(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123904
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/184 20210101AFI20240905BHJP
H01M 50/107 20210101ALI20240905BHJP
H01M 50/152 20210101ALI20240905BHJP
H01M 50/193 20210101ALI20240905BHJP
【FI】
H01M50/184 E
H01M50/107
H01M50/152
H01M50/193
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031705
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100184712
【弁理士】
【氏名又は名称】扇原 梢伸
(74)【代理人】
【識別番号】100192223
【弁理士】
【氏名又は名称】加久田 典子
(72)【発明者】
【氏名】倉林 貴志
(72)【発明者】
【氏名】荻原 克幸
【テーマコード(参考)】
5H011
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011CC06
5H011DD23
5H011FF02
5H011GG02
5H011HH02
5H011JJ12
5H011KK00
(57)【要約】
【課題】ガスケットのずれを防止する技術の提供。
【解決手段】封口ユニット40において、導電性を有する封口板42の外縁部に樹脂シート44が設置されており、ガスケット46が樹脂シート44を介して封口板42の外縁部を挟持している。封口ユニット40は、導電性を有する外装缶10の開口縁部14にかしめ固定される。樹脂シート44とガスケット46との摩擦係数は、封口板42とガスケット46との摩擦係数よりも高いため、ガスケット46は、樹脂シート44を設置した場合の方が設置しない場合よりもずれにくくなる。したがって、樹脂シート44を設置することで、開口縁部14をかしめる際のガスケット46のずれを防止することができる。その結果、かしめた部位の潰れが生じにくくなるため、封口板42と外装缶10との短絡を抑制することができ、これに起因する不良品の発生を抑制して歩留まりを向上することが可能となる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒形状をなし一端部に開口部を有した、導電性の外装缶と、
前記開口部に設けられた、導電性の封口板と、
前記封口板の外縁部に設けられた、所定の摩擦係数を有するシート部材と、
前記シート部材を介して前記封口板の外縁部を挟持しつつ前記外装缶の開口縁部に密着した、絶縁性のガスケットと
を備えた二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の二次電池において、
前記シート部材は、前記ガスケットとの摩擦係数が、前記封口板と前記ガスケットとの摩擦係数より高いことを特徴とする二次電池。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の二次電池において、
前記シート部材は、絶縁性を有していることを特徴とする二次電池。
【請求項4】
請求項3に記載の二次電池において、
前記シート部材は、前記封口板に接着されていることを特徴とする二次電池。
【請求項5】
請求項4に記載の二次電池において、
前記シート部材は、前記ガスケットと略同等又はそれ以上の圧縮強度を有していることを特徴とする二次電池。
【請求項6】
請求項5に記載の二次電池において、
前記シート部材は、樹脂で形成されていることを特徴とする二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒形の二次電池を製造する際には、一方の極端子を兼ねる外装缶の開口部に、他方の極端子を兼ねる封口体を絶縁ガスケットを介して配置した上で、外装缶の開口縁部をかしめて封口体を固定させるのが一般的である。このような構造とすることで、電池の密閉性が確保される(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、外装缶をかしめる工程においてガスケットのずれが生じると、ガスケットを想定した態様で介在させることができず、かしめた部位が潰れてしまうことから、電池の密閉性が確保されなくなり液漏れが発生するばかりか、外装缶と封口体とが短絡する虞もあるため、対策が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、ガスケットのずれを防止する技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の二次電池は、有底筒形状をなし一端部に開口部を有した、導電性の外装缶と、前記開口部に設けられた、導電性の封口板と、前記封口板の外縁部に設けられた、所定の摩擦係数を有するシート部材と、前記シート部材を介して前記封口板の外縁部を挟持しつつ前記外装缶の開口縁部に密着した、絶縁性のガスケットとを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、封口板の外縁部に所定の摩擦係数を有するシート部材が設けられていることから、ガスケットがずれにくくなるため、外装缶の開口縁部をかしめる際に生じうるガスケットのずれを防止することができる。これにより、かしめた部位の潰れも生じにくくなるため、封口板と外装缶との接触による短絡を抑制することができるとともに、外装缶からの液漏れを防止することができ、不良品の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態の電池1を部分的に破断して示す斜視図である。
【
図2】封口ユニット40の構造を説明する図である。
【
図3】電池1の作製時におけるガスケットずれ及びかしめ短絡の発生率に関する評価試験の結果をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の二次電池の一実施形態として、単3形のニッケル水素二次電池(以下、「電池」と略称する。)を例に挙げ、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は本発明の二次電池の好適な一例として示すものであり、実施形態はこの例示に限定されない。
【0010】
〔電池の構成〕
図1は、電池1を示す斜視図である。構造の理解を容易とするために、
図1においては、電池1の一部を破断して示している。
電池1は、主に、有底円筒形状をなした外装缶10と、外装缶10に収容された電極群20と、電極群20の一部に接続した正極リード30と、正極リード30に接続しつつ外装缶10の開口部を封止する封口ユニット40とで構成されている。
【0011】
外装缶10は、導電性を有する材料(例えば、ニッケルめっき鋼板)で形成されている。電極群20は、それぞれ帯状をなした正極22、負極24、セパレータ26からなり、負極24と2枚のセパレータ26で挟まれた正極22とが重ね合わされ渦巻き状に巻回された状態で、図示されていないアルカリ電解液とともに外装缶10に収容されており、負極24の最外周部が電極群20の最外周部となって外装缶10の内周面に接触している。これにより、負極24と外装缶10とが電気的に接続され、外装缶10の底壁12が負極端子として機能する。
【0012】
正極22は、ニッケル酸化物からなる。負極24は、水素吸蔵合金からなる。また、セパレータ26としては、例えば、ポリオレフィン系繊維の不織布に親水基を付加したものを用いることができる。アルカリ電解液としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等を溶質とした水溶液を用いることができる。
【0013】
電極群20と封口ユニット40との間には上部絶縁部材32が配置され、電極群20と底壁12との間には下部絶縁部材36が配置されている。また、上部絶縁部材32が有するスリット34を通って正極リード30が配置されている。正極リード30は、その一端部が正極22に接続する一方、他端部が封口ユニット40の一部をなす封口板42に溶接されている。
【0014】
封口ユニット40は、外装缶10の開口部内に配置されて開口部を塞ぐ封口板42と、封口板42における上面外縁部から外側面を経て下面外縁部にわたる領域を取り囲んで設置された樹脂シート44と、樹脂シート44を介して封口板42の外縁部を挟持しつつ外装缶10の開口縁部14に密着する環状のガスケット46と、封口板42の上面中央部に配置されたフランジ付き円筒形状の正極端子48とを含んでおり、これらが一体となって外装缶10の開口部を封止している。
【0015】
封口板42は、鋼板で形成されている。正極端子48は、導電性を有する材料で形成されている。正極端子48は封口板42に接続しており、正極リード30は上述したように正極22及び封口板42に接続しているため、正極22と正極端子48とは、正極リード30及び封口板42を介して電気的に接続されている。また、樹脂シート44は、樹脂でシート状に形成されたものであり、後述する所定の物性を有している。ガスケット46は、絶縁性を有する材料(例えば、ナイロン)で形成されている。
【0016】
封口板42の中央部には第1ガス抜き孔50が穿孔されており、これを塞ぐように配置されたゴム製の弁体52を、正極端子48が封口板42に対し押圧している。また、図示されていないが、正極端子48の側壁下部には小さな第2ガス抜き孔が穿孔されている。弁体52は、通常時には第1ガス抜き孔50を気密に閉塞するが、外装缶10の内部でガスが発生して圧力が上昇すると圧縮されて第1ガス抜き孔50を開く。これにより、第1ガス抜き孔50及び第2ガス抜き孔を介して外装缶10の内外が連通し、ガスが外部に放出される。その結果、内圧が降下して弁体52が元の状態に戻り、再び第1ガス抜き孔50を閉塞する。このように、弁体52は電池1の安全弁として機能する。
【0017】
〔封口ユニットの構造〕
図2は、封口ユニット40の構造を説明する図である。発明の理解を容易とするために、
図2中(A)及び(B)においては、樹脂シート44に網掛けを施している。
【0018】
図2中(A):封口板42がガスケット46に嵌め込まれる前の段階、いわば未完成の状態の封口ユニット40を示す平面図である。封口板42の外縁部には、その全域にわたって樹脂シート44が接着されている。樹脂シート44としては、体積固有抵抗が10
10Ωcm以上であり、ガスケット46と同等又はそれ以上の圧縮強度を有しており、ガスケット46との摩擦係数が封口板42とガスケット46との摩擦係数よりも高いものが採用される。
【0019】
図2中(B):封口板42がガスケット46に嵌め込まれた、完成状態の封口ユニット40を示す平面図である。図示されるように、封口板42がガスケット46に嵌め込まれ、ガスケット46が樹脂シート44を介して封口板42の外縁部を挟持した状態においても、樹脂シート44の一部を視認できる。すなわち、樹脂シート44は、ガスケット46と接触する領域よりも余裕を持たせた大きさで設けられている。樹脂シート44をこのような大きさとすることにより、ガスケット46の大きさや嵌め込み具合に多少の個体差がある場合でも、その影響を受けることなく、封口板42とガスケット46との間に樹脂シート44を確実に介在させることができる。
【0020】
封口ユニット40は、これを外装缶10の開口部に配置した上で開口縁部14を封口板42に向けてかしめることにより、開口縁部14に固定される。
【0021】
図2中(C):開口縁部14にかしめ固定された状態の封口ユニット40を、正極端子48の中心を通る直線に沿って垂直に切断し拡大して示す断面図である。上述したように、樹脂シート44とガスケット46との摩擦係数は封口板42とガスケット46との摩擦係数よりも高く、また、樹脂シート44が封口板42に接着されているため、封口ユニット40においては、樹脂シート44が設置されずに封口板42とガスケット46とが直接触れ合う場合よりも、ガスケット46のずれが生じにくい。
【0022】
したがって、封口板42の外縁部に樹脂シート44を設置することで、開口縁部14をかしめる際のガスケット46のずれを防止することができる。これにより、かしめた部位の潰れが生じにくくなるため、正極に電気的に接続された封口板42と負極に電気的に接続された外装缶10との短絡を抑制することができるとともに、電池の密閉性を確保して外装缶10からの電解液の液漏れを防止することができ、これらに起因する不良品の発生を抑制して歩留まりを向上することが可能となる。
【0023】
また、開口縁部14をかしめる際に、万一、ガスケット46がずれてかしめた部位の潰れが生じたとしても、上述したように樹脂シート44は、ガスケット46と同等又はそれ以上の圧縮強度を有しているため破損する心配がなく、また、ガスケット46に接触する領域よりも余裕を持たせた大きさで設けられているため、かしめた部位(開口縁部14)と封口板42との接触を防止して、両者を確実に絶縁することができる。
【0024】
なお、上記の例においては、封口板42の外縁部に設置された樹脂シート44が封口板42に接着されているが、接着はせず単に設置するだけでも樹脂シート44が概ね固定され、封口板42との間でのずれが殆ど生じない場合には、樹脂シート44を接着しないで封口板42の外縁部に設置してもよい。このような構成によっても、かしめ工程におけるガスケット46のずれを防止することができる。
【0025】
〔評価試験結果〕
図3は、電池1の作製時におけるガスケット46のずれ(以下、「ガスケットずれ」と称する。)、及び、ガスケットずれによりかしめた部位が潰れることに起因して生じる外装缶10と封口板42との短絡(以下、「かしめ短絡」と称する。)の発生率に関する評価試験の結果をまとめた表である。
【0026】
評価試験では、上述した実施形態において、ガスケット46をナイロンで形成しつつ、樹脂シート44の材質を異ならせた3つの実施例の電池、及び、樹脂シート44を設置しない比較例の電池を、それぞれ1000個ずつ作製し、ガスケットずれの発生率及びかしめ短絡の発生率を比較した。
【0027】
実施例1~3における樹脂シート(ナイロン、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン)は、いずれも体積固有抵抗が1010Ωcmより大きく、十分な絶縁性を有している。また、各樹脂シートとガスケットとの摩擦係数は、いずれも比較例の欄に参考値として記載した摩擦係数、すなわち、封口板42(鋼)とガスケット46(ナイロン)とが直接触れ合う場合の摩擦係数0.4(鋼-ナイロン)を超えており、樹脂シート44を設置した実施例1~3の方が、設置しない比較例よりもガスケット46が滑りにくいことが分かる。
【0028】
実施例1~3の電池の作製においては、ガスケットずれもかしめ短絡も全く発生しなかった。これに対し、比較例の電池の作製においては、ガスケットずれが1000個中10個(1.0%)発生し、かしめ短絡が1000個中4個(0.4%)発生した。言い換えると、封口板42とガスケット46との間に樹脂シート44を設置することで、樹脂シート44を設置しない場合よりも、ガスケットずれの発生率、かしめ短絡の発生率がともに低下した。以上の評価試験の結果から、封口板42の外縁部に樹脂シート44を設置することは、ガスケットずれの防止やかしめ短絡の抑制、ひいては歩留まりの向上に有効であるといえる。
【0029】
本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々に変形して実施することができる。上述した実施形態では、封口板42の外縁部に樹脂シート44を設置しているが、これに代えて、樹脂以外の材料でシート状に形成された部材を設置してもよい。その場合には、シート状の部材は、体積固有抵抗が1010Ωcm以上であり、ガスケット46と同等又はそれ以上の圧縮強度を有しており、ガスケット46との摩擦係数が封口板42とガスケット46との摩擦係数よりも高いものとする必要がある。
【0030】
また、上述した実施形態では、単3形のニッケル水素二次電池を例に挙げて説明しているが、電池のサイズは適宜変更が可能であり、形状は円筒形であっても角筒形(角形)であってもよい。電池の種類は、ニッケル水素二次電池に限定されず、その他のアルカリ二次電池であってもよいし、リチウムイオン二次電池等であってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 電池
10 外装缶
20 電極群
30 正極リード
40 封口ユニット
42 封口板
44 樹脂シート(シート部材)
46 ガスケット