(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123812
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】トンネル内火災検知器の洗浄機構
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20240905BHJP
A62C 3/00 20060101ALI20240905BHJP
A62C 35/20 20060101ALI20240905BHJP
G08B 17/12 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G08B17/00 G
A62C3/00 J
A62C35/20
G08B17/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031521
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 英樹
【テーマコード(参考)】
2E189
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
2E189EC07
5C085AA11
5C085AB01
5C085BA31
5C085FA35
5G405AA01
5G405AB05
5G405CA29
5G405FA25
(57)【要約】
【課題】電気的な制御が不要で低コストに火災検知器を洗浄できるトンネル内火災検知器の洗浄機構を提供する。
【解決手段】本発明に係るトンネル内火災検知器の洗浄機構1は、消火水供給配管25を通じて消火水の供給を受けて消火栓ノズルから放水する消火栓装置1及び火災を検知するトンネル内火災検知器33が設置されるトンネル3内に設けられて、トンネル内火災検知器33を洗浄するものであって、トンネル内火災検知器33の前面カバー37に向けて洗浄水を噴射する洗浄ノズル43と、消火水供給配管25に設けられた消火栓弁27の一次側から分岐されて洗浄ノズル43に洗浄水を供給する洗浄水供給配管45と、洗浄水供給配管45に設けられて流路を開閉する洗浄制御弁47と、を備え、洗浄制御弁47は、消火栓ノズルから放水されている際に発生する圧力より高い圧力で開放するように設定されていることを特徴とするものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火水供給配管を通じて消火水の供給を受けて消火栓ノズルから放水する消火栓装置及び火災を検知するトンネル内火災検知器が設置されるトンネル内に設けられて、前記トンネル内火災検知器を洗浄するトンネル内火災検知器の洗浄機構であって、
前記トンネル内火災検知器の前面カバーに向けて洗浄水を噴射する洗浄ノズルと、前記消火水供給配管に設けられた消火栓弁の一次側から分岐されて前記洗浄ノズルに洗浄水を供給する洗浄水供給配管と、該洗浄水供給配管に設けられて流路を開閉する洗浄制御弁と、を備え、
該洗浄制御弁は、前記消火栓ノズルから放水されている際に発生する圧力より高い圧力で開放するように設定されていることを特徴とするトンネル内火災検知器の洗浄機構。
【請求項2】
水噴霧ノズルからトンネル内壁に向けて消火水を噴霧する水噴霧設備がさらに設置されるトンネル内に設けられ、
前記洗浄制御弁は前記消火栓ノズルから放水されている際に発生する圧力および前記水噴霧ノズルから放水されている際に発生する圧力のいずれか高い方の圧力より高い圧力で開放するように設定されていることを特徴とする請求項1記載のトンネル内火災検知器の洗浄機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高速自動車道等のトンネルに設置されたトンネル内火災検知器を洗浄するトンネル内火災検知器の洗浄機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速自動車道等のトンネルには、トンネル内で発生する火災から人身や車両を守るため、火災を監視するための火災検知器や、火災を消火するための消火栓装置などの非常用設備が設置されている。
【0003】
火災検知器は、例えば特許文献1のように、トンネル側壁に所定の間隔で設置されている消火栓装置に一体的に設けられる場合や、消火栓装置とは別にトンネル壁面に設置される場合がある。
【0004】
火災検知器は、検知器本体と透光性の前面カバーを有し、検知器本体が前面カバーを介して火災の炎を監視している。トンネル内の塵等の浮遊物が付着して前面カバーが汚損すると検知器本体の火災検知感度が低下するため、火災検知器は前面カバーの汚れを検知する機能を有している。火災検知器が閾値を超える汚れを検知すると、汚損信号が防災受信盤に送信され、これを確認した管理者は火災検知器の清掃を行う。
【0005】
また、火災検知器の前面カバーの汚れ度合いは時間の経過と共に増すので、定期的な清掃も行われている。しかし、火災検知器はトンネル内に多数設けられているため、管理者の手作業による清掃は手間と時間を要するものであった。
そこで、前面カバーを洗浄する洗浄機構を設けた火災検知器が特許文献2に開示されている。
【0006】
特許文献2の火災検知器は、水噴霧ノズルから加圧水を噴射して前面カバーを洗浄する洗浄機構を有している。この洗浄機構によって定期的に前面カバーに水を噴射し、汚れを除去することで、火災検知器の清掃作業の手間を大幅に低減できる。
【0007】
また、特許文献2では、洗浄機構に、消火栓装置に対する給水配管から分岐接続して水噴霧ノズルに接続した洗浄配管と、洗浄配管の途中に設けた電磁弁とを備えることにより、消火栓装置に供給する加圧水を前面カバーの洗浄に利用する方法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-47313号公報
【特許文献2】特開2017-224183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献2の方法では、水噴霧ノズルの放水制御に電磁弁を用いるため、防災受信盤に電磁弁を開閉制御するための制御機能を設ける必要がある。また、防災受信盤と電磁弁を電気的に接続するための配線も必要となり、相当なコストアップを伴う。
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、電気的な制御が不要で、大きなコストアップをともなうことなく火災検知器を洗浄できるトンネル内火災検知器の洗浄機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係るトンネル内火災検知器の洗浄機構は、消火水供給配管を通じて消火水の供給を受けて消火栓ノズルから放水する消火栓装置及び火災を検知するトンネル内火災検知器が設置されるトンネル内に設けられて、前記トンネル内火災検知器を洗浄するものであって、
前記トンネル内火災検知器の前面カバーに向けて洗浄水を噴射する洗浄ノズルと、前記消火水供給配管に設けられた消火栓弁の一次側から分岐されて前記洗浄ノズルに洗浄水を供給する洗浄水供給配管と、該洗浄水供給配管に設けられて流路を開閉する洗浄制御弁と、を備え、
該洗浄制御弁は、前記消火栓ノズルから放水されている際に発生する圧力より高い圧力で開放するように設定されていることを特徴とするものである。
【0012】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、水噴霧ノズルからトンネル内壁に向けて消火水を噴霧する水噴霧設備がさらに設置されるトンネル内に設けられ、
前記洗浄制御弁は前記消火栓ノズルから放水されている際に発生する圧力および前記水噴霧ノズルから放水されている際に発生する圧力のいずれか高い方の圧力より高い圧力で開放するように設定されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、消火栓装置の定期点検の際に洗浄ノズルから洗浄水が放水されるので、火災検知器の汚れを定期的に除去でき、火災検知器の清掃の手間を大幅に削減できる。さらに本発明は電気的な制御を必要としないため、従来のような電磁弁を用いるものと比べて低コストである。
また、消火栓装置の消火栓ノズルから放水が開始すると洗浄ノズルからの放水は停止するので、水の無駄がなく、消火栓操作の妨げになることもない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態にかかるトンネル内火災検知器の洗浄機構の説明図である。
【
図2】
図1の洗浄機構を備えた消火栓装置と水噴霧設備とが設けられたトンネルの斜視図である。
【
図3】
図1の洗浄機構の拡大図であり、洗浄水放水時の状態を示す図である。
【
図4】実施の形態にかかる洗浄機構の他の態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態に係るトンネル内火災検知器の洗浄機構について
図1、
図2を用いて説明する。本実施の形態では、特許文献1のように消火栓装置と一体となって構成されている火災検知器に本発明の洗浄機構を適用した例を説明する。
まず、トンネル内火災検知器の洗浄機構の説明に先立ち、火災検知器一体型の消火栓装置について説明する。
【0016】
図1の消火栓装置1は、火災の消火機能、火災の監視機能及び通報機能を備えた非常用設備であり、
図2に示すように高速自動車道等のトンネル3の側壁に所定の間隔で設置されるものである。
消火栓装置1は、前面に開口する筐体5と、筐体5の前面開口を塞口する前面パネル7とを備えており、筐体5と前面パネル7とからなる本体の内部には、先端に消火栓ノズルを有する消火用ホース9及び消火器(図示なし)が収納されている。前面パネル7には、消火用ホース9及び消火器に面する位置に、消火栓扉11、消火器扉13が開閉可能に設けられている。
【0017】
トンネル3には、
図2に示すように、トンネル3内に消火水を供給する配水本管15がトンネル軸方向に沿って配設されており、火災時又は点検時には、図示しない貯水槽及びポンプから配水本管15に消火水が供給される。トンネル3の側壁には、トンネル側壁に沿って立ち上がるように配設された立上り管17がトンネル軸方向に所定の間隔で設けられており、各立上り管17は下端が配水本管15に接続されている。
【0018】
図2の例では、消火栓装置の近傍に水噴霧設備19が設けられている。水噴霧設備19は、火災の熱からトンネル躯体を保護するためトンネル内壁に向けて消火水を噴霧する設備であり、立上り管17の上端に接続された水噴霧用配管21と、水噴霧用配管21に設けられた複数の水噴霧ノズル23を有している。
立上り管17には水噴霧用配管への水の供給を制御する水噴霧制御弁(図示なし)が設けられており、遠隔で開閉操作が可能となっている。
火災時には、火災が生じた区画の水噴霧制御弁が開放され、当該区画の水噴霧ノズル23からトンネル内壁に向けて消火水が噴霧される。
【0019】
また、立上り管17の水噴霧制御弁の一次側には、消火栓装置1の筐体5内に収容された消火水供給配管25が接続されている。
消火水供給配管25は、消火水の流路を開閉する消火栓弁27を備え、消火栓弁27の二次側が消火用ホース9に接続されている。
【0020】
また、消火栓装置1は、赤色表示灯29、押ボタン通報装置31を備えている。
赤色表示灯29は、消火栓装置1の設置位置を明示するものであり、前面パネル7の前面から突出して設けられ、通常時には点灯している。
押ボタン通報装置31は、火災の発見者等が押ボタン操作を行うことで、監視センターに対し火災の発生を知らせるものである。押ボタン通報装置31が押されると配水本管15に消火水を送水するポンプ(図示なし)が起動すると共に、赤色表示灯29が点滅する。
【0021】
ポンプが起動して配水本管15に消火水が供給されると、立上り管17を介して消火水供給配管25に消火水が供給される。通常、消火栓弁27は閉止しているので、消火栓弁27の一次側に消火水が充満し、この状態で消火栓弁27を開放すると消火用ホース9へ消火水が送水され、先端の消火栓ノズルから消火水が放水される。
【0022】
また、消火栓装置1は、
図1に示すようにトンネル内火災検知器33(以下、単に火災検知器33という)を備えている。
火災検知器33は、検知器本体35と、ラグビーボール状の凸状に成形されて検知器本体35の前面に突設された透光性の前面カバー37と、前面カバー37の上部両側に突設されたグローブ39とを有している。検知器本体35は前面パネル7の背面に固定され、前面パネル7に形成された穴から前面カバー37及びグローブ39を突出させて消火栓装置1に取り付けられている。
【0023】
火災検知器33の前面カバー37の内部には、火災の炎が発する波長を検出する火災検出部が設けられている。
また、グローブ39の内部には、前面カバー37の汚損確認試験のための試験光を発光する発光部が設けられている。
火災検出部によって火災が検出されると、検知器本体35は、監視センターへ火災検出信号を出力する。また、汚損確認試験によって前面カバー37の汚損が検出されると、検知器本体35は、監視センターへ汚損信号を出力する。
【0024】
本実施の形態のトンネル内火災検知器の洗浄機構41は、上記の火災検知器33を洗浄するものであって、
図1に示すように、洗浄水を噴射する洗浄ノズル43と、洗浄ノズル43に洗浄水を供給する洗浄水供給配管45と、洗浄水供給配管45に設けられた洗浄制御弁47とを備えている。
【0025】
洗浄ノズル43は、火災検知器33の上部の前面パネル7に突出して設けられている。
洗浄水供給配管45は、消火栓装置1の筐体5内に設けられ、一端が消火水供給配管25の消火栓弁27の一次側に接続し、他端が洗浄ノズル43に接続している。そして、洗浄水供給配管45の途中には洗浄水の流路を開閉する洗浄制御弁47が設けられている。なお、洗浄水供給配管45には銅管等を用いることができる。
【0026】
洗浄制御弁47は、弁体49と弁体49を閉方向に付勢するバネ51を有し、通常時には弁体49によって洗浄水の流路が塞がれている。消火水供給配管25の消火水の一部が洗浄水供給配管45に水が流入し、洗浄制御弁47の一次側がバネ51の付勢力を超える圧力まで加圧されると、弁体49が押し上げられて洗浄制御弁47が開放する。
洗浄制御弁47が開放すると、洗浄ノズル43に水が供給され、
図3に示すように、火災検知器33の前面カバー37に向けて洗浄ノズル43から洗浄水53が噴射される。
【0027】
なお、他の態様として、
図4に示すように、前面カバー37の上部左右に洗浄ノズル43を1個ずつ設け、計2個の洗浄ノズル43から前面カバー37に向けて洗浄水53を噴射するようにしてもよい。
【0028】
ところで、トンネル内の消火栓装置1では、年に1回~数回、消火栓装置1の定期点検を行っている。その際、消火栓ノズルから適切に放水が行われるかを確認するため、消火栓装置1の押ボタン通報装置31を押下してポンプを起動し、トンネル内に設置された各消火栓装置1の消火水供給配管25に水を供給している。
【0029】
このとき、消火水供給配管25から分岐した洗浄水供給配管45にも消火水が流入し、消火水の圧力によって洗浄制御弁47が開放する。洗浄制御弁47が開放すると、洗浄ノズル43に水が供給され、洗浄ノズル43から水が噴射される。このように、消火栓装置1の定期点検時に、トンネル3内に設置された全ての消火栓装置1において、洗浄ノズル43から自動で洗浄水が噴射されるので、トンネル3内の全ての火災検知器33の前面カバー37の汚れを定期的に除去でき、管理者による清掃の手間を大幅に削減できる。
【0030】
また、本実施の形態の洗浄機構41は、従来例と同様に、消火栓装置1に供給される消火水の一部を火災検知器33の洗浄水として利用しているが、洗浄ノズル43への送水制御に関して電気的な制御が不要であるため、電磁弁を用いる従来例と比べて低コストである。
【0031】
なお、ポンプが起動している間、即ち消火水供給配管25に水が供給されている間、常に洗浄ノズル43から放水し続けていると、水が無駄になる上、消火栓装置の操作の妨げとなり望ましくない。
そのため本実施の形態では、洗浄制御弁47のバネ51の付勢力を調整することにより、消火栓ノズルから放水が行われているときには洗浄ノズル43からの放水が停止するようにしている。この点について具体例を挙げて説明する。なお、下記の説明に用いた数値は一例であり、発明を限定するものではない。
【0032】
洗浄制御弁47の一次側に接続している消火水供給配管25では、消火栓ノズルからの放水中、消火栓弁27のところで少なくとも0.5MPa程度の圧力が発生する。これは、例えば0.29MPa程度の適切な放水圧力で消火栓ノズルから放水を行うために必要な圧力である。
また、消火水供給配管25の一次側に接続する立上り管17では、水噴霧ノズル23からの水噴霧中、水噴霧制御弁のところで少なくとも0.65MPa程度の圧力が発生する。これは、例えば0.34MPa程度の適切な噴霧圧力で水噴霧ノズル23から水噴霧を行うために必要な圧力である。
【0033】
貯水槽から水を送水するポンプは、消火栓装置1による放水及び水噴霧設備19による水噴霧が適切な放水圧で行われるよう、上記の圧力条件を満たすように水を加圧して、配水本管15に送水する。
消火水の圧力が高すぎると配管の破損等の原因となるため、トンネル内の全ての水噴霧制御弁及び消火栓弁27を閉止した状態において、消火水の圧力は最大でも1.77MPa以下となるようにポンプの加圧力を調整している(以降、これを「締め切り圧力」という)。
したがって、洗浄制御弁47の一次側に作用する圧力は最大で1.77MPa程度であると言えるが、上記の締め切り圧力は配管総延長の中での最大値であるので実際はこれよりも低い場合もある。
【0034】
そこで、バネ51の付勢力を調整し、洗浄制御弁47が開放する圧力の設定値を、消火栓ノズルから放水されている際に発生する圧力(0.5MPa)および水噴霧ノズル23から放水されている際に発生する圧力(0.65MPa)のいずれか高い方の圧力より高く、かつ、締め切り圧力(1.77MPa)より低く設定する。
上述した例の場合は、例えば0.8~1.0MPaの圧力で洗浄制御弁47が開放するように設定するとよい。
【0035】
上記のように洗浄制御弁47の開放圧力を設定することで、ポンプが起動し消火栓弁27及び水噴霧制御弁が閉止している時、即ち消火栓ノズルからの放水及び水噴霧ノズル23からの水噴霧が行われていない時には、洗浄制御弁47の一次側に最大1.77MPaの圧力が発生するので洗浄制御弁47が開放して洗浄ノズル43から水が噴射される。
【0036】
一方、消火栓弁27を開放して消火栓ノズルからの放水を開始すると、洗浄制御弁47の一次側の圧力が例えば0.5MPa程度まで低下して洗浄制御弁47の開放圧力を下回るので、洗浄制御弁47が閉止して洗浄ノズル43の放水が停止する。
同様に、水噴霧制御弁を開放して水噴霧ノズル23からの放水を開始した場合にも、洗浄制御弁47の一次側の圧力が例えば0.65MPa程度まで低下して洗浄制御弁47に設定された開放圧を下回るので、洗浄制御弁47が閉止して洗浄ノズル43の放水が停止する。
このように、洗浄ノズル43から放水が行われるのは、ポンプを起動して立上り管17及び消火水供給配管25に水を供給してから、消火栓ノズルからの放水又は水噴霧ノズル23からの放水を開始するまでの間であるため、水の無駄がなく、消火栓装置の操作を妨げることもない。
【0037】
なお、ポンプや消火栓装置1の取付位置等によっては上記の限りではなく、洗浄制御弁47が開放する圧力の設定値を調整する必要がある。
例えば、ポンプに近い位置に消火栓装置1が設置されていると、消火栓ノズルから放水を開始しても洗浄制御弁47の一次側の圧力が十分に下がらない場合がある。具体的には、消火栓弁27が閉止しているときの消火栓弁27近傍の締め切り圧力が1.77MPaであるときに、消火栓弁27を開放しても消火栓弁27一次側近傍の圧力が1.2MPa程度までしか下がらず、消火栓弁27の二次側に圧力調整弁を入れて消火栓ノズルの放水圧力を調整する場合がある。
上記のような場合にも、当該消火栓装置1の洗浄制御弁47が開放する圧力を消火栓ノズルから放水されている際に発生する圧力より高く、かつ、締め切り圧力より低く設定しておけばよい。例えば1.4~1.5MPa以上の圧力で洗浄制御弁47が開放するようにするとよい。
【0038】
上述したように、本実施の形態によれば、消火栓装置1の定期点検時に火災検知器33を洗浄できるので、定期的に火災検知器33の前面カバー37の汚れを除去できる。
また、洗浄水の供給を制御する洗浄制御弁47は、遠隔での開閉操作を要することなく、消火栓装置1に供給される消火水の圧力によって自動で開放するので、電気的な制御が不要となり、電気配線や制御機能等を構築する必要がなく低コストである。
さらに、洗浄制御弁47の開放圧を消火栓ノズル又は水噴霧ノズル23から放水されているときに発生する圧力より高い値に設定することにより、消火栓ノズル又は水噴霧ノズル23から放水を開始すると洗浄ノズル43の放水が停止するので、水の無駄がなく、消火栓操作を妨げることもない。
【0039】
なお、上記実施の形態では、消火栓装置1の近傍に水噴霧設備19が設けられている例を挙げたが、トンネル内に水噴霧設備19が設けられず、消火栓装置1のみが設けられている場合もある。この場合には洗浄制御弁47の開放圧力を、消火栓ノズルから放水されている際に発生する圧力より高く、かつ、締め切り圧力より低く設定するとよい。
【0040】
また、上記実施の形態では、火災検知器33が消火栓装置1と一体型になっている例を挙げたが、本発明の洗浄機構を適用できる例はこの限りではない。例えば、火災検知器が火災検知器箱に収容されてトンネル壁面に単体で設置されている場合にも、トンネル内に消火栓装置及びこれに消火水を供給する配管等が敷設されていれば本発明を適用可能である。
上記のような場合には、火災検知器箱の前面パネルの上部に洗浄ノズルを設け、近傍の消火栓装置の消火水供給配管に洗浄水供給配管を接続するとよい。
【符号の説明】
【0041】
1 消火栓装置
3 トンネル
5 筐体
7 前面パネル
9 消火用ホース
11 消火栓扉
13 消火器扉
15 配水本管
17 立上り管
19 水噴霧設備
21 水噴霧用配管
23 水噴霧ノズル
25 消火水供給配管
27 消火栓弁
29 赤色表示灯
31 押ボタン通報装置
33 (トンネル内)火災検知器
35 検知器本体
37 前面カバー
39 グローブ
41 洗浄機構
43 洗浄ノズル
45 洗浄水供給配管
47 洗浄制御弁
49 弁体
51 バネ
53 洗浄水