(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123831
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】半導体試験装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20240905BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20240905BHJP
【FI】
H01L21/66 B
G01R31/26 B
G01R31/26 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031564
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】野村 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】吉村 卓哉
【テーマコード(参考)】
2G003
4M106
【Fターム(参考)】
2G003AA02
2G003AA05
2G003AA10
2G003AG03
2G003AG04
4M106AA01
4M106AA02
4M106AB01
4M106AB06
4M106BA01
4M106CA01
4M106DD01
4M106DD22
4M106DJ02
(57)【要約】
【課題】部分放電の発生を低減しかつ半導体装置の電気特性の試験を安定的に行う。
【解決手段】半導体試験装置101は、ステージ10、プローブ20、分離部30およびガス供給部40を含む。プローブ20は、ステージに保持された半導体装置200に対して電気的な入出力を行う。分離部30は、ステージ10に保持された半導体装置200の上方の空間を、加圧空間50と、プローブ20を含むプローブ空間60と、に分離する。ガス供給部40は、加圧空間50にガスを供給して加圧空間50を加圧する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の電気特性を評価する半導体試験装置であって、
ステージと、
前記ステージに保持された前記半導体装置に対して電気的な入出力を行うプローブと、
前記ステージに保持された前記半導体装置の上方の空間を、加圧空間と、前記プローブを含むプローブ空間と、に分離することが可能な分離部と、
前記加圧空間にガスを供給して前記加圧空間を加圧するガス供給部と、を備える、半導体試験装置。
【請求項2】
前記加圧空間の前記ガスを排気する排気部、または、前記加圧空間の圧力を調整する圧力調整部を、さらに備える、請求項1に記載の半導体試験装置。
【請求項3】
前記分離部は、平面視において、リング形状を有する、請求項1に記載の半導体試験装置。
【請求項4】
前記ガス供給部は、前記半導体装置の上面に対して斜め方向から前記ガスを吹き付けるように設置された噴出口を、さらに備える、請求項1に記載の半導体試験装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体試験装置を用いて、半導体装置の電気特性を評価して、前記半導体装置を製造する半導体装置の製造方法であって、
前記半導体装置を前記ステージに保持する工程と、
前記分離部により、前記ステージに保持された前記半導体装置の上方の空間を、前記加圧空間と、前記プローブ空間とに分離する工程と、
前記ガス供給部により、前記加圧空間にガスを供給して、前記加圧空間を加圧する工程と、
その後、前記ステージに保持された前記半導体装置に対して、前記プローブを介して電気的な入出力を行う工程と、を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記加圧空間の前記ガスを排気する工程、または、前記加圧空間の圧力を調整する工程を、さらに備える、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記分離部は、平面視において、リング形状を有する、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記ガスを供給する工程において、前記ガスは、前記半導体装置の上面に対して斜め方向から吹き付けられる、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記加圧空間を加圧する工程において、前記加圧空間は、密閉されている、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記加圧空間を加圧する工程において、前記プローブ空間は、密閉されている、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記半導体装置に対して前記電気的な入出力を行う工程において、前記加圧空間の圧力は、前記プローブ空間の圧力よりも高い、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体試験装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の電気特性を評価する半導体試験装置は、その半導体装置の表面に設けられた電極に、電気的な入出力を行うためのプローブを接触させる。半導体装置が、縦方向つまり表面と垂直方向に電流が流れる縦型構造を有する場合には、その試験中に、ステージと同電位の半導体装置の部分と、半導体装置の表面の電極との間で放電(以下、部分放電という。)が発生する場合がある。この部分放電は、半導体装置の部分的な破損や、半導体装置の不具合などを引き起こす。
【0003】
特許文献1に開示された試験装置は、被試験体が載置された圧力容器内の気圧を加圧した状態で試験を行う。それによって、試験装置は被試験体の高電圧試験中に発生する部分放電を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体試験装置のプローブは、その直径が小型化される傾向にあり、例えば、細線化されたワイヤープローブなど様々な種類のプローブが提案されている。プローブの種類によっては、加圧時の圧力容器内へのガスの封入により、プローブが変形する可能性がある。そのような変形は、半導体装置の電気特性の試験の品質に影響を与える。
【0006】
本開示は、上記の課題を解決するため、部分放電の発生を低減しかつ半導体装置の電気特性の試験を安定的に行うことができる半導体試験装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る半導体試験装置は、半導体装置の電気特性を評価する。半導体試験装置は、ステージ、プローブ、分離部およびガス供給部を含む。プローブは、ステージに保持された半導体装置に対して電気的な入出力を行う。分離部は、ステージに保持された半導体装置の上方の空間を、加圧空間と、プローブを含むプローブ空間と、に分離する。ガス供給部は、加圧空間にガスを供給して加圧空間を加圧する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、部分放電の発生を低減しかつ半導体装置の電気特性の試験を安定的に行うことを可能にする半導体試験装置が提供される。
【0009】
本開示の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1における半導体試験装置の構成を示す断面図である。
【
図2】半導体試験装置の断面構成および平面構成を示す図である。
【
図3】半導体試験装置の断面構成および平面構成を示す図である。
【
図4】実施の形態1における半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態2における半導体試験装置の構成を示す断面図である。
【
図6】半導体試験装置の断面構成および平面構成を示す図である。
【
図7】実施の形態3における半導体試験装置の構成を示す断面図である。
【
図8】半導体試験装置の断面構成および平面構成を示す図である。
【
図9】半導体試験装置の断面構成および平面構成を示す図である。
【
図10】実施の形態3の変形例における半導体試験装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施の形態1>
(半導体試験装置の構成)
図1は、実施の形態1における半導体試験装置101の構成を示す断面図である。
図2は、半導体試験装置101の断面構成および平面構成を示す図である。
図2の上側に示された断面図は、その下側の平面図に示されたA-Aにおける断面を示している。
図3は、半導体試験装置101の断面構成および平面構成を示す図である。
図3の上側に示された断面図は、その下側の平面図に示されたB-Bにおける断面を示している。
図2および
図3の平面図は、半導体試験装置101の一部の部品を透視してその平面構成を示している。
【0012】
半導体試験装置101は、試験対象物である半導体装置200の電気特性を評価する。半導体装置200は、ウエハから切り出されて個別化された半導体チップであってもよいし、個別化前の複数の半導体チップが集積された半導体ウエハであってもよい。半導体装置200は、例えば、Si等の半導体によって、または、SiC、GaN、Ga2O3、ダイヤモンド等のいわゆるワイドバンドギャップ半導体によって形成されている。半導体装置200は、例えば、電力制御用の半導体装置、いわゆるパワー半導体装置である。半導体装置200は、複数の半導体素子(図示せず)を含む。それら半導体素子は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、ショットキーバリアダイオード等である。または、半導体素子は、IGBTおよび還流ダイオードが1つの半導体基板内に形成されたRC-IGBT(Reverse-Conducting IGBT)であってもよい。
【0013】
実施の形態1における半導体装置200の上面には表面電極(図示せず)が設けられ、下面には裏面電極(図示せず)が設けられている。半導体装置200は、その表面電極と裏面電極との間に電流が流れる縦型構造を有する。また、半導体装置200は、素子形成領域201と耐圧保持領域202とを含む。素子形成領域201には、半導体素子が形成されている。耐圧保持領域202には、半導体装置200の耐圧を保持するための耐圧保持構造が形成されている。実施の形態1における耐圧保持構造は、平面視において、素子形成領域201の周囲を取り囲むように形成されている。耐圧保持構造は、例えば、半導体装置200の上面側の表層に形成されるFLR(Field Limiting Ring)である。
【0014】
半導体試験装置101は、ステージ10、複数のプローブ20、分離部30、ガス供給部40および圧力調整部(図示せず)を含む。
【0015】
ステージ10は、半導体装置200を保持するための台座である。ステージ10の表面は、外部装置(図示せず)と電気的に接続されており、半導体試験装置101における1つの電極として機能する。試験の際、半導体装置200はステージ10上に載置され、ステージ10の表面は半導体装置200の裏面電極と接触する。実施の形態1における半導体試験装置101は、半導体装置200を真空吸着によってステージ10の表面に固定する。その固定手段つまり保持手段は、真空吸着に限定されるものではなく、静電吸着等であってもよい。ステージ10は、1つまたは複数の半導体装置を保持可能である。以下、説明を簡単にするため、1つの半導体装置200がステージ10に保持される例を説明する。
【0016】
複数のプローブ20の各々は、ステージ10に保持された半導体装置200に対して電気的な入出力を行う。プローブ20は、ソケットを介して、プローブ基板21に取り付けられている。プローブ20は、外部装置と電気的に接続されており、半導体試験装置101の別の電極として機能する。試験の際、プローブ20は、半導体装置200の表面電極と接触する。複数のプローブ20が設けられていることにより、半導体試験装置101は5A以上の電流を半導体装置200に印加することが可能である。
【0017】
分離部30は、上板30A、第1側壁30B、第2側壁30Cおよび保護部材30Dを含む。第1側壁30Bおよび第2側壁30Cは上板30Aの下面に設けられている。保護部材30Dは、第1側壁30Bの下端に設けられている。保護部材30Dは、例えば柔軟性を有する弾性体で形成されている。上板30A、第1側壁30B、第2側壁30Cおよび保護部材30Dで構成される断面形状は逆U字型である。言い換えると、分離部30は、断面視において、トンネル状の空間を形成している。また、分離部30は、平面視において、そのトンネル状の空間が周回する構造を有する。すなわち、分離部30は、平面視において、リング形状を有する。
【0018】
第1側壁30Bおよび第2側壁30Cの位置は、ステージ10に保持された半導体装置200における素子形成領域201および耐圧保持領域202の配置に基づいて決定されることが好ましい。例えば、第1側壁30Bは、試験の際に、保護部材30Dが耐圧保持領域202よりも半導体装置200の内側の領域に接触するように設けられる。第2側壁30Cは、試験の際に、半導体装置200の外縁部の外側に位置するよう設けられることが好ましい。
【0019】
分離部30は、試験の際、ステージ10に保持された半導体装置200の上方の空間のうち、耐圧保持領域202の上方の空間に対応する加圧空間50を覆う。言い換えると、加圧空間50は、分離部30および耐圧保持領域202で取り囲まれたトンネル状の空間に対応する。第1側壁30Bは、半導体装置200の上方の空間のうち、プローブ空間60と加圧空間50とを分離する。プローブ空間60とは、半導体装置200の上面に対向するプローブ20を含む空間に対応する。言い換えると、プローブ空間60は、素子形成領域201の上方に位置するプローブ20を含む空間に対応する。
【0020】
ガス供給部40は、分離部30に設けられている。試験の際、ガス供給部40は、加圧空間50にガスを供給して加圧空間50を加圧する。ガス供給部40は、第1側壁30Bの保護部材30Dと半導体装置200の表面との接触の検知に基づいて、ガスの供給が可能となるように制御されている。
【0021】
実施の形態1においては、複数のガス供給部が設けられている。それら複数のガス供給部のうち少なくとも1つのガス供給部40は、半導体装置200の上面に対して
図3に示すように斜め方向からガスを吹き付けるように設置された噴出口40Aを含む。ここでは、噴出口40Aは、分離部30の上板30Aに対して傾いて設置されている。また、ガス供給部40は、噴出口40Aから吹き出されたガスが、リング状の加圧空間50を周回する流れを形成するように設けられている。さらに、ガス供給部40は、ガスの供給時の加圧空間50を均一に加圧できるように設けられることが好ましい。
【0022】
図示しない圧力調整部は、加圧空間50の圧力を調整する。圧力調整部は、例えば、ガス供給部40によって加圧空間50に供給されるガスの供給量を制御して、加圧空間50の圧力を調整する。
【0023】
(半導体装置の製造方法)
次に、半導体試験装置101を用いて半導体装置200を製造する方法を説明する。
図4は、実施の形態1における半導体装置200の製造方法を示すフローチャートである。この製造方法は、半導体試験装置101を用いて、半導体装置200の電気特性を評価する製造工程を含む、半導体装置200を製造する方法である。以下、当該評価する製造工程について説明する。
【0024】
ステップS11において、複数のプローブ20の先端部に対応するコンタクト部の平行度を揃える。
【0025】
ステップS12において、半導体装置200がステージ10に載置される。半導体装置200は、例えば、ステージ10の予め定められた位置に載置される。ステージ10に載置された半導体装置200は、真空吸着等により固定される、つまりステージ10に保持される。
【0026】
ステップS13において、分離部30が降下し、半導体装置200に近接する。分離部30は、ステージ10に保持された半導体装置200の上方の空間のうち、耐圧保持領域202の上方の空間に対応する加圧空間50を覆う。分離部30の降下により、第1側壁30Bの保護部材30Dは半導体装置200の上面に接触する。保護部材30Dは、好ましくは、耐圧保持領域202よりも半導体装置200の内側の領域に接触する。第1側壁30Bはプローブ空間60と加圧空間50とを分離している。第2側壁30Cは、半導体装置200の外縁部の外側に位置している。第2側壁30Cの下端は、ステージ10に接していない。
【0027】
ステップS14において、ガス供給部40は加圧空間50にガスを供給して加圧空間50を加圧する。実施の形態1におけるガス供給部40は、第1側壁30Bの保護部材30Dと半導体装置200の表面との接触の検知に基づいて、ガスの供給が可能となるように制御されている。実施の形態1における
図3に示すガス供給部40の噴出口40Aは、半導体装置200の耐圧保持領域202に対して斜め方向からガスを吹き付ける。その斜め方向から吹き付けられたガスによって、半導体装置200の耐圧保持領域202に付着していた異物が除去される。また、斜め方向に吹き出されたガスによって、リング状の加圧空間50には、時計回りもしくは反時計回りのガスの流れが発生する。そのガスの流れによっても、半導体装置200に付着している異物は効果的に浮き上がって吹き飛ばされる。第2側壁30Cはステージ10に接していないため、異物は第2側壁30Cの下端とステージ10との間隙から排出される。
【0028】
ステップS15において、圧力調整部は、加圧空間50の圧力を設定圧力に調整する。圧力調整部は、例えば、ガス供給部40によって加圧空間50に供給されるガスの供給量を制御する。設定圧力は、試験が実行される際の温度および印加電圧に依存するが、例えば、20kPa以上である。このステップS15は、ステップS14と同時に実行されてもよい。
【0029】
ステップS16において、複数のプローブ20が降下し、半導体装置200の表面電極に接触する。半導体試験装置101は、プローブ20を介して、半導体素子に電流を流して試験を開始する。つまり、半導体試験装置101は、半導体装置200に対してプローブ20を介して電気的な入出力を行う。この試験の際、加圧空間50の圧力は、プローブ空間60の圧力よりも高い。つまり、加圧空間50は加圧されている。その結果、耐圧保持領域202で生じ得る部分放電の可能性が低減する。このステップS16は、ステップS15の後に実行されてもよいし、ステップS15と同時に実行されてもよい。
【0030】
ステップS17において、ガス供給部40はガスの供給を停止する。加圧空間50の圧力が元に戻る。プローブ20および分離部30が半導体装置200の表面から離間する。
【0031】
ステップS18において、試験が終了した半導体装置200がステージ10から取り外される。以上で、半導体装置200の試験が終了し、半導体装置200は次の製造工程へと流される。その後、半導体試験装置101は別の半導体装置を試験する。つまり、ステップS11またはステップS12が再び実行される。
【0032】
このような構成においては、試験の際、部分放電が発生しやすい耐圧保持領域202の周辺の空間、つまり加圧空間50が加圧されている。そのため、部分放電の発生の可能性が低減する。
【0033】
その加圧空間50にガス供給部40からガスが供給される際、第1側壁30Bによって加圧空間50とプローブ空間60とが分離されている。そのため、高圧のガスが、プローブ空間60のプローブ20に直接吹き付けられることがない。したがって、プローブ20の種類によらず、そのプローブ20において吹き付けに起因する変形が抑制される。例えば、直径が小型化された細いピン型のプローブ、あるいは、細線化されたワイヤー型のプローブが用いられる場合であっても、それらのプローブ20において吹き付けに起因する変形が抑制される。プローブ20の変形は接触によるものに抑えられることから、半導体試験装置101は、半導体装置200の電気特性の試験を安定して行うことを可能にする。
【0034】
プローブ20がガスの供給による影響を受けることがないため、ガス供給部40は半導体装置200の耐圧保持領域202に対して、ガスを強く吹き付けることができる。その結果、耐圧保持領域202の異物の除去率が向上し、部分放電の発生の可能性がさらに低減する。
【0035】
また、分離部30によって、部分放電が発生しやすい加圧空間50のみが加圧されるため、ガスの使用量が削減されるとともに、その加圧工程が効率化される。
【0036】
以上をまとめると、実施の形態1における半導体試験装置101は、半導体装置200の電気特性を評価する。半導体試験装置101は、ステージ10、プローブ20、分離部30およびガス供給部40を含む。プローブ20は、ステージ10に保持された半導体装置200に対して電気的な入出力を行う。分離部30は、ステージ10に保持された半導体装置200の上方の空間を、加圧空間50とプローブ空間60とを分離する。加圧空間50は、半導体装置200の耐圧を保持するために半導体装置200に形成された耐圧保持領域202の上方の空間に対応する。プローブ空間60は、半導体装置200に対向するプローブ20を含む。ガス供給部40は、加圧空間50にガスを供給して加圧空間50を加圧する。
【0037】
このような半導体試験装置101は、部分放電の発生を低減し、半導体装置200の電気特性の試験を安定的に行うことを可能にする。部分放電に起因した不良品の発生が低減し、また、正確に電気特性が評価されるため、半導体装置200の歩留まりおよび信頼性が向上する。
【0038】
半導体試験装置101には、試験対象の半導体装置200の仕様に応じて、大電流または高電圧を印加することが要求される。そのような要求に対して、多ピン化されたプローブ20が用いられる。また、プローブ20の接触による半導体装置200へのダメージ低減も求められている。そのため、プローブ20の直径が小型化された細いピン型のプローブ、ワイヤー型のプローブなど細線構造のプローブ20が提案されている。実施の形態1に示された半導体試験装置101によれば、それら細線構造のプローブ20が用いられた場合であっても、加圧時に、プローブ20の変形は接触によるものに抑えられる。そのため、試験結果の信頼性が向上し安定する。
【0039】
また、実施の形態1における分離部30の保護部材30Dは、柔軟性を有する弾性体で形成されている。そのため、試験対象の半導体装置200ごとに、接触が繰り返される第1側壁30Bの下部の耐久性が高まる。また、第1側壁30Bと半導体装置200との接触性および密着性が向上する。
【0040】
<実施の形態2>
実施の形態2において、実施の形態1と同様の構成要素には、同一の参照符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。
【0041】
図5は、実施の形態2における半導体試験装置102の構成を示す断面図である。
図6は、半導体試験装置102の断面構成および平面構成を示す図である。
図6の上側に示された断面図は、その下側の平面図に示されたC-Cにおける断面を示している。
図6の平面図は、半導体試験装置102の一部の部品を透視してその平面構成を示している。
【0042】
分離部31は、上板31A、第1側壁31B、第2側壁31Cおよび保護部材31Dを含む。上板31Aの下面は、実施の形態1の上板30Aの下面よりも下方に位置する。試験の際、上板31Aは、耐圧保持領域202に近接するように設けられている。
【0043】
ガス供給部40は、ガス流路40Bを含む。ガス流路40Bは、上板31Aを貫通するように設けられている。ここでは、ガス流路40Bは、第1側壁31Bに沿って設けられている。言い換えると、ガス流路40Bは、第1側壁31Bに接するように設けられている。
【0044】
実施の形態2における半導体試験装置102の動作は、実施の形態1における半導体試験装置101の動作(
図4)と基本的に同じである。ただし、
図4のステップS13~S15の詳細が実施の形態1とは異なる。
【0045】
ステップS13において、分離部31が降下し、半導体装置200に近接する。分離部31は、耐圧保持領域202の上方の加圧空間50を覆う。分離部31の降下により、第1側壁31Bの保護部材31Dは半導体装置200の上面に接触し、分離部31の上板31Aは耐圧保持領域202に近接する。実施の形態2における上板31Aと耐圧保持領域202との距離は、実施の形態1における上板30Aと耐圧保持領域202との距離よりも短い。第1側壁31Bは、プローブ空間60と加圧空間50とを分離している。半導体装置200の外縁部の外側に位置している第2側壁31Cはステージ10に接していない。
【0046】
ステップS14において、ガス供給部40は、ガス流路40Bを通じて加圧空間50にガスを供給して加圧空間50を加圧する。実施の形態2におけるガス供給部40は、第1側壁31Bの保護部材31Dと半導体装置200の表面との接触の検知に基づいて、ガスの供給が可能となるように制御されている。ガス流路40Bを通じて加圧空間50に供給されたガスは、耐圧保持領域202に吹き付けられる。その結果、耐圧保持領域202上の異物は、吹き飛ばされる。第2側壁31Cはステージ10に接していないため、その異物は第2側壁31Cの下端とステージ10との間隙から排出される。
【0047】
ステップS15において、圧力調整部は、加圧空間50の圧力を調整する。圧力調整部は、例えば、ガス流路40Bを通じて加圧空間50に供給されるガスの供給量を制御する。
【0048】
以上のような半導体試験装置102による試験においても、加圧空間50は加圧されている。そのため、部分放電の発生の可能性が低減する。
【0049】
加圧空間50にガス供給部40からガスが供給される際、第1側壁31Bによって加圧空間50とプローブ空間60とが分離されている。そのため、高圧のガスが、プローブ空間60のプローブ20に吹き付けられることがない。そのため、プローブ20の種類によらずプローブ20において吹き付けに起因する変形が抑制される。
【0050】
実施の形態2においては、分離部31の上板31Aの下面が半導体装置200の耐圧保持領域202に近接している。そのため、加圧空間50が狭まり、ガス供給部40から供給されたガスの流速が速まる。その結果、耐圧保持領域202上の異物が効果的に除去される。また、加圧空間50の容積が小さいため、加圧空間50の効果的な加圧が可能となる。
【0051】
<実施の形態3>
実施の形態3において、実施の形態1と同様の構成要素には、同一の参照符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。
【0052】
図7は、実施の形態3における半導体試験装置103の構成を示す断面図である。
図8は、半導体試験装置103の断面構成および平面構成を示す図である。
図8の上側に示された断面図は、その下側の平面図に示されたD-Dにおける断面を示している。
図9は、半導体試験装置103の断面構成および平面構成を示す図である。
図9の上側に示された断面図は、その下側の平面図に示されたE-Eにおける断面を示している。
図8および
図9の平面図は、半導体試験装置103の一部の部品を透視してその平面構成を示している。
【0053】
半導体試験装置103は、ステージ10、複数のプローブ20、分離部32、複数のガス供給部40、圧力調整部(図示せず)および排気部(図示せず)を含む。
【0054】
分離部32は、上板30A、第1側壁30B、第2側壁30C、第1保護部材32Dおよび第2保護部材32Eを含む。第1保護部材32Dは、第1側壁30Bの下端に設けられている。第2保護部材32Eは、第2側壁30Cの下端に設けられている。第1保護部材32Dおよび第2保護部材32Eは、例えば柔軟性を有する弾性体で形成されている。上板30A、第1側壁30B、第2側壁30C、第1保護部材32Dおよび第2保護部材32Eで構成される断面形状は逆U字型である。
【0055】
複数のガス供給部40は、試験の際、加圧空間50にガスを供給する。各ガス供給部40は、第2側壁30Cの第2保護部材32Eとステージ10の表面との接触の検知に基づいて、ガスの供給が可能となるように制御されている。各ガス供給部40は、半導体装置200の上面に対して斜め方向からガスを吹き付けるように設置された
図9に示す噴出口40Aを含む。複数のガス供給部40は、平面視において、半導体装置200の耐圧保持領域202の角部に一致するように配置される。各ガス供給部40は、各噴出口40Aから吹き出されたガスがリング状の加圧空間50を周回する流れを形成するように設けられている。また、各ガス供給部40は、ガスの供給時の加圧空間50を均一に加圧できるように設けられている。
【0056】
図示しない排気部は、加圧空間50のガスを排気する。圧力調整部は、加圧空間50の圧力を調整する。圧力調整部は、ガス供給部40によって加圧空間50に供給されるガスの供給量または排気部によって加圧空間50から排気されるガスの排気量を制御する。
【0057】
実施の形態3における半導体試験装置103の動作は、実施の形態1における半導体試験装置101の動作(
図4)と基本的に同じである。ただし、
図4のステップS13およびS14の詳細が実施の形態1とは異なる。
【0058】
ステップS13において、分離部32が降下し、半導体装置200に近接する。分離部32は、耐圧保持領域202の上方の加圧空間50を覆う。分離部32の降下により、第1側壁30Bの第1保護部材32Dは半導体装置200に接触し、かつ、第2側壁30Cの第2保護部材32Eがステージ10に接触する。第1側壁30Bは、プローブ空間60と加圧空間50とを分離している。また、加圧空間50は、分離部32、半導体装置200およびステージ10によって密閉されている。
【0059】
ステップS14において、ガス供給部40は加圧空間50にガスを供給し、排気部は加圧空間50のガスを排気する。実施の形態3におけるガス供給部40は、第2側壁30Cの保護部材30Eとステージ10の表面との接触の検知に基づいて、ガスの供給が可能となるように制御されている。
図9のガス供給部40の噴出口40Aは、半導体装置200の耐圧保持領域202に対して斜め方向からガスを吹き付ける。その斜め方向から吹き付けられたガスによって、半導体装置200の耐圧保持領域202に付着していた異物が除去される。さらに、実施の形態3においては、ガスの噴出口40Aが半導体装置200の耐圧保持領域202の角部に一致するように配置されているため、効率の良いガスの回転流が生み出される。その結果、異物の除去効果が向上する。また、排気部から加圧空間50のガスが排気されることに伴い、耐圧保持領域202から離脱した異物は加圧空間50の外部へ排出される。
【0060】
以上のような半導体試験装置103による試験においても、加圧空間50は加圧されている。そのため、部分放電の発生の可能性が効果的に低減する。加圧空間50にガスが供給される際に、加圧空間50は密閉されている。そのため、高圧のガスが、プローブ空間60のプローブ20に吹き付けられることがない。したがって、プローブ20の種類によらず、そのプローブ20において吹き付けに起因する変形が抑制される。
【0061】
(実施の形態3の変形例)
図10は、実施の形態3の変形例における半導体試験装置104の構成を示す断面図である。半導体試験装置104は、実施の形態3に示された半導体試験装置103のプローブ基板21と分離部30とが一体化された構成を有する。具体的には、プローブ基板21は、分離部30の第1側壁30Bの上端に接合されている。
【0062】
試験の際、分離部30が降下し、第1側壁30Bの第1保護部材32Dは半導体装置200に接触する。プローブ空間60は、プローブ基板21、分離部30の第1側壁30B、第1保護部材32Dおよび半導体装置200の上面によって密閉されている。
【0063】
このような構成であっても、実施の形態3と同様の効果が得られる。また、プローブ基板21と分離部30とが一体化された構成は、実施の形態1の半導体試験装置101および実施の形態2の半導体試験装置102にも適用可能である。
【0064】
本開示は、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0065】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0066】
(付記1)
半導体装置の電気特性を評価する半導体試験装置であって、
ステージと、
前記ステージに保持された前記半導体装置に対して電気的な入出力を行うプローブと、
前記ステージに保持された前記半導体装置の上方の空間を、加圧空間と、前記プローブを含むプローブ空間と、に分離することが可能な分離部と、
前記加圧空間にガスを供給して前記加圧空間を加圧するガス供給部と、を備える、半導体試験装置。
【0067】
(付記2)
前記加圧空間の前記ガスを排気する排気部、または、前記加圧空間の圧力を調整する圧力調整部を、さらに備える、付記1に記載の半導体試験装置。
【0068】
(付記3)
前記分離部は、平面視において、リング形状を有する、付記1または付記2に記載の半導体試験装置。
【0069】
(付記4)
前記ガス供給部は、前記半導体装置の上面に対して斜め方向から前記ガスを吹き付けるように設置された噴出口を、さらに備える、付記1から付記3のいずれかに記載の半導体試験装置。
【0070】
(付記5)
付記1から付記4のいずれかに記載の半導体試験装置を用いて、半導体装置の電気特性を評価して、前記半導体装置を製造する半導体装置の製造方法であって、
前記半導体装置を前記ステージに保持する工程と、
前記分離部により、前記ステージに保持された前記半導体装置の上方の空間を、前記加圧空間と、前記プローブ空間とに分離する工程と、
前記ガス供給部により、前記加圧空間にガスを供給して、前記加圧空間を加圧する工程と、
その後、前記ステージに保持された前記半導体装置に対して、前記プローブを介して電気的な入出力を行う工程と、を備える、半導体装置の製造方法。
【0071】
(付記6)
前記加圧空間の前記ガスを排気する工程、または、前記加圧空間の圧力を調整する工程を、さらに備える、付記5に記載の半導体装置の製造方法。
【0072】
(付記7)
前記分離部は、平面視において、リング形状を有する、付記5または付記6に記載の半導体装置の製造方法。
【0073】
(付記8)
前記ガスを供給する工程において、前記ガスは、前記半導体装置の上面に対して斜め方向から吹き付けられる、付記5から付記7のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【0074】
(付記9)
前記加圧空間を加圧する工程において、前記加圧空間は、密閉されている、付記5から付記8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【0075】
(付記10)
前記加圧空間を加圧する工程において、前記プローブ空間は、密閉されている、付記5から付記9のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【0076】
(付記11)
前記半導体装置に対して前記電気的な入出力を行う工程において、前記加圧空間の圧力は、前記プローブ空間の圧力よりも高い、付記5から付記10のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0077】
10 ステージ、20 プローブ、21 プローブ基板、30 分離部、30A 上板、30B 第1側壁、30C 第2側壁、30D 保護部材、31 分離部、31A 上板、31B 第1側壁、31C 第2側壁、31D 保護部材、32 分離部、32D 第1保護部材、32E 第2保護部材、40 ガス供給部、40A 噴出口、40B ガス流路、50 加圧空間、60 プローブ空間、101~104 半導体試験装置、200 半導体装置、201 素子形成領域、202 耐圧保持領域。