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  • 特開-記録媒体 図1
  • 特開-記録媒体 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123876
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】記録媒体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/52 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
B41M5/52 300
B41M5/52 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031664
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石橋 達
【テーマコード(参考)】
2H111
【Fターム(参考)】
2H111CA02
2H111CA30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】転写フィルムの受容層と、転写フィルムの受容層中または受容層上に形成された画像と、を転写することが可能なアクリル樹脂製の記録媒体を提供すること。
【解決手段】支持体と、複数の加熱素子が配設されたサーマルヘッドによって昇華または溶融されたインクを受容する受容層と、前記受容層中または前記受容層上に前記インクによって形成された画像と、を有する転写媒体の、前記受容層の表面または前記画像の表面に当接されて、前記転写媒体と重ねた状態で加熱および加圧されることで、前記転写媒体から前記受容層と前記画像を転写することが可能な記録媒体であって、アクリル樹脂を含む基材と、前記基材の少なくとも一方の面に形成され、前記受容層の表面または前記画像の表面に当接されて、前記転写媒体と重ねた状態で加熱および加圧されることで、前記受容層および前記画像が接着される接着層と、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、複数の加熱素子が配設されたサーマルヘッドによって昇華または溶融されたインクを受容する受容層と、前記受容層中または前記受容層上に前記インクによって形成された画像と、を有する転写媒体の、前記受容層の表面または前記画像の表面に当接されて、前記転写媒体と重ねた状態で加熱および加圧されることで、前記転写媒体から前記受容層と前記画像を転写することが可能な記録媒体であって、
アクリル樹脂を含む基材と、
前記基材の少なくとも一方の面に形成され、前記受容層の表面または前記画像の表面に当接されて、前記転写媒体と重ねた状態で加熱および加圧されることで、前記受容層および前記画像が接着される接着層と、を備えている
ことを特徴とする記録媒体。
【請求項2】
前記接着層は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再転写方式のプリンターで使用する記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック素材の記録媒体に印刷する方法として、インクリボンと転写フィルムを用いて印刷する再転写方式のプリンターが知られている(特許文献1)。再転写方式のプリンターは、インクリボンのインクを昇華または溶融させる複数の加熱素子が配設されたサーマルヘッドを備えており、転写フィルムは、サーマルヘッドによって昇華または溶融されたインクを受容する受容層を備えている。また、再転写方式のプリンターによる記録媒体への印刷は、サーマルヘッドによって昇華または溶融したインクを、転写フィルムの受容層中または受容層上に転写して画像を形成する工程と、画像が形成された受容層を記録媒体に当接し、転写フィルムと記録媒体を重ねた状態で加熱圧着する工程と、転写フィルムと記録媒体が接着された接着物から、転写フィルムの支持体と、記録媒体に当接していない受容層を剥離回収する工程と、で実施される。これにより、記録媒体上に画像が転写された記録物が得られる。
【0003】
一方、透明なアクリル板に写真などを貼付し、アクリル板越しに画像が鑑賞できるアクリルフォトやアクリルアクセサリー等が販売されており、アクリル板に直接画像を印刷したいという要望があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-190414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、再転写方式で用いられる記録媒体は、主にPVC、ABS、PET、PET-G、PCで製造されており、これをアクリルに変更すると、アクリルと転写フィルムの受容層との接着性が低いこと、或いは、アクリルと受容層上のインクとの接着性が低いことが原因で、記録媒体と受容層との間に剥がれが生じ、高品質な記録物が製造できないという問題があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、転写フィルム(以下、転写媒体ともいう)の受容層と、転写フィルムの受容層中または受容層上に形成された画像と、を転写することが可能なアクリル製の記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下に示す記録媒体が提供される。
【0008】
支持体と、複数の加熱素子が配設されたサーマルヘッドによって昇華または溶融されたインクを受容する受容層と、前記受容層中または前記受容層上に前記インクによって形成された画像と、を有する転写媒体の、前記受容層の表面または前記画像の表面に当接されて、前記転写媒体と重ねた状態で加熱および加圧されることで、前記転写媒体から前記受容層と前記画像を転写することが可能な記録媒体であって、アクリル樹脂を含む基材と、前記基材の少なくとも一方の面に形成され、前記受容層の表面または前記画像の表面に当接されて、前記転写媒体と重ねた状態で加熱および加圧されることで、前記受容層および前記画像が接着される接着層と、を備えている、ことを特徴とする記録媒体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、転写フィルムの受容層と、転写フィルムの受容層中または受容層上に形成された画像と、を転写することが可能なアクリル製の記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】画像形成装置の断面概略図である。
図2】本発明の記録媒体の断面図である。
図3】本発明のその他の記録媒体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<画像形成装置の構成>
図1は、本発明の記録媒体Cに画像が形成できる画像形成装置の一例である。図1の画像形成装置は、供給部100と、回転ユニット200と、情報記録部800と、画像形成部300とを備えており、本発明の記録媒体以外にも、各種証明用のIDカード、商取引用のクレジットカード等に文字、写真、マーク等の画像が形成できる。
【0012】
<供給部>
供給部100は、装置本体に着脱可能な、記録媒体Cを収納するカセット101を備えている。このカセット101は、複数枚の記録媒体Cを立位姿勢で整列して収納でき、収納された記録媒体Cは、サポート部材102によって、図1おける左側から右側に向けて付勢されている。また、カセット101の右端下面には、記録媒体Cが1枚ずつ通過できる分離開口部103が設けられており、ピックアップローラ104でピックアップされた記録媒体Cは、分離開口103を通過して回転ユニット200へ送られる。
【0013】
<回転ユニット>
回転ユニット200には、図1に示すように、記録媒体Cを把持できる2つのローラ対201および202が、ユニットフレーム203に軸支され、正逆回転可能に設けられている。また、ユニットフレーム203は装置本体に軸支され、正逆回転可能に設けられており、これによってローラ対201と202によって挟持された記録媒体Cの搬送方向を変更できる。ローラ対201、202、ユニットフレーム203の詳細な回転駆動機構は図示しないが、1つのパルスモータでユニットフレーム203の回転と、ローラ対201、202の回転をクラッチで切り換えて回転駆動するように構成されている。
【0014】
<情報記録部>
回転ユニット200の周囲には、第1搬送パスP1、第2搬送パスP2、第3搬送パスP3、第4搬送パスP4が、回転ユニット200の回動中心から放射状に配置されている。
【0015】
第1搬送パスP1は、記録媒体Cに対して所定の記録を行う画像形成部300へ記録媒体Cを搬送する搬送路である。第2搬送パスP2は、回転ユニット200から送られた記録媒体Cの磁気ストライプに磁気情報を記録する磁気記録ユニット801へ記録媒体Cを搬送する搬送路である。第3搬送パスP3は、記録媒体Cに対してIC情報記録を行う接触式IC記録ユニット802へ記録媒体Cを搬送する搬送路である。また、第4搬送パスP4は、予め記録媒体Cに内蔵されているICに情報を記録する非接触式IC記録ユニット803へ記録媒体Cを搬送する搬送路である。
【0016】
制御部(不図示)は、装置内に格納されている制御情報を参照して、記録媒体Cが磁気カードなのかICカードなのかを判別し、その判断結果に応じて回転ユニット200を所定角度回動させて、選択した搬送パスを介して記録媒体Cを情報記録部800に搬送する。これにより、記録媒体上に磁気的もしくは電気的にデータ入力することが可能となる。
【0017】
<画像形成部>
記録媒体Cを画像形成部300に送る場合には、ユニットフレーム203はローラ対201、202でニップした記録媒体Cが水平になるように回転する。そして、その状態でローラ対201、202を駆動させて、搬送ローラ対401、402等を備えた第1搬送パスP1を介して記録媒体Cを画像形成部300へ搬送する。
【0018】
画像形成部300は、インク媒体であるインクリボン501を用いて転写媒体である転写フィルム601に画像を形成し、その画像を記録媒体Cに転写する。そのために、画像形成部300は、インクリボン搬送部500と、転写フィルム搬送部600と、複数の加熱素子が配設された記録ヘッド(サーマルヘッド)701及びプラテンローラ702からなる画像形成部と、ヒートローラ703及び支持ローラ704からなる転写部を備えている。
【0019】
図1に示すように、インクリボン501はインクリボンカセット502に収納され、転写フィルム601は転写フィルムカセット602に収納されている。画像形成に際しては、まず、インクリボン501と転写フィルム601がそれぞれのカセットから搬出され、両者は重ねられた状態で画像形成部300へ搬送される。画像形成部300では、サーマルヘッド701の加熱素子によってインクリボン501が加熱され、画像信号に合わせてインクが昇華または溶融される。そして、昇華または溶融されたインクは転写フィルム601の受容層に受容され、転写フィルム601に画像が形成される。その後、画像が形成された転写フィルム601と、第1搬送パスP1を介して搬送された記録媒体Cと、が重ねられた状態で転写部へ搬送され、ヒートローラ703と支持ローラ704によって加熱および加圧されることで、転写フィルム601と記録媒体Cが接着される。そして、その接着物から転写フィルム601の支持体と、記録媒体Cに当接していない転写フィルム601の受容層が剥離回収されることで、記録媒体Cに画像が転写される。その後、画像が転写された記録媒体Cは、デカールユニット705でデカールされることで反りが矯正され、排出部706から排出される。
【0020】
<インクリボン>
上述した画像形成装置で使用するインクリボン501は特に限定されない。ベースフィルム上にインク層が設けられた、従来より公知のインクリボンが使用できる。
【0021】
インク層には、昇華性染料を用いた昇華型と、カーボンやカラー顔料をワックス系材料と混ぜた溶融型とが存在するが、いずれも使用できる。また、ベースフィルムの裏面(インク層が形成されていない面)には耐熱性のあるバックコート層が設けられていてもよく、ベースフィルムとインク層の間には剥離層が設けられていてもよい。さらに、インク層の上には接着性のあるオーバーコート層が設けられていてもよい。
【0022】
<転写フィルム(転写媒体)>
上述した画像形成装置で使用する転写フィルム601は特に限定されない。フィルム状の支持体の上に受容層を備えた、従来より公知のものが使用できる。
【0023】
支持体の材質や膜厚は特に限定されない。受容層の材質や膜厚も特に限定されないが、受容層は、サーマルヘッドによって昇華または溶融されたインクを受容(昇華または溶融されたインクを受容層中に吸収、または受容層上に定着)して、高品位な画像が形成できるように調整されていることが好ましい。また、転写フィルム601と記録媒体Cを重ねた状態で加熱圧着し、その接着物から転写フィルム601の支持体を剥離する際に、記録媒体Cの外周に沿って切り取れるように、受容層は、その材質や膜厚が調整されていることが好ましい。これにより、記録媒体Cの形に合わせて受容層と画像を転写することができる。
【0024】
また、転写フィルム601は、支持体と受容層との間に、離型層および保護層を備えていてもよい。具体的には、支持体上に、離型層と、保護層と、受容層が順次積層されたものである。この場合、転写フィルム601と記録媒体Cを重ねた状態で加熱圧着し、その接着物から転写フィルム601の支持体を剥離する際に、離型層は支持体と共に剥離され、保護層は記録媒体Cの外周に沿って切り取れるように、それぞれ材質や膜厚が調整されていることが好ましい。これにより、記録媒体Cの形に合わせて保護層と受容層と画像を転写することができる。
【0025】
保護層の材質や膜厚は特に限定されない。また、保護層は透明でもよいが、顔料や着色剤で着色されていてもよい。保護層が着色されている場合、転写フィルム601と記録媒体Cを重ねた状態で加熱圧着し、その接着物から転写フィルム601の支持体を剥離して製造された記録物は、記録媒体C側からより鮮明に画像を観賞することができる。
【0026】
転写フィルム601の離型層の材質や膜厚は特に限定されない。
【0027】
<記録媒体>
図2は、本発明の記録媒体Cの断面図である。基材C1はアクリル樹脂またはアクリル樹脂を含む素材で形成されており、その表面に接着層が設けられている。
【0028】
基材C1の厚さは特に限定されないが、上述した画像形成装置で用いる場合は、0.5mm~1.5mmの範囲とすることが好ましい。
【0029】
接着層に用いる材料は、特に限定されず公知のものが使用できる。例えば、酢酸ビニル、ポリオール、ポリビニルアセタール、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合物、エチレン酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル、ポリエステル、ポリアミド、セルロース、オレフィン、スチレン、ユリア、メラミン、フェノール、レゾルシノール、エポキシ、ポリウレタン、シリコーン、ポリアミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリイミド、イソシアネート、クロロプレンゴム、二トリルゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリサルファイド、ブチルゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、変性シリコーンゴム、ウレタンゴム、シリル化ウレタンなどの樹脂系接着剤;ケイ酸ソーダ等の水ガラス系、セラミックス系などの無機系接着剤が挙げられる。中でも、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合物は、基材C1との接着性、転写フィルム601の受容層との接着性、および転写フィルム601の受容層上のインクとの接着性に優れているので好ましい。
【0030】
接着層の厚さは、基材C1との接着性、転写フィルム601の受容層との接着性、および転写フィルム601の受容層上のインクとの接着性を確保するために、0.01μm~10μmの範囲とすることが好ましい。
【0031】
また、図3に示すように、接着層は、記録媒体の両面に設けられていてもよい。これにより、記録媒体の片面のみならず、両面に画像を形成することが可能となる。
【符号の説明】
【0032】
C …記録媒体
C1 …基材
Cp …接着層
MR1 …リボン供給モータ
MR2 …リボン巻取モータ
MR3 …フィルム供給モータ
MR4 …フィルム巻取モータ
MR5 …主搬送モータ
MR6 …ニップモータ
100 …記録媒体供給部
200 …回転ユニット
300 …画像形成部
400 …搬送パス
500 …インクリボン搬送部
501 …インクリボン
503 …リボン供給軸
504 …リボン巻取軸
600 …転写フィルム搬送部
601 …転写フィルム
603 …フィルム供給軸
604 …フィルム巻取軸
605 …主搬送ローラ
607 …剥離ローラ
701 …記録ヘッド(サーマルヘッド)
702 …プラテンローラ
703 …ヒートローラ
800 …情報記録部

図1
図2
図3