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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123866
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂粉体塗料及び塗装方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/02 20060101AFI20240905BHJP
   C09D 5/03 20060101ALI20240905BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240905BHJP
【FI】
C09D163/02
C09D5/03
C09D7/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031639
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003322
【氏名又は名称】大日本塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】増田 悠介
(72)【発明者】
【氏名】福田 訓之
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DB061
4J038JB32
4J038JB36
4J038KA03
4J038KA08
4J038MA02
4J038NA01
4J038NA03
4J038NA04
4J038NA26
4J038PB05
4J038PB07
4J038PB09
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】ビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いて、貯蔵安定性に優れ、かつ塗膜外観性、耐水性及び耐溶剤性に優れる塗膜を形成できるエポキシ樹脂粉体塗料を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び顔料(C)を含むエポキシ樹脂粉体塗料であって、前記エポキシ樹脂(A)が、ビスフェノールF型エポキシ
樹脂(A1)であって、前記硬化剤(B)が、イミダゾリン誘導体(B1)と、トリアジン骨格を有さないイミダゾール誘導体(B2)と、トリアジン骨格を有するイミダゾール誘導体(B3)とを含有し、前記トリアジン骨格を有するイミダゾール誘導体(B3)の融点が、150℃以上200℃以下の範囲にある、エポキシ樹脂粉体塗料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び顔料(C)を含むエポキシ樹脂粉体塗料であって、
前記エポキシ樹脂(A)が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(A1)であって、
前記硬化剤(B)が、
イミダゾリン誘導体(B1)と、
トリアジン骨格を有さないイミダゾール誘導体(B2)と、
トリアジン骨格を有するイミダゾール誘導体(B3)とを含有し、
前記イミダゾール誘導体(B3)の融点が、150℃以上200℃以下の範囲にある、エポキシ樹脂粉体塗料。
【請求項2】
前記イミダゾリン誘導体(B1)の含有量が、前記イミダゾリン誘導体(B1)、前記イミダゾール誘導体(B2)および前記イミダゾール誘導体(B3)の合計量に対して、33質量%以上99質量%以下である、請求項1に記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂粉体塗料が、直管又は異形管の塗装に用いられる、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
【請求項4】
120℃以上280℃以内の範囲内で予熱した直管又は異形管の被塗物の内面に、粉体塗料を塗着させ、その後、硬化又は加熱して前記被塗物の内面に塗膜を形成する塗装方法であって、
前記粉体塗料が、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び顔料(C)を含むエポキシ樹脂粉体塗料であって、
前記エポキシ樹脂(A)が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(A1)であって、
前記硬化剤(B)が、
イミダゾリン誘導体(B1)と、
トリアジン骨格を有さないイミダゾール誘導体(B2)と、
トリアジン骨格を有するイミダゾール誘導体(B3)とを含有し、
前記イミダゾール誘導体(B3)の融点が、150℃以上200℃以下の範囲にある、塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂粉体塗料及び塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築建材、家電製品、自動車等の構造材として用いられる多くの金属の製品や部品は、美観および耐食性が要求されることから、その表面を塗料組成物で塗装されている。特定の分野においては、生産性の効率化および環境負荷低減を考慮し、溶剤を用いる湿式の塗料ではなく、溶剤を含まずに短時間で硬化する速硬化性を有する乾式の粉体塗料が好ましく利用されている。例えば、安全性に優れ、作業効率の高い粉体塗料を金属の部品として水道管などのインフラに用いる部材に塗装することが広く利用されている。
【0003】
粉体塗料に用いられる樹脂としては、製造後に長時間保存しても塗膜性能の変化が少ないといった優れた貯蔵安定性を有し、金属座部表面への付着性に優れたエポキシ樹脂等が挙げられる。更に最近では、より安全性を考慮する観点から、金属座部表面への付着性に優れたビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いる粉体塗料が求められている。
しかしながら、ビスフェノールF型エポキシ樹脂粉体塗料は、製造後、塗料として利用するまでの間に塗料性能が変化しやすく、貯蔵安定性に問題があった。また、水道管及びその部品資材に利用する場合には、塗膜表面の凸凹が少なく、塗膜に気泡の残らない塗膜外観性と、長期間の耐水性が求められている。さらに、塗装後における水道管の塗膜補修や、硬化性等を確認するため溶剤ラビングを実施することがあるため、塗膜の耐溶剤性も求められている。
【0004】
そこで、これらの従来の問題を解決するために、例えば、引用文献1では、ビスフェノールA型又はF型のエポキシ樹脂を含有し、170℃以上の融点を有するイミダゾール誘導体を配合するエポキシ樹脂粉体塗料組成物が開示されている。
また、引用文献2では、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、石英系粉末を一定割合で配合する鋳鉄管内面用エポキシ樹脂粉体塗料組成物が開示されている。
また、引用文献3では、主にビスフェノールF型エポキシ樹脂、融点が130~200℃の硬化剤を含有するエポキシ樹脂粉体塗料が開示されている。
【0005】
特許文献1~3のいずれも、貯蔵安定性を向上させることが記載されているが、塗膜外観性、耐水性、耐溶剤性が十分ではないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-204329号公報
【特許文献2】特開2015-048454号公報
【特許文献3】特開2021-169593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いて、貯蔵安定性に優れ、かつ塗膜外観性、耐水性及び耐溶剤性に優れる塗膜を形成できるエポキシ樹脂粉体塗料及び塗装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、本発明の特徴を列記する。
(1)エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び顔料(C)を含むエポキシ樹脂粉体塗料であって、前記エポキシ樹脂(A)が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(A1)であって、前記硬化剤(B)が、イミダゾリン誘導体(B1)と、トリアジン骨格を有さないイミダゾール誘導体(B2)と、トリアジン骨格を有するイミダゾール誘導体(B3)とを含有し、前記イミダゾール誘導体(B3)の融点が、150℃以上200℃以下の範囲にある、エポキシ樹脂粉体塗料。
(2)前記イミダゾリン誘導体(B1)の含有量が、前記イミダゾリン誘導体(B1)、前記イミダゾール誘導体(B2)および前記イミダゾール誘導体(B3)の合計量に対して、33質量%以上99質量%以下である、(1)に記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
(3)前記エポキシ樹脂粉体塗料が、直管又は異形管の塗装に用いられる、(1)または(2)に記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
(4)120℃以上280℃以内の範囲内で予熱した直管又は異形管の被塗物の内面に、粉体塗料を塗着させ、その後、硬化又は加熱して前記被塗物の内面に塗膜を形成する塗装方法であって、前記粉体塗料が、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び顔料(C)を含むエポキシ樹脂粉体塗料であって、前記エポキシ樹脂(A)が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(A1)であって、前記硬化剤(B)が、イミダゾリン誘導体(B1)と、トリアジン骨格を有さないイミダゾール誘導体(B2)と、トリアジン骨格を有するイミダゾール誘導体(B3)とを含有し、前記イミダゾール誘導体(B3)の融点が、150℃以上200℃以下の範囲にある、塗装方法。
【発明の効果】
【0009】
そこで、本発明によれば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いて、貯蔵安定性に優れ、かつ塗膜外観性、耐水性及び耐溶剤性に優れる塗膜を形成できるエポキシ樹脂粉体塗料及び塗装方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のエポキシ樹脂粉体塗料を詳細に説明する。
【0011】
本発明は、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び顔料(C)を含むエポキシ樹脂粉体塗料であって、エポキシ樹脂(A)が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(A1)であって、硬化剤(B)が、イミダゾリン誘導体(B1)と、トリアジン骨格を有さないイミダゾール誘導体(B2)と、トリアジン骨格を有するイミダゾール誘導体(B3)とを必須成分として含有し、イミダゾール誘導体(B3)の融点が150℃以上200℃以下の範囲にある。
【0012】
(エポキシ樹脂粉体塗料)
本発明におけるエポキシ樹脂粉体塗料とは、塗料中に有機溶剤又は水を含まず、エポキシ樹脂を含有する塗膜形成成分のみからなる粉末状の塗料である。粉末状にすることで、保管在庫等のハンドリング性、塗装等の作業効率を高めることができる。
【0013】
<ビスフェノールF型エポキシ樹脂(A1)>
本発明で使用するエポキシ樹脂(A)としては、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(A1)を用いる。ビスフェノールF型はビスフェノールA型よりも、より人体等への安全性が高いことが知られている。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(A1)は、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンの反応によって得られる。また、本発明のビスフェノールF型固形エポキシ樹脂は、置換基を有していても良い。置換基はアルキル基、フェニル基、またはα-メチルベンジル基が好ましく、メチル基またはα-メチルベンジル基が特に好ましい。
【0014】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(A1)のエポキシ当量(g/eq.)は、好ましくは700~3000の範囲であり、より好ましくは900~2500の範囲であり、更に好ましくは1000~2300の範囲である。エポキシ当量が小さいと粉体塗料とした場合の貯蔵安定性が悪くなるおそれがある。エポキシ当量が大きいと溶融粘度が高くなり、粉体塗料として流動性が悪く外観が凹凸等の不良になるおそれがあるとともに塗膜中の気泡残存も増える。エポキシ当量が700~3000の範囲であれば、貯蔵安定性に問題がなく、塗膜外観が良好で、耐水性、耐溶剤性の良好な塗膜が得られる粉体塗料となる。
【0015】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(A1)の軟化点は、好ましくは70~130℃の範囲であり、より好ましくは80~120℃の範囲であり、更に好ましくは85~110℃の範囲である。軟化点が低いと粉体塗料の貯蔵安定性が悪くなり、軟化点が高いと粉体塗料の流動性が悪くなり、また、塗装後の塗膜表面の平滑性が損なわれ、耐水性、耐溶剤性が低下するおそれがある。軟化点が70~130℃の範囲であれば、粉体塗料とした場合、貯蔵安定性に問題のない粉体塗料が得られ、塗膜外観が良好で、耐水性、耐溶剤性等の良好な塗膜が得られる。
【0016】
<硬化剤(B)>
本発明のエポキシ樹脂粉体塗料は、硬化剤(B)として、イミダゾリン誘導体(B1)と、トリアジン骨格を有さないイミダゾール誘導体(B2)と、トリアジン骨格を有するイミダゾール誘導体(B3)とを必須成分として含有する。この3種類を同時に含有することで、本発明のエポキシ樹脂粉体塗料は、貯蔵安定性、塗膜外観、耐水性及び耐溶剤性に優れることができる。それぞれの成分について、以下に説明する。
【0017】
<イミダゾリン誘導体(B1)>
イミダゾリン誘導体(B1)は、化合物内にイミダゾリン骨格を有する硬化剤である。
イミダゾリン誘導体(B1)は、下記式(1)で表される。
【化1】
【0018】
式(1)中、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、脂肪族基又は芳香族基であってよく、好ましくは脂肪族基(例えば脂肪族炭化水素基)であり、例えばアルキル基、アルケニル基、アリール基又はヒドロキシアルキル基である。Rにおける有機基は二価の脂肪族基又は二価の芳香族基であってよく、好ましくは脂肪族基である。また、Rにおける有機基は、1個又は複数の窒素原子又は酸素原子を有していてもよい。
【0019】
具体的に、イミダゾリン誘導体(B1)の例としては、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-フェニルイミダゾリン、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリン、2-メチルイミダゾリン、2,4-ジメチルイミダゾリン、2-エチルイミダゾリン、2-エチル-4-メチルイミダゾリン、2-ベンジルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン、2-(o-トリル)-イミダゾリン、テトラメチレン-ビス-イミダゾリン、1,1,3-トリメチル-1,4-テトラメチレン-ビス-イミダゾリン、1,3,3-トリメチル-1,4-テトラメチレン-ビス-イミダゾリン、1,1,3-トリメチル-1,4-テトラメチレン-ビス-4-メチルイミダゾリン、1,3,3-トリメチル-1,4-テトラメチレン-ビス-4-メチルイミダゾリン、1,2-フェニレン-ビス-イミダゾリン、1,3-フェニレン-ビス-イミダゾリン、1,4-フェニレン-ビス-イミダゾリン及び1,4-フェニレン-ビス-4-メチルイミダゾリン、並びにこれらの変性物が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。貯蔵安定性の観点から、イミダゾリン誘導体は水酸基を有していなくてもよい。
【0020】
また、イミダゾリン誘導体(B1)は、塗装作業時における加熱によって、エポキシ樹脂粉体塗料における溶融粘度を低くし、粉体塗料を塗装作業で溶融させた際に気泡が抜けやすく、塗膜中に気泡が残りにくくすることで、塗装後における塗膜の塗装外観性が優れる。
イミダゾリン誘導体(B1)は、エポキシ樹脂粉体塗料中に、0.1~2.0質量%の範囲で含有しており、好ましくは0.5~2.0質量%の範囲で含有している。0.1質量%未満では、気泡が抜けにくいために塗膜中に気泡が残り、塗膜外観性が低下する。特に、ダクタイル鋳鉄菅の塗装では、気泡が残ることで塗膜とダクタイル鋳鉄菅表面の付着性が低下することがある。また、2.0質量%を超えると、長期保管した時に塗料性状の変化が大きく塗膜外観と性能を低下させる懸念がある。
【0021】
<トリアジン骨格を有しないイミダゾール誘導体(B2)>
トリアジン骨格を有しないイミダゾール誘導体(B2)は、化合物内にあるイミダゾール骨格に、トリアジン骨格を有する化合物を有しない硬化剤(B)である。
イミダゾール誘導体(B2)は、下記式(2)で表される。
【化2】
【0022】
式(2)中、R11、R12及びR13における有機基はそれぞれ独立して、脂肪族基又は芳香族基であってよく、好ましくは脂肪族基(例えば脂肪族炭化水素基)であり、例えばアルキル基、アルケニル基、アリール基又はヒドロキシアルキル基であり、より好ましくはアルキル基又はアルケニル基である。R11、R12及びR13のうち少なくとも一個(例えば、一個又は二個、特にR12及びR13の一方又は両方)が水素原子であってよく、全てが水素原子であってよい。R14における有機基は二価の脂肪族基又は二価の芳香族基であってよく、好ましくは脂肪族基である。R14における有機基は、1個又は複数の窒素原子又は酸素原子を有していてもよいし、有していなくてもよい。R14における有機基の炭素数は1~20であってよく、例えば1~15である。
【0023】
さらに、トリアジン骨格を有しないイミダゾール誘導体(B2)は、主体となるイミダゾール骨格に、トリアジン骨格を有する化合物を有しない化合物を表している。したがって、R11、R12、R13及びR14のいずれにもトリアジン骨格を有しない化合物を表している。
トリアジン骨格を有しないイミダゾール誘導体(B2)は、エポキシ樹脂粉体塗料中に、0.01~1.0質量%の範囲で含有しており、好ましくは0.01~0.5質量%の範囲で含有している。0.01質量%未満では、架橋密度の高い塗膜が得られず、耐溶剤性が低下する。
【0024】
トリアジン骨格を有しないイミダゾール誘導体(B2)の例としては、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-アミノエチル-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール及び1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウム・トリメリテート、並びにこれらの変性物が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。硬化性の観点から、イミダゾール誘導体は水酸基を有していなくてもよい。
【0025】
<トリアジン骨格を有するイミダゾール誘導体(B3)>
また、本発明の硬化剤(B)は、トリアジン骨格を有するイミダゾール誘導体(B3)を含有する。トリアジン骨格を有するイミダゾール誘導体(B3)は、貯蔵安定性の観点から、トリアジン骨格に直接結合したアミノ基を少なくとも1個(例えば1個、2個及び3個)有していてよく、好ましくは2個有する。トリアジンを有するイミダゾール誘導体(B3)は、トリアジン骨格に直接結合した水酸基を有していなくてもよい。
【0026】
トリアジン骨格は下記式(3)で表される化合物である。
【化3】
【0027】
式(3)中、R21、R22及びR23はそれぞれ独立して、水素原子、脂肪族基及び芳香族基であってよい。R21、R22及びR23の少なくとも1個(好ましくは1個)がイミダゾール骨格を含有する基である。R21、R22及びR23の少なくとも1個、好ましくは2個がアミノ基(アルキルアミノ基、-NH基)であることが好ましい。R22及びR23がアミノ基である場合、R21がイミダゾール骨格又はイミダゾリン骨格を含有する基であってよく、好ましくはイミダゾール基を含有する基である。ここで、R21は、水酸基を有していても有していなくてもよい。トリアジン骨格を含有する基としては、例えば、2,4-ジアミノ-1,3,5-トリアジン-6-イルエチル基等が挙げられる。
【0028】
例えば、トリアジン骨格を有するイミダゾール誘導体(B3)を有する硬化剤の一例を下記式(4)に示している。
【化4】
ここで、イミダゾール骨格におけるR14は、トリアジン骨格と例えば、脂肪族炭化水素基及び含窒素脂肪族炭化水素基等を介して結合されていてよく、または、直接結合していてもよい。
【0029】
また、トリアジン骨格を有するイミダゾール誘導体(B3)は、融点が150℃以上200℃以下の範囲にある。
イミダゾール(C)は、融点が89~91℃であるが、R11、R12及びR13における有機基はそれぞれ脂肪族基又は芳香族基の化合物と、かつ、R14にはトリアジン骨格を有する化合物とを結合させることで、融点を150℃以上200℃以下の範囲にあるトリアジン骨格を有するイミダゾール誘導体体(B3)とすることができる。このトリアジン骨格を有するイミダゾール誘導体(B3)を含有することで、本発明のエポキシ樹脂粉体塗料は、貯蔵安定性を得ることができる。ここで、融点が150℃未満では、長時間の保存が困難になり貯蔵安定性が低下するおそれがある。200℃を超えると、得られる塗膜の凸凹が多く塗膜外観性が低下し、耐水性が低下するおそれがある。
【0030】
トリアジン骨格を有するイミダゾール誘導体(B3)は、エポキシ樹脂粉体塗料中に、0.01~1.0質量%の範囲で含有しており、好ましくは0.01~0.5質量%の範囲で含有している。0.01質量%未満では、使用するまでの未使用時に硬化剤として作用し、貯蔵安定性が低下するおそれがある。
【0031】
トリアジン骨格を有するイミダゾール誘導体(B3)の例としては、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、並びにこれらの変性物が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。貯蔵安定性の観点から、イミダゾール誘導体は水酸基を有していなくてもよい。
【0032】
また、イミダゾリン誘導体(B1)の含有量は、イミダゾリン誘導体(B1)、イミダゾール誘導体(B2)およびイミダゾール誘導体(B3)の合計量に対して、33質量%以上99質量%以下であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上90質量%以下である。本発明のエポキシ樹脂粉体塗料で、イミダゾリン誘導体を多く配合すると、溶融粘度が低くなり、イミダゾリン(B1)とトリアジン骨格を有さないイミダゾール(B2)のみの組み合わせでは、エポキシ樹脂粉体塗料の貯蔵安定性が低下し、イミダゾリン(B1)とトリアジン骨格を有するイミダゾール(B3)のみの組み合わせでは、耐溶剤性が悪くなる。
したがって、この3種類の硬化剤(B1)(B2)(B3)を併せて用いることで、貯蔵安定性、塗膜外観、耐水性、及び耐溶剤性に優れる本発明のエポキシ樹脂粉体塗料を得ることができる。
また、3種類の硬化剤(B1)(B2)(B3)の合計量に対して(B1)の含有量が33質量%未満では、塗膜外観、塗膜中の気泡抑制性が低下するおそれがある。99質量%を超えると、耐水性、耐溶剤性が低下するおそれがある。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂粉体塗料に特には問題が生じない限り、硬化剤(B)として、通常使用される触媒・硬化剤(B4)を併せて使用することができる。特に、イミダゾール系化合物、イミダゾリン系化合物、ジシアンジアミド、酸無水物、ポリカルボン酸ヒドラジドおよびその誘導体、フェノール化合物およびその誘導体などがあげられる。ポリカルボン酸ヒドラジドとしては、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオンジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド等があげられる。
【0034】
<顔料(C)>
本発明のエポキシ樹脂粉体塗料は、顔料(C)を含有する。顔料(C)としては、優れた塗膜外観、貯蔵安定性、耐水性、耐溶剤性を併せ持つ塗膜を形成するため、少なくとも体質顔料(C1)を含有することが必要であり、さらに必要に応じて、着色顔料(C2)、防錆顔料(C3)、光輝顔料(C4)等を含むことができる。
【0035】
体質顔料(C1)は、白色ないし無色の顔料(C)である。屈折率が低いため、展色剤に混和しても隠蔽性にほとんど影響を与えないことから、増量剤として着色力や光沢、強度、使用感などの調整に使われる。体質顔料(C1)は、公知の材料が使用でき、例えば、沈降性硫酸バリウム、シリカ、クリストバライト、炭酸カルシウム、アルミナ、ミョウバン、白土、水酸化マグネシウム、および酸化マグネシウムなどが挙げられる。また、体質顔料は、箔のような薄く平らな形状をした顔料(鱗片状顔料)であってもよく、その具体例としては、ガラスフレーク、タルク、マイカ、カオリンクレーなどが挙げられる。中でも、各種水道資材に用いられる場合は、沈降性硫酸バリウム、シリカ、炭酸カルシウムを使用することが好ましい。
【0036】
着色顔料(C2)としては、その組成から無機顔料と有機顔料に大別される。無機顔料としては、酸化チタン、ベンガラ、黄色酸化鉄、カーボンブラック等、有機顔料としては、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ナフトールレッド、キナクリドンレッド、ベンズイミダゾロンイエロー、ハンザイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、およびジオキサジンバイオレット等が挙げられる。中でも、各種水道資材に用いられる場合は、酸化チタン、ベンガラ、黄色酸化鉄、カーボンブラックを使用することが好ましい。
【0037】
防錆顔料(C3)としては、公知の材料が使用でき、亜鉛粉末、酸化亜鉛、メタホウ酸バリウム、珪酸カルシウム、リン酸アルミニウム、縮合リン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、亜リン酸カリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸亜鉛アルミニウム、リンモリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、バナジン酸/リン酸混合顔料等が挙げられる。
【0038】
また、本発明のエポキシ樹脂粉体塗料において、塗膜形成成分の固形分中における顔料(C)の含有量は、5質量%以上60質量%以下であり、10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。これら顔料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。この範囲とすることによりエポキシ樹脂粉体塗料における貯蔵安定性、塗膜性能として塗膜外観、耐水性、耐溶剤性に優れる本発明のエポキシ樹脂粉体塗料を得ることができる。
【0039】
<その他の添加剤(D)>
本発明のエポキシ樹脂粉体塗料には、塗料の特性を阻害しない範囲で、その他の添加剤(D)として、艶消し剤、可撓性付与剤、表面調整剤、滑剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、粘性調整剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、消泡剤、色分かれ防止剤、レベリング剤、乾燥剤、可塑剤、成膜助剤、防カビ剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、殺虫剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、帯電性滑剤、帯電防止剤及び導電性付与剤等を目的に応じて適宜配合することができる。中でも、各種水道資材に用いられる場合は、表面調整剤を使用することが好ましい。
【0040】
<その他の樹脂>
また、本発明のエポキシ樹脂粉体塗料は、樹脂成分としては、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(A1)と他の樹脂とを混合して用いることができる。混合する樹脂としては、通常使用されている樹脂が用いられるが、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ふっ素樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、キシレン樹脂、アルキド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂、アミン樹脂、ケチミン樹脂等が挙げられる。これら樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
(エポキシ樹脂粉体塗料の製造方法)
本発明のエポキシ樹脂粉体塗料は、原料をナウターミキサーやヘンシェルミキサー等の混合機によって、室温で混合した後、1軸又は2軸エクストルーダー等の粉体塗料製造に常用される溶融混練機を用いて溶融混練する。冷却後形成されたペレットをピンミルやジェットミル等の粉砕機を用いて粉砕を行い、得られた微粉末を篩い、分級器等を用いて任意の粒度分布に調整し、粉体塗料を製造する。
【0042】
本発明のエポキシ樹脂粉体塗料においては、体積平均粒子径が20~150μmであることが好ましい。この体積平均粒子径が20μm未満では、粉体塗料粒子の単位質量当たりの全表面積が大きくなり、粉の流動性が著しく悪化して塗装作業性を大きく低下させることがある。また、体積平均粒子径が150μmを超えると、塗装した塗膜表面の凹凸が大きくなり、塗膜外観、耐水性、耐溶剤性を低下させる。体積平均粒子径は、レーザー回折散乱法を利用した粒度分布測定方法、液体中の電気抵抗変化を用いるコールターカウンター等で測定する。
【0043】
(塗布方法)
本発明の粉体塗料の塗布方法としては、120℃以上280℃以下の範囲内の一定温度で予熱した直管又は異形管等の水道管及びその部品資材に、粉体塗料を塗着させ、その後、硬化又は加熱して前記被塗物の内面に塗膜を形成する塗装方法である。
【0044】
被塗物は、特に限定されないが、具体的には、鉄板、鋼板、アルミニウム板、セラミック板等及びそれらを表面処理したもの等が挙げられる。また、安全性の観点から、各種水道資材に塗布されている。特に、黒鉛の形を球状にして強度や延性を有するダクタイル鋳鉄管を利用した水道管が挙げられる。ダクタイル鋳鉄管は、鋳造時に形成される引け巣を鋳鉄管内表面に多く含み、直管又は異形管の形状を有している。
【0045】
ダクタイル鋳鉄管の塗布方法は、回転吹き付け法、静電塗装法、流動浸漬法、溶射法が用いられるが、塗布は、中空の被塗物の内面、好ましくは管内面の塗装に適用される。この場合、プロバック法、サクション法等で使用されることもある。すなわち、所定の直管又は異形管を120~280℃、好ましくは170~250℃、より好ましくは180~230℃の範囲のうちの一定の温度に予熱した後、架台上に設置し、管内部を減圧にし、塗料流動槽等の塗料供給槽から粉体塗料を管内部に吸引させることで、管内面に塗着する。そして、その予熱温度でそのまま硬化塗膜を形成する塗装方法に適する。被塗物であるダクタイル鋳鉄管の場合は、120~280℃に予熱し、塗装台に設置し直管等は回転させた状態又は異形管等は吊り下げた状態で、空気搬送又は減圧下吸引した粉体塗料をその管内面に吹き付ける事により塗膜層を形成し、十分に硬化完了する温度条件での後加熱、又は後加熱なしの放冷により硬化塗膜を得るものである。
塗着しなかった粉体塗料は塗料供給槽に戻され、循環使用される。この塗装方法では、粉体塗料が被塗物表面に付着する力は静電塗装によるもの又は被塗物表面に形成された溶融層へ粘着力によって付着するため、良好な硬化塗膜を得るためには、粉体塗料の粒度分布、嵩密度とともに、予熱温度での硬化速度を管理することが重要になる。本発明のエポキシ樹脂粉体塗料であれば、厚みの均一性、防食性等の基本的な塗膜物性を備え、気泡の発生等の無い良好な硬化塗膜を得ることができるとともに、リサイクル使用も可能である。
ダクタイル鋳鉄管の塗膜の膜厚は300μm以上1500μm以下であり、好ましくは300~1200μmであり、より好ましくは300μm以上800μm以下にする。本発明のエポキシ樹脂粉体塗料の塗膜の膜厚は、塗布される基材の種類や用途に応じて変えることができる。
【実施例0046】
本発明の実施例について以下に説明する。本発明は様々な態様が可能であり、以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1~10、比較例1~7の調製)
表1に記載された原料を配合し、高速ミキサー内に投入して1分間混合した。そして、120℃に温度調整した1軸練合機(BUSS社製)を用いて混練を行い、吐出された混練物を冷却ロールで冷間圧延した後、ピンミルを用いて粉砕し、分級器で体積平均粒子径:約35μmに、分級して各粉体塗料実施例1~10、比較例1~7を得た。表1に記載の原料は次の通りである。
【0048】
使用した原料の詳細および配合例を表1に示す。
(1)エポキシ樹脂(A):
(A1-1)ビスフェノールF型エポキシ樹脂(jER4005P、三菱ケミカル(株)製、エポキシ当量:1075g/e.q.、軟化点:87℃):60質量部
(2)硬化剤(B)
(B1-1)イミダゾリン誘導体(商品名:キュアゾール2PZL(2-フェニルイミダゾリン)、四国化成工業(株)製、融点95~104℃)
(B1-2)イミダゾリン誘導体(商品名:キュアゾール2MLZ-F(2-メチルイミダゾリン)、四国化成工業(株)製、融点91~106℃)
(B2-1)トリアジン骨格を有さないイミダゾール誘導体(商品名:キュアゾールC11Z(2-ウンデシルイミダゾール)、四国化成工業(株)製、融点69~74℃)
(B2-2)トリアジン骨格を有さないイミダゾール誘導体(商品名:キュアゾール2MZ(2-メチルイミダゾール、四国化成工業(株)製、融点137~145℃)
(B2-3)トリアジン骨格を有さないイミダゾール誘導体(商品名:キュアゾール2P4MZ(2-フェニル-4-メチルイミダゾール、四国化成工業(株)製、融点174~184℃)
(B3-1)トリアジン骨格を有するイミダゾール誘導体(商品名:キュアゾールC11Z-A(2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、四国化成工業(株)製、融点187~195℃)
(B3-2)トリアジン骨格を有するイミダゾール誘導体(商品名:キュアゾール2E4MZ-A(2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、四国化成工業(株)製、融点215~225℃)
(B4-1)ヒドラジド誘導体(商品名:ADH(アジピン酸ジヒドラジド、大塚化学(株)製、融点185℃)
(3)顔料(C)
(C1-1)体質顔料(シリカ(商品名:SB903、シベルコ・ジャパン(株)))
(C2-1)着色顔料(酸化チタン(商品名:Ti-Pure R-960、ケマーズ社製))
(C2-2)着色顔料(カーボンブラック(商品名:MA100、三菱化学(株)製))
(4)その他の添加剤(D)
(D1-1)表面調整剤(アクリル共重合物PF-95(商品名:ポリフローNo.95、共栄社化学(株)製))
(D2-1)滑剤(非晶二酸化ケイ素S358(商品名:サイリシア358、富士シリシア化学(株)製))
【0049】
表1に示す配合処方に従って、実施例1~10及び比較例1~7を調製した。
【0050】
【表1】
【0051】
<塗膜性能の評価>
実施例1~10及び比較例1~7の試験板(塗装体)における塗膜性能を評価した。
実施例1~10及び比較例1~7で作製した粉体塗料において、210℃に予熱した板厚2.0mmのショットブラスト板を垂直方向に吊り下げ、コロナ帯電式静電粉体塗装機(旭サナック社製 PG-1型)を用いて-60kVの電圧で膜厚300~400μm及び800~1000μmとなるように静電塗装して試験板を作製した。試験板は、塗装後200℃で10分後加熱を行った。
塗膜性能は、塗膜外観、貯蔵安定性、耐水性、耐溶剤性を評価した。評価方法を以下に説明する。また、その評価結果を表2に示す。
【0052】
<<外観(仕上がり性)の目視評価>>
塗装後の塗膜外観を目視で判断した。
○:平滑な塗膜が得られ、外観が良好である。
×:平滑な塗膜が得られず、外観が不良である。
【0053】
<<貯蔵安定性>>
作成した粉体塗料を40℃で7日間保存した後、保存した粉体塗料を用いて塗装を行い、塗装後の塗膜外観を目視で判断した。
○: 平滑な塗膜が得られ、外観が良好である。
×: 平滑な塗膜が得られず、外観が不良である。
【0054】
<<耐水性>>
沸騰水道水に24時間浸漬した後に、7日間23℃/80RH%の環境に放置し、塗膜外観を目視で判断した。
○:塗膜に膨れがなく、浸漬前の塗膜外観と目視で変化なし。
△:塗膜に膨れはないが、浸漬前の塗膜外観と目視での色相変化が認められた。
×:塗膜に膨れがあり、浸漬前の塗膜外観と目視で変化が認められた。
【0055】
<<耐溶剤性>>
キシレンを適当量ガーゼにつけ、塗膜表面を約500gfの力で10往復払拭後の塗膜状態を目視で確認した。
○:目視で変化なし又は変化が軽微である。
△:目視でわずかに光沢の減退又はわずかな軟化が認められた。
×:塗膜が軟化又は溶解した。
【0056】
【表2】
【0057】
表2に示す結果から、実施例1~10の粉体塗料は、塗膜外観性、貯蔵安定性、耐水性、耐溶剤性のいずれも評価が「○」又は「△」で実用上の問題はなかった。
【0058】
比較例1、2のエポキシ樹脂粉体塗料は、硬化剤(B1)を含有しないことで塗膜外観性が「×」であった。
【0059】
比較例3のエポキシ樹脂粉体塗料は、硬化剤(B2)を含有しないことで、耐溶剤性が「×」であった。
【0060】
比較例4のエポキシ樹脂粉体塗料は、硬化剤(B2)を含有しないことで、貯蔵安定性及び耐水性が「×」であった。
【0061】
比較例5のエポキシ樹脂粉体塗料は、硬化剤(B2)及び(B3)を含有しないことで、貯蔵安定性及び耐水性が「×」であった。
【0062】
比較例6のエポキシ樹脂粉体塗料は、融点が200℃を超える硬化剤(B3)を含有することで、耐水性が「×」であった。
【0063】
比較例7のエポキシ樹脂粉体塗料は、硬化剤(B1)、(B2)及び(B3)と異なる硬化剤を含有することで、塗膜外観性が「×」であった。
【0064】
これらの実施例1~10及び比較例1~7の結果から、本発明のエポキシ樹脂粉体塗料は、塗膜外観性、貯蔵安定性、耐水性、耐溶剤性のいずれについても実用上問題がないことが分かった。