良い。
本明細書において、複数の発光素子とは、2つ以上の発光素子であれば特に限定されない。また、発光素子の発光色は特に限定されず、有機EL発光素子、LED発光素子が適用できる。発色は例えば、赤色、緑色、青色が挙げられる。
発光素子の大きさは、厚さ1mm以下、平面視の面積が2mm
2以下のものが好ましく、厚さが100μm以下、平面視の面積が40000μm
2以下のものがより好ましく、厚さが50μm以下、平面視の面積が10000μm
2以下のものがさらに好ましく、厚さが20μm以下、平面視の面積が2500μm
2以下のものが最も好ましい。
基板上に載置する発光素子同士の間隔は、例えば、10~5000μmである。赤色、緑色、青色の発光素子をセットで1画素として基板上に載置する場合、画素同士の間隔は例えば10~2000μmであって、20~1800μmが好ましく、500~1500μmがより好ましい。1画素中における発光素子同士の間隔は、例えば、10~200μmであって、10~100μmが好ましく、20~60μmがより好ましい。
【0022】
工程(b):プレス工程
図2(b)に示すように、プレスによって遮光層を流動させ、複数の発光素子の間に充填する。複数の発光素子の間に充填した遮光層は隔壁となる。プレス方法は特に限定されないが、熱プレス、真空プレスが好ましい。プレス時の温度は、遮光層の充填性の観点から、20~200℃が好ましく、50~150℃がより好ましく、60~130℃がさらに好ましく、80~120℃が最も好ましい。
発光素子や被着体との密着性を高めるために、プレス後、さらに加熱エージングしてもよい。加熱温度は80~250℃が好ましく、100~220℃がより好ましく、140~190℃がさらに好ましい。加熱時間は30~300分が好ましく、60~240分がより好ましく、90~180分がさらに好ましい。上記の加熱温度、加熱時間とすることで、遮光層の残留応力を取り除き、密着面を平滑化することができる。
加熱エージングは後述する工程(c)の後に実施してもよい。
【0023】
工程(c):エッチング工程
工程(c)ではエッチングを行い、発光素子上の遮光層を取り除く、または、薄膜化する。遮光層を取り除くことによって、発光素子の輝度を高くし、発光時の視認性を確保する。エッチング後の隔壁の厚さは、
図2(c-1)に示すように発光素子の厚さと同程度か、
図2(c-2)に示すように遮光層の厚さ以下が好ましい。なお、発光素子上から遮光層を完全に除去せずとも、実質的に取り除けていればよく、多少の薄膜が残存した状態でもよい。
エッチング方法は、特に限定されないが、薬剤を用いた化学的研摩などのウェットエッチング法や、研磨材を用いた物理的研摩、レーザエッチング、アルゴンプラズマや酸素プラズマを利用したプラズマエッチング、イオンビームエッチングなどのドライエッチング法が好ましい例として挙げられる。表面の凹凸を減少させる観点から、ウェットエッチング法とドライエッチング法を併用することが好ましい。
また、プラズマ処理などの物理的エッチングでもよい。エッチングの条件としては、例えば、異方性プラズマ装置にて、CF
4/O
2/N
2の混合ガスを用い、出力1500~3000W、180~600秒の条件でドライエッチングすればよい。この際、CF
4のガス供給量としては、例えば50~100sccmであり、O
2のガス供給量としては、例えば500~1000sccm、N
2のガス供給量としては、例えば50~100sccmとすればよい。
【0024】
上記の通り工程(a)~(c)を経て、遮光層から隔壁を形成できる。
次に、本開示の遮光シートの構成成分について、好ましい例を挙げながら詳細に説明する。
【0025】
[遮光層]
遮光層は、樹脂(A)と黒色着色剤(B)を含有し、さらに、架橋剤や無機フィラーを含有することが好ましく、その他成分を含有しても良い。
本開示において、樹脂とは、バインダーとして物と物を接着する機能を持った物質であり、樹脂(A)は、黒色着色剤(B)と発光素子を有する基板および/または発光素子を接着する機能を有している。
【0026】
本開示の遮光層は、ガラス転移温度(Tg)が-20℃以上50℃以下であることが特徴であり、-20℃以上35℃以下であることが好ましく、-10℃以上15℃以下であることがより好ましく、-10℃以上10℃以下であることが最も好ましい。
遮光層のガラス転移温度(Tg)を50℃以下とすることで、プレス工程にて、遮光層が柔軟に流動し、発光素子の間に流入するため、発光素子と遮光層の空域を減らす埋め込み性が向上し、優れた遮光性を発現することができる。また、発光素子が存在しない基板の端部においても、被着体と良好に密着できるため、エッチング工程後の端部の浮きを防止できる。遮光層のガラス転移温度(Tg)を-20℃以上とすることで、黒色着色剤(B)が遮光層内に固定されるため、黒色着色剤(B)の経時凝集を防ぐことや、優れた遮光性を発現することができる。
なお、遮光層のガラス転移温度(Tg)は、後述の実施例に記載の方法で測定したものであって、遮光層の樹脂(A)が後述する熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂を含む場合、遮光層のガラス転移温度(Tg)とは樹脂(A)の熱硬化並びに光硬化前のガラス転移温(Tg)である。
【0027】
上記の効果について、本発明者は以下のように推測している。
遮光層のガラス転移温度(Tg)が本開示の規定値内の場合、プレス工程にて遮光層に圧力が加えられると、遮光層に含まれる樹脂(A)の分子運動が活発化し、分子鎖の絡まりがほぐれやすい状態となる。分子鎖の絡まりがほぐれると、基板や発光素子などの凹凸のある被着体に対して、追従するように変形することが可能となる。高い追従性を発現することで、発光素子と遮光層の間の空域を減少させ、埋め込み性を向上することができる。空域は、少ないほど光漏れが起きにくくなるため、高い遮光性の発現に繋がる。
遮光層が発光素子に追従するように変形した後に、適度な分子間相互作用により、遮光層の更なる変形は抑制される。遮光層が発光素子間に留まることで隔壁が形成される。
さらに、当該ガラス転移温度(Tg)が本開示の規定値内の場合、加熱エージング時に遮光層の分子鎖の絡まりが最適化され、残留応力が取り除かれるため、遮光層が平滑化し、被着体との密着性が向上し、遮光層の端部の浮きが抑制される。
また、当該ガラス転移温度(Tg)が本開示の規定値内の場合、適度な樹脂(A)の分子間相互作用と、樹脂(A)と黒色着色剤(B)との分子間相互作用により、黒色着色剤(B)は遮光層内に強固に固定されるため、黒色着色剤(B)の経時凝集を抑制し、発色性を維持することが可能となり、遮光性を高めることができる。
当該ガラス転移温度(Tg)が規定値より高い場合、プレス工程にて、分子の運動の活発化が起こりにくく、分子間相互作用が高まるため、発行素子に追従することが困難となり、埋め込み性が悪化する。また、加熱エージング時においても分子間相互作用が優位に発現し、遮光層の平滑化が起こりにくく、エッチング工程後の遮光層の端部の浮きが発生しやすくなる。
当該ガラス転移温度(Tg)が規定値より低い場合、プレス工程にて、分子の運動が過剰に活発化されるため、分子間相互作用の働きが抑制され、遮光層は発光素子間に充填された後も変形を続け、発光素子間に留まることができずに流動してしまう。遮光層が大きく流動することで、発光素子と遮光層の間の空域が増加することや、遮光層の膜厚が不均一化するため、遮光性が低下する。また、黒色着色剤(B)の固定能力が低く、黒色着色剤(B)の経時凝集が進行しやすい。黒色着色剤(B)が凝集することで、発色性も低下するため、更なる遮光性の低下を引き起こす。
【0028】
遮光層の厚さは、遮光性と埋め込み性の両立の観点と、端部の浮きの観点から、1~100μmであって、5~50μmが好ましく、15~40μmがさらに好ましい。遮光層の厚さを1μm以上とすることで、遮光層が効率よく光を吸収し、十分な遮光性を発揮する。遮光層の厚さが100μm以下の場合、プレス工程にて加えられた圧力を遮光層が吸収する圧力損失が少なく、遮光層が十分に流動するため、優れた埋め込み性を発揮する。また、上記範囲とすることで、加熱エージング後の遮光層の収縮が抑制され、端部の浮きが発生しにくくなる。
遮光層は単層でも、2層以上の積層のいずれの形態でもよい。本開示における厚さは、後述する実施例記載の方法にて測定した。
【0029】
[遮光層の形成方法]
遮光層の形成方法は、特に限定されないが、好適な例として遮光層を構成する成分に任意の溶剤を添加した樹脂組成物を塗工して遮光層を形成する方法が挙げられる。溶剤の添加は塗工に適した粘度水準に調整することを目的とする。
塗工には、コンマコーター、ダイコーター、ロールコーター、リップコーター、リバースコーター、グラビアコーター、バーコーター、カーテンコーター、ディップコーティング、スピンコーティング、シルクスクリーン、キャスティングなどの公知の塗工機や手法を用いることができる。樹脂組成物に含まれる溶剤は、塗工後、乾燥工程により除去することができる。
好ましい実施形態としては、樹脂組成物を剥離ライナーや基材などの支持体に塗布した後、塗布膜を熱風オーブン、赤外線ヒーターなどを用いて加熱乾燥することで、支持体の一方の面上に遮光層を形成することができる。さらに、遮光層の架橋密度を上げるために、例えば特定の温度条件下にて静置するようなエージング処理や、UV等を照射することが好ましい。
【0030】
[樹脂組成物]
樹脂組成物は溶剤と樹脂(A)と黒色着色剤(B)とを攪拌しながら混合して得ることができる。任意の溶剤は、樹脂(A)と黒色着色剤(B)とを混合する際に、粘度など加工適正を調整する目的で用いるため、エステル系、エーテルエステル系、エーテル系、アルコール系、芳香族系など樹脂(A)を相溶可能なものを適宜用いることができる。具体的には、アセトン、2-ブタノン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、イソプロピルアルコール、N-メチル-2-ピロリドンなどが好適例として挙げられる。攪拌は、公知の攪拌装置を使用でき、ディスパー、ミキサー、シェイカー、ホモジナイザーなどが好ましい。
【0031】
樹脂組成物を得るために、第一に、任意の溶剤、樹脂(A)および/または分散剤に黒色着色剤(B)を分散した黒色分散体を作製し、第二に、樹脂(A)、架橋剤および/またはその他成分を添加するような二段階以上の製造工程を取っても良い。ハンドリングの観点から、第一段階で樹脂(A)と黒色着色剤(B)から黒色分散体を作製することが好ましく、第二段階以降で架橋剤を添加することがより好ましい。
【0032】
[樹脂(A)]
樹脂(A)は、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも用いることができ、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。埋め込み性の観点から、少なくとも1種以上の熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂は、加熱による架橋反応に利用できる官能基を複数有する樹脂であり、自己架橋可能な官能基を有していてもよい。当該樹脂は熱硬化性モノマーも含まれ得るが、本実施の形態においては、塗膜強度の観点から、重量平均分子量(Mw)が5000以上の熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
【0033】
熱硬化性樹脂の好適例は、(メタ)アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリエステル樹脂、縮合型ポリエステル樹脂、付加型ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂やポリウレタンウレア樹脂などのウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、オキセタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ポリ乳酸樹脂、オキサゾリン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。黒色着色剤(B)の分散性の観点から、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリアミド樹脂のうちの少なくとも1つを含んでいることが好ましい。さらに、被着体に対する密着性と端部の浮きの観点から、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂のうちの少なくとも1つを含んでいることがより好ましい。
熱硬化性樹脂は1種単独、または2種以上を組み合わせて用いることができる。本開示においては、遮光層の全量(100質量%)中、埋め込み性の観点から(メタ)アクリル樹脂を30質量%以上、および/または、ウレタン樹脂を30質量%以上用いることが好ましい。さらに、黒色着色剤(B)の分散性の観点から、ウレタン樹脂を50質量%以上用いることが好ましい。
【0034】
本開示において、(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルを共重合して得られるアクリル共重合体が好ましい。(メタ)アクリル酸エステルの好適例として(メタ)アクリル酸アルキルエステルが例示できる。架橋構造を形成する場合には、官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステルとを共重合して得られるアクリル共重合体が好ましい。
【0035】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は、直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル基のいずれであってもよい。アルキル基は炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~12のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基が更に好ましい。具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ラウリル。シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-n-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。これらの中でも特に、黒色着色剤(B)の分散性の観点から(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルが好ましく、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、を用いることが特に好ましい。
【0036】
(メタ)アクリル共重合体100質量%に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位は10~100質量%であることが好ましく、20~90質量%であることがより好ましい。
【0037】
官能基含有モノマーであり(メタ)アクリル酸を有するモノマーとしては、カルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマーが例示できる。官能基含有モノマーを含有することにより樹脂(A)の凝集力が向上し、強靱な遮光層が得られる。
【0038】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸β-カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸p-カルボキシベンジル、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸およびイソクロトン酸が例示できる。これらの中でも、特に、(メタ)アクリル酸が凝集力の観点から好ましい。
【0039】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、および(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレートが例示できる。これらの中でも、凝集力の観点から、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルがより好ましい。
【0040】
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチルが例示できる。
【0041】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステルが例示できる。
【0042】
(メタ)アクリル共重合体100質量%に対し、官能基含有モノマー由来の構造単位の合計は、1~20質量%であることが好ましい。前記範囲とすることにより、架橋剤との反応で凝集力を調整することができる。
(メタ)アクリル共重合体100質量%に対し、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位は1~10質量%であることが好ましい。前記範囲にあることで遮光層の凝集力を調整することができる。また、(メタ)アクリル共重合体100質量%に対し、水酸基含有モノマー由来の構成単位は1~10質量%であることが好ましい。前記範囲にあることで被着体への密着性を高めることができる。
【0043】
(メタ)アクリル共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、官能基含有モノマーと共重合可能なその他のモノマーに由来する構造単位が含まれていてもよい。例えば、アルキレンオキシ基を有するモノマー、その他ビニルモノマーが挙げられる。例えば、メトキシエチルアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、酢酸ビニル、クロトン酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、アクリルアミドが例示できる。前記その他のモノマーに由来する構造単位は、(メタ)アクリル共重合体100質量%中、0.1~20質量%であることが好ましい。
【0044】
(メタ)アクリル共重合体は、モノマー混合物を重合することにより得られる。重合時には、必要に応じて重合開始剤を用いることができる。重合開始剤の含有率は、モノマー混合物100質量%に対して例えば0.01~10質量%とする。重合方法は限定されない。例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合により重合することができ、重合制御の容易さから溶液重合が最も好ましい。溶液重合で用いる溶媒は、例えば、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アニソール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンが例示できる。重合温度は例えば60~120℃、重合時間は2~12時間程度とすることができる。
【0045】
重合開始剤は、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤としては、過酸化物およびアゾ化合物が好適である。アゾ化合物は、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(略称:AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)などの2,2’-アゾビスブチロニトリル;2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)などの2,2’-アゾビスバレロニトリル;2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などの2,2’-アゾビスプロピオニトリル;1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)などの1,1’-アゾビス-1-アルカンニトリルが挙げられる。過酸化物は、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3などのジアルキルパーオキサイド;t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル;シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレート、などのパーオキシケタール;クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルシクロヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;ビス(t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネートが挙げられる。
【0046】
本開示において、ウレタン樹脂とは、1分子中にウレタン結合を2つ以上含む化合物の総称である。ウレタン樹脂は、ポリイソシアネートと、ポリオールとを反応させて得ることができる。
【0047】
ポリイソシアネートは1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するものであればよく、黒色着色剤(B)の分散性の点から、ジイソシアネートまたはトリイソシアネートが好ましく、ジイソシアネートがより好ましい。ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートのような公知の脂肪族ジイソシアネートや、ベンゼン-1,3-ジイソシアネートなどの公知の芳香族ジイソシアネートの中から、黒色着色剤(B)の分散性を考慮して、適宜選択して用いることができる。ポリイソシアネートは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ポリオールと過剰のポリイソシアネートを反応させて得られたイソシアネート基末端プレポリマーをウレタン樹脂の中間体として用いてもよい。
【0048】
ポリオールは1分子中に2つ以上の水酸基を有するものであればよく、黒色着色剤(B)の分散性の点から、ジオールまたはトリオールが好ましく、ジオールがより好ましい。ジオールとしてはエチレングリコールなどの公知の脂肪族ジオールや、ベンゼンジオールなどの公知の芳香族ジオールの中から、黒色着色剤(B)の分散性を考慮して、適宜選択して用いることができる。ポリオールは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどのプレポリマーを用いてもよい。
【0049】
ウレタン樹脂は、更にウレア結合を有するポリウレタンウレア樹脂であってもよい。ポリウレタンウレア樹脂は、例えば、末端にイソシアネート基を有するウレタン樹脂に、ポリアミンを反応させることで合成できる。
ポリアミンは1分子中に2つ以上のアミノ基を有するものであればよく、黒色着色剤(B)の分散性の点から、ジアミンまたはトリアミンが好ましく、ジアミンがより好ましい。ジアミンとしてはエチレンジアミンなどの公知の脂肪族ジアミンや、フェニレンジアミンなどの公知の芳香族ジアミンの中から、黒色着色剤(B)の分散性を考慮して、適宜選択して用いることができる。ポリアミンは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
熱硬化性樹脂の官能基は、後述する架橋剤との組み合わせにより適宜選択すればよく、例えば、水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリン基、オキサジン基、アジリジン基、チオール基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シラノール基等が挙げられる。黒色着色剤(B)の分散性の観点から、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基が好ましい。カルボキシル基を有する場合、熱硬化性樹脂の酸価は1~40mgKOH/gが好ましく、3~20mgKOH/gがより好ましく、5~15mgKOH/gがさらに好ましい。熱硬化性樹脂の酸価を上記範囲とすることで架橋剤との架橋密度を最適化でき、黒色着色剤(B)の凝集を防ぐことができる。本開示における酸価は、後述する実施例記載の方法にて測定した。
【0051】
光硬化性樹脂は、光により架橋反応を起こす不飽和結合を1分子中に1つ以上有する樹脂であればよい。光硬化性樹脂の好適例としては、例えば、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ポリ乳酸樹脂、オキサゾリン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シリコーン樹脂、およびフッ素樹脂などが挙げられる。
また、光硬化性樹脂は、加熱による架橋反応に利用できる官能基を有していてもよい。
【0052】
遮光層が光硬化性樹脂を含有する場合、開始剤も含有することが好ましい。開始剤としては、トリアジン系光重合開始剤、ボレート系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、およびオキシムエステル系光重合開始剤などが用いられる。中でもアセトフェノン系光重合開始剤、およびオキシムエステル系光重合開始剤は、加熱エージング工程時に黄変が少ないことから好ましい。
開始剤の含有率は、黄変の観点から、遮光層の全量(100質量%)を基準として、0.5~10質量%含有することが好ましく、0.5~5質量%含有することがより好ましい。
【0053】
熱可塑性樹脂は、例えば、ブチラール樹脂、スチレンーマレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン(HDPE、LDPE)、ポリブタジエン、およびポリイミド樹脂などが挙げられる。
【0054】
樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は1万~100万が好ましく、3万~50万がより好ましく、5万~30万がさらに好ましく、5万~15万が最も好ましい。重量平均分子量(Mw)を上記範囲とすることで黒色着色剤(B)の分散粒子径を好適なものにでき遮光性を向上できる。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。本開示における重量平均分子量は、後述する実施例記載の方法にて測定した。
【0055】
樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、21℃~100℃が好ましく、21℃~65℃がより好ましく、21℃~50℃が更に好ましく、21℃~30℃がより一層好ましく、21℃~25℃が最も好ましい。ガラス転移温度(Tg)を上記範囲とすることで被着体に対する密着性を好適なものにでき、端部の浮きを防ぐことができる。また、遮光層の流動性が向上し、発光素子の間に流入しやすくなるため、埋め込み性が向上する。さらに発光素子と遮光層の空域が減少するため、遮光性が向上する。加えて、黒色着色剤(B)を固定する能力が高いため、経時凝集性に優れる。
なお、遮光層のガラス転移温度(Tg)は樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)のみに依存するものではなく、架橋剤、黒色着色剤(B)の分散体、無機フィラーの種類、添加量によっても変化する。本願における樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、樹脂(A)が熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂を含む場合、熱硬化並びに光硬化前のガラス転移温度(Tg)を示す。本開示における樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、後述の実施例に記載の方法で測定したものである。
【0056】
樹脂(A)の含有率は、遮光層の全量(100質量%)を基準として、11~99質量%であることが好ましく、30~95質量%であることがより好ましく、53~94質量%であることがさらに好ましい。樹脂(A)を2種類以上含む場合は、いずれの樹脂(A)も含有率が11質量%以上であることが好ましく、合計の含有率が99質量%以下であることが好ましい。樹脂(A)の含有率が11質量%以上であることで、遮光性と遮光層の経時凝集性が良好になり、99質量%以下であることで、遮光性と埋め込み性が良好となる。
【0057】
[黒色着色剤(B)]
黒色着色剤(B)は、黒色顔料、黒色染料、ならびに赤色、緑色、青色、黄色、紫色、シアンおよびマゼンタ等の顔料を複数含む混合系着色剤が好ましい。混合系着色剤は、複数の顔料を減色混合することで黒色を得ることができる。
黒色顔料は、例えばカーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、ペリレンブラック、チタンブラック、鉄黒、アニリンブラック、アセチレンブラック、クロム酸化鉄等が挙げられる。埋め込み性、経時凝集性、塗工適正の観点から、カーボンブラックが好ましい。これらの黒色顔料は、1種ずつ用いてもよいし、2種類以上を併用しても良い。
【0058】
本開示に使用されるカーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック等公知のカーボンブラックを用いることができる。
カーボンブラックの具体例としては、ビルラ・カーボン社製「Raven3500、1180、1080Ultra、1060Ultra、1040」、東海カーボン社製「TOKABLACK#8300、#7360SB」、オリオン・エンジニアドカーボンズ社製「Special Black350、250、100、550、5、4、4A、6」「Nipex160IQ、170IQ」、「PrintexU、V、140U、140V、95、90、85、80、75、55、45、P、60、L6、L、300、30、3、35、25、A、G」「ColorBlackFW200、FW2、S170」、キャボット社製「REGAL400R、330R、250R」「MOGUL E、L」「MONARCH1300、280」、三菱化学社製「MA7、8、11、14、77、100、100R、100S、220、230」「#2650、#2600、#2350、#2300、#1000、#980、#970、#960、#950、#900、#850、#750B、#650B、#52、#47、#45、#45L、#44、#40、#33、#32、#30、#25、#20、#10、#5、#95、」等が挙げられる。
カーボンブラックは、分散性の観点から、BET法による比表面積が50~400m2/g、揮発分が0.1~10重量%、pH値が2~10の特性を有するものが好適であり、pH3~8の特性を有するものがより好適であり、pH3~6の特性を有するものがさらに好適である。
【0059】
黒色着色剤(B)は、平均一次粒子径(以下粒子径)が10~100nmであることが好ましい。粒子径を10nm以上にすることで樹脂組成物の粘度を塗工に適した水準に維持しやすい。また粒子径を100nm以下にすることで黒色度が向上し、高い遮光性能を発現する。なお、黒色着色剤(B)の粒子形状が、1.5以上の平均アスペクト比(長軸長さ/短軸長さ)を有する場合、粒子径は、長軸長さを平均して求める。なお、黒色着色剤(B)の粒子径は透過型電子顕微鏡(TEM)により5万倍~100万倍程度に拡大した画像から観察できる20個程度の一次粒子の平均値から求めることができる。
【0060】
黒色着色剤(B)の含有率は、遮光層の全量(100質量%)を基準として、5~45質量%含有することが好ましく、15~35質量%含有することがより好ましく、20~30質量%含有することがさらに好ましい。黒色着色剤(B)の含有率を上記範囲とすることで、遮光性、端部の浮き、塗工適正が優れた水準となるためである。
【0061】
黒色着色剤(B)は樹脂(A)に分散処理し、黒色分散体として使用することが遮光層のガラス転移温度(Tg)を調整する観点から好ましい。分散処理として、機械的解砕に使用される分散機は、一般に使用される分散機なら、如何なるものでもよいが、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ビーズミルおよびナノマイザー等が挙げられる。その中でも、ビーズミルが好ましく使用される。このようなものとしては、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミルおよびコボルミル(何れも商品名)等が挙げられる。
【0062】
本開示では、遮光層の保存安定性の観点から、黒色着色剤(B)の分散処理に分散剤を使用することが好ましい。本開示において、分散剤は、前述の分散処理を経て分割された粒子が再び凝集しないように粒子間に斥力を付与する機能を持っている。
分散剤としては、従来既知の化合物を使用することでき、例えば、カチオン性またはアニオン性またはノニオン系界面活性剤、カチオン性またはアニオン性またはノニオン系高分子系分散剤、顔料誘導体型分散剤が挙げられる。
【0063】
高分子系分散剤としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカルボン酸(塩)、スチレン系共重合体、ポリアルキレンオキサイド誘導体、リン酸エステル系樹脂などが挙げられる。
高分子系分散剤の酸価は、5~450mgKOH/gが好ましく、20~300mgKOH/gがより好ましく、50~200mgKOH/gがさらに好ましい。適度な酸価を有すると、優れた静電反発効果を得られ、保存安定性に優れた分散体が得られる。本開示における酸価は、後述の実施例に記載の方法で測定したものである。
高分子系分散剤の重量平均分子量(Mw)は、1000~50000が好ましく、3000~30000がより好ましい。適度な重量平均分子量(Mw)を有すると、着色剤への吸着率が向上し、安定性に優れた分散体が得られる。本開示における重量平均分子量(Mw)は、後述の実施例に記載の方法で測定したものである。
【0064】
顔料誘導体型分散剤は、有機色素残基に酸性基、塩基性基、中性基などを有する化合物である。例えば、スルホ基、カルボキシル基、またはリン酸基などの酸性置換基を有する化合物、ならびにこれらのアミン塩、スルホンアミド基、アミド基、または末端に3級アミノ基などの塩基性置換基を有する化合物、フェニル基やフタルイミドアルキル基などの中性置換基を有する化合物が挙げられる。有機色素は、例えばフタロシアニン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チアジンインジゴ系顔料、トリアジン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ベンゾイソインドール等のインドール系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、ナフトール系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ顔料等が挙げられる。
これらの顔料分散剤は、1種ずつ用いてもよいし、2種類以上を併用しても良い。
これらの顔料分散剤を使用することで、遮光層内に含まれる黒色着色剤(B)の経時凝集を防ぎ、色むらや遮光シート外観を良好に保つことが可能となる。
【0065】
顔料分散剤の含有率(2種以上を含む場合は合計の含有率)は、遮光層の全量(100質量%)を基準として、0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。顔料分散剤を0.01質量%以上含有することで、遮光層の経時凝集性が良好になり、10質量%以下であることで黒色分散体の粘度が好適な範囲となり、塗工適正が良好になる。
【0066】
[架橋剤]
本開示の遮光層は、架橋剤を含有しても良い。特に、樹脂(A)が熱硬化性樹脂を含む場合、架橋構造の形成を促進するため、架橋剤を用いることが好ましい。架橋剤は1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
架橋剤は、プレス工程における熱プレスや加熱エージング時に、樹脂(A)の反応性官能基と架橋反応することで発光素子など被着体への密着をより強固にする。
架橋剤は、樹脂(A)の官能基と反応可能な官能基を複数有している。架橋剤は、例えばシランカップリング剤、エポキシ化合物、酸無水物基含有化合物、イミダゾール化合物、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、アミン化合物、またはフェノール化合物等の公知の化合物が挙げられる。遮光層のガラス転移温度(Tg)を調整する観点から、シランカップリング剤、エポキシ化合物、アジリジン化合物、イミダゾール化合物、イソシアネート化合物が好ましく、エポキシ化合物がより好ましい。
【0067】
上記エポキシ化合物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物である。エポキシ化合物の性状としては、液状を用いることで遮光層のガラス転移温度(Tg)を低下させ、発光素子と遮光層をよく密着させることができる。一方、固形状を用いることで遮光層のガラス転移温度(Tg)を高め、遮光層に含まれる黒色着色剤(B)の経時凝集を抑制することができる。
エポキシ化合物としては、例えば、グリジシルエーテル型エポキシ化合物、グリジシルアミン型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、環状脂肪族(脂環型)エポキシ化合物等が好ましい。
【0068】
グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ビスフェノールAD型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、α-ナフトールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、テトラブロムビスフェノールA 型エポキシ化合物、臭素化フェノールノボラック型エポキシ化合物、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン等が挙げられる。
グリシジルアミン型エポキシ化合物としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0069】
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、例えば、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート等が挙げられる。
【0070】
環状脂肪族(脂環型)エポキシ化合物としては、例えば、エポキシシクロヘキシルメチル-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(エポキシシクロヘキシル)アジペート等が挙げられる。
【0071】
アジリジン化合物としては、例えば、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリス-2,4,6-(1-アジリジニル)-1、3、5-トリアジン、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
【0072】
イミダゾール化合物は、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物が挙げられ、更にはイミダゾール化合物とエポキシ樹脂を反応させて溶剤に不溶化したタイプ、またはイミダゾール化合物をマイクロカプセルに封入したタイプ等の保存安定性を改良した化合物が挙げられる。
【0073】
イソシアネート化合物は、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートである。イソシアネート化合物は、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等のイソシアネートモノマー、ならびにこれらのビュレット体、ヌレート体、およびアダクト体が好ましい。
【0074】
芳香族ポリイソシアネートは、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネートが挙げられる。
【0075】
脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0076】
芳香脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0077】
脂環族ポリイソシアネートは、例えば、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:IPDI、イソホロンジイソシアネート)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0078】
前記ビュレット体は、イソシアネートモノマーが自己縮合したビュレット結合を有する自己縮合物である。ビュレット体は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体が挙げられる。
【0079】
前記ヌレート体は、イソシアネートモノマーの3量体である。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソホロンジイソシアネートの3量体、トリレンジイソシアネートの3量体などが挙げられる。
【0080】
前記アダクト体は、イソシアネートモノマーと2官能以上の低分子活性水素含有化合物が反応した2官能以上のイソシアネート化合物である。アダクト体は、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、1,6-ヘキサンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物が挙げられる。
【0081】
イソシアネート化合物は、十分な架橋構造を形成する観点から、3官能のイソシアネート化合物が好ましい。イソシアネート化合物は、イソシアネートモノマーと3官能の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体、およびヌレート体がより好ましい。イソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのヌレート体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体がより好ましい。
【0082】
本開示において、引っ掻き傷や擦り傷に対する塗膜耐性の観点から、2種類以上の架橋剤を含有することが好ましい。遮光層のガラス転移温度(Tg)を調整する観点から、具体的には、シランカップリング剤、エポキシ化合物、アジリジン化合物、イソシアネート化合物から選択した2種以上を含む好適例が挙げられ、エポキシ化合物と、シランカップリング剤、エポキシ化合物、アジリジン化合物、イソシアネート化合物のうちいずれか1種以上を併用する例が、さらに好ましく挙げられる。
【0083】
架橋剤の含有率(2種以上を併用する場合は合計の含有率)は、遮光層の全量(100質量%)を基準として、0.01~30質量%であることが好ましく、0.05~25質量%であることがより好ましく、0.1~20質量%であることがさらに好ましい。上記含有率とすることで黒色着色剤(B)の分散性と埋め込み性を好適な値に調整できる。
【0084】
[無機フィラー]
無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、タルク、カオリナイト、マイカ、塩基炭酸マグネシウム、セリサイト、モンモロリナイト、カオリナイト、ベントナイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン等の無機化合物が挙げられる。
これらの中でも、引っ掻き傷や擦り傷に対する塗膜耐性、端部の浮きの観点から、酸化チタン、窒化チタン、シリカ、タルク、マイカ、カオリナイト、またはモンモリロナイトが好ましく、酸化チタン、窒化チタン、シリカがより好ましい。
本開示において、塗膜耐性の観点から、2種類以上の無機フィラーを含有しても良い。具体的には、シリカと、酸化チタン、窒化チタン、シリカ、タルク、マイカ、カオリナイト、またはモンモリロナイトから選択される1種類以上を組み合わせて含有する例が好ましく挙げられる。
【0085】
無機フィラーの含有率(2種以上を含む場合は合計の含有率)は、黒色着色剤(B)の分散安定化の観点から、遮光層の全量(100質量%)を基準として、0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。無機フィラーを0.01質量%以上含むことで、黒色分散体の粘性を高める効果が発現しやすく、樹脂組成物に含まれる黒色着色剤(B)の沈降を防止し、埋め込み性、経時凝集性、端部の浮き遮光性が向上する。また、無機フィラーの含有率を10質量%以下とすることで、黒色着色剤(B)と無機フィラーとの相互作用が発現しやすく、遮光層に含まれる黒色着色剤(B)の凝集を防止することができる。
【0086】
無機フィラーの平均一次粒子径(以下、粒子径)は、1~100nmであることが好ましい。粒子径を1nm以上にすることで樹脂組成物の粘度を塗工に適した水準に維持しやすい。また粒子径を100nm以下にすることで塗膜耐性が向上する。なお、無機フィラーの粒子径は黒色着色剤(B)の粒子径と同様の方法にて求めることができる。
【0087】
[その他成分]
本開示の遮光層には、本開示の目的を損なわない範囲で、その他成分を含有しても良い。例えば、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、リン酸エステル、表面調整添加剤、分散剤などを添加することができる。膜特性の制御の観点から、表面調整添加剤、硬化促進剤、硬化遅延剤を含むことが好ましく、黒色着色剤の分散安定性の観点から、リン酸エステル、分散剤を含むことが好ましい。
【0088】
表面調整添加剤としては、シリコン系、シリコンアクリル系、アクリル系、フッ素系、アセチレングリコール系等の界面活性剤が挙げられる。
中でも黒色着色剤(B)の分散性を阻害しにくい点から、シリコン系、シリコンアクリル系の界面活性剤を含有することが特に好ましい。
シリコン系の表面調整用添加剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサンのメチル基の一部に有機基を導入した変性ポリシロキサン化合物であることが好ましい。変性の例として、ポリエーテル変性、メチルスチレン変性、アルコール変性、アルキル変性、アラルキル変性、脂肪酸エステル変性、エポキシ変性、アミン変性、アミノ変性、メルカプト変性などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらの変性の方法は組み合わせて用いることができる。中でもポリエーテル変性ポリシロキサン化合物、アラルキル変性ポリシロキサン化合物が相溶性などの点で好ましい。
シリコンアクリル系の表面調整用添加剤としては、例えば、アクリル樹脂と、シロキサン系化合物とのグラフト共重合物である、シロキサン変性アクリル樹脂であることが相溶性などの観点から好ましい。
表面調整添加剤の含有率は、塗工適正の観点から遮光層の全量(100質量%)を基準として、0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。
【0089】
本開示の遮光層は、架橋速度や遮光層の物性等を調整するために、硬化促進剤を含むことが好ましい。硬化促進剤は特に限定されず、適宜選択できる。硬化促進剤の具体例としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記硬化促進剤は、被着体に対する密着性の観点から、好ましくはイミダゾール系硬化促進剤を含むものである。イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールが挙げられる。
硬化促進剤の含有率は、塗工適正の観点から遮光層の全量(100質量%)を基準として、0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。
【実施例0090】
以下、実施例および比較例により本開示を具体的に説明するが、本開示は実施例に特に限定されるものではない。なお、以下の記載において、「部」および「%」とあるものは特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を表す。
【0091】
本実施例で求めた数値は、以下の方法により得られた値である。
[樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)]
樹脂(A)の塗布液を、厚さ75μmの第二の剥離ライナー(三井化学東セロ社製、SP-PET-O3)の離型層上に、乾燥後の厚さが25μmになるように塗布し、100℃の熱風オーブンで3分間乾燥した後、遮光層側に厚さ50μmの第一剥離ライナー(三井化学東セロ社製、SP-PET-O1)の離型層側を貼り合わせた。次いで第一剥離ライナーと第二剥離ライナーを剥がし、動的粘弾性測定装置DVA-200/L2(アイティー計測制御社製)を用いて、周波数10Hzの引張における損失正接(tanδ)のピーク温度で定義されるガラス転移温度(Tg)を測定した。
【0092】
[重量平均分子量(Mw)]
重量平均分子量(Mw)の測定は、島津製作所社製GPC「LC-GPCシステム」を用い、分子量既知のポリスチレンを標準物質として換算することにより重量平均分子量(Mw)を求めた。
装置名:島津製作所社製、LC-GPCシステム「Prominence」
カラム:東ソー社製GMHXL 4本、東ソー社製HXL-H 1本を連結した。
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/分
カラム温度:40℃
【0093】
[固形分]
精密天秤でアルミカップの質量(W0)を計量した。次いで、アルミカップに試料を1g程度入れ、精密天秤でアルミカップ入り試料質量(W1)を計量した。アルミカップ入り試料を150℃オーブンで120分加熱した後、オーブンから取出し常温に戻した。加熱後のアルミカップ入り試料について精密天秤にて残留質量(W2)を計量した。そして、(W2-W0)/(W1-W0)×100(%)の式にて固形分を算出した。
【0094】
[酸価]
酸価は、樹脂(A)固形分1gあたりの酸価を表し、JIS K 0070に準じ、電位差滴定法によって求めた。
【0095】
[樹脂(A)]
[アクリル樹脂(PO-1)の製造例]
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に、酢酸エチル80部、メチルアクリレート60部、n-ブチルアクリレート30部、アクリル酸5部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル5部、開始剤として、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(以下、単に「AIBN」と記述する。)0.1部を仕込み、この反応容器内の雰囲気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、65℃まで加熱し反応を開始した。その後、反応溶液を65℃で4時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈して、重量平均分子量(Mw):10万、ガラス転移温度(Tg):-15℃、酸価:10mgKOH/g、固形分:25%のアクリル樹脂(PO-1)の溶液を得た。
【0096】
[ウレタン樹脂(PO-2)の製造例]
攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管、減圧設備を備えたガラス製フラスコにテレフタル酸166部、アジピン酸146部および3-メチル-1,5-ペンタンジオール212部、エチレングリコール25部を仕込み、窒素ガスを通じながら攪拌し、常圧下徐々に昇温し、200~230℃にて約8時間反応させ酸価43の液状物を得た。次いでテトラ-n-ブトキシチタン0.01部を仕込み、窒素置換後密閉下180℃にて30分間攪拌した。次いで230℃、5mmHgにて2時間反応させ、酸価:1.1mgKOH/g、水酸基価:114.2mgKOH/g、重量平均分子量(Mw):982、色相:10(APHA法、以下同様)のポリエステルジオールを得た。
次いで、攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、前記ポリエステルジオールを734部、ジメチロールプロピオン酸23.9部、トルエンジイソシアネート219部、およびトルエン242部を仕込み、窒素雰囲気下50℃で8時間反応させた。これに、トルエン1200部を加えて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液を得た。
次に得られたプレポリマーの溶液を70℃に加温しその温度を保ちながら、1,3-ジアミノプロパン20.0部、ベンジルアミン3.1部、2-プロノール600部、およびトルエン961部を混合した溶液を1時間で滴下した。滴下終了後70℃にて更に6時間反応させることで、重量平均分子量(Mw):15万、ガラス転移温度(Tg):18℃、酸価:10mgKOH/g、固形分:25%のウレタン樹脂(PO-2)の溶液を得た。
【0097】
[ウレタン樹脂(PO-3)の製造例]
ポリエステルジオールをUM-90(1/1)(UBE社製)に変更した以外は、ウレタン樹脂(PO-3)の製造と同様の方法で、重量平均分子量(Mw):7万、ガラス転移温度(Tg):21℃、酸価:10mgKOH/g、固形分:25%のウレタン樹脂(PO-3)の溶液を得た。
【0098】
[アクリル樹脂(PO-4)の製造例]
メチルアクリレートをメチルメタクリレート10部と、n-ブチルアクリレートをn-ブチルメタクリレート80部と、アクリル酸をメタクリル酸5部に変更した以外は、アクリル樹脂(PO-1)の製造と同様の方法で、重量平均分子量(Mw):7万、ガラス転移温度(Tg):25℃、酸価:10mgKOH/g、固形分:25%のアクリル樹脂(PO-4)の溶液を得た。
【0099】
[ウレタン樹脂(PO-5)の製造例]
ポリエステルジオールをUM-90(3/1)(UBE社製)に変更した以外は、ウレタン樹脂(PO-3)の製造と同様の方法で、重量平均分子量(Mw):13万、ガラス転移温度(Tg):30℃、酸価:10mgKOH/g、固形分:25%のウレタン樹脂(PO-5)の溶液を得た。
【0100】
[アクリル樹脂(PO-6)の製造例]
メチルアクリレートをメチルメタクリレート45部と、n-ブチルアクリレートをn-ブチルメタクリレート45部と、アクリル酸をメタクリル酸5部に変更した以外は、アクリル樹脂(PO-1)の製造と同様の方法で、重量平均分子量(Mw):7万、ガラス転移温度(Tg):50℃、酸価:10mgKOH/g、固形分:25%のアクリル樹脂(PO-6)の溶液を得た。
【0101】
[アクリル樹脂(PO-7)の製造例]
メチルアクリレートをメチルメタクリレート60部と、n-ブチルアクリレートをn-ブチルメタクリレート30部と、アクリル酸をメタクリル酸5部に変更した以外は、アクリル樹脂(PO-1)の製造と同様の方法で、重量平均分子量(Mw):7万、ガラス転移温度(Tg):65℃、酸価:10mgKOH/g、固形分:25%のアクリル樹脂(PO-7)の溶液を得た。
【0102】
[アクリル樹脂(PO-8)の製造例]
メチルアクリレートをメチルメタクリレート70部と、n-ブチルアクリレートをn-ブチルメタクリレート20部と、アクリル酸をメタクリル酸5部に変更した以外は、アクリル樹脂(PO-1)の製造と同様の方法で、重量平均分子量(Mw):7万、ガラス転移温度(Tg):70℃、酸価:10mgKOH/g、固形分:25%のアクリル樹脂(PO-8)の溶液を得た。
【0103】
[アクリル樹脂(PO-9)の製造例]
メチルアクリレートをメチルメタクリレート88部と、n-ブチルアクリレートをn-ブチルメタクリレート5部と、アクリル酸をメタクリル酸5部と、アクリル酸4-ヒドロキシブチルを2部に変更した以外は、アクリル樹脂(PO-1)の製造と同様の方法で、重量平均分子量(Mw):10万、ガラス転移温度(Tg):100℃、酸価:10mgKOH/g、固形分:25%のアクリル樹脂(PO-9)の溶液を得た。
【0104】
[アクリル樹脂(PO-10)の製造例]
メチルアクリレートをメチルメタクリレート93部と、n-ブチルアクリレートを0部と、アクリル酸をメタクリル酸5部と、アクリル酸4-ヒドロキシブチルを2部に変更した以外は、アクリル樹脂(PO-1)の製造と同様の方法で、重量平均分子量(Mw):10万、ガラス転移温度(Tg):105℃、酸価:10mgKOH/g、固形分:25%のアクリル樹脂(PO-10)の溶液を得た。
【0105】
[実施例1]
[樹脂組成物の製造例]
樹脂(A)として前述のアクリル樹脂(PO-2)の溶液:800部、黒色着色剤(B)としてカーボンブラックMA100(三菱ケミカル社製):1000部、溶剤として2-ブタノン:200部を混合し、ディスパーで予備分散した後、直径1.0mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、黒色分散体とした。
得られた黒色分散体:50部(黒色着色剤(B)25部、樹脂(A)5部、溶剤20部)、樹脂(A)として前述のアクリル樹脂(PO-2)の溶液:275.6部(樹脂(A)68.9部、溶剤206.7部)、架橋剤としてエポキシ系架橋剤jER(登録商標)828(三菱ケミカル社製):1部、無機フィラーとしてシリカAEROSIL(登録商標) R972(Evonik Degussa社製):0.1部、溶剤として2-ブタノン:100部をディスパーで撹拌を行いながら順次投入し、十分に均一になるまで撹拌した。次いで、孔径10μmのメンブランフィルターで濾過を行い、塗工むらの原因となる粗大異物を除去し、不揮発分:23%の樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物の固形分の組成は、樹脂(A)は73.9質量%、黒色着色剤(B)は25質量%、架橋剤は1質量%、無機フィラーは0.1質量%であった。
【0106】
[遮光シートの製造例]
樹脂組成物を、厚さ75μmの第二の剥離ライナー(三井化学東セロ社製、SP-PET-O3)の離型層上に、乾燥後の厚さが25μmになるように塗布し、100℃の熱風オーブンで3分間乾燥することで、遮光層を形成した。次いで、露出した遮光層に厚さ50μmの第一剥離ライナー(三井化学東セロ社製、SP-PET-O1)の離型層側を貼り合わせ、0℃にて7日間エージングし、残留溶剤を揮発させ、第一剥離ライナー/遮光層/第二剥離ライナーの順に積層された実施例1の遮光シートを得た。
【0107】
[遮光層のガラス転移温度(Tg)]
遮光シートの第一剥離ライナーと第二剥離ライナーを剥がし、動的粘弾性測定装置DVA-200/L2(アイティー計測制御社製)を用いて、周波数10Hzの引張における損失正接(tanδ)のピーク温度で定義されるガラス転移温度(Tg)を測定した。
【0108】
[遮光シートの厚さTt、遮光層の厚さTa、第一剥離ライナーの厚さTl、第二剥離ライナーの厚さTh]
遮光シートの幅方向の端部から他端部まで等間隔となる10箇所を決め、その10箇所の厚さを測定し、その平均値を遮光シートの厚さTtとした。次いで、遮光シートから第一剥離ライナーを剥離し、前述と同じ位置に対応する10箇所の剥離した第一剥離ライナーの厚さを測定した。その平均値をTlとする。その後、更に、遮光層から第二剥離ライナーを剥離し、前述と同じ位置に対応する10箇所の剥離した第二剥離ライナーの厚さを測定した。その平均値をThとする。遮光層の厚さTaは、Tt-Tl-Thより求めた。なお、厚さはMH-15M(ニコン社製)を用いて測定した。
【0109】
[評価方法・基準]
[遮光性]
遮光シートを2cm×5cmに裁断し、第一の剥離ライナーを剥がした面に厚さ1.1mmのガラス板(青板ガラス、河村久蔵商店社製)を貼付し、熱プレス(100℃、5MPa、5分間)して圧着した。さらに、遮光シートの第二の剥離ライナーを剥がし、ガラス板と遮光層からなる試験片を180℃条件下で120分間静置することで、ガラス板と遮光層を密着させた。ガラス板上の遮光層について、300nm~800nmの分光透過率を測定した。なお、測定には日本分光株式会社製の紫外可視分光光度計V-570を用いた。評価基準は下記の通りとし、A~Cを良好とした。
A:300nm~800nmの全領域に亘って透過率が0.2%未満
B:300nm~800nmの全領域に亘って透過率が0.2%以上0.4%未満
C:300nm~800nmの全領域に亘って透過率が0.4%以上0.6%未満
D:300nm~800nmの全領域に亘って透過率が0.6%以上
【0110】
[埋め込み性]
マイクロLED基板の凹凸を模してリブ加工を施したガラス基板(サイズ1cm×1cm、リブ加工のピッチ20μm、凸部の高さ20μm、凸部の幅20μm)を用意した。試験基板の模式的断面図を
図3に示す。
第一剥離ライナーを剥がした遮光シートを2組用意し、遮光層同士をラミネータで貼り合わせ、第二剥離ライナー/積層した遮光層/第二剥離ライナーからなる遮光シートを作製した。遮光層の積層物の厚さが25μmm以上となるまで遮光層同士を貼り合わせる工程を繰り返した。なお、評価する遮光層の厚さが25μm以上の場合は、貼り合わせ工程を省略した。
遮光シートを2cm×2cmサイズに裁断し、第一剥離ライナーまたは第二剥離ライナーを剥がして遮光層を露出させ、ガラス基板の凹凸部に載置した。その後、反対面の剥離ライナーを剥離して露出した表面に、クッション材として、厚さ50μmのTPX(オピュランX-44B 、三井化学東セロ社製)と、厚さ2.0mmの塩ビフィルム(セレブT、オカモト社製)を、順に積層し、さらに張り付き防止のためボール紙を積層した。次に、試験片の上方から基板面に対し5MPa、100℃の条件で20分間、プレスし、ガラス基板の凹凸に遮光層を充填することで、遮光層を形成した。プレス後、クッション材とボール紙を剥離した。得られた試験片のガラス基板からはみ出した遮光層を取り除き、ガラス基板の側面を露出させ、凹凸部分が観察できる状態にした。任意の20か所のガラス基板の凹部について、電子顕微鏡で観察することにより、埋め込み性を評価した。ガラス基板の凹部に遮光シートが隙間なく密着して遮光層を形成している場合を溝が埋め込まれているとした。評価基準は下記の通りとし、A~Cを良好とした。
A:埋め込まれた溝が18か所以上
B:埋め込まれた溝が17か所以下、15か所以上
C:埋め込まれた溝が14か所以下、12か所以上
D:埋め込まれた溝が11か所以下
【0111】
[経時凝集性]
遮光シートを10cm×10cmサイズに裁断し試験片を作製した。遮光シートの第一剥離ライナーを剥がし、露出した遮光層の初期の塗膜表面について、レーザー顕微鏡(形状測定レーザマイクロスコープ VK-X100、キーエンス社製、倍率50倍)を用いて表面粗さ(Ra)を測定した。得られた測定値をRa0とした。次いで、試験片を40℃、相対湿度50%環境下にて1000時間静置し、経時後の試験片を作製した。経時後の試験片の露出した遮光層の塗膜表面について、初期と同様にRaを測定し、Ra1とした。顔料や樹脂の凝集に由来して発生した塗膜表面の微細なシワや凹凸によって、経時前後で変化したRaの値を評価するために、|(Ra1)-(Ra0)|/(Ra0)×100(%)の式にてRaの変化率を算出した。
なお、Raの値は、任意の5か所を測定し、その平均値とする。評価基準は下記の通りとし、A~Cを良好とした。
A:Raの変化率が10%未満
B:Raの変化率が10%以上、20%未満
C:Raの変化率が20%以上、30%未満
D:Raの変化率が30%以上
【0112】
[端部の浮き]
遮光シートを2cm×5cmに裁断し、第一の剥離ライナーを剥がした面に、厚さ1.1mm、サイズ2.5cm×10cmのガラス板(青板ガラス、河村久蔵商店社製)を貼付し、熱プレス(100℃、5MPa、5分間)して圧着した。さらに、遮光シートの第二の剥離ライナーを剥がし、ガラス板と遮光層からなる試験片を作製した。この試験片を10枚用意し、次に示す2水準の条件下で5枚ずつ加熱エージング処理した。条件(イ)200℃環境下で120分間静置、条件(ロ)100℃条件下で240分間静置。加熱エージング後、23℃相対湿度50%の条件で1時間以上静置した。さらに、エッチング液(32%塩酸と65%硝酸の2:1混合液)に浸漬し、25℃環境下で3分間静置し後、水洗いし、23℃相対湿度50%の条件で24時間以上乾燥させた。乾燥後の遮光層を目視で観察し、遮光層の端部がガラス板から浮いているかどうかを観察した。評価基準は下記の通りとし、A~Cを良好とした。
A:遮光層の端部に浮きがある試験片が0~1枚
B:遮光層の端部に浮きがある試験片が2~3枚
C:遮光層の端部に浮きがある試験片が4~5枚
D:遮光層の端部に浮きがある試験片が6枚以上
【0113】
上述したいずれの評価も、最も秀でた評価をA、次に優れた評価をB、続いて良好な評価をC、目標性能未達の評価をDとする4段階で評価した。なお、各性能評価が全てA~Cであるものが本開示に該当する。
【0114】
[実施例2~31]、[比較例1~6]
表1~4に示した含有率とした以外は実施例1と同様の方法によって遮光シートを作成し、同様に評価した。なお、分散剤(DP-1)は、黒色着色剤(B)と同時に添加した。
表1~4中、樹脂(A)、架橋剤、黒色着色剤(B)、無機フィラー、分散剤は固形分換算の量であり、空欄は配合しないことを表す。
【0115】
表中の略号は以下の通りである。
BK-1:カーボンブラック(MA100、三菱ケミカル社製、粒子径24nm、pH3.5)
BK-2:カーボンブラック(#52、三菱ケミカル社製、粒子径27nm、pH8)
BK-3:金属酸化物顔料(Black6340、アサヒ化成工業社製、pH6)
CL-1:エポキシ化合物(jER(登録商標)828、三菱ケミカル社製)
CL-2:イソシアネート化合物(コスモネート(登録商標)100、三井化学ファイン社製)
CL-3:アジリジン化合物(ケミタイト(登録商標)PZ-33、日本触媒社製)
CL-4:シランカップリング剤(KBE-9007、信越シリコーン社製)
IF-1:シリカ(AEROSIL(登録商標) R972、Evonik Degussa社製、粒子径16nm)
IF-2:酸化チタン(TTO(登録商標)-51(A)、石原産業社製)
DP-1:顔料誘導体型分散剤(Solsperse(登録商標)5000、ルーブリゾール社製)
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
遮光層のガラス転移温度(Tg)が-20℃以上50℃以下の範囲外の遮光シートの場合、比較例1~4に示すように、遮光性に課題があることが分かる。さらに、遮光層のガラス転移温度が-20℃より低い場合、経時凝集性において課題があり、50℃より高い場合、埋め込み性において課題がある。
また、厚さが1μmより小さい遮光シートの場合、比較例5に示すように遮光性と埋め込み性に課題があり、厚さが100μmより大きい遮光シートの場合、比較例6に示すように埋め込み性や端部の浮きにおいて課題があることが分かる。表1に記載した通り、比較例1~6の遮光シートは、遮光性、埋め込み性、経時凝集性、端部の浮きをバランスよく高レベルで満足することはできなかった。
これに対し、実施例1~31によれば、本開示の遮光シートは、表1~4に記載の通り、優れた遮光性を発現しており、埋め込み性にも優れている。さらに、経時凝集性や端部の浮きにも優れることから、本開示の遮光シートは、複数の発光素子の光の混色防止用の隔壁に良好に用いることができると判明した。