(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123829
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】無線システムおよび無線システム用親局設備
(51)【国際特許分類】
H04H 20/59 20080101AFI20240905BHJP
H04W 4/90 20180101ALI20240905BHJP
G08B 27/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H04H20/59
H04W4/90
G08B27/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031561
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】臼井 洋介
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 秀昭
【テーマコード(参考)】
5C087
5K067
【Fターム(参考)】
5C087BB18
5C087BB73
5C087BB76
5C087EE12
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF03
5C087GG07
5C087GG70
5C087GG85
5K067EE02
5K067EE06
5K067EE10
(57)【要約】
【課題】既設システムの運用を止めることなくシステムの機能を増設、更新あるいは拡張できる無線システムおよびその親局設備を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る無線システムは、単数又は複数の無線情報端末と、親局設備とを備える。前記親局設備は、第1の無線情報を生成する操作卓と、前記第1の無線情報を第1の通信規格で前記無線情報端末へ送信する基地局と、前記第1の通信規格とは異なる第2の通信規格で送信される第2の無線情報を受信可能であり、受信した第2の無線情報を前記操作卓へ伝送する中継器と、を有する。前記操作卓は、前記第2の無線情報を前記第1の通信規格で前記無線情報端末へ送信可能に前記基地局を制御する制御装置を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単数又は複数の無線情報端末と、親局設備とを備え、
前記親局設備は、
第1の無線情報を生成する操作卓と、前記第1の無線情報を第1の通信規格で前記無線情報端末へ送信する基地局と、前記第1の通信規格とは異なる第2の通信規格で送信される第2の無線情報を受信可能であり、受信した第2の無線情報を前記操作卓へ伝送する中継器と、を有し、
前記操作卓は、前記第2の無線情報を前記第1の通信規格で前記無線情報端末へ送信可能に前記基地局を制御する制御装置を有する
を備えた無線システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線システムであって、
前記中継器は、前記第2の無線情報を前記操作卓が受信可能な第3の通信規格で伝送する変換部を有する
無線システム。
【請求項3】
請求項1に記載の無線システムであって、
前記制御装置は、前記第1の無線情報と前記第2の無線情報とを選択的に前記無線情報端末へ送信可能に前記基地局を制御する
無線システム。
【請求項4】
請求項3に記載の無線システムであって、
前記制御装置は、前記中継器から前記第2の無線情報を受信したとき、前記第2の無線情報を前記第1の無線情報よりも優先して、前記基地局から前記無線情報端末へ送信させる
無線システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の無線システムであって、
前記制御装置は、前記中継器から受信した前記第2の無線情報の緊急度を判定し、前記第2の無線情報が所定の緊急度を満たす場合に前記第2の無線情報を前記第1の無線情報よりも優先して、前記基地局から前記無線情報端末へ送信させる
無線システム。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1つに記載の無線システムであって、
前記無線情報端末は、屋外に設置された拡声子局である
無線システム。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1つに記載の無線システムであって、
前記無線情報端末は、屋内に設置された戸別受信機である
無線システム。
【請求項8】
第1の無線情報を生成する操作卓と、
前記第1の無線情報を第1の通信規格で単数又は複数の無線情報端末へ送信する基地局と、
前記第1の通信規格とは異なる第2の通信規格で送信される第2の無線情報を受信可能であり、受信した第2の無線情報を前記操作端末へ伝送する中継器と、を備え、
前記操作卓は、前記第2の無線情報を第1の通信規格で前記無線情報端末へ送信可能に前記基地局を制御する制御装置を有する
無線システム用親局設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば防災無線システムに用いられる無線システムおよびその親局設備に関する。
【背景技術】
【0002】
市町村などにおける防災無線システムとしては、親局設備から屋外の各所に設置された複数の無線拡声子局へ同時配信された音声情報を、各無線拡声子局から防災地点や住民宅へ放送する同報無線システムが広く運用されている。例えば特許文献1には、行政当局が管理する親局装置と、当該行政区域内に設置された子局装置とを備え、親局装置から子局装置へ広報情報を無線送信して、子局装置により出力する行政広報システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防災無線システムは、行政区画の市区町村ごとに独立して設けられているとともに、それぞれ独立して運用されているのが通常である。一方、この種の防災無線システムは、非常時に備えて可能な限り運用を止めないことが求められている。
【0005】
しかしながら、既設システムの運用を全く止めずにシステムを増設、更新、あるいは拡張することは困難を伴う。このような作業の例として、市区町村の合併などにより複数の異なる市区町村の防災無線システムを統合するに際して、一部の機器ごとに順次更新作業を進める場合など、更新作業中にそれぞれの既設システムの運用を止めることなく、各システムの統合を図ることは非常に困難であった。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、既設システムの運用を止めることなくシステムを増設、更新あるいは拡張できる無線システムおよびその親局設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る無線システムは、単数又は複数の無線情報端末と、親局設備とを備える。
前記親局設備は、第1の無線情報を生成する操作卓と、前記第1の無線情報を第1の通信規格で前記無線情報端末へ送信する基地局と、前記第1の通信規格とは異なる第2の通信規格で送信される第2の無線情報を受信可能であり、受信した第2の無線情報を前記操作卓へ伝送する中継器と、を有する。
前記操作卓は、前記第2の無線情報を前記第1の通信規格で前記無線情報端末へ送信可能に前記基地局を制御する制御装置を有する。
【0008】
前記中継器は、前記第2の無線情報を前記操作卓が受信可能な第3の通信規格で伝送する変換部を有してもよい。
【0009】
前記制御装置は、前記第1の無線情報と前記第2の無線情報とを選択的に前記無線情報端末へ送信可能に前記基地局を制御してもよい。
【0010】
前記制御装置は、前記中継器から前記第2の無線情報を受信したとき、前記第2の無線情報を前記第1の無線情報よりも優先して、前記基地局から前記無線情報端末へ送信させてもよい。
【0011】
前記制御装置は、前記中継器から受信した前記第2の無線情報の緊急度を判定し、前記第2の無線情報が所定の緊急度を満たす場合に前記第2の無線情報を前記第1の無線情報よりも優先して、前記基地局から前記無線情報端末へ送信させてもよい。
【0012】
前記無線情報端末は、屋外に設置された拡声子局であってもよい。
【0013】
前記無線情報端末は、屋内に設置された戸別受信機であってもよい。
【0014】
本発明の一形態に係る無線システム用親局設備は、第1の無線情報を生成する操作卓と、
前記第1の無線情報を第1の通信規格で単数又は複数の無線情報端末へ送信する基地局と、
前記第1の通信規格とは異なる第2の通信規格で送信される第2の無線情報を受信可能であり、受信した第2の無線情報を前記操作端末へ伝送する中継器と、を備え、
前記操作卓は、前記第2の無線情報を第1の通信規格で前記無線情報端末へ送信可能に前記基地局を制御する制御装置を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、既設システムの運用を止めることなくシステムを増設、更新あるいは拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態において説明する防災無線システムの概略構成図である。
【
図2】上記防災無線システムにおける第1の親局設備の構成を示すブロック図である。
【
図3】上記防災情報システムの動作の一例を示すシーケンス図である。
【
図4】上記防災情報システムの動作の他の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る防災無線システム10の概略構成図である。防災無線システム10は、例えば、地域住民への防災情報や行政情報等を伝達する同報無線システムとして運用される。以下、この防災無線システム10の詳細について説明する。
【0019】
[防災無線システム]
防災無線システム10は、第1の無線システム100と第2の無線システム200を備える。ここでは、第1の無線システム100が新設の無線システムであり、第2の無線システム200が既設の無線システムである場合を例に挙げて説明する。
【0020】
第1の無線システム100は、第1の親局設備1と、その配下局である第1の無線情報端末3Aとを有し、これら第1の親局設備1および第1の無線情報端末3Aとの間で第1の無線情報R1を送受信する。第1の無線情報R1は、第1の無線情報端末3Aにおいて放送される音声情報のほか、その放送開始指示や放送終了指示等の制御信号を含む。第1の無線情報R1は、第1の親局設備1から第1の無線情報端末3Aへ送信される下り電波と、第1の無線情報端末3Aから第1の親局設備1へ送信される上り電波とによって送受信される。
【0021】
第1の親局設備1は、第1の無線情報R1として送信される音声情報を生成する操作卓11と、生成した音声情報を第1の無線情報R1としてA地区に設置された第1の無線情報端末3Aへ送信する基地局12とを備える。第1の無線情報R1として送信される音声情報は、避難情報等の防災情報およびA地区に関する行政情報などを含む。第1の無線情報端末3Aは、例えば、屋外に設置された拡声子局31Aあるいは家屋に設置された戸別受信機32Aであり、これら拡声子局31Aおよび戸別受信機32Aの少なくとも1つを含む。
【0022】
第1の親局設備1は、例えば、A地区にある市役所等の行政機関、あるいは、学校や公民館等の公共施設に設置される。第1の親局設備(基地局12)は、第1の無線情報R1を第1の通信規格で第1の無線情報端末3Aへ送信する。第1の通信規格には例えば、一般社団法人電波産業会の標準規格「ARIB STD-T115」(以下、T115ともいう)が適用され、第1の無線情報端末3A(拡声子局31A、戸別受信機32A)は、第1の通信規格(T115)に準拠した通信設備を備える。第1の通信規格は、後述する第2の通信規格(T86)とは異なる通信フォーマットで構成される。
【0023】
第2の無線システム200は、第2の親局設備2と、その配下局である第2の無線情報端末3Bとを有し、これら第2の親局設備2および第2の無線情報端末3Bとの間で第2の無線情報R2を送受信する。第2の無線情報R2は、第2の無線情報端末3Bにおいて放送される音声情報のほか、その放送開始指示や放送終了指示等の制御信号を含む。第2の無線情報R2は、第2の親局設備2から第2の無線情報端末3Bへ送信される下り電波と、第2の無線情報端末3Bから第2の親局設備2へ送信される上り電波とによって送受信される。
【0024】
第2の親局設備2は、第2の無線情報R2として生成される音声情報を生成する操作卓21と、生成した音声情報を第2の無線情報R2としてB地区に設置された第2の無線情報端末3Bへ送信する基地局22とを備える。第2の無線情報R2としての音声情報は、避難情報等の防災情報およびB地区に関する行政情報などを含む。第2の無線情報端末3Bは、例えば、屋外に設置された拡声子局31Bあるいは家屋に設置された戸別受信機32Bであり、これら拡声子局31Bおよび戸別受信機32Bの少なくとも1つを含む。
【0025】
第2の親局設備2は、例えば、B地区にある市役所等の行政機関、あるいは、学校や公民館等の公共施設に設置される。第2の親局設備(基地局22)は、第2の無線情報R2を第1の通信規格とは異なる第2の通信規格で第2の無線情報端末3Bへ送信する。第2の通信規格には例えば、一般社団法人電波産業会の標準規格「ARIB STD-T86」(以下、T86ともいう)が適用され、第2の無線情報端末3B(拡声子局31B、戸別受信機32B)は、第2の通信規格(T86)に準拠した通信設備を備える。
【0026】
B地区は、A地区と同一の市区町村であってもよいし、A地区とは異なる市区町村であってもよい。また、第2の無声情報端末3Bの少なくとも一部は、A地区に設置されてもよい。
【0027】
このように第1の無線システム100および第2の無線システム200はそれぞれ異なる通信規格(T115,T86)で運用されるため、第1の親局設備1から送信された第1の無線情報R1は第2の無線情報端末3Bには受信されず、第2の親局設備2から送信された第2の無線情報R2も第1の無線情報端末3Aには受信されない。
【0028】
一般に、防災無線システムは、行政区画の市区町村ごとに独立して設けられているとともに、それぞれ独立して運用されているのが通常である。一方、この種の防災無線システムは、非常時に備えて可能な限り運用を止めないことが求められている。しかしながら、既設システムの運用を全く止めずにシステムを増設、更新、あるいは拡張することは困難を伴う。このような作業の例として、市区町村の合併などにより複数の異なる市区町村の防災無線システムを統合するに際して、一部の機器ごとに順次更新作業を進める場合など、更新作業中にそれぞれの既設システムの運用を止めることなく、各システムの統合を図ることは非常に困難であった。
【0029】
上記問題を解決するため、本実施形態の無線システム10は、既設システムの運用を止めることなくシステムの増設、更新あるいは拡張を可能とすることを目的としており、本実施形態では、既設の無線システムである第2の無線システム200の運用を止めることなく、第1の無線システム100と第2の無線システム200とを統合する場合を例に挙げて、以下説明する。
【0030】
[第1の親局設備の詳細]
第1の親局設備1の操作卓11は、操作端末111と、制御装置112とを有する。
【0031】
操作端末111は、オペレータの入力装置により、第1の無線情報R1として第1の無線情報端末3Aへ送信される音声情報のテキストデータを生成する。操作端末111は、タッチパネルやマウス、キーボードのほか、音声入力用のマイクロフォンなどを含む入力部と、当該入力部で生成された各種情報を表示する画面などを有する。
【0032】
制御装置112は、第1の親局設備1を統括的に制御する。制御装置112は、操作端末111で生成された音声情報を基地局12へ送信するとともに、基地局12との間で制御信号を送受信する。より具体的に、制御装置112は、基地局12から第1の無線情報R1を第1の通信規格(T115)で送信させる制御信号を生成する。制御装置112から基地局12へ送信される制御信号としては、例えば、第1の無線情報R1の放送開始指示や放送終了指示などが挙げられる。また、制御装置112は、基地局12から送信される制御信号を受信し処理する。基地局12から送信される制御信号としては、例えば、第1の無線情報端末3Aに関する呼出完了通知および放送終了完了通知などが挙げられる。
【0033】
制御装置112は、操作端末111とは別の機器であってもよい。なお制御装置112は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のコンピュータに用いられるハードウェア要素および必要なソフトウェアにより実現される。これに限られず、制御装置112には、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のPLD(Programmable Logic Device)、あるいは、DSP(Digital Signal Processor)、その他ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等が用いられてもよい。
【0034】
さらに
図1に示すように、第1の親局設備1は、中継器13を有する。中継器13は、第2の親局設備2から送信される第2の無線情報R2を受信可能であり、受信した第2の無線情報R2を操作卓11へ伝送する。中継器13の設置場所は特に限定されず、第2の親局設備2の基地局22から送信される第2の無線情報R2を受信できる位置であればよい。
【0035】
図2は、第1の親局設備1の構成を示すブロック図である。
【0036】
中継器13は、第2の親局設備2から送信される第2の無線情報R2を、第1の親局設備1の操作卓11が受信可能な第3の通信規格で伝送するため、通信規格を変換する変換部130を有する。第3の通信規格は、公式の標準規格である必要はなく、独自の有線または無線の通信規格が採用可能である。中継器13は、第2の無線情報R2を受信したとき、この第2の無線情報R2を第2の通信規格(T86)から上記第3の通信規格に変換して、その第3の通信規格で第2の無線情報R2を制御装置112へ送信する。例えば第3の通信規格がRS232C、RS422などの有線通信規格の場合、中継器13は、第2の通信規格(T86)で送信された第2の無線情報R2をアナログ音声信号などに変調し、その変調後の第2の無線情報R2を送信信号として制御装置112へ送信する。
【0037】
制御装置112は、中継器13から第2の無線情報R2を受信するとともに、受信した第2の無線情報R2を第1の通信規格(T115)で第1の無線情報端末3Aへ送信可能に基地局12を制御する制御信号(放送開始指示、放送終了指示など)を生成する。
【0038】
このように本実施形態の防災無線システム10は、第2の親局設備2から送信される第2の無線情報R2を、第1の無線システム100内の第1の無線情報端末3Aで受信可能である。したがって、第1の無線情報端末3Aは、第2の通信規格(T86)に準拠した通信設備を備えていなくても、第2の親局設備2から送信される第2の無線情報R2を放送できる。
【0039】
制御装置112は、第1の無線情報R1と中継器13を介して受信した第2の無線情報R2とを選択的に第1の無線情報端末3Aへ送信可能に基地局12を制御してもよい。これにより、第1の無線情報R1と第2の無線情報R2とが基地局12から同時に送信されることを防止できる。
【0040】
例えば制御装置112は、中継器13から第2の無線情報R2を受信したとき、第2の無線情報R2を第1の無線情報R1よりも優先して、基地局12から第1の無線情報端末3Aへ送信させてもよい。この場合、制御装置112は、中継器13から第2の無線情報R2を受信したときは、自局(第1の親局設備1)による第1の無線情報R1の送信を中止させる排他処理を行う。これにより、第2の無線情報R2を第1の無線情報R1よりも優先して第1の無線情報端末3Aで放送することができる。
【0041】
あるいは、制御装置112は、中継器13から受信した第2の無線情報R2の緊急度を判定し、第2の無線情報R2が所定の緊急度を満たす場合に第2の無線情報R2を第1の無線情報R1よりも優先して、基地局12から第1の無線情報端末3Aへ送信させてもよい。
【0042】
所定の緊急度を満たす情報とは、例えば、全国瞬時警報システム(Jアラート)、火災情報など緊急性を要する情報をいうが、これらを含む地震情報や気象情報等の一般的な防災情報であってもよい。防災情報には緊急度に応じたフラグが付されてもよく、この場合、制御装置112は、第2の無線情報R2が防災情報であるか行政情報であるかを上記フラグの有無で判定し、第2の無線情報R2が防災情報であると判定した場合に、第1の無線情報R1よりも第2の無線情報R2を優先して基地局12から第1の無線情報端末3Aへ送信させる。なお、第1の無線情報R1と第2の無線情報R2とがいずれも同種の防災情報である場合には、第2の無線情報R2を優先することなく第1の無線情報R1を送信してもよいし、上記フラグに紐づけられた緊急性のより高い情報を優先的に送信してもよい。
【0043】
[防災情報システムの動作]
以下、第1の親局設備1の詳細について、防災情報システム10の動作の併せて説明する。
【0044】
(動作例1:第1の無線システム100で第2の無線情報を放送する動作例)
図3は、防災情報システム10の動作の一例を示すシーケンス図である。ここでは、第2の親局設備2から送信される第2の無線情報R2を、第1の無線情報端末3Aおよび第2の無線情報端末3Bで放送する動作例について説明する。
【0045】
第2の親局設備2からの第2の無線情報R2の送信時、操作卓21から基地局22へ第2の無線情報R2の放送開始指示が送信される(ST101)。操作卓21から送信される上記放送開始指示を受信した基地局22は、第2の無線情報端末3Bへ制御チャネルとしての放送開始指示(CCH)を第2の通信規格(T86)で送信する(ST102)。
【0046】
なお、制御チャネルは、基地局から無線情報端末へ送信される制御信号であり、代表的には、CCH、TCHおよびFACCHの3種類がある。CCHは、同期信号を含んでおり、付加できる情報量が少ない呼出信号としての制御専用チャネルである。TCHは、同期信号を含んでいないぶん多くの情報量が付加された音声用フォーマットとしての情報チャネルである。FACCHは、同期信号を含んでおらず、音声以外の情報(例えば送信先の通信機の識別番号など)が付加された高速付随制御チャネルである。
【0047】
続いて基地局22は、第2の無線情報端末3B(および中継器13)へ番号通知指示(FACCH)を第2の通信規格(T86)で送信する(ST103)。番号通知指示(FACCH)は、配下局を呼び出す際に配下局識別番号を複数指定する信号、終了信号、アイドル信号等を伝送する。配下局とは、第2の無線情報端末3Bに属する拡声子局31Bおよび戸別受信機32Bをいい、配下局識別番号とは、これら拡声子局31Bおよび戸別受信機32Bに各々割り当てられた固有の識別番号をいう。
【0048】
番号通知指示(FACCH)の送信後、基地局22は、操作卓21へ呼出完了通知を送信する(ST104)。操作卓21が放送開始指示を送信してから呼出完了通知を受信するまでの所要時間は、例えば、約4秒である。その後、第2の無線情報端末3Bで、基地局22から第2の通信規格(T86)で送信された第2の無線情報R2が放送される(ST105)。
【0049】
基地局22から送信される放送開始指示(CCH)は、第1の無線システム100における中継器13においても受信される(ST103)。中継器13は、基地局22からの放送開始指示(CCH)を受信すると、これを第3の通信規格に変換して操作卓11(制御装置112)へ送信する(ST106)。制御装置112は、当該放送開始指示を基地局12から送信させるべく、基地局12へ制御信号(放送開始指示)を送信する(ST107)。
【0050】
制御装置112は、第1の無線システム100において独自の放送(第1の無線情報R1)を送信する予定があった場合でも、中継器13から第2の無線情報R2の放送開始指示を受信したときは、この第2の無線情報R2を優先的に第1の無線情報端末3Aで放送し、第1の無線情報R1の放送動作は行えないようする排他処理を実行する。この際、上述したように、第2の無線情報R2が所定の緊急度を満たすかどうかを判定し、所定の緊急度を満たす場合に第2の無線情報R2を第1の無線情報R1よりも優先して第1の無線情報端末3Aで放送させる処理が行われてもよい。なお、第2の無線情報R2が所定の緊急度を満たさないと判定した場合、制御装置112は、第2の無線情報R2を無視して、第1の無線情報端末3Aでの予定されていた第1の無線情報R1の放送を実行する。
【0051】
操作卓11(制御装置112)から第2の無線情報R2の放送開始指示を受信した基地局12は、第1の無線情報端末3Aへ放送開始指示(CCH)および番号通知指示(FACCH)を第1の通信規格(T115)で送信する(ST108,109)。基地局12から第1の無線情報端末3Aへ送信される番号通知指示(FACCH)には、第1の無線情報端末3Aに属する拡声子局31Aおよび戸別受信機31Bに各々割り当てられた固有の識別番号が含まれる。
【0052】
番号通知指示(FACCH)の送信後、基地局12は、操作卓11(制御装置112)へ呼出完了通知を送信する(ST110)。操作卓11が放送開始指示を送信してから呼出完了通知を受信するまでの所要時間は、例えば、約3秒である。その後、第1の無線情報端末3Aで、基地局12から第1の通信規格(T115)で送信された第2の無線情報R2が放送される(ST111)。
【0053】
ここで、第1の無線システム100において第2の無線情報R2の放送が開始されるタイミングは、第2の無線システム200における第2の無線情報R2の放送開始よりも約3秒程度遅れる(ST107~109)。このため、制御装置112は、第2の無線情報R2の放送音声を録音しておき、基地局12からの呼出完了通知(ST110)を受信した後に録音した第2の無線情報R2の再生を開始する送信遅延処理を行うことで、第2の無線情報R2の放送内容の頭切れを防止できる。第2の無線情報R2を録音する記憶部は、制御装置112内のメモリ資源が活用されてもよいし、制御装置112とは別に設置された記憶装置が用いられてもよい。
【0054】
第2の無線システム200において第2の無線情報R2の放送を終了させるときは、第2の親局設備2の操作卓21から基地局22へ放送終了指示が送信される(ST112)。基地局22は、操作卓21からの放送終了指示を受信すると、第2の無線情報端末3B(および中継器13)へ放送終了指示(CCH)を送信する(ST113)。これにより、第2の無線情報端末3Bでの第2の無線情報R2の放送が終了する。放送終了指示(CCH)の送信後、基地局22は、操作卓21へ呼出終了完了通知を送信する(ST114)。
【0055】
基地局22から送信される第2の無線情報R2の放送終了指示(CCH)は、第1の無線システム100における中継器13においても受信される(ST113)。中継器13は、第2の無線情報R2の放送終了指示(CCH)を受信すると、これを第3の通信規格に変換して操作卓11(制御装置112)へ送信する(ST115)。制御装置112は、当該放送終了指示を基地局12から送信させるべく、基地局12へ制御信号(放送終了指示)を送信する(ST116)。その後、基地局12は、第1の無線情報端末3Aに第2の無線情報R2の放送終了指示(CCH)を送信する(ST117)。これにより、第1の無線情報端末3Aでの第2の無線情報R2の放送が終了する。放送終了指示(CCH)の送信後、基地局12は、操作卓11へ放送終了完了通知を送信する(ST118)。
【0056】
なお、基地局12から第1の無線情報端末3Aへの第2の無線情報R2の放送開始指示を遅らせる処理(送信遅延処理)を行ったことが原因で、操作卓11(制御装置112)が中継器13から放送終了指示(ST114)を受信したときにはこれら第1の無線情報端末3Aにおける第2の無線情報R2の放送がすべて終了していないことが想定される。したがって、制御装置112は、放送終了指示によって第1の無線情報端末3Aにおける第2の無線情報R2の放送が途中で切断されないようにするため、送信遅延処理によって遅延させた時間だけ放送終了指示(ST116)の送信を遅らせる処理を実行する。これにより、第1の無線情報端末3Aで第2の無線情報R2を途中で中断させることなくすべて放送することができる。
【0057】
(動作例2:第1の無線情報の放送中に第2の無線情報を受信したときの動作例)
図4は、防災情報システム10の動作の他の一例を示すシーケンス図である。ここでは、第1の無線システム100において第1の無線情報R1を放送中に、第2の親局設備2から送信される第2の無線情報R2を、第1の無線システム100を用いて放送する動作例について説明する。
【0058】
第1の親局設備1からの第1の無線情報R1の送信時、操作卓11(制御装置112)から基地局12へ第1の無線情報R1の放送開始指示が送信される(ST201)。操作卓11から送信される上記放送開始指示を受信した基地局12は、第1の無線情報端末3Aへ放送開始指示(CCH)を第1の通信規格(T115)で送信する(ST202)。
【0059】
続いて基地局12は、第1の無線情報端末3Aへ番号通知指示(FACCH)を第1の通信規格(T115)で送信する(ST203)。高速付随制御チャネルは、配下局を呼び出す際に配下局識別番号を複数指定する信号、終了信号、アイドル信号等を伝送する。配下局とは、第1の無線情報端末3Aに属する拡声子局31Aおよび戸別受信機32Aをいい、配下局識別番号とは、これら拡声子局31Aおよび戸別受信機32Aに各々割り当てられた固有の識別番号をいう。
【0060】
番号通知指示(FACCH)の送信後、基地局12は、操作卓11へ呼出完了通知を送信する(ST204)。操作卓11が第1の無線情報R1の放送開始指示を送信してから呼出完了通知を受信するまでの所要時間は、例えば、約3秒である。その後、第1の無線情報端末3Aで、基地局12から第1の通信規格(T115)で送信された第1の無線情報R1が放送される(ST205)。
【0061】
第1の無線情報端末3Aにおいて第1の無線情報R1の放送中に、第2の親局設備2から基地局22へ第2の無線情報R2の放送開始指示が送信されると、基地局22は、第2の無線情報端末3B(および中継器13)へ第2の音声情報R2の放送開始指示(CCH)を送信する(ST206,207)。続いて基地局22は、第2の無線情報端末3Bへ番号通知指示(FACCH)を第2の通信規格(T86)で送信する(ST208)。番号通知指示(FACCH)の送信後、基地局22は、操作卓21へ呼出完了通知を送信する(ST209)。操作卓21が第2の無線情報R2の放送開始指示を送信してから呼出完了通知を受信するまでの所要時間は、例えば、約4秒である。その後、第2の無線情報端末3Bで、基地局22から第2の通信規格(T86)で送信された第2の無線情報が放送される(ST210)。
【0062】
基地局22から第2の通信規格(T86)で送信される第2の無線情報R2の放送開始指示(CCH)は、第1の無線システム100における中継器13においても受信される(ST207)。中継器13は、第2の無線情報R2の放送開始指示(CCH)を受信すると、これを第3の通信規格に変換して操作卓11へ送信する(ST211)。
【0063】
操作卓11(制御装置112)は、中継器13から第2の無線情報R2の放送開始指示を受信すると、第2の無線情報R2が所定の緊急度を満たすか否かを判定し、第2の無線情報R2が所定の緊急度を満たすと判定したときは第1の無線情報端末3Aでの第1の無線情報R1の放送を中断させるべく、基地局12へ制御信号(放送終了指示)を送信する(ST212)。基地局12は、制御装置112から第1の無線情報R1の放送終了指示を受信すると、第1の無線情報端末3Aへ放送終了指示(CCH)を送信し、第1の無線情報R1の送信を強制的に切断する(ST213)。これにより、第1の無線情報端末3Aでの第1の無線情報R1の放送が中断される。第1の無線情報R1の放送終了指示(CCH)の送信後、基地局12は、制御装置112へ呼出終了完了通知を送信する(ST214)。
【0064】
操作卓11(制御装置112)は、基地局12から第1の無線情報R1の放送終了完了通知の受信後、第2の無線情報R2の放送開始指示を基地局12へ送信する(ST215)。続いて基地局12は、第1の無線情報端末3Aへ第2の無線情報R2の放送開始指示(CCH)および番号通知指示(FACCH)を第1の通信規格(T115)で送信する(ST216,217)。番号通知指示(FACCH)の送信後、基地局12は、操作卓11へ呼出完了通知を送信する(ST218)。操作卓11が第2の無線情報R2の放送開始指示を送信してから呼出完了通知を受信するまでの所要時間は、例えば、約3秒である。その後、第1の無線情報端末3Aで、基地局12から第1の通信規格(T115)で送信された第2の無線情報R2が放送される(ST219)。
【0065】
ここで、第1の無線システム100において第2の無線情報R2の放送が開始されるタイミングは、第2の無線システム200における第2の無線情報R2の放送開始よりも所定時間遅れる。上記所定時間は、操作卓11から基地局12へ第1の無線情報R1の放送終了指示(ST212)の送信後、基地局12から放送終了完了通知(ST214)を受信するまでの時間と、操作卓11から基地局12へ第2の無線情報R2の放送開始指示(ST215)の送信後、基地局12から呼出完了通知(ST218)を受信するまでの時間との総計である。このため、制御装置112は、第2の無線情報R2の放送音声を録音しておき、基地局12からの呼出完了通知(ST218)を受信した後に録音した第2の無線情報R2の再生を開始する送信遅延処理を行うことで、第1の無線情報端末3Aで放送される第2の無線情報R2の頭切れを防止できる。
【0066】
第2の無線システム200において第2の無線情報R2の放送を終了させるときは、第2の親局設備2の操作卓21から基地局22へ第2の無線情報R2の放送終了指示が送信される(ST220)。基地局22は、操作卓21からの放送終了指示を受信すると、第2の無線情報端末3B(および中継器13)へ第2の無線情報R2の放送終了指示(CCH)を送信する(ST221)。これにより、第2の無線情報端末3Bでの第2の無線情報R2の放送が終了する。放送終了指示(CCH)の送信後、基地局22は、操作卓21へ呼出終了完了通知を送信する(ST222)。
【0067】
基地局22から送信される第2の無線情報R2の放送終了指示(CCH)は、第1の無線システム100における中継器13においても受信される(ST221)。中継器13は、第2の無線情報R2の放送終了指示(CCH)を受信すると、これを第3の通信規格に変換して操作卓11(制御装置112)へ送信する(ST223)。制御装置112は、当該放送終了指示を基地局12から送信させるべく、基地局12へ制御信号(放送終了指示)を送信する(ST224)。その後、基地局12は、第1の無線情報端末3Aに第2の無線情報R2の放送終了指示(CCH)を送信する(ST225)。これにより、第1の無線情報端末3Aでの第2の無線情報R2の放送が終了する。放送終了指示(CCH)の送信後、基地局12は、操作卓11へ放送終了完了通知を送信する(ST226)。
【0068】
なお、制御装置112は、放送終了指示(ST224)によって第1の無線情報端末3Aでの第2の無線情報R2の放送が途中で切断されないようにするため、この放送終了指示(ST224)の送信処理を上記所定時間だけ遅らせる処理を実行する。これにより、第1の無線情報端末3Aで、第2の無線情報R2を途中で中断させることなくすべて放送することができる。
【0069】
また、第2の無線情報R2が上記所定の緊急度を満たさない場合(優先度が低い場合)においては、制御装置112は、第1の無線情報端末3Aでの第1の無線情報R1の放送中に第2の無線情報R2を録音しておき、第1の無線情報R1の放送後に第1の無線情報端末3Aで第2の無線情報R2の再生を開始する処理を実行してもよい。これにより、第1の無線情報端末3Aでの第1の無線情報R1の放送を途中で中断することなくすべて放送することができるとともに、その後に第2の無線情報R2を第1の無線情報端末3Aで放送することができる。
【0070】
[本実施形態の作用効果]
以上のように本実施形態によれば、第2の無線情報端末3Bで放送される第2の無線情報R2を、第1の無線情報端末3Aでも同様に放送することができる。このため、例えば、第2の無線システム200の運用を止めることなく、第2の無線情報端末3Bを順次、新たな通信規格(T115)の無線情報端末に更新することができる。これにより、老朽化した既設操作卓の機能に制限されることなく、更新された最新規格の無線情報端末を用いて無線システムの機能の拡大を図ることができる。
【0071】
この場合、すべての無線情報端末3Bの更新を完了した後に、第1の親局設備1についても新たな通信規格(T115)の親局設備に更新することができる。このため、第1の無線システム100への第2の無線システム200の統合を容易に行うことができる。
【0072】
また本実施形態によれば、既設操作卓(例えば操作卓21)からの放送指示を新たに設置した最新の操作卓(例えば操作卓11)を介して実施させることができるため、既設操作卓からの放送指示と最新の操作卓からの放送指示とに優先度を設けて選択的に無線情報を放送することができる。
【0073】
さらに本実施形態によれば、第2の無線システム200において放送される音声情報(第2の無線情報R2)を第1の無線システム100の親局設備2に取り込んでおき、第1の無線情報端末3Aの呼出処理が完了してから順次再生を開始することで、放送される第2の無線情報の頭切れを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0074】
1…第1の親局設備
2…第2の親局設備
3A…第1の無線情報端末
3B…第2の無線情報端末
10…防災無線システム
11,21…操作卓
12,22…基地局
13…中継器
31A,31B…拡声子局
32A,32B…個別受信機
100…第1の無線システム
200…第2の無線システム
R1…第1の無線情報
R2…第2の無線情報