(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012382
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】CD70に特異的な抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240123BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240123BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240123BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240123BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240123BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240123BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240123BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240123BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240123BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240123BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240123BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240123BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28
C12P21/08
C07K16/46
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 E
A61K39/395 T
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023183710
(22)【出願日】2023-10-26
(62)【分割の表示】P 2020542002の分割
【原出願日】2019-01-31
(31)【優先権主張番号】62/625,019
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/641,873
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(72)【発明者】
【氏名】シレル・パノフスキー
(72)【発明者】
【氏名】タオ・サイ
(72)【発明者】
【氏名】バーブラ・ジョンソン・サス
(72)【発明者】
【氏名】スラビ・シュリーバトサ・スリニバサン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ジョン・ヴァン・ブラーコム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】有効性および安全性プロファイルが改善され、ヒト患者での使用に適した、CD70が発現される癌、特にmRCCを治療する抗体を提供する。
【解決手段】本発明は、CD70に特異的に結合する抗体を提供する。本発明はさらに、CD70と別の抗原(例えば、CD3)に結合する二特異性抗体を提供する。本発明はさらに抗体をコードする核酸、および当該抗体(一特異性および二特異性)を取得する方法に関連する。本発明はさらに、癌を含むCD70介在性の病態の治療のためのこれら抗体の使用に関する治療方法に関連する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cluster of Differentiation 70(CD70)に特異的に結合する単離抗体であって、前記抗体は、
a)(i)配列番号49、50、51、55、56、57、61、62、63、67、68、69、73、74、75、79、80、81、85、86、87、91、92、93、97、98、99、103、104、105、109、110、111、115、116、117、121、122、123、127、128、129、133、134、135、139、140、141、145、146、147、151、152、153、157、158、159、163、164、165、169、170、171、175、176、177、181、182、183、187、188、189、332、333、334、338、339、340、344、345、346、350、351、352、356、357、358、362、363、364、368、369、370、374、375、376、380、381、382、386、387、388、392、393、394、398、399、400、404、405、406、410、411、412、416、437、418、422、423、424、428、429、430、434、435、436、440、441、442、446、447、448、452、453、454、458、459または460に示される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)、(ii)配列番号52、53、58、59、64、65、70、71、76、77、82、83、88、89、94、95、100、101、106、107、112、113、118、119、124、125、130、131、136、137、142、143、148、149、154、155、160、161、166、167、172、173、178、179、184、185、190、191、335、336、341、342、347、348、353、354、359、360、365、366、371、372、377、378、383、384、389、390、395、396、401、402、407、408、413、414、419、420、425、426、431、432、437、438、443、444、449、450、455、456、461または462に示される配列を含むVH CDR2、およびiii)配列番号54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、337、343、349、355、361、367、373、379、385、391、397、403、409、415、421、427、433、439、445、451、457または463に示される配列を含むVH CDR3、を含む重鎖可変(VH)領域、および/または
b)(i)配列番号193、196、199、202、205、208、211、214、217、220、223、226、229、232、235、238、241、244、247、250、253、256、259、262、464、467、470、473、476、479、482、485、488、491、494、497、500、503、506、509、512、515、518、521、524または527に示される配列を含むVL CDR1、(ii)配列番号194、197、200、203、206、209、212、215、218、221、224、227、230、233、236、239、242、245、248、251、254、257、260、263、465、468、471、474、477、480、483、486、489、492、495、498、501、504、507、510、513、516、519、522、525または528に示される配列を含むVL CDR2、および(iii)配列番号195、198、201、204、207、210、213、216、219、222、225、228、231、234、237、240、243、246、249、252、255、258、261、264、466、469、472、475、478、481、484、487、490、493、496、499、502、505、508、511、514、517、520、523、526または529に示される配列を含むVL CDR3、を含む軽鎖可変(VL)領域、を含む、単離抗体。
【請求項2】
Cluster of Differentiation 70(CD70)に特異的に結合する単離抗体であって、前記抗体は、
a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、289、291、293、295、297、299、301、303、305、307、309、311、313、315、317、319、321、323、325、327、329または331に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含むVH領域、および/または
b)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、288、290、292、294、296、298、300、302、304、306、308、310、312、314、316、318、320、322、324、326、328または330に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含むVL領域、を含む、単離抗体。
【請求項3】
CD70に特異的に結合し、請求項1に記載の抗体と競合する、単離抗体。
【請求項4】
二特異性抗体であって、前記二特異性抗体は全長抗体であり、標的抗原に特異的に結合する前記二特異性抗体の第一の抗体可変ドメインを含み、およびヒト免疫エフェクター細胞上に局在するエフェクター抗原に特異的に結合することにより前記ヒト免疫エフェクター細胞の活性をリクルートすることができる前記二特異性抗体の第二の抗体可変ドメインを含み、前記第一の抗体可変ドメインは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、289、291、293、295、297、299、301、303、305、307、309、311、313、315、317、319、321、323、325、327、329、もしくは331に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域、および/または配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、288、290、292、294、296、298、300、302、304、306、308、310、312、314、316、318、320、322、324、326、328、もしくは330に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含む、二特異性抗体。
【請求項5】
二特異性抗体であって、前記二特異性抗体は全長抗体であり、標的抗原に特異的に結合する前記二特異性抗体の第一の抗体可変ドメインを含み、およびヒト免疫エフェクター細胞上に局在するエフェクター抗原に特異的に結合することにより前記ヒト免疫エフェクター細胞の活性をリクルートすることができる前記二特異性抗体の第二の抗体可変ドメインを含み、前記第一の抗体可変ドメインは、
a)(i)配列番号49、50、51、55、56、57、61、62、63、67、68、69、73、74、75、79、80、81、85、86、87、91、92、93、97、98、99、103、104、105、109、110、111、115、116、117、121、122、123、127、128、129、133、134、135、139、140、141、145、146、147、151、152、153、157、158、159、163、164、165、169、170、171、175、176、177、181、182、183、187、188、189、332、333、334、338、339、340、344、345、346、350、351、352、356、357、358、362、363、364、368、369、370、374、375、376、380、381、382、386、387、388、392、393、394、398、399、400、404、405、406、410、411、412、416、437、418、422、423、424、428、429、430、434、435、436、440、441、442、446、447、448、452、453、454、458、459または460に示される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)、(ii)配列番号52、53、58、59、64、65、70、71、76、77、82、83、88、89、94、95、100、101、106、107、112、113、118、119、124、125、130、131、136、137、142、143、148、149、154、155、160、161、166、167、172、173、178、179、184、185、190、191、335、336、341、342、347、348、353、354、359、360、365、366、371、372、377、378、383、384、389、390、395、396、401、402、407、408、413、414、419、420、425、426、431、432、437、438、443、444、449、450、455、456、461または462に示される配列を含むVH CDR2、およびiii)配列番号54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、337、343、349、355、361、367、373、379、385、391、397、403、409、415、421、427、433、439、445、451、457または463に示される配列を含むVH CDR3、を含む重鎖可変(VH)領域、および/または
b)(i)配列番号93、196、199、202、205、208、211、214、217、220、223、226、229、232、235、238、241、244、247、250、253、256、259、262、464、467、470、473、476、479、482、485、488、491、494、497、500、503、506、509、512、515、518、521、524または527に示される配列を含むVL CDR1、(ii)配列番号194、197、200、203、206、209、212、215、218、221、224、227、230、233、236、239、242、245、248、251、254、257、260、263、465、468、471、474、477、480、483、486、489、492、495、498、501、504、507、510、513、516、519、522、525または528に示される配列を含むVL CDR2、および(iii)配列番号195、198、201、204、207、210、213、216、219、222、225、228、231、234、237、240、243、246、249、252、255、258、261、264、466、469、472、475、478、481、484、487、490、493、496、499、502、505、508、511、514、517、520、523、526または529に示される配列を含むVL CDR3、を含む軽鎖可変(VL)領域、を含む、二特異性抗体。
【請求項6】
前記第二の抗体可変ドメインが、エフェクター抗原CD3に特異的に結合する、請求項5に記載の二特異性抗体。
【請求項7】
前記第二の抗体可変ドメインが、
a)(i)配列番号267、268、269に示される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1);(ii)配列番号270または271に示される配列を含むVH CDR2;およびiii)配列番号272に示される配列を含むVH CDR3、を含む重鎖可変(VH)領域:および/または
b)(i)配列番号273に示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号274に示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号275に示される配列を含むVL CDR3、を含む軽鎖可変(VL)領域、を含む、請求項6に記載の二特異性抗体。
【請求項8】
ヘテロ二量体タンパク質の前記第一および第二の抗体可変ドメインの両方は、ヒトIgG2(配列番号279)のヒンジ領域中の223位、225位および228位、ならびにCH3領域中の409位または368位(EUナンバリングスキーム)でアミノ酸改変を含有する、請求項4に記載の二特異性抗体。
【請求項9】
前記ヒトIgG2の265位、330位および331位のうちの一つまたは複数でアミノ酸改変をさらに含む、請求項8に記載の二特異性抗体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体をコードする核酸。
【請求項11】
請求項10に記載の核酸を含むベクター。
【請求項12】
請求項10に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項13】
医薬品としての使用のための請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項14】
前記医薬品が、腎細胞癌、グリア芽腫、例えば低グレードグリオーマなどのグリオーマ、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキン病(HD)、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型リンパ腫、濾胞性リンパ腫、または非小細胞肺癌からなる群から選択されるCD70関連癌の治療における使用のためである、請求項13に記載の抗体。
【請求項15】
その必要のある対象を治療する方法であって、
a) 請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体を提供すること、および
b) 前記対象に前記抗体を投与すること、を含む、方法。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体を含む医薬組成物。
【請求項17】
対象においてCD70を発現する悪性細胞と関連した状態を治療する方法であって、その必要のある対象に、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体、または請求項16に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む、方法。
【請求項18】
前記状態が、癌である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記癌が、腎細胞癌、グリア芽腫、例えば低グレードグリオーマなどのグリオーマ、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキン病(HD)、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型リンパ腫、濾胞性リンパ腫、または非小細胞肺癌からなる群から選択されるCD70関連癌である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
CD70を発現する悪性細胞を有する対象において腫瘍の増殖または進行を阻害する方法であって、その必要のある前記対象に、請求項16に記載の医薬組成物の前記対象に対する有効量を投与することを含む、方法。
【請求項21】
対象においてCD70を発現する悪性細胞の転移を阻害する方法であって、その必要のある前記対象に、請求項16に記載の医薬組成物の前記対象に対する有効量を投与することを含む、方法。
【請求項22】
CD70を発現する悪性細胞を有する対象において腫瘍の退縮を誘導する方法であって、その必要のある前記対象に、請求項16に記載の医薬組成物の前記対象に対する有効量を投与することを含む、方法。
【請求項23】
抗体を作製する方法であって、前記抗体の産生を生じさせる条件下で、請求項12に記載の宿主細胞を培養すること、および前記宿主細胞または培養物から前記抗体を単離すること、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年3月12日に出願された米国仮特許出願第62/641,873号明細書、および2018年2月1日に出願された米国仮特許出願第62/625,019号明細書の優先権を主張するものであり、当該出願の各々がその全体で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表への参照
本出願は、EFS-Web経由で電子的に出願され、.txtフォーマットで電子的に提出された配列表を含む。.txtファイルには、234,861バイトのサイズを有する、2019年1月3日に作成された“ALGN-015_02WO_SL.txt”と題された配列表が含まれる。この.txtファイルに含まれる配列表は、本明細書の一部であり、その全体で参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、Cluster of Differentiation 70(CD70)に特異的に結合する例えば全長抗体またはその抗原結合断片などの抗体に関する。さらに本発明は、一つのアーム上にCD70抗体を含むヘテロ多量体抗体(例えば二特異性抗体)に関する。CD70抗体を含む組成物、当該抗体の作製方法および精製方法、ならびに診断および治療におけるその使用も提供される。
【背景技術】
【0004】
腎細胞癌(RCC:Renal Cell Carcinoma)は、腎皮質を起源とする癌であり、腎臓の癌の約90%を占めている。組織学的には、RCCはいくつかのサブタイプに分類されることができる。その中で明細胞腎細胞癌(ccRCC:Clear Cell Renal Cell Carcinoma)が最も普遍的であり、最も多くの死者が発生している。毎年、32万件を超えるRCCが世界で報告されており、おおよそ14万人が死亡している。RCCの発生率はこの10年間で着実に上昇しており、すべての成人の悪性腫瘍の2~3%を占めている。初期ステージの限局性腫瘍を有する患者は外科的切除を選択することができる。しかし限局性疾患が早期に血行性に播種する場合には、転移が発生する。早期転移の部位としては、肺、リンパ節、肝臓、骨および脳が挙げられ、そして数は少ないが副腎、および対側腎が挙げられる。進行性疾患の患者は高い死亡率を有し、ステージIIIの疾患で5年生存率の中央値は53%、転移性疾患ではわずか8%である。進行性疾患に対する現在のファーストライン治療選択肢には、血管内皮成長因子(VEGF:Vascular Endothelial Growth Factor)受容体を標的とする例えばスニチニブおよびパゾパニブなどの低分子チロシンキナーゼ阻害剤(TKI:Tyrosine Kinase Inhibitor)、例えばベバシズマブなどのVEGFを標的とするモノクローナル抗体、mammalian target of Rapamycin(mTOR)の阻害剤であるテムシロリムス、ならびに高用量IL-2が含まれる。これらVEGFを標的とする治療法は全体的な生存率を改善してきたが、長期間の薬剤耐性により疾患の再発が生じており、進行性疾患に対する治療法はいまだアンメットニーズである(例えば、Zarrabi,K.et al.,Journal of Hematology and Oncology,10:38(2017)を参照のこと)。
【0005】
Cluster of Differentiation 70(CD70、CD27LGまたはTNFSF7)は、腫瘍壊死因子(TNF:tumor necrosis factor)スーパーファミリーの1種であり、そしてTNFスーパーファミリー受容体であるCD27のリガンドである。CD27とCD70との間の一時的な相互作用によってT細胞の共刺激がもたらされ、この刺激はCD28による刺激に対して相補的である。CD70は、例えば非ホジキンリンパ腫およびホジキン病などの血液の癌、ならびに例えばグリア芽腫および腎細胞癌などの固形腫瘍で発現されており、ccRCC上でのその発現は、ほぼ均一である(例えば、Grewal I.,et al.,Expert Opinion on Therapeutic Targets,12(3):341-351(2008)を参照のこと)。
【0006】
T細胞に会合する二特異性アプローチの形式でのCD70二特異性抗体が近年開発された。しかし多くの二特異性の形態は低分子量であり、そして半減期が短いという制限がある。そのために継続的な注入が必要となってくる。そこで、有効性および安全性プロファイルが改善され、ヒト患者での使用に適した、CD70が発現される癌、特にmRCCを治療する抗体(例えば一特異性または二特異性)に対するニーズがいまだ存在している。
【発明の概要】
【0007】
本明細書に開示される発明は、Cluster of Differentiation 70(CD70)に特異的に結合する抗体(例えば一特異性抗体または二特異性抗体)を目的としている。一部の実施形態では、全長二特異性形式の本明細書に記載されるCD70抗体は、半減期が長く、Fc相互作用が最小化され、そしてインビボでの免疫細胞との相互作用を介した非特異的サイトカイン放出が最小化されている。
【0008】
ゆえに一つの態様では、本発明は、CD70に特異的に結合する単離抗体を提供するものであり、当該抗体は、(a)(i)配列番号49、50、51、55、56、57、61、62、63、67、68、69、73、74、75、79、80、81、85、86、87、91、92、93、97、98、99、103、104、105、109、110、111、115、116、117、121、122、123、127、128、129、133、134、135、139、140、141、145、146、147、151、152、153、157、158、159、163、164、165、169、170、171、175、176、177、181、182、183、187、188、189、332、333、334、338、339、340、344、345、346、350、351、352、356、357、358、362、363、364、368、369、370、374、375、376、380、381、382、386、387、388、392、393、394、398、399、400、404、405、406、410、411、412、416、437、418、422、423、424、428、429、430、434、435、436、440、441、442、446、447、448、452、453、454、458、459、または460に示される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1:complementarity determining region one);(ii)配列番号52、53、58、59、64、65、70、71、76、77、82、83、88、89、94、95、100、101、106、107、112、113、118、119、124、125、130、131、136、137、142、143、148、149、154、155、160、161、166、167、172、173、178、179、184、185、190、191、335、336、341、342、347、348、353、354、359、360、365、366、371、372、377、378、383、384、389、390、395、396、401、402、407、408、413、414、419、420、425、426、431、432、437、438、443、444、449、450、455、456、461、または462に示される配列を含むVH CDR2;および(iii)配列番号54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、337、343、349、355、361、367、373、379、385、391、397、403、409、415、421、427、433、439、445、451、457、または463に示される配列を含むVH CDR3、を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに/または(i)配列番号193、196、199、202、205、208、211、214、217、220、223、226、229、232、235、238、241、244、247、250、253、256、259、262、464、467、470、473、476、479、482、485、488、491、494、497、500、503、506、509、512、515、518、521、524、または527に示される配列を含むVL CDR1;(ii)194、197、200、203、206、209、212、215、218、221、224、227、230、233、236、239、242、245、248、251、254、257、260、263、465、468、471、474、477、480、483、486、489、492、495、498、501、504、507、510、513、516、519、522、525、または528に示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号195、198、201、204、207、210、213、216、219、222、225、228、231、234、237、240、243、246、249、252、255、258、261、264、466、469、472、475、478、481、484、487、490、493、496、499、502、505、508、511、514、517、520、523、526、または529に示される配列を含むVL CDR3、を含む軽鎖可変(VL)領域、を含む。
【0009】
別の態様では、CD70に特異的に結合する単離抗体が提供され、当該抗体は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、289、291、293、295、297、299、301、303、305、307、309、311、313、315、317、319、321、323、325、327、329、もしくは331に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含むVH領域、および/または配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、288、290、292、294、296、298、300、302、304、306、308、310、312、314、316、318、320、322、324、326、328、もしくは330に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含むVL領域、を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載されるVH領域は、CDR内ではない残基に一つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有するバリアントを含み、および/または本明細書に記載されるVL領域は、CDR内ではないアミノ酸に一つまたは複数のアミノ酸置換を有するバリアントを含む。例えば一部の実施形態では、VH領域またはVL領域は、上述のアミノ酸配列、またはCDR内ではない残基に、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1個以下の保存的置換を有するそのバリアントを含み得る。
【0010】
一部の実施形態では、CD70に特異的に結合する単離抗体が提供され、当該抗体は、配列番号18に示される配列を含むVH領域、および/または配列番号17に示される配列を含むVL領域、を含む。
【0011】
一部の実施形態では、CD70に特異的に結合し、CD70に特異的に結合する本明細書に提示される単離抗体と競合する抗体が提供される。
【0012】
別の態様では、二特異性抗体が提供され、この場合において当該二特異性抗体は全長抗体であり、標的抗原(例えばCD70)に特異的に結合する二特異性抗体の第一の抗体可変ドメインを含み、およびヒト免疫エフェクター細胞上に局在するエフェクター抗原(例えば、Cluster of differentiation 3(CD3))に特異的に結合することによりヒト免疫エフェクター細胞の活性をリクルートすることができる二特異性抗体の第二の抗体可変ドメインを含む。一部の態様では、第一の抗体可変ドメインは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、289、291、293、295、297、299、301、303、305、307、309、311、313、315、317、319、321、323、325、327、329、もしくは331に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域、および/または配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、288、290、292、294、296、298、300、302、304、306、308、310、312、314、316、318、320、322、324、326、328、もしくは330に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域、を含む。一部の実施形態では、第一の抗体可変ドメインは、(a)(i)配列番号49、50、51、55、56、57、61、62、63、67、68、69、73、74、75、79、80、81、85、86、87、91、92、93、97、98、99、103、104、105、109、110、111、115、116、117、121、122、123、127、128、129、133、134、135、139、140、141、145、146、147、151、152、153、157、158、159、163、164、165、169、170、171、175、176、177、181、182、183、187、188、189、332、333、334、338、339、340、344、345、346、350、351、352、356、357、358、362、363、364、368、369、370、374、375、376、380、381、382、386、387、388、392、393、394、398、399、400、404、405、406、410、411、412、416、437、418、422、423、424、428、429、430、434、435、436、440、441、442、446、447、448、452、453、454、458、459、または460に示される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1:complementarity determining region one);(ii)配列番号52、53、58、59、64、65、70、71、76、77、82、83、88、89、94、95、100、101、106、107、112、113、118、119、124、125、130、131、136、137、142、143、148、149、154、155、160、161、166、167、172、173、178、179、184、185、190、191、335、336、341、342、347、348、353、354、359、360、365、366、371、372、377、378、383、384、389、390、395、396、401、402、407、408、413、414、419、420、425、426、431、432、437、438、443、444、449、450、455、456、461、または462に示される配列を含むVH CDR2;および(iii)配列番号54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、337、343、349、355、361、367、373、379、385、391、397、403、409、415、421、427、433、439、445、451、457、または463に示される配列を含むVH CDR3、を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに/または(b)(i)配列番号193、196、199、202、205、208、211、214、217、220、223、226、229、232、235、238、241、244、247、250、253、256、259、262、464、467、470、473、476、479、482、485、488、491、494、497、500、503、506、509、512、515、518、521、524、または527に示される配列を含むVL CDR1;(ii)194、197、200、203、206、209、212、215、218、221、224、227、230、233、236、239、242、245、248、251、254、257、260、263、465、468、471、474、477、480、483、486、489、492、495、498、501、504、507、510、513、516、519、522、525、または528に示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号195、198、201、204、207、210、213、216、219、222、225、228、231、234、237、240、243、246、249、252、255、258、261、264、466、469、472、475、478、481、484、487、490、493、496、499、502、505、508、511、514、517、520、523、526、または529に示される配列を含むVL CDR3、を含む軽鎖可変(VL)領域、を含む。
【0013】
一部の実施形態では、第二の抗体可変ドメインは、CD3に特異的なVH領域および/またはVL領域を含む。たとえば、第二の抗体可変ドメインは、配列番号266に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域、および/または配列番号265に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含む。 一部の実施形態では、第二の抗体可変ドメインは、(a)(i)配列番号267、268または269に示される配列を含むVH CDR1;(ii)配列番号270または271に示される配列を含むVH CDR2;および(iii)配列番号272に示される配列を含むVH CDR3、を含むVH領域、ならびに/または(i)配列番号273に示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号274に示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号275に示される配列を含むVL CDR3、を含むVL領域、を含有する。
【0014】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、定常領域を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、ヒトIgG1、IgG2もしくはIgG2Δa、IgG3、またはIgG4のサブクラスの抗体である。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、グリコシル化された定常領域を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、一つまたは複数のヒトFcガンマ受容体に対する結合アフィニティが低下した定常領域を含む。
【0015】
一部の実施形態では、二特異性抗体の第一および第二の抗体可変ドメインの両方が、ヒトIgG2(配列番号279)のヒンジ領域中の223位、225位および228位(例えば、(C223EまたはC223R)、(E225R)、および(P228EまたはP228R))、ならびにCH3領域中の409位または368位(例えば、K409RまたはL368E(EUナンバリングスキーム)でアミノ酸改変を含有する。
【0016】
一部の実施形態では、二特異性抗体の第一および第二の抗体可変ドメインの両方が、ヒトIgG2の265位でアミノ酸改変(例えば、D265A)を含有する。
【0017】
一部の実施形態では、二特異性抗体の第一および第二の抗体可変ドメインの両方が、ヒトIgG2の265位(例えば、D265A)、330位(例えば、A330S)、および331位(例えば、P331S)のうちの一つまたは複数でアミノ酸改変を含有する。一部の実施形態では、二特異性抗体の第一および第二の抗体可変ドメインの両方が、ヒトIgG2の265位(例えば、D265A)、330位(例えば、A330S)、および331位(例えば、P331S)の各々でアミノ酸改変を含有する。
【0018】
他の実施形態では、本発明は、本明細書に記載される抗体のいずれかを含有する医薬組成物を提供する。
【0019】
本発明はさらに、本明細書に記載される抗体のいずれかを組み換えにより産生する細胞株も提供する。
【0020】
本発明はさらに、本明細書に記載される抗体のいずれかをコードする核酸も提供する。本発明はさらに、本明細書に記載される抗体のいずれかの重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域をコードする核酸も提供する。
【0021】
本発明はさらに、本明細書に提供される核酸またはベクターを含有する宿主細胞も提供する。さらに、本明細書に提供される抗体(例えば一特異性または二特異性)を作製する方法が提供され、当該方法は、当該抗体の産生を生じさせる条件下で本明細書に提供される宿主細胞を培養すること、および当該宿主細胞または培養物から当該抗体を単離することを含む。
【0022】
本発明はさらに、本明細書に記載される抗体または抗体結合体のいずれかの有効量を含むキットも提供する。
【0023】
さらに、医薬品としての使用のための本明細書に提供される抗体または二特異性抗体も提供される。
【0024】
本発明はさらに、その必要のある対象を治療する方法も提供し、当該方法は、本明細書に記載される単離抗体または二特異性抗体を提供すること、および当該抗体を当該対象に投与することを含む。
【0025】
さらに、対象においてCD70を発現する悪性細胞と関連した状態を治療する方法が提供され、当該方法は、その必要のある対象に、本明細書に記載される抗体を含む医薬組成物の有効量を投与することを含む。一部の実施形態では、当該状態は、癌である。一部の実施形態では、癌は、腎細胞癌、グリア芽腫、例えば低グレードグリオーマなどのグリオーマ、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキン病(HD)、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型リンパ腫、濾胞性リンパ腫、または非小細胞肺癌からなる群から選択されるCD70関連癌(例えば、CD70発現を伴う任意の癌)である。
【0026】
別の態様では、本発明は、CD70を発現する悪性細胞を有する対象において、腫瘍の増殖または進行を阻害する方法を提供するものであり、当該方法は、その必要のある対象に対し、本明細書に記載される単離抗体または二特異性抗体を含む医薬組成物の有効量を投与することを含む。
【0027】
別の態様では、本発明は、対象においてCD70を発現する悪性細胞の転移を阻害する方法を提供するものであり、当該方法は、その必要のある対象に対し、本明細書に記載される単離抗体または二特異性抗体を含む医薬組成物の有効量を投与することを含む。
【0028】
別の態様では、本発明は、CD70を発現する悪性細胞を有する対象において、腫瘍の退縮を誘導する方法を提供するものであり、当該方法は、その必要のある対象に対し、本明細書に記載される単離抗体または二特異性抗体を含む医薬組成物の有効量を投与することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書に開示される本発明は、CD70(例えば、ヒトCD70)に特異的に結合する抗体(例えば、一特異性または二特異性)を提供する。本発明はさらに、これら抗体をコードするポリヌクレオチド、これらの抗体を含む組成物、ならびにこれらの抗体を作製する方法および使用する方法も提供する。本発明はさらに、例えば癌など、対象においてCD70介在性の病態と関連した状態を治療する方法も提供する。特に本発明の発明者らは、全長二特異性形式の本明細書に記載されるCD70抗体は、半減期が長く、Fc相互作用が最小化され、そしてインビボでの免疫細胞との相互作用を介した非特異的サイトカイン放出が最小化されていることを見出した。
【0030】
一般的技術
本発明の実施は、別段の示唆が無い限り、分子生物学(組み換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、免疫学、ウイルス学、モノクローナル抗体の作製法および操作法の従来的な技術を採用し、それら技術は当分野の技術範囲内にある。こうした技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、second edition(Sambrook et al.,1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait、ed.,1984);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis、ed.,1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney、ed.,1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts、1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.Griffiths、and D.G.Newell、eds.,1993~1998)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press、Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell、eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos、eds.,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction、(Mullis et al.,eds.,1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons、1999);Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers、1997);Antibodies(P.Finch、1997);Antibodies:a practical approach(D.Catty.,ed.,IRL Press、1988~1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean、eds.,Oxford University Press、2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra、eds.,Harwood Academic Publishers,1995)などの文献で完全に説明されている。
【0031】
定義
「抗体」は、少なくとも一つの抗原認識部位を介して、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的への特異的結合ができる免疫グロブリン分子である。本明細書において使用される場合、当該用語は、インタクトなポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体だけではなく、その抗原結合断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、一本鎖(ScFv)抗体およびドメイン抗体(例えば、サメ抗体およびラクダ科抗体を含む)、ならびに抗体を含む融合タンパク質、ならびに抗原認識部位を備える免疫グロブリン分子の任意の他の改変構造を包含する。抗体は、IgG、IgA、またはIgM(またはそのサブクラス)などの任意のクラスの抗体を含み、抗体は任意の特定のクラスである必要はない。その重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには五つの主なクラスがある。IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM、ならびにこれらのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2に分割されてもよい。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常領域は、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれる。様々なクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元構造が公知である。
【0032】
本明細書において使用される場合、抗体の「抗原結合断片」または「抗原結合部分」という用語は、特異的に所与の抗原(例えば、CD70)に結合する能力を保持するインタクトな抗体の一つまたは複数の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、インタクトな抗体の断片によって実施され得る。抗体の「抗原結合断片」という用語内に包含される結合断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、VHおよびCH1ドメインからなるFd断片、抗体の単一アームのVLおよびVHドメインから成るFv断片、単一ドメイン抗体(dAb)断片(Ward et al.,Nature 341:544-546,1989)、および単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。
【0033】
標的(例えば、CD70タンパク質)に「優先的に結合する」または「特異的に結合する」(本明細書において相互交換可能に使用される)抗体またはポリペプチドは、当分野においてよく理解された用語であり、そうした特異的な結合または優先的な結合を決定するための方法も当分野に公知である。分子は、別の細胞または物質よりも特定の細胞または物質と、より頻繁に、より早く、長い期間および/もしくは高いアフィニティで反応する、または会合する場合、「特異的結合」または「優先的結合」を呈すると言われる。他の物質との結合よりも高いアフィニティ、アビディティで、より早く、および/または長い期間、結合する場合、抗体は、標的に「特異的に結合する」または「優先的に結合する」。例えば、CD70エピトープに特異的に、または優先的に結合する抗体は、他のCD70エピトープまたは非CD70エピトープに結合するよりも高いアフィニティ、アビディティで、より早く、および/または長い期間、当該エピトープに結合する抗体である。この定義を読むことで、例えば第一の標的に特異的に、または優先的に結合する抗体(または部分もしくはエピトープ)は、第二の標的に特異的に、または優先的に結合しても、または結合しなくてもよいことが理解されるであろう。したがって「特異的結合」または「優先的結合」は必ずしも排他的結合を必須とはしない(が、排他的結合も含み得る)。必ずではないが一般的に、結合に対する参照とは、優先的結合を意味する。
【0034】
抗体の「可変領域」とは、抗体軽鎖の可変領域、または抗体重鎖の可変領域を単独で、あるいは組み合わせで指す。当分野で知られるように、重鎖および軽鎖の可変領域はそれぞれ、超可変領域としても知られる三つの相補性決定領域(CDR)によって接続された四つのフレームワーク領域(FR)からなる。各鎖のCDRは、FRによって近接して保持され、そして他の鎖のCDRとともに抗体の抗原結合部位の形成に寄与している。CDR決定法は少なくとも二つある:(1)異種間の配列多様性に基づく方法(すなわち、KabatらのSequences of Proteins of Immunological Interest,(5th ed.,1991,National Institutes of Health,Bethesda MD)、および(2)抗原-抗体複合体の結晶学的研究に基づく方法(Al-lazikani et al.,1997,J.Molec.Biol.273:927-948)。本明細書において使用される場合、CDRとは、いずれか方法により規定されるCDR、または両方の方法の組み合わせにより規定されるCDRを指す場合がある。
【0035】
可変ドメインの「CDR」は、Kabat、Chothiaの定義、KabatおよびChothiaの両方の蓄積、AbM定義、接触定義、および/もしくはコンフォメーション定義、または当分野において公知のCDR決定の任意の方法に従って同定される可変領域内のアミノ酸残基である。抗体CDRは、Kabatらにより最初に規定された超可変領域として規定される場合もある。例えば、Kabat et al.,1992,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,NIH,Washington D.Cを参照のこと。CDRの位置は、Chothiaらにより最初に報告された構造的ループ構造として規定される場合もある。例えば、Chothia et al.,Nature 342:877-883,1989を参照のこと。CDR特定の他の方法としては、「AbM定義」が挙げられる。この方法は、Kabat法とChothia法の間を取り、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアを使用して導かれる(現在では、Accelrys(登録商標))。または、観察された抗原接触に基づくCDRの「接触定義」も挙げられ、この方法は、MacCallum et al.,J.Mol.Biol.,262:732-745,1996に記載されている。別の方法は、本明細書においてCDRの「コンフォメーション定義」と呼称されており、CDRの位置は、抗原結合にエンタルピー的に貢献する残基として規定され得る。例えば、Makabe et al.,Journal of Biological Chemistry,283:1156-1166,2008を参照のこと。さらに他のCDR境界の定義は、厳密には上述の方法の一つに従っていない場合があるが、Kabat CDRの少なくとも一部とは重複している。それでも特定の残基または残基群、さらには全CDRがそれほど抗原結合に影響を与えないという予測、または実験結果を鑑みると、それらは短すぎる、または長すぎる場合がある。本明細書において使用される場合、CDRとは、方法の組み合わせを含む当分野に公知の任意の方法により規定されるCDRを指す場合がある。本明細書において使用される方法は、これら方法のいずれかに従い規定されたCDRを利用する場合がある。複数のCDRを含有する任意の所与の実施形態に関し、CDRは、Kabat、Chothia、extended(拡張)、AbM、contact(接触)、および/またはコンフォメーション定義のいずれかに従い規定され得る。
【0036】
本明細書において使用される場合、「モノクローナル抗体」とは、実質的に均質な抗体群から取得される抗体を指す。すなわち、当該群を構成する個々の抗体は、わずかに存在し得る可能性がある自然発生の突然変異を除き、同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に指向する。さらに、典型的には異なる決定基(エピトープ)に指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に指向する。「モノクローナル」という修飾語句は、実質的に均質な抗体群から取得されたときの抗体の特徴を示すが、任意の特定の方法による抗体の産生が必要とはみなされないものとする。例えば本発明に従い使用されるモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein,Nature 256:495,1975により最初に報告されたハイブリドーマ法により作製されてもよく、または例えば米国特許第4,816,567号に記載される組み換えDNA法により作製されてもよい。モノクローナル抗体は、例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552-554,1990に記載される技術を使用して作製されたファージライブラリーから単離されてもよい。
【0037】
本明細書において使用される場合、「ヒト化した」抗体とは、非ヒト免疫グロブリン由来の配列を最小限含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または抗体の他の抗原結合部分配列など)である非ヒト(例えば、マウス)抗体の形態を指す。好ましくは、ヒト化抗体は、レシピエントの相補的決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、アフィニティ、および能力を有する例えばマウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置換されるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非ヒト残基で置換される。さらにヒト化抗体は、レシピエント抗体においても、輸入されるCDR配列またはフレームワーク配列においても存在しないが、抗体性能のさらなる改善または最適化のために含有される残基を含む場合がある。概してヒト化抗体は、少なくとも一つ、典型的には二つの可変ドメインの実質的にすべてを含有し、その中で、CDR領域のすべて、または実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、そしてFRのすべて、または実質的にすべてが、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である。さらにヒト化抗体は、典型的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域または定常ドメイン(Fc)の少なくとも一部を含有するのが最適である。WO99/58572に記載されるように改変されたFc領域を有する抗体が好ましい。ヒト化抗体の他の形態は、元の抗体に対し改変された一つまたは複数のCDR(CDR L1、CDR L2、CDR L3、CDR H1、CDR H2またはCDR H3)を有し、それらは元の抗体の一つまたは複数のCDRから「誘導された」一つまたは複数のCDRとも呼ばれる。
【0038】
本明細書において使用される場合、「ヒト抗体」とは、ヒトによって生成される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体、および/または当業者に公知のヒト抗体、もしくは本明細書に開示されたヒト抗体を作製するための技術のいずれかを使用して作製された抗体を意味する。ヒト抗体のこの定義は、少なくとも一つのヒト重鎖ポリペプチドまたは少なくとも一つのヒト軽鎖ポリペプチドを含む抗体を含む。こうした一例は、マウス軽鎖およびヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体である。ヒト抗体は、当分野で知られている様々な技術を使用して生成することができる。一つの実施形態では、ヒト抗体はファージライブラリーから選択され、当該ファージライブラリーはヒト抗体を発現する(Vaughan et al.,Nature Biotechnology,14:309-314,1996;Sheets et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:6157-6162,1998;Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381,1991;Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581,1991)。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン座位が内因性座位の代わりにトランスジェニック導入された動物の免疫化によっても作製されうる、例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されたマウスによっても作製され得る。この方法は、米国特許第5,545,807号、第5,545,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、および第5,661,016号に記載されている。あるいはヒト抗体は、標的抗原に対して指向される抗体を生成するヒトBリンパ球を不死化することによって調製されてもよい(そうしたBリンパ球は個体から採取されてもよく、またはcDNAのシングルセルクローニングから採取されてもよく、またはインビトロで免疫化されてもよい)。例えば、Cole et al.Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、p.77,1985;Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86-95,1991;および米国特許第5,750,373号を参照のこと。
【0039】
「キメラ抗体」という用語は、可変領域配列が一つの種に由来し、定常領域配列は別の種に由来する抗体を指すことが意図され、例えば、可変領域配列はマウス抗体に由来し、定常領域配列はヒト抗体に由来する抗体などである。
【0040】
「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書において相互交換可能に使用され、任意の長さのアミノ酸鎖を指す。例えば、鎖は比較的短くてもよく(例えば10~100アミノ酸)または長くてもよい。鎖は、直鎖状または分枝状であってもよく、改変アミノ酸を含んでもよく、および/または非アミノ酸が割り込んでもよい。さらに当該用語は、自然に改変されたアミノ酸鎖、または以下の介入により改変されたアミノ酸を包含する:例えばジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または例えば標識構成要素との結合などの他の任意の操作もしくは改変。この定義にはさらに、例えば一つまたは複数のアミノ酸アナログ(例えば非天然アミノ酸などを含む)ならびに当分野に公知の他の改変を含有するポリペプチドが含有される。ポリペプチドは、一本鎖または関連鎖として生じ得ると理解される。
【0041】
「一価抗体」は、1分子当たり、一つの抗原結合部位を含有する(例えば、IgGまたはFab)。一部の例では、一価抗体は複数の抗原結合部位を有し得るが、当該結合部位は異なる抗原に由来する。
【0042】
「一特異性抗体」は、1分子当たり、二つの同一の抗原結合部位を含有し(例えば、IgG)、それにより二つの結合部位が抗原上の同一のエピトープに結合する。したがって、一特異性抗体は、一つの抗原分子への結合を互いに競合する。自然に存在する抗体の多くが一特異性である。一部の例では、一特異性抗体は、一価抗体でもあり得る(例えば、Fab)。
【0043】
「二価抗体」は、1分子当たり、二つの抗原結合部位を含有する(例えば、IgG)。一部の例では、当該二つの結合部位は、同じ抗原特異性を有する。しかし二価抗体は、二特異性である場合もある。
【0044】
「二特異性」または「二重特異性」は、二つの異なる抗原結合部位を有するハイブリッド抗体である。二特異性抗体の二つの抗原結合部位は、二つの異なるエピトープに結合し、それらエピトープは、同じ、または異なるタンパク質標的上に存在し得る。
【0045】
「二機能性」抗体は、二つのアームに同一の抗原結合部位(すなわち同一のアミノ酸配列)を有するが、各結合部位は二つの異なる抗原を認識し得る抗体である。
【0046】
「ヘテロ多量体」、「ヘテロ多量体複合体」、または「ヘテロ多量体ポリペプチド」は、少なくとも第一のポリペプチドと第二のポリペプチドを含有する分子であり、当該第二のポリペプチドは、当該第一のポリペプチドとはアミノ酸配列において少なくとも1アミノ酸残基異なっている。ヘテロ多量体は、第一のポリペプチドと第二のポリペプチドにより形成される「ヘテロ二量体」を含み、または第一および第二のポリペプチドに加えて複数のポリペプチドが存在する高次の三次構造を形成し得る。
【0047】
「ヘテロ二量体」、「ヘテロ二量体タンパク質」、「ヘテロ二量体複合体」、または「ヘテロ多量体ポリペプチド」は、第一のポリペプチドと第二のポリペプチドを含有する分子であり、当該第二のポリペプチドは、当該第一のポリペプチドとはアミノ酸配列において少なくとも1アミノ酸残基異なっている。
【0048】
「ヒンジ領域」、「ヒンジ配列」、およびその変化型は、本明細書において使用される場合、当分野で公知の意味を含み、例えば、Janeway et al.,ImmunoBiology:the immune system in health and disease,(Elsevier Science Ltd.,NY)(4th ed.,1999);Bloom et al.,Protein Science(1997),6:407-415;Humphreys et al.,J.Immunol.Methods(1997),209:193-202に例示される。
【0049】
本明細書において使用される場合、「免疫グロブリン様ヒンジ領域」、「免疫グロブリン様ヒンジ配列」、およびその変化型とは、免疫グロブリン様分子または抗体様分子(例えば、イムノアドヘシン)のヒンジ領域およびヒンジ配列を指す。一部の実施形態では、免疫グロブリン様ヒンジ領域は、任意のIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4サブタイプに由来、またはそれらから誘導されてもよく、またはIgA、IgE、IgDもしくはIgMに由来またはそれらから誘導されてもよく、例えばキメラIgG1/2ヒンジ領域などのそのキメラ型を含む。
【0050】
「免疫エフェクター細胞」または「エフェクター細胞」という用語は、本明細書において使用される場合、活性化されて、標的細胞の生存能力に影響を及ぼし得るヒト免疫系中の細胞の天然レパートリーの範囲内の細胞を指す。標的細胞の生存能力としては、細胞の生存、増殖、および/または他の細胞と相互作用する能力が挙げられる。
【0051】
本発明の抗体は、当分野に公知の技術、例えば組み換え技術、ファージディスプレイ技術、合成技術、またはそうした技術の組み合わせ、または当分野で容易に知り得る他の技術を使用して作製され得る(例えば、Jayasena,S.D.,Clin.Chem.,45:1628-50,1999 and Fellouse,F.A.,et al,J.MoI.Biol.,373(4):924-40,2007を参照のこと)。
【0052】
当分野において知られるように、本明細書において相互交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」とは、任意の長さのヌクレオチドの鎖を指し、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、改変ヌクレオチドもしくは改変塩基、および/またはそれらのアナログ、またはDNAポリメラーゼもしくはRNAポリメラーゼにより鎖に組み込まれ得る任意の基質であってもよい。ポリヌクレオチドは、例えばメチル化ヌクレオチドおよびそのアナログなどの改変ヌクレオチドを含んでもよい。存在する場合、ヌクレオチド構造への改変は、鎖の組立の前または後に行われる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成要素により割り込まれてもよい。ポリヌクレオチドは、例えば標識構成要素との結合などにより、多量体化後にさらに改変されてもよい。他のタイプの改変としては例えば、アナログを用いた天然ヌクレオチドの一つまたは複数の「キャップ」置換、例えば非荷電結合(例えばホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバミン酸塩など)および荷電結合(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を用いるなどのヌクレオチド間の改変、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リシンなど)のペンダント部分を含有するもの、挿入剤(例えば、アクリジン、ソラレンなど)を用いたもの、キレーター(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、改変結合を用いたもの(例えば、アルファアノマー核酸など)ならびにポリヌクレオチドの非改変型が挙げられる。さらに糖に通常存在するヒドロキシル基のいずれかを、例えばホスホン酸基、リン酸基などにより置換してもよく、標準的な保護基により保護してもよく、または活性化させて、追加のヌクレオチドへの追加的な結合の準備をしてもよく、または固形支持体へ結合させてもよい。5’末端OHおよび3’末端OHは、リン酸化されてもよく、またはアミン、もしくは1~20個の炭素原子の有機キャッピング基部分で置換されてもよい。他のヒドロキシルは、標準的な保護基に誘導体化されてもよい。ポリヌクレオチドはさらに、例えば2’-O-メチル、2’-O-アリル、2’-フルオロ-または2’-アジド-リボース、炭素環式糖アナログ、アルファまたはベータ-アノマー糖、例えばアラビノース、キシロースもしくはリキソースなどのエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式アナログ、および例えばメチルリボシドなどの脱塩基ヌクレオシドアナログを含む、当分野に一般的に公知のリボース糖またはデオキシリボース糖のアナログ型を含有してもよい。一つまたは複数のホスホジエステル結合が、代替的な結合基により置き換えられてもよい。そうした代替的な結合基としては限定されないが、P(O)S(チオエート)、P(S)S(ジチオエート)、(O)NR2(アミデート)、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCH2(ホルムアセタール(formacetal))によりリン酸塩が置換される実施形態が挙げられ、この場合、各RまたはR’は独立して、H、または置換アルキルもしくは非置換アルキル(1~20個のC)であり、任意で、エーテル(-O-)結合、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、またはアラルジル(araldyl)を含有する。ポリヌクレオチド中のすべての結合が同一である必要はない。前述の説明は、RNAおよびDNAを含む、本明細書において言及されるすべてのポリヌクレオチドに適用される。
【0053】
当分野において知られるように、抗体の「定常領域」とは、抗体軽鎖の定常領域、または抗体重鎖の定常領域を単独で、または組み合わせで指す。
【0054】
本明細書において使用される場合、「実質的に純粋」とは、少なくとも50%純粋(すなわち、混入物が無い)、より好ましくは少なくとも90%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、さらにより好ましくは、少なくとも98%純粋、そして最も好ましくは、少なくとも99%純粋である物質を指す。
【0055】
「宿主細胞」には、ポリヌクレオチド挿入物の組み込みのためのベクターに対するレシピエントであってもよく、またはレシピエントである個々の細胞または細胞培養物を含む。宿主細胞は、単一宿主細胞の子孫物を含み、当該子孫物は、自然の、偶発的な、または意図的な変異により、元の親細胞と完全に同一であるとは限らない場合がある(形態において、またはゲノムDNAの相補体において)。宿主細胞には、本発明のポリヌクレオチドをインビボでトランスフェクトされた細胞が含まれる。
【0056】
当分野において知られるように、「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を規定するために使用される。「Fc領域」は、天然配列のFc領域またはバリアントのFc領域であってもよい。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化し得るが、ヒトIgG重鎖のFc領域は通常、Cys226の位置のアミノ酸残基、またはPro230の位置のアミノ酸残基から、そのカルボキシル末端に及ぶと規定される。Fc領域中の残基の番号付けは、KabatにあるEUインデックスの番号である。Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991。免疫グロブリンのFc領域は一般的に、CH2とCH3の二つの定常領域を含有する。
【0057】
当分野で使用される場合、「Fc受容体」および「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を説明するものである。好ましいFcRは、天然配列のヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体に結合するFcR(ガンマ受容体)であり、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これら受容体のアレルバリアントおよび代替的スプライス型を含む。FcγRII受容体には、FcγRIIA(活性化受容体)、およびFcγRIIB(阻害性受容体)が含まれ、それらは類似したアミノ酸配列を有するが、その細胞質ドメインが主に異なっている。FcRは、Ravetch and Kinet,Ann.Rev.Immunol.,9:457-92,1991;Capel et al.,Immunomethods,4:25-34,1994;およびde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.,126:330-41,1995に概要されている。「FcR」はさらに新生児受容体であるFcRnを含み、これは胎児への母体IgGの移送に貢献している(Guyer et al.,J.Immunol.,117:587,1976;and Kim et al.,J.Immunol.,24:249,1994)。
【0058】
抗体に関して本明細書において使用される場合、「競合する」という用語は、第一の抗体、またはその抗原結合断片(または部分)が、第二の抗体またはその抗原結合部分の結合と充分に類似した様式でエピトープに結合し、それにより、第二の抗体の非存在下での第一の抗体の結合と比較して、第二の抗体の存在下では、その同系エピトープとの第一の抗体の結合の結果が、検出可能に低下することを意味する。第二の抗体のそのエピトープへの結合も、第一の抗体の存在下で検出可能に低下する場合もあり得るが、必ずではない。すなわち第一の抗体は、そのエピトープへの第二の結合を阻害し得るが、第二の抗体による、その各エピトープへの第一の抗体の阻害は伴わない。しかしながら、各抗体がその同系のエピトープまたはリガンドとの他の抗体の結合を同程度に、より強く、またはより弱く検出可能に阻害する場合、当該抗体は、その各エピトープの結合に関し、互いに「交差競合する」といわれる。競合抗体および交差競合抗体の両方が本発明に包含される。そうした競合または交差競合が発生する機序に関わらず(すなわち立体障害、立体構造変化、または共通エピトープもしくはその一部への結合など)、当業者であれば、本明細書に示される教示に基づき、そうした競合抗体および/または交差競合抗体が包含されること、および本明細書に開示される方法に有用であり得ると認識するであろう。
【0059】
「機能性Fc領域」は、天然配列のFc領域のエフェクター機能を少なくとも一つ保有している。「エフェクター機能」の例としては、C1q結合、補体依存性細胞障害、Fc受容体結合、抗体依存性細胞介在性細胞障害、貪食作用、細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の下方制御などが挙げられる。そうしたエフェクター機能は一般的に、結合ドメイン(例えば抗体可変ドメイン)と組み合わされるFc領域を必要とし、そうした抗体エフェクター機能を評価するための当分野に公知の様々なアッセイを使用して評価され得る。
【0060】
「天然配列のFc領域」は、自然界に存在するFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。「バリアントFc領域」は、少なくとも一つのアミノ酸改変によって天然配列のFc領域とは異なるアミノ酸配列を含有しているが、天然配列のFc領域のエフェクター機能を少なくとも一つ保持している。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、天然配列のFc領域と比較して、または親ポリペプチドのFc領域と比較して、少なくとも一つのアミノ酸置換、例えば約1~約10個のアミノ酸置換、好ましくは約1~約5個のアミノ酸置換を、天然配列のFc領域または親ポリペプチドのFc領域中に有している。本明細書のバリアントFc領域は、天然配列のFc領域および/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の配列同一性を持つことが好ましく、それらと少なくとも約90%の配列同一性を持つことが最も好ましく、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性が持つことがより好ましい。
【0061】
「エフェクター機能」という用語は、抗体のFc領域に起因する生物活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、限定されないが、抗体依存性細胞介在性細胞障害(ADCC)、Fc受容体結合、補体依存性細胞障害(CDC)、貪食作用、C1q結合、および細胞表面受容体(例えばB細胞受容体、BCR)の下方制御が挙げられる。例えば、米国特許第6,737,056号を参照のこと。そうしたエフェクター機能は一般的に、結合ドメイン(例えば抗体可変ドメイン)と組み合わされるFc領域を必要とし、そうした抗体エフェクター機能を評価するための当分野に公知の様々なアッセイを使用して評価され得る。エフェクター機能の測定例は、Fcγ3および/またはC1q結合を介したものである。
【0062】
本明細書において使用される場合、「抗体依存性細胞介在性細胞障害」または「ADCC」とは、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)が、標的細胞上に結合した抗体を認識し、次いで当該標的細胞の溶解を引き起こす細胞介在性反応を指す。対象分子のADCC活性は、例えば米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載されるアッセイなどのインビトロADCCアッセイを使用して評価され得る。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)とNK細胞が挙げられる。あるいは、またはさらに、対象分子のADCC活性は、たとえばClynes et al.,1998,PNAS(USA),95:652-656に開示されるものなどの動物モデルにおいてインビボで評価されてもよい。
【0063】
「補体依存性細胞障害」または「CDC」とは、補体存在下での標的の溶解を指す。補体活性化経路は、補体系の最初の構成要素(C1q)が、同系抗原と複合体化した分子(例えば抗体)に結合することにより始まる。補体活性化の評価には、例えばGazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods,202:163(1996)に記載されるアッセイなどのCDCアッセイを行ってもよい。
【0064】
本明細書で使用される場合、「治療」とは、有益または望ましい臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的に対し、有益または望ましい臨床結果には、以下のうちの一つまたは複数が含まれるが、これらに限定されない:腫瘍細胞または癌細胞の増殖の減少(または破壊)、腫瘍細胞の転移の阻害、CD70を発現する腫瘍のサイズの縮小または減少、CD70関連疾患(例えば、癌)の寛解、CD70関連疾患(例えば、癌)から生じる症状の減少、CD70関連疾患(例えば、癌)を患う者の生活の質の向上、CD70関連疾患(例えば、癌)を治療するために必要な他の薬物の投与量の減少、CD70関連疾患(例えば、癌)の進行の遅延、CD70関連疾患(例えば、癌)の治癒、および/またはCD70関連疾患(例えば、癌)を有する患者の生存の延長。
【0065】
「改善する」とは、CD70抗体(一特異性または二特異性)を投与しない場合と比較して、一つまたは複数の症状の軽減または改善を意味する。「改善する」には、症状の持続期間の短縮または減少も含まれる。
【0066】
本明細書で使用される場合、薬剤、化合物、または医薬組成物の「有効投与量」または「有効量」は、任意の一つ以上の有益または所望の結果を効果するのに十分な量である。予防的使用のために、有益または望ましい結果には、疾患の発生中に提示される疾患、その合併症、およびの中間的な病理学的表現型の、生化学的、組織学的、および/または行動的症状を含む、リスクの除去または低減、重症度の低減、または疾患の発病を遅らせることが含まれる。治療用途に対し、有益または望ましい結果としては、例えば患者の様々なCD70関連の疾患もしくは状態(例えば多発性骨髄腫)の一つまたは複数の症状の発生率の低下または改善、当該疾患を治療するために必要とされる他の薬剤の投与量の減少、別の薬剤の効果の強化、および/またはCD70関連疾患の進行の遅延などの臨床結果が挙げられる。有効な投与量は、1回以上の投与で投与することができる。本発明の目的に対し、薬剤、化合物または医薬組成物の有効用量は、直接または間接的に予防的処置または治療的処置を実現するために充分な量である。臨床状況で理解されるように、薬剤、化合物、または医薬組成物の有効な投与量は、別の薬剤、化合物、または医薬組成物と併せて達成されてもよく、または達成されなくてもよい。したがって、「有効な投与量」は、一つ以上の治療薬を投与する状況で考慮される場合があり、一つ以上の他の薬剤と併せて、望ましい結果が達成される可能性がある場合、または達成される場合、単一剤は有効量で与えられると考えられうる。
【0067】
「個体」または「対象」は、哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。さらに哺乳動物としては限定されないが、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウスおよびラットが挙げられる。
【0068】
本明細書において使用される場合、「ベクター」とは、対象の一つもしくは複数の遺伝子または配列を送達することができる、および好ましくは宿主細胞において対象の一つもしくは複数の遺伝子または配列を発現することができる構築物を意味する。ベクターの例としては、ウイルスベクター、ネイキッドDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、カチオン性縮合剤に関連するDNAまたはRNA発現ベクター、リポソームに封入されたDNAまたはRNA発現ベクター、およびプロデューサー細胞などの特定の真核細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書で使用される場合、「発現制御配列」は、核酸の転写を指示する核酸配列を意味する。発現制御配列は、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター、またはエンハンサーなどのプロモーターであり得る。発現制御配列は、転写される核酸配列に操作可能に連結される。
【0070】
本明細書で使用される場合、「医薬的に許容可能な担体」または「医薬受容可能な賦形剤」という用語は、活性成分と組み合わせられたとき、生物活性を保持するための成分を有するとともに、対象の免疫系と非反応性である任意の材料を含む。例としては、限定されないが、リン酸緩衝食塩水溶液、水、油/水乳濁液などの乳濁液、および種々のタイプの湿潤剤などの標準的な医薬担体が挙げられる。エアロゾルまたは非経口投与のための好ましい希釈剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)または生理食塩水(0.9%)である。こうした担体を含む組成物は、公知の従来的方法により処方されている(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、18th edition、A.Gennaro、ed.,Mack Publishing Co.,Easton、PA、1990;and Remington、The Science and Practice of Pharmacy 21st Ed.Mack Publishing、2005を参照)。
【0071】
「アシルドナーグルタミン-含有タグ」または「グルタミンタグ」という用語は、本明細書において使用される場合、トランスグルタミナーゼアミンアクセプターとして作用するGln残基を一つまたは複数含有するポリペプチドまたはタンパク質を指す。例えば、WO2012059882およびWO2015015448を参照のこと。
【0072】
本明細書において使用される場合、「kon」または「ka」という用語は、抗原に抗体が会合する速度定数を指す。具体的には、速度定数(kon/kaおよびkoff/kd)および平衡解離定数は、全抗体(すなわち二価)および単量体CD70タンパク質(例えばヒスチジンタグ化CD70融合タンパク質)を使用して測定される。
【0073】
本明細書において使用される場合、「koff」または「kd」という用語は、抗体/抗原複合体から抗体が解離する速度定数を指す。
【0074】
本明細書において使用される場合、「KD」という用語は、抗体-抗原の相互作用の平衡解離定数を指す。
【0075】
本明細書の「約」の値またはパラメータは、当該値またはパラメータを本質的に指向する実施形態を含む(および記述する)。例えば、「約X」に言及する説明は、「X」の説明を含み、数値範囲は範囲を定義する数を含む。一般的に言えば、「約」という用語は、変数の指定された値、および当該指定された値の実験誤差の範囲内(例えば平均に対する95%信頼区間の範囲内)または指定された値のどちらか大きい方の10%以内にある変数のすべての値を指す。「約」という用語が、期間(年、月、週、日など)の文脈内で使用される場合、「約」という用語は、その期間プラスまたはマイナス次の下位期間の一つの量(例えば約1年は、11~13ヶ月を意味し、約6ヶ月は、6ヶ月プラスマイナス1週間を意味し、約1週間は、6~8日間を意味するなど)または指定された値のどちらか大きい方の10%以内を意味する。
【0076】
用語「含む」を用いて本明細書に記載されているいかなる実施形態においても、「からなる」および/または「から本質的になる」という用語で記載された他の類似の実施形態もまた提供されることが理解される。
【0077】
本発明の態様または実施形態が、マーカッシュ群または他の代替的な群で記載されている場合、本発明は、概して列挙される群全体のみならず、当該群の各メンバーを個々に、および当該主要群の可能性のあるすべての亜群、そして当該群メンバーの一つまたは複数を欠いた主要群も包含する。本発明はさらに、請求される本発明の群メンバーのいずれかの一つまたは複数の明白な除外を予期するものである。
【0078】
本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、他に定義されない限り、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が制御する。本明細書および特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」または「含む(comprises)」などの変形は、述べられた整数または整数の群の包含を意味するが、他の任意の整数または群の除外は意味しないことが理解される。文脈によって別途要求されない限り、単数の用語は複数の用語を含むものとし、複数の用語は単数形を含むものとする。
【0079】
本明細書に記載の方法および材料と類似または同等の方法および材料を、本発明の実施または試験に使用することもできるが、例示的な方法および材料が本明細書に記載される。材料、方法、および例は例示的のみであり、限定することを意図していない。
【0080】
CD70抗体、およびその作製方法
本発明は、CD70[例えばヒトCD70(例えばアクセッション番号:NP_004110または配列番号235)]に結合し、以下の特徴のうちの任意の一つまたは複数により特徴付けられる抗体を提供する:(a)対象において、CD70を発現する悪性細胞と関連した状態(例えばAMLなどの癌)の一つまたは複数の症状を治療、予防、改善する;(b)対象(CD70を発現する悪性腫瘍を有する)において腫瘍の増殖または進行を阻害する;(c)対象(CD70を発現する悪性細胞を一つまたは複数有する)においてCD70を発現する癌(悪性)細胞の転移を阻害する;(d)CD70を発現する腫瘍の退縮を誘導する(例えば長期退縮);(e)CD70を発現する悪性細胞において細胞障害活性を発揮する;(f)CD70と他のまだ特定されていない因子との相互作用を遮断する;および/または(g)近傍の非CD70発現悪性細胞を殺傷する、または増殖を阻害するバイスタンダー効果を誘導する。
【0081】
一つの態様では、CD70に特異的に結合する単離抗体が提供されるものであり、当該抗体は、(a)(i)配列番号49、50、51、55、56、57、61、62、63、67、68、69、73、74、75、79、80、81、85、86、87、91、92、93、97、98、99、103、104、105、109、110、111、115、116、117、121、122、123、127、128、129、133、134、135、139、140、141、145、146、147、151、152、153、157、158、159、163、164、165、169、170、171、175、176、177、181、182、183、187、188、189、332、333、334、338、339、340、344、345、346、350、351、352、356、357、358、362、363、364、368、369、370、374、375、376、380、381、382、386、387、388、392、393、394、398、399、400、404、405、406、410、411、412、416、437、418、422、423、424、428、429、430、434、435、436、440、441、442、446、447、448、452、453、454、458、459、または460に示される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1:complementarity determining region one);(ii)配列番号52、53、58、59、64、65、70、71、76、77、82、83、88、89、94、95、100、101、106、107、112、113、118、119、124、125、130、131、136、137、142、143、148、149、154、155、160、161、166、167、172、173、178、179、184、185、190、191、335、336、341、342、347、348、353、354、359、360、365、366、371、372、377、378、383、384、389、390、395、396、401、402、407、408、413、414、419、420、425、426、431、432、437、438、443、444、449、450、455、456、461、または462に示される配列を含むVH CDR2;および(iii)配列番号54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、337、343、349、355、361、367、373、379、385、391、397、403、409、415、421、427、433、439、445、451、457、または463に示される配列を含むVH CDR3、を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに/または(i)配列番号193、196、199、202、205、208、211、214、217、220、223、226、229、232、235、238、241、244、247、250、253、256、259、262、464、467、470、473、476、479、482、485、488、491、494、497、500、503、506、509、512、515、518、521、524、または527に示される配列を含むVL CDR1;(ii)194、197、200、203、206、209、212、215、218、221、224、227、230、233、236、239、242、245、248、251、254、257、260、263、465、468、471、474、477、480、483、486、489、492、495、498、501、504、507、510、513、516、519、522、525、または528に示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号195、198、201、204、207、210、213、216、219、222、225、228、231、234、237、240、243、246、249、252、255、258、261、264、466、469、472、475、478、481、484、487、490、493、496、499、502、505、508、511、514、517、520、523、526、または529に示される配列を含むVL CDR3、を含む軽鎖可変(VL)領域、を含む。
【0082】
別の態様では、CD70に特異的に結合する単離抗体が提供され、当該抗体は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、289、291、293、295、297、299、301、303、305、307、309、311、313、315、317、319、321、323、325、327、329、もしくは331に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含むVH領域、および/または配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、288、290、292、294、296、298、300、302、304、306、308、310、312、314、316、318、320、322、324、326、328、もしくは330に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含むVL領域、を含む。
【0083】
一部の実施形態では、表1に列記される部分的軽鎖配列のいずれか一つ、および/または表1に列記される部分的重鎖配列のいずれか一つを有する抗体が提供される。表1において、下線の配列は、Kabatに従うCDR配列であり、太字は、Chothiaに従うCDR配列である。
【0084】
表1
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【0085】
また本明細書において、CD70に対する抗体の抗原結合ドメインのCDR部分(Chothia、Kabat CDRおよびCDR接触領域を含む)も提供される。CDR領域の決定は、当分野の技術範囲内にある。一部の実施形態では、CDRは、Kabat CDRとChothia CDRの組み合わせ(「混合CR」または「拡張CDR」とも呼ばれる)であり得ることを理解されたい。一部の実施形態では、CDRは、Kabat CDRである。他の実施形態では、CDRは、Chothia CDRである。言い換えると、複数のCDRを伴う実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、組み合わせCDR、またはそれらの組み合わせのいずれかであり得る。表2は、本明細書に提供されるCDR配列の例を提供する。
【0086】
表2
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【0087】
一部の実施形態では、本発明は、CD70に結合し、31H1、63B2、40E3、42C3、45F11、64F9、72C2、2F10、4F11、10H10、17G6、65E11、P02B10、P07D03、P08A02、P08E02、P08F08、P08G02、P12B09、P12F02、P12G07、P13F04、P15D02、P16C05、10A1、10E2、11A1、11C1、11D1、11E1、12A2、12C4、12C5、12D3、12D6、12D7、12F5、12H4、8C8、8F7、8F8、9D8、9E10、9E5、9F4または9F8を含む、本明細書に記載の抗体と競合する抗体を提供する。
【0088】
一部の実施形態では、本発明はさらに、CDR接触領域に基づいた、CD70抗体に対する抗体のCDR部分を提供する。CDR接触領域は、抗原に対する特異性を抗体に与える抗体の領域である。一般的に、CDR接触領域は、CDR中の残基位置、および特定の抗原に結合する抗体の適切なループ構造を維持するために制約を受けるVernierゾーンを含む。例えば、Makabe et al.,J.Biol.Chem.,283:1156-1166,2007を参照のこと。CDR接触領域の決定は、当分野の技術範囲内にある。
【0089】
CD70(例えば、ヒトCD70(例えば、配列番号278))に対する本明細書に記載のCD70抗体の結合アフィニティ(KD)は、約0.001~約5000nMであってもよい。一部の実施形態では、結合アフィニティは、およそ5000nM、4500nM、4000nM、3500nM、3000nM、2500nM、2000nM、1789nM、1583nM、1540nM、1500nM、1490nM、1064nM、1000nM、933nM、894nM、750nM、705nM、678nM、532nM、500nM、494nM、400nM、349nM、340nM、353nM、300nM、250nM、244nM、231nM、225nM、207nM、200nM、186nM、172nM、136nM、113nM、104nM、101nM、100nM、90nM、83nM、79nM、74nM、54nM、50nM、45nM、42nM、40nM、35nM、32nM、30nM、25nM、24nM、22nM、20nM、19nM、18nM、17nM、16nM、15nM、12nM、10nM、9nM、8nM、7.5nM、7nM、6.5nM、6nM、5.5nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.5nM、0.3nM、0.1nM、0.01nM、または0.001nMのいずれかである。一部の実施形態では、結合アフィニティは、およそ5000nM、4000nM、3000nM、2000nM、1000nM、900nM、800nM、250nM、200nM、100nM、50nM、30nM、20nM、10nM、7.5nM、7nM、6.5nM、6nM、5nM、4.5nM、4nM、3.5nM、3nM、2.5nM、2nM、1.5nM、1nM、または0.5nMのいずれかよりも小さい。
【0090】
少なくとも二つの異なる抗原に対する結合特異性を有する二特異性抗体であるモノクローナル抗体は、本明細書に開示される抗体を使用して調製されてもよい。二特異性抗体を作製する方法は当分野で公知である(例えば、Suresh et al.,Methods in Enzymology 121:210,1986を参照のこと)。従来、二特異性抗体の組み換え型産生は、二つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖のペアの共発現に基づいており、二つの重鎖は、異なる特異性を有していた(Millstein and Cuello,Nature 305,537-539,1983)。したがって一つの態様では、二特異性抗体が提供され、この場合において当該二特異性抗体は全長ヒト抗体であり、標的抗原(例えばCD70)に特異的に結合する二特異性抗体の第一の抗体可変ドメインを含み、およびヒト免疫エフェクター細胞上に局在するエフェクター抗原に特異的に結合することによりヒト免疫エフェクター細胞の活性をリクルートすることができる二特異性抗体の第二の抗体可変ドメインを含む。
【0091】
ヒト免疫エフェクター細胞は、当分野で公知の様々な免疫エフェクター細胞のいずれかであってもよい。例えば、免疫エフェクター細胞は、限定されないが、T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、B細胞、およびナチュラルキラー(NK)細胞を含む、ヒトリンパ系細胞系統のものであってもよい。さらに免疫エフェクター細胞は、例えば限定されないが、単球、好中球性顆粒球および樹状細胞を含む、ヒト骨髄系統のものであってもよい。そうした免疫エフェクター細胞は、標的細胞に対する細胞傷害性効果もしくはアポトーシス効果を有し、またはエフェクター抗原の結合により活性化したときに望ましい他の効果を有し得る。
【0092】
エフェクター抗原は、ヒト免疫エフェクター細胞上に発現される抗原(例えば、タンパク質またはポリペプチド)である。ヘテロ二量体タンパク質(例えば、ヘテロ二量体抗体または二特異性抗体)により結合され得るエフェクター抗原の例としては限定されないが、ヒトCD3(またはCD3(Cluster of Differentiation)複合体)、CD16、NKG2D、NKp46、CD2、CD28、CD25、CD64およびCD89が挙げられる。
【0093】
標的細胞は、ヒトに対して天然、または外来性の細胞であってもよい。天然の標的細胞では、細胞は、悪性細胞となるように形質転換されてもよく、または病理的に改変されてもよい(例えば、ウイルス、プラスモジウム(plasmodium)または細菌に感染した天然標的細胞)。外来性の標的細胞では、細胞は、例えば細菌、プラスモジウムまたはウイルスなどの侵入性の病原体である。
【0094】
標的抗原は、疾患状態(例えば、炎症性疾患、増殖性疾患(例えば、癌)、免疫学的障害、神経学的疾患、神経変性疾患、自己免疫性疾患、感染性疾患(例えばウイルス感染または寄生虫感染)、アレルギー反応、移植片対宿主病、または宿主体移植片病)の標的細胞上に発現される。標的抗原は、エフェクター抗原ではない。一部の実施形態では、標的抗原は、CD70である。
【0095】
一部の実施形態では、二特異性抗体が提供され、当該二特異性抗体は全長抗体であり、標的抗原に特異的に結合する二特異性抗体の第一の抗体可変ドメインを含み、およびヒト免疫エフェクター細胞上に局在するエフェクター抗原に特異的に結合することによりヒト免疫エフェクター細胞の活性をリクルートすることができる二特異性抗体の第二の抗体可変ドメインを含み、当該第一の抗体可変ドメインは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、289、291、293、295、297、299、301、303、305、307、309、311、313、315、317、319、321、323、325、327、329、もしくは331に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域、および/または配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、288、290、292、294、296、298、300、302、304、306、308、310、312、314、316、318、320、322、324、326、328、もしくは330に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含む。
【0096】
一部の実施形態では、二特異性抗体が提供され、当該二特異性抗体は全長抗体であり、標的抗原に特異的に結合する二特異性抗体の第一の抗体可変ドメインを含み、およびヒト免疫エフェクター細胞上に局在するエフェクター抗原に特異的に結合することによりヒト免疫エフェクター細胞の活性をリクルートすることができる二特異性抗体の第二の抗体可変ドメインを含み、当該第一の抗体可変ドメインは、(a)(i)配列番号49、50、51、55、56、57、61、62、63、67、68、69、73、74、75、79、80、81、85、86、87、91、92、93、97、98、99、103、104、105、109、110、111、115、116、117、121、122、123、127、128、129、133、134、135、139、140、141、145、146、147、151、152、153、157、158、159、163、164、165、169、170、171、175、176、177、181、182、183、187、188、189、332、333、334、338、339、340、344、345、346、350、351、352、356、357、358、362、363、364、368、369、370、374、375、376、380、381、382、386、387、388、392、393、394、398、399、400、404、405、406、410、411、412、416、437、418、422、423、424、428、429、430、434、435、436、440、441、442、446、447、448、452、453、454、458、459、または460に示される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1:complementarity determining region one);(ii)配列番号52、53、58、59、64、65、70、71、76、77、82、83、88、89、94、95、100、101、106、107、112、113、118、119、124、125、130、131、136、137、142、143、148、149、154、155、160、161、166、167、172、173、178、179、184、185、190、191、335、336、341、342、347、348、353、354、359、360、365、366、371、372、377、378、383、384、389、390、395、396、401、402、407、408、413、414、419、420、425、426、431、432、437、438、443、444、449、450、455、456、461、または462に示される配列を含むVH CDR2;および(iii)配列番号54、60、66、72、78、84、90、96、102、108、114、120、126、132、138、144、150、156、162、168、174、180、186、192、337、343、349、355、361、367、373、379、385、391、397、403、409、415、421、427、433、439、445、451、457、または463に示される配列を含むVH CDR3、を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに/または(i)配列番号193、196、199、202、205、208、211、214、217、220、223、226、229、232、235、238、241、244、247、250、253、256、259、262、464、467、470、473、476、479、482、485、488、491、494、497、500、503、506、509、512、515、518、521、524、または527に示される配列を含むVL CDR1;(ii)194、197、200、203、206、209、212、215、218、221、224、227、230、233、236、239、242、245、248、251、254、257、260、263、465、468、471、474、477、480、483、486、489、492、495、498、501、504、507、510、513、516、519、522、525、または528に示される配列を含むVL CDR2;および(iii)配列番号195、198、201、204、207、210、213、216、219、222、225、228、231、234、237、240、243、246、249、252、255、258、261、264、466、469、472、475、478、481、484、487、490、493、496、499、502、505、508、511、514、517、520、523、526、または529に示される配列を含むVL CDR3、を含む軽鎖可変(VL)領域、を含む。
【0097】
一部の実施形態では、第二の抗体可変ドメインは、配列番号266に示されるVH配列のVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域、および/または配列番号265に示されるVL配列のVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む軽鎖可変(VL)領域を含む。
【0098】
一部の実施形態では、第二の抗体可変ドメインは、(a)(i)配列番号267、268または269に示される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1);(ii)配列番号270または271に示される配列を含むVH CDR2;および(iii)配列番号272に示される配列を含むVH CDR3、を含む重鎖可変(VH)領域、ならびに/または(b)(i)配列番号273に示される配列を含むVL CDR1;(ii)配列番号274に示される配列を含む VL CDR2;および(iii)配列番号275に示される配列を含むVL CDR3、を含む軽鎖可変(VL)領域、を含有する。
【0099】
表3は、CD3に特異的な第二の抗体可変ドメインの具体的なアミノ酸配列および核酸配列を示す。表3において、下線の配列は、Kabatに従うCDR配列であり、太字は、Chothiaに従うCDR配列である。
【0100】
【0101】
表4は、CD3に特異的な第二の抗体可変ドメインの具体的なCDR配列の例を示す。
【0102】
【0103】
一部の実施形態では、本明細書に提供される二特異性抗体は、米国特許出願公開20160297885に提供される抗CD3配列を有するCD3特異的可変ドメインを含有し、当該出願公開は、すべての目的に対し参照により本明細書に組み込まれる。
【0104】
二特異性抗体を作製する一つの方法に従い、望ましい結合特異性(抗体-抗原の結合部位)を有する抗体可変ドメインを、免疫グロブリン定常領域配列に融合させる。ヒンジの少なくとも一部、CH2およびCH3領域を含む免疫グロブリン重鎖定常領域との融合が好ましい。融合物の少なくとも一つにおいて、軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物、および望ましい場合には免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAが、別個の発現ベクターに挿入され、適切な宿主生物体中に共トランスフェクトされる。これにより、構築に使用される三つのポリペプチドの不均等な比率が最適な収率を提供する実施形態では、三つのポリペプチド断片の相互比率の調整において大きな柔軟性が提供される。しかし、等しい比率の少なくとも二つのポリペプチド鎖の発現が高収率を生み出す場合、または比率が特に重要ではない場合、一つの発現ベクターに二つまたは三つすべてのポリペプチド鎖のコード配列を挿入することも可能である。
【0105】
別の方法では、二特異性抗体は、一つのアームでの第一の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、および他方のアームでの(第二の結合特異性を提供する)ハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖のペアから構成される。この非対称構造は、二特異性分子の半分のみが免疫グロブリン軽鎖を有しており、これによって、望ましくない免疫グロブリン鎖の組み合わせからの所望の二特異性化合物の分離が促進される。この方法は、PCT公開WO94/04690に記載されている。
【0106】
別の方法では、二特異性抗体は、一つのアームの第一のヒンジ領域におけるアミノ酸改変から構成され、当該第一のヒンジ領域中の置換された(substituted/replaced)アミノ酸は、別のアームの第二のヒンジ領域中の対応するアミノ酸とは反対の電荷を有する。この方法は、国際特許出願PCT/US2011/036419(WO2011/143545)に記載されている。
【0107】
別の方法では、所望のヘテロ多量体タンパク質またはヘテロ二量体タンパク質(例えば、二特異性抗体)の形成は、第一および第二の免疫グロブリン様Fc領域(例えばヒンジ領域および/またはCH3領域)の間のインターフェースを変える、または操作することにより強化される。この方法では、二特異性抗体はCH3領域から構成されてもよく、当該CH3領域は、第一のCH3ポリペプチドと第二のCH3ポリペプチドを含有し、それらは互いに相互作用して、CH3インターフェースを形成し、この場合において当該CH3インターフェース内の一つまたは複数のアミノ酸は、ホモ二量体の形成を不安定化させ、ホモ二量体の形成に対して静電的には不都合ではない。この方法は、国際特許出願PCT/US2011/036419(WO2011/143545)に記載されている。
【0108】
別の方法では、二特異性抗体は、一つのアームにおいてエピトープ(例えば、CD70)に指向される抗体に対して操作されたグルタミン含有ペプチドタグ、およびトランスグルタミナーゼの存在下で別のアームにおいて第二のエピトープに指向される第二の抗体に対して操作された別のペプチドタグ(例えば、Lys含有ペプチドタグまたは反応性内因性Lys)を使用して作製されてもよい。この方法は、国際特許出願PCT/IB2011/054899(WO2012/059882)に記載されている。
【0109】
一部の実施形態では、本明細書に記載のヘテロ二量体タンパク質(例えば、二特異性抗体)は全長ヒト抗体を含み、この場合において標的抗原(例えば、CD70)に特異的に結合する当該二特異性抗体の第一の抗体可変ドメイン、およびヒト免疫エフェクター細胞上に局在するエフェクター抗原(例えば、CD3)に特異的に結合することによりヒト免疫エフェクター細胞の活性をリクルートすることができる二特異性抗体の第二の抗体可変ドメインを含み、この場合において当該ヘテロ二量体タンパク質の第一および第二の抗体可変ドメインは、ヒトIgG2(配列番号279)のヒンジ領域中の223位、225位および228位(例えば、(C223EまたはC223R)、(E225EまたはE225R)、および(P228EまたはP228R))、ならびにCH3領域中の409位または368位でアミノ酸改変(例えば、K409RまたはL368E(EUナンバリングスキーム))を含有する。
【0110】
一部の実施形態では、ヘテロ二量体タンパク質の第一および第二の抗体可変ドメインは、ヒトIgG1(配列番号280)のヒンジ領域中の221位および228位(例えば、(D221RまたはD221E)および(P228RまたはP228E))、ならびにCH3領域中の409位または368位(例えば、K409RまたはL368E(EUナンバリングスキーム)でアミノ酸改変を含有する。
【0111】
一部の実施形態では、ヘテロ二量体タンパク質の第一および第二の抗体可変ドメインは、ヒトIgG4(配列番号281)のヒンジ領域中の228位(例えば、(P228EまたはP228R))、およびCH3領域中の409位または368位(例えば、K409RまたはL368E(EUナンバリングスキーム)でアミノ酸改変を含有する。
【0112】
本発明において有用な抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fcなど)、キメラ抗体、二特異性抗体、ヘテロ結合抗体、一本鎖(ScFv)、その変異体、抗体部分を含む融合タンパク質(例えば、ドメイン抗体)、ヒト化抗体、および必要とされる特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変構造物を包含してもよく、抗体のグリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアント、および共有結合改変抗体を含む。抗体は、マウス、ラット、ヒトまたは任意の他の起源(キメラ抗体またはヒト化抗体を含む)であってもよい。
【0113】
一部の実施形態では、本明細書に記載のCD70一特異性抗体、またはCD70二特異性抗体(例えば、CD70-CD3)は、モノクローナル抗体である。例えば、CD70一特異性抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。別の例では、CD70-CD3二特異性抗体のCD70アームは、ヒトモノクローナル抗体であり、CD70-CD3二特異性抗体のCD3アームはヒト化モノクローナル抗体である。
【0114】
一部の実施形態では、抗体は、例えば限定されないが、免疫応答を誘発する可能性を増加させた定常領域などの改変定常領域を含む。例えば定常領域は、FcγRI、FcγRIIA、またはFcγIIIなどのFcガンマ受容体に対するアフィニティを増加させるよう改変されてもよい。
【0115】
一部の実施形態では、抗体は、例えば免疫学的に不活性な、すなわち免疫応答を誘発する可能性が低下した定常領域などの改変定常領域を含む。一部の実施形態では、定常領域は、Eur.J.Immunol.,29:2613-2624,1999;PCT特許出願PCT/GB99/01441;および/または英国特許出願98099518に記載されるように改変される。Fcは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、またはヒトIgG4であってもよい。Fcは、A330P331からS330S331(IgG2Δa)の変異を含有するヒトIgG2であってもよく、この抗体のアミノ酸残基は野生型IgG2配列を参照して番号付けされている。Eur.J.Immunol.,29:2613-2624,1999。一部の実施形態では、抗体は、以下の変異を含むIgG4の定常領域を含有する(Armour et al.,Molecular Immunology 40 585-593,2003):E233F234L235からP233V234A235(IgG4Δc)。番号は、野生型IgG4を参照している。さらに別の実施形態では、Fcは、ヒトIgG4 E233F234L235から、G236の欠失を伴うP233V234A235である(IgG4Δb)。別の実施形態では、Fcは、ヒンジ安定化変異のS228からP228を含有する任意のヒトIgG4 Fc(IgG4、IgG4ΔbまたはIgG4Δc)である(Aalberse et al.,Immunology 105,9-19,2002)。別の実施形態では、Fcは、非グリコシル化Fcであってもよい。
【0116】
一部の実施形態では、定常領域は、定常領域中のグリコシル化認識配列の一部であるオリゴ糖結合残基(例えば、Asn297)および/または隣接残基を変異させることにより非グリコシル化される。一部の実施形態では、定常領域は、N結合型グリコシル化に対し、酵素的に非グリコシル化される。定常領域は、N結合型グリコシル化に対し酵素的に非グリコシル化されてもよく、またはグリコシル化欠損宿主細胞において発現させることにより非グリコシル化されてもよい。
【0117】
一部の実施形態では、定常領域は、Fcガンマ受容体結合が取り除かれた、または低下した改変定常領域を有する。例えば、Fcは、D265の変異を含有するヒトIgG2であってもよく、この抗体のアミノ酸残基は野生型IgG2配列(配列番号279)を参照して番号付けされている。したがって一部の実施形態では、定常領域は、以下の配列番号282に示される配列を有する改変定常領域を有する:
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCRVRCPRCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVAVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK。配列番号282に示される配列をコードする核酸は、配列番号283に示される。
【0118】
一部の実施形態では、定常領域は、以下の配列番号284に示される配列を有する改変定常領域を有する:
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCEVECPECPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVAVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCEVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK。配列番号284に示される配列をコードする核酸は、配列番号285に示される。
【0119】
ヒトカッパ定常領域のアミノ酸は、以下の配列番号286に示される:
GTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC。配列番号286の配列をコードする核酸は、配列番号287に示される。
【0120】
CD70への抗体の結合アフィニティを決定する一つの方法は、単量体型CD70タンパク質に対する二価抗体の結合アフィニティを測定することによる方法である。CD70抗体のアフィニティは、前もって固定された抗マウスFcまたは抗ヒトFcを備えた、表面プラズモン共鳴(Biacore(商標)3000(商標)表面プラズモン共鳴(SPR)システム、Biacore(商標),INC、ニュージャージー州ピスカタウェイ)により、HBS-EPランニング緩衝液(0.01M HEPES、pH 7.4、0.15 NaCl、3mM EDTA、0.005% v/v Surfactant P20)を使用して決定され得る。単量体型8-ヒスチジンタグ化ヒトCD70細胞外ドメイン(配列番号530)をHBS-EP緩衝液内で0.5μg/mL未満の濃度まで希釈し、可変の接触時間を使用して個々のチップチャンネルに注入して、詳細な速度論的研究のための50~200反応単位(RU)、またはスクリーニングアッセイ用の800~1,000RUのいずれかの二つの抗体密度範囲を実現してもよい。再生実験は、25mMのNaOHの25%v/vエタノール溶液が、200回の注入にわたり結合CD70タンパク質を効率的に取り除きながら、チップ上のCD70抗体の活性を維持していたことが示された。典型的には、精製された8-ヒスチジンタグ化CD70サンプル(配列番号530)の連続希釈(0.1~10xの推定KDの濃度に及ぶ)を、100μL/分で1分間注入し、そして最大2時間の解離時間が許容される。CD70タンパク質の濃度は、8-ヒスチジンタグ化CD70タンパク質(配列番号530)の配列特異的減衰係数に基づき、280nmでの吸光度によって決定される。動的な会合速度(konまたはka)および解離速度(koffまたはkd)は、BIAevaluationプログラムを使用してデータを1:1のLangmuir結合モデル(Karlsson,R.Roos,H.Fagerstam,L.Petersson,B.(1994).Methods Enzymology 6.99-110)に全体的に適合させることにより同時に取得される。平衡解離定数(KD)の値は、koff/konとして算出される。このプロトコルは、ヒトCD70、別の哺乳動物のCD70(例えばマウスCD70、ラットCD70、または霊長類のCD70)ならびに別の型のCD70(例えばグリコシル化CD70)を含む任意の単量体型CD70に対する抗体の結合アフィニティの決定における使用に適している。抗体の結合アフィニティは概して25℃で測定されるが、37℃でも測定され得る。
【0121】
本明細書に記載される抗体は、当分野で公知の任意の方法によって作製されてもよい。ハイブリドーマ細胞株の作製について、宿主動物の免疫化の経路およびスケジュールは概して、本明細書に詳述されるように抗体の刺激および産生に関する確立された従来的技術を順守する。ヒト抗体およびマウス抗体の作製に関する一般的な技術は当分野で公知であり、および/または本明細書に記載されている。
【0122】
ヒトを含む任意の哺乳動物対象、またはそれらに由来する抗体産生細胞を操作して、ヒトを含む哺乳動物およびハイブリドーマ細胞株の作製に関する基礎として供することができる。典型的には、宿主動物は、腹腔内、筋肉内、経口、皮下、足底内、および/または皮内に、本明細書に記載のものを含む免疫原の量を接種される。
【0123】
ハイブリドーマは、Kohler,B.and Milstein,C.,Nature 256:495-497,1975の一般的体細胞ハイブリダイゼーション技術、またはBuck,D.W.,et al.,In Vitro,18:377-381,1982による改変版を使用して、リンパ球および不死化ミエローマ細胞から調製され得る。利用可能なミエローマ株としては、限定されないがX63-Ag8.653、およびSalk Institute、Cell Distribution Center、米国カリフォルニア州サンディエゴの株が挙げられ、それらをハイブリダイゼーションに使用してもよい。一般的に当該技術は、例えばポリエチレングリコールなどの融合剤(fusogen)を使用して、または当分野の当業者に公知の電気的手段によりミエローマ細胞とリンパ系細胞を融合することを含む。融合後、細胞は融合培地から分離され、例えばヒポキサンチン-アミノプテリン-チミジン(HAT)培地などの選択的増殖培地中で増殖し、ハイブリダイズされていない親細胞は取り除かれる。血清が補充された、または補充されていない本明細書に記載される培地のいずれかを、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマの培養用に使用することができる。細胞融合技術に関する別の代替手段としては、EBV不死化B細胞を使用して、本発明のモノクローナル抗体を作製してもよい。ハイブリドーマは希望に応じて拡張およびサブクローニングされ、上清は、従来的な免疫アッセイ法(例えば放射免疫アッセイ、酵素免疫アッセイまたは蛍光免疫アッセイ)により抗免疫原活性に関して分析される。
【0124】
抗体の供給源として使用され得るハイブリドーマは、CD70に特異的なモノクローナル抗体またはその一部を産生する親ハイブリドーマのすべての誘導物、子孫細胞を包含する。
【0125】
当該抗体を産生するハイブリドーマは、公知の方法を使用してインビトロまたはインビボで増殖させてもよい。モノクローナル抗体は、希望に応じて、例えば硫酸アンモニウム沈殿法、ゲル電気泳動法、透析、クロマトグラフィー、および限界ろ過などの従来的免疫グロブリン精製法により、培養培地または体液から単離されてもよい。もし望ましくない活性がある場合、例えば、固相に付着させた免疫原から作成された吸着剤の上に調製物を流し、所望の抗体を免疫原から溶出または放出させることにより取り除くことができる。免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリンまたは大豆トリプシン阻害剤などに、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介した結合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介した結合)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2もしくはR1N=C=NR、式中、RおよびR1は異なるアルキル基、などの二官能性剤または誘導体化剤を使用して結合した、ヒトCD70を発現する細胞、ヒトCD70タンパク質、または標的アミノ酸配列を含有する断片を用いた宿主動物の免疫化によって抗体(例えばモノクローナル抗体)群が得られる。
【0126】
望ましい場合、対象の抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)を配列解析し、次いでポリヌクレオチド配列を発現用ベクターまたは増殖用ベクターにクローニングしてもよい。対象の抗体をコードする配列は、宿主細胞内のベクター内に維持されてもよく、次いで宿主細胞を増殖させ、将来的な使用のために凍結してもよい。細胞培養における組み換えモノクローナル抗体の産生は、当分野で公知の手段により、B細胞由来の抗体遺伝子のクローニングを介して行われてもよい。例えば、Tiller et al.,J.Immunol.Methods 329,112,2008;米国特許第7,314,622号を参照のこと。
【0127】
あるいはポリヌクレオチド配列を遺伝子操作に使用して、抗体を「ヒト化」してもよく、または抗体のアフィニティもしくは他の特性を改善してもよい。例えば定常領域をヒト定常領域にさらに近く似せて操作して、抗体がヒトでの臨床試験および治療に使用されたときの免疫反応を回避してもよい。CD70に対するアフィニティを高くするために、およびCD70の阻害効果を大きくするために、抗体配列を遺伝子操作することが望ましい場合がある。
【0128】
モノクローナル抗体をヒト化するためには、一般的に四つの工程がある。その工程は、(1)開始抗体の軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインのヌクレオチド配列および予測アミノ酸配列を決定する工程、(2)ヒト化抗体を設計する工程、すなわちヒト化プロセスの間にどの抗体フレームワーク領域を使用するか決定する工程、(3)実際のヒト化方法/技術、および(4)ヒト化抗体のトランスフェクションおよび発現、である。例えば、米国特許第4,816,567号、第5,807,715号、第5,866,692号、第6,331,415号、第5,530,101号、第5,693,761号、第5,693,762号、第5,585,089号、および第6,180,370号を参照のこと。
【0129】
ヒト定常領域に融合された、齧歯類V領域または改変齧歯類V領域およびその関連CDRを有するキメラ抗体を含む、非ヒト免疫グロブリン由来の抗原結合部位を含む多くの「ヒト化」抗体分子が報告されている。例えば、Winter et al.Nature 349:293-299,1991、Lobuglio et al.Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:4220-4224,1989、Shaw et al.J Immunol.138:4534-4538,1987、およびBrown et al.Cancer Res.47:3577-3583,1987を参照のこと。他の参照文献には、適切なヒト抗体定常領域との融合前に、ヒト補助フレームワーク領域(FR)内に移植された齧歯類CDRが記載されている。例えば、Riechmann et al.Nature 332:323-327,1988、Verhoeyen et al.Science 239:1534-1536,1988、およびJones et al.Nature 321:522-525,1986を参照のこと。別の参照文献には、組換え遺伝子操作された齧歯類フレームワーク領域によって補助された齧歯類CDRが記載されている。例えば、欧州特許公開0519596を参照のこと。これらの「ヒト化」分子は、げっ歯類抗ヒト抗体分子に対する望ましくない免疫反応を最小化するよう設計される。そうした免疫反応はヒトレシピエントにおける当該部分の治療アプリケーションの期間および有効性を限定してしまう。例えば抗体定常領域は、免疫学的に不活性となるよう操作されてもよい(例えば補体溶解を誘発しない)。例えば、PCT公開PCT/GB99/01441、英国特許出願9809951.8を参照のこと。利用され得る他の抗体ヒト化方法は、Daugherty et al.,Nucl.Acids Res.19:2471-2476,1991、および米国特許第6,180,377号、第6,054,297号、第5,997,867号、第5,866,692号、第6,210,671号、および第6,350,861号、ならびにPCT公開WO01/27160に記載されている。
【0130】
上記に検討されるヒト化抗体に関連する一般的原理は、例えばイヌ、ネコ、霊長類、ウマおよびウシにおける使用に抗体をカスタマイズするためにも適用可能である。さらに本明細書に記載の抗体のヒト化に関する一つまたは複数の態様は、例えばCDR移植、フレームワーク変異、およびCDR変異などの組み合わせであってもよい。
【0131】
一つの変化形では、完全ヒト抗体は、特定のヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するよう操作された市販のマウスを使用することにより取得されてもよい。より好ましい(例えば完全ヒト抗体)またはより安定的な免疫反応を生じさせるよう設計されたトランスジェニック動物を、ヒト化抗体の作製またはヒト抗体の作製に使用してもよい。そうした技術の例は、Abgenix,Inc.(カリフォルニア州フレモント)のXenomouse(商標)およびMedarex,Inc.(ニュージャージー州プリンストン)のHuMAb-Mouse(登録商標)およびTC Mouse(商標)である。
【0132】
あるいは、抗体は、当分野に公知の任意の方法を使用して組み換えにより作製および発現されてもよい。別の方法では、抗体は、ファージディスプレイ技術により組み換え作製されてもよい。例えば、米国特許第5,565,332号、第5,580,717号、第5,733,743号、および第6,265,150号、ならびにWinter et al.,Annu.Rev.Immunol.12:433-455,1994を参照のこと。あるいはファージディスプレイ技術(McCafferty et al.,Nature 348:552-553,1990)を使用して、非免疫化ドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからヒト抗体および抗体断片をインビトロで作製してもよい。この技術に従い、抗体Vドメイン遺伝子は、フィラメント状バクテリオファージ、例えばM13またはfdなどのメジャーまたはマイナーコートタンパク質遺伝子のいずれかにインフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面上に機能性抗体断片として提示される。フィラメント状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するため、抗体の機能特性に基づく選択によって、その特性を示す抗体をコードする遺伝子も選択される。したがって、ファージは、B細胞の特性の一部を模倣するものである。ファージディスプレイ法は、様々な形式で実施することができる。概要に関しては例えば、Johnson,Kevin S.and Chiswell,David J.,Current Opinion in Structural Biology 3:564-571,1993を参照のこと。V-遺伝子セグメントのいくつかの源をファージディスプレイに使用してもよい。Clackson et al.,Nature 352:624-628,1991は、免疫化マウスの脾臓から誘導されたV遺伝子の低無作為コンビナトリアルライブラリーから抗オキサゾロン抗体の多様性アレイを単離した。非免疫化ヒトドナーのV遺伝子レパートリーが構築され、抗原(自己抗原を含む)の多様性アレイに対する抗体は、原則としてMark et al.,J.Mol.Biol.222:581-597,1991、またはGriffith et al.,EMBO J.12:725-734,1993に記載される技術に従い単離され得る。天然の免疫応答において、抗体遺伝子は高率で変異を蓄積する(体細胞超変異)。導入された変化の一部は高いアフィニティをもたらし、高アフィニティ表面免疫グロブリンを提示するB細胞はその後の抗原チャレンジで優先的に複製され、分化される。この天然プロセスは、「鎖シャッフリング(chain shuffling)」として知られる技術を採用することにより模倣され得る。(Marks et al.,Bio/Technol.10:779-783,1992)。この方法では、ファージディスプレイにより取得された「プライマリー」なヒト抗体のアフィニティは、重鎖および軽鎖のV領域遺伝子を、非免疫化ドナーから取得されたVドメイン遺伝子の天然バリアント(レパートリー)で連続的に置換することにより改善され得る。この技術により、pM~nMの範囲でアフィニティを有する抗体および抗体断片の作製が可能となる。非常に大きなファージ抗体レパートリー(「全ライブラリーの母(the mother-of-all libraries)」としても知られる)を作製するための戦略は、Waterhouse et al.,Nucl.Acids Res.21:2265-2266,1993に記載されている。遺伝子シャッフリングを使用して、齧歯類抗体からヒト抗体を誘導することもできる。この場合、ヒト抗体は、開始げっ歯類抗体と類似したアフィニティと特異性を有している。「エピトープインプリンティング」とも呼ばれるこの方法によれば、ファージディスプレイ技術により取得されたげっ歯類抗体の重鎖および軽鎖のVドメイン遺伝子は、ヒトVドメイン遺伝子のレパートリーと置換され、げっ歯類-ヒトのキメラが生成される。抗原に対する選択を行うことにより、機能性抗原結合部位を回復させることができるヒト可変領域が単離される。すなわちエピトープが、パートナーの選択を支配(インプリント)する。残りの齧歯類Vドメインを置換するためにプロセスが繰り返された場合には、ヒト抗体が取得される(PCT公開WO93/06213を参照のこと)。従来的なCDR移植による齧歯類抗体のヒト化とは異なり、この技術は完全なヒト抗体を提供するものであり、当該抗体は齧歯類起源のフレームワークまたはCDR残基は有していない。
【0133】
抗体は、最初に宿主動物から抗体および抗体産生細胞を単離すること、遺伝子配列を取得すること、そして当該遺伝子配列を使用して宿主細胞(例えばCHO細胞)において抗体を組み換え発現させることにより組み換え作製されてもよい。採用され得る別の方法は、植物(例えばタバコ)またはトランスジェニックミルクにおいて抗体配列を発現させる方法である。植物またはミルクで抗体を組み換え発現させる方法は報告されている。例えば、Peeters,et al.Vaccine 19:2756,2001;Lonberg,N.and D.Huszar Int.Rev.Immunol 13:65,1995;およびPollock,et al.,J Immunol Methods 231:147,1999を参照のこと。抗体の誘導体を作製する方法、例えばヒト化、一本鎖を作製する方法なども当分野に公知である。
【0134】
免疫アッセイ、および例えば蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)などのフローサイトメトリーソーティング技術を採用して、CD70に特異的な、または対象の腫瘍抗原に特異的な抗体を単離することもできる。
【0135】
本明細書に記載の抗体は、多くの様々な担体に結合することができる。担体は活性であっても、および/または不活性であってもよい。公知の担体の例としては、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、ガラス、天然セルロースおよび修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、ならびにマグネタイトが挙げられる。担体の性質は、本発明の目的に対し、可溶性または不溶性のいずれであってもよい。当業者であれば、抗体結合のための他の適切な担体を知っており、または日常的な実験を使用してそうした担体を確認することができるであろう。一部の実施形態では、担体は、心筋を標的とする部分を含有する。
【0136】
モノクローナル抗体をコードするDNAは従来的な方法を使用することにより(例えばモノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)容易に単離され、配列解析される。ハイブリドーマ細胞は、そうしたDNAの好ましい供給源として機能する。単離された時点で、DNAを、発現ベクター(例えばPCT公開WO87/04462号に開示される発現ベクター)へと配置してもよい。その後、別手段により免疫グロブリンタンパク質を産生しない例えば大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはミエローマ細胞などの宿主細胞内に当該ベクターをトランスフェクトし、当該組み換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成が得られる。例えば、PCT公開WO87/04462を参照のこと。DNAは、例えばヒト重鎖およびヒト軽鎖の定常領域のコード配列を、相同なマウス配列の代わりに置換することにより改変されてもよい。Morrison et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.81:6851,1984。または非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列のすべてまたは一部と、免疫グロブリンのコード配列を共有結合させることにより改変されてもよい。この方法では、本明細書のモノクローナル抗体の結合特異性を有する「キメラ」抗体または「ハイブリッド」抗体が調製される。
【0137】
本明細書に記載されるCD70抗体は、当分野で公知の方法を使用して特定または特徴解析されることができ、それによりCD70の発現レベルの低下が検出および/または測定される。一部の実施形態では、CD70抗体は、CD70と候補物質をインキュベートし、そして結合および/または結合に伴うCD70の発現レベルの低下をモニタリングすることにより特定される。結合アッセイは、精製されたCD70ポリペプチドを用いて、またはCD70ポリペプチドを自然に発現する細胞を用いて、またはCD70ポリペプチドを発現するようトランスフェクトされた細胞を用いて実施されてもよい。一つの実施形態では、結合アッセイは、競合結合アッセイであり、このアッセイにおいて、CD70結合に関し、公知のCD70抗体と競合する候補抗体の能力が評価される。このアッセイは、ELISA形式を含む様々な形式で実施されてもよい。
【0138】
初回の特定の後、候補CD70抗体の活性は、標的となる生物活性を検証することが知られているバイオアッセイによりさらに確認され、および改善され得る。あるいは、バイオアッセイを使用して、候補抗体を直接スクリーニングすることもできる。抗体を特定および特徴解析するための方法のいくつかを、実施例に詳述する。
【0139】
CD70抗体は、当分野に公知の方法を用いて特徴解析されてもよい。例えば一つの方法は、抗体が結合するエピトープを特定すること、または「エピトープマッピング」である。例えば、Harlow and Lane,Using Antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1999の第11章に記載されるように、抗体-抗原複合体の結晶構造の解析、競合アッセイ、遺伝子断片発現アッセイ、および合成ペプチド系アッセイを含む、タンパク質上のエピトープの位置をマッピングおよび特徴解析するための多くの方法が当分野に公知である。追加的な例において、エピトープマッピングを使用して、抗体が結合する配列を決定することができる。エピトープマッピングは、様々な供給者、例えばPepscan Systems(Edelhertweg 15,8219 PH Lelystad,The Netherlands)から市販されている。エピトープは直鎖状エピトープであってもよい。すなわち、アミノ酸の単一な列に含有されてもよい。またはアミノ酸の三次元相互作用により形成された立体構造的エピトープであってもよく、このエピトープは単一な列には必ずしも含有されない場合がある。様々な長さのペプチド(例えば、少なくとも4~6アミノ酸の長さ)を単離または合成して(例えば組み換えにより)、CD70または他の腫瘍抗原の抗体を用いた結合アッセイに使用してもよい。別の例では、CD70抗体が結合するエピトープは、CD70配列から誘導された重複ペプチドを使用した系統的スクリーニングを行い、CD70抗体による結合を決定することによって決定され得る。遺伝子断片発現アッセイによると、CD70をコードするオープンリーディングフレームは、無作為または特定の遺伝子構造によって断片化され、CD70の発現断片と検証抗体の反応性が決定される。遺伝子断片は、例えばPCRによって生成され、次いで放射性アミノ酸の存在下でインビトロでタンパク質へと転写および翻訳されてもよい。次いで、放射標識されたCD70への抗体の結合が、免疫沈降およびゲル電気泳動によって決定される。あるエピトープは、ファージ粒子(ファージライブラリー)の表面上に提示される無作為ペプチド配列の大きなライブラリーを使用することにより特定されてもよい。あるいは、重複したペプチド断片の規定のライブラリーを、単純な結合アッセイにおいて被験抗体への結合に関して検証してもよい。追加的な例では、抗原結合ドメインの突然変異誘導、ドメインスワッピング実験、およびアラニンスキャン突然変異誘導を実施して、エピトープ結合に必要とされる、充分な、および/または必須の残基を特定してもよい。例えばドメインスワッピング実験は、変異型CD70を使用して実施されてもよく、この場合においてCD70タンパク質の様々な断片は、別の種(例えばマウス)由来のCD70の配列、または近縁であるが抗原的に別個のタンパク質の配列と置換(スワップ)される。変異型CD70に対する抗体の結合を評価することにより、抗体結合に対する、特定のCD70断片の重要性が評価され得る。CD70特異的抗体(すなわち、CD70wt(野生型)または任意の他のタンパク質に結合しない抗体)の場合には、エピトープは、CD70とCD70wtの配列アライメントから推定され得る。
【0140】
CD70抗体を特徴解析するために使用され得るさらに別の方法は、同じ抗原、すなわちCD70上の様々な断片に結合することが知られている他の抗体との競合アッセイを使用して、CD70抗体が、他の抗体と同じエピトープに結合するかを決定することである。競合アッセイは、当業者に公知である。
【0141】
発現ベクターを使用して、CD70抗体の発現を誘導してもよい。当業者であれば、インビボでの外来性タンパク質の発現を得るための発現ベクターの投与について理解している。例えば、米国特許第6,436,908号、第6,413,942号、および第6,376,471号を参照のこと。発現ベクターの投与は、注射、経口投与、粒子銃またはカテーテル投与を含む局所(local)または全身の投与、および局所(topical)投与を含む。別の実施形態では、発現ベクターは、交感神経幹もしくはガングリオンに直接投与され、または冠状動脈、心房、心室もしくは心膜内に直接投与される。
【0142】
発現ベクターまたはサブゲノム性ポリヌクレオチドを含有する治療用組成物の標的化送達を使用してもよい。受容体介在DNA送達法は、例えばFindeis et al.,Trends Biotechnol.,1993,11:202;Chiou et al.,Gene Therapeutics:Methods And Applications Of Direct Gene Transfer,J.A.Wolff,ed.,1994;Wu et al.,J.Biol.Chem.,263:621,1988;Wu et al.,J.Biol.Chem.,269:542,1994;Zenke et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:3655,1990;and Wu et al.,J.Biol.Chem.,266:338,1991に記載されている。ポリヌクレオチドを含有する治療用組成物は、遺伝子治療プロトコルでの局所投与に対し、約100ng~約200mgのDNAの範囲で投与される。約500ng~約50mg、約1μg~約2mg、約5μg~約500μg、および約20μg~約100μgのDNAの範囲の濃度を、遺伝子治療プロトコル中に使用してもよい。治療用のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、遺伝子送達ビヒクルを使用して送達されてもよい。遺伝子送達ビヒクルは、ウイルス起源または非ウイルス起源のものであってもよい(一般的に、Jolly,Cancer Gene Therapy,1:51,1994;Kimura,Human Gene Therapy,5:845,1994;Connelly,Human Gene Therapy,1995,1:185;およびKaplitt,Nature Genetics,6:148,1994を参照のこと)。そうしたコード配列の発現は、内因性の哺乳動物プロモーター、または異種プロモーターを使用して誘導されてもよい。コード配列の発現は、構造的または制御性のいずれかであってもよい。
【0143】
所望のポリヌクレオチドの送達用、および所望の細胞での発現用のウイルス系ベクターは当分野に公知である。ウイルス系ビヒクルの例としては限定されないが、組み換えレトロウイルス(例えば、PCT公開WO90/07936、WO94/03622、WO93/25698、WO93/25234、WO93/11230、WO93/10218、WO91/02805、米国特許第5,219,740号および第4,777,127号、英国特許第2,200,651号、ならびに欧州特許第0345242号)、アルファウイルス系ベクター(例えばシンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR-67、ATCC VR-1247)、ロスリバーウイルス(ATCC VR-373、ATCC VR-1246)、およびベネズエラウマ脳炎ウイルス(ATCC VR-923、ATCC VR-1250、ATCC VR 1249、ATCC VR-532))、およびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えば、PCT公開WO94/12649、WO93/03769、WO93/19191、WO94/28938、WO95/11984、およびWO95/00655)が挙げられる。Curiel,Hum.Gene Ther.,1992,3:147に記載される死滅アデノウイルスに結合したDNAの投与を採用してもよい。
【0144】
非ウイルス系送達ビヒクル、および非ウイルス系送達方法を採用してもよく、限定されないが、死滅アデノウイルス単独に結合された、または結合されていないポリカチオン性濃縮DNA(例えば、Curiel,Hum.Gene Ther.,3:147,1992)、リガンド結合DNA(例えば、Wu,J.Biol.Chem.,264:16985,1989)、真核細胞送達ビヒクル細胞(例えば、米国特許第5,814,482号、PCT公開WO95/07994、WO96/17072、WO95/30763、およびWO97/42338)および核電荷中和法または細胞膜融合法が挙げられる。ネイキッドDNAを採用してもよい。ネイキッドDNA導入法の例は、PCT公開WO90/11092、および米国特許第5,580,859号に記載されている。遺伝子送達ビヒクルとして作用し得るリポソームは、米国特許第5,422,120号、PCT公開WO95/13796、WO94/23697、WO91/14445、およびEP 0524968に記載されている。追加の方法は、Philip,Mol.Cell Biol.,14:2411,1994、およびWoffendin,Proc.Natl.Acad.Sci.,91:1581,1994に記載されている。
【0145】
一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記載される抗体、本発明方法により作製された抗体、または本明細書に記載される特性を有する抗体を含む医薬組成物を含む組成物を包含する。本明細書において使用される場合、組成物は、CD70に結合する一つまたは複数の抗体、および/またはこれらの抗体を一つまたは複数コードする配列を含む一つまたは複数のポリヌクレオチドを含む。これらの組成物は、当分野で公知の緩衝液を含む薬学的に許容可能な賦形剤などの適切な賦形剤をさらに含みうる。
【0146】
本発明はさらに、これらの抗体のいずれかを作製する方法も提供する。本発明の抗体は、当分野に公知の方法により作製され得る。ポリペプチドは、抗体のタンパク質分解もしくは他の分解により、上述の組み換え法により(すなわち単一ポリペプチドまたは融合ポリペプチド)、または化学合成により、作製され得る。抗体のポリペプチド、特に約50アミノ酸以下の短いポリペプチドは、化学合成によって簡便に作製される。化学合成方法は当分野で公知であり、市販されている。例えば、抗体は、固相法を採用する自動ポリペプチド合成装置により作製され得る。米国特許第5,807,715号、第4,816,567号、および第6,331,415号を参照のこと。
【0147】
別の代替的方法では、抗体は、当分野に公知の手順を使用して組み換えにより作製され得る。一つの実施形態では、ポリヌクレオチドは、抗体31H1、63B2、40E3、42C3、45F11、64F9、72C2、2F10、4F11、10H10、17G6、65E11、P02B10、P07D03、P08A02、P08E02、P08F08、P08G02、P12B09、P12F02、P12G07、P13F04、P15D02、もしくはP16C05の重鎖および/または軽鎖の可変領域をコードする配列を含む。対象の抗体をコードする配列は、宿主細胞内のベクター内に維持されてもよく、次いで宿主細胞を増殖させ、将来的な使用のために凍結してもよい。ベクター(発現ベクターを含む)および宿主細胞を、本明細書においてさらに記載する。
【0148】
二つの共有結合された抗体を含むヘテロ結合抗体(heteroconjugate antibodies)も、本発明の範囲内にある。そうした抗体を使用して、望ましくない細胞に対して免疫系細胞を標的化させ(米国特許第4,676,980号)、HIV感染の治療に使用している(PCT公開WO91/00360およびWO92/200373、EP 03089)。ヘテロ結合抗体は、任意の簡便な架橋方法を使用して作製され得る。適切な架橋剤および架橋方法は当分野に公知であり、米国特許第第4,676,980号に記載されている。
【0149】
キメラ抗体またはハイブリッド抗体は、架橋剤を含む方法をはじめとする公知の合成タンパク質化学法を使用してインビトロで調製され得る。例えばジスルフィド交換反応を使用して、またはチオエーテル結合を形成させることによりイムノトキシンが構築され得る。この目的に対し適切な試薬の例としては、イミノチオラートおよびメチル-4-メルカプトブチルイミダート(mercaptobutyrimidate)が挙げられる。
【0150】
組み換え型ヒト化抗体において、Fcγ領域は、Fcγ受容体ならびに補体系および免疫系との相互作用を回避するために改変されてもよい。そうした抗体の調製方法は、WO99/58572に記載されている。例えば定常領域をヒト定常領域にさらに似せて操作して、抗体がヒトでの臨床試験および治療に使用されたときの免疫反応を回避してもよい。例えば、米国特許第5,997,867号および第5,866,692号を参照のこと。
【0151】
本発明は、表5に示されるバリアントを含む、本発明の抗体およびポリペプチドに対する改変を包含しており、その特性に大きな影響を受けていない機能的に同等の抗体、ならびに活性および/またはアフィニティを強化された、または減少されたバリアントが含まれる。例えばアミノ酸配列は、CD70に対し所望の結合アフィニティを有する抗体が得られるように変異されてもよい。ポリペプチドの改変は当分野では日常的に実施されており、本明細書において詳細に記載する必要はない。改変ポリペプチドの例としては、アミノ酸残基の保存的置換を有するポリペプチド、機能的活性を著しく悪化させて変化させない、またはそのリガンドに対するポリペプチドのアフィニティを成熟させる(強化する)アミノ酸の一つもしくは複数の欠失または付加を有するポリペプチド、または化学的アナログが使用されたポリペプチドが挙げられる。
【0152】
アミノ酸配列挿入には、1残基から数百以上の残基を含有するポリペプチドの長さの範囲のアミノ末端融合および/またはカルボキシル末端融合を含み、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列間挿入を含む。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体、またはエピトープタグに融合された抗体が挙げられる。抗体分子のその他の挿入バリアントとしては、酵素またはポリペプチドの、抗体N末端または抗体C末端への融合が挙げられ、それにより血液循環中の抗体の半減期が延長される。
【0153】
置換バリアントは、抗体分子中の少なくとも一つのアミノ酸残基が除去され、その位置に異なる残基が挿入されている。置換突然変異誘導に対し最も大きな関心が持たれる部位としては、超可変領域が挙げられるが、FRの改変も予期される。保存的置換は、「保存的置換」の見出しで、表5に示されている。そのような置換により生物活性に変化が生じる場合、より大きな置換変化は、表5において「例示的置換」で表示され、またはアミノ酸のクラスに関して以下に詳述されるように、そうした置換が導入され、産物はスクリーニングされ得る。一部の実施形態では、本明細書に提供される抗体の置換バリアントは、基準の親抗体と比較してVH領域またはVL領域において、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1個以下の保存的置換を有する。一部の実施形態では、置換は、VH領域またはVL領域のCDR内ではない。
【0154】
【0155】
抗体の生物特性における置換改変は、(a)置換領域中のポリペプチド主鎖の例えばシート立体構造またはヘリカル立体構造としての構造、(b)標的部位の分子の荷電もしくは疎水性、または(c)側鎖の体積、の維持に対する効果において、大きく異なる置換を選択することにより実現される。天然のアミノ酸残基は、以下の共通の側鎖の特性に基づいてグループに分けられる:
(1)非極性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
(2)非荷電極性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
(3)酸性(陰性荷電):Asp、Glu、
(4)塩基性(陽性荷電):Lys、Arg、
(5)鎖の方向性に影響を与える残基:Gly、Pro、および
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe、His。
【0156】
非保存的置換は、これらのクラスの一つを別のクラスのものに交換することによって行われる。
【0157】
抗体の適切な立体構造の維持に関与しないシステイン残基もすべて、一般的にはセリンと置換されてもよく、それにより分子の酸化安定性が改善され、異常な架橋が防止される。逆に、システイン結合を抗体に加えることにより、特に抗体がFv断片などの抗体断片である場合には、その安定性が改善される。
【0158】
アミノ酸改変は、一つまたは複数のアミノ酸の変更または改変から、例えば可変領域などの領域の完全な再設計までの範囲であってもよい。可変領域の変更は、結合アフィニティおよび/または結合特異性を変化させる可能性がある。一部の実施形態では、CDRドメイン内では、1~5個以下の保存的アミノ酸置換が行われる。他の実施形態では、CDRドメイン内では、1~3個以下の保存的アミノ酸置換が行われる。さらに他の実施形態では、当該CDRドメインは、CDR H3および/またはCDR L3である。
【0159】
改変は、グリコシル化ポリペプチドおよび非グリコシル化ポリペプチド、ならびに他の翻訳後修飾を有するポリペプチド、例えば異なる糖類でのグリコシル化、アセチル化およびリン酸化を有するポリペプチドも含む。抗体は、自身の定常領域中の保存された位置でグリコシル化されている(Jefferis and Lund,Chem.Immunol.65:111-128,1997;Wright and Morrison,TibTECH 15:26-32,1997)。免疫グロブリンのオリゴ糖側鎖は、タンパク質の機能に影響を与え(Boyd et al.,Mol.Immunol.32:1311-1318,1996;Wittwe and Howard,Biochem.29:4175-4180,1990)、糖タンパク質の立体構造および呈示される三次元表面に影響を与え得る糖タンパク質の部分間の分子内相互作用に影響を与える(Jefferis and Lund,supra;Wyss and Wagner,Current Opin.Biotech.7:409-416,1996)。オリゴ糖は、特定の認識構造に基づいて、所与の糖タンパク質を特定の分子に標的化させる役割も果たし得る。抗体のグリコシル化は、抗体依存性細胞障害(ADCC)に影響を及ぼすことも報告されている。特に、分岐GlcNAcの形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼであるβ(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)のテトラサイクリン制御性発現を有するCHO細胞は、ADCC活性が改善されたことが報告されている(Umana et al.,Mature Biotech.17:176-180,1999)。
【0160】
抗体のグリコシル化は、典型的にはN結合型またはO結合型のいずれかである。N結合型とは、アスパラギン残基の側鎖に炭水化物部分が付加することを指す。トリペプチド配列のアスパラギン-X-セリン、アスパラギン-X-スレオニン、およびアスパラギン-X-システインは、式中、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸であり、アスパラギン側鎖に炭水化物部分が酵素的に付加するための認識配列である。したがってこれらトリペプチド配列のいずれかがポリペプチド中に存在することで、潜在的にグリコシル化部位が生じる。O結合型のグリコシル化とは、糖のN-アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースのうちの一つがヒドロキシアミノ酸、最も普遍的にはセリンまたはスレオニンに付加することを指し、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリシンが使用されてもよい。
【0161】
抗体へのグリコシル化部位の追加は、上述の(N結合型グリコシル化部位に関する)トリペプチド配列のうちの一つまたは複数を含有するようにアミノ酸配列を変えることにより容易に達成される。(O結合型グリコシル化部位に関して)一つまたは複数のセリン残基またはスレオニン残基を、元の抗体の配列に付加、または置換することにより変更が行われてもよい。
【0162】
抗体のグリコシル化パターンは、基礎となるヌクレオチド配列を変えることなく変更されてもよい。グリコシル化は、抗体を発現するために使用される宿主細胞に大きく依存する。組み換え糖タンパク質、例えば潜在的に治療用としての抗体の発現に使用される細胞型が天然細胞であることは稀であるため、抗体のグリコシル化パターンの変動が予測され得る(例えば、Hse et al.,J.Biol.Chem.272:9062-9070,1997を参照のこと)。
【0163】
宿主細胞の選択に加えて、抗体の組み換え型産生中のグリコシル化に影響を及ぼす因子としては、増殖様式、培地組成、培養密度、酸素化、pH、精製スキームなどが挙げられる。オリゴ糖産生に関与する特定の酵素を導入または過剰発現させることを含む、特定の宿主生物で実現されるグリコシル化パターンを変えるための様々な方法が提唱されている(米国特許第5,047,335号、第5,510,261号、および第5,278,299号)。グリコシル化、または特定のタイプのグリコシル化を、例えば、エンドグリコシダーゼH(Endo H)、N-グリコシダーゼF、エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、エンドグリコシダーゼF3を使用して、糖タンパク質から酵素的に除去してもよい。さらに組み換え宿主細胞を遺伝子操作して、特定のタイプの多糖類の処理を欠落するようにしてもよい。これら技術および類似の技術が当分野に公知である。
【0164】
その他の改変方法としては、限定されないが、酵素的手段、酸化的置換、およびキレートを含む、当分野に公知のカップリング技術の使用が挙げられる。例えば、免疫アッセイ用の標識の付加を目的とした改変が使用されてもよい。改変ポリペプチドは、当分野で確立された手順を使用して作製され、そして当分野で公知の標準的なアッセイを使用してスクリーニングされてもよく、その一部は、以下に、および実施例に記載される。
【0165】
他の抗体改変としては、PCT公開WO99/58572号に記載されるように改変された抗体が挙げられる。これらの抗体は、標的分子に指向される結合ドメインに加えて、ヒト免疫グロブリン重鎖の定常領域のすべて、または一部に対して実質的に相同なアミノ酸配列を有するエフェクタードメインを含む。これらの抗体は、重大な標的の補体依存性溶解または細胞介在性の破壊を誘発することなく標的分子に結合することができる。一部の実施形態では、エフェクタードメインは、FcRnおよび/またはFcγRIIbに特異的に結合することができる。これらドメインは、典型的には二つ以上のヒト免疫グロブリン重鎖CH2ドメインに由来するキメラドメインに基づいている。このように改変された抗体は、長期的な抗体療法での使用に特に適しており、従来的な抗体療法に対する炎症および他の有害な反応を回避する。
【0166】
本発明は、アフィニティ成熟した実施形態を含む。例えばアフィニティ成熟抗体は、当分野に公知の方法(Marks et al.,Bio/Technology,10:779-783,1992;Barbas et al.,Proc Nat.Acad.Sci,USA 91:3809-3813,1994;Schier et al.,Gene,169:147-155,1995;Yelton et al.,J.Immunol.,155:1994-2004,1995;Jackson et al.,J.Immunol.,154(7):3310-9,1995,Hawkins et al.,J.Mol.Biol.,226:889-896,1992;およびPCT公開WO2004/058184)により作製されてもよい。
【0167】
以下の方法を使用して、抗体のアフィニティを調整し、CDRを特徴解析してもよい。抗体のCDRを特徴解析し、および/または例えば抗体などのポリペプチドの結合アフィニティを変える(例えば改善する)一つの方法は、「ライブラリースキャニング突然変異誘導」と呼ばれている。概して、ライブラリースキャニング突然変異誘導は、以下のように作用する。CDR中の一つまたは複数のアミノ酸の位置を、二つ以上(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)のアミノ酸と、当分野に認識されている方法を使用して置換する。これにより小さなクローンライブラリーが作製される(一部の実施形態では、分析される各アミノ酸位置につき一つ)。(二つ以上のアミノ酸が各位置で置換される場合)、各々が二つ以上のメンバーという複雑性を有している。概して、ライブラリーは、天然(非置換)アミノ酸を含むクローンも含有する。各ライブラリーから、(ライブラリーの複雑性に応じて)例えば約20~80個のクローンなどの少数のクローンが標的ポリペプチド(または他の結合標的)に対する結合アフィニティに関してスクリーニングされ、結合が増加した、結合が同程度、結合が低下した、または結合しない候補物が特定される。結合アフィニティの決定方法は、当分野に公知である。結合アフィニティは、Biacore(商標)表面プラズモン共鳴解析法を使用して決定されてもよく、当該方法は、結合アフィニティにおける約2倍以上の差異を検出する。Biacore(商標)は、例えば約10nM以下のKDなど、開始抗体がすでに比較的高いアフィニティで結合する場合に特に有用である。Biacore(商標)表面プラズモン共鳴法を使用したスクリーニングは、本明細書において実施例に記載される。
【0168】
結合アフィニティは、Kinexa Biocensor、シンチレーション近接アッセイ、ELISA、ORIGEN免疫アッセイ(IGEN)、蛍光クエンチング、蛍光トランスファー、および/または酵母ディスプレイを使用して決定されてもよい。結合アフィニティは、適切なバイオアッセイを使用してスクリーニングされてもよい。
【0169】
一部の実施形態では、CDR中の各アミノ酸の位置は、当分野に認識される突然変異誘導法(その一部は本明細書に記載される)を使用して、20個すべての天然アミノ酸と置換される(一部の実施形態では、一度に一つ)。これにより小さなクローンライブラリーが作製される(一部の実施形態では、分析される各アミノ酸位置につき一つ)。(20個すべてのアミノ酸がそれぞれの位置で置換される場合)、各々が20個のメンバーという複雑性を有している。
【0170】
一部の実施形態では、スクリーニングされるライブラリーは、二つ以上の位置で置換を含有しており、それらは同一のCDR中であってもよく、または二つ以上のCDR中であってもよい。ゆえにライブラリーは、一つのCDR中の二つ以上の位置で置換を含有してもよい。ライブラリーは、二つ以上のCDR中の二つ以上の位置で置換を含有してもよい。ライブラリーは、3、4、5、またはそれ以上の位置で置換を含有してもよく、当該位置は、2、3、4、5または6個のCDR中に存在する。置換は、低冗長性のコドンを使用して調製されてもよい。例えば、Balint et al.,Gene 137(1):109-18,1993の表2を参照のこと。
【0171】
CDRは、CDRH3および/またはCDRL3であってもよい。CDRは、CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2、および/またはCDRH3のうちの一つまたは複数であってもよい。CDRは、Kabat CDR、Chothia CDR、または拡張CDRであってもよい。
【0172】
結合が改善された候補物は、配列解析されてもよく、それによりアフィニティの改善をもたらすCDR置換変異体が特定される(「改善された」置換とも名付けられる)。結合する候補物が配列解析されてもよく、それにより結合を保持するCDR置換が特定される。
【0173】
複数ラウンドのスクリーニングを実施してもよい。例えば、結合が改善した候補物(各々が、一つまたは複数のCDRの一つまたは複数の位置で、アミノ酸置換を含有する)は、各改善されたCDR位置で、少なくともオリジナルのアミノ酸と置換アミノ酸を含有する第二のライブラリーの設計にも有用である。このライブラリーの調製およびスクリーニングまたは選択を、以下にさらに検討する。
【0174】
結合が改善した、結合が同じ、結合が低下した、または結合しないクローンの頻度が、抗体-抗原複合体の安定性に対する各アミノ酸位置の重要性に関する情報を提供する限りにおいて、ライブラリースキャニング突然変異誘導法は、CDRを特徴解析するための手段も提供する。例えば、20個すべてのアミノ酸に変化したとき、CDRの位置が結合を保持していた場合、当該位置は、抗原結合に必要とされる可能性は無い位置として特定される。逆に、少数の置換のみでCDRの位置が結合を保持していた場合、当該位置は、CDR機能に重要な位置として特定される。したがってライブラリースキャニング突然変異誘導法は、多くの別のアミノ酸(20個すべてのアミノ酸を含む)へと変化され得るCDR中の位置に関する情報、および変えられないCDR中の位置または少数のアミノ酸のみへ変えられるCDR中の位置に関する情報をもたらす。
【0175】
アフィニティが改善した候補物を第二のライブラリー中で組み合わせてもよい。当該ライブラリーは、当該位置で改善アミノ酸、元のアミノ酸を含み、所望されるライブラリーの複雑性に応じて、または所望されるスクリーニング法もしくは選択法の使用が許容されるライブラリーの複雑性に応じて、当該位置で追加の置換をさらに含んでもよい。さらに望ましい場合には、隣接するアミノ酸位置を、少なくとも二つ以上のアミノ酸に無作為化することもできる。隣接するアミノ酸の無作為化によって、変異CDRにおいて、追加的な構造的適応性が可能となる場合があり、これは同様に、多数の改善変異の導入を許容、または促進し得る。ライブラリーは、最初のスクリーニングのラウンドではアフィニティの改善を示さなかった位置で、置換を含んでもよい。
【0176】
第二のライブラリーは、当分野に公知の任意の方法を使用して、結合アフィニティが改善した、および/または変化したライブラリーのメンバーに対してスクリーニングまたは選択される。そうした方法としては、Biacore(商標)表面プラズモン共鳴解析を使用したスクリーニング、ならびにファージディスプレイ、酵母ディスプレイおよびリボソームディスプレイを含む選択のための当分野に公知の任意の方法を使用した選択が挙げられる。
【0177】
本発明は、本発明の抗体の一つもしくは複数の断片または領域を含有する融合タンパク質も包含する。一つの実施形態では、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45もしくは47に示される可変軽鎖領域の少なくとも10個の連続的なアミノ酸、および/または配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46もしくは48に示される可変重鎖領域の少なくとも10個のアミノ酸を含有する融合ポリペプチドが提供される。他の実施形態では、可変軽鎖領域の少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、または少なくとも約30個の連続したアミノ酸、および/または可変重鎖領域の少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、または少なくとも約30個の連続したアミノ酸を含有する融合ポリペプチドが提供される。別の実施形態では、融合ポリペプチドは、一つまたは複数のCDRを含む。さらに他の実施形態では、融合ポリペプチドは、CDR H3(VH CDR3)および/またはCDR L3(VL CDR3)を含む。本発明の目的に対し、融合タンパク質は、一つまたは複数の抗体と、例えば異種配列または別の領域由来の同種配列などの天然分子では付加されない別のアミノ酸配列を含む。異種配列の例としては限定されないが、例えばFLAGタグまたは6Hisタグ(配列番号531)などの「タグ」が挙げられる。タグは、当分野において公知である。
【0178】
融合ポリペプチドは、例えば合成または組み換えなどの当分野に公知の方法により生成され得る。典型的には、本発明の融合タンパク質は、本明細書に記載される組み換え方法を使用して、それらをコードするポリヌクレオチドを調製および発現させることによって作製されるが、例えば、化学合成を含む、当分野で公知の他の手段により調製されてもよい。
【0179】
本発明は、固形支持体へのカップリングを促進する物質(例えば、ビオチンまたはアビジン)に結合された(例えば、連結された)抗体を含む組成物も提供する。簡略化を目的として、本明細書に記載のCD70抗体の実施形態のいずれかに、これら方法を適用するという理解で、抗体に対して概略的に参照が為される。結合とは概して、本明細書に記載のこれら構成要素を連結させることを指す。連結(概して、これらの構成要素を少なくとも投与のために近接した関連性で固定する)は、任意の数の方法で実現することができる。例えば、物質と抗体との間の直接反応は、各々が他方と反応する能力を有する置換基を保有する場合に可能である。例えば、アミノ基またはスルフヒドリル基などの求核基は、一方は例えば無水物または酸ハロゲン化物などのカルボニル含有基と反応することができ、または他方には充分な脱離基(例えばハロゲン化物)を含有するアルキル基と反応することができてもよい。
【0180】
本発明はまた、本発明の抗体をコードする単離ポリヌクレオチド、ならびに当該ポリヌクレオチドを含むベクターおよび宿主細胞も提供する。
【0181】
従って本発明は、以下のいずれかをコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド(または医薬組成物を含む組成物)を提供する:31H1、63B2、40E3、42C3、45F11、64F9、72C2、2F10、4F11、10H10、17G6、65E11、P02B10、P07D03、P08A02、P08E02、P08F08、P08G02、P12B09、P12F02、P12G07、P13F04、P15D02もしくはP16C05、またはCD70に結合する能力を有する任意のその断片または部分。
【0182】
別の態様では、本発明は、例えばエフェクター機能が損なわれた抗体およびポリペプチドなどの、本明細書に記載の抗体(抗体断片を含む)およびポリペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは、当分野に公知の方法により作製および発現され得る。
【0183】
別の態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドのいずれかを含む組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。一部の実施形態では、組成物は、本明細書に記載の抗体のいずれかをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む。
【0184】
発現ベクター、およびポリヌクレオチド組成物の投与を、本明細書においてさらに記載する。
【0185】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のポリヌクレオチドのいずれかを作製する方法を提供する。
【0186】
任意の当該配列に相補的なポリヌクレオチドも本発明に包含される。ポリヌクレオチドは、一本鎖(コードまたはアンチセンス)または二本鎖であってもよく、DNA分子(ゲノム、cDNAまたは合成)またはRNA分子であってもよい。RNA分子には、イントロンを含有し、1対1の方式でDNA分子に対応するHnRNA分子、およびイントロンを含有しないmRNA分子が含まれる。追加のコード配列または非コード配列は、必ずではないが、本発明のポリヌクレオチド内に存在してもよく、ポリヌクレオチドは、必ずではないが、他の分子および/またはサポート物質に連結されてもよい。
【0187】
ポリヌクレオチドは天然配列(すなわち抗体またはその一部分をコードする内因性配列)を含んでもよく、またはそうした配列のバリアントを含んでもよい。ポリヌクレオチドバリアントは、天然免疫反応性分子と比較して、コードされるポリペプチドの免疫反応性が減少しないように一つまたは複数の置換、付加、欠失および/または挿入を含有する。コードされるポリペプチドの免疫反応性に対する効果は、概して本明細書に記載されるように評価されてもよい。バリアントは、天然抗体またはその一部分をコードするポリヌクレオチド配列に対し、少なくとも約70%の同一性を示すことが好ましく、少なくとも約80%の同一性を示すことがより好ましく、少なくとも約90%の同一性を示すことがよりさらに好ましく、少なくとも約95%の同一性を示すことが最も好ましい。
【0188】
二つの配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸の配列が、以下に記載されるように最大対応に整列したときに同じである場合、二つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列は、「同一である」と言われる。二つの配列の間の比較は、典型的には、比較ウィンドウ上の配列を比較して、配列類似性の局所的な領域を特定し、比較することによって実施される。本明細書において使用される場合、「比較ウィンドウ」とは、少なくとも約20個の連続する位置、通常は30~約75個、または40~約50個の連続する位置のセグメントを指し、そのセグメントにおいて、二つの配列が最適に整列された後、配列は同数の連続位置の参照配列と比較され得る。
【0189】
比較のための最適な配列の整列は、デフォルトパラメータを使用して、バイオインフォマティクスソフトウェア(DNASTAR,Inc.,ウィスコンシン州マジソン)のLasergene suiteのMegalignプログラムを使用して実施されてもよい。このプログラムは、以下の参考文献に記載されるいくつかの整列スキームを具現化するものである。Dayhoff,M.O.,1978,A model of evolutionary change in proteins - Matrices for detecting distant relationships。In Dayhoff,M.O.(ed.)Atlas of Protein Sequence and Structure,National Biomedical Research Foundation,Washington DC Vol.5,Suppl.3,pp.345-358;Hein J.,1990,Unified Approach to Alignment and Phylogenes pp.626-645 Methods in Enzymology vol.183,Academic Press,Inc.,San Diego,CA;Higgins,D.G.and Sharp,P.M.,1989,CABIOS 5:151-153;Myers,E.W.and Muller W.,1988,CABIOS 4:11-17;Robinson,E.D.,1971,Comb.Theor.11:105;Santou,N.,Nes,M.,1987,Mol.Biol.Evol.4:406-425;Sneath,P.H.A.and Sokal,R.R.,1973,Numerical Taxonomy the Principles and Practice of Numerical Taxonomy,Freeman Press,San Francisco,CA;Wilbur,W.J.and Lipman,D.J.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:726-730。
【0190】
好ましくは、「配列同一性の百分率」は、最適に並置された二つの配列を、少なくとも20個の位置の比較ウィンドウ上で比較することにより決定され、この場合において比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の一部は、二配列の最適アライメントのために、参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して20%以下、通常は5~15%、または10~12%の付加または欠失(すなわちギャップ)を含む場合がある。百分率は、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列中に存在する位置の数を決定して、合致位置数を出し、その合致位置数を、参照配列中の位置の総数(すなわちウィンドウサイズ)で割り、その結果に100を掛け、配列同一性の百分率を出すことにより算出される。
【0191】
バリアントはさらに、またはあるいは、天然遺伝子、またはその一部、またはその相補物に対して実質的に相同であってもよい。そうしたポリヌクレオチドバリアントは、中程度のストリンジェントな条件下で、天然抗体をコードする天然DNA配列(または相補配列)にハイブリダイズする能力を有する。
【0192】
適切な「中程度のストリンジェントな条件」には、5 X SSC、0.5% SDS、1.0mM EDTA(pH 8.0)の溶液中で前洗浄すること;50℃~65℃、5 X SSC、一晩でハイブリダイズすること;次いで65℃、20分間で2回、各々0.1%SDSを含有する2X、0.5X、および0.2X SSCを用いて洗浄すること、を含む。
【0193】
本明細書において使用される場合、「高度にストリンジェントな条件」または「高ストリンジェントな条件」は、(1)洗浄に関し、低イオン強度および高温を採用すること、例えば、50℃で、0.015M 塩化ナトリウム/0.0015M クエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムなど;(2)ハイブリダイゼーションの間に、例えばホルムアミドなどの変性剤、例えば0.1%ウシ血清アルブミン/0.1% Ficoll/0.1% ポリビニルピロリドン/pH6.5の50mM リン酸ナトリウム緩衝液を含む50%(v/v)ホルムアミドとともに、750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを42℃で採用する;または(3)50%ホルムアミド、5xSSC(0.75M NaCl、0.075M クエン酸ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH 6.8)、0.1% ピロリン酸ナトリウム、5xDenhardt溶液、ソニケート処理された鮭精子DNA(50μg/ml)、0.1% SDS、および10%硫酸デキストラン、42℃を採用し、42℃、0.2xSSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中で洗浄し、および55℃、50%ホルムアミドで洗浄し、次いで、55℃、EDTA含有0.1 x SSCからなる高ストリンジェント洗浄を行う。当業者であれば、必要に応じて温度、イオン強度などをどのように調整して、例えばプローブの長さなどの因子に適応させるかを認識するであろう。
【0194】
当業者であれば、遺伝子コードの縮重の結果として、本明細書に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は多数存在することを認識するであろう。これらポリヌクレオチドの一部は、任意の天然遺伝子のヌクレオチド配列に対し、最小の相同性を担持する。それにもかかわらずコドン使用頻度の差異により変化するポリヌクレオチドが、本発明により具体的に予期される。さらに本明細書に提供されるポリヌクレオチド配列を含む遺伝子のアレルは、本発明の範囲内にある。アレルは、例えばヌクレオチドの欠失、付加および/または置換などの一つまたは複数の変異の結果として変化する内因性の遺伝子である。得られるmRNAおよびタンパク質は、必ずではないが、構造が変化または機能が変化する場合がある。アレルは、標準的な技術(例えば、ハイブリダイゼーション、増幅および/またはデータベース配列比較など)を使用して特定されてもよい。
【0195】
本発明のポリヌクレオチドは、化学合成、組み換え法、またはPCRを使用して得ることができる。化学的なポリヌクレオチド合成方法は当分野で公知であり、本明細書に詳細に記載する必要はない。当業者であれば、本明細書に提供される配列、および市販のDNA合成装置を使用して、所望のDNA配列を生成することができる。
【0196】
本明細書においてさらに検討されるように、組み換え法を使用してポリヌクレオチドを調製するために、所望の配列を含むポリヌクレオチドが、適切なベクター内に挿入されてもよく、次いで当該ベクターが適切な宿主細胞内に導入され、複製および増幅されてもよい。ポリヌクレオチドは、当分野で公知の任意の手段によって宿主細胞内に挿入され得る。細胞は、直接的な取り込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F交配、またはエレクトロポレーション法により外来性ポリヌクレオチドを導入することにより形質転換される。導入された時点で、当該外因性ポリヌクレオチドは、非統合ベクター(例えばプラスミド)として細胞内で維持され、または宿主細胞ゲノム内に統合され得る。そのように増幅されたポリヌクレオチドは、当分野で公知の方法によって宿主細胞から単離され得る。例えば、Sambrook et al.,1989を参照のこと。
【0197】
あるいは、PCRによるDNA配列の再生が可能である。PCR技術は当分野で公知であり、米国特許第4,683,195号、第4,800,159号、第4,754,065号および第4,683,202号、ならびにPCR:The Polymerase Chain Reaction,Mullis et al.eds.,Birkauswer Press,Boston,1994に記載されている。
【0198】
RNAは、適切なベクター中で単離DNAを使用し、適切な宿主細胞内にそれを挿入することによって取得され得る。例えば上記のSambrook et al.,1989に記載されるように、細胞が複製され、DANがRNAに転写される場合、当該RNAは、当業者に公知の方法を使用して単離され得る。
【0199】
標準的な技術に従い適切なクローニングベクターが構築されてもよく、または当分野で利用可能な多数のクローニングベクターから選択されてもよい。選択されたクローニングベクターは、使用が意図される宿主細胞に応じて変化し得るが、有用なクローニングベクターは一般的に自己複製する能力を有するものであり、特定の制限エンドヌクレアーゼに対して単一の標的を保有していてもよく、および/またはベクターを含むクローンの選択に使用することができるマーカーの遺伝子を担持してもよい。適切な例としては、プラスミドおよび細菌ウイルスが挙げられる。例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)およびその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびに例えばpSA3およびpAT28などのシャトルベクターが挙げられる。これらベクター、および他の多くのクローニングベクターは、例えばBioRad社、Strategene社、およびInvitrogen社などの業者から入手可能である。
【0200】
発現ベクターは一般的に、本発明によるポリヌクレオチドを含有する複製可能なポリヌクレオチド構築物である。発現ベクターは、エピソームとして、または染色体DNAと一体となっている部分として、宿主細胞中で複製可能でなければならないと示唆される。適切な発現ベクターとしては限定されないが、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスを含むウイルスベクター、コスミド、およびPCT公開WO87/04462に開示される発現ベクターが挙げられる。ベクターの構成要素としては限定されないが、一般的に、以下の内の一つまたは複数が挙げられる:シグナル配列、複製起源、一つまたは複数のマーカー遺伝子、適切な転写制御因子(例えば、プロモーター、エンハンサーおよびターミネーター)。発現(すなわち翻訳)に対し、通常は一つまたは複数の翻訳制御因子も必要であり、例えばリボソーム結合部位、翻訳開始部位、および停止コドンなどがある。
【0201】
対象のポリヌクレオチドを含有するベクターは、エレクトロポレーション法、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、または他の物質を使用するトランスフェクション、マイクロプロジェクタイル照射、リポフェクション、および感染(ベクターが、例えばワクシニアウイルスなどの感染性の実体である場合)をはじめとする多くの適切な手段のいずれかにより宿主細胞内に導入され得る。ベクターまたはポリヌクレオチドの導入に関する選択は多くの場合、宿主細胞の特徴に依存する。
【0202】
本発明はまた、本明細書に記載されるポリヌクレオチドのいずれかを含む宿主細胞も提供する。異種DNAを過剰発現する能力を有する任意の宿主細胞を、対象の抗体、ポリペプチド、またはタンパク質をコードする遺伝子の単離を目的として使用してもよい。哺乳動物の宿主細胞の非限定的な例としては、COS細胞、HeLa細胞、およびCHO細胞が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、PCT公開WO87/04462も参照のこと。適切な非哺乳動物の宿主細胞としては、原核生物(例えば、大腸菌または枯草菌)および酵母(例えば、出芽酵母(S.cerevisae)、分裂酵母(S.pombe)または乳糖発酵性酵母(K.lactis))が挙げられる。宿主細胞は、存在する場合には宿主細胞中の対応する内因性の対象抗体または対象タンパク質よりも、約5倍高いレベルで、より好ましくは10倍高いレベルで、さらにより好ましくは20倍高いレベルで、cDNAを発現する。CD70に対する特異的結合に関する宿主細胞のスクリーニングは、免疫アッセイまたはFACSにより行われる。対象の抗体またはタンパク質を過剰発現する細胞が、特定され得る。
【0203】
CD70抗体を使用する方法
本発明の抗体は、治療的処置法および診断的処置法を含むがこれに限定されない、様々な用途で有用である。
【0204】
上述の方法により取得される抗体(例えば、一特異性および二特異性)は、医薬品として使用され得る。一部の実施形態では、かかる医薬品は、癌の治療に使用され得る。一部の実施形態では、癌は、例えばリンパ腫または白血病などの造血系が起源の癌である。一部の実施形態では、癌は、腎細胞癌、グリア芽腫、例えば低グレードグリオーマなどのグリオーマ、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキン病(HD)、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型リンパ腫、濾胞性リンパ腫、または非小細胞肺癌である。
【0205】
一部の実施形態では、CD70を発現する悪性細胞を有する対象において、腫瘍の増殖または進行を阻害する方法が提供され、当該方法は、その必要のある対象に対し、本明細書に記載されるCD70抗体(例えば、CD70-CD3二特異性抗体)を含む組成物の有効量を投与することを含む。他の実施形態では、対象において、CD70を発現する細胞の転移を阻害する方法が提供され、当該方法は、その必要のある対象に対し、本明細書に記載されるCD70抗体(例えば、CD70-CD3二特異性抗体)を含む組成物の有効量を投与することを含む。他の実施形態では、対象において、悪性細胞中の腫瘍の退縮を誘導する方法が提供され、当該方法は、その必要のある対象に対し、本明細書に記載されるCD70抗体(例えば、CD70-CD3二特異性抗体)を含む組成物の有効量を投与することを含む。
【0206】
一部の実施形態では、本発明による抗体(例えば、CD70-CD3二特異性抗体)は、その必要のある患者における癌の治療のための医薬品の製造において使用され得る。
【0207】
一部の実施形態では、治療は、抗体療法、化学療法、サイトカイン療法、標的化療法、ワクチン療法、樹状細胞療法、遺伝子治療、ホルモン療法、外科的切除、レーザ光治療および放射線療法の群から選択される、癌に対する一つまたは複数の治療と組み合わされ得る。
【0208】
たとえば、一部の実施形態では、本発明のCD70抗体(例えば、CD70-CD3二特異性抗体)は、血管内皮成長因子(VEGF)受容体を標的とする例えばスニチニブおよびパゾパニブなどの低分子チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、例えばベバシズマブなどのVEGFを標的とするモノクローナル抗体、mammalian target of Rapamycin(mTOR)の阻害剤であるテムシロリムス、ならびに高用量IL-2を用いた治療と併用されて(例えば、前に、同時に、または後に)、患者に投与される。一部の実施形態では、本発明のCD70抗体(例えば、CD70-CD3二特異性抗体)は、以下のうちの一つまたは複数と併用されて患者に投与される:抗PD-1抗体(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、またはPF-06801591)、抗PD-L1抗体(例えば、アベルマブ、アテゾリズマブまたはデュルバルマブ)、抗OX40抗体(例えば、PF-04518600)、抗4-1BB抗体(例えば、PF-05082566)、抗MCSF抗体(例えば、PD-0360324)、抗GITR抗体、および/または抗TIGIT抗体。
【0209】
本発明による抗体(例えば、一特異性または二特異性)の投与は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸液、移植(implantationまたはtransplantation)をはじめとする任意の簡便な方法で実行されてもよい。本明細書に記載される組成物は、皮下、皮内、腫瘍内、頭蓋内、節内、髄内、筋肉内、静脈内注射もしくはリンパ管内注射、または腹腔内に患者に投与されてもよい。一つの実施形態では、本発明の抗体組成物は、静脈内注射により投与されることが好ましい。
【0210】
一部の実施形態では、抗体(例えば、一特異性または二特異性)の投与は、体重1kgあたり例えば約0.01~約20mgの投与を含んでもよく、当該範囲内にある1kgあたりのmgのすべての整数値を含む。一部の実施形態では、抗体の投与は、体重1kgあたり約0.1~10mgの投与を含んでもよく、当該範囲内にある1kgあたりのmgのすべての整数値を含む。抗体は、一つまたは複数の投与量で投与されてもよい。一部の実施形態では、当該抗体の有効量は、単回投与で投与されてもよい。一部の実施形態では、当該抗体の有効量は、ある期間にわたる複数回の投与で投与されてもよい。投与のタイミングは、担当医師の判断内にあり、患者の臨床状態に依存する。個々のニーズは変化する一方で、特定の疾患または状態に対する所与の抗体(例えば、一特異性または二特異性)の有効量の最適範囲の決定は、当業者の技術範囲内にある。有効量とは、治療的または予防的な利益を提供する量を意味する。投与される用量は、レシピエントの年齢、健康状態および体重、もしあれば併用治療の種類、治療頻度、および望ましい効果の性質に依存する。一部の実施形態では、ヘテロ多量体抗体または当該抗体を含む組成物の有効量は、非経口投与される。一部の実施形態では、投与は、静脈内投与であってもよい。一部の実施形態では、投与は、腫瘍内注射により直接行われてもよい。
【0211】
一部の実施形態では、本明細書に提供される抗CD70抗体は、診断目的で使用されてもよく、そうしたアッセイにおいて、サンプル中(例えば免疫組織化学的アッセイ)、または患者中のCD70タンパク質が特定される。
【0212】
組成物
一つの態様では、薬学的に許容可能な担体中において、上述の本発明の抗体(一特異性または二特異性)またはその一部を含む医薬組成物を提供する。ある実施形態では、本発明のポリペプチドは、中性型(両性イオン型を含む)で、または陽性荷電種もしくは陰性荷電種として存在してもよい。一部の実施形態では、ポリペプチドは対イオンと錯体化され、「薬学的に許容可能な塩」を形成してもよく、それらは、一つまたは複数のポリペプチドと、一つまたは複数の対イオンを含む錯体と呼称され、この場合において対イオンは、薬学的に許容可能な無機および有機の酸ならびに塩基から誘導される。
【0213】
抗体(例えば、一特異性または二特異性)またはその部分は、単独で投与されてもよく、または本発明の一つもしくは複数の他のポリペプチドと併用されて、または一つもしくは複数の他の薬剤と併用されて(またはそれらの任意の組み合わせとして)投与されてもよい。ゆえに本発明の医薬組成物、方法および使用は、以下に詳述されるように他の活性剤との組み合わせ(共投与)の実施形態も包含する。
【0214】
本明細書において使用される場合、本発明の抗体と一つまたは複数の他の治療剤に関して、「共投与」、「共投与される」および「併用される」という用語は、以下を意味することが意図され、および以下を指し、以下を含む:(i)当該構成要素が、単一剤型中に一緒に製剤化され、当該構成要素が実質的に同時に当該患者に放出される場合、治療の必要のある患者への本明細書に開示される抗体および治療剤の当該組み合わせの同時投与;(ii)当該構成要素が互いに別個の剤型に別々に製剤化され、当該患者に実質的に同時に摂取され、そのとき当該構成要素が当該患者に、実質的に同時に放出される場合、治療の必要のある患者への本明細書に開示される抗体および治療剤の当該組み合わせの実質的な同時投与;(iii)当該構成要素が互いに別個の剤型に別々に製剤化され、各投与の間に意義のある間隔を置いて当該患者に連続するときに摂取され、そのとき当該構成要素が当該患者に、実質的に異なるときに放出される場合、治療の必要のある患者への本明細書に開示される抗体および治療剤の当該組み合わせの連続投与;および(iv)当該構成要素が、制御された様式で当該構成要素を放出する単一剤型中に一緒に製剤化され、当該患者に同じときに、および/もしくは異なるときに、同時に、連続して、ならびに/または重複して放出され、この場合において各部分は、同じ経路または異なる経路により投与され得る場合、治療の必要のある患者への本明細書に開示される抗体および治療剤の当該組み合わせの連続投与。
【0215】
概して、本明細書に開示される抗体(一特異性または二特異性)またはその部分は、一つまたは複数の薬学的に許容可能な賦形剤と関連付けられた製剤としての投与に適している。本明細書で使用される「賦形剤」という用語は、本発明の化合物以外の任意の成分を記載するために使用される。賦形剤の選択は、例えば特定の投与様式、可溶性および安定性に対する当該賦形剤の効果、および剤型の性質などの因子に大きく依存する。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容可能な賦形剤」とは、生理学的に適合性のあるすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的に許容可能な賦形剤のいくつかの例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、およびそれらに類するもの、ならびにそれらの組み合わせである。多くの場合において、例えば糖類、例えばメタノールなどのポリアルコール、ソルビトール、または塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に含むことが好ましいであろう。薬学的に許容可能な物質の追加的な例は、湿潤剤、または抗体の保存可能期間または有効性を高める例えば湿潤剤もしくは乳化剤、保存剤または緩衝剤などの少量の補助物質である。
【0216】
本発明の医薬組成物、およびその調製方法は、当業者には容易に明白となるであろう。そのような組成物およびその調製方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th Edition(Mack Publishing Company,1995)に見出され得る。医薬組成物は、GMP条件下で製造されることが好ましい。
【0217】
本発明の医薬組成物は、単回単位用量として、または複数の単回単位用量として、大量に調製され、パッケージングされ、または販売されてもよい。本明細書で使用する「単位用量」とは、所定量の活性成分を含む医薬組成物の個別的な量のことである。活性成分の量は概して対象に投与されるであろう活性成分の用量と等しく、またはそうした用量の好都合な割合、例えばそうした用量の半分または3分の1などである。当分野に受容されるペプチド、タンパク質または抗体の任意の投与方法が、本明細書に開示されるヘテロ二量体タンパク質およびその部分に対して、適切に採用され得る。
【0218】
本発明の医薬組成物は、典型的には非経口投与に適している。本明細書において使用される場合、医薬組成物の「非経口投与」は、対象の組織に身体的な穴を形成させることを特徴とする任意の投与経路、および組織中の当該穴を通じた医薬組成物の任意の投与経路を含み、したがって一般的に、血流、筋肉または内部臓器内への直接的な投与がもたらされる。ゆえに非経口投与としては限定されないが、組成物の注射による医薬組成物の投与、外科的切開を通じた組成物の適用による医薬組成物の投与、組織貫通性の非外科的創傷を通じた組成物の適用による医薬組成物の投与などが挙げられる。特に、非経口投与は、限定されないが、皮下、腹腔内、筋肉内、胸骨内、静脈内、動脈内、くも膜下腔内、脳室内、尿道内、頭蓋内、滑液嚢内の注射または点滴、および腎臓透析点滴法を含むことが予期される。好ましい実施形態としては、静脈内経路および皮下経路が挙げられる。
【0219】
非経口投与に適した医薬組成物の製剤は、典型的には概して、例えば滅菌水または滅菌等張生理食塩水などの薬学的に許容可能な担体と組み合わせた活性成分を含む。そうした製剤は、ボーラス投与または連続投与に適した形態で調製され、パッケージされ、または販売されてもよい。注射用製剤は、例えばアンプル、または保存剤を含む複数投与量容器での単位剤型で調製され、パッケージされ、または販売されてもよい。非経口投与用製剤としては限定されないが、油状ビヒクルもしくは水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、エマルション、ペーストなどが挙げられる。そうした製剤は、限定されないが、懸濁剤、安定剤、または分散剤をはじめとする一つまたは複数の追加の成分をさらに含んでもよい。非経口投与用製剤の一つの実施形態では、活性成分は、適切なビヒクル(例えば、滅菌された発熱物質を含まない水)を用いた再構成用の乾燥(すなわち粉末または顆粒)形態で提供され、その後、再構成された組成物が非経口投与される。非経口製剤は、例えば塩、炭水化物および緩衝剤(好ましくは3~9のpHまで)などの賦形剤を含有し得る水性溶液も含むが、一部の応用に対しては、滅菌非水溶液として、または例えば滅菌された発熱物質を含まない水などの適切なビヒクルと併せて使用される乾燥型として、より適切に製剤化されてもよい。非経口投与の形態の例としては、例えば水性プロピレングリコールまたはデキストロース溶液などの滅菌水溶液での溶液または懸濁液が挙げられる。そうした剤形は、所望の場合、適切に緩衝されることができる。有用な他の非経口投与用製剤としては、微結晶形態の活性成分を含む製剤、またはリポソーム調製物が挙げられる。非経口投与用の製剤は、即時放出および/または調整放出であるように製剤化されてもよい。調整放出製剤には、制御放出製剤、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス型放出製剤、標的化放出製剤、およびプログラム化放出製剤が含まれる。例えば一つの例では、滅菌注射溶液は、必要に応じて上記に列挙される成分のうちの一つまたは組み合わせと、適切な溶媒中での必要な量の例えば二特異性抗体などのヘテロ二量体タンパク質を組み合わせ、その後、ろ過滅菌されることにより調製され得る。概して、分散液は、活性化合物を、塩基性分散媒を含有する滅菌ビヒクル、および上に列記される物質から必要とされる他の成分と組み合わせることにより調製される。滅菌注射溶液の調製用の滅菌粉末の場合には、好ましい調製方法は、真空乾燥法および凍結乾燥法であり、それら方法により、従前に滅菌ろ過されたその溶液から、活性成分と任意の追加の所望の成分の粉末が得られる。例えばレシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には必要な粒子サイズを維持することにより、および界面活性剤の使用により、適切な溶液の流動性が維持され得る。注射用組成物の持続的吸収は、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンなどの吸収を遅延させる剤を組成物中に含有することによりもたらされ得る。
【0220】
投薬レジメンは、最適な望ましい応答をもたらすように調整されてもよい。例えば単回ボーラスを投与してもよく、数回に分けられた投与量を経時的に投与してもよく、または治療状況の要件に示されるように投与量を相対的に減少または増加させてもよい。投与の簡易性および用量の均一性のために、単位剤型で非経口組成物を製剤化することが特に有益である。本明細書において使用される場合、単位剤型とは、治療される患者/対象に対する単位形態の用量として適合された、物理的に別個の単位を指す。各単位は、必要な薬学的担体と関連付けられて、望ましい治療効果を生じさせるよう算出された所定量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤型の仕様は概して、(a)化学療法剤の固有の特性および達成される特定の治療的効果または予防的効果、および(b)個体の治療感受性に関し、当該活性化合物の調合分野に内在する制限により決定され、および直接的に依存する。
【0221】
ゆえに当業者であれば、本明細書に提供される開示内容に基づいて、投与量および投薬レジメンが、当該治療分野に公知の方法に従い調整されることを認識するであろう。すなわち、最大許容投与量は容易に確立されることができ、患者に検出可能な治療利益をもたらす有効量も、患者に検出可能な治療利益をもたらす各剤の投与に関する時間的要件と同様に決定され得る。したがって、特定の投与量および投薬レジメンが本明細書に例示されているが、これら例示は、本発明の実施において患者に提供され得る投与量および投薬レジメンを限定することはない。
【0222】
用量の値は、軽減される状態のタイプおよび重大度で変化する場合があり、単回投与または複数回投与を含む場合があることに注意されたい。任意の特定の対象について、個々の必要性、および組成物の投与を実施または監督する者の専門的判断に従って、特定の投薬レジメンを経時的に調整すべきであり、本明細書に記載の用量範囲は、単なる例示であって、特許請求される組成物の範囲または実施を限定するものではないことがさらに理解される。さらに、本発明の組成物を用いた投薬レジメンは、疾患のタイプ、患者の年齢、体重、性別、医学的状態、状態の重大度、投与経路、および採用される特定の抗体を含む、様々な因子に基づくものであり得る。従って、投薬レジメンは大きく変化することができ、しかし標準的な方法を使用して日常的に決定することができる。例えば、薬物動態パラメータまたは薬力学的パラメータに基づいて投与量が調節されてもよく、そうしたパラメータは、例えば毒性作用および/または実験値などの臨床効果を含み得る。ゆえに本発明は、当業者によって決定される同一患者内での用量漸増を包含する。適切な用量およびレジメンの決定は関連分野において公知であり、本明細書に開示される教示を考慮することで当業者により包含されることが理解されるであろう。
【0223】
概して、本明細書に開示される抗体(一特異性または二特異性)の投与に関し、候補用量が毎日、毎週、隔週、3週毎、4週毎、5週毎、6週毎、7週毎、8週毎、10週毎、12週毎、または12週毎以上で投与され得る。数日以上にわたる反復投与に関し、状態に応じて、症状の望ましい抑制が発生するまで、または充分な治療レベルが達成されて、例えば癌に関連した症状が減少するまで、治療が継続される。この治療法の進行は、従来的な技術およびアッセイにより簡単に監視される。投薬レジメン(使用される抗FLT一特異性抗体または二特異性抗体を含む)は、経時的に変化することができる。
【0224】
一部の実施形態では、候補用量は、上述の因子に応じて、1μg/kgから30μg/kg~300μg/kg~3mg/kg、~30mg/kg、~100mg/kg以上のおよそいずれかの範囲の用量で、毎日投与される。例えば、約0.01mg/kg、約0.03mg/kg、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、および約25mg/kgの1日投与量が用いられてもよい。
【0225】
一部の実施形態では、候補用量は、上述の因子に応じて、1μg/kgから30μg/kg~300μg/kg~3mg/kg、~30mg/kg、~100mg/kg以上のおよそいずれかの範囲の用量で、毎週投与される。例えば、約0.01mg/kg、約0.03mg/kg、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約25mg/kg、および約30mg/kgの毎週投与量が用いられてもよい。
【0226】
一部の実施形態では、候補用量は、上述の因子に応じて、1μg/kgから30μg/kg~300μg/kg~3mg/kg、~30mg/kg、~100mg/kg以上のおよそいずれかの範囲の用量で、隔週投与される。例えば、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約25mg/kg、および約30mg/kgの隔週投与量が用いられてもよい。
【0227】
一部の実施形態では、候補用量は、上述の因子に応じて、1μg/kgから30μg/kg~300μg/kg~3mg/kg、~30mg/kg、~100mg/kg以上のおよそいずれかの範囲の用量で、3週間毎に投与される。例えば、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、および約50mg/kgの3週間毎の投与量が用いられてもよい。
【0228】
一部の実施形態では、候補用量は、上述の因子に応じて、1μg/kgから30μg/kg~300μg/kg~3mg/kg、~30mg/kg、~100mg/kg以上のおよそいずれかの範囲の用量で、毎月または4週間毎に投与される。例えば、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、および約50mg/kgの毎月の投与量が用いられてもよい。
【0229】
他の実施形態では、候補用量は、上述の因子に応じて、約0.01mg~約1200mg以上の範囲の用量で、毎日投与される。例えば、約0.01mg、約0.1mg、約1mg、約10mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、または約1200mgの1日投与量が用いられてもよい。
【0230】
他の実施形態では、候補用量は、上述の因子に応じて、約0.01mg~約2000mg以上の範囲の用量で、毎週投与される。例えば、約0.01mg、約0.1mg、約1mg、約10mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、約1800mg、約1900mg、または約2000mgの毎週投与量が用いられてもよい。
【0231】
他の実施形態では、候補用量は、上述の因子に応じて、約0.01mg~約2000mg以上の範囲の用量で、2週間毎に投与される。例えば、約0.01mg、約0.1mg、約1mg、約10mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、約1800mg、約1900mg、または約2000mgの隔週投与量が用いられてもよい。
【0232】
他の実施形態では、候補用量は、上述の因子に応じて、約0.01mg~約2500mg以上の範囲の用量で、3週間毎に投与される。例えば、約0.01mg、約0.1mg、約1mg、約10mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、約1800mg、約1900mg、約2000mg、約2100mg、約2200mg、約2300mg、約2400mg、または約2500mgの3週間毎の投与量が用いられてもよい。
【0233】
他の実施形態では、候補用量は、上述の因子に応じて、約0.01mg~約3000mg以上の範囲の用量で、4週間毎または1か月毎に投与される。例えば、約0.01mg、約0.1mg、約1mg、約10mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、約1800mg、約1900mg、約2000mg、約2100mg、約2200mg、約2300mg、約2400mg、約2500、約2600mg、約2700mg、約2800mg、約2900mg、または約3000mgの毎月投与量が用いられてもよい。
【0234】
キット
本発明はまた、本方法における使用のためのキットを提供する。本発明のキットは、一つまたは複数の容器を含み、当該容器は、本明細書に記載の抗体(例えば、一特異性または二特異性)、および本明細書に記載の方法のいずれかに従う使用に関する説明書を含有する。概してこれらの説明書は、上述の治療的処置に関する抗体タンパク質の投与に関する説明を含む。
【0235】
本明細書に記載の抗体(例えば、一特異性または二特異性)の使用に関する説明書は概して、意図される処置に対する用量、投薬スケジュールおよび投与経路に関する情報を含む。容器は、単位投与量、バルクパッケージ(例えば複数投与量のパッケージ)またはサブ単位投与量であってもよい。本発明のキット中に供給される説明書は多くの場合、ラベルまたは添付文書(例えばキットに含まれる紙シート)上の書面の説明書であるが、機械読み取り可能な説明書(例えば、磁気記憶ディスクまたは光学式記憶ディスク上で実行される説明書)も受容可能である。
【0236】
本発明のキットは適切な梱包材料中にある。適切な梱包材料としては限定されないが、バイアル、ボトル、瓶、柔軟性のある梱包材料(例えば、密閉Mylarバッグまたはプラスチックバッグ)などが挙げられる。さらに例えば吸入器、経鼻投与デバイス(例えば、アトマイザー)、または例えばミニポンプなどの輸液用器具などの特定のデバイスと組み合わせた使用のための梱包材料も予期される。キットは、滅菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、皮下注射針により穿孔可能なストッパーを有する静脈注射用溶液バッグまたはバイアルであってもよい)。容器も、滅菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、皮下注射針により穿孔可能なストッパーを有する静脈注射用溶液バッグまたはバイアルであってもよい)。組成物中の活性剤の少なくとも一つは、二特異性抗体である。容器はさらに、第二の薬学的に活性な剤を含んでもよい。
【0237】
キットは任意で、例えば緩衝液および説明情報などの追加的な構成要素を提供してもよい。通常、キットは、容器と、当該容器上にある、もしくは当該容器と関連づけられたラベルまたは添付文書を含む。
【0238】
以下の実施例は、説明目的に対してのみ提供されており、本発明範囲を限定する意図は全くない。実際に、本明細書に示される、および本明細書に記載されるものに加えて本発明の様々な改変が前述の説明から当業者には明白であり、添付の請求の範囲内に含まれる。
【実施例0239】
実施例1:ヒトCD70の動態およびアフィニティ/37℃でのCD70抗体の相互作用の決定
本明細書に開示される抗CD70抗体の動態およびアフィニティは、Biacore T200表面プラズモン共鳴バイオセンサー(GE Lifesciences社、ニュージャージー州ピスカタウェイ)上で計測され得る。
【0240】
実施例2:CD70-CD3二特異性IgGをインビトロで使用したRCC細胞株のT細胞介在性殺傷
ヒト抗CD70抗体およびヒト抗CD3(h2B4-VH-hnps VL-TK(H2B4))抗体は、ヒトIgG2(配列番号279)のヒンジ領域中の223位、225位および228位(例えば、(C223EまたはC223R)、(E225EまたはE225R)、および(P228EまたはP228R))で、およびCH3領域中の409位または368位(例えば、K409RまたはL368E(EUナンバリングスキーム))で、二特異性交換のために、一つのアーム上でEEEEで操作され、他方のアーム上でRRRRで操作されたヒトIgG2dA_D265Aとして発現される。CD70/CD3二特異性抗体も、265位(EUナンバリングスキーム)でDからAへの変異を有する。
【0241】
ヒトPBMC由来のCD3+T細胞は、Pan T Cell Isolation Kit、human(Miltenyi社、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用してネガティブ選択される。標的発現(786-O)細胞およびCD3+T細胞は、それぞれ20000細胞および100000細胞/ウェルで透明なU底プレート上に播種される。細胞は、8倍連続希釈された二特異性抗体で処置される。RCC細胞の枯渇は、処置の24時間後のフローサイトメトリー解析により決定される。細胞枯渇は、対照処理細胞との対照により測定される。EC50は、Prismソフトウェアにより算出される。
【0242】
実施例3:CD70-CD3二特異性IgGは、RCC皮下異種移植片モデルにおいて、腫瘍除去を誘導する
NOD scidガンマ(NSG)マウスに、786-O腫瘍を皮下移植し、腫瘍体積が200mm3に達した時点で、マウスに2000万個の拡張T細胞をそれぞれ腹腔内に投与する。2日後、抗CD70二特異性抗体を300、100または30ug/mLで尾静脈注射を介して静脈内投与し、最適な二特異性抗体の投与量を決定する。
【0243】
材料および方法
NOD scidガンマ(NSG)マウスの毛を剃って準備して、右脇腹上に腫瘍を皮下移植する。CD70を発現することが知られている786-O腫瘍細胞を、10%FBSを補充したRPMI中で拡張させる。0日目に786-O細胞を無血清RPMI中に必要濃度で再懸濁し、動物1匹当たり500万個の細胞を注射する。腫瘍細胞は、動物1匹当たり、100uLのMatrigel(Corning社)と混合した100uLの無血清RPMI中で皮下注射する。腫瘍移植後、ただちにすべての動物に対し、0日目の基準体重が記録される。腫瘍は、Digimatic Calipers(Mitutoyo社)を使用して9日目に始まり週に2回測定され、体重が記録される。14日目、腫瘍が200mm3に達したとき(標準誤差8.39)40匹の腫瘍担持マウスを各群当たり10匹の4群に無作為化する。T細胞を溶解し、拡張させて、その後、無血清RPMI中に必要濃度で再懸濁し、動物1匹当たり2000万個のT細胞を注射する。T細胞は、動物1匹当たり、200uLの無血清RPMI中で腹腔内注射される。2日後、動物1匹当たり、300、100、または30ug/mLで尾静脈を介して二特異性抗体が静脈内投与される。非処置群が試験エンドポイント(1500mm3の腫瘍体積)に達するまで、週に2回、腫瘍が測定され、体重が記録される。
【0244】
腫瘍体積(平均および誤差SEM)をGraphPad Prism上にプロットし、一元配置分散分析を使用して反復測定結果を用いて統計が算出される。
【0245】
開示された教示は、様々な用途、方法、キットおよび組成物を参照して説明されてきたが、本明細書の教示および以下の特許請求される発明から逸脱することなく、様々な変更および修正を行うことができることが理解されよう。前述の実施例は、開示された教示をより良く図示するために提供されており、本明細書に提示される教示の範囲を制限することを意図していない。本教示はこれらの例示的実施形態の観点から説明されてきたが、当業者は、これらの例示的な実施形態の多数の変形および修正が、過度の実験を伴わずに可能であることを容易に理解するであろう。こうした変形および修正はすべて、現在の教示の範囲内である。
【0246】
本明細書に引用されたすべての参照文献であって、特許、特許出願、論文、教科書などを含む参照文献、およびそこに引用される参照文献は、それらがまだ参照されていない範囲で、その全体が参照により本明細書に援用される。組み込まれた文献および類似の資料のうちの一つ以上が、本出願とは異なるものであるか、またはこれに矛盾する場合、定義された用語、用語使用、記載された技術、またはこれに類するものを含むがこれに限定されないが、本出願が制御する。
【0247】
前述の説明および実施例は、本発明のある特定の実施形態を詳細に説明し、発明者によって意図される最良のモードを記述する。しかしながら、本文中の前述がどれだけ詳細に記載されようとも、本発明は多くの方法で実施されてもよく、本発明は添付の特許請求の範囲およびその任意の均等物に従って解釈されるべきであることが理解される。