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特開2024-123815冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123815
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
E04G21/02 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031527
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】390036515
【氏名又は名称】株式会社鴻池組
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】福田 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】金澤 優樹
(72)【発明者】
【氏名】生駒 顕彦
(72)【発明者】
【氏名】為石 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】北尾 朋大
(72)【発明者】
【氏名】林 逸貴
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172EA11
(57)【要約】
【課題】冷媒の供給に要する設備の大規模化及びコストの抑制と、コンクリートの温度上昇を抑制するに足りる冷却効率を有する冷媒の供給とを両立させることが可能な冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法を提供すること。
【解決手段】圧縮空気供給源2から圧縮空気を管部材1の開口部11に配設した冷風発生装置3に供給し、冷風発生装置3で発生する冷風A1をエアー管43を介して管部材1の奥部に導入し、導入した冷風A1によってコンクリートCを冷却し、コンクリートCを冷却した後の冷風A1が管部材1の開口部11から放出されるようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート内に配置されるようにした管部材に冷却空気を供給し、打設後のコンクリートを冷却する冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法であって、圧縮空気供給源から圧縮空気を冷風発生装置に供給し、該冷風発生装置で発生する冷風を管部材に導入し、該導入した冷風によってコンクリートを冷却するようにしたことを特徴とする冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法。
【請求項2】
前記圧縮空気供給源から圧縮空気を管部材の開口部に配設した冷風発生装置に供給し、該冷風発生装置で発生する冷風をエアー管を介して管部材の奥部に導入し、該導入した冷風によってコンクリートを冷却し、コンクリートを冷却した後の冷風が管部材の開口部から放出されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法。
【請求項3】
前記圧縮空気供給源から圧縮空気を管部材の奥部に配設した冷風発生装置に供給し、該冷風発生装置で発生する冷風によってコンクリートを冷却し、コンクリートを冷却した後の冷風が管部材の開口部から、放出されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法。
【請求項4】
前記管部材が複数の独立した管からなり、各管部材にそれぞれ冷風発生装置を配設するようにしたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法。
【請求項5】
前記管部材が複数の独立した管からなり、2本以上の管部材で冷風発生装置を共用するようにしたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法。
【請求項6】
前記管部材の奥部に水を貯留し、冷風発生装置で発生する冷風をバブリングするようにしたことを特徴とする請求項2又は3に記載の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打設後のコンクリートの温度上昇を抑制するための冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、硬化する際にセメントの水和反応によって発熱することが知られている。この発熱を水和発熱と呼ぶが、打設後の水和発熱によるコンクリート内部の温度上昇量は、厚い部材になると30~40℃超となる。水和発熱に伴う温度上昇によって膨張したコンクリートは、硬化後に温度降下する際に収縮し、この収縮が地盤や岩盤、既設コンクリート等に拘束されると引張応力が発生して、コンクリート構造物にひび割れを生じることがある。このひび割れは、一般に温度ひび割れと呼ばれているが、温度ひび割れが過大となると、コンクリート構造物の耐久性等に悪影響を与えることとなる。
【0003】
従来、打設後のコンクリートの温度上昇を抑制する工法として、パイプクーリング工法が知られている。この工法は、コンクリート打設範囲内に配筋された鉄筋等を介して打設後のコンクリート躯体の内外に通じる配管を予め敷設し、コンクリートの打設中や打設後に配管の一端側から他端側に向けて水や空気等の冷媒を導入することにより、打設後のコンクリートの温度上昇を抑制するものである(例えば、特許文献1~2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-92633号公報
【特許文献2】特開2013-159905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記打設後のコンクリートの温度上昇を抑制する工法のうち、水を冷媒として用いる場合、冷却効率は優るものの、水の圧送、回収、循環に要する大規模な設備を要し、さらにはコンクリート内における漏水を防止する観点から、配管の強度を高める必要があるため、設備の構築と併せたコスト増が避けられないという問題があった。
【0006】
一方、空気を冷媒として用いる場合、水を冷媒として用いる場合の問題がない反面、コンクリート打設現場の状況によって冷媒としての機能が著しく低下する。すなわち、例えば、コンクリート打設現場の気温が高い場合、空気は、その冷却効率が悪く、冷却作業に時間を要するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記打設後のコンクリートの温度上昇を抑制する工法が有する問題点に鑑み、冷媒の供給に要する設備の大規模化及びコストの抑制と、コンクリートの温度上昇を抑制するに足りる冷却効率を有する冷媒の供給とを両立させることが可能な冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法は、コンクリート内に配置されるようにした管部材に冷却空気を供給し、打設後のコンクリートを冷却する冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法であって、圧縮空気供給源から圧縮空気を冷風発生装置に供給し、該冷風発生装置で発生する冷風を管部材に導入し、該導入した冷風によってコンクリートを冷却するようにしたことを特徴とする。
ここで、「冷風発生装置」とは、ボルテックスチューブ原理を用いたもの意味する。
【0009】
この場合において、前記圧縮空気供給源から圧縮空気を管部材の開口部に配設した冷風発生装置に供給し、該冷風発生装置で発生する冷風をエアー管を介して管部材の奥部に導入し、該導入した冷風によってコンクリートを冷却し、コンクリートを冷却した後の冷風が管部材の開口部から放出されるようにすることができる。
【0010】
また、前記圧縮空気供給源から圧縮空気を管部材の奥部に配設した冷風発生装置に供給し、該冷風発生装置で発生する冷風によってコンクリートを冷却し、コンクリートを冷却した後の冷風が管部材の開口部から、放出されるようにすることができる。
【0011】
また、前記管部材が複数の独立した管からなり、各管部材にそれぞれ冷風発生装置を配設するようにすることができる。
【0012】
また、前記管部材が複数の独立した管からなり、2本以上の管部材で冷風発生装置を共用するようにすることができる。
【0013】
また、前記管部材の奥部に水を貯留し、冷風発生装置で発生する冷風をバブリングするようにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法によれば、圧縮空気供給源から圧縮空気を冷風発生装置に供給し、冷風発生装置で発生する冷風を管部材に導入し、導入した冷風によってコンクリートを冷却するようにすることにより、空気を冷媒として用いることにより、水を冷媒として用いる場合の問題が解消し、冷媒の供給に要する設備の大規模化及びコストの抑制と、コンクリートの温度上昇を抑制するに足りる冷却効率を有する冷媒の供給とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第1実施例を示す説明図である。
図2】本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第1実施例を示す概略説明図である。
図3】本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第1実施例の変形例を示す説明図である。
図4】本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第1実施例の変形例を示す概略説明図である。
図5】本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第2実施例を示す概略説明図である。
図6】本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第3実施例を示す概略説明図である。
図7】本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第4実施例を示す説明図で、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図8】本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第4実施例の第1変形例を示す説明図で、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図9】本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第4実施例の第2変形例を示す説明図で、(a)は正面図、(b)は側面断面図である。
図10】本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第4実施例の第3変形例を示す説明図で、(a)は正面図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)は(a)のB-B断面図である。
図11】本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第4実施例の第4変形例を示す説明図で、(a)は正面図、(b)は側面断面図である。
図12】本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第5実施例を示す説明図で、(a)は正面図、(b)は側面断面図である。
図13】本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第6実施例の一例を示す説明図で、(a)は正面図、(b)は側面断面図である。
図14】本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第6実施例の一例を示す説明図で、(a)は正面図、(b)は側面断面図である。
図15】本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第6実施例の一例を示す説明図で、(a)は正面図、(b)は側面断面図である。
図16】本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第6実施例の一例を示す説明図で、(a)は正面図、(b)は側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1図2に、本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第1実施例を示す。
この冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法は、構築するコンクリート構造物S内に配置されるようにした管部材1に冷却空気を供給し、打設後のコンクリートCを冷却する冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法であって、圧縮空気供給源2から圧縮空気を冷風発生装置3に供給し、冷風発生装置3で発生する冷風A1を管部材1に導入し、導入した冷風A1によってコンクリートCを冷却するようにする。
【0018】
そして、本実施例においては、圧縮空気供給源2から圧縮空気を管部材1の開口部11に配設した冷風発生装置3に供給し、冷風発生装置3で発生する冷風A1をエアー管43を介して管部材1の奥部に導入し、導入した冷風A1によってコンクリートCを冷却し、コンクリートCを冷却した後の冷風A1が管部材1の開口部11から放出されるようにする。
冷風発生装置3で発生する温風A2は、冷風発生装置3から直接大気中に放出されるようにするが、必要に応じて、温風A2をコンクリートCの露出面や型枠面に当てることで、コンクリートCに温度差が生じることを抑制することができる。
【0019】
ここで、管部材1には、熱伝導性が良好なφ25~φ200mm程度の鋼管を使用することが好ましい。
本実施例において、管部材1は、構築するコンクリート構造物S内に高さ方向の全長(コンクリート構造物Sの高さH:5000mm。)に亘って鉛直方向に配置されるようにした複数の独立した管からなり、各管部材1は、300~1000mm、好ましくは、400~800mm(本実施例においては、500mm。)間隔で幅方向(コンクリート構造物Sの幅W:10000mm。)に並列して配置されるようにする。
また、構築するコンクリート構造物Sの厚みが、例えば、1000mmより厚い場合は、管部材1を、構築するコンクリート構造物Sの厚さ方向に並列して(マトリックス状又は千鳥状に)配置されるようにする。
なお、管部材1には、鋼管のほか、アルミニウム管、合成樹脂管、紙管(ボイド管)等の各種管材を用いることができる。ただし、冷却効果を考慮すると、鋼管を用いることが好ましい。また、管形状も、直管のほか、蛇腹管等の各種管材を用いることができる。
また、例えば、管部材1の奥部(冷却対象部:管部材1の下端から0~2000mm程度)の内面及び/又は外面に金属製フィンを形成し、管部材1の冷風A1との熱交換を効率的に行えるようにすることもできる。
【0020】
圧縮空気供給源2には、コンプレッサ21及びレシーバタンク22を使用し、コンプレッサ21とレシーバタンク22、レシーバタンク22と冷風発生装置3は、φ9~φ100mm程度のエアー管41、42及び分岐部42aを介してそれぞれ接続する。エアー管41、42には、φ9~φ100mm程度のエアホースを使用することができる。分岐部42aは、エルボ、チーズ、ソケット、ブッシング、ニップル等の管部材を適宜組み合わせて構成するとともに、流量調整バルブを配設することで、各冷風発生装置3に対する流量を調節できるようにする。
コンプレッサ21には、0.5MPa以上、好ましくは、0.7MPa以上の圧縮空気を供給できる汎用のコンプレッサを使用することができるが、圧損を考慮し、十分な元圧を確保できるように、1.0MPa以上の圧縮空気を供給できる高圧コンプレッサを使用してもよい。
また、コンプレッサ21には、必要に応じて、冷凍式のエアドライヤを併用することができる。
レシーバタンク22は、冷風発生装置3に供給する圧縮空気の脈動の防止、コンプレッサ21の保護、バッファーのために設けられるもので、レシーバタンク22を介在させることで、冷風発生装置3に一定圧力の圧縮空気を安定して供給することができる。
【0021】
冷風発生装置3には、ボルテックスチューブ原理により冷風A1を発生させる機器を使用する。
ボルテックスチューブ原理は、ブッシングゼネレータと呼ばれる部品の働きにより供給された圧縮空気が高速回転を行うことによって、音速に近い速度でノズルに流入し、膨張して圧力を一部失うという空気の特性を利用して、熱を奪われた冷風と、熱を吸収した温風の分離を行うようにするもので、本発明においては、この冷風を利用するようにしている。
冷風発生装置3は、コンクリートCの発熱量に応じた冷風A1を発生させる機器を使用する必要があるが、本実施例においては、東浜工業社製の超低温空気発生器「東浜エアークーラー AC-70型」(商品名)を使用し、冷風発生装置3を、複数の独立した管からなる各管部材1の開口部11にそれぞれ配設するようにしている。
冷風発生装置3の稼働条件は、例えば、圧縮空気の入気風量は、0.1~3.0m/min、冷風A1の吐出風量は、0.1~2.0m/min、圧力は、0.2~1.0MPa、温度は、-30~20℃程度、好ましくは、-20~10℃程度、より好ましくは、-10~5℃程度に設定するようにする。
【0022】
ところで、本実施例においては、冷風発生装置3を、複数の独立した管からなる各管部材1の開口部11にそれぞれ配設するようにしたが、図3図4に示す、本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第1実施例の変形例のように、1台の冷風発生装置3を、2本(以上)の管部材1で共用するようにすることができる。
この場合、冷風発生装置3で発生する冷風A1を、2本(以上)の管部材1の奥部に導入するエアー管43にそれぞれ供給できるように分岐用治具43aを介在するようにする。
この分岐用治具43aは、分岐機能に加え、2本(以上)の管部材1に選択的及び/又は供給量を調節して供給することができるように、流量制御機能(バルブ機能)を有するようにすることが好ましい。
これにより、冷風発生装置3の冷風A1を発生させる能力やコンクリートCの発熱量に応じて、冷風A1を、2本(以上)の管部材1に選択的及び/又は供給量を調節して供給することができる。
【0023】
冷風発生装置3で発生する冷風A1を管部材1の奥部に導入するエアー管43には、φ9~φ50mm程度のエアホースや鋼管を使用することができる。
エアー管43は、その開口部が、コンクリートCの冷却箇所に応じた管部材1の任意の位置、例えば、管部材1の全長の1/2より奥部側に位置するように配設する(本実施例においては、エアー管43の開口部が、管部材1の下端から50~300mm程度に位置するようにしている。)。
また、必要に応じて、開口部に管部材1の開口部11側に向けて冷風A1を噴出するノズル(図示省略)を取り付けることで、冷風A1の流動性を高めたり、例えば、管部材1の奥部(冷却対象部:管部材1の下端から0~2000mm程度)に連続気泡性の多孔質材料や螺旋形状のフィン部材を挿入することにより、その部分の冷風A1の滞留時間を長くするようにしたりすることができる。
さらに、この多孔質材料を水で濡らすようにしたり、例えば、管部材1の奥部(冷却対象部:管部材1の下端から0~2000mm程度)に不織布や布を挿入又は貼り付け、この不織布や布を水で濡らすようにすることにより、冷風A1の湿度(比熱)を高めることで、冷風A1による冷却効率を向上することができる。
エアー管43は、必要に応じて、断熱仕様とすることができ、これにより、冷風A1を管部材1の奥部まで温度上昇することなく導入することができる。
【0024】
管部材1の奥部に導入し、コンクリートCを冷却した冷風A1は、後から管部材1の奥部に導入される冷風A1によって押し出され、管部材1の開口部11から放出される。
この場合、必要に応じて、管部材1の開口部に空気流量増幅器(図示省略)を配設し、管部材1内でコンクリートCとの間で熱交換することで温度が上昇した冷風A1を強制的に排出させることができる。
流量増幅器には、東浜工業社製の空気流量増幅器「エアー・セーバー」(商品名)を使用することができる。
これにより、温度が上昇した冷風A1が管部材1内で滞留することを防止することができ、管部材1の奥部から開口部11に亘って温度差の小さい均一な冷風A1の流れを形成することができ、コンクリートCを一様に冷却することができる。
【0025】
なお、この冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法を実施するために使用する設備機器や部材は、構築するコンクリート構造物S内に残置される管部材1を除いて、再使用できる。
【0026】
ところで、冷風発生装置3を配設する箇所は、第1実施例の管部材1の開口部11に限定されず、図5に示す、本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第2実施例のように、管部材1の奥部とすることができる。
具体的には、圧縮空気供給源2から圧縮空気を管部材1の奥部に配設した冷風発生装置3に供給し、冷風発生装置3で発生する冷風A1によってコンクリートCを冷却し、コンクリートCを冷却した後の冷風A1が管部材1の開口部から、放出されるようにする。
冷風発生装置3で発生する温風A2は、エアー管45を介して管部材1の外部に導かれ、大気中に放出されるようにするが、必要に応じて、温風A2をコンクリートCの露出面や型枠面に当てることで、コンクリートCに温度差が生じることを抑制することができる。
【0027】
圧縮空気を管部材1の奥部に配設した冷風発生装置3に供給するエアー管44には、φ9~φ50mm程度のエアホースや鋼管を使用することができる。
【0028】
冷風発生装置3で発生する温風A2を管部材1の奥部に導入するエアー管45には、φ9~φ50mm程度のエアホースや鋼管を使用することができる。
エアー管45は、断熱仕様とし、これにより、管部材1内の温度を上昇させることなく、温風A2を管部材1の外部に導くことができる。
【0029】
また、第1実施例及び第2実施例においては、管部材1の内部がドライな状態で管部材1の奥部に冷風A1を導入するようにしたが、図6に示す、本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第3実施例のように、管部材1の奥部に水5や不凍液を貯留し、冷風発生装置3で発生する冷風A1を水5中に送気してバブリングするようにすることができる。
ここで、管部材1の下端は、水5や不凍液がコンクリートC内へ漏出することを防止するため、施栓するようにしたり、有底の管部材1を用いるようにしたりすることが好ましい。
また、水5がコンクリートC内へ漏出することを防止するために、水5に、水の粘性を高める物質を添加することができる。粘性を高める物質としては、天然糊料(ガム、海藻類等)、半合成糊料(繊維素誘導体、加工澱粉等)、合成糊料(ビニル系やアクリル系等のポリマー)等を挙げることができる。
これにより、管部材1の奥部に水5を貯留した場合には、冷風A1の湿度(比熱)を高めることで、冷風A1による冷却効率を向上することができ、管部材1の奥部に不凍液を貯留した場合には、冷風A1により冷却された不凍液により冷却効率を向上することができる。
【0030】
また、第1実施例~第3実施例においては、管部材1を構築するコンクリート構造物S内の鉛直方向に配置されるようにしたが、管部材1を配置する方向は、水平方向や斜め方向(開口部11から上向きや下向き)とすることができる。
具体的には、図7に示す、本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第4実施例のように、管部材1を構築するコンクリート構造物S内の水平方向に配置されるようにすることができる。
【0031】
そして、本実施例においては、圧縮空気供給源2から圧縮空気を管部材1の開口部11に配設した冷風発生装置3に供給し、冷風発生装置3で発生する冷風A1をエアー管43を介して水平方向に配置した管部材1の奥部に導入し、導入した冷風A1によってコンクリートCを冷却し、コンクリートCを冷却した後の冷風A1が管部材1の開口部11から放出されるようにする。
【0032】
また、構築するコンクリート構造物Sの厚みTが、例えば、1000mmより厚い場合は、図8に示す、本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第4実施例の第1変形例のように、管部材1を、構築するコンクリート構造物Sの高さ方向に並列して配置されるようにし、さらに、構築するコンクリート構造物Sの厚みが、例えば、1000mmより厚い場合は、管部材1を、構築するコンクリート構造物Sの厚さ方向に並列して(マトリックス状又は千鳥状に)配置されるようにする。
【0033】
また、構築するコンクリート構造物Sの幅Wが、例えば、5000mmより大きい場合は、図9に示す、本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第4実施例の第2変形例のように、管部材1及びエアー管43を、構築するコンクリート構造物Sの幅方向の中間部で突き合わせて配置されるようにしたり、図10に示す、本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第4実施例の第3変形例のように、管部材1及びエアー管43を、構築するコンクリート構造物Sの高さ方向の位置を異ならせて配置されるようにしたり、図11に示す、本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第4実施例の第5変形例のように、構築するコンクリート構造物Sの幅Wの略全長に亘って配置した各管部材1の開口部11に複数台、本実施例においては3台の冷風発生装置3をそれぞれ配設し、各冷風発生装置3で発生する冷風A1を、開口する位置を異ならせたエアー管43を介して管部材1の奥部、中間部及び入口寄り部に導入するようにする。
【0034】
また、冷風発生装置3で発生する冷風A1を管部材1内に供給するエアー管43を、部
分的に又はその全部を省略することができる。
具体的には、図12に示す、本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第5実施例のように、先端を施栓した管部材1を構築するコンクリート構造物S内の水平方向に配置し、冷風発生装置3で発生する冷風A1をエアー管43を介して管部材1の奥部に導入し、導入した冷風A1を管部材1から鉛直方向上方に分岐した枝管12に導入し、冷風A1によってコンクリートCを冷却し、コンクリートCを冷却した後の冷風A1が管部材1の開口部11及び枝管12の開口部12aから放出されるようにする。
ここで、管部材1には、熱伝導性が良好なφ25~φ200mm程度(本実施例においては、φ50mm。)の鋼管を、枝管12には、熱伝導性が良好な管部材1より細径(本実施例においては、φ20mm。)の鋼管を、それぞれ使用することが好ましい。
【0035】
エアー管43の全部を省略する場合は、冷風発生装置3で発生する冷風A1を管部材1の開口部11に直接導入するようにする。
この場合、図13図16に示す、本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法の第6実施例の各例のように、管部材1には、熱伝導性が良好な細径(本実施例においては、φ20mm。)の鋼管を使用するようにする。
そして、管部材1を、構築するコンクリート構造物S内を蛇行して配置するようにし、さらに、冷風A1を導入する管部材1の一方の開口部11及びコンクリートCを冷却した後の冷風A1が放出される管部材1の他方の開口部13を構築するコンクリート構造物Sの任意の位置に設定することができる。
【0036】
以上、各実施例によれば、圧縮空気供給源2から圧縮空気を冷風発生装置3に供給し、冷風発生装置3で発生する冷風A1を管部材1に導入し、導入した冷風A1によってコンクリートCを冷却するようにすることにより、空気を冷媒として用いることにより、水を冷媒として用いる場合の問題が解消し、冷媒の供給に要する設備の大規模化及びコストの抑制と、コンクリートCの温度上昇を抑制するに足りる冷却効率を有する冷媒の供給とを両立させることができる。
【0037】
[実証試験]
型枠としてボックスカルバート(空間容積:2000×2000×2000[mm])を用い、打設したコンクリートの温度上昇を測定した。
打設したコンクリートの冷却は、第1実施例に倣い、3本×3本、合計9本の管部材を500mm間隔でマトリックス状に配置して実施した。
無対策の場合、打設したコンクリート内部の最高温度が71.2℃まで上昇するのに対して、第1実施例に倣って冷却を行うことにより、打設したコンクリート内部の最高温度を57.5℃に抑制できることを確認した。
【0038】
以上、本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の冷却空気を用いたエアパイプクーリング工法は、冷媒の供給に要する設備の大規模化及びコストの抑制と、コンクリートの温度上昇を抑制するに足りる冷却効率を有する冷媒の供給とを両立させることが可能なことから、打設後のコンクリートの温度上昇を抑制する用途に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 管部材
11 開口部
12 枝管
12a 開口部
13 開口部
2 圧縮空気供給源
21 コンプレッサ
22 レシーバタンク
3 冷風発生装置
41 エアー管
42 エアー管
42a 分岐部
43 エアー管
43a 分岐用治具
44 エアー管
45 エアー管
A1 冷風
A2 温風
C コンクリート
S コンクリート構造物
図1
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