(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123923
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネス取付構造
(51)【国際特許分類】
H02G 3/30 20060101AFI20240905BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20240905BHJP
F16B 5/10 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H02G3/30
H02G3/04 087
F16B5/10 C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031746
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ヨンホ
【テーマコード(参考)】
3J001
5G357
5G363
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001GA06
3J001GB01
3J001JD15
3J001KA26
3J001KB02
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD02
5G357DD06
5G357DE03
5G363BA02
5G363DA13
5G363DA16
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】ワイヤーハーネスを所定の設置位置から外れにくくするワイヤーハーネス取付構造を提供する。
【解決手段】ワイヤーハーネス取付構造1は、ワイヤーハーネス100を保持する本体部11と、係合部12と、支持部13とを有するクランプ10と、貫通孔部32を有する取付部としてのプロテクタ3とを備える。支持部13は、本体部11と係合部12との対向方向に沿った高さ方向視で係合部12よりも小さい。貫通孔部32は、高さ方向視で係合部12よりも大きい第1貫通孔33と、第1貫通孔33と連続し、高さ方向視で係合部12よりも小さく支持部13よりも大きい第2貫通孔34と、第1貫通孔33に配置され、開口縁33aに支持される弾性片35とを含む。第2貫通孔34は、係合部12が弾性片35を変形させながら第1貫通孔33に進入するときに、支持部13のみを進入させる形状を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスを保持する本体部と、当該本体部の少なくとも一部と対向する係合部と、前記本体部から突出して前記係合部を支持する支持部とを有するクランプと、
前記係合部を係合させる貫通孔部を有する取付部と、を備え、
前記支持部は、前記本体部と前記係合部との対向方向に沿った高さ方向視で前記係合部よりも小さく、
前記貫通孔部は、
前記高さ方向視で前記係合部よりも大きい第1貫通孔と、
前記第1貫通孔と連続し、前記高さ方向視で前記係合部よりも小さく前記支持部よりも大きい第2貫通孔と、
前記第1貫通孔に配置され、前記第2貫通孔に向かう側を自由端とし、前記第2貫通孔に向かう側とは反対側を固定端として開口縁に支持される弾性片と、を含み、
前記第2貫通孔は、前記係合部が前記弾性片を変形させながら前記第1貫通孔に進入するときに、前記支持部のみを進入させる形状を有する、ワイヤーハーネス取付構造。
【請求項2】
前記係合部が前記貫通孔部に係合しているときに、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とが連続する方向に沿う方向を長さ方向とすると、
前記高さ方向と前記長さ方向との各々に垂直な幅方向での前記支持部の幅寸法は、前記幅方向での前記本体部及び前記係合部の各々の幅寸法よりも小さく、かつ、前記長さ方向での前記支持部の長さ寸法よりも小さい、請求項1に記載のワイヤーハーネス取付構造。
【請求項3】
前記係合部は、前記支持部と連続する第1主平面と、当該第1主平面の反対側にあり、前記貫通孔部への係合時に前記第1貫通孔に進入する側となる第2主平面とを有する平板形である、請求項1又は2に記載のワイヤーハーネス取付構造。
【請求項4】
前記取付部は、少なくとも一部が前記ワイヤーハーネスを収容するプロテクタである、請求項1又は2に記載のワイヤーハーネス取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネス取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両の内部には、各種のワイヤーハーネスが配索されている。特許文献1は、いわゆるスナップ止めとして機能する羽根部を有するクランプを介して車両内にワイヤーハーネスを取り付ける構造に関する技術を開示している。車両内のいずれかの壁部にはクランプ接続用の孔が予め設けられており、羽根部が孔部に押し込まれて変形した後に壁部を貫通して元の形状に戻ることで、クランプが孔部に係合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている構造では、クランプが羽根部の弾性変形により車両内の壁部に接続されるため、羽根部が孔部に押し込まれる程度によっては、いわゆる半係合の状態となり、以後、クランプが孔部から外れることもあり得る。クランプが孔部から外れると、結果として、クランプを介して配索されているワイヤーハーネスが所定の設置位置から外れることになり、望ましくない。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、ワイヤーハーネスを所定の設置位置から外れにくくするワイヤーハーネス取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係るワイヤーハーネス取付構造は、ワイヤーハーネスを保持する本体部と、本体部の少なくとも一部と対向する係合部と、本体部から突出して係合部を支持する支持部とを有するクランプと、係合部を係合させる貫通孔部を有する取付部と、を備え、支持部は、本体部と係合部との対向方向に沿った高さ方向視で係合部よりも小さく、貫通孔部は、高さ方向視で係合部よりも大きい第1貫通孔と、第1貫通孔と連続し、高さ方向視で係合部よりも小さく支持部よりも大きい第2貫通孔と、第1貫通孔に配置され、第2貫通孔に向かう側を自由端とし、第2貫通孔に向かう側とは反対側を固定端として開口縁に支持される弾性片と、を含み、第2貫通孔は、係合部が弾性片を変形させながら第1貫通孔に進入するときに、支持部のみを進入させる形状を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ワイヤーハーネスを所定の設置位置から外れにくくするワイヤーハーネス取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るワイヤーハーネス取付構造の斜視図である。
【
図3A】係合部の係合方向視でのプロテクタの一部平面図である。
【
図3B】
図3A中のIIIB-IIIB断面に対応した、プロテクタの一部断面図である。
【
図4】取付作業時のワイヤーハーネス取付構造の状態を示す断面図である。
【
図5A】
図1中のVA-VA断面に対応した、取付構造の断面図である。
【
図5B】
図5A中のVB-VB断面に対応した、取付構造の断面図である。
【
図6】第1変形例としての係合部を有するクランプの側面図である。
【
図7】第2変形例としての係合部を有するクランプの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて各実施形態に係るワイヤーハーネス取付構造について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0010】
図1は、一実施形態に係るワイヤーハーネス取付構造1の斜視図である。ワイヤーハーネス取付構造1は、自動車等の車両の内部に配索されるワイヤーハーネス100を車両内の所定の設置位置に取り付けるための構造である。なお、
図1では、ワイヤーハーネス100の一部が概略的に円柱状に示されている。
【0011】
ワイヤーハーネス取付構造1は、クランプ部2と、クランプ部2を介在させてワイヤーハーネス100を取り付ける取付部とを備える。取付部は、車両内においてワイヤーハーネス100の配索域に存在するものであり、本実施形態では、少なくとも一部がワイヤーハーネス100を収容するプロテクタ3である。
【0012】
クランプ部2は、プロテクタ3へのワイヤーハーネス100の取り付けに用いられるユニット又は部材である。本実施形態では、クランプ部2は、クランプ10と、クランプベルト20とを有するユニットである。
【0013】
図2A及び
図2Bは、クランプ10に関する図である。
図2Aは、クランプ10の斜視図である。クランプ10は、例えば合成樹脂製の部材であり、本体部11と、係合部12と、支持部13と一体的に有する。
【0014】
以下、クランプ部2及びプロテクタ3における各部の形状等を説明するために、一例としてクランプ10の各部を参照して、各方向を次のように規定する。Z方向は、本体部11と係合部12とが対向する方向(以下「対向方向」という。)に沿った方向(以下「高さ方向」という。)である。X方向は、Z方向に対して垂直で、かつ、クランプ10がワイヤーハーネス100を保持しているときのワイヤーハーネス100の延伸方向におおよそ沿った方向(以下「長さ方向」という。)である。Y方向は、X方向及びZ方向の双方に垂直な方向(以下「幅方向」という。)である。この場合、
図2Bは、長さ方向視でのクランプ10の側面図である。
【0015】
本体部11は、ワイヤーハーネス100を直接的に保持する。本実施形態では、本体部11の形状は、高さ方向を厚み方向とし、全体として幅方向の寸法よりも長さ方向の寸法の方が大きい平板形である。本体部11の第1面11aは、一方の主平面であり、ワイヤーハーネス100を保持するときにワイヤーハーネス100を載置させる面である。本体部11の第2面11bは、高さ方向で第1面11aの反対側に位置する他方の主平面である。以下、本体部11の幅方向の寸法を幅寸法W11と表記する。
【0016】
本体部11における長さ方向で一方の片側の領域にある第2面11bには、支持部13が接続され、支持部13に支持されている係合部12は、第2面11bと対向する。本体部11における長さ方向で他方の片側の領域には、クランプベルト20が巻き付けられる。クランプベルト20は、
図1に示すように、第1面11a上に載置されたワイヤーハーネス100と本体部11とを一体的に巻き付けることで、クランプ10に対してワイヤーハーネス100を保持させる。つまり、第2面11bの全体では、支持部13が接続される領域と、クランプベルト20が巻き付けられる領域とが長さ方向で並んで配置される。
【0017】
なお、第2面11bにおいてクランプベルト20が巻き付けられる領域は、クランプベルト20の横ずれによる本体部11からのワイヤーハーネス100の脱落を抑止するために、溝部11cであってもよい。また、本体部11の長さ方向に延伸する2つの側面11dにおいて、クランプベルト20が巻き付けられる領域と支持部13が接続される領域との境界には、クランプベルト20の支持部13側への接近を抑止するために、突起11eが設けられていてもよい。
【0018】
係合部12は、ワイヤーハーネス100がプロテクタ3に取り付けられているとき、プロテクタ3に設けられている貫通孔部32に係合する。係合部12は、上記のとおり、本体部11の少なくとも一部と対向する。本実施形態では、係合部12の形状は、高さ方向を厚み方向とし、第1主平面12aと、高さ方向で第1主平面12aの反対側に位置する第2主平面12bとを有する平板形である。第1主平面12aは、支持部13と連続する側の面である。第2主平面12bは、貫通孔部32への係合時に第1貫通孔33に進入する側の面である。また、本実施形態では、第1主平面12a及び第2主平面12bと平行となるXY平面に関する係合部12の平面形状は、長さ方向又は幅方向のいずれかに沿った辺で構成される矩形状である。以下、係合部12の長さ方向の寸法を長さ寸法L12(
図4参照)と表記し、係合部12の幅方向の寸法を幅寸法W12と表記する。本実施形態では、係合部12の幅寸法W12は、本体部の幅寸法W11と同等である。また、係合部12の幅方向に延伸する2つの側面のうち、本体部11においてクランプベルト20が巻き付けられる領域に近い側の側面を第1側面12cと表記し、当該領域から遠い側の側面を第2側面12dと表記する。
【0019】
なお、係合部12において、第1主平面12aと第1側面12cとが交わる角部には、以下で詳説するように係合部12の貫通孔部32への進入を容易とするために、第1テーパー面12eが設けられていてもよい。同様に、第2主平面12bと第2側面12dとが交わる角部には、第2テーパー面12fが設けられていてもよい。
【0020】
支持部13は、本体部11から突出し、係合部12を支持する。本実施形態では、支持部13の形状は、長さ方向の寸法である長さ寸法L13(
図4参照)を係合部12の長さ寸法L12と同等に設定された一対の側面13cを有する平板形である。また、支持部13では、高さ方向での高さ寸法H13は、本体部11と係合部12との間隔を規定し、貫通孔部32の厚み寸法T31a(
図3B参照)よりも大きく設定される。この場合、支持部13のXY平面で切断した全体としての断面形状は、長さ方向又は幅方向のいずれかに沿った辺で構成される矩形状である。一対の側面13c同士の間隔、すなわち、支持部13の幅方向の寸法である幅寸法W13は、本体部11の幅寸法W11及び係合部12の幅寸法W12のいずれよりも小さく設定される。つまり、支持部13は、高さ方向視では係合部12よりも小さい。更に、本実施形態では、支持部13は、
図2Bに示すように、幅方向において本体部11及び係合部12の中央領域に位置する。以下、支持部13の高さ方向に延伸する2つの端面のうち、本体部11においてクランプベルト20が巻き付けられる領域に近い側の端面を第1端面13aと表記し、当該領域から遠い側の端面を第2端面13bと表記する。
【0021】
なお、支持部13において、XZ平面と平行な2つの主平面と第1端面13aとが交わる2つの角部には、以下で詳説するように支持部13の貫通孔部32への進入を容易とするために、テーパー面13dが設けられていてもよい。
【0022】
クランプベルト20は、第1面11a上に載置されたワイヤーハーネス100と本体部11とを一体的に巻き付けることができるものであれば、特に限定されるものではない。なお、クランプ部2は、クランプ10とクランプベルト20とが一体化された部材であってもよい。この場合、例えば、クランプ部2を合成樹脂からなる部材とし、クランプベルト20の一端を固定端としてクランプ10と連続させ、クランプベルト20の他端を自由端としてクランプ10に接続自在な構成とすることで実現され得る。
【0023】
図3A及び
図3Bは、プロテクタ3に関する図である。
図3A及び
図3Bでは、プロテクタ3の全体のうち、貫通孔部32が形成されている保持部31の全体を含む一部が示されている。
図3Aは、高さ方向に沿った、係合部12が貫通孔部32に係合するときの係合方向視でのプロテクタ3の平面図である。
図3Bは、
図3A中のIIIB-IIIB断面に対応し、貫通孔部32を幅方向の中心位置を通るように切断されたプロテクタ3の断面図である。
【0024】
プロテクタ3は、少なくとも一部でワイヤーハーネス100を収容して保護する。プロテクタ3は、例えば、合成樹脂製であり、収容部30と、保持部31と、不図示のカバー部とを有する。
【0025】
収容部30は、ワイヤーハーネス100の配索経路に合わせて長細く、ワイヤーハーネス100の一部を直接的に収容する。収容部30は、概略的には、底壁30aと、互いに対向する2つの側壁30bとを有する。底壁30aは、内面としての底面30cを有し、底面30c上にワイヤーハーネス100を載置させる。2つの側壁30bは、それぞれ、底壁30aに対して垂直となる姿勢で、底壁30aの側端部と連続する。また、収容部30において、底壁30aと対向する領域は、外部に向けて開放されている。当該開放領域を不図示のカバーが覆うように収容部30に取り付けられることで、収容部30は、カバーと合わせて、ワイヤーハーネス100が配置される内部空間を有する筒体となる。
【0026】
保持部31は、プロテクタ3の延伸方向での少なくとも一方の端部に位置し、クランプ部2を介してワイヤーハーネス100を直接的に保持する。保持部31は、概略的には、保持壁31aと、補強壁31bとを有する。保持壁31aは、保持面31cと、保持面31cの反対側の面である裏面31dと、貫通孔部32とを有する。
【0027】
保持面31cは、保持対象であるワイヤーハーネス100と対向する面であり、収容部30の底面30cと連続する。本実施形態では、保持面31cは、
図3Bに示すように、高さ方向に沿った中間壁30dを介して底面30cと連続し、底面30cと平行を維持しつつ、高さ方向では底面30cよりも一段低くなる高さ位置に設けられている。
【0028】
貫通孔部32は、クランプ10の係合部12を係合させる。貫通孔部32は、第1貫通孔33と、第2貫通孔34と、弾性片35とを含む。
【0029】
第1貫通孔33は、係合部12を貫通させることができる程度の形状及び大きさを有し、高さ方向に沿って保持壁31aを貫通する。つまり、第1貫通孔33は、高さ方向視では、係合部12よりも大きい。本実施形態では、第1貫通孔33の開口形状は、長さ方向の寸法である長さ寸法L33を係合部12の長さ寸法L12よりも大きく、かつ、幅方向の寸法である幅寸法W33を係合部12の幅寸法W12よりも大きくなるように設定された略矩形である。また、保持部31において第1貫通孔33が形成される幅方向での位置は、収容部30の底面30cの幅方向での中央を通る中心線を保持面31cまで延長させたときの当該中央線に対して対称形状となる位置であってもよい。
【0030】
第2貫通孔34は、係合部12を貫通させることができず、かつ、クランプ10の支持部13を貫通させることができる程度の形状及び大きさを有し、高さ方向に沿って保持壁31aを貫通する。つまり、第2貫通孔34は、高さ方向視では、係合部12よりも小さく、支持部13よりも大きい。本実施形態では、第2貫通孔34の開口形状は、長さ方向の寸法である長さ寸法L34を係合部12の長さ寸法L12よりも小さく、かつ、幅方向の寸法である幅寸法W34を係合部12の幅寸法W12よりも小さくなるように設定された略矩形である。また、当該矩形に関しては、長さ寸法L34は、支持部13の長さ寸法L13よりも大きく、かつ、幅寸法W34は、支持部13の幅寸法W13よりも大きい。この場合、第2貫通孔34の形状は、いわゆるスリット状となる。また、保持部31において第2貫通孔34が形成される幅方向での位置は、第2貫通孔34の中心位置を第1貫通孔33の幅方向での中心位置に合わせた位置である。
【0031】
また、第2貫通孔34の方が第1貫通孔33よりも収容部30に対して遠い側にある。そして、第1貫通孔33と第2貫通孔34とは、
図3A及び
図3Bに示すように、長さ方向に沿って連続する。以下、第2貫通孔34の開口縁34aのうち、第2貫通孔34が第1貫通孔33と連続する側とは長さ方向で反対側に位置する部分を「端縁34b」と表記する。
【0032】
弾性片35は、保持面31cとおおよそ平行な平面を有する平板形状を有し、第1貫通孔33に配置される。弾性片35の平面形状は、長さ方向又は幅方向に沿った各辺を有する略矩形である。弾性片35は、第2貫通孔34に向かう側を自由端35aとし、第2貫通孔34に向かう側とは反対側を固定端35bとして、第1貫通孔33の開口縁33aに片持ち状に支持される。つまり、弾性片35は、固定端35bが連続する部位以外では、開口縁33aと非接触であり、クランプ10の対向方向視では、第1貫通孔33よりも小さい。ここで、弾性片35において、保持部31におけるその他の壁部よりも弾性を得やすい薄板形状とするために、Z方向での寸法である厚み寸法T35を保持壁31aの厚み寸法T31aよりも小さく設定されてもよい。
【0033】
補強壁31bは、保持壁31aの外周端と連続し、高さ方向に沿って裏面31dから離れる方向に突出する。補強壁31bは、保持壁31aの強度を維持させるための補強部として機能し得る。
【0034】
次に、ワイヤーハーネス取付構造1を用いたワイヤーハーネス100の取付手順について説明する。
【0035】
図4は、ワイヤーハーネス100をプロテクタ3へ取り付ける作業時のワイヤーハーネス取付構造1の状態を示す断面図である。
図4では、プロテクタ3は、
図3Bの描画に合わせて示されている。また、
図4では、クランプ10は、説明の便宜上、ワイヤーハーネス100を保持していない状態に示されている。
【0036】
図5A及び
図5Bは、ワイヤーハーネス100が取り付けられた後のワイヤーハーネス取付構造1に関する図である。
図5Aは、
図1中のVA-VA断面に対応した、ワイヤーハーネス取付構造1の断面図である。
図5Bは、
図5A中のVB-VB断面に対応した、長さ方向視でのワイヤーハーネス取付構造1の断面図である。
【0037】
まず、作業者は、ワイヤーハーネス100をプロテクタ3に取り付けるに際して、予めワイヤーハーネス100にクランプ部2を取り付ける。このとき、作業者は、ワイヤーハーネス100の所定の部位とクランプ10の第1面11aとを接触させた状態で、ワイヤーハーネス100と本体部11とにクランプベルト20を一体的に巻き付けることで、クランプ部2を取り付けることができる。
【0038】
次に、作業者は、
図4に示すように、クランプ10の係合部12を、プロテクタ3の保持部31に予め形成されている貫通孔部32のうちの第1貫通孔33に、保持面31c側から進入させる。ここで、第1貫通孔33の形状及び大きさは、係合部12が進入し得るように設定されているが、第1貫通孔33には、弾性片35が配置されている。したがって、係合部12は、
図4中に黒塗りの矢印で示される方向で弾性片35を押し込み続け、自由端35aが裏面31d側から徐々に離れていくように弾性片35を変形させていく。係合部12による弾性片35の押し込みは、裏面31dに面する空間領域Sに係合部12の第1側面12cが入り込むことができる程度まで行われる。
【0039】
ここで、係合部12が弾性片35を押し込むにつれて、クランプ10の姿勢は、
図4に示すように、クランプベルト20が巻き付けられる側の方が、支持部13が連続する側よりも下がるように傾く。そこで、本実施形態では、プロテクタ3において、貫通孔部32は、プロテクタ3の延伸方向での端部にある保持部31に形成される。このような構成によれば、特に、クランプ10の長さ方向の寸法を、保持部31の長さ方向の寸法よりも長くすることで、クランプ10の姿勢が上記のように傾いたときでも、クランプ10の長さ方向の端部がプロテクタ3に干渉しづらくなる。
【0040】
次に、作業者は、
図4中に白抜きの矢印で示される長さ方向に沿った方向に、クランプ10をスライドさせる。ここで、第2貫通孔34の形状及び大きさは、支持部13が進入し得るように設定されている。また、第2貫通孔34は、弾性片35の変形前の自由端35aと長さ方向で対向している。したがって、クランプ10のスライド時には、支持部13のみが第2貫通孔34に進入し、かつ、係合部12が高さ方向で裏面31dと対向しながら空間領域Sに進入することになる。
【0041】
ここで、本実施形態では、係合部12には、第1テーパー面12eと、第2テーパー面12fとが設けられている。第1テーパー面12eは、クランプ10のスライド時に第1貫通孔33の開口縁33aのうち第2貫通孔34と連続する側の一部と接触することで、係合部12を空間領域Sに向かうように誘導することができる。同様に、第2テーパー面12fは、クランプ10のスライド時に弾性片35の表面と接触することで、係合部12を空間領域Sに向かうように誘導することができる。
【0042】
また、本実施形態では、支持部13には、テーパー面13dが設けられている。テーパー面13dは、クランプ10のスライド時に、第1貫通孔33の開口縁33aと第2貫通孔34の開口縁34aとが交わる角部と接触することで、支持部13を第2貫通孔34に向かうように誘導することができる。
【0043】
そして、クランプ10のスライドが進行し、第2貫通孔34にクランプ10の支持部13の全体が収容されたとき、第1貫通孔33では、弾性片35は、クランプ10のいずれの部位とも接触しない。したがって、
図5Aに示すように、弾性片35は、変形前の状態に戻り、ワイヤーハーネス取付構造1によるプロテクタ3へのワイヤーハーネス100の取付作業が完了する。
【0044】
次に、ワイヤーハーネス取付構造1の効果について説明する。
【0045】
ワイヤーハーネス取付構造1は、ワイヤーハーネス100を保持する本体部11と、本体部11の少なくとも一部と対向する係合部12と、本体部11から突出して係合部12を支持する支持部13とを有するクランプ10を備える。また、ワイヤーハーネス取付構造1は、係合部12を係合させる貫通孔部32を有する取付部を備える。支持部13は、本体部11と係合部12との対向方向に沿った高さ方向視で係合部12よりも小さい。貫通孔部32は、高さ方向視で係合部12よりも大きい第1貫通孔33と、第1貫通孔33と連続し、高さ方向視で係合部12よりも小さく支持部13よりも大きい第2貫通孔34とを含む。また、貫通孔部32は、第1貫通孔33に配置され、第2貫通孔34に向かう側を自由端35aとし、第2貫通孔34に向かう側とは反対側を固定端35bとして開口縁33aに支持される弾性片35を含む。第2貫通孔34は、係合部12が弾性片35を変形させながら第1貫通孔33に進入するときに、支持部13のみを進入させる形状を有する。
【0046】
ここで、上記の各図を用いた例示では、取付部はプロテクタ3に相当し、高さ方向はZ方向に相当する。
【0047】
まず、係合部12が第1貫通孔33に向けて押し込まれて弾性片35を変形させながら第1貫通孔33に進入し、引き続きクランプ10がスライドされたとする。このとき、弾性片35のうち、第2貫通孔34に向かう側にある自由端35aが大きく変形するため、第2貫通孔34には、支持部13のみが徐々に進入する。同時に、第2貫通孔34が形成されている取付部の一部を基準として、本体部11が存在する空間領域とは反対側の空間領域Sには、係合部12が徐々に進入する。そして、第2貫通孔34に支持部13の全体が収容されたとき、すなわち、クランプ部2を介した取付部へのワイヤーハーネス100の取り付けが完了したとき(以下、単に「取付完了後」という。)には、空間領域Sには、係合部12の全体が入り込む。
【0048】
ここで、支持部13は、本体部11から突出し、かつ、高さ方向視で係合部12よりも小さい。そのため、取付完了後では、クランプ10の本体部11と係合部12とは、取付部の一部を挟んで対向する。より具体的には、
図5Bを参照すると、図中のZ方向で示される高さ方向では、本体部11の第2面11bと、係合部12の第1主平面12aとが、取付部の一部である保持壁31aを挟んで対向する。これにより、取付部に対する高さ方向でのクランプ10の移動が規制される。
【0049】
また、取付完了後では、高さ方向に対して垂直となる平面内の一の方向については、支持部13が第2貫通孔34の開口縁34aのうち互いに対向する部分同士で挟まれる。より具体的には、
図5Bを参照すると、ここでいう一の方向は、例えば、図中のY方向で示される幅方向に対応し得る。そして、第2貫通孔34における幅方向では、開口縁34aのうち互いに対向する部分は、支持部13の一対の側面13cのいずれか一方と対向する。これにより、取付部に対する幅方向でのクランプ10の移動が規制される。
【0050】
更に、第2貫通孔34に支持部13の全体が収容されたとき、弾性片35は、もはやクランプ10のいずれの部位とも接触しないため、変形前の状態に戻る。そのため、取付完了後では、高さ方向に対して垂直となる平面内の他の方向については、支持部13が、第2貫通孔34の開口縁34aの一部と弾性片35の一部とで挟まれる。より具体的には、
図5Aを参照すると、ここでいう他の方向は、例えば、図中のX方向で示される長さ方向に対応し得る。そして、第2貫通孔34における長さ方向では、支持部13の第1端面13aが開口縁34aの端縁34bと対向し、支持部13の第2端面13bが弾性片35の自由端35aと対向する。これにより、取付部に対する長さ方向でのクランプ10の移動が規制される。
【0051】
したがって、ワイヤーハーネス取付構造1によれば、取付完了後、取付部に対するクランプ10のいずれの方向への移動も規制されるため、取付部からクランプ10が外れにくく、結果として、取付部からワイヤーハーネス100を外れにくくすることができる。一方、取付完了後、作業者は、弾性片35を例えば破壊して、係合部12及び支持部13をスライドさせて第1貫通孔33に戻した後、取付部からクランプ10を取り外すことができる。ここで、例えば、取付完了後にワイヤーハーネス100に引張り荷重が掛かったとしても、支持部13が位置している第2貫通孔34の近傍に負荷が掛かる一方で、第1貫通孔33に配置されている弾性片35には負荷が掛かりづらい。したがって、弾性片35が意図せずに破壊されるおそれが少ないので、結果として、取付部からワイヤーハーネス100を外れにくくすることができる。
【0052】
以上のように、本実施形態によれば、ワイヤーハーネス100を所定の設置位置から外れにくくするワイヤーハーネス取付構造1を提供することができる。
【0053】
また、ワイヤーハーネス取付構造1では、係合部12が貫通孔部32に係合しているときに、第1貫通孔33と第2貫通孔34とが連続する方向に沿う方向を長さ方向とする。高さ方向と長さ方向との各々に垂直な幅方向での支持部13の幅寸法W13は、幅方向での本体部11及び係合部12の各々の幅寸法W11,W12よりも小さく、かつ、長さ方向での支持部13の長さ寸法L13よりも小さくてもよい。
【0054】
ここで、上記の各図を用いた例示では、長さ方向はX方向に相当し、幅方向はY方向に相当する。
【0055】
このワイヤーハーネス取付構造1によれば、係合部12を進入させ得る第1貫通孔33の形状に対して、支持部13を進入させつつ係合部12を進入させない第2貫通孔34の形状を簡易的に設定することができる。また、支持部13の長さ寸法L13は、支持部13の幅寸法W13よりも大きくなるので、本体部11に対して係合部12を支持させるのに要求される支持部13の強度を確実に得るために、長さ寸法L13を長く設定することができる。
【0056】
また、ワイヤーハーネス取付構造1では、係合部12は、支持部13と連続する第1主平面12aと、第1主平面12aの反対側にあり、貫通孔部32への係合時に第1貫通孔33に進入する側となる第2主平面12bとを有する平板形であってもよい。
【0057】
このワイヤーハーネス取付構造1によれば、係合部12の形状がより単純化されるので、クランプ10の製造工程の簡略化、ひいてはクランプ10の製造コストをより抑える点で有利となる。
【0058】
ここで、係合部12の形状は、
図2A及び
図2B等に例示したような第1主平面12aと第2主平面12bとを有する平板形であるもの以外に、以下で例示するような形状を有してもよい。
【0059】
図6は、係合部12に代わる第1変形例としての係合部42を有するクランプ40の側面図である。
図6では、クランプ40は、
図2Bの描画に合わせて長さ方向視で示されている。なお、クランプ40において、
図2Bに示すクランプ10の構成部分と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0060】
係合部42の長さ方向視での側面形状は、本体部11から離れる方向に凸形となるように第2主平面42bが折れ曲がった形状であってもよい。この場合、係合部52に含まれる長さ方向に沿った一対の側面42gが本体部11側に近づくので、係合部42と支持部13とを組み合わせた長さ方向視での側面形状は、いわゆる矢印形となる。そのため、例えば
図5Bを参照すると、取付完了後には、保持壁31aの保持面31cに本体部11の第2面11bを接触させつつ、係合部42全体に弾性を持たせて保持壁31aの裏面31dに一対の側面42gの一端を当接させることができる。したがって、このような係合部42によれば、取付部に対してクランプ40を安定的に接続させることができる。また、ワイヤーハーネス100の取付作業時において、他部への係合部42の引っ掛かりを抑えたり、第1貫通孔33に係合部42を進入させやすくしたりすることができる。
【0061】
図7は、係合部12に代わる第2変形例としての係合部52を有するクランプ50の斜視図である。
図7では、クランプ50は、
図2Aの描画に合わせて示されている。なお、クランプ50において、
図2Aに示すクランプ10の構成部分と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0062】
XY平面に関する平面形状について、
図2A等に例示された係合部12の平面形状は、長さ方向又は幅方向のいずれかに沿った辺で構成される矩形状である。これに対して、
図7に例示された係合部52の平面形状は、楕円状である。このような係合部52によれば、係合部52に含まれる角部の数を減らすことができるので、ワイヤーハーネス100の取付作業時において、他部への係合部52の引っ掛かりを抑えたり、第1貫通孔33に係合部52を進入させやすくしたりすることができる。
【0063】
なお、係合部42等の貫通孔部32への進入をより容易とするために、例えば、係合部12が有する第1テーパー面12eと同様に、係合部42には第1テーパー面42eが設けられてもよいし、係合部52には第1テーパー面52eが設けられてもよい。
【0064】
更に、ワイヤーハーネス取付構造1では、取付部は、少なくとも一部がワイヤーハーネス100を収容するプロテクタ3であってもよい。
【0065】
このワイヤーハーネス取付構造1によれば、プロテクタ3に予め設定されている所定の設置位置にワイヤーハーネス100を取り付けるものとし、当該設置位置からワイヤーハーネス100を外れにくくすることができる。
【0066】
なお、ワイヤーハーネス取付構造1における取付部は、プロテクタ3に限られず、例えば、自動車等の車両内に予め設けられている任意の壁部であってもよい。
【0067】
以上、一実施形態を説明したが、実施形態はこれらに限定されるものではなく、実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 ワイヤーハーネス取付構造
2 クランプ部
3 プロテクタ
10 クランプ
11 本体部
12 係合部
12a 第1主平面
12b 第2主平面
13 支持部
32 貫通孔部
33 第1貫通孔
33a 開口縁
34 第2貫通孔
35 弾性片
35a 自由端
35b 固定端
100 ワイヤーハーネス
L13 支持部の長さ寸法
W11 本体部の幅寸法
W12 係合部の幅寸法
W13 支持部の幅寸法