(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123844
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】モルタル調製方法
(51)【国際特許分類】
B28C 5/12 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
B28C5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031588
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金堀 雄吾
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 昌範
【テーマコード(参考)】
4G056
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056CC04
4G056CD14
(57)【要約】
【課題】低水セメント比等の高粘性のモルタルの調製であっても、短時間で練ることができ、且つ、良好な品質のモルタルを調製することができるモルタル調製方法を提供すること。
【解決手段】モルタル組成物と、高速攪拌羽根及び低速攪拌羽根を備えるモルタルミキサーとを用いるモルタル調製方法であって、モルタルミキサーにモルタル組成物及び水を投入し、高速攪拌羽根及び低速攪拌羽根を回転させて攪拌して一次モルタルを調製する第一の混練工程と、高速攪拌羽根及び低速攪拌羽根の回転速度を第一の混練工程よりも上げて更に攪拌して二次モルタルを調製する第二の混練工程と、を備えるモルタル調製方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モルタル組成物と、高速攪拌羽根及び低速攪拌羽根を備えるモルタルミキサーとを用いるモルタル調製方法であって、
前記モルタルミキサーにモルタル組成物及び水を投入し、前記高速攪拌羽根及び前記低速攪拌羽根を回転させて攪拌して一次モルタルを調製する第一の混練工程と、
前記高速攪拌羽根及び前記低速攪拌羽根の回転速度を前記第一の混練工程よりも上げて更に攪拌して二次モルタルを調製する第二の混練工程と、を備えるモルタル調製方法。
【請求項2】
前記第一の混練工程における、前記高速攪拌羽根の回転速度が200~750rpmであり、前記低速攪拌羽根の回転速度が0.5~100rpmであり、
前記第二の混練工程における、前記高速攪拌羽根の回転速度が300~1200rpmであり、前記低速攪拌羽根の回転速度が30~250rpmである、請求項1に記載のモルタル調製方法。
【請求項3】
前記第一の混練工程における混練時間が80~300秒であり、前記第二の混練工程における混練時間が80~300秒である、請求項1又は2に記載のモルタル調製方法。
【請求項4】
前記二次モルタルの粘度が10000~40000mPa・sである、請求項1又は2に記載のモルタル調製方法。
【請求項5】
前記モルタル組成物が、セメント、ポゾラン微粉末、増粘剤、及び細骨材を含む、請求項1又は2に記載のモルタル調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモルタル調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物・構造物は大型化・高層化が進んでおり、それに伴い高強度モルタル組成物の使用が増加している。一般的にコンクリートやモルタル等のモルタル組成物を高強度化する際には、配合の水セメント比を低くする。しかし、低水セメント比のモルタル組成物は粘性が高く、調製時に攪拌能力の高い力のあるミキサーが必要となる。
【0003】
このようなモルタル組成物を調製するときには、例えば、引用文献1に記載のような攪拌羽根を複数持つようなミキサーが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、低水セメント比のモルタル組成物は一般的な調製方法ではミキサーにかかる負荷が過大となり、調整工程においてミキサーが故障する懸念がある。また、モルタルの調製が可能な場合においても、時間がかかったり、良好な品質まで調製することは困難であったりする等の課題があった。
【0006】
したがって、本発明は低水セメント比等の高粘性のモルタルの調製であっても、短時間で練ることができ、且つ、良好な品質のモルタルを調製することができるモルタル調製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、高速攪拌羽根及び低速攪拌羽根を備えるモルタルミキサーを使用して、混練工程にて回転速度を変化させてモルタル組成物を調整することで、短時間で良好な品質を有するモルタル組成物を得ることが可能であることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]モルタル組成物と、高速攪拌羽根及び低速攪拌羽根を備えるモルタルミキサーとを用いるモルタル調製方法であって、モルタルミキサーにモルタル組成物及び水を投入し、高速攪拌羽根及び低速攪拌羽根を回転させて攪拌して一次モルタルを調製する第一の混練工程と、高速攪拌羽根及び低速攪拌羽根の回転速度を第一の混練工程よりも上げて更に攪拌して二次モルタルを調製する第二の混練工程と、を備えるモルタル調製方法。
[2]第一の混練工程における、高速攪拌羽根の回転速度が200~750rpmであり、低速攪拌羽根の回転速度が0.5~100rpmであり、第二の混練工程における、高速攪拌羽根の回転速度が300~1200rpmであり、低速攪拌羽根の回転速度が30~250rpmである、[1]に記載のモルタル調製方法。
[3]第一の混練工程における混練時間が80~300秒であり、第二の混練工程における混練時間が80~300秒である、[1]又は[2]に記載のモルタル調製方法。
[4]二次モルタルの粘度が10000~40000mPa・sである、[1]又は[2]に記載のモルタル調製方法。
[5]モルタル組成物が、セメント、ポゾラン微粉末、増粘剤、及び細骨材を含む、[1]又は[2]に記載のモルタル調製方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低水セメント比等の高粘性のモルタルの調製であっても、短時間で練ることができ、且つ、良好な品質のモルタルを調製することができるモルタル調製方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な一実施形態について説明する。
【0011】
[モルタル調製方法]
本実施形態のモルタル調製方法は、モルタル組成物と、高速攪拌羽根及び低速攪拌羽根を備えるモルタルミキサーとを用いる。このモルタル調製方法は、モルタルミキサーにモルタル組成物及び水を投入し、高速攪拌羽根及び低速攪拌羽根を回転させて攪拌して一次モルタルを調製する第一の混練工程と、高速攪拌羽根及び低速攪拌羽根の回転速度を第一の混練工程よりも上げて更に攪拌して二次モルタルを調製する第二の混練工程と、を備える。
【0012】
第一の混練工程では、モルタルミキサー内にモルタル組成物及び水を投入し、高速攪拌羽根及び低速攪拌羽根を回転させて攪拌して一次モルタルを調製する。異なる速度の攪拌羽根を用いることで、短時間でモルタルを均一に練ることができる。
【0013】
モルタルミキサーへの材料の投入順序には特に制限はなく、モルタル組成物及び水を同時に投入してもよく、どちらかを先に投入して攪拌しながらもう一方を投入してもよい。ダマが更に少なくより均一にモルタルを調製しやすいという観点から、モルタルミキサーに水を投入し、高速攪拌羽根及び低速攪拌羽根を回転させながらモルタル組成物を投入して攪拌することが好ましい。
【0014】
水の添加量は目的とするモルタルの性質に応じて適宜調整することができる。水の添加量は、例えば、モルタル組成物100質量部に対し、8~60質量部であることが好ましく、10~50質量部であることがより好ましく、12~40質量部であることが更に好ましい。高い強度発現性が得られやすいという観点から、低水セメント比のモルタルを調製する場合の水の添加量は、モルタル組成物100質量部に対し、8~40質量部であることが好ましく、10~35質量部であることがより好ましく、12~30質量部であることが更に好ましい。
【0015】
第一の混練工程における攪拌羽根の回転速度は、高速攪拌羽根の回転速度が低速攪拌羽根の回転速度よりも速ければ特に限定されるものではない。高速攪拌羽根の回転速度は200~750rpmであることが好ましく、250~700rpmであることがより好ましく、300~650rpmであることが更に好ましい。低速攪拌羽根の回転速度は0.5~100rpmであることが好ましく、1~80rpmであることがより好ましく、1.5~70rpmであることが更に好ましい。高速攪拌羽根と低速攪拌羽根の回転速度が上記範囲内であれば、より均一なモルタルを調製しやすく、且つより高い品質のモルタルを調製できる。
【0016】
第一の混練工程の混練時間は、80~300秒であることが好ましく、85~250秒であることがより好ましく、90~200秒であることが更に好ましい。第一の混練工程の混練時間が上記範囲内であれば、短時間で調製でき、且つ、より高い品質のモルタルを調製できる傾向にある。
【0017】
第二の混練工程では、高速攪拌羽根及び低速攪拌羽根の回転速度を第一の混練工程よりも上げて更に攪拌して二次モルタルを調製する。第二の混練工程における攪拌羽根の回転速度は、高速攪拌羽根の回転速度が低速攪拌羽根の回転速度よりも速く、且つ、高速攪拌羽根及び低速攪拌羽根のそれぞれの回転速度が第一の混練工程の回転速度よりも速ければ特に限定されるものではない。第二の混練工程において第一の混練工程よりも攪拌羽根の回転速度を上げることで、第一の混練工程で一体化させた一次モルタルを短時間で十分に練ることができるため、作業時間の短縮ができ、且つより高い品質のモルタルを調製できる。
【0018】
高速攪拌羽根の回転速度は300~1200rpmであることが好ましく、350~1150rpmであることがより好ましく、400~1100rpmであることが更に好ましい。低速攪拌羽根の回転速度は30~250rpmであることが好ましく、40~220rpmであることがより好ましく、50~200rpmであることが更に好ましい。高速攪拌羽根と低速攪拌羽根の回転速度が上記範囲内であれば、より均一なモルタルを調製しやすく、且つより高い品質のモルタルを調製できる。
【0019】
第二の混練工程の混練時間は、80~300秒であることが好ましく、85~250秒であることがより好ましく、90~200秒であることが更に好ましい。第一の混練工程の混練時間が上記範囲内であれば、短時間で調製でき、且つ、より高い品質のモルタルを調製できる傾向にある。
【0020】
第一の混練工程と第二の混練工程における混練時間の合計は、500秒未満であることが好ましく、160~450秒であることがより好ましく、170~400秒であることが更に好ましく、180~350秒であることが特に好ましい。混練時間の合計が上記範囲内であれば、短時間で調製でき、且つ、より高い品質のモルタルを調製できる傾向にある。
【0021】
本実施形態のモルタル調製方法によって調製された二次モルタルの粘度は目的に応じて調製することができる。本実施形態のモルタル調製方法は、高強度特性を備える低水セメント比モルタルや高い水中不分離性を備える水中不分離性モルタル等の高粘性のモルタルの調製を行うことができるため、二次モルタルの粘度は10000~40000mPa・sであってもよく、12000~39000mPa・sであってもよく、15000~38000mPa・sであってもよい。二次モルタルの粘度が上記範囲内であれば、低水セメント比や高粘度のモルタルでありながら流動性を確保しやすく、施工性に優れる傾向にある。モルタルの粘度は市販の粘度計等を用いて測定することができる。
【0022】
[モルタル組成物]
本実施形態に係るモルタル組成物は、その材料配合を限定されるものではない。例えば、高強度型の材料や水中不分離型の材料といった高粘性になりやすい配合のモルタル組成物であってもよい。そのようなモルタル組成物としては、例えば、セメント、ポゾラン微粉末、増粘剤、及び細骨材を含むものが挙げられる。
【0023】
セメントは種々のものを使用することができ、例えば、普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、エコセメント、超速硬セメント、フライアッシュセメント等が挙げられる。セメントは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0024】
ポゾラン微粉末としては、例えば、フライアッシュ、シリカフューム、スラグ微粉末、火山灰、酸性白土や活性白土、カオリン鉱物等のアルミノケイ酸質の粘土鉱物やそれらの焼成物が挙げられる。ポゾラン微粉末は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。ポゾラン微粉末の粉末度は、ブレーン比表面積で1500~8000cm2/gが好ましく、2000~6000cm2/gがより好ましい。
【0025】
ポゾラン微粉末の含有量は、セメント100質量部に対し、1~25質量部であることが好ましく、5~22質量部であることがより好ましく、10~20質量部であることが更に好ましい。ポゾラン微粉末の含有量が上記範囲内であれば、強度発現性が一層向上する。
【0026】
増粘剤の種類は特に限定されず、例えば、セルロース系増粘剤、アクリル系増粘剤、グアーガム系増粘剤が挙げられる。増粘剤としてはセルロース系増粘剤が好ましい。セルロース系増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。増粘剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0027】
増粘剤の含有量は、セメント100質量部に対し、固形分換算で0.05~5質量部であることが好ましく、0.07~3質量部であることがより好ましく、0.1~1質量部であることが更に好ましい。増粘剤の含有量が上記範囲内であれば、モルタルとした際により良好な流動性が得られやすく、圧縮強度も向上しやすい。
【0028】
細骨材としては、例えば、川砂、珪砂、砕砂、寒水石、石灰石砂、スラグ骨材等が挙げられる。細骨材は、これらの中から、微細な粉や粗い骨材を含まない粒度に調整した珪砂、石灰石等の骨材を用いることが好ましい。細骨材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。細骨材は、通常用いられる粒径5mm以下のもの(5mmふるい通過分)を使用するのが好ましい。
【0029】
細骨材の粒度は特に限定されるものではなく、必要とする細骨材の粒度の範囲内で調整することができる。細骨材は、JIS A 1102:2014「骨材のふるい分け試験方法」により規定される粗粒率からその粒度を考慮することができる。モルタルとしたときにより良好な流動性が得られやすく、ブリーディングを抑制しやすいという観点から、細骨材の粗粒率は、1~4であることが好ましく、1.5~3.8であることがより好ましく、1.8~3.7であることが更に好ましい。
【0030】
細骨材の含有量は、セメント100質量部に対し、40~300質量部であることが好ましく、50~200質量部であることがより好ましく、60~100質量部であることが更に好ましい。細骨材の含有量が上記範囲内であれば、良好な流動性が得られやすく、強度発現性も一層優れたものとなる。
【0031】
本実施形態に係るモルタル組成物は石膏類を含んでもよい。石膏類としては、例えば、無水石膏、半水石膏、二水石膏が挙げられる。石膏類としては、強度発現性を更に向上させるという観点から、無水石膏が好ましい。石膏類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0032】
石膏類の添加量は、セメント100質量部に対し、無水物換算で1~15質量部であることが好ましく、2~10質量部であることがより好ましく、3~8質量部であることが更に好ましい。石膏類の添加量が上記範囲内であれば、圧縮強度が向上する傾向にある。
【0033】
本実施形態に係るセメント組成物は膨張材を含んでもよい。膨張材は、コンクリート用膨張材として一般に使用されているJIS適合の膨張材(JIS A 6202:2008)であれば、何れの膨張材でもかまわない。膨張材としては、例えば、遊離生石灰を主成分とする膨張材(生石灰系膨張材)、アウインを主成分とする膨張材(エトリンガイト系膨張材)、遊離生石灰とエトリンガイト生成物質の複合系膨張材が挙げられる。膨張材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。膨張材はブレーン比表面積が2000~6000cm2/gのものを使用することが好ましい。
【0034】
膨張材の含有量は、セメント100質量部に対し、0.1~5質量部であることが好ましく、0.5~4質量部であることがより好ましく、1~3質量部であることが更に好ましい。膨張材の含有量が上記範囲内であれば、圧縮強度、寸法変化率等がより一層優れたものとなる。
【0035】
本実施形態に係るモルタル組成物は減水剤を含んでもよい。減水剤は、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤及び流動化剤を含む。このような減水剤としては、JIS A 6204:2011「コンクリート用化学混和剤」に規定される減水剤が挙げられる。減水剤としては、例えば、ポリカルボン酸系減水剤、ナフタレンスルホン酸系減水剤、リグニンスルホン酸系減水剤、メラミン系減水剤が挙げられる。これらの減水剤の中でも、少量の添加量であっても流動性保持時間を確保しやすいという観点から、ポリカルボン酸系減水剤が好ましい。減水剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0036】
減水剤の含有量は、セメント100質量部に対し、0.3~5質量部であることが好ましく、0.5~4質量部であることがより好ましく、0.8~3質量部であることが更に好ましい。減水剤の含有量が上記範囲内であれば、可使時間を確保しやすく、流動性がより一層向上する。
【0037】
本実施形態に係るモルタル組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で各種混和材料を配合してもよい。混和材料としては、例えば、発泡剤、消泡剤、セメント用ポリマー、防水材、防錆剤、収縮低減剤、保水剤、顔料、繊維、撥水剤、白華防止剤、急結剤(材)、急硬剤(材)、凝結遅延剤、石粉、空気連行剤、表面硬化剤が挙げられる。
【0038】
本実施形態に係るモルタル組成物を製造する方法は、特に限定されず、例えば、V型混合機や可傾式コンクリートミキサー等の重力式ミキサー、ヘンシェル式ミキサー、噴射型ミキサー、リボンミキサー、パドルミキサー等のミキサーにより混合することで製造することができる。
【0039】
[モルタルミキサー]
モルタルミキサーは、高速攪拌羽根と低速攪拌羽根を有していれば特に限定されるものではない。このようなミキサーとしては、二軸ミキサー、中心軸に攪拌羽根を有する高速攪拌羽根とミキサーの底面及び側面をこそぎ取るかご型の低速攪拌羽根を有するモルタルミキサー等が挙げられる。攪拌羽根の回転方向は同方向であってもよく、逆方向であってもよい。
【0040】
本実施形態のモルタル調製方法は、高粘性のモルタルであっても短時間でダマ等もなく練ることができ、且つ良好な品質のモルタルを調製することができる。したがって、本実施形態のモルタル調製方法は、通常のモルタルの調製に加えて、高強度特性を備える低水セメント比モルタルや高い水中不分離性を備える水中不分離性モルタル等の高粘性のモルタルの調製に好適に用いることができる。
【実施例0041】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは
ない。
【0042】
[材料]
実施例で用いる材料は以下のとおりである。
セメント:早強ポルトランドセメントと普通ポルトランドセメントの混合品(早強:普通=2:1)
非晶質アルミノシリケート:非晶質アルミノ珪酸化合物(市販品)、ブレーン比表面積:31000cm2/g
石膏:無水石膏(粉末度:7100cm2/g)
膨張材:石灰系膨張材(ブレーン比表面積:3100cm2/g)
増粘剤:ヒドロキシプロピルメチルセルロース
減水剤:ポリカルボン酸塩系高性能減水剤
細骨材:珪砂調整品(粗粒率を2.6~3.6に粒度調整したもの)
【0043】
[モルタル組成物の製造]
セメント100質量部、非晶質アルミノシリケート20質量部、石膏7質量部、膨張材2質量部、細骨材70質量部、増粘剤0.1質量部、減水剤1.5質量部の配合割合でヘンシェルミキサーに投入して混合し、モルタル組成物を製造した。
【0044】
[モルタルの製造]
中心軸に攪拌羽根を有する高速攪拌羽根とミキサーの底面及び側面をこそぎ取るかご型の低速攪拌羽根を有するモルタルミキサーを用いてモルタルの調製を行った。高速攪拌羽根と低速攪拌羽根の回転方向は同じ方向とした。モルタルミキサーに水を投入して各攪拌羽根を回転させながらモルタル組成物を投入して攪拌した。水は、モルタル組成物100質量部に対して20質量部添加した。攪拌条件は表1に示す。
【0045】
[モルタルの評価]
製造したモルタルを下記の方法で評価した。評価は全て20℃環境下で行った。評価結果は表1に示す。
・混練時間
一次混練工程及び二次混練工程の合計の攪拌時間が400秒未満のものを◎、400秒以上500秒未満のものを〇、500秒以上のものを×と評価した。
・練残しの有無
二次混練工程まで終わったモルタルを目視により観察し、完全に均一な状態に練り上げられているものを練残し無しと評価し、均一でなく一部にダマが生じているものを練残し有りと評価した。
・機械の停止有無
一次混練工程又は二次混練工程の過程でモルタルミキサーが停止するか否かを評価した。
・モルタル粘度
TVB15H型粘度計(東機産業株式会社製)を使用し、モルタルの粘度を測定した。測定詳細を下記に示す。
1.混練が完了したモルタルを500mLビーカーに500mL入れる。
2.粘度計のロータを所定の高さまでビーカーに挿入し、測定を開始する。
3.測定が終了したらモニターに表示された数値を読み取り、これを粘度の値とする。
以下に、測定時の詳細を示す。
測定環境条件 : 温度20℃
ロータ種類 : TH5
回転数 : 5rpm
計測時間 : 110秒
・流動性
JIS R 5201:1997「セメントの物理試験方法」のセメントペースト容器(フローコーン)にモルタルを充填し、容器引き上げ後のテーブルフロー値(フローコーン引き抜き後3分経過後)を測定した。
・圧縮強度
JIS A 1108:2018「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準じて、材齢28日における圧縮強度を測定した。供試体の寸法は、直径50mm、高さ100mmとした。供試体は、材齢1日で脱型し、その後20℃の水中で試験直前まで養生した。
【0046】
【0047】
一次混練工程で一定時間練った後で攪拌羽根の速度を上げて二次混練工程を行った実施例のモルタル調製方法ではモルタル組成物と水をゆっくりと一体化してから攪拌速度を上げて十分に練り上げることで、機械が止まることなく短時間でダマもなく練り上げることができ、流動性や圧縮強度といった性能も良好なモルタルを調製することができた。一方、一定の速度で混練を続ける比較例のモルタル調製方法ではモルタルを練ることができない、又は練ったモルタルの性能が劣るという結果だった。具体的には、比較例1及び4のモルタル調製方法では、モルタルが大きなダマとなり攪拌羽根と一緒に回ってしまい練り上げることができなかった。比較例2及び5のモルタル調製方法では、モルタルを練ることはできたが、練りが足りず性能面で劣るものとなった。比較例3及び6のモルタル調製方法では、機械が停止してしまいモルタルを練ることができなかった。