(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123852
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】フェイスおよびエアフィルタ装置
(51)【国際特許分類】
F24F 13/06 20060101AFI20240905BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
F24F13/06 A
F24F7/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031614
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000163660
【氏名又は名称】ケンブリッジフィルターコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】杉山 訓樹
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 誠
【テーマコード(参考)】
3L058
3L080
【Fターム(参考)】
3L058BF06
3L080BA01
3L080BB01
(57)【要約】
【課題】
クリーンルーム内に設置される非単一方向型の噴き出し口における拡散性能の不足や室内粉塵の巻き上げを防止できる、天井面に設置されるエアフィルタ用のフェイスおよび該フェイスを備えるエアフィルタ装置を提供すること。
【解決手段】
噴き出し口を覆うプレート10に、羽根型の複数の周囲開口20であって、環状に半径方向に配置された周囲開口20と、環状の周囲開口20の内輪22内に、複数の小径の開口30が形成され、さらに、内輪22内に複数の小径の開口30より大径の開口40が形成されている、エアフィルタ装置の天井面からの噴き出し口に設置されるフェイス1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアフィルタ装置の天井面からの噴き出し口に設置されるフェイスであって、
噴き出し口を覆うプレートに、
羽根型の複数の周囲開口であって、環状に半径方向に配置された周囲開口と、
前記環状の周囲開口の内輪内に、複数の小径の開口が形成され、
さらに、前記内輪内に前記複数の小径の開口より大径の開口が形成された、
フェイス。
【請求項2】
前記大径の開口は、前記内輪の中心に形成された、
請求項1に記載のフェイス。
【請求項3】
前記周囲開口には、前記環状の周方向に傾斜した板が設置されている、
請求項1に記載のフェイス。
【請求項4】
前記内輪内の大径の開口面積は、前記複数の小径の開口面積の10―60倍である、
請求項1に記載のフェイス。
【請求項5】
前記内輪内の大径の開口と前記複数の小径の開口による開口率は15%~31%である、
請求項1に記載のフェイス。
【請求項6】
前記周囲開口による開口率と、前記内輪内の前記複数の小径の開口と前記大径の開口とによる開口率とを等しくした、
請求項1に記載のフェイス。
【請求項7】
空気を送風するファンと;
前記ファンに接続され、前記ファンから送風された空気をろ過するエアフィルタと;
前記エアフィルタでろ過された空気の天井面からの噴き出し口に設置される、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のフェイスとを備える;
エアフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアフィルタ装置からの噴き出し口に設置されるフェイスに関し、特に、クリーンルームやクリーンブース等の作業箇所にクリーンなエアを供給するエアフィルタ装置の天井面からの噴き出しフェイスおよび該フェイスを備えるエアフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造施設や医療設備等において、クリーンルームの需要が増大している。クリーンルーム等における従来の天井面からのエアフィルタ用噴き出し口拡散型フェイス(ディフューザー)では、例えば、パンチングボードの周囲に段差を設けて、段差部に形成されるスリットから清浄化された空気を噴き出すことにより、同空気を拡散、室内空気質を希釈清浄させるものなどが使用されてきた。
【0003】
一方、クリーンルーム及び関連制御環境の国際規格ISO 14644-16「クリーンルーム及びクリーン機器のエネルギー効率(Energy efficiency in cleanrooms and separative devices)」では、クリーンルームの省エネルギー化に対する要求をまとめている。同書では、クリーンルームの換気効率としてCRE(発生源における気中微粒子濃度/室内の平均気中微粒子濃度)とACE(1点において計測された回復時間/室内換気回数)を提唱し、クリーンルーム内に均一に清浄空気が拡散することを奨励する。そして、同書の
図1では、ディフューザーとは言い難いパンチングボードを用いたエアフィルタからの吹出しエアが真下にだけ流れて、その周囲に渦が生じ、その渦の領域で粉塵が滞留し得ることを示している。ISO 14644-16を受けて、非特許文献1ではパンチングボードやスクリーン膜を用いた噴き出し面を通じてのHEPAフィルタによる空気拡散では、空気の拡散が均一にならず、汚染リスクが高まることを指摘している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Emilio Moia「Pharmaceutical Cleanroom Design &ISO 14664-16」ISPE 2021年9/10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記
図1では、従来の旋回流形成型のディフューザーを用いて空気拡散した場合に、エアフィルタ直下に上昇気流が生じることが示されている。クリーンルーム内ではエアフィルタ直下にもクリーンルーム環境で作業をするためのデスク、あるいは医療設備では手術台周囲の天井面に清浄空気の拡散希釈用の噴き出し口が設置されることが多い。そのような作業用デスクあるいは手術台周囲に上昇気流が生ずると、室内作業あるいは医療処置により発生した粉塵等が、本来の室内気流排気方向へ向かわずに拡散したり、長時間滞留する恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、クリーンルーム内に設置される非単一方向型の噴き出し口における拡散性能の不足や室内粉塵の巻き上げを防止できる、天井面に設置されるエアフィルタ用のフェイスおよび該フェイスを備えるエアフィルタ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るエアフィルタ装置の天井面からの噴き出し口に設置されるフェイス1は、例えば
図1に示すように、噴き出し口を覆うプレート10に、羽根型の複数の周囲開口20であって、環状に半径方向に配置された周囲開口20と、環状の周囲開口20の内輪22内に、複数の小径の開口30が形成され、さらに、内輪22内に複数の小径の開口30より大径の開口40が形成されている。
【0008】
このように構成すると、エアフィルタ装置から吹き出される空気は、フェイスにより、周囲開口を通って円錐状に広がり室内に拡散されつつ、内輪内の開口を通って噴き出し口の下方に流れる。噴き出し口の下方に流れる空気は、小径の開口から流れる空気に、大径の開口から流れる空気が包まれることにより、流れが下方遠方まで届く。したがって、エアフィルタ直下での上昇気流が抑えられ、拡散性能の不足や室内粉塵の巻き上げを防止できる、天井面に設置されるエアフィルタ装置の天井面からの噴き出しフェイスとなる。
【0009】
本発明の第2の態様に係るエアフィルタ装置の天井面からの噴き出し口に設置されるフェイス1では、例えば
図1に示すように、大径の開口40は、内輪22の中心に形成されている。このように構成すると、大径の開口から流れる空気が小径の開口から流れる空気の中心となり、周囲開口から噴き出され拡散する空気との干渉が軽減され、より安定して下方遠方まで流れる。
【0010】
本発明の第3の態様に係るエアフィルタ装置の天井面からの噴き出し口に設置されるフェイス1では、例えば
図2に示すように、周囲開口20には、環状の周方向に傾斜した板28が設置されている。このように構成すると、周囲開口から流れる空気は、フェイス1の中心軸回りの旋回流となり、室内に拡散しやすくなる。
【0011】
本発明の第4の態様に係るエアフィルタ装置の天井面からの噴き出し口に設置されるフェイス1では、内輪22内の大径の開口20の面積は、複数の小径の開口30の面積の10―60倍である。このように構成すると、小径の開口から流れる空気に、大径の開口から流れる空気が適切に包まれ、大径の開口からの空気の流れが遠方まで届き、エアフィルタ直下での上昇気流が抑えられる。
【0012】
本発明の第5の態様に係るエアフィルタ装置の天井面からの噴き出し口に設置されるフェイス1では、内輪22内の大径の開口40と複数の小径の開口30による開口率は15-31%である。このように構成すると、小径の開口から流れる空気と大径の開口から流れる空気との流れが適切に遠方まで届く。したがって、エアフィルタ直下での上昇気流が抑えられる。なお、本書で用いる「開口率」とは、開口が形成される領域の総面積に占める開口の面積の割合を指す。
【0013】
本発明の第6の態様に係るエアフィルタ装置の天井面からの噴き出し口に設置されるフェイス1では、周囲開口20による開口率と、内輪22内の複数の小径の開口30と大径の開口40とによる開口率とが等しくされている。このように構成すると、周囲開口から流れる空気と、内輪内の開口から流れる空気との割合が、ほぼ等しくなり、室内に拡散されつつ、エアフィルタ直下での上昇気流が抑えられる。
【0014】
本発明の第7の態様に係るエアフィルタ装置では、例えば
図5に示すように、空気を送風するファン70と、ファン70に接続され、ファン70から送風された空気をろ過するエアフィルタ80と、エアフィルタ80でろ過された空気の天井面からの噴き出し口に設置される、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のフェイス1、2とを備える。このように構成すると、エアフィルタ直下での上昇気流が抑えられ、拡散性能の不足や室内粉塵の巻き上げを防止できる、天井面からろ過された空気を噴き出すエアフィルタ装置となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エアフィルタ装置の天井面からの噴き出し口に設置されるフェイスにおいて、噴き出し口を覆うプレートに、羽根型の複数の周囲開口であって環状に半径方向に配置された周囲開口と、環状の周囲開口の内輪内に、複数の小径の開口が形成され、さらに、内輪内に複数の小径の開口より大径の開口が形成されているので、非単一方向型の噴き出し口における拡散性能の不足や室内粉塵の巻き上げを防止できる、天井面に設置されるエアフィルタ用のフェイスとなる。また該フェイスを備えたエアフィルタ装置では、拡散性能の不足や室内粉塵の巻き上げを防止できるエアフィルタ装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のフェイスの一例の六面図であり、(a)は背面図、(b)は上面図、(c)は正面図、(d)は左側面図、(e)は下面図、(f)は右側面図である。
【
図2】
図1に示すフェイスの別の視線からの図で、(a)は(b)の正面図に示すA-A線に沿った断面図、(b)は正面図、(c)は背面側の斜視図、(d)は正面側の斜視図である。
【
図3】
図1とは別タイプのフェイスの図で、フェイスを噴き出し口から開いた状態を示し、(a)は(b)の上面図に示すc-c線に沿った断面図、(b)は上面図、(c)は正面側の斜視図、(d)は背面側の斜視図である。
【
図4】周囲開口と板とを示す断面図を表示するフェイスの要部の一例を示す図である。
【
図5】エアフィルタ装置の構成例を示す図で、(a)はファン、エアフィルタおよびフェイスが一体となったもの、(b)はファンが別置きされるもの、(c)はファン、エアフィルタおよびフェイスを有する噴き出し口がそれぞれ別体とされたものの一例を示す。
【
図6】実施例と比較例のフェイスの条件を示す表である。
【
図7】実施例としてのフェイスから噴き出す白煙の様子を示す写真である。
【
図8】比較例として、内輪内に開口が形成されないフェイスから噴き出す白煙の様子を示す写真である。
【
図9】比較例として、内輪内に小径の開口だけが形成されたフェイスから噴き出す白煙の様子を示す写真である。
【
図10】実施例としてのフェイスから噴き出す空気の流れを数値解析した結果の一例を示す図である。
【
図11】比較例として、内輪内に小径の開口だけが形成されたフェイスから噴き出す空気の流れを数値解析した結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一または相当する装置には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0018】
図1および
図2を参照して、本発明によるフェイス1について説明する。フェイス1は、エアフィルタでろ過された清浄な空気をクリーンルーム等の天井面から噴き出す噴き出し口に設置されるディフューザーである。クリーンルーム等としては、半導体製造設備、食品や薬品の製造設備、手術室等の医療設備、バイオ関連製品製造設備、研究設備等、空気清浄度が要求された仕様を満たす部屋であればよく、特に制限はされない。エアフィルタ装置のファン等で送風され、典型的には準HEPAフィルタ、HEPAフィルタ、ULPAフィルタ等でろ過された空気がクリーンルーム内に供給される。非一方向流方式によりクリーンゾーンの空気清浄度を高めるためには、空気が流れにくく、また粉塵等が滞留するような気流空間を作らないためにフェイス1を用いてろ過された清浄な空気をクリーンゾーンに拡散させる。
【0019】
フェイス1は、
図2に示されるように、噴き出し口を覆うプレート10を有する。プレート10は、鉄板等の金属プレートで形成されるのが一般的であるが、樹脂板で形成されてもよく、その材質は制限されない。プレート10、すなわちフェイス1は、例えば4隅のボルト孔12にボルトを通して、噴き出し口に固定されるが、その固定方法は適宜変更可能である。
【0020】
プレート10のほぼ中央の周囲に、複数の羽根型の周囲開口20が複数形成される。ここで羽根型とは、例えば扇風機の羽根のように、複数の周囲開口20が、環状に、半径方向に配列された状態を言う。ここで半径方向とは、例えば扇風機の羽根が湾曲し半径方向から傾斜しているように、湾曲し、また半径方向から傾斜した場合をも含み、厳密な半径方向であることは意味しない。複数の周囲開口20は同形状で同寸法であることが基本であるが、それぞれの周囲開口20の形状や寸法が異なっていてもよい。環状に配置された複数の周囲開口20の中心側端面22を接続した円形状が内輪(「内輪22」とする)となる。
【0021】
周囲開口20のそれぞれには、
図2(c)および(d)でより明確に示されるように、複数の周囲開口20が配置された環状の周方向に傾斜した板28が設置される。板28は、周方向において同一方向に傾斜する。典型的には周囲開口20の半径方向の縁の1つに接続され、傾斜されるが、これには限定されない。金属製のプレート10を用いる場合には、周囲開口20の3辺22、24、26を切り込み、その切り込みで囲まれた板28を傾斜させて形成することができる。
【0022】
プレート10の内輪22内、すなわち周囲開口20より中心側に、複数の小径の開口30が形成される。小径の開口30の数は、特に制限されないが、複数の小径の開口30から噴き出す空気が、少なくとも開口30が形成された下方で一様な流れとなるように、多数形成される。
【0023】
また、プレート10の内輪22内に、小径の開口30より大径の開口40が形成される。大径の開口40は、小径の開口30に囲まれた位置に形成されればよいが、内輪22の中心に形成されるのが好ましい。また、大径の開口40が複数形成されてもよい。
【0024】
このように構成したフェイス1から空気を噴き出すと、環状に配置された周囲開口20から部屋内に円錐状に広がる旋回流が形成される。特に板28があると、噴き出す空気が旋回するように方向付けられるので、より強い旋回流となる。そして、円錐状に広がる旋回流の中心で内輪20内の複数の小径の開口30からフェイス1の下方へ向けた流れが形成される。さらに、その下方へ向けた流れの中に、大径の開口40からの下方へ向けての指向性が強い流れが形成される。大径の開口40からの流れは、周囲を小径の開口30からの流れに囲まれる。そのため、旋回流の影響を受けずに、下方への流れが遠くまで届くことになる。よって、フェイス1を用いることで、エアフィルタ装置からクリーンルームに清浄空気を供給するのに、周囲開口20からの旋回流と大径の開口40からの下方への流れにより、拡散性能の不足や室内粉塵の巻き上げを防止することができる。
【0025】
図3には、
図1および
図2に示すフェイス(ディフューザー)1とは、別の方法で固定されるフェイス2を示す。フェイス2では、固定枠フレーム14が噴き出し口に固定され、フェイス本体16が固定枠フレーム14に回動可能となるように蝶番などで接続される。フェイス16は、例えばフック状金具などで固定枠フレーム14に固定可能で、使用中は固定枠フレーム14に固定されて、メンテナンス時などにはフック状金具を外して
図3に示すように固定枠フレーム14から1辺でつるされた状態となる。
【0026】
フェイス本体16は、フェイス1と同様の構成を有する。すなわちプレート10に周囲開口20、小径の開口30および大径の開口40が形成される。したがって、フェイス2でも、フェイス1と同様に、エアフィルタ装置からクリーンルーム等に清浄空気を供給するのに拡散性能の不足や室内粉塵の巻き上げを防止することができる。このように、プレート10に周囲開口20、小径の開口30および大径の開口40が形成されていることが本発明の要点であり、フェイス1、2を噴き出し口に固定する手段等、周囲の構成は用途等に拠り適宜変更可能である。
【0027】
図4は、周囲開口20と板28とを示す断面図を表示するフェイス1、2の要部の一例を示す図である。図示のように、板28は、周囲開口20が形成される部分付近で、プレート10から傾斜する。
【0028】
次に
図5を参照して、本発明のフェイス1、2を用いるエアフィルタ装置100、110、120について説明する。
図5(a)は、フェイス1、2と、空気を送風するファン70、ファン70に接続されファン70から送風された空気をろ過するエアフィルタ80が噴き出しボックス60として一体化されたエアフィルタ装置100の例を示す模式図である。ファン70では、周囲環境から大気OAを吸引して噴き出しボックス60内に送風する。ファンは、公知のファンであるので、詳細な説明は省略する。ファン70からの空気は、エアフィルタ80でろ過され、要求された清浄度以上の空気とされる。エアフィルタ80としては、HEPAフィルタを用いるのが典型的であるが、特に限定はされない。エアフィルタ80でろ過された空気は、清浄空気CAとしてクリーンルーム(不図示)内等に供給される。フェイス1、2の周囲開口20から部屋内に円錐状に広がる旋回流が形成され、小径の開口30と大径の開口40とにより下方へ向けての指向性気流が形成され、クリーンルーム内での拡散性能の不足や室内粉塵の巻き上げが防止される。エアフィルタ装置100によれば、噴き出しボックス60を天井裏に設置するだけであるので、設置しやすい。
【0029】
図5(b)は、空気を送風するファン70を別体として、フェイス1、2とエアフィルタ80が噴き出しボックス60として一体化されたエアフィルタ装置110の例を示す模式図である。重量が大きくなりがちなファン70を、例えば地上置きとすることにより、エアフィルタ装置110を大型化しやすい。ファン70と噴き出しボックス60の間は、ダクト90で空気を送風する。このように間にダクト90が挟まれ、間接的に接続される場合にも、エアフィルタ80はファン70に接続されると言う。また、
図5(b)では、1基のファン70に1組のエアフィルタ80とフェイス1、2が接続されるが、ダクト90が分岐して、1基のファン70に複数組の噴き出しボックス60としてフェイス1、2が接続されてもよい。特に大型のクリーンルームにおいては、天井に複数の噴き出し口が設けられ、それらの噴き出し口に大型のファン70から送風することはエネルギー効率的にも好ましい。
【0030】
図5(c)は、空気を送風するファン70、エアフィルタ80、フェイス1、2とを別体としたエアフィルタ装置120の例を示す模式図である。エアフィルタ80とフェイス1、2とを別体とし、その間をダクト92で接続する。フェイス1、2だけを噴き出しボックス60に設ける。このようにエアフィルタ80を噴き出しボックス60ではなく別置きとすることにより、噴き出しボックス60を薄型にでき、天井高さに余裕のない設置場所への対応も可能となり、またエアフィルタ80をメンテナンスしやすくできる。エアフィルタ80は、使用に伴い粉塵が溜まり、定期的なメンテナンスが必要であるので、メンテナンスしやすいことは大きなメリットとなる。
【実施例0031】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
図6は、実施例および比較例で用いたフェイスの周囲開口の寸法、開口数、開口面積と開口率、並びに、小径の開口と大径の開口の寸法と数および内輪内開口、すなわち小径の開口と大径の開口の合計の開口面積と開口率をまとめて示す。比較例1では内輪内に開口がない点、比較例2および3では内輪内に大径の開口がない点で本発明と異なり、比較例となる。ここで、周囲開口の開口率とは、周囲開口総面積/プレート面積で、内輪内開口率とは、内輪内開口総面積(小径の総開口面積+大径の総開口面積)/内輪内面積である。また、大径開口寸法/小径開口寸法とは、大径の開口の直径と小径の開口の直径の比で、面積比とは、それぞれの開口の面積比である。
【0032】
実施例1のフェイスを用いて、白煙を室内に供給したときの白煙が拡散する様子の写真を
図7に、比較例1のフェイスを用いて同様にした場合の写真を
図8に、比較例2のフェイスを用いて同様にした場合の写真を
図9に示す。なおいずれのケースでも、白煙を20.2m
3/minの送風空気量に乗せて流した。
【0033】
図7では、フェイスの直下中央に白煙が細く伸びていることが分かる。それに対し、フェイスの内輪内に開口が形成されず、フェイスの周囲開口からだけ白煙が噴出する比較例1の
図8では、白煙がフェイスの下に広がっていることは分かるが、フェイスの直下中央に白煙が伸びることは確認できなかった。また、フェイスの内輪内に小径の開口が形成され周囲開口と共に白煙が噴出する比較例2の
図9では、フェイスの直下中央に白煙が伸びてはいるが、その到達距離が短かった。すなわち、周囲開口と内輪内に複数の小径の開口と大径の開口が形成された本発明のフェイスによれば、拡散性能の不足や室内粉塵の巻き上げを防止できることが確認された。
【0034】
実施例2のフェイスから噴き出す空気の流れを三次元風速計にて測定した結果の一例を
図10に、比較例3のフェイスから噴き出す空気の流れを三次元風速計にて測定した結果の一例を
図11に示す。実施例2では16.2m
3/minで、比較例3では20.2m
3/minで空気を流した。
【0035】
図10と
図11を見比べると、実施例2では中央部(フェイス直下)での上昇気流が比較例に比べて下方でしか生成されておらず、室内粉塵の巻き上げが防止されることが示された。
【0036】
なお、実施例3の実験結果の詳細は省略するが、
図7の実施例1と同様に、フェイスの直下中央に白煙が伸びることが確認された。
【0037】
これまでの説明では、大径の開口40を1つ有するものとして説明したが、小径の開口30に囲まれる位置に複数の大径の開口を形成してもよい。また、1つの大径の開口40の場合、必ずしも内輪20内の中心に形成されなくてもよい。また、板28は、プレート10と別体で形成されてもよい。