IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社グーテンベルクの特許一覧

特開2024-123860造形プレート、それを具備する三次元成形装置、及びそれを用いた三次元成形方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123860
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】造形プレート、それを具備する三次元成形装置、及びそれを用いた三次元成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/245 20170101AFI20240905BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20240905BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20240905BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240905BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240905BHJP
   B29C 64/232 20170101ALI20240905BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20240905BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240905BHJP
【FI】
B29C64/245
B29C64/106
B29C64/295
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/232
B29C64/393
B33Y50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031631
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】522069507
【氏名又は名称】株式会社グーテンベルク
(74)【代理人】
【識別番号】110003890
【氏名又は名称】弁理士法人SIPPs
(72)【発明者】
【氏名】山口 勇二
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】グェン ミン トゥ
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA13
4F213AP06
4F213AR07
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL35
4F213WL52
4F213WL73
4F213WL74
4F213WL85
4F213WL92
(57)【要約】
【課題】 本発明は、簡易的な構成で、成形時に造形プレートによる熱膨張の影響を受けにくく、かつ高い水平性を容易に得ることができる造形プレート、それを具備する三次元成形装置、及びそれを用いた三次元成形方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、上部プレート(11)及び下部プレート(12)を有する造形プレート(10)であって、前記上部プレート(11)が、前記下部プレート(12)に対して摺動可能な状態で固定されており、かつ前記下部プレート(12)が、少なくとも第1の部分(12a)及び第2の部分(12b)に分かれており、そのそれぞれが昇降機構(30)によって昇降可能である、三次元成形装置用の造形プレート(10)に関する。また、本発明は、そのような造形プレートを具備する三次元成形装置、及びそのような三次元成形装置を用いた三次元成形方法に関する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部プレート及び下部プレートを有する造形プレートであって、
前記上部プレートが、前記下部プレートに対して摺動可能な状態で固定されており、かつ
前記下部プレートが、少なくとも第1の部分及び第2の部分に分かれており、そのそれぞれが昇降機構によって昇降可能である、三次元成形装置用の造形プレート。
【請求項2】
前記下部プレートが、少なくとも3つの昇降機構によって昇降可能である、請求項1に記載の造形プレート。
【請求項3】
前記下部プレートの第1の部分が、少なくとも2つの昇降機構によって昇降可能であり、前記下部プレートの第2の部分が、少なくとも1つの昇降機構によって昇降可能である、請求項1に記載の造形プレート。
【請求項4】
前記上部プレートを加熱するためのヒーターをさらに具備する、請求項1に記載の造形プレート。
【請求項5】
前記上部プレートが、球状部材を介して前記下部プレートと接触している、請求項1に記載の造形プレート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の造形プレート、
前記造形プレートの上部で水平方向に移動可能な造形ヘッド、
前記造形プレートを昇降するための少なくとも2つの昇降機構、
前記造形ヘッドに造形材料を提供する造形材料提供機構、
前記造形プレートの水平度を測定するための水平度測定機構、及び
これらの動作を制御する制御装置
を具備する三次元成形装置。
【請求項7】
請求項6に記載の三次元成形装置を用いた三次元成形方法であって、
前記水平度測定機構によって前記造形プレートの水平度を測定する工程、
前記水平度の情報に基づいて前記制御装置が前記昇降機構で前記造形プレートの水平度を調整する工程、及び
前記造形材料提供機構で前記造形材料を前記造形ヘッドに提供し、前記造形ヘッドが造形物を成形する工程
を含む、三次元成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形プレート、それを具備する三次元成形装置、及びそれを用いた三次元成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、三次元の造形物を簡単に成形することができる三次元成形装置、所謂3Dプリンタの普及が進んでいる。三次元成形装置には、様々な方式があり、例えばABS樹脂等の熱可塑性樹脂のフィラメントを高温で溶かし積層させることによって三次元造形物を成形する熱溶解積層法等が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、熱溶解積層法により三次元造形物を成形する三次元成形装置が開示されている。この三次元成形装置は、熱可塑性樹脂を加熱しながら吐出する造形ヘッドを造形プレートの面に沿って二次元方向へ移動させ、また造形プレートを上下に移動させることで、造形プレート上に層状構造物を順次積層し、最終的に三次元造形物を成形する。特許文献1に開示されている造形プレートは、熱可塑性樹脂が吐出されるプレート上部が樹脂製であり、そのプレート上部が固定されるプレート下部を金属製とすることで、プレート上部の熱による変形が防止される。
【0004】
特許文献2には、造形プレートを下部から加熱するステージ加熱部を有する三次元成形装置が開示されている。特許文献2では、ステージ加熱部によって造形物の熱収縮をコントロールするとしている。
【0005】
特許文献3には、造形ヘッドが水平方向だけではなく上下方向にも移動する三次元成形装置が開示されている。この三次元成形装置では、造形プレートが傾斜センサ及び傾斜調整機構を有することで、造形プレートの水平度を校正できるようになっている。
【0006】
特許文献4には、造形プレートが水平方向及び上下方向に変位可能に取付けられている三次元成形装置が開示されている。特許文献4の三次元成形装置では、造形プレートが変位可能に取付けられていることで、造形プレートが熱膨張による影響を受けないとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-000574号公報
【特許文献2】特開2018-069570号公報
【特許文献3】特開2018-108727号公報
【特許文献4】特開2020-537602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
三次元成形装置の造形プレートが熱膨張の影響を受けると、その固定部等に歪みをもたらし装置を故障させたり、造形プレートの水平性を維持できなくなったりする課題がある。また、三次元成形装置では、高度な寸法精度を求められるため造形プレートの水平性は重要であるが、造形プレートの水平性を高度に保つためには、熟練の組み立て作業者やユーザーが手動で調整を行ったり、高価又は複雑な部材を用いたり、又は上記の特許文献に記載のような構成を採用する必要がある。
【0009】
本発明は、簡易的な構成で、成形時に造形プレートによる熱膨張の影響を受けにくく、かつ/又は高い水平性を容易に得ることができる造形プレート、それを具備する三次元成形装置、及びそれを用いた三次元成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、以下の本発明により、上記課題を解決できることを見出した。
【0011】
第1の実施形態として、本発明は、上部プレート及び下部プレートを有する造形プレートであって、前記上部プレートが、前記下部プレートに対して摺動可能な状態で固定されており、かつ前記下部プレートが、少なくとも第1の部分及び第2の部分に分かれており、そのそれぞれが昇降機構によって昇降可能である、造形プレートに関する。
【0012】
本発明においては、上部プレートが下部プレートに対して摺動可能な状態で固定されているため、上部プレートが熱膨張しても他の部材に悪影響を及ぼすことがない。また、造形プレートが片持ち梁のように一箇所で固定されている場合には、造形プレート上に重い造形物を成形した際に造形プレートに撓みが発生することがある。それにより造形プレートの水平性が維持できなくなる場合があるが、本発明によれば、下部プレートが少なくとも第1の部分及び第2の部分に分かれて上部プレートを下側から支持しているため、造形プレートに撓み等が発生しにくい。さらに、本発明によれば、下部プレートが、少なくとも第1の部分及び第2の部分に分かれているために、下部プレートに熱が伝わったとしても下部プレートの熱膨張は他の部材に大きく影響しない。
【0013】
また、この実施形態では、造形プレートに撓みが発生したとしても、第1の部分及び第2の部分のそれぞれが昇降機構によって昇降可能であるため、高い水平性を容易に得ることができる。そして、このような造形プレートが三次元成形装置に組み込まれた場合には、完全に全自動で水平の校正が可能となる。従来は、三次元成形装置を製造する場合には、造形プレートを完全に水平性にするために熟練の技術者が製造を行っていた。そして、三次元成形装置の輸送時、設置時、使用時等にも造形プレートの水平性が完全に保たれるように注意する必要があった。それに対して、本発明の造形プレートでは、昇降機構の自動操作によって造形プレートの水平性を校正できるので、毎回の使用時に水平性を校正すればよいだけであり、三次元成形装置の製造、輸送、設置等において、非常に有利となる。
【0014】
本発明の造形プレートを組み込んだ三次元成形装置は、熱膨張の影響を受けにくく、かつ高い水平性を容易に得ることができるため、従来の三次元成形装置と同じ成形スピードで比較した場合に、造形物を非常に精密かつ綺麗に製造できることがわかった。熱膨張及び/又は水平性が造形物に影響を与えるとは予想されてはいたものの、製造できる造形物の精密性は、外観上の見た目で簡単に見分けがつくレベルで異なっており、予想以上であった。
【0015】
第2の実施形態として、本発明の造形プレートは、少なくとも3つの昇降機構によって昇降可能である。
【0016】
このような実施形態では、全体として3つの昇降機構によって造形プレートを昇降させることができるため、X-Y平面における高い水平性を得ることができる。すなわち、この実施形態では、X-Y平面にある造形プレートを1つの昇降機構でZ方向に昇降させながら、そのX-Y平面における水平性を調整するために、2つの昇降機構で、X-Z方向及びY-Z方向の両方を調整することが可能になる。全体として2つの昇降機構によって造形プレートの水平性を調整するためには、X-Z方向及びY-Z方向の両方向のいずれかで変位が出ないような構成とする必要があり、例えばリニアガイドのような高価な部材を採用する必要が出るため、3つの昇降機構で両方向の変位を微調整できる第2の実施形態は特に有利である。
【0017】
第3の実施形態として、前記下部プレートの第1の部分が、少なくとも2つの昇降機構によって昇降可能であり、前記下部プレートの第2の部分が、少なくとも1つの昇降機構によって昇降可能である。
【0018】
このような実施形態では、下部プレートの第1の部分をX方向又はY方向のいずれかにわたって延在させて、その両端において昇降機構で昇降可能とさせて、下部プレートの第2の部分を、第1の部分が存在しない方向に配置させることができる。例えば、下部プレートの第1の部分を、X方向にわたって延在させてその両端部において昇降機構と連結可能とさせており、下部プレートの第2の部分を、第1の部分が存在しないY方向の端部に延在させてY方向の端部で昇降機構と連結可能とさせることができる。このような実施形態では、非常に簡易的に本発明の造形プレートを構成できるため有利である。
【0019】
第4の実施形態として、本発明の造形プレートは、上部プレートを加熱するためのヒーターをさらに具備する。
【0020】
このような実施形態では、上部プレートが特に熱膨張の影響を受けることになるが、本発明の造形プレートの構成では影響を受けにくくなるため、本発明の造形プレートの構成が特に有利となる。
【0021】
第5の実施形態として、本発明の造形プレートは、前記上部プレートが、球状部材を介して前記下部プレートと接触している。なお、球状部材は、真球状である必要はなく、その効果が得られる範囲で断面が曲線状であればよい。
【0022】
このような実施形態では、上部プレート及び球状部材が点接触となり、球状部材及び下部プレートも点接触になる。そのため、上部プレートは下部プレートから摺動しやすく、また上部プレートから下部プレートへの伝熱が最小限に抑えることができる。さらに、上部プレートに何らかの外力が加わっても、上部プレートは球状部材の上でわずかに傾くことができる。これにより、上部プレートが破壊等もされにくくなるため好ましい。上部プレートが傾いたとしても、本発明の造形プレートは、三次元成形装置に組み込んだ場合に完全に全自動で水平の校正が可能であるため、この校正を行うことで問題なく三次元成形が可能である。
【0023】
第6の実施形態として、本発明は、上記のような造形プレート、前記造形プレートの上部で水平方向に移動可能な造形ヘッド、前記造形プレートを昇降するための少なくとも2つの昇降機構、前記造形ヘッドに造形材料を提供する造形材料提供機構、前記造形プレートの水平度を測定するための水平度測定機構、及びこれらの動作を制御する制御装置を具備する三次元成形装置に関する。
【0024】
本発明の三次元成形装置は、水平度測定機構によって造形プレートの水平度を測定し、この情報に基づいて、昇降機構が水平度を調整することができる。上述のように、本発明の三次元成形装置は、毎回の使用時及び使用中のいずれかのタイミングで、全自動で水平性を校正することができ非常に有利となる。また、上述のように、本発明の三次元成形装置は、予想外にも精密かつ綺麗に造形物を製造できるため、非常に有利である。
【0025】
第7の実施形態として、本発明は、上記のような三次元成形装置を用いた三次元成形方法であって、前記水平度測定機構によって前記造形プレートの水平度を測定する工程、前記水平度の情報に基づいて前記制御装置が前記昇降機構で前記造形プレートの水平度を調整する工程、及び前記造形材料提供機構で前記造形材料を前記造形ヘッドに提供し、前記造形ヘッドが造形物を成形する工程を含む、三次元成形方法に関する。
【0026】
この実施形態の方法によれば、成形開始時にその都度、造形プレートを自動で水平にすることができるため、手動の設定による手間が掛かることはなく、また三次元成形装置の造形プレートの水平性について製造時から日常の使用時に到るまで特段の注意を払う必要がない。また、造形プレートを常に水平な状態で造形物を成形することができ、それにより精密かつ綺麗に造形物を製造できるため、非常に有利である。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、簡易的な構成で、成形時に造形プレートによる熱膨張の影響を受けにくく、かつ/又は高い水平性を容易に得ることができる造形プレート、それを具備する三次元成形装置、及びそれを用いた三次元成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明に係る三次元成形装置の1つの実施形態についての概略図を示している。
図2図2は、図1の三次元成形装置について筐体等を除いて表示した概略図を示している。
図3A図3Aは、本発明の造形プレートの1つの実施形態について概略的な平面図を示している。
図3B図3Bは、本発明の造形プレートの1つの実施形態について概略的な側面図を示している。
図4A図4Aは、本発明の造形プレートの1つの実施形態について、上部プレートと下部プレートとの固定部分の概略的な斜視図を示している。
図4B図4Bは、本発明の造形プレートの1つの実施形態について、上部プレートと下部プレートとの固定部分の概略的な断面図を示している。
図4C図4Cは、本発明の造形プレートの1つの実施形態について、上部プレートが下部プレートに対して傾いた場合の固定部分の概略的な断面図を示している。
図5A図5Aは、上部プレートと下部プレートとの固定部分の他の実施形態の概略的な斜視図を示している。
図5B図5Bは、上部プレートと下部プレートとの固定部分の他の実施形態の概略的な断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を以下の実施形態を例として具体的に説明をするが、本発明はこれによって限定されるものではない。本明細書における各装置、機構、手段等について特に詳細な言及がない場合には、これらについては当業者であれば周知の機械的装置、機構、手段等を用いることができる。各実施形態は、当業者が通常の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、各実施形態について特記していない構成については、他の実施形態と同じ構成又はその実施形態に適した構成を有することができる。
【0030】
図1は、本発明に係る三次元成形装置の1つの実施形態についての概略図を示している。図2は、図1から筐体40、フィラメントロール50及びフィラメント51、制御装置60等を除いた図面であり、造形プレート10、造形ヘッド20、及び昇降機構30を主に示している。また、図3A及び図3Bは、斜視図で表された図2の平面図及び側面図をそれぞれ示している。
【0031】
実際の三次元成形装置100では、造形ヘッド20等に信号を送るためのケーブル、送風ファン、造形ヘッド20を動作させるためのモーター、ベルト、プーリー、リミットセンサ等の様々な部材がさらに存在しているが、これらも本図面では省略されている。
【0032】
本明細書において、「水平方向」とは図面中のX-Y方向をいい、「水平」とは、X-Y平面のX-Z方向及びY-Z方向の一方又は両方で、Z方向の変位が三次元造形する上で無視できる程度であることをいう。また、「上下方向」とは、図面中のZ方向をいう。X方向及びY方向は、造形物が成形される平面における任意の方向であり、図面中に示されているX方向及びY方向は一例である。
【0033】
図1は、三次元成形装置100に一例を示している。このような三次元成形装置は、造形プレート10、造形プレート10の上部で水平方向に移動可能な造形ヘッド20、造形プレート10を昇降するための昇降機構30、筐体40、造形材料提供機構50、及びこれらの制御装置60を有する。
【0034】
三次元成形装置100は、造形を開始する前に、水平度測定機構によって造形プレート10の水平度を測定し、その水平度の情報に基づいて制御装置60が昇降機構30で造形プレート10の水平度を調整することができる。これらの水平度の調整工程は、水平度が許容範囲内に入るまで、2回以上繰り返すことができる。造形プレート10が水平になったら、造形材料提供機構50で造形材料51を造形ヘッド20に提供し、造形ヘッド20で造形物を成形する。
【0035】
この実施形態の三次元成形装置100は、熱溶解積層法の一種であるFFF(Fused Filament Fabrication)方式の装置である。この方式は、造形プレート10上に、造形材料となる熱可塑性樹脂のフィラメント51を造形ヘッド20で溶融しながら造形物を成形する。造形ヘッド20は、水平方向に動いて造形プレート10上に溶融樹脂を吐出しながら、造形プレート10が昇降機構30によって上下方向に移動することで、三次元的に造形物を成形する。熱可塑性樹脂のフィラメント51は、筐体40の外側にあるフィラメントロール50から筐体40のフィラメント供給部52を通じて造形ヘッド20のエクストルーダーに供給される。フィラメント51は、このような造形材料提供機構によって造形ヘッド20に供給されるが、造形材料提供機構は、三次元成形装置の方式によって適宜変更することができる。
【0036】
なお、本発明の三次元成形装置100は、このようなFFF方式の三次元成形装置に限定されるものではなく、造形プレート10の水平性及び/又は熱膨張が問題となるすべての方式の三次元成形装置100を包含する。例えば、熱溶解積層方式、インクジェット方式、BMD(Bound Metal Deposition)方式等の様々な方式の三次元成形装置100とすることができる。また、本発明の三次元成形装置100は、光造形方式(特に、LCD方式、DLP方式)の三次元成形装置であってもよい。これらの方式は、造形断面積又は造形断面形状が急激に変化する箇所において造形プレートの水平性が課題となることがあり、本発明の三次元成形装置100は、その課題を解決することができる。
【0037】
三次元成形装置100は、制御装置60のコントロールパネルを用いて、又は制御装置60が有線又は無線で接続された端末を通じて、様々な設定がされる。制御装置60は、モーター等を制御して造形プレート10及び昇降機構30の動作を制御することができ、またヒーター等を制御することによって造形プレート10及び造形ヘッド20の温度等を制御することができる。
【0038】
図2図3A及び図3Bに示されているように、造形プレート10は、上部プレート11、並びに下部プレートの第1の部分12a及び第2の部分12bを有している。上部プレート11には、昇降機構30は接続されておらず、下部プレート12において昇降機構30が接続されている。下部プレート12の下側には、さらに筐体40の底部41が示されている。
【0039】
上部プレート11は、造形物がその上に成形されるプレートである。上部プレート11は、同一面上、造形物が成形される面の裏側に、ヒーターを有していてもよい。ただし、ヒーターは、上部プレート11の裏側に存在している必要はなく、チャンバー内の全体を加熱するようなヒーター等であってもよい。
【0040】
上部プレート11は、X-Y平面において分割されていない1枚の板状部材であることができるが、本発明の有利な効果が得られる限り、X-Y平面において2つ以上の部分に分かれていてもよい。
【0041】
上部プレート11は、下部プレート12に対して摺動可能な状態で固定されているため、加熱された時に膨張をしても摺動することによって自由に伸縮することができる。なお、造形物を、上部プレート11の中心部分から成形することによって、上部プレート11の熱膨張が造形物の寸法精度に実質的に影響を与えないようにすることができる。
【0042】
この実施形態においては、下部プレート12は、第1の部分12a及び第2の部分12bに少なくとも分かれているが、3つ以上に分かれていてもよい。下部プレート12が3つ以上に分かれている場合、そのそれぞれに昇降機構が接続されていてもよい。
【0043】
下部プレート12は、造形プレート10のアスペクト比にもよるが、三次元成形装置100の奥行き方向に、すなわちY方向に、2つに分かれていることが好ましい。これにより、上部プレート11のY-Z方向の水平度を調整することができるようになる。例えば、昇降機構30が奥行側に1つ存在する従来の三次元成形装置100では、X-Z方向の水平度については様々な手段で対応されていたが、Y-Z方向の水平度は、実質的に考慮されていなかった。Y方向に2つに分かれた下部プレート12を用いる場合、Y-Z方向の水平度を調整することができるようになり、例えば造形物が重くてプレートがたわむ場合、なんらかの衝撃でY-Z方向の水平度が保たれなくなった場合等に、対応できるようになる。ただし、下部プレート12は、三次元成形装置100の幅方向に、すなわちX方向に、2つに分かれていてもよく、これによりX-Z方向の水平度を調整できるようにしてもよい。
【0044】
図2に示す実施形態においては、下部プレート12の第1の部分12aは、造形プレート10のX方向の幅の実質的に全体にわたって存在している。第2の部分12bは、第1の部分12aとはY方向において分かれており、X方向において昇降機構と接続できかつ上部プレート11を支持するのに十分な幅のみを有している。下部プレート12の第1の部分12a及び第2の部分12bは、それぞれ、X-Y平面において上部プレート11の外側に延在し、上部プレート11の外側の部分において、昇降機構30a,30b,30cと接続することができる。
【0045】
下部プレート12の第1の部分12aは、X方向の両端において2つの昇降機構30a,30bで昇降可能となっている。このような実施形態では、第1の部分12aの2つの昇降機構によって、造形プレート10全体のZ方向の位置を調整するとともに、X-Z方向の水平度を調整することができる。また、下部プレート12の第2の部分12bが接続している昇降機構30cによって、造形プレート10全体のZ方向の位置を調整するとともに、Y-Z方向の水平度を調整することができる。これにより、造形プレート10がZ軸上のどの位置にあっても、上部プレート11の水平度を完全に制御することができる。ただし、下部プレート12の第1の部分12aは、X-Z方向の水平度を保つことができるようにすることで、1つの昇降機構が接続されていてもよい。
【0046】
上部プレート11の大きさは、100cm以上、300cm以上、500cm以上、800cm以上、又は1000cm以上であってもよく、10000cm以下、5000cm以下、又は3000cm以下であってもよい。上部プレートのアスペクト比(X方向の寸法:Y方向の寸法)は、1:0.1~1:10、1:0.3~1:3、1:0.5~1:2の範囲とすることができる。
【0047】
上部プレート11の下部プレート12に対する固定部分1は、摺動可能な状態であれば限定されないが、例えば図3Aに示されているように上部プレート11が熱膨張する方向に延びる長穴にボルトとナットで固定したり、リニアガイド、スライドレール等を使って固定をしたりすることができる。この場合、長穴は、上部プレート11にあっても下部プレート12にあってもよい。また、上部プレート11と下部プレート12との間を、バネ等の弾性体を介在させて固定した上で、上部プレート11と下部プレート12とを摺動可能な状態で固定することができる。この場合には、上部プレートに何らかの外力が加わっても、上部プレート11が傾くだけであり、上部プレート11が破壊等もされにくくなる。
【0048】
図2及び図3Aに示す実施形態において、下部プレート12の第1の部分12aは、上部プレートと2つの固定部分1a,1bで固定されており、下部プレート12の第2の部分12bは、上部プレートと1つの固定部分1cで固定されている。
【0049】
図4Aは、上部プレート11と下部プレート12の第1の部分12aとの固定部分1aの斜視図を示している。また、図4Bは、図4Aの固定部分1aの断面図を示している。この実施形態においては、固定部分1aは、上部プレート11が、球状部材2を介して下部プレートの第1の部分12aに接触して固定されている。
【0050】
図4Bに示すように、固定部分1aのボルト3は、球状部材2、2つのワッシャー4,4’、及び弾性部材5を貫通してナット6で固定されている。ここでは、弾性部材5は、シリコーンゴム等の可撓性材料で構成されており、弾性部材5があることによって上部プレート11と下部プレートの第1の部分12aとを押し付けながら強く拘束することができる。弾性部材5としては、2枚のプレートを押し付けながら拘束できれば可撓性材料に限定されず、例えば押しバネ等であってもよい。このように球状部材を介して固定することによって、上部プレート11、球状部材2、及び下部プレート12がそれぞれ点接触になるため、上部プレート11から下部プレート12への伝熱が最小限に抑えることができる。
【0051】
図4Cに示すように、上部プレート11、球状部材2、及び下部プレート12がそれぞれ点接触になっている結果、上部プレート11はわずかに傾くことができる。したがって、上部プレート11に何らかの外力が加わっても、上部プレート11が傾くだけであり、上部プレート11が破壊等もされにくくなる。上部プレート11が傾いたとしても、造形プレート10は、三次元成形装置100に組み込んだ場合に完全に全自動で水平の校正が可能であるため、この校正を行うことで問題なく三次元成形が可能である。
【0052】
このように球状部材2は、2つのプレートを固定するために非常に有用であり、このような固定方法は、本発明の上部プレート11と下部プレート12との固定だけではなく、2つのプレートを固定するための様々な用途において有用である。
【0053】
図5Aは、上部プレート11と下部プレート12の第1の部分12aとの固定部分1aの他の実施形態の斜視図を示している。また、図5Bは、図5Aの固定部分1aの断面図を示している。この実施形態においては、球状部材2である丸頭ボルト3があることによって、上部プレート11は下部プレートの第1の部分12aと摺動可能となっている。
【0054】
この実施形態においては、丸頭ボルト2,3の外側には、上部プレート11と下部プレート12の第1の部分12aと距離を画定するスペーサ7が存在している。丸頭ボルト2,3が存在するだけでは、上部プレート11と下部プレート12の第1の部分12aは固定されないため、上部プレート11と下部プレート12とを、弾性体であるバネ8を介して連結することによって固定している。
【0055】
このような実施形態では、バネ8による固定は上部プレート11と下部プレートの第1の部分12aとを押し付けながら拘束することができ、かつ丸頭ボルト2,3があることによってこれらを摺動可能な状態としている。バネ8は、上部プレート11の側面に取付けたボルト11xと、下部プレート12の第1の部分12aの取付穴12xとの間で取付けられているが、バネ8の取付け方については特に限定されない。
【0056】
造形ヘッド20は、水平方向に移動することができ、この移動の方式として、CoreXY方式と呼ばれるオープンソースの動作方式を採用することができる。この方式では、造形ヘッド20に2本のベルトを接続して、造形ヘッド20をX-Y平面で駆動させる。2本のベルトをそれぞれプーリーを介して2つのモーターで動かすことで、X軸方向のリニアガイド21及びY軸方向のリニアガイド22を通じて造形ヘッド20を自由に移動させることができる。ただし、造形ヘッド20は、水平方向に移動できればこれに限定されるものではなく、他の方式、例えばデカルト(カルテシアン)方式、クロスガントリー方式、H-bot方式等を採用してもよい。
【0057】
造形ヘッド20は、水平度測定機構として、本分野で公知のタッチ式のレベリングセンサを有することができる。造形ヘッド20を上部プレート11上で走査させて、例えば3点の位置でZ方向の造形ヘッドからの距離を測定することによって、上部プレート11の水平度を測定することができる。水平度測定機構としては、電磁誘導式センサ、Tof式の光センサ、LiDARセンサ、通電式センサ、特許文献3に記載のような傾斜センサ等の様々な方式を用いることができる。
【0058】
図3A及び図3Bに示されるように、昇降機構30は、すべりねじ31、リニアブッシュ32、及びすべりねじ31用のモーター33から構成することができる。
【0059】
下部プレート12の第2の部分12bのための昇降機構30は、2つのリニアブッシュ32,32’を有している。昇降機構30をこのように構成することで、下部プレート12が回転の力を受けることなく、Z軸方向に昇降することができる。すべりねじ31は、筐体の底部41の下側にあるモーター33と下部で連結しているが、すべりねじ31の上部は他の部材と連結していないのに対して、リニアブッシュ32は、下部で筐体の底部41と連結し、上部では造形ヘッド20の駆動機構等と連結させることができる。
【符号の説明】
【0060】
1…固定部分
2…球状部材
3…ボルト
4…ワッシャー
5…弾性部材
6…ナット
7…スペーサ
8…固定用バネ
10…造形プレート
11…上部プレート
12…下部プレート
12a…下部プレートの第1の部分
12b…下部プレートの第2の部分
20…造形ヘッド
21…X軸方向のリニアガイド
22…Y軸方向のリニアガイド
30…昇降機構
31…すべりねじ
32…リニアブッシュ
33…モーター
40…筐体
41…筐体の底部
50…フィラメントロール
51…フィラメント
52…フィラメント供給部
60…制御装置
100…三次元成形装置



図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B