(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123908
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】バスキュラーアクセス装置、およびバスキュラーアクセス構造
(51)【国際特許分類】
A61F 2/06 20130101AFI20240905BHJP
A61M 1/36 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61F2/06
A61M1/36 141
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031712
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 準二
(72)【発明者】
【氏名】東 順也
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 憲央
(72)【発明者】
【氏名】工藤 俊洋
【テーマコード(参考)】
4C077
4C097
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077CC03
4C077DD20
4C077EE01
4C077KK07
4C097AA15
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC02
4C097CC05
4C097CC12
4C097DD04
4C097EE06
4C097EE08
4C097EE11
4C097FF05
(57)【要約】
【課題】生活上の利便性に優れるバスキュラーアクセス装置やバスキュラーアクセス構造を提供することを目的とする。
【解決手段】第一実施形態~第四実施形態のうち、第一実施形態のバスキュラーアクセス装置11は、人工血管111からなる本体部と、皮膚12から部分的に露出させるための露出部とを含み、人工血管111の外表面で露出部が構成される。いっぽう、バスキュラーアクセス構造は、バスキュラーアクセス装置11と皮膚12とを含み、バスキュラーアクセス装置11が人工血管111からなり、人工血管111の中間の外表面が部分的に皮膚12より露出する。第一実施形態によれば、人工血管111の外表面で露出部が構成されることから、露出部の高さを抑えることが可能であり、したがって、露出部が何かに強く引っかかることを回避できる。これに加えて、引っかかりが生じる頻度を低減できる。それ故、生活上の利便性に優れる。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管同士を接続するための人工血管、血管同士を接続するための人工血管の少なくとも一部もしくは血管の一部を覆うための被覆部材、または、血管同士を接続するための人工血管およびその少なくとも一部を覆う被覆部材を含む複合部材からなる本体部と、
皮膚から部分的に露出させるための露出部と、
を含むバスキュラーアクセス装置であって、
前記本体部が前記人工血管からなる場合、前記人工血管の外表面で前記露出部が構成されるか、または、前記人工血管に、前記皮膚表面を基準とする高さを10mm以下とすることが可能な突起が形成され、前記突起の一部で前記露出部が構成され、
前記本体部が前記被覆部材または前記複合部材からなる場合、前記露出部が前記被覆部材の外表面で構成される、
バスキュラーアクセス装置。
【請求項2】
前記本体部が前記被覆部材または前記複合部材からなり、
前記被覆部材が自己シール性の材料で形成されている、
請求項1に記載のバスキュラーアクセス装置。
【請求項3】
前記本体部が前記被覆部材または前記複合部材からなり、
少なくとも前記露出部と前記皮膚との境界付近において、前記被覆部材が、縫合糸により縫合可能な材料で形成されている、
請求項1に記載のバスキュラーアクセス装置。
【請求項4】
前記本体部が前記複合部材からなり、
前記被覆部材が前記人工血管に接合されている、
請求項1に記載のバスキュラーアクセス装置。
【請求項5】
前記本体部が前記人工血管からなり、
前記露出部が、前記人工血管の前記外表面で構成される場合、少なくとも前記露出部と前記皮膚との境界付近において、前記人工血管が、縫合糸により縫合可能な材料で形成されており、
前記露出部が、前記突起の一部で構成される場合、少なくとも前記露出部と前記皮膚との境界付近において、前記突起が、縫合糸により縫合可能な材料で形成されている、
請求項1に記載のバスキュラーアクセス装置。
【請求項6】
バスキュラーアクセス装置と皮膚とを含むバスキュラーアクセス構造であって、
前記バスキュラーアクセス装置が、
血管同士を接続するための人工血管、血管同士を接続するための人工血管の少なくとも一部もしくは血管の一部を覆うための被覆部材、または、血管同士を接続するための人工血管およびその少なくとも一部を覆う被覆部材を含む複合部材からなり、
前記バスキュラーアクセス装置が前記人工血管からなる場合、前記人工血管の中間の外表面が部分的に前記皮膚より露出するか、または、前記人工血管に、前記皮膚表面を基準とする高さ10mm以下の突起が形成され、前記突起の一部が前記皮膚より露出し、
前記バスキュラーアクセス装置が前記被覆部材または前記複合部材からなる場合、前記被覆部材の外表面が前記皮膚より露出する、
バスキュラーアクセス構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスキュラーアクセス装置、およびバスキュラーアクセス構造に関する。
【背景技術】
【0002】
血液透析の患者にはバスキュラーアクセスが作製される。バスキュラーアクセスとして、内シャント(たとえば、自己血管内シャントや人工血管内シャント)や動脈表在化などが知られている。なかでも自己血管内シャントがバスキュラーアクセスの第一選択として推奨されている。
【0003】
血液透析の際には血管に穿刺するところ、穿刺は痛みを伴う。血液透析は、標準的には週3回おこなわれ、その都度穿刺することから、穿刺の痛みを、回避または低減することが望まれている。
【0004】
穿刺の痛みを、回避または低減し得る装置として、たとえば、特許文献1に記載された血液出入装置が知られている。この血液出入装置によれば、皮膚を介した血管への穿刺が不要になることから、穿刺の痛みを回避できる。しかしながら、この血液出入装置は、構造が複雑であり、高価である。したがって、新たな血液出入装置が求められている。
【0005】
いっぽう、特許文献2に記載されたアクセスポートによっても、皮膚を介した血管への穿刺が不要になることから、穿刺の痛みを、回避または低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭57-9458号公報
【特許文献2】特許第4815024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2のアクセスポートは、皮膚からいくらか突き出ることがあると考えられ、したがって、日々の暮らしの中で何か(たとえば衣服、タオルなど)に引っかかりやすいと考えられる。つまり、特許文献2のアクセスポートは、生活上、邪魔になることがあると考えられる。したがって、生活上の利便性について改善の余地がある。
【0008】
本発明は、生活上の利便性に優れるバスキュラーアクセス装置やバスキュラーアクセス構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明のバスキュラーアクセス装置は、下記[1]の構成を備える。
[1]
血管同士を接続するための人工血管、血管同士を接続するための人工血管の少なくとも一部もしくは血管の一部を覆うための被覆部材、または、血管同士を接続するための人工血管およびその少なくとも一部を覆う被覆部材を含む複合部材からなる本体部と、
皮膚から部分的に露出させるための露出部と、
を含むバスキュラーアクセス装置であって、
前記本体部が前記人工血管からなる場合、前記人工血管の外表面で前記露出部が構成されるか、または、前記人工血管に、前記皮膚表面を基準とする高さを10mm以下とすることが可能な突起が形成され、前記突起の一部で前記露出部が構成され、
前記本体部が前記被覆部材または前記複合部材からなる場合、前記露出部が前記被覆部材の外表面で構成される、
バスキュラーアクセス装置。
【0010】
本発明のバスキュラーアクセス装置は、下記[2]~[5]の構成をさらに備えることが好ましい。
[2]
前記本体部が前記被覆部材または前記複合部材からなり、
前記被覆部材が自己シール性の材料で形成されている、
[1]に記載のバスキュラーアクセス装置。
[3]
前記本体部が前記被覆部材または前記複合部材からなり、
少なくとも前記露出部と前記皮膚との境界付近において、前記被覆部材が、縫合糸により縫合可能な材料で形成されている、
[1]または[2]に記載のバスキュラーアクセス装置。
[4]
前記本体部が前記複合部材からなり、
前記被覆部材が前記人工血管に接合されている、
[1]~[3]のいずれかに記載のバスキュラーアクセス装置。
[5]
前記本体部が前記人工血管からなり、
前記露出部が、前記人工血管の前記外表面で構成される場合、少なくとも前記露出部と前記皮膚との境界付近において、前記人工血管が、縫合糸により縫合可能な材料で形成されており、
前記露出部が、前記突起の一部で構成される場合、少なくとも前記露出部と前記皮膚との境界付近において、前記突起が、縫合糸により縫合可能な材料で形成されている、
[1]に記載のバスキュラーアクセス装置。
【0011】
いっぽう、本発明のバスキュラーアクセス構造は、下記[6]の構成を備える。
[6]
バスキュラーアクセス装置と皮膚とを含むバスキュラーアクセス構造であって、
前記バスキュラーアクセス装置が、
血管同士を接続するための人工血管、血管同士を接続するための人工血管の少なくとも一部もしくは血管の一部を覆うための被覆部材、または、血管同士を接続するための人工血管およびその少なくとも一部を覆う被覆部材を含む複合部材からなり、
前記バスキュラーアクセス装置が前記人工血管からなる場合、前記人工血管の中間の外表面が部分的に前記皮膚より露出するか、または、前記人工血管に、前記皮膚表面を基準とする高さ10mm以下の突起が形成され、前記突起の一部が前記皮膚より露出し、
前記バスキュラーアクセス装置が前記被覆部材または前記複合部材からなる場合、前記被覆部材の外表面が前記皮膚より露出する、
バスキュラーアクセス構造。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生活上の利便性に優れるバスキュラーアクセス装置やバスキュラーアクセス構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】第一実施形態におけるバスキュラーアクセス構造の概略断面図である。
【
図1B】第一実施形態において、バスキュラーアクセス装置の露出部(すなわち、バスキュラーアクセス装置のうち露出した部分)を手前に配置したうえでバスキュラーアクセス構造を見たときの概略図である。すなわち、
図1Aに示す矢印IB方向でバスキュラーアクセス構造を見たときの概略図である。
【
図2A】第二実施形態におけるバスキュラーアクセス構造の概略断面図である。
【
図2B】第二実施形態において、バスキュラーアクセス装置の露出部を手前に配置したうえでバスキュラーアクセス構造を見たときの概略図である。すなわち、
図2Aに示す矢印IIB方向でバスキュラーアクセス構造を見たときの概略図である。
【
図2C】第二実施形態の変形例に係るバスキュラーアクセス構造の概略断面図である。
【
図2D】第二実施形態の変形例において、バスキュラーアクセス装置の露出部を手前に配置したうえでバスキュラーアクセス構造を見たときの概略図である。すなわち、
図2Cに示す矢印IID方向でバスキュラーアクセス構造を見たときの概略図である。
【
図3A】第三実施形態におけるバスキュラーアクセス構造の概略断面図である。
【
図3B】第三実施形態において、バスキュラーアクセス装置の露出部を手前に配置したうえでバスキュラーアクセス構造を見たときの概略図である。すなわち、
図3Aに示す矢印IIIB方向でバスキュラーアクセス構造を見たときの概略図である。
【
図4A】第四実施形態におけるバスキュラーアクセス構造の概略断面図である。
【
図4B】第四実施形態において、バスキュラーアクセス装置の露出部を手前に配置したうえでバスキュラーアクセス構造を見たときの概略図である。すなわち、
図4Aに示す矢印IVB方向でバスキュラーアクセス構造を見たときの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<1.はじめに>
バスキュラーアクセス装置は、体内から血液を取り出すこと、および/または、体内から取り出した血液を体内に戻すことを可能にする装置、つまりバスキュラーアクセスを可能にする装置である。バスキュラーアクセス装置は、血液透析やアフェレシスといった体外循環をおこなう治療において、患者に、ひいては、治療に携わる医療従事者にバスキュラーアクセスを提供することができる。
【0015】
以下では、第一実施形態から第四実施形態について説明するところ、まずは、これらの実施形態につき簡単に説明する。
【0016】
第一実施形態のバスキュラーアクセス装置は、
人工血管からなる本体部と、
皮膚から部分的に露出させるための露出部と、を含み、
人工血管の外表面で露出部が構成される(
図1Aおよび
図1B参照)。
【0017】
第二実施形態のバスキュラーアクセス装置は、
人工血管からなる本体部と、
皮膚から部分的に露出させるための露出部と、を含み、
人工血管に、皮膚表面を基準とする高さを10mm以下とすることが可能な突起が形成され、突起の一部で露出部が構成される(
図2A、
図2B、
図2Cおよび
図2D参照)。
【0018】
第三実施形態のバスキュラーアクセス装置は、
複合部材、具体的には、人工血管およびその少なくとも一部を覆う被覆部材を含む複合部材からなる本体部と、
皮膚から部分的に露出させるための露出部と、を含み、
露出部が被覆部材の外表面で構成される(
図3Aおよび
図3B参照)。
【0019】
第四実施形態のバスキュラーアクセス装置は、
被覆部材からなる本体部と、
皮膚から部分的に露出させるための露出部と、を含み、
露出部が被覆部材の外表面で構成される(
図4Aおよび
図4B参照)。
【0020】
<2.第一実施形態>
図1Aおよび
図1Bに示すように、第一実施形態のバスキュラーアクセス装置11は管状をなす。バスキュラーアクセス装置11は、部分的に皮膚12から露出する態様で生体に植え込まれる。すなわち、バスキュラーアクセス装置11は、部分的に皮膚12から露出する態様で留置される。具体的には、バスキュラーアクセス装置11は、人工血管111の外表面が部分的に皮膚12から露出する態様で留置される。
【0021】
バスキュラーアクセス装置11は人工血管111を含む。人工血管111の両端は開口している。
【0022】
人工血管111は、たとえばストレートタイプであってもよく、テーパータイプであってもよく、ショートテーパータイプであってもよい。
【0023】
人工血管111の長さは、たとえば50mm以上であってもよく、100mm以上であってもよい。人工血管111の長さは、600mm以下であってもよく、500mm以下であってもよい。なお、バスキュラーアクセス装置11の人工血管111は留置される前に、長さ調整のために必要に応じて切断され得るところ、この段落において、人工血管111の長さは、切断前の人工血管111の長さを意味する。
【0024】
人工血管111の内径は、たとえば4mm以上であってもよく、5mm以上であってもよい。人工血管111の内径は、15mm以下であってもよく、12mm以下であってもよい。なお、人工血管111が、たとえばテーパータイプやショートテーパータイプである場合には、本明細書において内径は最小内径を意味する。
【0025】
人工血管111は柔軟であることが好ましい。人工血管111が柔軟であると、バスキュラーアクセス装置11を部分的に皮膚12から露出させる態様でバスキュラーアクセス装置11を留置することが容易である。
【0026】
人工血管111は、自己シール性の材料で形成されている。厳密には、人工血管111は、自己シール性の材料で形成された層(以下、「自己シール層」と言うことがある。)を含む。「自己シール性の材料」とは、穿刺によって開けられた孔を、少なくとも血液が漏出しない程度に、ひとりでに閉塞することが可能な材料である。人工血管111が、自己シール性の材料で形成されていると、穿刺によって開けられた孔がひとりでに閉塞する(具体的には、少なくとも血液が漏出しない程度にひとりでに閉塞する)ことが可能であるから、穿刺によって開けられた孔からの血液が漏れ出すことを回避できる。自己シール性の材料として、たとえば弾性材料を挙げることができる。弾性材料としてはエラストマーが好ましい。エラストマーとして、たとえばスチレン系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを挙げることができる。
【0027】
バスキュラーアクセス装置11を縫い付ける際に縫合糸が引っ張られるところ、引っ張られた縫合糸によって自己シール層が容易に引き裂かれない程度以上の強度を有することが好ましい。これを踏まえると、自己シール性の材料は、縫合糸により縫合可能な材料であることが好ましい。つまり、縫い付け時に縫合糸によって自己シール層が容易に引き裂かれない程度以上の強度を発揮する材料が好ましい。
【0028】
なお、人工血管111は、なんらかの物質、たとえばゼラチンで被覆されていてもよい。人工血管111は、なんらかの補強材、たとえばらせん状の補強材を含んでいてもよい。
【0029】
バスキュラーアクセス装置11の留置手順として、たとえば、生体の皮膚12(たとえば人体の腕の皮膚)を切開し、静脈121を切断し、切断した静脈121同士をバスキュラーアクセス装置11でつなぎ合わせたうえで(すなわち、切断した静脈121同士をバスキュラーアクセス装置11で吻合したうえで)、バスキュラーアクセス装置11が部分的に皮膚12から露出する態様でバスキュラーアクセス装置11を縫い付ける、という手順を挙げることができる。静脈121として、たとえば橈側皮静脈、尺側皮静脈を挙げることができる。切断した静脈121とバスキュラーアクセス装置11とは縫合糸で縫い合わせることができる。生体が内シャントを有する場合、その吻合部(たとえば、自己血管内シャントにおける動脈と静脈との吻合部、人工血管内シャントにおける人工血管と静脈との吻合部など)の下流で、静脈121同士をバスキュラーアクセス装置11でつなぎ合わせることが好ましい。つまり、吻合部の下流にバスキュラーアクセス装置11を留置することが好ましい。
【0030】
留置された人工血管111の長さはたとえば50mm以上であってもよく、100mm以上であってもよい。留置された人工血管111の長さは、600mm以下であってもよく、500mm以下であってもよい。
【0031】
バスキュラーアクセス装置11が部分的に皮膚12から露出する態様で留置されることから、バスキュラーアクセス装置11の構成を露出部と本体部とに区別することができる。具体的には、バスキュラーアクセス装置11は、人工血管111の外表面が部分的に皮膚12から露出する態様で留置されることから、バスキュラーアクセス装置11の構成を、人工血管111からなる本体部と、人工血管111の外表面により構成される露出部とに区別することができる。
【0032】
バスキュラーアクセス装置11は、人工血管111の中間の外表面が部分的に露出する態様で留置されることができる。ここで、「人工血管111の中間」は、留置された人工血管111の中間を意味する。人工血管111の中間は、たとえば、留置された人工血管111の一端から、留置された人工血管111の長さの10分の1の領域と、留置された人工血管111の他端から、留置された人工血管111の長さの10分の1の領域との間の領域であってもよい。人工血管111の中間は、たとえば、留置された人工血管111の一端から、留置された人工血管111の長さの5分の1の領域と、留置された人工血管111の他端から、留置された人工血管111の長さの5分の1の領域との間の領域であってもよい。人工血管111の中間は、たとえば、留置された人工血管111の一端から、留置された人工血管111の長さの3分の1の領域と、留置された人工血管111の他端から、留置された人工血管111の長さの3分の1の領域との間の領域であってもよい。
【0033】
皮膚12表面を基準として露出部の高さが3mm以下である態様で、バスキュラーアクセス装置11が留置されることができる。ここで、「露出部の高さ」は最大高さを意味する。露出部の高さは2mm以下であってもよく、1mm以下であってもよく、0mmであってもよい。
【0034】
バスキュラーアクセス装置11と皮膚12との縫合に関して、バスキュラーアクセス装置11の露出部と皮膚12との境界付近において、バスキュラーアクセス装置11の人工血管111と皮膚12とを縫合糸で縫い合わせることができる。縫合糸として、吸収性縫合糸、非吸収性縫合糸を挙げることができる。たとえば、絹糸、合成糸(ナイロンやポリプロピレン、ポリエステル糸)、カットグートを挙げることができる。
【0035】
ここまで説明したように、第一実施形態のバスキュラーアクセス装置11は、
人工血管111からなる本体部と、
皮膚12から部分的に露出させるための露出部と、を含み、
人工血管111の外表面で露出部が構成される。
【0036】
いっぽう、第一実施形態のバスキュラーアクセス構造は、
バスキュラーアクセス装置11と
皮膚12とを含み、
バスキュラーアクセス装置11が人工血管111からなり、
人工血管111の中間の外表面が部分的に皮膚12より露出する。
【0037】
第一実施形態によれば、人工血管111の外表面で露出部が構成されることから、露出部の高さを抑えることが可能であり、したがって、露出部が何かに強く引っかかることを回避できる。これに加えて、引っかかりが生じる頻度を低減できる。それ故、生活上の利便性に優れる。
【0038】
そのうえ、人工血管111の外表面で露出部が構成されることから、露出部を介した人工血管111への穿刺が可能である。つまり、皮膚12を介さず人工血管111への穿刺が可能である。したがって、穿刺の痛みを回避または低減することもできる。
【0039】
しかも、少なくとも露出部と皮膚12との境界付近において、人工血管111が、縫合糸により縫合可能な材料で形成されている。したがって、露出部と皮膚12との境界付近において縫合することが可能である。
【0040】
第一実施形態には、種々の変更を加えることができる。たとえば、以下の変形例から、一つまたは複数を選択して、第一実施形態に変更を加えることができる。
【0041】
上述の第一実施形態では、バスキュラーアクセス装置11の人工血管111の両端が開口している、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス装置11は、この構成に限定されない。すなわち、バスキュラーアクセス装置11の人工血管111の両端は開口していなくてもよい。具体的には、人工血管111の両端は、留置前において、たとえば、バスキュラーアクセス装置11が流通する段階において開口していなくてもよい。つまり、留置前には、バスキュラーアクセス装置11の中の空洞が両端で塞がっていてもよい。この場合、バスキュラーアクセス装置11の両端を切り落とす、といった方法で、バスキュラーアクセス装置11の中の空洞を開口させたうえで留置することができる。
【0042】
上述の第一実施形態では、人工血管111が自己シール性の材料で形成されている、という構成を説明した。厳密には、人工血管111が自己シール層を含む、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス装置11は、この構成に限定されない。人工血管111が自己シール性の材料で形成されていなくてもよい。つまり、人工血管111が自己シール層を含まなくてもよい。
【0043】
上述の第一実施形態では、人工血管111が自己シール層の単層構造である、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス装置11は、この構成に限定されない。すなわち、人工血管111は、他の層をさらに含んでいてもよい。つまり、人工血管111の壁が複層構造であってもよい。
たとえば、人工血管111は、自己シール層よりも内側に他の層を含んでいてもよい。自己シール層よりも内側の層(以下、「内層」と言うことがある。)は、フッ素樹脂材料で形成されていてもよい。フッ素樹脂材料として、たとえば、延伸ポリテトラフルオロエチレン(expanded ポリテトラフルオロエチレン、すなわちePTFE)、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロポリプロピレン共重合体を挙げることができる。なかでも延伸ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。なお、内層は、多孔質であってもよく、多孔質でなくてもよい。
いっぽう、自己シール層よりも外側に他の層を含んでいてもよい。自己シール層よりも外側の層(以下、「外層」と言うことがある。)は、たとえば、上述のフッ素樹脂材料で形成されていてもよい。なお、外層は、多孔質であってもよく、多孔質でなくてもよい。
もちろん、人工血管111は、内層および外層の両者を含んでいてもよい。人工血管111は、これら以外の層をさらに含んでいてもよい。
【0044】
上述の第一実施形態では、静脈121同士をバスキュラーアクセス装置11でつなぎ合わせる、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス構造は、この構成に限定されない。たとえば、動脈と静脈とをバスキュラーアクセス装置11でつなぎ合わせてもよい。つまり、バスキュラーアクセス装置11の一端を動脈に吻合し、バスキュラーアクセス装置11の他端を静脈に吻合してもよい。この際、バスキュラーアクセス装置11は、たとえば、ループ状で留置されてもよく、ストレート状で留置されてもよい。
【0045】
上述の第一実施形態では、皮膚12表面を基準として露出部の高さが3mm以下である態様で、バスキュラーアクセス装置11が留置される、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス構造は、この構成に限定されない。すなわち、露出部の高さが3mmを超えてもよい。
【0046】
<3.第二実施形態>
図2Aおよび
図2Bに示すように、第二実施形態のバスキュラーアクセス装置11は、人工血管111と、人工血管111から延びた突起112とを含む。
【0047】
バスキュラーアクセス装置11は、部分的に皮膚12から露出する態様で留置される。具体的には、バスキュラーアクセス装置11は、突起112が部分的に皮膚12から露出する態様で留置される。
【0048】
バスキュラーアクセス装置11は人工血管111を含む。人工血管111の説明は、第一実施形態で説明済みであるため省略する。よって、第一実施形態における人工血管111の説明は、第二実施形態における人工血管111の説明としても扱うことができる。
【0049】
バスキュラーアクセス装置11は、人工血管111から延びた突起112を含む。突起112は人工血管111から分岐している。
【0050】
突起112は柱状をなす。突起112の形状は、たとえば、円柱状であってもよく、四角柱であってもよい。なお、突起112と人工血管111とがなす角度αは、たとえば10度以上であってもよく、30度以上であってもよく、45度以上であってもよく、60度以上であってもよい。角度αは、たとえば90度以下であってもよい。
【0051】
突起112の高さは、人工血管111の外表面を基準として3mm以上であってもよく、5mm以上であってもよい。突起112の高さは、25mm以下であってもよく、20mm以下であってもよい。
【0052】
突起112の長さL1は、3mm以上であってもよく、5mm以上であってもよい。突起112の長さL1は、150mm以下であってもよく、120mm以下であってもよい。ここで、突起112の長さL1は、人工血管111の長さ方向における突起112の最大寸法を意味する。
【0053】
突起112の幅は、4mm以上であってもよく、5mm以上であってもよい。突起112の幅は、15mm以下であってもよく、12mm以下であってもよい。ここで、突起112の幅は、人工血管111の太さ方向における突起112の最大寸法を意味する。なお、突起112の幅は、人工血管111の太さより大きくても、小さくても、同じでもよいものの、人工血管111の太さと同じか、小さいことが好ましい。
【0054】
突起112は1個以上であり、2個以上であってもよい。なお、バスキュラーアクセス装置11は留置される前に、長さ調整のために必要に応じて切断され得るところ、この段落において、突起112の個数は、切断前の突起112の個数を意味する。
【0055】
突起112は、自己シール性の材料で形成されている。突起112が自己シール性の材料で形成されていると、穿刺によって開けられた孔がひとりでに閉塞する(具体的には、少なくとも血液が漏出しない程度にひとりでに閉塞する)ことが可能であるから、穿刺によって開けられた孔からの血液が漏れ出すことを回避できる。自己シール性の材料の説明は、第一実施形態で説明済みであるため省略する。よって、第一実施形態における自己シール性の材料の説明は、第二実施形態における自己シール性の材料の説明としても扱うことができる。
【0056】
バスキュラーアクセス装置11を縫い付ける際に縫合糸が引っ張られるところ、引っ張られた縫合糸によって突起112が容易に引き裂かれない程度以上の強度を有することが好ましい。これを踏まえると、自己シール性の材料は、縫合糸により縫合可能な材料であることが好ましい。つまり、縫い付け時に縫合糸によって突起112が容易に引き裂かれない程度以上の強度を発揮する材料が好ましい。
【0057】
なお、突起112は、なんらかの物質、たとえばゼラチンで被覆されていてもよい。
【0058】
バスキュラーアクセス装置11の留置手順や、留置された人工血管111の長さは、第一実施形態で説明済みであるため省略する。よって、第一実施形態におけるこれらの説明は、第二実施形態におけるこれらの説明としても扱うことができる。
【0059】
留置された人工血管111における突起112は1個であることができる。ただし、留置された人工血管111における突起112は2個以上であってもよい。たとえば、留置された人工血管111における突起112は2個であってもよい。
【0060】
バスキュラーアクセス装置11が部分的に皮膚12から露出する態様で留置されることから、バスキュラーアクセス装置11の構成を露出部と本体部とに区別することができる。具体的には、バスキュラーアクセス装置11は、突起112が部分的に皮膚12から露出する態様で留置されることから、バスキュラーアクセス装置11の構成を、人工血管111からなる本体部と、突起112の一部により構成される露出部とに区別することができる。
【0061】
皮膚12表面を基準として露出部の高さが10mm以下である態様で、バスキュラーアクセス装置11が留置されることができる。つまり、皮膚12表面を基準として突起112の高さが10mm以下である態様で、バスキュラーアクセス装置11が留置されることができる。ここで、「露出部の高さ」は最大高さを意味する。露出部の高さは7mm以下であってもよく、5mm以下であってもよく、3mm以下であってもよく、2mm以下であってもよく、1mm以下であってもよく、0mmであってもよく、い。
【0062】
バスキュラーアクセス装置11と皮膚12との縫合に関して、バスキュラーアクセス装置11の露出部と皮膚12との境界付近において、バスキュラーアクセス装置11の突起112と皮膚12とを縫合糸で縫い合わせることができる。縫合糸として、吸収性縫合糸、非吸収性縫合糸を挙げることができる。たとえば、絹糸、合成糸(ナイロンやポリプロピレン、ポリエステル糸)、カットグートを挙げることができる。
【0063】
ここまで説明したように、第二実施形態のバスキュラーアクセス装置11は、
人工血管111からなる本体部と、
皮膚12から部分的に露出させるための露出部と、を含み、
人工血管111に、皮膚12表面を基準とする高さを10mm以下とすることが可能な突起112が形成され、突起112の一部で露出部が構成される。
【0064】
いっぽう、第二実施形態のバスキュラーアクセス構造は、
バスキュラーアクセス装置11と
皮膚12とを含み、
バスキュラーアクセス装置11が人工血管111からなり、
人工血管111に、皮膚12表面を基準とする高さ10mm以下の突起112が形成され、突起112の一部が皮膚12より露出する。
【0065】
第二実施形態によれば、突起112の一部で露出部が構成されることから、露出部の高さを抑えることが可能であり、したがって、露出部が何かに強く引っかかることを回避できる。これに加えて、引っかかりが生じる頻度を低減できる。それ故、生活上の利便性に優れる。
【0066】
そのうえ、突起112の一部で露出部が構成されることから、露出部を介した人工血管111への穿刺が可能である。つまり、皮膚12を介さず人工血管111への穿刺が可能である。したがって、穿刺の痛みを回避または低減することもできる。
【0067】
しかも、少なくとも露出部と皮膚12との境界付近において、突起112が、縫合糸により縫合可能な材料で形成されている。したがって、露出部と皮膚12との境界付近において縫合することが可能である。
【0068】
第二実施形態には、種々の変更を加えることができる。たとえば、以下の変形例から、一つまたは複数を選択して、第二実施形態に変更を加えることができる。
【0069】
上述の第二実施形態では、バスキュラーアクセス装置11の人工血管111の両端が開口している、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス装置11は、この構成に限定されない。すなわち、バスキュラーアクセス装置11の人工血管111の両端は開口していなくてもよい(第一実施形態の変形例参照)。
【0070】
上述の第二実施形態では、人工血管111が自己シール性の材料で形成されている、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス装置11は、この構成に限定されない。人工血管111が自己シール性の材料で形成されていなくてもよい(第一実施形態の変形例参照)。
【0071】
上述の第二実施形態では、人工血管111が自己シール層の単層構造である、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス装置11は、この構成に限定されない。すなわち、人工血管111は、他の層をさらに含んでいてもよい(第一実施形態の変形例参照)。
【0072】
上述の第二実施形態では、突起112が柱状をなす、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス装置11は、この構成に限定されない。突起112の形状は適宜変更可能であり、たとえば、
図2Cおよび
図2Dに示すような形状であってもよい。
【0073】
上述の第二実施形態では、突起112が自己シール性の材料で形成されている、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス装置11は、この構成に限定されない。
【0074】
上述の第二実施形態では、少なくとも露出部と皮膚12との境界付近において、突起112が、縫合糸により縫合可能な材料で形成されている、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス装置11は、この構成に限定されない。
【0075】
上述の第二実施形態では、静脈121同士をバスキュラーアクセス装置11でつなぎ合わせる、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス構造は、この構成に限定されない。たとえば、動脈と静脈とをバスキュラーアクセス装置11でつなぎ合わせてもよい(第一実施形態の変形例参照)。
【0076】
<4.第三実施形態>
図3Aおよび
図3Bに示すように、第三実施形態のバスキュラーアクセス装置11は、複合部材114(具体的には、人工血管111と、人工血管111の少なくとも一部を覆う被覆部材115とを含む複合部材114)を含む。つまり、第三実施形態のバスキュラーアクセス装置11は、人工血管111と被覆部材115とを含む。
【0077】
バスキュラーアクセス装置11は、部分的に皮膚12から露出する態様で留置される。具体的には、バスキュラーアクセス装置11は、被覆部材115が皮膚12から露出する態様で留置される。
【0078】
バスキュラーアクセス装置11は人工血管111を含む。人工血管111の説明は、第一実施形態で説明済みであるため省略する。よって、第一実施形態における人工血管111の説明は、第三実施形態における人工血管111の説明としても扱うことができる。
【0079】
バスキュラーアクセス装置11は、人工血管111の少なくとも一部を覆う被覆部材115を含む。被覆部材115は人工血管111に接合されている。被覆部材115が人工血管111に接合されていることから、バスキュラーアクセス装置11を埋め込む際に、これらを接合する手間を省くことができる。接合は、任意の方法によっておこなわれることができる。たとえば、接着剤によって被覆部材115は人工血管111に接合されていてもよい。
【0080】
被覆部材115は細長く、平たい形状をなす。被覆部材115は、細長く、平たい六面体であることがあり得る。
【0081】
被覆部材115の長さは、10mm以上であってもよく、25mm以上であってもよい。被覆部材115の長さは、200mm以下であってもよく、150mm以下であってもよい。なお、バスキュラーアクセス装置11が留置される前に、被覆部材115の長さ調整のために必要に応じて被覆部材115が切断され得るところ、この段落において、被覆部材115の長さは、切断前の被覆部材115の長さを意味する。
【0082】
被覆部材115の幅は、4mm以上であってもよく、5mm以上であってもよい。被覆部材115の幅は、15mm以下であってもよく、12mm以下であってもよい。なお、バスキュラーアクセス装置11が留置される前に、被覆部材115の幅調整のために必要に応じて被覆部材115が切断され得るところ、この段落において、被覆部材115の幅は、切断前の被覆部材115の幅を意味する。
【0083】
被覆部材115の厚みは、0.1mm以上であってもよく、1mm以上であってもよい。被覆部材115の厚みは、25mm以下であってもよく、20mm以下であってもよい。
【0084】
被覆部材115の外表面の表面積、具体的には、人工血管111に接合された面とは反対側の面の表面積は、たとえば40mm2以上であってもよく、125mm2以上であってもよい。外表面の表面積は、3000mm2以下であってもよく、1800mm2以下であってもよい。なお、バスキュラーアクセス装置11が留置される前に、被覆部材115の大きさ調整のために必要に応じて被覆部材115が切断され得るところ、この段落において、被覆部材115の外表面の表面積は、切断前の表面積を意味する。
【0085】
被覆部材115は1個以上であり、2個以上であってもよい。なお、バスキュラーアクセス装置11は留置される前に、長さ調整のために必要に応じて切断され得るところ、この段落において、被覆部材115の個数は、切断前の被覆部材115の個数を意味する。
【0086】
被覆部材115は、自己シール性の材料で形成されている。被覆部材115が自己シール性の材料で形成されていると、穿刺によって開けられた孔がひとりでに閉塞する(具体的には、少なくとも血液が漏出しない程度にひとりでに閉塞する)ことが可能であるから、穿刺によって開けられた孔からの血液が漏れ出すことを回避できる。自己シール性の材料の説明は、第一実施形態で説明済みであるため省略する。よって、第一実施形態における自己シール性の材料の説明は、第三実施形態における自己シール性の材料の説明としても扱うことができる。
【0087】
バスキュラーアクセス装置11を縫い付ける際に縫合糸が引っ張られるところ、引っ張られた縫合糸によって被覆部材115が容易に引き裂かれない程度以上の強度を有することが好ましい。これを踏まえると、自己シール性の材料は、縫合糸により縫合可能な材料であることが好ましい。つまり、縫い付け時に縫合糸によって被覆部材115が容易に引き裂かれない程度以上の強度を発揮する材料が好ましい。
【0088】
なお、被覆部材115は、なんらかの物質、たとえばゼラチンで被覆されていてもよい。
【0089】
バスキュラーアクセス装置11の留置手順や、留置された人工血管111の長さは、第一実施形態で説明済みであるため省略する。よって、第一実施形態におけるこれらの説明は、第三実施形態におけるこれらの説明としても扱うことができる。
【0090】
留置された人工血管111における被覆部材115は1個であることができる。ただし、留置された人工血管111における被覆部材115は2個以上であってもよい。たとえば、留置された人工血管111における被覆部材115は2個であってもよい。
【0091】
留置された被覆部材115の長さL2は、10mm以上であってもよく、25mm以上であってもよい。留置された被覆部材115の長さL2は、200mm以下であってもよく、150mm以下であってもよい。
【0092】
留置された被覆部材115の幅は、4mm以上であってもよく、5mm以上であってもよい。留置された被覆部材115の幅は、15mm以下であってもよく、12mm以下であってもよい。
【0093】
バスキュラーアクセス装置11が部分的に皮膚12から露出する態様で留置されることから、バスキュラーアクセス装置11の構成を露出部と本体部とに区別することができる。具体的には、バスキュラーアクセス装置11は、被覆部材115の外表面が皮膚12から露出する態様で留置されることから、バスキュラーアクセス装置11の構成を、複合部材114(具体的には、人工血管111と、人工血管111の少なくとも一部を覆う被覆部材115とを含む複合部材114)からなる本体部と、被覆部材115の外表面で構成される露出部とに区別することができる。
【0094】
皮膚12表面を基準として露出部の高さが10mm以下である態様で、バスキュラーアクセス装置11が留置されることができる。ここで、「露出部の高さ」は最大高さを意味する。露出部の高さは7mm以下であってもよく、5mm以下であってもよく、3mm以下であってもよく、2mm以下であってもよく、1mm以下であってもよく、0mmであってもよい。
【0095】
留置された被覆部材115の外表面(具体的には、人工血管111に接合された面とは反対側の面)の面積100%中、50%以上が露出する態様で、バスキュラーアクセス装置11が留置されることができる。これはたとえば70%以上であってもよく、80%以上であってもよく、90%以上であってもよく、95%以上であってもよく、または100%であってもよい。
【0096】
バスキュラーアクセス装置11と皮膚12との縫合に関して、バスキュラーアクセス装置11の露出部と皮膚12との境界付近において、バスキュラーアクセス装置11の被覆部材115と皮膚12とを縫合糸で縫い合わせることができる。縫合糸として、吸収性縫合糸、非吸収性縫合糸を挙げることができる。たとえば、絹糸、合成糸(ナイロンやポリプロピレン、ポリエステル糸)、カットグートを挙げることができる。
【0097】
ここまで説明したように、第三実施形態のバスキュラーアクセス装置11は、
人工血管111およびその少なくとも一部を覆う被覆部材115を含む複合部材114からなる本体部と、
皮膚12から部分的に露出させるための露出部と、を含み、
露出部が被覆部材115の外表面で構成される。
【0098】
いっぽう、第三実施形態のバスキュラーアクセス構造は、
バスキュラーアクセス装置11と、
皮膚12とを含み、
バスキュラーアクセス装置11が、人工血管111およびその少なくとも一部を覆う被覆部材115を含む複合部材114からなり、
被覆部材115の外表面が皮膚12より露出する。
【0099】
第三実施形態によれば、露出部が被覆部材115の外表面で構成されることから、露出部の高さを抑えることが可能であり、したがって、露出部が何かに強く引っかかることを回避できる。これに加えて、引っかかりが生じる頻度を低減できる。それ故、生活上の利便性に優れる。
【0100】
そのうえ、露出部が被覆部材115の外表面で構成されることから、露出部を介した人工血管111への穿刺が可能である。つまり、皮膚12を介さず人工血管111への穿刺が可能である。したがって、穿刺の痛みを回避または低減することもできる。
【0101】
しかも、被覆部材115が自己シール性の材料で形成されていることから、穿刺によって開けられた孔がひとりでに閉塞する(具体的には、少なくとも血液が漏出しない程度にひとりでに閉塞する)ことが可能であり、穿刺によって開けられた孔からの血液が漏れ出すことを回避できる。
【0102】
さらに、少なくとも露出部と皮膚12との境界付近において、被覆部材115が、縫合糸により縫合可能な材料で形成されている。したがって、露出部と皮膚12との境界付近において縫合することが可能である。
【0103】
これに加えて、被覆部材115が人工血管111に接合されている。被覆部材115が人工血管111に接合されていることから、バスキュラーアクセス装置11を埋め込む際に、これらを接合する手間を省くことができる。
【0104】
第三実施形態には、種々の変更を加えることができる。たとえば、以下の変形例から、一つまたは複数を選択して、第三実施形態に変更を加えることができる。
【0105】
上述の第三実施形態では、バスキュラーアクセス装置11の人工血管111の両端が開口している、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス装置11は、この構成に限定されない。すなわち、バスキュラーアクセス装置11の人工血管111の両端は開口していなくてもよい(第一実施形態の変形例参照)。
【0106】
上述の第三実施形態では、人工血管111が自己シール性の材料で形成されている、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス装置11は、この構成に限定されない。人工血管111が自己シール性の材料で形成されていなくてもよい(第一実施形態の変形例参照)。
【0107】
上述の第三実施形態では、人工血管111が自己シール層の単層構造である、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス装置11は、この構成に限定されない。すなわち、人工血管111は、他の層をさらに含んでいてもよい(第一実施形態の変形例参照)。
【0108】
上述の第三実施形態では、被覆部材115が細長く、平たい形状をなす、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス装置11は、この構成に限定されない。
【0109】
上述の第三実施形態では、被覆部材115が自己シール性の材料で形成されている、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス装置11は、この構成に限定されない。
【0110】
上述の第三実施形態では、少なくとも露出部と皮膚12との境界付近において、被覆部材115が、縫合糸により縫合可能な材料で形成されている、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス装置11は、この構成に限定されない。
【0111】
上述の第三実施形態では、被覆部材115が人工血管111に接合されている、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス装置11は、この構成に限定されない。
【0112】
上述の第三実施形態では、静脈同士をバスキュラーアクセス装置11でつなぎ合わせる、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス構造は、この構成に限定されない。たとえば、動脈と静脈とをバスキュラーアクセス装置11でつなぎ合わせてもよい(第一実施形態の変形例参照)。
【0113】
上述の第三実施形態では、皮膚12表面を基準として露出部の高さが10mm以下である態様で、バスキュラーアクセス装置11が留置される、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス構造は、この構成に限定されない。すなわち、露出部の高さが10mmを超えてもよい。
【0114】
<5.第四実施形態>
図4Aおよび
図4Bに示すように、第四実施形態のバスキュラーアクセス装置11は、人工血管111を含まないこと以外は、第三実施形態のバスキュラーアクセス装置11と同様である。第四実施形態のバスキュラーアクセス装置11は被覆部材115のみからなることがあり得る。
【0115】
バスキュラーアクセス装置11は、部分的に皮膚12から露出する態様で留置される。具体的には、バスキュラーアクセス装置11は、被覆部材115が皮膚12から露出する態様で留置される。
【0116】
バスキュラーアクセス装置11は被覆部材115を含む。被覆部材115の説明は、第三実施形態で説明済みであるため省略する。よって、第三実施形態における被覆部材115の説明は、第四実施形態における被覆部材115の説明としても扱うことができる。
【0117】
バスキュラーアクセス装置11の留置手順として、たとえば、生体の皮膚12(たとえば人体の腕の皮膚)を切開し、静脈121に被覆部材115を接合したうえで、被覆部材115が皮膚12から露出する態様でバスキュラーアクセス装置11を縫い付ける、という手順を挙げることができる。静脈121として、たとえば橈側皮静脈、尺側皮静脈を挙げることができる。静脈121と被覆部材115とは縫合糸で縫い合わせることができる。生体が内シャントを有する場合、その吻合部(たとえば、自己血管内シャントにおける動脈と静脈との吻合部、人工血管内シャントにおける人工血管と静脈との吻合部など)の下流の静脈121に被覆部材115を接合することが好ましい。
【0118】
留置された被覆部材115の長さや幅は、第三実施形態で説明済みであるため省略する。よって、第三実施形態におけるこれらの説明は、第四実施形態におけるこれらの説明としても扱うことができる。
【0119】
バスキュラーアクセス装置11が部分的に皮膚12から露出する態様で留置されることから、バスキュラーアクセス装置11の構成を露出部と本体部とに区別することができる。具体的には、バスキュラーアクセス装置11は、被覆部材115の外表面が皮膚12から露出する態様で留置されることから、バスキュラーアクセス装置11の構成を、被覆部材115からなる本体部と、被覆部材115の外表面で構成される露出部とに区別することができる。
【0120】
皮膚12表面を基準として露出部の高さが10mm以下である態様で、バスキュラーアクセス装置11が留置されることができる。ここで、「露出部の高さ」は最大高さを意味する。露出部の高さは7mm以下であってもよく、5mm以下であってもよく、3mm以下であってもよく、2mm以下であってもよく、1mm以下であってもよく、0mmであってもよい。
【0121】
留置された被覆部材115の外表面(具体的には、静脈121に接合された面とは反対側の面)の面積100%中、50%以上が露出する態様で、バスキュラーアクセス装置11が留置されることができる。これはたとえば70%以上であってもよく、80%以上であってもよく、90%以上であってもよく、95%以上であってもよく、または100%であってもよい。
【0122】
バスキュラーアクセス装置11と皮膚12との縫合に関して、バスキュラーアクセス装置11の露出部と皮膚12との境界付近において、バスキュラーアクセス装置11の被覆部材115と皮膚12とを縫合糸で縫い合わせることができる。縫合糸として、吸収性縫合糸、非吸収性縫合糸を挙げることができる。たとえば、絹糸、合成糸(ナイロンやポリプロピレン、ポリエステル糸)、カットグートを挙げることができる。
【0123】
ここまで説明したように、第四実施形態のバスキュラーアクセス装置11は、
被覆部材115からなる本体部と、
皮膚12から部分的に露出させるための露出部と、を含み、
露出部が被覆部材115の外表面で構成される。
【0124】
いっぽう、第四実施形態のバスキュラーアクセス構造は、
バスキュラーアクセス装置11と、
皮膚12とを含み、
バスキュラーアクセス装置11が被覆部材115からなり、
被覆部材115の外表面が皮膚12より露出する。
【0125】
第四実施形態によれば、露出部が被覆部材115の外表面で構成されることから、露出部の高さを抑えることが可能であり、したがって、露出部が何かに強く引っかかることを回避できる。これに加えて、引っかかりが生じる頻度を低減できる。それ故、生活上の利便性に優れる。
【0126】
そのうえ、露出部が被覆部材115の外表面で構成されることから、露出部を介した穿刺が可能である。つまり、皮膚12を介さず穿刺が可能である。したがって、穿刺の痛みを回避または低減することもできる。
【0127】
しかも、被覆部材115が自己シール性の材料で形成されていることから、穿刺によって開けられた孔がひとりでに閉塞する(具体的には、少なくとも血液が漏出しない程度にひとりでに閉塞する)ことが可能であり、穿刺によって開けられた孔からの血液が漏れ出すことを回避できる。
【0128】
さらに、少なくとも露出部と皮膚12との境界付近において、被覆部材115が、縫合糸により縫合可能な材料で形成されている。したがって、露出部と皮膚12との境界付近において縫合することが可能である。
【0129】
第四実施形態には、種々の変更を加えることができる。たとえば、以下の変形例から、一つまたは複数を選択して、第四実施形態に変更を加えることができる。
【0130】
上述の第四実施形態では、被覆部材115が自己シール性の材料で形成されている、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス装置11は、この構成に限定されない。
【0131】
上述の第四実施形態では、被覆部材115が細長く、平たい形状をなす、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス装置11は、この構成に限定されない。
【0132】
上述の第四実施形態では、少なくとも露出部と皮膚12との境界付近において、被覆部材115が、縫合糸により縫合可能な材料で形成されている、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス装置11は、この構成に限定されない。
【0133】
上述の第四実施形態では、皮膚12を切開したうえで静脈121に被覆部材115を接合する、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス構造は、この構成に限定されない。たとえば、皮膚12を切開したうえで動脈に被覆部材115を接合してもよく、皮膚12を切開したうえで、植え込まれている人工血管に被覆部材115を接合してもよい。
【0134】
上述の第四実施形態では、皮膚12表面を基準として露出部の高さが10mm以下である態様で、バスキュラーアクセス装置11が留置される、という構成を説明した。しかしながら、バスキュラーアクセス構造は、この構成に限定されない。すなわち、露出部の高さが10mmを超えてもよい。
【符号の説明】
【0135】
11…バスキュラーアクセス装置、111…人工血管、112…突起、12…皮膚、121…静脈、114…複合部材、115…被覆部材