(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123825
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】フランジ付きドリル、及びフランジ付きドリルのホルダ
(51)【国際特許分類】
B23B 51/06 20060101AFI20240905BHJP
B23B 51/00 20060101ALI20240905BHJP
B23B 51/12 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B23B51/06 C
B23B51/00 L
B23B51/00 T
B23B51/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031556
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 翔一
(72)【発明者】
【氏名】臼井 正洋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晃
【テーマコード(参考)】
3C037
【Fターム(参考)】
3C037DD01
3C037DD07
(57)【要約】
【課題】長く伸びた切屑がドリルに巻き付くことを安定して抑制できるフランジ付きドリル、及びフランジ付きドリルのホルダを提供する。
【解決手段】中心軸Oを中心として軸方向に延びるフランジ付きドリル10Aであって、先端部に切刃7が配置されるボディ11と、ボディ11の後端側に配置されるシャンク12と、軸方向においてボディ11とシャンク12との間に配置され、ボディ11及びシャンク12よりも外径寸法が大きいフランジ13と、フランジ付きドリル10Aの内部を延びるクーラント孔14と、を備え、クーラント孔14は、フランジ13の先端側を向く面13bに開口し、ボディ11の外周部またはその径方向外側に向けてクーラントを噴射するフランジ噴射孔32を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心として軸方向に延びるフランジ付きドリルであって、
先端部に切刃が配置されるボディと、
前記ボディの後端側に配置されるシャンクと、
軸方向において前記ボディと前記シャンクとの間に配置され、前記ボディ及び前記シャンクよりも外径寸法が大きいフランジと、
前記フランジ付きドリルの内部を延びるクーラント孔と、を備え、
前記クーラント孔は、前記フランジの先端側を向く面に開口し、前記ボディの外周部またはその径方向外側に向けてクーラントを噴射するフランジ噴射孔を有する、
フランジ付きドリル。
【請求項2】
前記ボディは、前記ボディの先端面及び外周面に開口し、前記先端面から後端側に延びる切屑排出溝を有し、
前記フランジ噴射孔は、前記切屑排出溝の内部、前記切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面と前記外周面とが接続される稜線部に配置されるリーディングエッジ、または前記外周面に向けて開口する、
請求項1に記載のフランジ付きドリル。
【請求項3】
前記クーラント孔は、さらに、前記ボディの先端部にクーラントを噴射する切削部位噴射孔を有する、
請求項1または2に記載のフランジ付きドリル。
【請求項4】
前記フランジ噴射孔は、互いに異なる向きに延び、連続する1つの流路を形成するように連結される複数の連結孔部を有する、
請求項1または2に記載のフランジ付きドリル。
【請求項5】
前記複数の連結孔部のうち、前記フランジの先端側を向く面に開口する最先端の連結孔部の内径寸法は、他の連結孔部の内径寸法よりも小さい、
請求項4に記載のフランジ付きドリル。
【請求項6】
前記フランジ噴射孔は、前記フランジ付きドリルの内部を湾曲して延びる湾曲孔部を有する、
請求項1または2に記載のフランジ付きドリル。
【請求項7】
前記クーラント孔は、前記クーラント孔の流路の一部を構成する第1貯留室を有し、
前記第1貯留室は、少なくとも前記シャンクの内部に配置され、前記フランジ噴射孔に接続される、
請求項1または2に記載のフランジ付きドリル。
【請求項8】
前記クーラント孔は、前記クーラント孔の流路の一部を構成する第2貯留室を有し、
前記第2貯留室は、少なくとも前記フランジの内部に配置され、前記フランジ噴射孔に接続される、
請求項1または2に記載のフランジ付きドリル。
【請求項9】
前記切刃を有する切削チップが前記ボディの先端部に着脱可能に取り付けられる、
請求項1または2に記載のフランジ付きドリル。
【請求項10】
中心軸を中心として軸方向に延びるフランジ付きドリルのホルダであって、
切刃を有する切削チップが先端部に着脱可能に取り付けられるボディと、
前記ボディの後端側に配置されるシャンクと、
軸方向において前記ボディと前記シャンクとの間に配置され、前記ボディ及び前記シャンクよりも外径寸法が大きいフランジと、
前記ホルダの内部を延びるクーラント孔と、を備え、
前記クーラント孔は、前記フランジの先端側を向く面に開口し、前記ボディの外周部またはその径方向外側に向けてクーラントを噴射するフランジ噴射孔を有する、
フランジ付きドリルのホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジ付きドリル、及びフランジ付きドリルのホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載のフランジ付きドリルが知られている。フランジ付きドリルは、先端部に切刃が配置されるボディと、ボディの後端側に配置されるシャンクと、ボディとシャンクとの間に配置され、ボディ及びシャンクよりも外径寸法が大きいフランジと、を備える。
【0003】
シャンクは、工作機械の主軸、主軸に装着される円筒状等のアタッチメント、またはボール盤のチャックなど(以下、単に主軸等と呼ぶ)に把持される。フランジの後端面は、主軸等の先端面に接触する。これにより、穴あけ加工時の軸方向後端側へ向けたスラスト力を、フランジを介して主軸等によって受けることが可能になり、穴あけ加工を安定して行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のフランジ付きドリル(以下、単にドリルと呼ぶ場合がある)では、下記の課題を有していた。
ドリルで被削材に貫通孔を穴あけ加工する際、切刃の径方向内端部に位置するシンニング刃により加工されて生じる切屑は、細かく分断されやすい傾向がある。一方、本願の
図21に示すように、シンニング刃101が被削材Mを貫通した後、シンニング刃101よりも径方向外側に位置する切刃部分102により加工されて生じる切屑Cは、糸状(紐状)に長く伸びやすい傾向がある。
【0006】
長く伸びた切屑Cは、ドリル100が中心軸O回りに回転することで、ドリル100に巻き付きやすくなる。伸びた切屑Cがドリル100に巻き付いてしまうと、切屑Cによって被削材Mが傷付けられたり、ドリル100が折損するなどして、穴あけ加工を継続することが困難となる。また、巻き付いた切屑Cをドリル100から取り外す作業は面倒であり、多くの時間を要する。特に、ドリル100の刃径が大きくなるほど、糸状の切屑Cの長さは長くなるため、上記問題が顕著となりやすい。
【0007】
そこで、例えば、主軸等の先端面からクーラントをドリル外周部に向けて噴射することで伸びた切屑に当て、切屑の巻き付きを防止する手法が考えられる。しかしながら、フランジ付きドリルの場合、主軸等の先端面の一部または全部をフランジが先端側から覆う構成であるため、上記手法を採用することが難しい。
【0008】
本発明は、長く伸びた切屑がドリルに巻き付くことを安定して抑制できるフランジ付きドリル、及びフランジ付きドリルのホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0010】
〔本発明の態様1〕
中心軸を中心として軸方向に延びるフランジ付きドリルであって、先端部に切刃が配置されるボディと、前記ボディの後端側に配置されるシャンクと、軸方向において前記ボディと前記シャンクとの間に配置され、前記ボディ及び前記シャンクよりも外径寸法が大きいフランジと、前記フランジ付きドリルの内部を延びるクーラント孔と、を備え、前記クーラント孔は、前記フランジの先端側を向く面に開口し、前記ボディの外周部またはその径方向外側に向けてクーラントを噴射するフランジ噴射孔を有する、フランジ付きドリル。
【0011】
本発明のフランジ付きドリルでは、クーラント孔がフランジ噴射孔を有しており、フランジ噴射孔は、フランジの先端側を向く面に開口している。クーラントは、フランジ噴射孔からボディの外周部またはその径方向外側の領域(例えばボディの外周部と隣接する領域など)に向けて噴射される。
【0012】
穴あけ加工の貫通時などに生じる長く伸びた糸状の切屑が、ドリルの回転等によってドリルに巻き付こうとしても、フランジ噴射孔から噴射されるクーラントによって、巻き付き始めた切屑が強制的に取り除かれたり、切屑の巻き付きそのものが抑制される。これにより、良好な穴あけ加工を安定して継続することが可能となり、切削効率が向上する。
【0013】
以上より本発明によれば、長く伸びた切屑がドリルに巻き付くことを安定して抑制できる。被削材が傷付けられたり、ドリルが折損するなどの不具合を防止することができる。穴あけ加工の精度を良好に維持することができ、穴あけ効率が高められる。
【0014】
〔本発明の態様2〕
前記ボディは、前記ボディの先端面及び外周面に開口し、前記先端面から後端側に延びる切屑排出溝を有し、前記フランジ噴射孔は、前記切屑排出溝の内部、前記切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面と前記外周面とが接続される稜線部に配置されるリーディングエッジ、または前記外周面に向けて開口する、態様1に記載のフランジ付きドリル。
【0015】
この場合、フランジ噴射孔は、切屑排出溝の内部(ドリル回転方向を向く壁面など)、リーディングエッジ、またはボディの外周面に向けて、クーラントを噴射する。穴あけ加工により生成される長く伸びた切屑は、リーディングエッジに沿うように排出されていくため、上記構成によって、クーラントで効率よく切屑を処理でき、切屑のドリルへの巻き付きをより安定して抑制することができる。
【0016】
〔本発明の態様3〕
前記クーラント孔は、さらに、前記ボディの先端部にクーラントを噴射する切削部位噴射孔を有する、態様1または2に記載のフランジ付きドリル。
【0017】
この場合、クーラント孔が、上述したフランジ噴射孔の他に、切削部位噴射孔を有している。フランジ噴射孔によってドリルへの切屑の巻き付きを抑制しつつ、切削部位噴射孔から噴射されるクーラントによって、切刃及び加工穴等の切削部位を冷却・潤滑することができる。このため、良好な穴あけ加工を安定して継続することができる。
【0018】
〔本発明の態様4〕
前記フランジ噴射孔は、互いに異なる向きに延び、連続する1つの流路を形成するように連結される複数の連結孔部を有する、態様1から3のいずれか1つに記載のフランジ付きドリル。
【0019】
この場合、フランジ噴射孔が、1つの流路をなすように連設される複数の連結孔部を有している。このため、複数の連結孔部のうち、クーラントの噴射口となる最先端の連結孔部(流路末端に配置される1つの連結孔部)が延びる向き、すなわちクーラントの噴射方向を、より精度よく切屑に向けることが可能である。また、フランジ噴射孔の配置(レイアウト)の自由度を高めることができる。フランジ噴射孔から噴射されるクーラントをより効率よく伸びた切屑に当てることができ、切屑がドリルに巻き付くことを安定して抑制できる。
【0020】
〔本発明の態様5〕
前記複数の連結孔部のうち、前記フランジの先端側を向く面に開口する最先端の連結孔部の内径寸法は、他の連結孔部の内径寸法よりも小さい、態様4に記載のフランジ付きドリル。
【0021】
この場合、フランジ噴射孔内を流れるクーラントは、最先端の連結孔部を通過するときに流速がより高められる。すなわち、クーラントの噴射速度を十分に高めた状態として、最先端の連結孔部から伸びた切屑へクーラントを当てることができるため、切屑がドリルに巻き付くことをより安定して抑制できる。
【0022】
〔本発明の態様6〕
前記フランジ噴射孔は、前記フランジ付きドリルの内部を湾曲して延びる湾曲孔部を有する、態様1から5のいずれか1つに記載のフランジ付きドリル。
【0023】
この場合、フランジ噴射孔が湾曲孔部を有しているので、フランジ噴射孔の孔形状(流路形状)の自由度がより高められ、この湾曲孔部を通して噴射されるクーラントの噴射方向を、より精度よく切屑に向けることが可能である。また、湾曲孔部内を流通するクーラントの圧力損失が低減され、クーラントの噴射圧や噴射速度を高めることができる。このため、切屑がドリルに巻き付くことをより安定して抑制できる。なお、このような湾曲孔部は、例えば三次元造形機等を用いてドリルを製造することにより、成形可能である。
【0024】
〔本発明の態様7〕
前記クーラント孔は、前記クーラント孔の流路の一部を構成する第1貯留室を有し、前記第1貯留室は、少なくとも前記シャンクの内部に配置され、前記フランジ噴射孔に接続される、態様1から6のいずれか1つに記載のフランジ付きドリル。
【0025】
この場合、クーラント孔がその流路の一部に第1貯留室を有している。第1貯留室は、少なくともシャンクの内部に形成される中空状の室であり、クーラントを貯留する。このような第1貯留室が設けられることで、クーラントの噴射量を安定して高めることができ、フランジ噴射孔による上述した作用効果がより安定して奏功される。
【0026】
〔本発明の態様8〕
前記クーラント孔は、前記クーラント孔の流路の一部を構成する第2貯留室を有し、前記第2貯留室は、少なくとも前記フランジの内部に配置され、前記フランジ噴射孔に接続される、態様1から7のいずれか1つに記載のフランジ付きドリル。
【0027】
この場合、クーラント孔がその流路の一部に第2貯留室を有している。第2貯留室は、少なくともフランジの内部に形成される中空状の室であり、クーラントを貯留する。このような第2貯留室が設けられることで、クーラントの噴射量を安定して高めることができ、フランジ噴射孔による上述した作用効果がより安定して奏功される。
【0028】
〔本発明の態様9〕
前記切刃を有する切削チップが前記ボディの先端部に着脱可能に取り付けられる、態様1から8のいずれか1つに記載のフランジ付きドリル。
【0029】
この場合、フランジ付きドリルは、刃先交換式ドリルである。本発明は、刃先交換式のフランジ付きドリルに好適に用いることができる。
【0030】
〔本発明の態様10〕
中心軸を中心として軸方向に延びるフランジ付きドリルのホルダであって、切刃を有する切削チップが先端部に着脱可能に取り付けられるボディと、前記ボディの後端側に配置されるシャンクと、軸方向において前記ボディと前記シャンクとの間に配置され、前記ボディ及び前記シャンクよりも外径寸法が大きいフランジと、前記ホルダの内部を延びるクーラント孔と、を備え、前記クーラント孔は、前記フランジの先端側を向く面に開口し、前記ボディの外周部またはその径方向外側に向けてクーラントを噴射するフランジ噴射孔を有する、フランジ付きドリルのホルダ。
【0031】
本発明のフランジ付きドリルのホルダによれば、上述したフランジ付きドリルと同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の前記態様のフランジ付きドリル、及びフランジ付きドリルのホルダによれば、長く伸びた切屑がドリルに巻き付くことを安定して抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、第1実施形態のフランジ付きドリルを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のフランジ付きドリルを示す正面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態のフランジ付きドリルを示す側面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態のフランジ付きドリルを示す側面図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態のフランジ付きドリルを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態のフランジ付きドリルを示す正面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態のフランジ付きドリルを示す側面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態のフランジ付きドリルを示す側面図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態のフランジ付きドリルを示す斜視図である。
【
図10】
図10は、第4実施形態のフランジ付きドリルを示す斜視図である。
【
図11】
図11は、第4実施形態のフランジ付きドリルを示す正面図である。
【
図12】
図12は、第4実施形態のフランジ付きドリルを示す側面図である。
【
図13】
図13は、第4実施形態のフランジ付きドリルを示す側面図である。
【
図14】
図14は、第5実施形態のフランジ付きドリルを示す斜視図である。
【
図15】
図15は、第5実施形態のフランジ付きドリルを示す正面図である。
【
図16】
図16は、第5実施形態のフランジ付きドリルを示す側面図である。
【
図17】
図17は、第5実施形態のフランジ付きドリルを示す側面図である。
【
図18】
図18は、第1変形例のフランジ付きドリル及びそのホルダの一部を示す断面図である。
【
図19】
図19は、第2変形例のフランジ付きドリル及びそのホルダの一部を示す断面図である。
【
図20】
図20は、第3変形例のフランジ付きドリル及びそのホルダの一部を示す側面図である。
【
図21】
図21は、従来のフランジ付きドリルで被削材を穴あけ加工したときの切屑の状態を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態のフランジ付きドリル10Aについて、
図1~
図4を参照して説明する。
図1~
図4に示すように、フランジ付きドリル10Aは、中心軸Oを中心として軸方向に延びるホルダ1と、ホルダ1に着脱可能に取り付けられる切削チップ2と、切削チップ2をホルダ1に固定する締結部材3と、を備える。すなわち、本実施形態のフランジ付きドリル10Aは、刃先交換式ドリルである。また、本実施形態において切削チップ2は、ドリルヘッドである。なお以下の説明では、フランジ付きドリル10Aを単にドリルや工具等と呼ぶ場合がある。
【0035】
フランジ付きドリル10Aは、中心軸Oを中心とする略円柱状をなしている。フランジ付きドリル10Aは、切削チップ2が配置されるボディ11と、シャンク12と、フランジ13と、クーラント孔14と、を備える。なおボディ11は、穴あけ有効部または切刃部等と言い換えてもよい。本実施形態ではホルダ1が、ボディ11のうち切削チップ2及び締結部材3以外の部分と、シャンク12と、フランジ13と、クーラント孔14と、を備える。ホルダ1は、単一の部材により一体に形成されている。ホルダ1は、例えば鋼製等である。
【0036】
ボディ11、フランジ13及びシャンク12は、中心軸Oを共通軸として互いに同軸に配置されている。ボディ11、フランジ13及びシャンク12は、中心軸Oが延びる方向に沿って、この順に並んで配置される。
【0037】
〔方向の定義〕
本実施形態では、フランジ付きドリル10Aの中心軸Oが延びる方向を軸方向と呼ぶ。フランジ付きドリル10Aは、軸方向に延びている。軸方向のうち、シャンク12からボディ11へ向かう方向を軸方向の先端側、または単に先端側と呼び、ボディ11からシャンク12へ向かう方向を軸方向の後端側、または単に後端側と呼ぶ。
【0038】
また、中心軸Oと直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Oに近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸Oから離れる方向を径方向外側と呼ぶ。
また、中心軸O回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。周方向のうち、穴あけ加工時にドリルが回転させられる方向をドリル回転方向Tと呼び、これとは反対の方向を、ドリル回転方向Tとは反対側、または反ドリル回転方向と呼ぶ。
【0039】
〔ホルダ〕
シャンク12は、中心軸Oを中心として軸方向に延びる柱状であり、具体的には円柱状である。シャンク12は、ボディ11及びフランジ13の後端側に配置される。シャンク12は、フランジ付きドリル10Aの後端側部分に配置される。シャンク12は、例えば、図示しない工作機械の主軸、主軸に装着される円筒状等のアタッチメント、またはボール盤のチャックなど(以下、主軸等と省略する)に着脱可能に取り付けられ、保持される。シャンク12が主軸等によってドリル回転方向Tに回転させられつつ、軸方向の先端側に移動させられることで、ドリルは被削材に切り込んで穴あけ加工を行う。
【0040】
フランジ13は、軸方向においてボディ11とシャンク12との間に配置される。フランジ13は、ボディ11及びシャンク12よりも外径寸法が大きい。フランジ13は、フランジ付きドリル10Aにおいて最も外径寸法が大きい部分である。フランジ13は、中心軸Oを中心とする円錐台状である。フランジ13の後端側を向く端面13aは、図示しない主軸等の先端面に接触する。端面13aは、中心軸Oと垂直な方向に拡がる円形リング状の平面である。フランジ13の先端側を向く面13bは、先端側へ向かうに従い縮径するテーパ面状をなしている。
【0041】
ボディ11は、中心軸Oを中心として軸方向に延びる柱状である。ボディ11は、切刃7を有する切削チップ2と、切削チップ2が着脱可能に取り付けられるチップ取付座16と、切屑排出溝15と、を備える。ボディ11は、切削チップ2によって被削材に切り込んで穴あけ加工を行い、加工穴に挿入される。
切削チップ2については、別途後述する。
【0042】
チップ取付座16は、ボディ11の先端部(ホルダ1の先端部)に配置されている。チップ取付座16は、軸方向の先端側を向く着座面17と、着座面17よりも先端側に突出し、ドリル回転方向Tを向く支持面18と、着座面17から軸方向の後端側に窪む嵌合穴19と、を有する。
【0043】
着座面17は、中心軸Oと垂直な方向に広がる平面状である。特に図示しないが、着座面17には、軸方向に延びる図示しない雌ネジ穴が開口する。雌ネジ穴は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態では雌ネジ穴が、周方向に等ピッチで一対設けられる。
【0044】
本実施形態では支持面18が、平面状である。支持面18は、軸方向から見て、径方向外側へ向かうに従いドリル回転方向Tに向けて延びる。また支持面18は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態では支持面18が、周方向に等ピッチで一対設けられる。
【0045】
嵌合穴19は、中心軸Oを中心とする有底穴状であり、具体的には、円穴状である。嵌合穴19は、着座面17に開口し、軸方向に延びる。また、嵌合穴19の周方向の一部は、切屑排出溝15内に開口している。
【0046】
切屑排出溝15は、ボディ11の先端面(切削チップ2の先端面21)及び外周面に開口し、この先端面から後端側に延びる。具体的に、切屑排出溝15は、ボディ11の先端面から後端側へ向かうに従い、ドリル回転方向Tとは反対側に向けて捩れて延びている。本実施形態では切屑排出溝15が、ボディ11、及びフランジ13の面13bにわたって配置されている。特に図示しないが、切屑排出溝15は、さらにフランジ13の外周面にまで配置されていてもよい。なお切屑排出溝15は、少なくともボディ11に配置されていればよいことから、フランジ13には配置されていなくてもよい。
【0047】
切屑排出溝15は、切屑排出溝15の先端部に配置されるヘッド切屑排出溝15aと、切屑排出溝15の先端部以外の部分に配置されるホルダ切屑排出溝15bと、を有する。ヘッド切屑排出溝15aは、切屑排出溝15のうち切削チップ2に配置される部分である。ホルダ切屑排出溝15bは、切屑排出溝15のうちホルダ1に配置される部分である。以下の説明では、ヘッド切屑排出溝15aまたはホルダ切屑排出溝15bを、単に切屑排出溝15と呼ぶ場合がある。
【0048】
また、切屑排出溝15は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられている。本実施形態では切屑排出溝15が、周方向において等ピッチで一対設けられている。
【0049】
また、切屑排出溝15のドリル回転方向Tを向く壁面とボディ11の外周面とが接続される稜線部には、リーディングエッジ20が配置されている。リーディングエッジ20は、切屑排出溝15が延びる向きに沿って延びる。具体的に、リーディングエッジ20は、軸方向の後端側へ向かうに従い、ドリル回転方向Tとは反対側に向けて捩れて延びている。リーディングエッジ20の数は、切屑排出溝15の数と同じである。
【0050】
クーラント孔14は、フランジ付きドリル10Aの内部を延びて形成されている。クーラント孔14は、ホルダ1の内部を延び、ホルダ1を貫通している。クーラント孔14には、図示しない主軸等を介して、切削油剤や圧縮エア等のクーラントが供給される。
【0051】
クーラント孔14は、第1貯留室31と、フランジ噴射孔32と、切削部位噴射孔33と、を有する。第1貯留室31、フランジ噴射孔32及び切削部位噴射孔33は、それぞれ、クーラント孔14の流路の一部を構成する。
【0052】
第1貯留室31は、シャンク12の内部に配置される。第1貯留室31は、中心軸Oを中心として軸方向に延びる円穴状をなしており、シャンク12の後端面12aに開口する。第1貯留室31は、シャンク12の内部に形成される中空の室であり、所定量以上のクーラントをその内部に貯留可能である。第1貯留室31は、フランジ噴射孔32及び切削部位噴射孔33に接続される。
【0053】
第1貯留室31の軸方向寸法は、シャンク12の軸方向寸法の1/2以上であり、本実施形態では2/3以上である。第1貯留室31の内径寸法は、シャンク12の外径寸法の1/2以上であり、本実施形態では2/3以上である。
【0054】
なお、特に図示しないが、第1貯留室31は、シャンク12の内部及びフランジ13の内部にわたって配置されていてもよい。さらに、第1貯留室31は、その一部がボディ11の内部にわたって配置されていてもよい。
第1貯留室31は、フランジ付きドリル10Aのうち少なくともシャンク12の内部に配置される。
【0055】
本実施形態において、フランジ噴射孔32は、第1貯留室31よりも先端側に配置される。フランジ噴射孔32は、シャンク12の先端部内及びフランジ13内にわたって延びている。フランジ噴射孔32の内径寸法は、第1貯留室31の内径寸法よりも小さい。フランジ噴射孔32は、第1貯留室31と接続される。具体的に、フランジ噴射孔32の後端部は、第1貯留室31の先端部に接続される。また、フランジ噴射孔32の先端部は、フランジ13の先端側を向く面13bに開口する。
【0056】
図2に示すように、フランジ噴射孔32の先端部つまり噴射口は、ボディ11よりも径方向外側に配置されている。本実施形態ではフランジ噴射孔32の噴射口が、第1貯留室31よりも径方向外側に配置されている。
【0057】
図1~
図4に示すように、フランジ噴射孔32は、ボディ11の外周部またはその径方向外側に向けてクーラントを噴射する。本実施形態では、フランジ噴射孔32の噴射口が、切屑排出溝15のねじれ角と平行に近い角度で延びており、切屑排出溝15と平行に近い角度でクーラントを噴射する。
【0058】
具体的に、フランジ噴射孔32は、切屑排出溝15の内部、リーディングエッジ20またはボディ11の外周面に向けて開口しており、切屑排出溝15の内部、リーディングエッジ20またはボディ11の外周面に向けて、クーラントを噴射する。より好ましくは、フランジ噴射孔32は、リーディングエッジ20周辺に向けて、クーラントを噴射する。
【0059】
フランジ噴射孔32は、互いに異なる向きに延び、連続する1つの流路を形成するように連結される複数の連結孔部32a,32b,…を有する。本実施形態では、2つの連結孔部32a,32bが連設されることにより、1つのフランジ噴射孔32が構成される。複数の連結孔部32a,32bは、それぞれ、直線状に延びる円孔状をなしている。
【0060】
複数の連結孔部32a,32bのうち、フランジ13の先端側を向く面13bに開口する最先端の連結孔部32aは、フランジ噴射孔32の噴射口を構成している。最先端の連結孔部32aは、軸方向の先端側へ向かうに従いドリル回転方向Tに向けて延びている。また、複数の連結孔部32a,32bのうち、最先端の連結孔部32a以外の他の連結孔部32bは、軸方向の先端側へ向かうに従い径方向外側に向けて延びている。連結孔部32aの後端部と、連結孔部32bの先端部とが、互いに連結(接続)される。
このため、本実施形態のフランジ噴射孔32は、屈曲状の流路に形成されている。
【0061】
最先端の連結孔部32aの内径寸法は、他の連結孔部32bの内径寸法よりも小さい。このため本実施形態において、クーラント孔14の内径寸法は、第1貯留室31、連結孔部32b、最先端の連結孔部32aの順に、段階的に小さくされている。
【0062】
フランジ噴射孔32は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられている。本実施形態ではフランジ噴射孔32が、周方向において等ピッチで一対設けられている。
【0063】
切削部位噴射孔33は、第1貯留室31よりも先端側に配置される。切削部位噴射孔33は、シャンク12の先端部内、フランジ13内及びボディ11内にわたって延びている。切削部位噴射孔33の内径寸法は、第1貯留室31の内径寸法よりも小さい。本実施形態では、切削部位噴射孔33の内径寸法が、フランジ噴射孔32の内径寸法よりも大きい。
【0064】
切削部位噴射孔33は、第1貯留室31と接続される。具体的に、切削部位噴射孔33の後端部は、第1貯留室31の先端部に接続される。また、切削部位噴射孔33の先端部は、ボディ11の先端部に向けて開口する。すなわち、切削部位噴射孔33は、ボディ11の先端部(切削チップ2の切刃7及び加工穴の底部を含む切削部位)にクーラントを噴射する。
【0065】
図2に示すように、切削部位噴射孔33の先端部つまり噴射口は、ボディ11の外周面よりも径方向内側に配置されている。本実施形態では切削部位噴射孔33の噴射口が、第1貯留室31の内周面よりも径方向内側に配置されている。
【0066】
図1~
図4に示すように、切削部位噴射孔33の噴射口は、切屑排出溝15の内部に開口する。具体的に、切削部位噴射孔33の噴射口は、切屑排出溝15のドリル回転方向Tとは反対側を向く壁面に開口する。
【0067】
切削部位噴射孔33は、互いに異なる向きに延び、連続する1つの流路を形成するように連結される複数の接続孔部33a,33b,…を有する。本実施形態では、2つの接続孔部33a,33bが連設されることにより、1つの切削部位噴射孔33が構成される。複数の接続孔部33a,33bは、それぞれ、直線状に延びる円孔状をなしている。
【0068】
複数の接続孔部33a,33bのうち、切屑排出溝15内(ホルダ切屑排出溝15b内)に開口する最先端の接続孔部33aは、切削部位噴射孔33の噴射口を構成している。最先端の接続孔部33aは、軸方向の先端側へ向かうに従い反ドリル回転方向に向けて延びている。また、複数の接続孔部33a,33bのうち、最先端の接続孔部33a以外の他の接続孔部33bは、軸方向の先端側へ向かうに従いドリル回転方向Tに向けて延びている。接続孔部33aの後端部と、接続孔部33bの先端部とが、互いに連結(接続)される。
このため、本実施形態の切削部位噴射孔33は、屈曲状の流路に形成されている。
【0069】
最先端の接続孔部33aの内径寸法は、他の接続孔部33bの内径寸法よりも小さい。このため本実施形態において、クーラント孔14の内径寸法は、第1貯留室31、接続孔部33b、最先端の接続孔部33aの順に、段階的に小さくされている。
【0070】
切削部位噴射孔33は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられている。本実施形態では切削部位噴射孔33が、周方向において等ピッチで一対設けられている。
【0071】
〔切削チップ〕
切削チップ2は、ホルダ1の先端部に配置されるチップ取付座16に取り付けられ、図示しない主軸等により、ホルダ1とともに中心軸O回りのドリル回転方向Tに回転させられる。切削チップ2がチップ取付座16に装着されることにより、ボディ11の先端部に切刃7が配置される。切削チップ2は、ボディ11の先端部(チップ取付座16)に着脱可能に取り付けられる。
【0072】
切削チップ2は、軸方向の先端側を向く先端面21と、径方向外側を向く外周面と、先端面21及び外周面に開口し、先端面21から軸方向の後端側に延びるヘッド切屑排出溝15a(切屑排出溝15)と、すくい面5と、逃げ面6と、切刃7と、後端面22と、嵌合部23と、締結部材挿入孔24と、被支持面25と、を有する。
【0073】
ヘッド切屑排出溝15aは、先端面21から軸方向の後端側へ向かうに従い、反ドリル回転方向に向けて延びる。すくい面5は、ヘッド切屑排出溝15aのドリル回転方向Tを向く壁面のうち、少なくとも先端部に位置する。逃げ面6は、先端面21に配置される。
【0074】
切刃7は、ヘッド切屑排出溝15a(切屑排出溝15)のドリル回転方向Tを向く壁面と、先端面21とが接続される稜線部に配置される。具体的に、切刃7は、すくい面5と逃げ面6とが接続される稜線部に配置される。
【0075】
切刃7は、切削チップ2に、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態では切刃7が、周方向に等ピッチで2つ設けられる。すなわち、本実施形態のフランジ付きドリル10Aは、2枚刃のツイストドリルである。また、切刃7は、切刃7のうち径方向内端部に配置されるシンニング刃(図示省略)と、シンニング刃の径方向外側に配置される主切刃と、を有する。
【0076】
また、切削チップ2の外周面は、マージン26と、二番取り面27と、を有する。
マージン26は、切削チップ2の外周面のうちドリル回転方向Tの端部(ヘッド切屑排出溝15aと隣接する部分)に配置される。マージン26は、軸方向の後端側へ向かうに従い、反ドリル回転方向に向けて延びる。
【0077】
二番取り面27は、マージン26の反ドリル回転方向に隣り合って配置される。二番取り面27は、マージン26よりも径方向内側に配置される。二番取り面27は、穴あけ加工時において、被削材の加工穴の内周面と径方向に隙間をあけて対向する。
【0078】
後端面22は、軸方向の後端側を向く。後端面22は、中心軸Oと垂直な方向に広がる平面状である。切削チップ2がチップ取付座16に取り付けられたときに、後端面22は、着座面17と接触する。これにより切削チップ2は、チップ取付座16に軸方向の後端側から支持される。
【0079】
嵌合部23は、後端面22から軸方向の後端側に突出する。嵌合部23は、中心軸Oを中心とする柱状であり、具体的には、軸方向に延びる円柱状である。嵌合部23は、チップ取付座16の嵌合穴19に挿入される。嵌合部23と嵌合穴19とは、互いに嵌合する。これにより切削チップ2は、チップ取付座16に径方向において位置決めされる。
【0080】
締結部材挿入孔24は、切削チップ2を軸方向に貫通する。締結部材挿入孔24は、切削チップ2の先端面21に開口し、かつ後端面22に開口する。締結部材挿入孔24は、軸方向に延びる多段の円孔状である。締結部材挿入孔24の内径寸法は、軸方向の後端側へ向かうに従い段階的に小さくなる。締結部材挿入孔24は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、本実施形態では一対設けられる。
【0081】
締結部材挿入孔24には、切削チップ2とホルダ1とを締結する締結部材3が挿入される。本実施形態では締結部材3が、例えばクランプネジ等である。締結部材3は、締結部材挿入孔24に挿通され、チップ取付座16の着座面17に開口する雌ネジ穴(図示省略)に螺着される。これにより切削チップ2は、チップ取付座16に着脱可能に固定される。
【0082】
被支持面25は、周方向において、ヘッド切屑排出溝15aと二番取り面27との間に配置される。被支持面25は、ドリル回転方向Tとは反対側を向く。本実施形態では被支持面25が、平面状である。被支持面25は、軸方向から見て、径方向外側へ向かうに従いドリル回転方向Tに向けて延びる。
【0083】
被支持面25は、チップ取付座16のドリル回転方向Tを向く支持面18と接触する。これにより切削チップ2は、チップ取付座16に反ドリル回転方向から支持される。被支持面25は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態では被支持面25が、周方向に等ピッチで一対設けられる。
【0084】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態のフランジ付きドリル10Aでは、クーラント孔14がフランジ噴射孔32を有しており、フランジ噴射孔32は、フランジ13の先端側を向く面13bに開口している。クーラントは、フランジ噴射孔32からボディ11の外周部またはその径方向外側の領域(例えばボディ11の外周部と隣接する領域など)に向けて噴射される。
【0085】
穴あけ加工の貫通時などに生じる長く伸びた糸状(紐状)の切屑が、ドリルの回転等によってドリルに巻き付こうとしても、フランジ噴射孔32から噴射されるクーラントによって、巻き付き始めた切屑が強制的に取り除かれたり、切屑の巻き付きそのものが抑制される。これにより、良好な穴あけ加工を安定して継続することが可能となり、切削効率が向上する。
【0086】
以上より本実施形態によれば、長く伸びた切屑がドリルに巻き付くことを安定して抑制できる。被削材が傷付けられたり、ドリルが折損するなどの不具合を防止することができる。穴あけ加工の精度を良好に維持することができ、穴あけ効率が高められる。
【0087】
また本実施形態では、フランジ噴射孔32が、切屑排出溝15の内部、リーディングエッジ20またはボディ11の外周面に向けて開口する。
この場合、フランジ噴射孔32は、切屑排出溝15の内部(ドリル回転方向Tを向く壁面など)、リーディングエッジ20、またはボディ11の外周面に向けて、クーラントを噴射する。穴あけ加工により生成される長く伸びた切屑は、リーディングエッジ20に沿うように排出されていくため、上記構成によって、クーラントで効率よく切屑を処理でき、切屑のドリルへの巻き付きをより安定して抑制することができる。
【0088】
また本実施形態では、クーラント孔14が、さらに、ボディ11の先端部にクーラントを噴射する切削部位噴射孔33を有する。
この場合、クーラント孔14が、上述したフランジ噴射孔32の他に、切削部位噴射孔33を有している。フランジ噴射孔32によってドリルへの切屑の巻き付きを抑制しつつ、切削部位噴射孔33から噴射されるクーラントによって、切刃7及び加工穴等の切削部位を冷却・潤滑することができる。このため、良好な穴あけ加工を安定して継続することができる。
【0089】
また本実施形態では、フランジ噴射孔32が、互いに異なる向きに延び、連続する1つの流路を形成するように連結される複数の連結孔部32a,32b,…を有する。
この場合、フランジ噴射孔32が、1つの流路をなすように連設される複数の連結孔部32a,32b,…を有している。このため、複数の連結孔部32a,32b,…のうち、クーラントの噴射口となる最先端の連結孔部32a(流路末端に配置される1つの連結孔部32a)が延びる向き、すなわちクーラントの噴射方向を、より精度よく切屑に向けることが可能である。また、フランジ噴射孔32の配置(レイアウト)の自由度を高めることができる。フランジ噴射孔32から噴射されるクーラントをより効率よく伸びた切屑に当てることができ、切屑がドリルに巻き付くことを安定して抑制できる。
【0090】
また本実施形態では、複数の連結孔部32a,32b,…のうち、フランジ13の先端側を向く面13bに開口する最先端の連結孔部32aの内径寸法が、他の連結孔部32b,…の内径寸法よりも小さい。
この場合、フランジ噴射孔32内を流れるクーラントは、最先端の連結孔部32aを通過するときに流速がより高められる。すなわち、クーラントの噴射速度を十分に高めた状態として、最先端の連結孔部32aから伸びた切屑へクーラントを当てることができるため、切屑がドリルに巻き付くことをより安定して抑制できる。
【0091】
また本実施形態では、クーラント孔14が、クーラント孔14の流路の一部を構成する第1貯留室31を有し、第1貯留室31は、少なくともシャンク12の内部に配置され、フランジ噴射孔32に接続される。
この場合、クーラント孔14がその流路の一部に第1貯留室31を有している。第1貯留室31は、少なくともシャンク12の内部に形成される中空状の室であり、クーラントを貯留する。このような第1貯留室31が設けられることで、クーラントの噴射量を安定して高めることができ、フランジ噴射孔32による上述した作用効果がより安定して奏功される。
また本実施形態では、第1貯留室31が切削部位噴射孔33にも接続される。このため、切削部位噴射孔33からのクーラント噴射量についても安定して高められる。
【0092】
また本実施形態では、切刃7を有する切削チップ2がボディ11の先端部に着脱可能に取り付けられる。
この場合、フランジ付きドリル10Aは、刃先交換式ドリルである。本発明は、刃先交換式のフランジ付きドリル10Aに好適に用いることができる。
【0093】
また、本実施形態のフランジ付きドリル10Aのホルダ1によれば、上述したフランジ付きドリル10Aと同様の作用効果を得ることができる。
【0094】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態のフランジ付きドリル10Bについて、
図5~
図8を参照して説明する。なお本実施形態では、前述の実施形態と同じ構成については、同じ名称や符号を付すなどしてその説明を省略する場合がある。また方向の定義についても、特に説明しない限り、前述の実施形態と同様である。
【0095】
本実施形態のフランジ付きドリル10Bは、前述の実施形態で説明したフランジ付きドリル10Aとは、フランジ噴射孔32の構成が一部異なる。
【0096】
図5~
図8に示すように、本実施形態では、フランジ噴射孔32が有する複数の連結孔部32a,32bのうち、フランジ噴射孔32の噴射口を構成する最先端の連結孔部32aが、中心軸Oに沿うように軸方向に延びている。
【0097】
以上説明した本実施形態のフランジ付きドリル10B及びホルダ1によっても、上述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0098】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態のフランジ付きドリル10Cについて、
図9を参照して説明する。なお本実施形態では、前述の実施形態と同じ構成については、同じ名称や符号を付すなどしてその説明を省略する場合がある。また方向の定義についても、特に説明しない限り、前述の実施形態と同様である。
【0099】
本実施形態のフランジ付きドリル10Cは、前述の実施形態で説明したフランジ付きドリル10A,10Bとは、クーラント孔14の構成が一部異なる。
【0100】
図9に示すように、本実施形態ではクーラント孔14が、第1貯留室31を有していない。複数のフランジ噴射孔32の後端部は、それぞれ、シャンク12の後端面12aに開口している。また、複数の切削部位噴射孔33の後端部は、それぞれ、シャンク12の後端面12aに開口している。
【0101】
以上説明した本実施形態のフランジ付きドリル10C及びホルダ1によっても、上述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0102】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態のフランジ付きドリル10Dについて、
図10~
図13を参照して説明する。なお本実施形態では、前述の実施形態と同じ構成については、同じ名称や符号を付すなどしてその説明を省略する場合がある。また方向の定義についても、特に説明しない限り、前述の実施形態と同様である。
【0103】
本実施形態のフランジ付きドリル10Dは、前述の実施形態で説明したフランジ付きドリル10A~10Cとは、フランジ噴射孔32の構成が異なる。
【0104】
図10~
図13に示すように、本実施形態では、フランジ噴射孔32が、フランジ付きドリル10Dの内部を湾曲して延びる湾曲孔部32cを有する。湾曲孔部32cは、シャンク12の先端部内及びフランジ13内にわたって延びている。湾曲孔部32cの後端部は、第1貯留室31の先端部に接続される。湾曲孔部32cの先端部は、フランジ13の先端側を向く面13bに開口する。湾曲孔部32cの先端部つまり噴射口は、ボディ11よりも径方向外側に配置されている。
【0105】
湾曲孔部32cは、切屑排出溝15の内部、リーディングエッジ20またはボディ11の外周面に向けて開口しており、切屑排出溝15の内部、リーディングエッジ20またはボディ11の外周面に向けて、クーラントを噴射する。より好ましくは、湾曲孔部32cは、リーディングエッジ20周辺に向けて、クーラントを噴射する。
【0106】
図11に示すように、湾曲孔部32cは、その後端部(第1貯留室31との接続部分)から径方向外側へ向かうに従い、ドリル回転方向Tに向けて延びている。湾曲孔部32cの径方向に沿う単位長さあたりの周方向へ向けた変位量は、湾曲孔部32cの後端部から先端部へ向かうに従い大きくなる。ただしこれに限らず、特に図示しないが、湾曲孔部32cの径方向に沿う単位長さあたりの周方向へ向けた変位量は、湾曲孔部32cの後端部から先端部へ向かうに従い小さくなっていてもよい。
すなわち本実施形態において、湾曲孔部32cの径方向に沿う単位長さあたりの周方向へ向けた変位量は、湾曲孔部32cの後端部から先端部にかけて一定でない。
【0107】
図13に示すように、湾曲孔部32cは、その後端部(第1貯留室31との接続部分)から軸方向の先端側へ向かうに従い、径方向外側に向けて延びている。湾曲孔部32cの軸方向に沿う単位長さあたりの径方向へ向けた変位量は、湾曲孔部32cの後端部から先端部へ向かうに従い小さくなる。すなわち、湾曲孔部32cの軸方向に沿う単位長さあたりの径方向へ向けた変位量は、湾曲孔部32cの後端部から先端部にかけて一定でない。
【0108】
以上説明した本実施形態のフランジ付きドリル10D及びホルダ1によっても、上述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0109】
また本実施形態では、フランジ噴射孔32が湾曲孔部32cを有しているので、フランジ噴射孔32の孔形状(流路形状)の自由度がより高められ、この湾曲孔部32cを通して噴射されるクーラントの噴射方向を、より精度よく切屑に向けることが可能である。また、湾曲孔部32c内を流通するクーラントの圧力損失が低減され、クーラントの噴射圧や噴射速度を高めることができる。このため、切屑がドリルに巻き付くことをより安定して抑制できる。なお、このような湾曲孔部32cは、例えば三次元造形機等を用いてドリルを製造することにより、成形可能である。
【0110】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態のフランジ付きドリル10Eについて、
図14~
図17を参照して説明する。なお本実施形態では、前述の実施形態と同じ構成については、同じ名称や符号を付すなどしてその説明を省略する場合がある。また方向の定義についても、特に説明しない限り、前述の実施形態と同様である。
【0111】
本実施形態のフランジ付きドリル10Eは、前述の実施形態で説明したフランジ付きドリル10A~10Dとは、切削チップ2及びクーラント孔14の各構成等が異なる。
【0112】
図14~
図17に示すように、このフランジ付きドリル10Eでは、切削チップ2としてドリルヘッドを用いる替わりに、多角形板状の切削インサートを用いている。切削チップ2は、周方向に互いに間隔をあけて複数(図示の例では2つ)設けられる。また、ホルダ1の先端部には、ドリル回転方向Tとは反対側へ向けて窪む凹状のチップ取付座16が複数設けられる。複数のチップ取付座16は、周方向に互いに間隔をあけて配置される。また、複数のチップ取付座16は、径方向の位置が互いにずらされて配置されている。各切削チップ2は、各チップ取付座16に各締結部材3によって固定される。
【0113】
また本実施形態では、クーラント孔14が第1貯留室31を有していない。複数(図示の例では2つ)のフランジ噴射孔32の後端部、及び、複数(図示の例では2つ)の切削部位噴射孔33の後端部は、それぞれ、シャンク12の後端面12aに開口する。
本実施形態では、クーラント孔14が備える複数のフランジ噴射孔32及び複数の切削部位噴射孔33が、周方向に不等ピッチで配置されている。
【0114】
図15に示すように、フランジ噴射孔32が有する複数の連結孔部32a,32bのうち、後端側に配置される連結孔部32bは、シャンク12の後端面12aに開口する後端部から軸方向の先端側へ向かうに従い、反ドリル回転方向かつ径方向外側に向けて延びる。フランジ噴射孔32が有する複数の連結孔部32a,32bのうち、先端側に配置される連結孔部32a(最先端の連結孔部32a)は、連結孔部32bに接続される後端部から軸方向の先端側へ向かうに従い、ドリル回転方向Tかつ径方向内側に向けて延びる。
【0115】
切削部位噴射孔33が有する複数の接続孔部33a,33bのうち、後端側に配置される接続孔部33bは、シャンク12の後端面12aに開口する後端部から軸方向の先端側へ向かうに従い、ドリル回転方向Tに向けて延びる。切削部位噴射孔33が有する複数の接続孔部33a,33bのうち、先端側に配置される接続孔部33a(最先端の接続孔部33a)は、接続孔部33bに接続される後端部から軸方向の先端側へ向かうに従い、ドリル回転方向Tかつ径方向外側に向けて延びる。
【0116】
また、複数(2つ)の切削部位噴射孔33のうち、一方の切削部位噴射孔33の先端部(噴射口)は、切屑排出溝15内に開口する。また、他方の切削部位噴射孔33の先端部は、ホルダ1の先端面1a(ボディ11の先端面)に開口する。
【0117】
以上説明した本実施形態のフランジ付きドリル10E及びホルダ1によっても、上述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0118】
〔本発明に含まれるその他の構成〕
本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。なお、変形例の図示においては、前述の実施形態と同じ構成には同一の符号を付し、下記では主に異なる点について説明する。
【0119】
前述の実施形態では、フランジ13の先端側を向く面13bが、先端側へ向かうに従い縮径するテーパ面状をなしている例を挙げたが、これに限らない。フランジ13の先端側を向く面13bは、例えば、中心軸Oと垂直な方向に拡がる平面状等であってもよい。
【0120】
また特に図示しないが、クーラント孔14は、クーラント孔14の流路の一部を構成し、少なくともフランジ13の内部に配置される第2貯留室を有していてもよい。第2貯留室は、フランジ噴射孔32に接続される。また第2貯留室は、さらに、切削部位噴射孔33に接続されていてもよい。
【0121】
第2貯留室は、フランジ13の内部に設けられる中空状の室であり、所定量以上のクーラントを内部に貯留可能である。具体的に、第2貯留室は、例えば中心軸Oを中心とする円環状の室または円柱状の室である。第2貯留室は、フランジ13の内部及びシャンク12の前端部にわたって配置されていてもよい。また第2貯留室は、フランジ13の内部及びボディ11の後端部にわたって配置されていてもよい。
【0122】
このような第2貯留室が設けられる場合、特に図示しないが、クーラント孔14は、さらに供給流路を有していてもよい。供給流路は、シャンク12の後端面12aに開口してホルダ1内を延びる孔状等であり、その先端部が第2貯留室に接続される。
すなわち、クーラントは、供給流路、第2貯留室及びフランジ噴射孔32をこの順に通って、ボディ11の外周部またはその径方向外側に向けて噴射される。またクーラントは、供給流路、第2貯留室及び切削部位噴射孔33をこの順に通って、ボディ11の先端部に噴射される。
【0123】
この場合、クーラント孔14がその流路の一部に第2貯留室を有している。第2貯留室は、少なくともフランジ13の内部に形成される中空状の室であり、クーラントを貯留する。このような第2貯留室が設けられることで、クーラントの噴射量を安定して高めることができ、フランジ噴射孔32による上述した作用効果がより安定して奏功される。
また、第2貯留室が切削部位噴射孔33にも接続される場合には、切削部位噴射孔33からのクーラント噴射量も安定して高められる。
【0124】
また
図18は、フランジ付きドリル及びそのホルダ1の一部を示す断面図であり、本発明の第1変形例を示している。なお図中の符号Sは、工作機械の主軸等Sを表す。
図18に示すように、クーラント孔14は、フランジ噴射孔32のみを有していてもよい。この場合、フランジ噴射孔32の先端部(クーラントの噴射口、流出口)は、フランジ13の先端側を向く面13bに開口し、フランジ噴射孔32の後端部(クーラントの供給口、流入口)は、例えばフランジ13の後端側を向く端面13aに開口する。このフランジ噴射孔32の後端部には、主軸等Sの内部を通る図示しないクーラント流路等が接続される。
【0125】
また
図19は、フランジ付きドリル及びそのホルダ1の一部を示す断面図であり、本発明の第2変形例を示している。
図19に示すように、フランジ噴射孔32の後端部(クーラントの供給口、流入口)は、フランジ13の外周面に開口していてもよい。この場合、フランジ噴射孔32は、フランジ13の内部で径方向から軸方向へ向きを変えられるように、湾曲状または屈曲状に延びる。また、このフランジ噴射孔32の後端部(径方向外端部)には、主軸等Sの外部を通る図示しないチューブなどのクーラント配管等が接続される。
【0126】
また
図20は、フランジ付きドリル及びそのホルダ1の一部を示す側面図であり、本発明の第3変形例を示している。
図20に示す第3変形例では、クーラント孔14が、少なくともフランジ13の内部に配置される第2貯留室34と、第2貯留室34に接続されるフランジ噴射孔32と、第2貯留室34に接続される切削部位噴射孔33と、第2貯留室34に接続される供給流路35,36と、を有する。
【0127】
第2貯留室34は、中心軸Oを中心とする逆円錐形の中空状の室である。第2貯留室34は、先端側へ向かうに従い内径寸法が小さくなる。第2貯留室34は、第2貯留室34の内面のうち後端部に配置されて先端側を向く頂面と、第2貯留室34の内面のうち外周部に配置されて径方向内側を向く内周面と、この内周面の先端部から下側へ向かうに従い縮径するテーパ面と、を有する。テーパ面は、軸方向の後端側かつ径方向内側を向く。
【0128】
切削部位噴射孔33の後端部は、第2貯留室34の内面のうちテーパ面に接続される。
フランジ噴射孔32の後端部は、第2貯留室34の内面のうちテーパ面に接続される。フランジ噴射孔32の後端部(第2貯留室34との接続部分)は、切削部位噴射孔33の後端部(第2貯留室34との接続部分)よりも径方向外側に配置されている。フランジ噴射孔32の先端部は、フランジ13の先端側を向く面13bに開口する。図示の例では、フランジ噴射孔32が湾曲孔部32cに形成されている。
【0129】
供給流路35,36のうち、第1の供給流路35は、フランジ13の内部を軸方向に延びる孔状である。供給流路35の後端部は、フランジ13の後端側を向く端面13aに開口する。供給流路35の後端部には、図示しない主軸等の内部を通るクーラント流路等が接続される。供給流路35の先端部は、第2貯留室34の内面のうち頂面に開口する。
【0130】
供給流路35,36のうち、第2の供給流路36は、フランジ13の内部を径方向に延びる孔状である。供給流路36の径方向外端部は、フランジ13の外周面及び先端側を向く面13bにわたって開口する。供給流路36の径方向外端部には、図示しない主軸等の外部を通るチューブなどのクーラント配管等が接続される。供給流路36の径方向内端部は、第2貯留室34の内面のうち内周面及びテーパ面にわたって開口する。
なお供給流路35,36は、少なくとも一方が設けられていればよく、他方については設けられていなくてもよい。
【0131】
クーラントは、供給流路35,36、第2貯留室34及びフランジ噴射孔32をこの順に通って、ボディ11の外周部またはその径方向外側に向けて噴射される。またクーラントは、供給流路35,36、第2貯留室34及び切削部位噴射孔33をこの順に通って、ボディ11の先端部に噴射される。
【0132】
これらの第1~第3変形例によっても、前述の実施形態及び変形例等と同様の作用効果が得られる。
【0133】
前述の実施形態では、フランジ付きドリル10A~10Eが、2枚刃のツイストドリルである例を挙げたが、これに限らない。本発明のフランジ付きドリルは、1枚刃または3枚刃以上のドリルであってもよい。
【0134】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態及び変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明のフランジ付きドリル、及びフランジ付きドリルのホルダによれば、長く伸びた切屑がドリルに巻き付くことを安定して抑制できる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0136】
1…ホルダ
1a,21…先端面(ボディの先端面)
2…切削チップ
7…切刃
10A,10B,10C,10D,10E…フランジ付きドリル
11…ボディ
12…シャンク
13…フランジ
13b…フランジの先端側を向く面
14…クーラント孔
15…切屑排出溝
20…リーディングエッジ
31…第1貯留室
32…フランジ噴射孔
32a,32b…連結孔部
32c…湾曲孔部
33…切削部位噴射孔
O…中心軸
T…ドリル回転方向