IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カゴメ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-卵様食品、及び卵様食品の製造方法 図1
  • 特開-卵様食品、及び卵様食品の製造方法 図2
  • 特開-卵様食品、及び卵様食品の製造方法 図3
  • 特開-卵様食品、及び卵様食品の製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123918
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】卵様食品、及び卵様食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 15/00 20160101AFI20240905BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20240905BHJP
【FI】
A23L15/00 D
A23L29/256
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031738
(22)【出願日】2023-03-02
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今村 亮
(72)【発明者】
【氏名】葛原 大士
【テーマコード(参考)】
4B041
4B042
【Fターム(参考)】
4B041LC07
4B041LD01
4B041LH02
4B041LH10
4B041LK02
4B041LK03
4B041LK07
4B041LK11
4B041LK24
4B041LK27
4B041LP01
4B041LP16
4B042AC06
4B042AD37
4B042AD40
4B042AE10
4B042AK01
4B042AK04
4B042AK06
4B042AK08
4B042AK09
4B042AK11
4B042AP02
4B042AP14
4B042AP18
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、常温又は冷蔵流通販売が可能なスクランブル
エッグ様食品を製造することである。
【解決手段】本発明に係るスクランブルエッグ様食品の製造方法を構成するのは、少なく
とも、混合、及び加熱である。ここで、人又は装置によって混合されるのは、少なくとも
、卵様食品用液状原料、及び凝固促進剤であり、前記卵様食品用液状原料が含有するのは
、少なくとも、植物由来加工品、及び特定量のアルギン酸類であり、前記凝固促進剤が含
有するのは、少なくとも、特定量のカルシウム又はその塩である。併せて、前記加熱の条
件は、レトルト加熱条件である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクランブルエッグ様食品の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下
の工程である:
混合:ここで混合されるのは、少なくとも、卵様食品用液状原料、及び凝固促進剤であ
り、
前記卵様食品用液状原料が含有するのは、少なくとも、植物由来加工品、及び
アルギン酸類であり、
前記凝固促進剤が含有するのは、少なくとも、カルシウム又はその塩であり、
当該卵様食品用液状原料におけるアルギン酸類の濃度は、0.3重量%以上、かつ
、3.0重量%以下であり、
当該凝固促進剤におけるカルシウム塩濃度は、5.0重量%より大きく、かつ、1
6.0重量%以下であり、
これによって得られるのは、ゲル状物を含有する混合物であり、
加熱:ここで加熱されるのは、少なくとも、前記ゲル状物であり、
当該加熱の温度は、100℃より高く、かつ、140℃以下であり、当該加熱の時間
は、4分以上、かつ、60分以下である。
【請求項2】
スクランブルエッグ様食品の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下
の工程である:
混合:ここで混合されるのは、少なくとも、卵様食品用液状原料、及び凝固促進剤であ
り、
前記卵様食品用液状原料が含有するのは、少なくとも、植物由来加工品、及び
アルギン酸類であり、
前記凝固促進剤が含有するのは、少なくとも、カルシウム又はその塩であり、
当該卵様食品用液状原料におけるアルギン酸類の濃度は、0.3重量%以上、かつ
、3.0重量%以下であり、
当該凝固促進剤におけるカルシウム塩濃度は、5.0重量%より大きく、かつ、1
6.0重量%以下であり、
これによって得られるのは、ゲル状物を含有する混合物であり、
加熱:ここで加熱されるのは、少なくとも、前記ゲル状物であり、
当該加熱の温度、及び時間による殺菌価は、
121℃、かつ4分相当以上の殺菌価である。
【請求項3】
請求項1又は2の製造方法であって、それをさらに構成するのは、以下の工程である:
容器詰め:ここで容器に詰められるのは、少なくとも、前記ゲル状物であり、
当該容器詰めは、前記加熱の前に行われる。
【請求項4】
スクランブルエッグ様食品の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下
の工程である:
混合:ここで混合されるのは、少なくとも、卵様食品用液状原料、及び凝固促進剤で
あり、
前記卵様食品用液状原料が含有するのは、少なくとも、植物由来加工品、及び
アルギン酸類であり、
前記凝固促進剤が含有するのは、少なくとも、カルシウム又はその塩であり、
当該卵様食品用液状原料におけるアルギン酸類の濃度は、0.3重量%以上、かつ
、3.0重量%以下であり、
当該凝固促進剤におけるカルシウム塩濃度は、5.0重量%より大きく、かつ、1
6.0重量%以下であり、
これによって得られるのは、ゲル状物を含有する混合物であり、
前記スクランブルエッグ様食品の流通温度帯は、常温又は冷蔵であり、
当該スクランブルエッグ様食品の、製造後30日経過時点における一般生菌数は、1.0
×10cfu/ml以下である。
【請求項5】
スクランブルエッグ様食品の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下
の工程である:
混合:ここで混合されるのは、少なくとも、卵様食品用液状原料、及び凝固促進剤であ
り、
前記卵様食品用液状原料が含有するのは、少なくとも、植物由来加工品、及び
アルギン酸類であり、
前記凝固促進剤が含有するのは、少なくとも、カルシウム又はその塩であり、
当該卵様食品用液状原料におけるアルギン酸類の濃度は、0.3重量%以上、かつ
、3.0重量%以下であり、
当該凝固促進剤におけるカルシウム塩濃度は、5.0重量%より大きく、かつ、1
6.0重量%以下であり、
これによって得られるのは、ゲル状物を含有する混合物であり、
前記スクランブルエッグ様食品の流通温度帯は、常温又は冷蔵であり、
当該スクランブルエッグ様食品の賞味期間、又は消費期間は、製造後30日間以上である
【請求項6】
請求項1、2、4、及び5の何れかの製造方法であって、
前記植物由来加工品は、少なくとも、カロテノイド含有組成物である。
【請求項7】
スクランブルエッグ様食品であって、
当該スクランブルエッグ様食品の製造方法を構成するのは、少なくとも以下の工程であ
る:
混合:ここで混合されるのは、少なくとも、卵様食品用液状原料、及び凝固促進剤であ
り、
前記卵様食品用液状原料が含有するのは、少なくとも、植物由来加工品、及び
アルギン酸類であり、
前記凝固促進剤が含有するのは、少なくとも、カルシウム又はその塩であり、
当該卵様食品用液状原料におけるアルギン酸類の濃度は、0.3重量%以上、かつ
、3.0重量%以下であり、
当該凝固促進剤におけるカルシウム塩濃度は、5.0重量%より大きく、かつ、1
6.0重量%以下であり、
これによって得られるのは、ゲル状物を含有する混合物であり、
加熱:ここで加熱されるのは、少なくとも、前記ゲル状物であり、
当該加熱の温度は、100℃より高く、かつ、140℃以下であり、当該加熱の時間
は、4分以上、かつ、60分以下である。
【請求項8】
スクランブルエッグ様食品であって、
当該スクランブルエッグ様食品の製造方法を構成するのは、少なくとも以下の工程であ
る:
混合:ここで混合されるのは、少なくとも、卵様食品用液状原料、及び凝固促進剤であ
り、
前記卵様食品用液状原料が含有するのは、少なくとも、植物由来加工品、及び
アルギン酸類であり、
前記凝固促進剤が含有するのは、少なくとも、カルシウム又はその塩であり、
当該卵様食品用液状原料におけるアルギン酸類の濃度は、0.3重量%以上、かつ
、3.0重量%以下であり、
当該凝固促進剤におけるカルシウム塩濃度は、5.0重量%より大きく、かつ、1
6.0重量%以下であり、
これによって得られるのは、ゲル状物を含有する混合物であり、
加熱:ここで加熱されるのは、少なくとも、前記ゲル状物であり、
当該加熱の温度、及び時間による殺菌価は、121℃、かつ4分相当以上の殺菌価で
ある。
【請求項9】
請求項7又は8の製造方法であって、それをさらに構成するのは、以下の工程である:
容器詰め:ここで容器に詰められるのは、少なくとも、前記ゲル状物であり、
当該容器詰めは、前記加熱の前に行われる。
【請求項10】
スクランブルエッグ様食品であって、
当該スクランブルエッグ様食品の流通温度帯は、常温又は冷蔵であり、
当該スクランブルエッグ様食品の製造後、30日経過時点における一般生菌数は1.0
×10cfu/ml以下である。
【請求項11】
スクランブルエッグ様食品であって、
当該スクランブルエッグ様食品の流通温度帯は、常温又は冷蔵であり、
当該スクランブルエッグ様食品の賞味期間、又は消費期間は、製造後30日間以上であ
る。
【請求項12】
請求項10又は11の食品であって、前記スクランブルエッグ様食品が含有するのは、少
なくとも、植物由来加工品、及びアルギン酸類である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関係するのは、卵様食品、及び卵様食品の製造方法である。
【背景技術】
【0002】
近年、動物由来原料の一部、あるいは全部を植物由来の原料に置き換え、動物性食品様
の食品とした、代替食品が作られてきている。
【0003】
その背景として、種々の点から、動物性食品の摂取を忌避する人がいるからである。一
つの理由は、動物性食品には、コレステロールが含まれていることである。他の理由は、
菜食主義者やヴィーガンは摂取しないようにしていることである。また他の理由は、動物
の飼育による環境負荷の問題である。このような理由から、植物由来加工品を用いた代替
食品には、一定の需要がある。
【0004】
代替食品の具体的な態様は、獣肉を用いず、植物性原料を用いて製造した代替肉である
。また別の具体的な態様は、卵を用いず、植物性原料を用いて製造した代替卵である。こ
れまで、代替卵に関する食品の検討は、種々なされてきた。
【0005】
特許文献1が示すのは、卵様焼成凝固食品であって、卵使用量を減らしつつも卵様焼成
凝固食品を製造するため、熱凝固性植物タンパク素材および大豆クリームを原料として使
用し、凝固させたものである。
【0006】
特許文献2が示すのは、液状組成物であって、卵黄の含有量を低めつつ、生卵黄特有の
食感とするため、特定量の卵黄、乳、アルギン酸ナトリウム、及びカルシウムを含有させ
たものである。
【0007】
特許文献3が示すのは、スクランブルエッグ様食品の製造法であって、卵液を用いずと
もスクランブルエッグ用の食品を得るため、澱粉性野菜と大豆蛋白ペーストとを混錬する
ことである。
【0008】
特許文献4が示すのは、スクランブルエッグ様食品であって、スクランブルエッグ特有
の、柔らかさと弾力のバランスが良く、勝半熟間のあるなめらかな食感を実現するため、
植物性ミルクと、アルギン酸カルシウムを含むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開第2017-169488号公報
【特許文献2】特開第2013-39096号公報
【特許文献3】特開第2002‐119260号公報
【特許文献4】特許7054763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、常温又は冷蔵流通販売が可能なスクランブルエッグ
様食品を製造することである。
【0011】
常温又は冷蔵流通販売が可能な食品における製造上の課題は、流通時の微生物の増殖抑
制である。常温又は冷蔵流通時の食品の微生物の増殖を防ぐ上で、食品業界において一般
的に用いられている手法は、高温加熱殺菌(以後、「レトルト加熱殺菌」ともいう。)で
ある。本願発明者らは、卵代替食品であるスクランブルエッグ様食品を作る際、常温又は
冷蔵流通販売を可能とするためにレトルト加熱殺菌を行うと、その形状が崩れることに気
付いた。そこで、常温又は冷蔵流通に適した殺菌を行い、かつ、スクランブルエッグ様の
形状が保たれた食品を製造することが必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明者らが検討していたのは、常温又は冷蔵流通用の卵様食品において、如何に、
スクランブルエッグ様の形状を保つかである。上記検討の結果、スクランブルエッグ様の
形状に寄与する要因として、本願発明者らが見出したのは、(1)レトルト加熱により、
ゲル状物質の粘弾性が低下すること、(2)使用するカルシウム塩溶液のカルシウム濃度
が、ゲル状物質の粘弾性に影響すること、(3)一般的に使用に適していることが知られ
ているカルシウム濃度では、適したスクランブルエッグの形状を保持できないこと、であ
る。上記機序を応用して、本発明を定義すると、以下のとおりである。
【0013】
本発明に係るスクランブルエッグ様食品の製造方法を構成するのは、少なくとも、混合
、及び加熱である。ここで、人又は装置によって混合されるのは、少なくとも、卵様食品
用液状原料、及び凝固促進剤であり、前記卵様食品用液状原料が含有するのは、少なくと
も、植物由来加工品、及びアルギン酸類であり、前記凝固促進剤が含有するのは、少なく
とも、カルシウム又はその塩である。当該卵様食品用液状原料におけるアルギン酸類の濃
度は、0.3重量%以上、かつ、3.0重量%以下であり、当該凝固促進剤におけるカル
シウム塩濃度は、5.0重量%より大きく、かつ、16.0重量%以下である。前記混合
によって得られるのは、ゲル状物を含有する混合物である。人又は装置によって加熱され
るのは、少なくとも、前記ゲル状物であり、当該加熱の温度は、100℃より高く、かつ
、140℃以下であり、当該加熱の時間は、4分以上、かつ、60分以下である。また、
人又は装置によって加熱されるのは、少なくとも、前記ゲル状物であり、当該加熱の温度
、及び時間による殺菌価は、121℃、かつ4分相当以上の殺菌価である。
【0014】
本発明に係るスクランブルエッグ様食品の製造方法をさらに構成するのは、容器詰めで
ある。人又は装置によって容器に詰められるのは、少なくとも、前記ゲル状物であり、当
該容器詰めは、前記加熱の前に行われる。
【0015】
本発明に係るスクランブルエッグ様食品の製造方法を構成するのは、少なくとも、混合
、及び加熱である。ここで、人又は装置によって混合されるのは、少なくとも、卵様食品
用液状原料、及び凝固促進剤であり、前記卵様食品用液状原料が含有するのは、少なくと
も、植物由来加工品、及びアルギン酸類であり、前記凝固促進剤が含有するのは、少なく
とも、カルシウム又はその塩である。当該卵様食品用液状原料におけるアルギン酸類の濃
度は、0.3重量%以上、かつ、3.0重量%以下であり、当該凝固促進剤におけるカル
シウム塩濃度は、5.0重量%より大きく、かつ、16.0重量%以下である。前記混合
によって得られるのは、ゲル状物を含有する混合物である。前記スクランブルエッグ様食
品の流通温度帯は、常温又は冷蔵であり、当該スクランブルエッグ様食品の賞味期間、又
は消費期間は、製造後30日間以上である。また、前記スクランブルエッグ様食品の流通
温度帯は、常温又は冷蔵であり、当該スクランブルエッグ様食品の、製造後30日経過時
点における一般生菌数は、1.0×10cfu/ml以下である。
【0016】
本発明に係るスクランブルエッグ様食品の製造方法であって、前記植物由来加工品は、
少なくとも、カロテノイド含有組成物である。
【0017】
本発明に係るスクランブルエッグ様食品の流通温度帯は、常温又は冷蔵であり、当該ス
クランブルエッグ様食品の賞味期間、又は消費期間は、製造後30日間以上である。また
、本発明に係るスクランブルエッグ様食品の流通温度帯は、常温又は冷蔵であり、当該ス
クランブルエッグ様食品の製造後、30日経過時点における一般生菌数は1.0×10
cfu/ml以下である。本発明に係るスクランブルエッグ様食品が含有するのは、少な
くとも、植物由来加工品、及びアルギン酸類である。
【発明の効果】
【0018】
本発明が可能にするのは、常温又は冷蔵流通販売が可能な、スクランブルエッグ様食品
の提供である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るスクランブルエッグ様食品の製造方法の流れ図
図2】試験例1における卵様食品の形状図
図3】試験例5における卵様食品の形状図
図4】実施例6における卵様食品の形状図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<卵食品>
本願明細書において、卵食品とは、食品であって、卵白と卵黄を均一に混合した卵原料
を主原料して含有するものである。具体的には、卵焼き、スクランブルエッグ、オムレツ
、炒り卵、等である。卵食品の形態としては、液状、ゲル状(半固体状)、又は固体状な
どが挙げられる。
【0021】
<卵様食品>
本発明に係る卵様食品(以下、「本卵様食品」ともいう。)とは、食品であって、卵食
品における卵原料の一部、あるいは全部を植物由来加工品に代替したものである。また、
本卵様食品は、外見上卵食品である、あるいは、その用途において卵食品の代替食品であ
るものをいう。
【0022】
<スクランブルエッグ様食品>
本発明に係るスクランブルエッグ様食品(以下、「本スクランブルエッグ様食品」とも
いう。)とは、卵様食品であって、外見上スクランブルエッグ食品である、あるいは、そ
の用途においてスクランブルエッグ食品の代替食品であるものをいう。特に、ひだ形状を
有する場合、スクランブルエッグらしさがより強く理解される。
【0023】
<植物由来加工品>
本卵様食品で使用できるのは、植物由来加工品である。植物由来加工品とは、加工品で
あって、その由来が、植物原料であるものである。具体的には、野菜又は果実の加工品、
穀類加工品、などである。
【0024】
<野菜又は果実の加工品>
本卵様食品で使用できるのは、野菜又は果実の加工品である。この野菜の種類は、不問
であるが、例示すると、トマト、ニンジン、カブ、大根、ホウレンソウ、ピーマン、アス
パラガス、大麦若葉、春菊、カラシ菜、サラダ菜、小松菜、明日葉、甘藷、馬鈴薯、モロ
ヘイヤ、パプリカ、パセリ、セロリ、三つ葉、レタス、ラディッシュ、紫蘇、茄子、イン
ゲン、カボチャ、牛蒡、ネギ、生姜、大蒜、ニラ、トウモロコシ、さやえんどう、オクラ
、かぶ、きゅうり、ウリ、ズッキーニ、へちま、もやし等である。果実の種類も、不問で
あるが、例示すると、レモン、オレンジ、ネーブルオレンジ、グレープフルーツ、ミカン
、ライム、スダチ、柚子、シイクワシャー、タンカン等の柑橘類、リンゴ、ウメ、モモ、
サクランボ、アンズ、プラム、プルーン、カムカム、ナシ、洋ナシ、ビワ、イチゴ、ラズ
ベリー、ブラックベリー、カシス、クランベリー、ブルーベリー、メロン、スイカ、キウ
イフルーツ、ザクロ、ブドウ、バナナ、グァバ、アセロラ、パインアップル、マンゴー、
パッションフルーツ、レイシ等である。本卵様食品の色調の観点から、使用に適した野菜
、又は果実は、カロテノイド含有植物であることが好ましい。
【0025】
<カロテノイド含有植物>
本発明の実施の形態におけるカロテノイド含有植物とは、植物であって、カロテノイド
を含有するものである。カロテノイドとは、動植物に広く存在する黄色、橙色又は赤色の
色素である。本願発明において、カロテノイド含有植物は、β-カロテン含有植物である
ことが好ましい。また、本願発明において、カロテノイド含有植物は、ニンジン、カボチ
ャ、パプリカ、柑橘類、及びマンゴーのうち、何れか1つ以上であることが好ましい。本
願発明において、柑橘類は、特に、オレンジ、又はミカンであることが好ましい。あわせ
て、カロテノイド含有植物の加工品とは、加工品であって、カロテノイド含有植物を原料
とするものである。当該加工品の形態は、特に限定されないが、搾汁液、搾汁パルプ、搾
汁液の濃縮汁、乾燥粉末等が挙げられる。
【0026】
<ニンジン加工品>
本発明の実施の形態におけるニンジン加工品とは、加工されたニンジンであり、例示す
ると、ニンジン搾汁、ニンジン濃縮汁、ニンジンパルプ等である。ニンジン搾汁とは、ニ
ンジンを破砕して搾汁し、若しくは裏ごしし、パルプ分の一部、あるいは全部を除去した
ものをいう。また、ニンジン濃縮汁とは、ニンジン搾汁を濃縮したものをいう。ニンジン
濃縮汁を希釈して搾汁の状態に戻したものもニンジン搾汁という。ここで取り込むのは、
「にんじんジュース及びにんじんミックスジュース品質表示基準」(平成23年9月30
日消費者庁告示第10号)における「にんじんジュース」、「にんじんの搾汁」、及び「
濃縮にんじん」等である。
【0027】
本発明の実施の形態において、原料として用いられるニンジン加工品は、黄色ニンジン
の加工品、又は橙色ニンジンの加工品であることが好ましい。
【0028】
<食用油脂>
本発明の実施の形態に係る食用油脂とは、油脂であって、食用に用いられるものである
。本発明において、食用油脂を用いる目的は、風味の調整、及び栄養成分の調整である。
本発明において使用する食用油脂は、植物由来であることが好ましい。食用油脂の具体的
な例を挙げると、亜麻仁油、エゴマ油、オリーブオイル、グレープシードオイル、コーン
油、ごま油、米油、大豆油、なたね油、パーム油、ひまわり油、べに花油、綿実油、等で
ある。
【0029】
本発明において、食用油脂と野菜又は果実の加工品は、混合され、均質化されることが
好ましい。これらを均質化することによって、本卵様食品の味ムラがなくなり、なめらか
な食味となる。
【0030】
本卵様食品における食用油脂の含有量は、特に限定されない。本卵様食品における食用
油脂の含有量の下限値は、好ましくは、1重量%、より好ましくは、2重量%、さらに好
ましくは、3重量%である。本卵様食品における食用油脂の含有量の上限値は、好ましく
は、20重量%、より好ましくは、15重量%、さらに好ましくは、10重量%である。
【0031】
<穀類加工品>
本発明の実施の形態に係る穀類加工品とは、加工された穀類である。本発明の実施の形
態における穀類は、イネ科の植物、及びマメ科の植物を含むものである。穀類を例示する
と、米、小麦、大麦、オーツ麦、大豆、エンドウ豆、インゲン豆、ソラマメ、ひよこ豆、
レンズマメ、アワ、ヒエ、キビ、などが挙げられる。
【0032】
本発明の実施の形態に係る穀類加工品は、好ましくは、穀類の搾汁、又はピューレであ
る。穀類加工品を例示すると、ライスミルク、豆乳、オーツミルク、等である。
【0033】
本発明において穀類加工品を用いる目的は、卵様食品におけるコクの付与、及び栄養成
分の増加である。穀類加工品に含有されるタンパク質、及び炭水化物などは、食品におけ
るコクを付与し得る。あわせて、当該成分による栄養向上が期待される。穀類加工品を用
いる別の目的は、色調の調整、特に明度の調整である。穀類加工品であって、その色調が
白色に近いものは、他の食品原料と調合されることによって、調合液の明度を高め、明る
い色調とすることが可能となる。当該観点から、本発明に用いられる穀類加工品の穀類は
、米、小麦、オーツ麦、大豆、白インゲン豆、といった、加工品の色調が白色であるもの
が好ましい。
【0034】
本卵様食品における穀類加工品の含有量の下限値は、好ましくは、2重量%、より好ま
しくは、3重量%である。本卵様食品における穀類加工品の含有量の上限値は、好ましく
は、20重量%、より好ましくは、10重量%である。また、穀類加工品などの植物性原料は、
タンパク質を含有することもあるが、本実施の形態における卵様食品におけるタンパク質含量
は、3.0重量%以下であることが好ましい。より好ましくは、2.0重量%以下である。
【0035】
<動物性原材料>
本発明の実施の形態に係る動物性原材料とは、食品の原材料であって、その由来が動物
であるものである。動物性原材料を例示すると、牛、豚、鶏、鶏卵、羊、馬、魚、由来の
原材料が挙げられる。本卵様食品において、使用を排除しないのは、鶏卵である。ただし
、動物性原材料を極力使用しない観点から、本卵様食品に含有される卵の重量割合は、好
ましくは、50重量%以下である。より好ましくは、20重量%以下であり、さらに好ま
しくは、10重量%以下であり、最も好ましくは、0重量%である。
【0036】
<調味料>
本卵様食品の原材料として、本発明が排除しないのは、調味料の使用である。調味料と
は、材料であって、料理の味を調えるものである。調味料を例示すると、砂糖、食用酢、
みりん、しょうゆ、ウスターソース、塩、うま味調味料、酵母エキス、畜肉エキス等であ
る。動物性原材料不使用の観点から、畜肉エキス、魚エキス等の動物性原料を使用しない
ことが好ましい。また、人工的な呈味を避けることから、うま味調味料、酵母エキスを使
用しないことが好ましい。
【0037】
<添加剤>
本卵様食品は、各種添加剤が適宜添加されていてもよい。当該添加剤は、通常、飲食品
に添加されるものであり、例示すると、甘味料、酸味料、着色料、pH調整剤、酸化防止
剤、香料、増粘剤、凝固剤、乳化剤等である。
【0038】
卵様食品として、卵焼き、スクランブルエッグ、炒り卵のような焼成卵様食品を作る観
点からは、糊料を使用することが好ましい。糊料とは、水に溶解又は分散して粘稠性を生
じる高分子物質のことである。糊料は、増粘効果を目的として使う「増粘剤」、ゲル化を
目的として使用する「ゲル化剤」、粘性を高めて食品成分を均一に安定させる効果を目的
として使用する「安定剤」又は「増粘安定剤」などと呼ばれる。
【0039】
本卵様食品で使用可能な糊料は、特に限定されないが、例示すると、ペクチン、寒天、
澱粉、加工澱粉、カラギーナン、グァーガム、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン
、アルギン酸類、アラビアガム、セルロース、ゼラチン、等である。また、増粘促進、あ
るいは、凝固促進を目的として、カルシウムを使用することもできる。カルシウムを具体
的に例示すると、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、卵殻カルシウム、等である。
【0040】
本スクランブルエッグ様食品を製造する上で使用する添加剤として、好ましい糊料、及
び凝固促進剤は、それぞれ、アルギン酸ナトリウム、及びカルシウムである。当該糊料、
及び凝固促進剤を用いることで、ゲル状の物質が生成され、本物の卵を用いてスクランブ
ルエッグを作ったときと同様の食感を得ることができる。
【0041】
<アルギン酸類>
本発明の実施の形態に係る糊料として使用可能なものは、アルギン酸類である。アルギ
ン酸類として具体的に挙げられるのは、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、お
よびアルギン酸アンモニウムなどである。
【0042】
<カルシウム又はその塩>
本発明の実施の形態に係る凝固促進剤に含有するものとして使用可能なものは、好まし
くは、カルシウム又はその塩である。カルシウム又はその塩として具体的に挙げられるの
は、少なくとも、卵殻カルシウム、貝カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウ
ム、フマル酸カルシウム、クエン酸カルシウム、コハク酸カルシウム、酢酸カルシウム、
塩化カルシウム、および水酸化カルシウムなどのうち、何れか一つ以上である。
【0043】
本卵様食品として、スクランブルエッグ様食品を想定した場合、好ましい糊料、及び凝
固促進剤は、それぞれ、アルギン酸ナトリウム、及び乳酸カルシウムである。糊料、及び
凝固促進剤を用いることで、本物の卵を用いてスクランブルエッグを作ったときと同様の
食感を得ることができる。
【0044】
<卵様食品用液状原料>
本発明に係る卵様食品用液状原料とは、卵様食品を製造する上で、基材となる原料であ
る。当該卵様食品用液状原料が含有するのは、少なくとも、糊料である。当該糊料は、ア
ルギン酸類であることが好ましい。ここで、前記卵様食品用液状原料において、アルギン
酸類の濃度は、0.3重量%以上、かつ、3.0重量%以下であることが好ましい。また
は、アルギン酸類の濃度は、0.4重量%以上、かつ、3.0重量%以下であることが好
ましい。より好ましくは、アルギン酸類の濃度は、0.5重量%以上、かつ、1.5重量
%以下である。さらに好ましくは、0.65重量%以上、かつ、1.5重量%以下である
。前記アルギン酸類は、好ましくは、アルギン酸ナトリウムである。また、当該卵様食品
用液状原料が含有するものとして排除しないのは、前記動物由来原料、植物由来加工品、
調味料、添加剤等である。ただし、前記のとおり、動物由来原料不使用の観点から、動物
由来原料を含有しないことが好ましい。
【0045】
<凝固促進剤>
本発明に係る凝固促進剤とは、液状の前記卵様食品用液状原料の増粘促進、あるいは凝
固を促進するものである。好ましくは、当該凝固促進剤が含有するのは、少なくとも、カ
ルシウム又はその塩である。本発明における凝固促進剤は、カルシウム又はその塩の水溶
液であることが好ましい。ここで、前記凝固促進剤におけるカルシウム又はその塩の濃度
は、5.0重量%より大きく、かつ、16.0重量%以下であることが好ましい。より好
ましくは、5.0重量%より大きく、かつ、10.0重量%以下である。前記のとおり、
一般的に使用されるよりも高濃度で凝固促進剤を使用することによって、早く、かつ、強
固にゲル化が進行する。凝固促進剤の使用量は、アルギン酸類等の糊料の濃度に合わせて
、適宜調整可能である。糊料と反応しなかった凝固促進剤は、洗浄により、適宜洗い流さ
れる。当該凝固促進剤が含有するものとして排除しないのは、前記動物由来原料、植物由
来加工品、調味料、添加剤等である。ただし、前記のとおり、動物由来原料不使用の観点
から、動物由来原料を含有しないことが好ましい。
【0046】
<混合物>
本発明において、少なくとも、植物由来加工品、糊料を含有する卵様食品用液状原料、
及び、凝固促進剤を混合することで、混合物が得られる。当該混合物が含有するのは、少
なくとも、ゲル状物である。当該混合物は、ゲル状物、並びに、凝固促進剤や卵様食品用
液状原料等の液状物が含有されていてもよい。
【0047】
<本スクランブルエッグ様食品の形態>
本スクランブルエッグ様食品は、前記ゲル状物と、卵様食品用液状原料を混合し、さら
に半熟感を高めたものとしてもよい。ゲル状物と卵様食品用液状原料との混合比率は、特
に限定されないが、1:1~9:1であることが好ましく、1:1~3:1であることが
より好ましい。
【0048】
<本スクランブルエッグ様食品の製造方法の概念的構成>
本スクランブルエッグ様食品の製造方法(以下、この欄では、「本製法」ということも
ある。)を概念的に構成するのは、少なくとも、混合、及び加熱である。
【0049】
図1が示すのは、本製法の流れである。この製法を構成するのは、調合(S10)、混
合(S20)、洗浄(S30)、充填(S40)、加熱(S50)、冷却(S60)であ
る。
【0050】
<調合(S010)>
調合工程で調合されるのは、少なくとも、糊料、及び植物由来加工品である。糊料、及
び植物由来加工品を調合する目的は、卵様食品用液状原料の調製である。調合される原材
料として排除しないのは、食用油脂、動物性原材料、調味料、その他の添加剤などである
【0051】
<混合(S20)>
混合工程で混合されるのは、少なくとも、糊料を含有する卵様食品用液状原料、及び凝
固促進剤である。卵様食品用液状原料、及び凝固促進剤を混合する目的は、ゲル状物の製
造である。当該混合により得られるのは、混合物であって、当該混合物が含有するのは、
少なくともゲル状物である。当該混合は、卵様食品用液状原料に対して、凝固促進剤を添
加する方法で行うことが好ましい。
【0052】
<洗浄(S30)>
本発明が適宜採用するのは、洗浄である。洗浄する目的は、余分な水分、及び余分な溶
液の除去、並びに、呈味の調整である。混合液中には、ゲル化に寄与しなかった、前記凝
固促進剤が含有されることがある。当該凝固促進剤を除去することで、ゲル状物を採取す
ることができる。また、凝固促進剤は、カルシウム又はその塩を含有するため、これを摂
取した際、苦味を感じる場合がある。そのため、ゲル状物を水で洗浄する等することによ
って、カルシウムに由来する苦味を低減することが可能となる。
【0053】
<充填(S40)>
充填方法は、公知の方法でよい。本スクランブルエッグ様食品が充填される(詰められ
る)容器は、公知の物で良く、例示すると、アルミ製容器、ビニル製容器、缶、瓶、紙容
器、及びペット製容器、等である。
【0054】
<加熱(S50)>
加熱の目的の一つは、殺菌である。ここで、常温又は冷蔵流通に適した卵様食品を製造
するため、レトルト加熱条件で殺菌を行う。加熱の方法は、公知の方法で良い。当該加熱
の温度は、100℃より高く、かつ、140℃以下であることが好ましい。当該加熱の時
間の下限は、4分であり、好ましくは、10分であり、さらに好ましくは、15分である
。当該加熱の時間の上限は、60分であり、好ましくは45分であり、より好ましくは、
35分である。
【0055】
また、当該加熱の条件の別の態様は、121℃、かつ4分相当以上の殺菌価である。
当該条件は、一般的に食品におけるレトルト殺菌加熱として知られる条件である。当
該加熱において、当該加熱の温度は、100℃より高く、かつ、140℃以下であること
が好ましい。当該加熱の時間の下限は、4分であり、好ましくは、10分であり、さらに
好ましくは、15分である。当該加熱の時間の上限は、60分であり、好ましくは45分
であり、より好ましくは、35分である。
【0056】
<冷却(S60)>
本製法が適宜採用するのは、冷却である。冷却方法は、公知の方法でよい。
【0057】
<色調>
本発明の実施の形態に係る、色調とは、色の特徴を表すものであって、明度、色相、及
び彩度を含めたものである。色調を一般的に表すのは、L*a*b*(エル・スター、エ
ー・スター、ビー・スター)表色系である。L*a*b*表色系の指標は、明度(L*値
)、色度(色相及び彩度)(a*値、b*値)である。色調の測定方法は、公知の方法で
良い。測定する機器は、市販されている。測定手段を例示すると、色差計SPECTRO
PHOTOMETER CM-5(コニカミノルタ社製)である。
【0058】
<粘度>
本卵様食品の粘度は、特に限定されない。本卵様食品が液状である場合、本卵様食品の
粘度は、1,000~5,000mPa・sであることが好ましい。B型粘度の測定方法
は、公知の方法で良い。測定手段を例示すると、TVB-10型粘度計(東機産業株式会
社製)を用いて、20℃、回転数を12rpmとし、開始後60秒後の条件である。
【0059】
また、本スクランブルエッグ様食品の粘度は、ボストウィック粘度計で測定(60秒)
したときの分析値として、10mm以上、かつ、150mm以下であることが好ましい。
より好ましくは、10mm以上、かつ、100mm以下である。さらに好ましくは、20
mm以上、かつ、80mm以下である。
【0060】
<コレステロール含量>
本卵様食品のコレステロール含量は、特に限定されないが、好ましくは、3.0重量%
以下である。より好ましくは、1重量%以下である。さらに好ましくは、0重量%である
。コレステロール含量の測定方法は、公知の方法でよい。
【0061】
<可溶性固形分量>
本卵様食品の可溶性固形分量(以下、「Brix」ともいう。)は、特に限定されない
が、好ましくは、4以上、かつ20以下である。また、Brixの測定方法は、公知の方
法でよい。測定手段を例示すると、光学屈折率計(NAR-3T ATAGO社製)であ
る。
【0062】
<pH>
本実施の形態に係る卵様食品のpHは、特に限定されないが、呈味の観点から、好まし
くは、5.0以上7.0以下であり、より好ましくは5.5以上6.5以下である。
【0063】
<本スクランブルエッグ様食品の特徴>
本スクランブルエッグ様食品が有する特徴は、冷蔵流通用、及び常温流通用の販売用途
とすることができることである。
【0064】
<常温又は冷蔵流通>
本スクランブルエッグが流通可能な温度帯は、常温又は冷蔵である。ここで、常温流通
における温度は、10℃以上、かつ、35℃以下である。好ましくは、10℃以上、かつ
、20℃以下である。より好ましくは、10℃以上、かつ、15℃以下である。また、冷
蔵流通における温度は、0℃以上、かつ、10℃未満である。好ましくは、5℃以上、か
つ、10℃未満である。
【0065】
<賞味期間、及び消費期間>
本スクランブルエッグ様食品の賞味期間、又は消費期間は、製造後30日間以上である
。好ましくは、製造後180日間以上であり、さらに好ましくは、製造後1年間以上であ
る。賞味期間、及び消費期間の上限は、特に限られないが、製造後3年間以下、2年間以
下、或いは、1.5年間以下である。本スクランブルエッグ様食品は、商業的無菌が保た
れている。すなわち、本スクランブルエッグ様食品は、製造後、前記賞味期間、及び前記
消費期間において、一般生菌数が、1.0×10cfu/ml以下である。好ましくは
、1.0×103cfu/ml以下である。
【0066】
<一般生菌数>
一般生菌数の測定方法は、公知の方法であればよく、具体的には食品衛生検査指針(社
団法人日本食品衛生協会、2004年)に準拠した標準寒天培地を用いた混釈法である。
【実施例0067】
[試験1]加熱条件の違いによる、スクランブルエッグ形状への影響の違い
加熱条件の違いが、卵様食品のスクランブルエッグ形状に及ぼす影響を確認した。
【0068】
<試験例1乃至試験例5>
市販の橙色ニンジン濃縮汁(Brix50)と、植物油、その他原料を、表1に記載の
割合で混合し卵様食品用液状原料(A液)を調製した。あわせて、乳酸カルシウムを水に
溶解した凝固促進剤を調製した。アルギン酸ナトリウム、及び乳酸カルシウムの濃度は、
表2に記載のとおりとした。白いんげん豆ピューレは、カゴメ社製のものを使用した。
乳酸カルシウムの量は、アルギン酸量以上の量を使用し、ゲル化反応が十分に行われるようにした。
前記卵様食品用液状原料に、前記凝固促進剤を添加していくことでゲル化反応を起こし、
スクランブルエッグ様食品を製造した。これを水洗後、表1に記載のB液を、A液:B液が、
2:1の割合となるように混合し、半熟様のスクランブルエッグ様食品を製造した。当該半熟様
スクランブルエッグ様食品を、表2に記載の加熱条件で加熱し、加熱後の形状を確認した。
加熱時の圧力は、0.1~0.2MPaであった。
【0069】
【表1】
【0070】
<形状評価>
各試験区分の形状について、目視による確認を行った。スクランブルエッグ様の形状を
有している場合「○」とした。スクランブルエッグ様の形状が視認されるが、加熱前とで
大きく形状が崩れた場合を「△」とした。スクランブルエッグ様のひだ形状が崩れており
、スクランブルエッグ様の形状を保てていない場合「×」とした。
【0071】
<結果>
各試験区分の評価結果は、表2に記載したとおりである。凝固剤におけるカルシウム塩
濃度が2.0%のときは、通常の殺菌条件(試験例1、及び4)では、スクランブルエッ
グ様の形状を保持していた。一方、120℃、10分のレトルト加熱殺菌条件(試験例2
)では、スクランブルエッグの形状であるように視認されるが、加熱前と比較して大きく
形状が崩れていた。また、120℃、35分のレトルト加熱殺菌条件(試験例3、及び5
)では、形状が崩れており、スクランブルエッグ様の形状が保たれていなかった。
【0072】
【表2】
【0073】
凝固剤におけるカルシウム濃度が比較的低い場合は、レトルト加熱殺菌条件で加熱を行
うことにより、形状が崩れることがわかった。レトルト加熱殺菌条件のときに形状が崩れ
る理由は、過剰な加熱殺菌条件により、アルギン酸-カルシウムの結合が切断されることであることが考えら
れる。
【0074】
[試験2]凝固促進剤におけるカルシウム塩濃度の違いによる、レトルト加熱時の形状へ
の影響の違い
凝固促進剤におけるカルシウム塩濃度を高めることによって、レトルト加熱後のスクラ
ンブルエッグ様形状の違いを確認した。
【0075】
<実施例1乃至13>
市販の橙色ニンジン濃縮汁(Brix50)と、植物油、その他原料を、表1に記載の
割合で混合し卵様食品用液状原料(A液)を調製した。あわせて、乳酸カルシウムを水に
溶解した凝固促進剤を調製した。アルギン酸ナトリウム、及び乳酸カルシウムの濃度は、
表3乃至表6に記載のとおりとした。乳酸カルシウムの量は、アルギン酸量以上の量を使用し、
ゲル化反応が十分に行われるようにした。前記卵様食品用液状原料に、前記凝固促進剤を添加
していくことでゲル化反応を起こし、スクランブルエッグ様食品を製造した。これを水洗
後、表1に記載のB液を、A液:B液が、2:1の割合となるように混合し、半熟様のス
クランブルエッグ様食品を製造した。当該半熟様スクランブルエッグ様食品を、表3乃至
表6に記載の加熱条件で加熱し、加熱後の形状を確認した。加熱時の圧力は、0.1~0
.2MPaであった。
【0076】
<形状評価>
各試験区分の形状について、目視による確認を行った。スクランブルエッグ様の形状を
有している場合を「○」と評価した。スクランブルエッグ様の形状は有しているが、やや
形状が崩れかけている、或いは離水等の影響が見られた場合を「△」と評価した。形状が
崩れており、スクランブルエッグ様の形状を保てていない場合を「×」と評価した。
【0077】
<結果>
各試験区分の評価結果は、表3乃至6に記載したとおりである。凝固剤におけるカルシ
ウム塩濃度が8.0%のときは、何れもスクランブルエッグ様のひだ形状を有し、スクラ
ンブルエッグ様の形状を有していた(実施例1乃至3)。ただし、加熱条件が高温、長時
間になるに従い、一部離水が見られる結果となった(実施例3)。
【0078】
アルギン酸ナトリウムが0.3%以上、3.0%以下においては、何れもスクランブル
エッグ様のひだ形状を有し、スクランブルエッグ様の形状を有していた(実施例4乃至7
)。ただし、アルギン酸ナトリウム0.3%のときは、一部離水が見られる結果となった
(実施例4、並びに8乃至10)。
【0079】
実施例1乃至13の試験をとおして、卵様食品用液状原料におけるアルギン酸類が0.
3%以上、3.0%以下のとき、凝固剤におけるカルシウム又はその塩の濃度が5.0%
超、かつ、16.0%以下として使用したときに、レトルト加熱後もスクランブルエッグ
様の形状を有した卵様食品を製造することができることがわかった。
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明が有用な分野は、スクランブルエッグ様食品の製造及び販売である。
図1
図2
図3
図4