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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123878
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/185 20060101AFI20240905BHJP
   B41J 15/16 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B65H23/185
B41J15/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031666
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】濱野 亮
【テーマコード(参考)】
2C060
3F105
【Fターム(参考)】
2C060BA04
2C060CB01
2C060CB22
3F105AA02
3F105AA11
3F105AB04
3F105BA18
3F105CA02
3F105CB01
3F105DA07
3F105DA32
3F105DB05
3F105DC03
(57)【要約】
【課題】媒体の弛み解消を精度よく判定できる印刷装置及び印刷装置の制御方法を提供する。
【解決手段】印刷装置は、媒体が巻き重ねられたロール体を支持する支持軸と、支持軸を回転させるモーターと、ロール体から繰り出される媒体を搬送する搬送ローラーと、搬送ローラーによって搬送される媒体に印刷する印刷部と、モーターの回転を検出することによってパルスを出力するエンコーダーと、パルスに基づいてモーターを制御する制御部と、を備え、制御部は、支持軸が媒体を巻き取るように支持軸を回転させ、パルスに基づいてモーターの回転位置を所定周期で取得し、回転位置の変化量が閾値以下の場合に、支持軸を停止させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体が巻き重ねられたロール体を支持する支持軸と、
前記支持軸を回転させるモーターと、
前記ロール体から繰り出される媒体を搬送する搬送ローラーと、
前記搬送ローラーによって搬送される媒体に印刷する印刷部と、
前記モーターの回転を検出することによってパルスを出力するエンコーダーと、
前記パルスに基づいて前記モーターを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記支持軸が媒体を巻き取るように前記支持軸を回転させ、
前記パルスに基づいて前記モーターの回転位置を所定周期で取得し、
前記回転位置の変化量が閾値以下の場合に、前記支持軸を停止させることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、
今回取得した前記回転位置と前回取得した前記回転位置とに基づいて、前記回転位置の変化量を取得し、
前記支持軸が媒体を巻き取るように前記支持軸を回転させてから所定回目以降に取得した前記回転位置に基づいて取得した前記回転位置の変化量が閾値以下の場合に、前記支持軸を停止させることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記回転位置の初期値は、0である請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記支持軸が媒体を巻き取るように前記支持軸を回転させる場合に、前記回転位置の値をリセットすることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記パルスに基づいて前記モーターを制御周期ごとに制御し、
前記所定周期は、前記制御周期の倍数であることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
媒体が巻き重ねられたロール体を支持する支持軸と前記ロール体から媒体を搬送する搬送ローラーとの間で生じる媒体の弛みを解消する印刷装置の制御方法であって、
前記支持軸が媒体を巻き取るように前記支持軸を回転させることと、
前記支持軸を回転させるモーターの回転をエンコーダーが検出することによって前記エンコーダーから出力されるパルスに基づいて、前記モーターの回転位置を所定時間ごとに取得することと、
前記回転位置の変化量が閾値以下の場合に、前記支持軸を停止させることと、を含むことを特徴とする印刷装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロール体から繰り出される媒体をロール体に巻き取らせることによって、媒体の弛みを解消する印刷装置が記載されている。印刷装置は、ロール体を回転させるモーターの回転をエンコーダーにより検出することによって、モーターのトルクを取得する。印刷装置は、モーターのトルクが所定トルク以上である場合に、媒体の弛みが解消されたと判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-189315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした印刷装置においては、媒体の弛みが解消されているにもかかわらず、例えば振動によってエンコーダーがパルスを出力することがある。この場合、印刷装置は、媒体の弛みが解消されているにもかかわらず、媒体の弛みが解消されていないと判定するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する印刷装置は、媒体が巻き重ねられたロール体を支持する支持軸と、前記支持軸を回転させるモーターと、前記ロール体から繰り出される媒体を搬送する搬送ローラーと、前記搬送ローラーによって搬送される媒体に印刷する印刷部と、前記モーターの回転を検出することによってパルスを出力するエンコーダーと、前記パルスに基づいて前記モーターを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記支持軸が媒体を巻き取るように前記支持軸を回転させ、前記パルスに基づいて前記モーターの回転位置を所定周期で取得し、前記回転位置の変化量が閾値以下の場合に、前記支持軸を停止させる。
【0006】
上記課題を解決する印刷装置の制御方法は、媒体が巻き重ねられたロール体を支持する支持軸と前記ロール体から媒体を搬送する搬送ローラーとの間で生じる媒体の弛みを解消する印刷装置の制御方法であって、前記支持軸が媒体を巻き取るように前記支持軸を回転させることと、前記支持軸を回転させるモーターの回転をエンコーダーが検出することによって前記エンコーダーから出力されるパルスに基づいて、前記モーターの回転位置を所定時間ごとに取得することと、前記回転位置の変化量が閾値以下の場合に、前記支持軸を停止させることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】印刷装置の一実施例を示す側面図である。
図2】弛み解消動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、印刷装置の一実施例について図を参照しながら説明する。印刷装置は、例えば、用紙、布帛などの媒体に液体の一例であるインクを吐出することによって、文字、写真などの画像を印刷するインクジェット式のプリンターである。
【0009】
<印刷装置>
図1に示すように、印刷装置11は、筐体12を備える。
印刷装置11は、支持軸13を備える。支持軸13は、ロール体R1を支持する軸である。ロール体R1は、媒体99が巻き重ねられることによって形成される。支持軸13は、印刷前の媒体99が巻き重ねられたロール体R1を支持する。支持軸13は、回転することによって、ロール体R1から長尺の媒体99を繰り出す。一例では、媒体99は、支持軸13から筐体12に向けて繰り出される。
【0010】
支持軸13は、逆回転可能に構成される。通常、支持軸13は、ロール体R1から媒体99を繰り出すように回転する。支持軸13は、ロール体R1が外巻きである場合、図1において反時計回り方向に回転することによって、ロール体R1から媒体99を繰り出す。支持軸13は、逆回転することによって、媒体99を巻き取る。換言すると、支持軸13は、ロール体R1に媒体99を巻き取らせるように、回転する。支持軸13は、ロール体R1が外巻きである場合、図1において時計回り方向に回転することによって、ロール体R1に媒体99を巻き取らせる。また、ロール体R1が内巻きである場合、図1において時計回り方向に回転することによって、ロール体R1から媒体99を繰り出し、反時計回り方向に回転することによって、ロール体R1に媒体99を巻き取らせる。
【0011】
印刷装置11は、モーター14を備える。モーター14は、支持軸13と接続される。モーター14は、支持軸13を回転させる。モーター14は、支持軸13を回転させることによって、ロール体R1から媒体99を繰り出したり、ロール体R1に媒体99を巻き取らせたりする。一例では、モーター14は、PWM制御によって回転する。モーター14は、印加される電圧のデューティーを制御されることによって回転する。
【0012】
印刷装置11は、エンコーダー15を備える。エンコーダー15は、モーター14の回転を検出する。エンコーダー15は、ロータリーエンコーダーである。エンコーダー15は、モーター14の回転を検出することによって、パルスを出力する。このパルスに基づいて、モーター14の回転量、回転位置、及び、回転速度などが計測できる。詳しくは、エンコーダー15から出力されるパルスの数に基づいて、モーター14の回転量、回転位置、及び、回転速度などが計測できる。また、エンコーダー15がモーター14の回転を検出することによって、支持軸13の回転、及び、ロール体R1の回転についても計測できる。
【0013】
エンコーダー15がモーター14の回転を検出することによって、モーター14のトルクが取得できる。詳しくは、モーター14の回転速度に基づいて、モーター14のトルクが取得できる。モーター14のトルクは、モーター14を流れる電流によって決まる。電流は、電圧と抵抗とによって決まる。モーター14には、回転速度に応じた逆起電力が生じる。そのため、モーター14の回転速度に基づいて、モーター14のトルクが取得できる。
【0014】
印刷装置11は、印刷部16を備える。印刷部16は、筐体12内に位置する。印刷部16は、媒体99に印刷するように構成される。印刷部16は、媒体99が巻き重ねられたロール体R1から繰り出される長尺の媒体99に印刷する。一例では、印刷部16は、媒体99に液体を吐出するヘッドである。印刷部16は、搬送される媒体99に印刷する。印刷部16は、媒体99に対して走査するシリアルヘッドでもよいし、媒体99の幅にわたって一斉に液体を吐出可能なラインヘッドでもよい。印刷部16は、トナージェットによって媒体99に印刷してもよいし、ドットインパクトによって媒体99に印刷してもよい。一例では、媒体99は、印刷された後に、筐体12外に排出される。媒体99は、別の装置に排出されてもよいし、印刷装置11が備える巻取軸に巻き取られてもよい。
【0015】
印刷装置11は、支持部17を備える。支持部17は、筐体12内に位置する。支持部17は、媒体99を支持する。支持部17は、印刷部16と対向する。支持部17は、媒体99のうち、印刷部16によって印刷される領域を支持する。
【0016】
印刷装置11は、上流支持部18を備えてもよい。上流支持部18は、筐体12内に位置してもよいし、筐体12外に位置してもよい。上流支持部18は、媒体99の搬送方向において、支持部17よりも上流に位置する。上流支持部18は、媒体99のうち、支持部17が支持する領域よりも上流に位置する領域を支持する。上流支持部18は、媒体99を支持することによって、媒体99を支持部17にガイドする。
【0017】
印刷装置11は、下流支持部19を備えてもよい。下流支持部19は、筐体12内に位置してもよいし、筐体12外に位置してもよい。下流支持部19は、搬送方向において、支持部17よりも下流に位置する。下流支持部19は、媒体99のうち、支持部17が支持する領域よりも下流に位置する領域を支持する。下流支持部19は、媒体99を支持することによって、媒体99を支持部17から排出先にガイドする。
【0018】
印刷装置11は、搬送部20を備える。搬送部20は、媒体99を搬送するように構成される。搬送部20は、ロール体R1から繰り出される媒体99を搬送する。搬送部20は、支持軸13から繰り出される媒体99を搬送する。搬送部20は、媒体99を印刷部16に搬送する。搬送部20は、筐体12内に位置する。一例では、搬送部20は、支持部17と上流支持部18との間に位置する。
【0019】
搬送部20は、搬送ローラー21を有する。搬送ローラー21は、駆動回転する。搬送部20は、対向ローラー22を有する。対向ローラー22は、搬送ローラー21と対向する。対向ローラー22は、搬送ローラー21に対して従動回転する。搬送部20は、搬送ローラー21及び対向ローラー22が媒体99を挟む状態で回転することによって、媒体99を搬送する。
【0020】
印刷装置11は、搬送モーター23を備える。搬送モーター23は、搬送部20と接続される。詳しくは、搬送モーター23は、搬送ローラー21と接続される。搬送モーター23は、搬送ローラー21を回転させる。搬送モーター23は、搬送ローラー21を回転させることによって、媒体99を搬送する。一例では、搬送モーター23は、PWM制御によって回転する。搬送モーター23は、印加される電圧のデューティーを制御されることによって回転する。
【0021】
印刷装置11は、搬送エンコーダー24を備える。搬送エンコーダー24は、搬送モーター23の回転を検出する。搬送エンコーダー24は、ロータリーエンコーダーである。搬送エンコーダー24は、搬送モーター23の回転を検出することによって、パルスを出力する。このパルスに基づいて、搬送モーター23の回転量、回転位置、及び、回転速度などが計測できる。詳しくは、搬送エンコーダー24から出力されるパルスの数に基づいて、搬送モーター23の回転量、回転位置、及び、回転速度などが計測できる。また、搬送エンコーダー24が搬送モーター23の回転を検出することによって、搬送ローラー21の回転、及び、媒体99の位置についても計測できる。
【0022】
印刷装置11は、制御部25を備える。制御部25は、コンピュータープログラムにしたがって各種処理を実行する1つ以上のプロセッサーで構成されてもよい。制御部25は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路などの1つ以上の専用のハードウェア回路で構成されてもよい。制御部25は、プロセッサー及びハードウェア回路の組み合わせを含む回路で構成されてもよい。プロセッサーは、CPU、並びに、RAM及びROMなどのメモリーを含む。メモリーは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード、又は、指令を格納する。メモリー、すなわちコンピューター可読媒体は、汎用又は専用のコンピューターでアクセスできるあらゆる可読媒体を含む。
【0023】
制御部25は、印刷装置11を制御する。制御部25は、例えば、支持軸13、印刷部16、及び、搬送部20などを制御する。制御部25は、エンコーダー15のパルスに基づいて、モーター14を制御する。制御部25は、搬送エンコーダー24のパルスに基づいて、搬送モーター23を制御する。制御部25は、モーター14及び搬送モーター23を制御することによって、媒体99を所定の速度で搬送する。
【0024】
制御部25は、計測部26を有する。計測部26は、モーター14の回転を計測するように構成される。計測部26は、例えば、ハードウェア回路で構成される。計測部26は、エンコーダー15と接続される。計測部26は、エンコーダー15から出力されるパルスに基づいて、モーター14の回転を計測する。詳しくは、計測部26は、パルスに基づいて、モーター14の回転量、回転位置、及び、回転速度などを計測する。計測部26は、パルスをカウントすることによって、モーター14の回転を計測する。計測部26は、例えば、モーター14の制御周期ごとに、モーター14の回転を計測する。
【0025】
計測部26は、搬送モーター23の回転を計測するように構成されてもよい。計測部26は、搬送エンコーダー24と接続されてもよい。計測部26は、搬送エンコーダー24から出力されるパルスに基づいて、搬送モーター23の回転を計測してもよい。詳しくは、計測部26は、パルスに基づいて、搬送モーター23の回転量、回転位置、及び、回転速度などを計測してもよい。計測部26は、例えば、搬送モーター23の制御周期ごとに、搬送モーター23の回転を計測する。モーター14の回転を計測する計測部26とは異なる計測部26が、搬送モーター23の回転を計測してもよい。
【0026】
制御部25は、計測部26による計測値に基づいて、モーター14を制御する。詳しくは、制御部25は、計測部26による計測値を目標値に近づけるように、モーター14をフィードバック制御する。例えば、制御部25は、モーター14をPID制御する。制御部25は、計測値と目標値とに基づいて、モーター14に印加される電圧のデューティーを制御する。
【0027】
制御部25は、計測部26による計測値に基づいて、搬送モーター23を制御してもよい。制御部25は、計測部26による計測値を目標値に近づけるように、搬送モーター23をフィードバック制御してもよい。例えば、制御部25は、搬送モーター23をPID制御してもよい。制御部25は、計測値と目標値とに基づいて、搬送モーター23に印加される電圧のデューティーを制御してもよい。
【0028】
制御部25は、モーター14の制御周期ごとに、モーター14を制御する。制御部25は、エンコーダー15から出力されるパルスに基づいて、制御周期ごとにモーター14を制御する。制御部25は、計測部26による計測値に基づいて、制御周期ごとにモーター14の回転を制御する。一例では、モーター14の制御周期は、900マイクロ秒である。したがって、制御部25は、900マイクロ秒ごとに、モーター14を制御する。制御部25は、例えば、900マイクロ秒ごとに、モーター14に印加される電圧のデューティーを制御する。
【0029】
制御部25は、搬送モーター23の制御周期ごとに、搬送モーター23を制御する。制御部25は、搬送エンコーダー24から出力されるパルスに基づいて、制御周期ごとに搬送モーター23を制御する。制御部25は、計測部26による計測値に基づいて、制御周期ごとに搬送モーター23の回転を制御する。搬送モーター23の制御周期は、モーター14の制御周期と同じでもよいし、異なっていてもよい。搬送モーター23の制御周期は、モーター14の制御周期と同期してもよい。
【0030】
印刷装置11においては、ロール体R1から繰り出された媒体99が弛むことがある。詳しくは、支持軸13と搬送ローラー21との間で、媒体99が弛むことがある。媒体99が弛んでいると、搬送ローラー21が媒体99を精度よく搬送できないおそれがある。そのため、制御部25は、媒体99の弛みを解消するために、支持軸13に媒体99を巻き取らせる。
【0031】
制御部25は、支持軸13が媒体99を巻き取るように、支持軸13を回転させる。すなわち、制御部25は、モーター14を制御することによって、支持軸13を逆回転させる。制御部25は、支持軸13を逆回転させることによって、媒体99を支持軸13に巻き取らせる。これにより、媒体99の弛みが解消される。制御部25は、媒体99の弛みが解消したと判定すると、支持軸13を停止させる。
【0032】
制御部25は、モーター14の回転に基づいて、媒体99の弛みが解消したか否かを判定する。制御部25は、エンコーダー15から出力されるパルスに基づいて、媒体99の弛みが解消されたか否かを判定する。支持軸13が媒体99を巻き取る場合には、搬送ローラー21及び対向ローラー22によって媒体99が挟まれている。そのため、媒体99の弛みが解消されると、支持軸13にかかる負荷が大きくなる。すなわち、媒体99の弛みが解消されると、モーター14の回転速度が小さくなったり、モーター14のトルクが大きくなったりする。したがって、制御部25は、モーター14が回転しなくなったことを以て、媒体99の弛みが解消したことを判定できる。
【0033】
エンコーダー15は、モーター14が回転していないにもかかわらず、パルスを出力することがある。例えば、エンコーダー15は、振動によってパルスを出力することがある。特に、エンコーダー15を構成するフォトセンサーがスケールに形成されるスリット上に位置する場合に、エンコーダー15は、モーター14が回転していないにもかかわらずパルスを出力しやすくなる。そのため、制御部25は、モーター14が回転しているか否かを正しく判定できないおそれがある。制御部25は、モーター14が回転していないにもかかわらずエンコーダー15がパルスを出力すると、モーター14が回転していると判定する。制御部25は、パルスに基づいて、実際のトルクよりも低いトルクを取得する。したがって、モーター14のトルクに基づいて媒体99の弛み解消を制御部25が判定する場合、正しく判定できないおそれがある。
【0034】
制御部25は、モーター14における回転位置の変化量に基づいて、媒体99の弛みが解消されたか否かを判定する。制御部25は、回転位置の変化量が閾値以下である場合に、媒体99の弛みが解消されたと判定する。制御部25は、回転位置の変化量が閾値以下である場合に、支持軸13を停止させる。回転位置の変化量が閾値以下である場合、モーター14の回転がほぼ停止していることが分かる。すなわち、回転位置の変化量が閾値以下である場合には、支持軸13が媒体99を巻き取れない状態である。したがって、回転位置の変化量が閾値以下である場合には、媒体99の弛みが解消されていると判定できる。モーター14が回転していないにもかかわらずエンコーダー15からパルスが出力されたとしても、回転位置の変化量は微量であるため、媒体99の弛みが解消したか否かを正しく判定できる。
【0035】
制御部25は、位置閾値を記憶する。制御部25は、モーター14における回転位置の変化量を位置閾値と比較する。制御部25は、回転位置の変化量が位置閾値以下である場合に、支持軸13を停止させる。位置閾値は、パルス数を示す。位置閾値は、例えば、2である。この場合、回転位置の変化量が2以内であれば、制御部25は媒体99の弛みが解消されたと判定する。位置閾値は、変更可能であってもよい。例えば、ユーザーが印刷装置11を操作することによって、位置閾値が変更されてもよい。
【0036】
制御部25は、パルスに基づいて、モーター14の回転位置を所定周期で取得する。制御部25は、パルスに基づいて計測部26がモーター14の回転位置を計測することによって、モーター14の回転位置を所定周期で取得する。所定周期は、例えば、モーター14の制御周期よりも長い。これは、所定周期が短いと、弛み解消の判定精度が落ちるためである。所定周期が長いと、弛み解消の判定に要する時間が長くなる。
【0037】
制御部25は、モーター14の制御周期を所定回経るたびに、モーター14の回転位置を取得してもよい。この場合、所定周期は、モーター14の制御周期の倍数である。すなわち、所定周期は、モーター14の制御周期に自然数を乗算した周期である。例えば、取得周期は、モーター14の制御周期に3000を乗算した周期である。すなわち、一例では、所定周期は、900マイクロ秒に3000を乗算した時間である2.7秒である。したがって、制御部25は、2.7秒ごとに、モーター14の回転位置を取得する。所定周期を制御周期と合わせることによって、制御部25によるモーター14の制御が簡易になる。
【0038】
制御部25は、今回取得したモーター14の回転位置と前回取得したモーター14の回転位置とに基づいて、回転位置の変化量を取得する。詳しくは、制御部25は、今回取得したモーター14の回転位置と前回取得したモーター14の回転位置とを減算することによって、回転位置の変化量を取得する。すなわち、一例では、回転位置の変化量は、1周期あたりの変化量である。制御部25は、例えば、今回取得したモーター14の回転位置と、前々回取得したモーター14の回転位置とに基づいて、回転位置の変化量を取得してもよい。回転位置の変化量は、2周期あたりの変化量でもよい。回転位置の変化量は、1周期あたりの変化量、2周期あたりの変化量に限らず、3周期あたりの変化量でもよいし、4周期あたりの変化量でもよい。
【0039】
制御部25は、所定回目以降に取得したモーター14の回転位置に基づいて取得した変化量が位置閾値以下である場合に、支持軸13を停止させてもよい。詳しくは、制御部25は、支持軸13が媒体99を巻き取るように支持軸13を回転させてから所定回目以降に取得したモーター14の回転位置に基づいて取得した変化量が位置閾値以下である場合に、支持軸13を停止させてもよい。これは、支持軸13が媒体99を巻き取り始めた段階においては、モーター14の回転が安定しないためである。そのため、制御部25は、所定回目以降に取得した回転位置による変化量に基づいて、媒体99の弛みが解消したか否かを判定してもよい。例えば、制御部25は、モーター14の回転位置を取得した回数を示す所定回数が閾値以上である場合に、媒体99の弛みが解消したか否かを判定してもよい。
【0040】
制御部25は、回数閾値を記憶する。制御部25は、モーター14の回転位置を取得した回数を示す取得回数と回数閾値とを比較する。制御部25は、取得回数が回数閾値以上である場合に、媒体99の弛みが解消したか否かを判定する。回数閾値は、例えば、5である。この場合、制御部25が支持軸13を逆回転させてから5回目以降に取得した回転位置による変化量に基づいて、媒体99の弛みが解消したか否かを判定する。これにより、モーター14の回転が安定しない期間では、弛み解消の判定をしないため、弛み解消を精度よく判定できる。回数閾値は、変更可能であってもよい。例えば、ユーザーが印刷装置11を操作することによって、回数閾値が変更されてもよい。
【0041】
制御部25がモーター14の回転位置を取得した回数を示す取得回数は、Nで示される。回数閾値は、Yで示される。制御部25がN回目に取得したモーター14の回転位置は、A(N)で示される。A(0)、すなわち回転位置の初期値は、0である。制御部25がN-1回目に取得したモーター14の回転位置は、A(N-1)で示される。そのため、回転位置の変化量は、A(N)-A(N-1)の絶対値で示される。位置閾値は、Bで示される。よって、制御部25は、A(N)-A(N-1)の絶対値≦B、且つ、N≧Yが成立する場合に、媒体99の弛みが解消したと判定し、支持軸13を停止させる。
【0042】
制御部25は、支持軸13が媒体99を巻き取るように支持軸13を回転させる場合に、モーター14の回転位置を示す値、すなわちA(N)をリセットする。例えば、制御部25は、メモリーに記憶されるA(N)を示す値を消去する。これにより、前回の弛み解消時に取得した回転位置による変化量を制御部25が取得するおそれが低減される。
【0043】
<弛み解消動作>
次に、媒体99の弛みを解消する弛み解消動作について説明する。弛み解消動作は、制御部25によって実行される。制御部25は、例えば、印刷開始前に、弛み解消動作を実行する。
【0044】
図2に示すように、制御部25は、ステップS11において、A(N)をリセットする。このとき、制御部25は、メモリーに記憶されているモーター14の回転位置を示す値をすべて消去する。
【0045】
制御部25は、ステップS12において、支持軸13を逆回転させる。これにより、支持軸13が媒体99を巻き取る。
制御部25は、ステップS13において、A(N)を取得する。制御部25は、弛み解消動作において、ステップS13の処理を複数回実行する。制御部25は、1回目のステップS13において、A(1)を取得する。制御部25は、2回目のステップS13において、A(2)を取得する。
【0046】
制御部25は、ステップS14において、A(N)-A(N-1)の絶対値≦Bであるか否かを判定する。1回目のステップS14においては、制御部25は、A(1)-A(0)の絶対値≦Bであるか否かを判定する。すなわち、制御部25は、ステップS14において、回転位置の変化量が大きいか小さいかを判定する。制御部25は、A(N)-A(N-1)の絶対値≦Bである場合に、ステップS15に処理を移行する。制御部25は、A(N)-A(N-1)の絶対値>Bである場合に、ステップS13に処理を戻す。
【0047】
制御部25は、ステップS15において、N≧Yであるか否かを判定する。すなわち、制御部25は、ステップS13の処理を回数閾値以上実行しているか否かを判定する。制御部25は、N≧Yである場合に、ステップS16に処理を移行する。制御部25は、N<Yである場合に、ステップS13に処理を戻す。
【0048】
制御部25は、ステップS13からステップS15において、A(N)-A(N-1)の絶対値≦B、且つ、N≧Y、が成立しない限り、所定周期で回転位置を取得する。制御部25は、一定時間が経過してもA(N)-A(N-1)の絶対値≦B、且つ、N≧Y、が成立しない場合、エラーを報知してもよい。
【0049】
制御部25は、ステップS16において、支持軸13を停止させる。制御部25は、ステップS16において、媒体99の弛みが解消したと判定し、支持軸13を停止させる。制御部25は、ステップS16の処理を終えると、弛み解消動作を終了する。このように、印刷装置11の制御方法は、支持軸13が媒体99を巻き取るように支持軸13を回転させることを含む。印刷装置11の制御方法は、モーター14の回転をエンコーダー15が検出することによってエンコーダー15から出力されるパルスに基づいて、モーター14の回転位置を所定周期で取得することを含む。印刷装置11の制御方法は、回転位置の変化量が閾値以下の場合に、支持軸13を停止させることを含む。
【0050】
<作用及び効果>
次に、上記実施例の作用及び効果について説明する。
(1)制御部25は、支持軸13が媒体99を巻き取るように支持軸13を回転させる。制御部25は、エンコーダー15から出力されるパルスに基づいてモーター14の回転位置を所定周期で取得する。制御部25は、回転位置の変化量が閾値以下の場合に、支持軸13を停止させる。
【0051】
上記構成によれば、制御部25は、回転位置の変化量が小さい場合に、媒体99の弛みが解消されていると判定する。この場合、媒体99の弛みが解消されているにもかかわらず、例えば振動によってエンコーダー15がパルスを出力したとしても、回転位置の変化量は小さい。そのため、媒体99の弛みが解消されているにもかかわらず、媒体99の弛みが解消されていないと制御部25が判定するおそれが低減される。したがって、媒体99の弛み解消を精度よく制御部25が判定できる。
【0052】
(2)制御部25は、支持軸13が媒体99を巻き取るように支持軸13を回転させてから所定回目以降に取得した回転位置に基づいて取得した回転位置の変化量が閾値以下の場合に、支持軸13を停止させる。
【0053】
媒体99の巻き取り始めにおいては、支持軸13の回転が安定しない。そのため、媒体99の巻き取り始めにおいては、回転位置が精度よく取得できないおそれがある。上記構成によれば、媒体99の巻き取り始めに取得した回転位置が、弛み解消の判定に使用されない。そのため、弛み解消の判定精度が向上する。
【0054】
(3)回転位置の初期値は、0である。上記構成によれば、回転位置の変化量を精度よく取得できる。
(4)制御部25は、支持軸13が媒体99を巻き取るように支持軸13を回転させる場合に、回転位置の値をリセットする。上記構成によれば、回転位置の変化量を精度よく取得できる。詳しくは、前回の弛み解消時に取得した回転位置を制御部25が参照するおそれが低減されるため、回転位置の変化量を精度よく取得できる。
【0055】
(5)制御部25は、パルスに基づいてモーター14を制御周期ごとに制御する。所定周期は、制御周期の倍数である。上記構成によれば、制御部25は、モーター14の制御周期に合わせて、回転位置を取得できる。そのため、制御部25によるモーター14の制御が簡易になる。
【0056】
<変更例>
上記実施例は、以下のように変更して実施できる。上記実施例及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0057】
・制御部25は、モーター14における回転位置の変化量に基づいて媒体99の弛みが解消したか否かを判定することと並行して、モーター14のトルクに基づいて媒体99の弛みが解消した否かを判定してもよい。制御部25は、モーター14における回転位置の変化量、及び、モーター14のトルク、の何れかによって媒体99の弛みが解消したと判定した場合に、支持軸13を停止させてもよい。
【0058】
この変更例では、制御部25は、エンコーダー15から出力されるパルスに基づいて、モーター14のトルクを取得する。制御部25は、例えば、モーター14のトルクが所定トルク以上となる状態が所定時間継続した場合に、媒体99の弛みが解消したと判定する。この判定では、上記実施例で記載したように、媒体99の弛みが解消されているにもかかわらずエンコーダー15がパルスを出力すると、モーター14のトルクが所定トルクを下回るおそれがある。そのため、回転位置の変化量に基づいて媒体99の弛みを解消する場合と比べて、判定精度が低い。しかし、双方を並行して実施することによって、弛み解消の判定精度が向上する。
【0059】
・印刷部16が吐出する液体はインクに限らず、例えば機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体などでもよい。例えば、印刷部16が液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材又は画素材料などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液状体を吐出してもよい。
【0060】
<技術的思想>
以下に、上述した実施形態及び変更例から把握される技術的思想及びその作用効果を記載する。
【0061】
(A)印刷装置は、媒体が巻き重ねられたロール体を支持する支持軸と、前記支持軸を回転させるモーターと、前記ロール体から繰り出される媒体を搬送する搬送ローラーと、前記搬送ローラーによって搬送される媒体に印刷する印刷部と、前記モーターの回転を検出することによってパルスを出力するエンコーダーと、前記パルスに基づいて前記モーターを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記支持軸が媒体を巻き取るように前記支持軸を回転させ、前記パルスに基づいて前記モーターの回転位置を所定周期で取得し、前記回転位置の変化量が閾値以下の場合に、前記支持軸を停止させる。
【0062】
上記構成によれば、制御部は、回転位置の変化量が小さい場合に、媒体の弛みが解消されていると判定する。この場合、媒体の弛みが解消されているにもかかわらず、例えば振動によってエンコーダーがパルスを出力したとしても、回転位置の変化量は小さい。そのため、媒体の弛みが解消されているにもかかわらず、媒体の弛みが解消されていないと制御部が判定するおそれが低減される。したがって、媒体の弛み解消を精度よく制御部が判定できる。
【0063】
(B)上記印刷装置において、前記制御部は、今回取得した前記回転位置と前回取得した前記回転位置とに基づいて、前記回転位置の変化量を取得し、前記支持軸が媒体を巻き取るように前記支持軸を回転させてから所定回目以降に取得した前記回転位置に基づいて取得した前記回転位置の変化量が閾値以下の場合に、前記支持軸を停止させてもよい。
【0064】
媒体の巻き取り始めにおいては、支持軸の回転が安定しない。そのため、媒体の巻き取り始めにおいては、回転位置が精度よく取得できないおそれがある。上記構成によれば、媒体の巻き取り始めに取得した回転位置が、弛み解消の判定に使用されない。そのため、弛み解消の判定精度が向上する。
【0065】
(C)上記印刷装置において、前記回転位置の初期値は、0であってもよい。上記構成によれば、回転位置の変化量を精度よく取得できる。
(D)上記印刷装置において、前記制御部は、前記支持軸が媒体を巻き取るように前記支持軸を回転させる場合に、前記回転位置の値をリセットしてもよい。上記構成によれば、回転位置の変化量を精度よく取得できる。
【0066】
(E)上記印刷装置において、前記制御部は、前記パルスに基づいて前記モーターを制御周期ごとに制御し、前記所定周期は、前記制御周期の倍数であってもよい。上記構成によれば、制御部は、モーターの制御周期に合わせて、回転位置を取得できる。そのため、制御部によるモーターの制御が簡易になる。
【0067】
(F)印刷装置の制御方法は、媒体が巻き重ねられたロール体を支持する支持軸と前記ロール体から媒体を搬送する搬送ローラーとの間で生じる媒体の弛みを解消する印刷装置の制御方法であって、前記支持軸が媒体を巻き取るように前記支持軸を回転させることと、前記支持軸を回転させるモーターの回転をエンコーダーが検出することによって前記エンコーダーから出力されるパルスに基づいて、前記モーターの回転位置を所定時間ごとに取得することと、前記回転位置の変化量が閾値以下の場合に、前記支持軸を停止させることと、を含む。上記方法によれば、上述した印刷装置と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0068】
11…印刷装置、12…筐体、13…支持軸、14…モーター、15…エンコーダー、16…印刷部、17…支持部、18…上流支持部、19…下流支持部、20…搬送部、21…搬送ローラー、22…対向ローラー、23…搬送モーター、24…搬送エンコーダー、25…制御部、26…計測部、99…媒体、R1…ロール体。
図1
図2