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特開2024-123901ストーマ装具カバーおよび内容物予測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123901
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ストーマ装具カバーおよび内容物予測方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/445 20060101AFI20240905BHJP
   A61F 5/44 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61F5/445
A61F5/44 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031699
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】507075923
【氏名又は名称】学校法人永原学園
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】植田 友貴
(72)【発明者】
【氏名】山口 郁準
(72)【発明者】
【氏名】山城 佑太
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA09
4C098CC31
4C098CD01
(57)【要約】
【課題】ストーマパウチ内の内容物の状況を高精度に予測できるストーマ装具カバーを提供する。
【解決手段】ストーマ装具カバーは、人体から排泄される内容物を収容する袋状のストーマパウチを被覆するストーマ装具カバーであって、柔軟性を有する合成樹脂から形成され、前記ストーマパウチを覆うカバー本体と、前記カバー本体に一又は複数配設され、前記カバー本体の形状変化を測定するセンサ部と、前記一又は複数のセンサ部により測定された形状変化に基づいて、前記内容物の変動を予測する予測部と、を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体から排泄される内容物を収容する袋状のストーマパウチを被覆するストーマ装具カバーであって、
柔軟性を有する合成樹脂から形成され、前記ストーマパウチを覆うカバー本体と、
前記カバー本体に一又は複数配設され、前記カバー本体の形状変化を測定するセンサ部と、
前記一又は複数のセンサ部により測定された形状変化に基づいて、前記内容物の変動を予測する予測部と、を備えることを特徴とする
ストーマ装具カバー。
【請求項2】
請求項1に記載のストーマ装具カバーにおいて、
前記センサ部が、前記カバー本体に格子状またはラダー状に離隔して複数配設されてなることを特徴とする
ストーマ装具カバー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のストーマ装具カバーにおいて、
前記センサ部により測定された一又は複数個所の形状変化を蓄積する蓄積部を備えることを特徴とする
ストーマ装具カバー。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のストーマ装具カバーにおいて、
前記センサ部が、磁気センサ及び/又は加速度センサに基づいて、前記カバー本体の形状変化を測定することを特徴とする
ストーマ装具カバー。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のストーマ装具カバーにおいて、
前記センサ部が、伸縮性を有するストレッチセンサ及び/又は曲げセンサから構成されることを特徴とする
ストーマ装具カバー。
【請求項6】
人体から排泄される内容物を収容する袋状のストーマパウチを被覆するストーマ装具カバーを用いて当該内容物を予測する内容物予測方法であって、
前記ストーマ装具カバーの一又は複数個所の形状変化を測定する測定工程と、
前記測定工程により測定された形状変化に基づいて、前記内容物の変動を予測する予測工程と、を含むことを特徴とする
内容物予測方法。
【請求項7】
請求項6に記載の内容物予測方法において、
前記予測工程が、前記測定工程により測定された一又は複数個所での形状を補正して、前記ストーマパウチ全体の形状変化を予測することを特徴とする
内容物予測方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の内容物予測方法において、
前記測定工程により測定された一又は複数個所の形状変化を蓄積する蓄積工程を含み、
前記予測工程が、前記蓄積工程により蓄積された形状変化に基づいて、前記ストーマパウチ全体の形状変化を予測することを特徴とする
内容物予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オストミー器具であるストーマ装具をカバーするストーマ装具カバーに関し、特に、内容物に対する状態予測を可能とするストーマ装具カバーおよび内容物予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ストーマとは腸や尿管を腹部の外部に出すことにより形成された人工肛門・人工膀胱である。ストーマ利用者(オストメイト)は、ストーマの周囲にストーマ装具を装着している。ストーマ装具は、主に面板とストーマパウチと呼ばれる収納袋からできている。当該面板は、ストーマ周囲の皮膚に粘着する部分である。また、当該ストーマパウチに排泄物(便や尿の水分等)を溜めることで、日常生活をほとんど制限なく過ごすことが可能となる。
【0003】
しかし、ストーマ装具では、ストーマ周囲の肌接触面から排泄物が外周へ潜り込み、漏れて下着や衣服の汚れを誘発している。ストーマ用装具及び面板は、一般に有色のコロイド及びポリマーから構成されるため、排泄物の水分がストーマ周囲から外周へ広がる様子を視認するのは困難である。また、ストーマ用面板を単に手で触れたとしても厚みがあることから交換時期の判断も困難である。
【0004】
また、本発明者らが実施したニーズ調査に拠れば、ストーマ利用者(オストメイト)は定期的に便出し作業が必要とされているが、何らかの理由で作業が遅れるとパウチ内圧が過度に上昇してしまい面板(皮膚装着部)から便漏れを生じることが明らかとなっている。便が漏れた場合は、衣服の汚染、面板付着部の皮膚トラブル、当事者のQOLや自尊心の低下、これらに伴うストーマパウチ交換のための緊急訪問看護等の看護負担、ストーマパウチの自己負担の増加、施設入所者においては衣服の着脱介助や清拭や入浴等の介護負担等の多大な影響を及ぼしている。
【0005】
このようなことから、ストーマ装具の利便性を向上させるために、ストーマパウチを被覆するストーマ装具カバーの開発が盛んになされている。
【0006】
例えば、従来のストーマ装具カバーとしては、一対の壁部により形成された柔軟なパウチを備えたオストミー排出物容器であって、前記壁部の内の第1の壁部にストーマ受入れ用開口部が設けられており、前記壁部の内の第2の壁部は透明または半透明であり、第3の不透明な壁部がその縁部に沿って前記第2の壁部にシールされ、第4の不透明な壁部が、その縁部に沿って前記第2の壁部にシールされて、前記第3の壁部の縁部に僅かに重ね合わされているものがある(特許文献1参照)。
【0007】
また、例えば、従来のストーマ装具カバーとしては、人体からの排泄物を収容するストーマ用パウチの交換タイミングを検知するパウチ交換検知装置であって、前記ストーマ用パウチが取り付けられるベース、及び前記人体に取り付けられる際に、前記ベースと前記人体の皮膚との間に介入する皮膚保護剤を有し、前記ストーマ用パウチを前記人体に取り付ける為のストーマ用面板と、前記皮膚保護剤における排泄物の

入度合いを検知する為の検知手段と、前記検知手段によって、前記浸入度合いが所定度合いを超えたことが検知された旨を報知する報知手段とを含むパウチ交換検知装置としてのストーマ装具カバーがある(特許文献2参照)。ここで、前記ストーマ用面板は、ストーマを装着する為のストーマ装着口を有し、前記検知手段が、前記ストーマ装置口を取り囲む環状の配線を含み、前記環状の配線が、環状の第一配線と、前記第一配線を取り囲む第二配線とを含み、前記第一配線と第二配線とが前記排泄物の水分によって電気的に接続されたことを検出するセンサを含むことも可能としている。
【0008】
また、例えば、従来のストーマ装具カバーとしては、オストミー装具のためのベースプレート及び/又はセンサアセンブリ部品であって、ベースプレート及び/又はセンサアセンブリ部品をユーザの皮膚表面に付着させるために構成された近位面を有する第1の接着層であって、中心点を有するストーマ開口部を有する第1の接着層と、第1の漏出電極、第2の漏出電極、及び第3の漏出電極を含む複数の電極と、を含み、複数の電極は、第1の接着層の近位面における一次感知領域及び二次感知領域内の流体の存在を検出するように構成され、一次感知領域は第1の接着層の中心点からの一次角度空間内に配置され、二次感知領域は第1の接着層の中心点からの二次角度空間内に配置されるものがある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2010-528719号公報
【特許文献2】特開2022-34350号公報
【特許文献3】特表2021-508268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、従来のストーマ装具カバーでは、特許文献1のように、透明または半透明の壁部を備えるものであっても、依然として、排泄物の水分がストーマ周囲から外周へ広がる様子から交換時期を判断することは依然として困難である。
【0011】
また、特許文献2のように、排泄物の水分によって電気的に接続されたことを検出するセンサを備えるものもあるが、前記排泄物に多量に含まれるガスや固形物の量は判断できないことから、前記排泄物全体の検出精度は依然として低いものにとどまっている。
【0012】
また、特許文献3のように、流体(内容物)の漏出状況を検出するものもあるが、あくまで現時点での流体の漏出角度の検出にとどまり、流体(内容物)の全体的な状況は把握できない。
【0013】
ストーマパウチ内の便性状・容量等の内容物の状況を高精度に検知できるストーマ装具カバーが実現できれば、検知されたストーマパウチ内の状況を当事者及び支援者に通知するシステム(例えば介護ロボット)等を構築できる可能性があり、そのニーズは高い。しかし、そのような優れたストーマ装具カバーはこれまでのところ見当たらない。
【0014】
本発明は、前記課題を解消するためになされたものであり、ストーマパウチ内の内容物の状況を高精度に予測できるストーマ装具カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願に開示するストーマ装具カバーは、人体から排泄される内容物を収容する袋状のストーマパウチを被覆するストーマ装具カバーであって、柔軟性を有する合成樹脂で形成され、前記ストーマパウチを覆うカバー本体と、前記カバー本体に一又は複数配設され、前記カバー本体の形状変化を測定するセンサ部と、前記センサ部により測定された形状変化に基づいて、前記内容物の変動を予測する予測部と、を備えるものである。
【0016】
このように、人体から排泄される内容物を収容する袋状のストーマパウチを被覆するストーマ装具カバーであって、柔軟性を有する合成樹脂で形成され、前記ストーマパウチを覆うカバー本体と、前記カバー本体に一又は複数配設され、前記カバー本体の形状変化を測定するセンサ部と、前記センサ部により測定された形状変化に基づいて、前記内容物の変動を予測する予測部と、を備えることから、前記センサ部が前記カバー本体の形状変化を測定し、当該形状変化に基づいて、前記予測部が前記内容物の変動を予測することで、内容物の状態について全体を俯瞰して偏りなく判断することで、利用者(例えば、軽度認知症高齢者及び一般高齢者)に対して、ストーマパウチの異変を事前察知できることとなり、便漏れのトラブルを未然に防ぐことができる。また、介護施設入所者(ストーマパウチの交換介助を受けている者)に対して、便漏れが生じる前にスタッフが便出し作業を行えることとなり、衣服汚染による清拭や着替えなどの介護負担の軽減につながる。また、利用者にとって、外出頻度が増えるなどQOLの向上、それによる介護負担軽減、緊急訪問看護の利用頻度低下、ビデオ通話による迅速な初期対応が可能となる。
【0017】
本願に開示するストーマ装具カバーは、必要に応じて、前記センサ部が、前記カバー本体に格子状またはラダー状に離隔して複数配設されているものである。このように、前記センサ部が、前記カバー本体に格子状またはラダー状に離隔して複数配設されていることから、前記カバー本体に格子状に離隔して複数配設されている前記センサ部が、局所的な形状変化にとらわれることなく、内容物の全体を偏りなく俯瞰して状況を判断できることとなり、内容物の状態に即した機敏な反応を示すことができ、より高精度なセンサ検知が可能となる。
【0018】
本願に開示するストーマ装具カバーは、必要に応じて、前記センサ部により測定された一又は複数個所の形状変化を蓄積する蓄積部を備えるものである。このように、前記センサ部により測定された一又は複数個所の形状変化を蓄積する蓄積部を備えることから、局所的な判断にとどまらず内容物の全体状況を経時的に判断できることとなり、内容物の状態に即した安定的な判断が可能となり、より高精度なセンサ検知が可能となる。
【0019】
本願に開示するストーマ装具カバーは、必要に応じて、前記センサ部が、磁気センサ及び/又は加速度センサに基づいて、前記カバー本体の形状変化を測定するものである。このように、前記センサ部が、磁気センサ及び/又は加速度センサに基づいて、前記カバー本体の形状変化を測定することから、前記カバー本体の内部の距離(間隔)が測定されることで膨らみ具体が容易に把握できることとなり、内容物の状態について正確に判断することができ、ストーマパウチの異変を高精度に事前察知できることで、便漏れのトラブルを未然に防ぐことができる。特に加速度センサを用いた場合には、前記ストーマパウチの傾斜角度を検出できることとなり、装着者の姿勢(例えば、就眠状態、着座状態、起立状態等が含まれる)を容易に判別することができ、加速度センサにより判別された装着者の姿勢によって、装着者の現在の状態や、次の動きの予測や、実施すべき処置を容易に判断することが可能となる。
【0020】
本願に開示するストーマ装具カバーは、必要に応じて、前記センサ部が、伸縮性を有するストレッチセンサ及び/又は曲げセンサから構成されるものである。このように、前記センサ部が、伸縮性を有するストレッチセンサ及び/又は曲げセンサから構成されることから、連続的な伸張によって、伸縮変化及び/又は抵抗値変化に基づくセンサ波形の追従性に優れることとなり、また連続的使用における伸縮度合いの経時的変化の調整を行うことも可能となり、よりセンサ精度を高めることができる。
【0021】
本願に開示する内容物予測方法は、人体から排泄される内容物を収容する袋状のストーマパウチを被覆するストーマ装具カバーを用いて当該内容物を予測する内容物予測方法であって、前記ストーマ装具カバーの一又は複数個所の形状変化を測定する測定工程と、前記測定工程により測定された形状変化に基づいて、前記内容物の変動を予測する予測工程と、を含むものである。このように、前記ストーマ装具カバーの一又は複数個所の形状変化を測定する測定工程と、前記測定工程により測定された形状変化に基づいて、前記内容物の変動を予測する予測工程と、を含むことから、前記カバー本体の形状変化を測定し、当該形状変化に基づいて、前記予測部が前記内容物の変動を予測することで、内容物の状態について全体を俯瞰して偏りなく判断することで、利用者(例えば、軽度認知症高齢者及び一般高齢者)に対して、ストーマパウチの異変を事前察知できることとなり、便漏れのトラブルを未然に防ぐことができる。
【0022】
本願に開示する内容物予測方法は、必要に応じて、前記予測工程が、前記測定工程により測定された一又は複数個所での形状を補正して、前記ストーマパウチ全体の形状変化を予測するものである。このように、前記予測工程が、前記測定工程により測定された一又は複数個所での形状を補正して、前記ストーマパウチ全体の形状変化を予測することから、局所的な判断にとどまらず内容物の全体を俯瞰して状況を判断することとなり、内容物の状態に即した安定的な判断が可能となり、より高精度なセンサ検知が可能となる。
【0023】
本願に開示する内容物予測方法は、必要に応じて、前記測定工程により測定された一又は複数個所の形状変化を蓄積する蓄積工程を含み、前記予測工程が、前記蓄積工程により蓄積された形状変化に基づいて、前記ストーマパウチ全体の形状変化を予測するものである。このように、前記予測工程が、前記測定工程により測定された一又は複数個所での形状を補正して、前記ストーマパウチ全体の形状変化を予測することから、局所的な判断にとどまらず内容物の全体を俯瞰して状況を判断することとなり、内容物の状態に即した安定的な判断が可能となり、より高精度なセンサ検知が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施形態に係るストーマ装具カバーの構成図を示す。
図2】本発明の第1の実施形態に係るストーマ装具カバーのセンサ部のストレッチセンサについての構成図を示す。
図3】本発明の第1の実施形態に係るストーマ装具カバーのセンサ部の曲げセンサについての説明図を示す。
図4】本発明の第1の実施形態に係るストーマ装具カバーのセンサ部の曲げセンサについての説明図を示す。
図5】本発明の第1の実施形態に係るストーマ装具カバーのセンサ部の格子状のセンサ配置についての説明図を示す。
図6】本発明の第1の実施形態に係るストーマ装具カバーのセンサ部の格子状のセンサ配置についての説明図を示す。
図7】本発明の第1の実施形態に係るストーマ装具カバーのセンサ部のラダー状のセンサについての構成図を示す。
図8】本発明の第1の実施形態に係るストーマ装具カバーのセンサ部のラダー状のセンサについての説明図を示す。
図9】本発明の第1の実施形態に係るストーマ装具カバーを用いた処理の流れについてのフローチャートを示す。
図10】本発明の第1の実施形態に係るストーマ装具カバーの予測部による補正動作の説明図を示す。
図11】本発明の第1の実施形態に係るストーマ装具カバーを用いた体調管理システムの構成図を示す。
図12】本発明の第2の実施形態に係るストーマ装具カバーの構成図を示す。
図13】本発明の第2の実施形態に係るストーマ装具カバーを用いた処理の流れについてのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
本願の第1の実施形態に係るストーマ装具カバーは、図1に示すように、人体から排泄される内容物を収容する袋状のストーマパウチ100を被覆するストーマ装具カバーであって、柔軟性を有する合成樹脂で形成され、このストーマパウチ100を覆うカバー本体1と、このカバー本体1に一又は複数配設され、このカバー本体1の形状変化を測定するセンサ部2と、このセンサ部2により測定された形状変化に基づいて、この内容物の変動を予測する予測部3と、を備える構成である。
【0026】
人体から排泄される内容物としては、ストーマ利用者(オストメイト)の排泄物である便や尿の水分等が該当する。袋状のストーマパウチ100は、ビニール袋で形成される。
【0027】
このストーマパウチ100を覆うカバー本体1を構成する合成樹脂は、特に限定されないが、ポリエチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリプロピレン樹脂を用いることができる。
【0028】
このセンサ部2は、このカバー本体1に1つのセンサとして配設されることが可能である。この他にも、このセンサ21は、このカバー本体1に所定間隔で複数配設されることも可能であり、特に限定されないが、例えば、図2(a)に示すように、導電ゴムから構成されるストレッチセンサ21aを用いることができる。ストレッチセンサ21aは、図2(b)に示すように、導電ゴムにより引き起こされる連続的な伸張(方向A)によって、センサ波形の追従性が高いという利点があり、連続的使用における伸縮度合いの経時的変化の調整を行うこともでき、よりセンサ精度を高めることができる。また、図2(b)に示すように、このストレッチセンサ21aは、表面のみに配設されることも可能であり、この他にも、表裏の両面に配設されることも可能である。
【0029】
このように、このストレッチセンサ21aでは、このカバー本体1に取り付けられたゴム紐型のセンサが、このカバー本体1の動きに応じて直接伸縮されて生じるゴム伸縮の度合いによって、このストーマパウチ100の膨らみ具合を検出することが可能となる。
【0030】
この他にも、このセンサ21としては、上記のストレッチセンサ21aに限定されず、様々な公知のセンサを適用可能である。例えば、このセンサ2として、図3に示すような曲げセンサ21bを用いることも可能である。
【0031】
この曲げセンサ21bとは、細い板状として形成されたセンサから構成されるものであり、この細い板状のセンサがカバー本体1に沿って屈曲することによって、センサにおける抵抗値が変化し、この抵抗値変化によりストーマパウチ100の膨らみ具合を検出することが可能となる。
【0032】
すなわち、このストーマパウチ100の膨らみ具合を検出するセンサ2として、上記のストレッチセンサ21aではゴム紐型のセンサのゴム伸縮の変化に基づくのに対して、この曲げセンサ21bでは、細い板状として形成されたセンサにおける抵抗値の変化に基づくという違いがある。目的や用途に応じて、各種のセンサを適宜選択することが可能である。いずれのセンサを用いる場合でも、本実施形態に係るストーマ装具カバーは、このセンサ2によって、このストーマパウチ100の膨らみ具合を高精度に検出することが可能となる。
【0033】
図3に示すように、この曲げセンサ21bは、このカバー本体1を隙間のある網目形状として、その隙間の間隙を通すようにして固定することができる。
【0034】
この曲げセンサ21bを挟んで固定可能なカバー本体1としては、例えば、図3に示すように、このストーマパウチ100と表面と裏面を挟んで固定するためのカバー表裏固定部11と、このカバー本体1上にカバー部品を重ねて固定可能なカバー重畳固定部12と、を備えることができる。
【0035】
この構成により、このストーマパウチ100の微細な形状変化を曲げセンサ21bの伸縮変化として高感度に受けやすくなり、この形状変化がダイレクトに細い板状のセンサにおける抵抗値変化として顕れて、より柔軟な形状変化を検知することができる。
【0036】
このような構成に適合可能な曲げセンサ21bとしては、特に限定されないが、シンプルな構造で極めて薄いセンサである、市販品の曲げセンサ(例えば、スペクトラシンボル(Spectra symbol)社製、FLEX SENSOR 2.2 FS-L-0055-253-ST)を用いることが可能であり、このストーマパウチ100の形状変化に追従して自在に屈曲変形できることから、この曲げセンサ21bの曲がった角度(歪んだ角度)を出力抵抗値の変位として容易かつ高精度に検出することができる。
【0037】
また、例えば、図4に示すように、このカバー本体1に形成された隙間に、この曲げセンサ21bを複数配設することも可能である。この複数配設された曲げセンサ21bにより、このストーマパウチ100に生じた形状変化を、細い板状のセンサにおける出力抵抗値の変位としてより高精度に検出することができる。
【0038】
さらに、このセンサ部2を構成するセンサ21は、特にその形状は限定されないが、例えば、図5(a)および(b)に示すように、このカバー本体1に格子状に隔離して複数配設されてなることが好適である。例えば、このセンサ21は、図5(a)に示すように、このカバー本体1の底部近傍に2つ配設されることも可能であり、図5(b)に示すように、このカバー本体1の上下左右の位置に4つ配設されることも可能であり、図5(b)に示すように、このカバー本体1の前面にわたって配設されることも可能である。
【0039】
このセンサ21は、図6に示すように、格子状に定点観測される複数のセンサ21によって、経時的変化を検出することで、高いセンサ精度が得られる。
【0040】
また、このセンサ部2を構成するセンサ21は、特にその形状は限定されないが、例えば、図7に示すように、このカバー本体1にラダー状に隔離して複数配設されてなることが好適である。例えば、このセンサ21は、図7(a)に示すように、このカバー本体1のストーマ入口(根元)近傍に一又は複数(例えば、1つ又は2つ)配設されることも可能であり、この場合にはストーマ形状抑制カバーラダー状ともいえる形状を構成することができる。また、図7(b)に示すように、このカバー本体1のストーマ出口(底部)近傍に複数配設されることも可能であり、図7(c)に示すように、このカバー本体1の全体を覆うように複数配設されることも可能である。
【0041】
このセンサ21は、例えば、図8(a)に示すように、複数のセンサ21が抵抗としてラダー状(梯子状)に配置されることも可能である。各センサ21は、梯子に沿った同一直線上に同一の抵抗値(R、R、R)が複数配置される。抵抗値の値を各々異ならせることで(例えば、R>R>R)、どの領域の形状に動きがあったかを電気的に検出できる。例えば、図8(b)の場合には、R=>R=>R(太線)の電気伝導を検出できることで、この領域の形状に動きがあったことを電気的に検出できる。このように、どの領域で形状変化が起きているかが正確に判断可能となり、経時的に形状変化を検出することで、将来の形状変化が予測可能となる。
【0042】
また、このセンサ21は、特に限定されないが、磁気センサを用いることが好適である。磁気センサは、カバー本体1から発生する漏洩磁界を検出することにより、磁性粒子の存在を検出することができる。この磁気センサで測定された磁気の実測値により、内容物の変化を磁性粒子に基づいて高精細に測定可能となる。このように、このセンサ部2が、磁気センサに基づいて、このカバー本体1の形状変化を測定する場合には、このカバー本体1の内部の距離(間隔)が測定されることで膨らみ具体が容易に把握できることとなり、内容物の状態について正確に判断することができ、ストーマパウチ100の異変を高精度に事前察知できることで、便漏れのトラブルを未然に防ぐことができる。
【0043】
この磁気センサの種類としては、特に限定されないが、例えば、ホールセンサを用いることが可能である。ホールセンサは、ホール効果を利用して磁界を検出し、低コストで設置可能であり、センサ精度が高い。この他にも、コイル型センサや磁気抵抗素子等の公知のセンサを適用することも可能である。この他にも、加速度センサを用いることが可能である。加速度センサは、慣性センサの一種であり、xyz方向の慣性運動を検出することで、物体の傾き状態が計測可能となる。この加速度センサを使うことによって、このストーマパウチ100の傾斜角度を検出できることとなり、装着者の姿勢(例えば、就眠状態、着座状態、起立状態等が含まれる)を容易に判別することができる。この加速度センサにより判別された装着者の姿勢によって、装着者の現在の状態や、次の動きの予測や、実施すべき処置を容易に判断することが可能となる。
【0044】
本実施形態に係るストーマ装具カバーの処理の流れを図9のフローチャートを用いて説明する。
【0045】
まず、カバー本体1に複数配設されたセンサ部2が、複数個所での形状変化をセンサ部2のセンサ21で検知して、ストーマ装具カバーの複数個所の形状変化を測定する(S1)。このセンサ部2の複数のセンサ21が、複数個所で形状変化を測定することで、より多層的で立体的な形状変化を測定することが可能となる。また、この他にも、このセンサ部2として1つのセンサ21を用いて、形状変化を測定することも可能である。
【0046】
このセンサ部2が、上述のように、このカバー本体1に格子状またはラダー状に離隔して複数配設されている場合には、センサ部2が、偏りなく内容物の全体を俯瞰して状況を判断することができ、内容物の状態に即した機敏な反応を示すこととなり、より高精度なセンサ検知が可能となる。
【0047】
次に、この予測部3が、形状変化に基づいて、この内容物の変動を予測する(S2)。より好適には、この予測部3が、このセンサ部2により測定された一又は複数個所での形状を補正して、このストーマパウチ100全体の形状変化を予測することである。例えば、形状変化に伴って変動した長さについて経時的に平均値を算出することが挙げられる。この他にも、所定の閾値を用いて、閾値を超えた場合には、この平均値を算出するという処理が挙げられる。これにより例えば、図10(a)に示すように、センサ21が局所的で偏りのある膨らみを検出した場合であっても、図10(b)に示すように、上記の形状変化に伴って変動した長さについての平均値を算出してストーマパウチ予測形状100aを算出し、全体最適な形状に補正する。このように、局所的な判断にとどまらずに、判断誤差を抑制でき、このストーマパウチ100全体の形状変化を俯瞰して予測することが可能となる。この予測については、このセンサ部2として1つのセンサ21を用いて行うことも可能であり、このセンサ部2として複数のセンサ21を用いて行うことも可能である。
【0048】
次に、この出力部は、得られた予測結果を出力する(S3)。例えば、ストーマパウチ100内の内容物の予測状況を、ストーマ利用者(オストメイト)又は管理者のスマートフォン及びスマートスピーカーにアラートとして画像表示または音表示させることができる。
【0049】
このアラートについては、当事者にはスマートフォンの通知音を使って内容物の予測状況を通知することができる。同時に、支援者(介護する家族及び訪問看護ステーションの看護師)等には、クラウド経由で通知を送ることもできる。
【0050】
この本実施形態に係るストーマ装具カバーを用いて、様々な体調管理システムが構築可能である。この体調管理システムの一例としては、図11に示されるように、ストーマパウチ100内の内容物の状況をセンサ部2が検知し、無線通信技術(例えばBluetooth(登録商標))を利用してスマートフォン200に通知する。スマートフォン200にインストールされたスマートフォン専用アプリ200aとして、この予測部3がこの出力部が格納される。センサ部2での形状変化の検知状況に応じて、スマートフォン専用アプリ200aとして、この予測部3が形状変化を予測し、予測結果に応じて、この出力部が、ストーマ利用者(オストメイト)又は管理者のスマートフォン200にアラートを画像表示、音表示またはバイブレーションで注意喚起することや、家族や支援者へメール通知を行う。
【0051】
また、この出力部は、上記の出力と同時に、例えば、Facebook(登録商標)やTwitter(登録商標)等の複数のWebサービスを連携させるIFTTT(If This Then That)サービスを提供するクラウドサーバー300に同内容の通知を送ることも可能である。
【0052】
ここで、スマートスピーカー400を所定の位置に設置しておくことによって、スマートスピーカー400は、クラウドサーバー300から同内容の通知を受け取ることができる。スマートスピーカー400は、クラウドサーバー300から同内容の通知を受け取った場合には、訪問介護ステーションとのビデオ通話を開始できる。また、スマートスピーカー400は、転倒予防のために夜間は間接照明をONにしておくことが好適である。訪問介護ステーションでは、ビデオ通話で状況を確認したり、初期対応を行ったり、必要時には緊急訪問介護の実施をしたりと、各種の対応が迅速に行える。
【0053】
これにより、ストーマ利用者(オストメイト)の支援者(介護する家族及び訪問看護ステーション500の看護師)は、オストメイト当事者へ声掛けや電話連絡等の対応することが可能となり、ストーマ利用者(オストメイト)の便漏れを未然に防ぐことができる。また、このセンサ部2とこの予測部3の連携によって、ストーマパウチ100内への便容量の変化を経時的にモニタリングすることも可能となり、便形状の変化を分析することができ、認知症高齢者等のストーマ利用者の優れた体調管理システムが実現される。
【0054】
直接的な効果としては、軽度認知症高齢者及び一般高齢者に対しては、ストーマパウチ100の異変を事前察知できるため、便漏れのトラブルを未然に防ぐことができる。また、介護施設入所者(ストーマパウチ100の交換介助を受けている者)に対しては、便漏れが生じる前にスタッフが便出し作業を行えるため、衣服汚染による清拭や着替えなどの介護負担の軽減につながる。
【0055】
また、間接的な効果としては、外出頻度が増えるなどQOLの向上、それによる介護負担軽減、緊急訪問看護の利用頻度低下、ビデオ通話による迅速な初期対応が可能となる。
【0056】
このように、本実施形態に係るストーマ装具カバーでは、このセンサ部2がこのカバー本体1の形状変化を測定し、この形状変化に基づいて、この予測部3がこの内容物の変動を予測することで、内容物の状態について全体を俯瞰して偏りなく判断することで、利用者(例えば、軽度認知症高齢者及び一般高齢者)に対して、ストーマパウチ100の異変を事前察知できることとなり、便漏れのトラブルを未然に防ぐことができる。また、介護施設入所者(ストーマパウチ100の交換介助を受けている者)に対して、便漏れが生じる前にスタッフが便出し作業を行えることとなり、衣服汚染による清拭や着替えなどの介護負担の軽減につながる。また、利用者にとって、外出頻度が増えるなどQOLの向上、それによる介護負担軽減、緊急訪問看護の利用頻度低下、ビデオ通話による迅速な初期対応が可能となる。
【0057】
(第2の実施形態)
本願の第2の実施形態に係るストーマ装具カバーは、第1の実施形態と同様に、前記カバー本体1と、前記センサ部2と、前記予測部3と、を備え、さらに、図12に示すように、前記センサ部2により測定された一又は複数個所の形状変化を蓄積する蓄積部22を備える構成である。
【0058】
この蓄積部22は、このセンサ部2により測定された一又は複数個所の形状変化を蓄積する蓄積メモリ22aを有する。蓄積メモリ22aとしては、スマートフォン内部のメモリとして構成されてもよいし、一括して管理するサーバー内のハードディスク内のメモリとして構成されてもよい。
【0059】
本実施形態に係るストーマ装具カバーの処理の流れを図13のフローチャートを用いて説明する。
【0060】
まず、上記の第1の実施形態に係るストーマ装具カバーと同様に、カバー本体1に複数配設されたセンサ部2が、複数個所での形状変化をセンサ21(例えばストレッチセンサ21a、曲げセンサ21bまたは磁気センサ)で検知して、ストーマ装具カバーの複数個所の形状変化を測定する(S1)。
【0061】
この後に、この蓄積部22が、このセンサ部2により測定された複数個所の形状変化を蓄積メモリ22aに蓄積する(S11)。次に、この予測部3が、現在の形状変化と蓄積メモリ22aで蓄積された形状変化に基づいて、この内容物の変動を予測する(S2)。
【0062】
この予測部3は、現在の形状変化と蓄積メモリ22aで蓄積された形状変化を考慮することによって、例えば、蓄積メモリ22aで蓄積された形状変化の平均値を閾値として、現在の形状変化がこの閾値を超えているかどうかの判定を行うことで、経時的な形状変化の推移が予測可能となる。この後は、上記の第1の実施形態に係るストーマ装具カバーと同様に、この出力部は、得られた予測結果を出力する(S3)。
なお、上記では、このセンサ部2として複数のセンサ21を用いたが、この形態に限定されるものではなく、この他にも、このセンサ部2として1つのセンサ21を用いて行うことも可能であり、上記と同様に、この出力部により、得られた予測結果を出力することができる。
【0063】
このように、本実施形態に係るストーマ装具カバーは、このセンサ部2により測定された一又は複数個所の形状変化を蓄積する蓄積部22を備えることから、局所的な判断にとどまらず内容物の全体状況を経時的に判断できることとなり、内容物の状態を俯瞰した安定的な判断が可能となり、より高精度なセンサ検知が可能となる。
【0064】
この高精度なセンサ検知を応用したものとして、例えば、以下の実施形態も可能となる。
【0065】
まず、ストーマパウチ100にセンサ部2及びカバー本体1を装着し、スマートフォン200やAIアシスタント搭載スピーカー(スマートスピーカー)とペアリング(接続)する。この時、ジャイロセンサ(角速度センサ)等により姿勢変化を予測し、ストーマパウチ100内の容量検知アルゴリズムを切り替える。ストーマパウチ100内の便が一定量貯留したことをセンサ部2が検知し、無線通信(例えば、Bluetooth Low Energy;BLE)を利用して上記スマートフォン200等へアラートを発生させる。
【0066】
当事者(ストーマ当事者)には上記スマートフォン200等の通知音を使って便貯留を知らせる。同時に、支援者(介護する家族及び訪問看護ステーションの看護師)等には、クラウド経由で通知を送る。支援者は必要に応じて、ストーマ当事者へ声掛けや電話連絡等の対応をとることで便漏れを未然に防ぐ。ストーマパウチ100内への便容量の変化を経時的にモニタリングすることで、便形状の変化を分析し、認知症高齢者の体調管理システムへと応用することが可能となる。
【符号の説明】
【0067】
1 カバー本体
11 カバー表裏固定部
12 カバー重畳固定部
2 センサ部
21 センサ
21a ストレッチセンサ
21b 曲げセンサ
22 蓄積部
22a 蓄積メモリ
3 予測部
100 ストーマパウチ
100a ストーマパウチ予測形状
200 スマートフォン
200a スマートフォン専用アプリ
300 クラウドサーバー
400 スマートスピーカー
500 訪問看護ステーション
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13